JP2004140897A - 単相ブラシレスdcモータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ホール素子の出力電圧を正弦波状に取り出し、増幅してモータコイルに印加する。また、モータコイルの逆起電力波形を正弦波状に取り出し、コギングトルク波形を該正弦波に対して2倍の回転周期の余弦波状に取り出し、通電トルクの最大値がコギングトルクの最大値のほぼ2倍に設定する。その結果ホール素子波形・逆起電力波形の正弦波化とコギングトルクの余弦波化、更に、ゴギングトルクと通電トルクの比を1/2にすることで、単相モータのトルクリップルを無くせることが、理論的に可能となった。その設定値に合わせてモータを設計することで、回転トルクを一定に保ち、モータからの振動は生じない。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファン駆動用DCモータである単相ブラシレスDCモータ(以下モータと称する)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】「特開平11−332193号公報」
従来のモータは、構造を簡易化することによって、コストの低減を図っている。すなわち、ロータマグネットの極数とステータコアのティース数を4程度とし、ロータマグネットの磁極位置を検出する磁気センサに1個のホール素子を用い、半導体により単相のモータコイルに交互方向に通電してロータを回転させている。この構成では単相であるため、回転トルクを発生しない点が存在する。
【0003】
またロータマグネットとティースの突極間の間隙が円周方向に一定であると、突極とマグネット間に生じるコギングトルクが0になる点と、上記回転トルクの生じない点とが同じ位置で発生するために、いわゆる、デットポイントと呼ばれるモータが起動できない位置(ポイント)が存在する。
【0004】
図3はモータ回転中にコイルに発生する逆起電力とゴギングトルクの関係を示すもので、図3−1はステータコア突極とロータマグネットの間の間隙が均一である場合で、逆起電力波形(e)をsinθとするとコギングトルク(Tc)は−sin2θで表せ周期が2倍であり、デットポイント点Pが存在することが分かる。
図3−2は突極とロータマグネット間の間隙に不均一部分を適切に設け、マグネットの着磁を工夫したもので、コギングトルク波形Tcはほぼ余弦波となりTc=Ccos2θ(Cはコギングトルクのピーク値)と表せる。このようにコギングトルク0点の位置をずらすことによって、上述のデットポイントを回避する方法をとるのが一般的である。
【0005】
図4は上記従来のモータの構造を示す図であって、1はロータコア、2は円環状のロータマグネットで、モータの回転によりモータコイルに生じる逆起電力が、正弦波状になるように4極に着磁が施されている。3はロ一夕マグネット2の磁極を検出するホール素子で、プリント基板(図示せず)に取り付けられている。4は珪素鋼板を打ち抜いて積層したステータコアで、4個のティース5と突極6を有し、突極6とロータマグネット2の間の間隙は、図4に示すように、一定ではなく不均一になっている。7と8はモータコイルである。
【0006】
例えば、突極6はロータマグネット2との間隙の狭い6A部と間隙の広い6B部を有し、モータコイル7、8が無通電状態のとき、対向するロータマグネット2の磁極中心部2Aは、突極6のセンター部6Cよりも間隙の狭い6A部に吸引され、ロータマグネット2の極とティース5の突極6の位置関係は、図4の状態で停止している。この位置で、ホール素子3とロータマグネット2の位置関係から、ホール素子3の出力電圧により、DCファンモータ専用駆動用のICを介してモータコイル7、8が通電され、ティース5の突極6とロータマグネット2に回転トルクが発生してロータコア1が回転するものである。
【0007】
近年家庭やオフイスで使用される機器に搭載されたファンモータの振動や騒音の低減要求が強く、本発明者等は特開平11−332193において、モータコイルに通電されて生じる通電トルクとゴギングトルクの和である回転トルクの回転トルクのリップルを低減する方法を提案した。
【0008】
図5は、特開平11−332193のなかで、従来の方式の説明に使用されている図である。図5−1はモータ逆起電力が正弦波状である場合のモータ回転中のトルクリップルを示すもので、一定電圧をモータコイルに印加する場合、モータ回転中の逆起電力の影響により、通電中央近傍で通電電流が低下するため、通電トルクTeも中央で低下し、しかもその位置で、コギングトルクTcは反回転方向のトルクを生じて、回転トルクTは、中央近傍で大きく落ち込み、回転中のトルクリップル量は、図示ΔTとなつて現れる。
【0009】
この問題を解決するために、特開平11−332193では逆起電力波形が、電気角0°〜90°の間は、ほぼ正弦波形に、90°〜180°間は、ほぼ台形波形になるよう設計とすることで、図5−2のように振動・騒音の原因であるトルクリップルΔTをある程度低減できた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の如き従来のファンモータ構成では、トルクリップルを100%以下にすることは難しく、ある程度は残ってしまう。本発明は上述の従来技術の問題点に鑑み、回転中のトルクリップルを無くし、ファンとしての振動・騒音を極小となるモータを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、ホール素子の出力電圧を正弦波状(sinθ)に取り出し、それを増幅してモータコイルに通電する。また、モータコイルの逆起電力も正弦波状(sinθ)に取り出し、ステータコア突極とマグネットのエアギャップを不均一にすることで、コギングトルク波形を正弦波に対してほぼ2倍の回転周期の余弦波状(cos2θ)に取り出し、通電トルクがコギングトルクのほぼ2倍になるように設定することでトルクリップルを無くすことが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の請求項1に記載の第一の実施例を示すもので、上述したように、コギングトルクTc=Ccos2θであるから、それを変換して、
Tc=C(cos2θ−sin2θ) (1)式
となる。
また、図3−2の逆起電力波形とコギングトルク波形の位相関係は以前から出版物にも記載されている。
【0013】
図1は、本発明のモータ駆動回路の概略を示すもので、3はホール素子であり、9は第一の増幅器で、10は第2の増幅器で、7と8はモータコイル、Rは回路上必要なバイアス抵抗や増幅器構成に必要な固定抵抗である。ホール素子3はロータマグネットの端面近くで、磁束分布が正弦波状に変化する位置に配置されている。このホール素子の出力を2個の増幅器9と10で通電する。第一の増幅器9と第二の増幅器10の出力電圧は位相が180度異なるように構成されている。
その結果、モータコイル に流れる電流の方向は交互に反転するバイポーラ通電となる。
【0014】
第一の増幅器9の出力電圧E1は、ホール素子出力電圧と増幅器ゲインで決まり飽和しない範囲に設定することで、E1=Asinθ(Aは出力電圧ピーク値)と表される。また、同様に第二の増幅器10の出力電圧E2はE2=−Asinθと表され、モータコイルに印加される電圧Eは、
E=2Asinθ (2)式
と表せる。
【0015】
また、モータコイルに生じる逆起電力をeとすると
e=Bsinθ(Bは逆起電力ピーク値) (3)式
となる。
【0016】
また、モータコイル抵抗rに流れる電流をiとすると
i=(E−e)/r (4)式
となる。
【0017】
通電により発生するトルクをTeとすると、Te=iKt(Ktはモータトルク定数)となり、Ktは逆起電力定数Keに比例し、Keは逆起電力に比例することから、比例定数Kにより、Te=Kieと表される。上記のモータコイル電流(4)式と印加電圧(2)式と逆起電力(3)式を代入すると、
Te=K((2AB−B2)/r)sin2θ (5)式
となる。
【0018】
ここで、通電トルクTeがコギングトルクTcのほぼ2倍となるように、増幅器 のゲインを設定しておく。即ち、(1)式と(4)式の定数K・A・B・Cが
K((2AB−B2)/r)=2C (6)式
となるようにモータを設計すれば良い。
【0019】
その結果、モータの回転トルクTはT=Te+Tcであり、
T=2Csin2θ+C(cos2θ−sin2θ)=C (7)式
となり一定値とすることが可能となる。
【0020】
図2は、上記の計算式を計算したもので、モータ回転角に対するトルク変化を示すもので、Teは通電トルク、Tcはコギングトルク、Tは回転トルクである。通電トルクTe=sin2θとコギングトルクTc=(cos2θ)/2の和である回転トルクTが一定であることが分かる。
【0021】
また、図7は本発明の請求項2に記載の第二の実施例を示すもので、比較的大きなファンモータを駆動するためのPWM方式の駆動回路である。モータコイル7と8はHブリッジに接続されたパワートランジスタ26と27に接続されている。21はホール素子3の信号から、モータをバイポーラ通電するためのICであり、20は増幅器、24はPWM発生回路、23はPWM回路である。ホール素子3の信号出力を正弦波状に取り出し、増幅器20で増幅し、PWM発生回路24でPWMキャリア周波数のデューティ比を正弦波状に変化させたPWMパルスを発生させ、PWM回路23によりHブリッジ構成の上アームパワートランジスタ26を通電する。このPWM駆動回路構成により、比較的大きなファンモータでも、トルクリップルを低減する条件である正弦波状の電流をモータコイルに通電することが可能になる。
【0022】
また、図6は本発明の請求項3に記載の説明図である。一般的にコギングトルク波形は2次高調波分を含む台形波となる場合が多い。図6−1はコギングトルクTcに20%の2次高調波分を含む場合の例であり、トルクリップル率をリップル値ΔTと回転トルクの平均値TaからΔT/Taとすると、トルクリップル率は40%である。
【0023】
また、一般的にホール素子出力信号とモータ逆起電力は3次高調波分を含む台形波となる場合が多い。図6−2はホール素子出力信号とモータ逆起電力eに3次高調波分が20%含まれる場合の例であり、トルクリップル率は109%程度である。従来技術例に示した図5−1と5−2で示される回転トルクリップル値ΔTから、リップル率で表すと167%と125%であり、改善されていることが分かる。
【0024】
また、図6−3は本発明の請求項4に記載の説明図である。ホール素子出力信号とモータ逆起電力eに3次高調波分が20%とコギングトルクに20%の2次高調波分が含まれる場合の例であり、トルクリップル率は82%程度である。図6−2に対して改善されていることが分かる。
【0025】
以上のように本発明の実施例を単相バイポーラ通電のモータとして説明したが、180度位相差の2相ユニポーラ通電のモータにおいても同様に実施出来ることは言うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
ホール素子波形・逆起電力波形の正弦波化とコギングトルクの余弦波化、更に、ゴギングトルクと通電トルクの比を1/2にすることで、単相モータのトルクリップルを無くせることが、理論的に可能となった。その設定値に合わせてモータを設計することで、回転トルクを一定に保ち、モータからの振動は生じない。従来のファンモータの騒音原因となっていた加振源がなくなり、ファンの羽根振動やフレームの共振が生じなくなり、ファンとして著しく騒音を低減できる。また、ホール素子波形・逆起電力波形の正弦波化とコギングトルクの余弦波化が完全でなくても、本発明の考えを導入することで相当のトルクリップル低減が可能となる。
また、比較的大きなファンモータでも本発明の方式でPWM駆動することが可能であり、駆動回路の損失を増加させず、高効率に回転トルクリップルを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路構成図
【図2】本発明の説明図
【図3】従来技術の説明図
【図4】従来技術の説明図
【図5】従来技術の説明図
【図6】本発明の説明図
【図7】
【符号の説明】
明細書文中、及び図面中に記載しました。
Claims (4)
- モータコイルを巻装したステータコアと、該ステータコアと対向して不均一のエアギャップを有し、回転自在に支持される多極着磁されたマグネットロータと、該マグネットロータの磁極位置を検出するホ−ル素子を具備する単相モータにおいて、該ホール素子の信号を正弦波状に取り出し、その信号を増幅してモータコイルを全波通電する増幅回路群を配置し、モータコイルの逆起電力も正弦波状に取り出し、コギングトルクを該正弦波に対して2倍の回転周期の余弦波状に取り出し、通電トルクの最大値がコギングトルクの最大値のほぼ2倍に設定したことを特徴とする単相ブラシレスDCモータ。
- モータコイルを巻装したステータコアと、該ステータコアと対向して不均一のエアギャップを有し回転自在に支持される多極着磁されたマグネットロータと、該マグネットロータの磁極位置を検出するホ−ル素子を具備する単相モータにおいて、該ホール素子の出力信号を正弦波状に取り出し、該出力信号から通電信号を発生させる手段と、該通電信号によりモータコイルを全波通電するパワートランジスタ群からなる通電回路と、設定電圧値により該通電信号のオンデューティを変化させるPWM回路とを具備し、前記正弦波状の信号出力を前記設定電圧値とし、モータコイルを全波通電し、モータコイルの逆起電力も正弦波状に取り出し、コギングトルクを該正弦波に対して2倍の回転周期の余弦波状に取り出し、通電トルクの最大値がコギングトルクの最大値のほぼ2倍に設定したことを特徴とする単相ブラシレスDCモータ。
- 請求項1と2に記載のホール素子の正弦波状出力信号とモータコイルの正弦波状逆起電力と余弦波状コギングトルクの波形歪み率の各々が20%以下であることを特徴とする請求項1、2に記載の単相ブラシレスDCモータ。
- モータコイルを巻装したステータコアと、該ステータコアと対向して不均一のエアギャップを有し回転自在に支持される多極着磁されたマグネットロータと、該マグネットロータの磁極位置を検出するホ−ル素子を具備する単相モータにおいて、該ホール素子の信号を3次高調波含有の台形波状に取り出し、その信号を増幅してモータコイルを全波通電する増幅回路群を配置し、モータコイルの逆起電力も3次高調波を含む台形波状に取り出し、コギングトルクを該台形波に対して2倍の回転周期の2次高調波を含む余弦波状に取り出し、通電トルクの最大値がコギングトルクの最大値のほぼ2倍に設定したことを特徴とする請求項1、2に記載の単相ブラシレスDCモータ。
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