JP2001037186A - 永久磁石電動機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 固定子歯から回転子磁極鉄心を通って他相の
固定子歯に至る電機子反作用磁束を抑制し、鉄損および
騒音の増大を抑制する。 【解決手段】 本発明は、極数が２ｎで永久磁石７を鉄
心６に設けた磁石収容穴に挿入してなる回転子５と、３
ｎなる歯数を有する固定子１とからなる永久磁石電動機
に関する。回転子５の永久磁石７外周の磁極鉄心６に電
機子反作用磁束に対する磁路抵抗を大きくするために、
ほぼ法線方向に走る複数の細長いスリット８，９を法線
に対して直角な方向に並べて形成すると共に、法線に対
してほぼ直角な方向に見てスリット８，９と回転子磁極
鉄心６の外周面との間の間隔およびスリット８，９と永
久磁石７との間の間隔を、スリット８，９相互間の間隔
および固定子１の隣り合う歯２の磁極片３相互間の間隔
よりも小さくする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、永久磁石電動機に
関する。さらに詳細には、本発明は、極数が２ｎ（ｎは
２以上の整数）で永久磁石を鉄心に設けた磁石収容穴に
挿入してなる回転子と、３ｎなる歯数を有する固定子と
からなる永久磁石電動機に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、極数が２ｎで永久磁石を鉄心に設
けた磁石収容穴に挿入してなる回転子と、３ｎなる歯数
を有する固定子とからなる永久磁石電動機は公知であ
り、図４はそのような永久磁石電動機の一例を示すもの
である。

【０００３】図４は、ｎ＝２の場合を例示するものであ
って、歯数６の固定子１と極数４の回転子５とからなる
永久磁石電動機の横断面図を示すものである。固定子１
は円周方向に等分配置された６組の固定子歯２、および
その各先端に形成され回転子５の外周面に対向する磁極
片３を備えている。固定子巻線は、ここでは図示が省略
されている。回転子５は、回転子磁極鉄心６、４極の回
転子磁極を形成する４組の永久磁石７を備えている。

【０００４】図５は、図４に示した電動機を駆動する駆
動回路を示すものである。交流電源１０からの交流を順
変換器１１で直流に変換し、その直流出力を可変周波数
出力のインバータ１２で任意周波数の交流に再変換して
永久磁石電動機１３（以下、電動機１３と称する）に供
給する。電動機１３の端子電圧に基づいて位置検出部１
４により電動機１３の回転子位置を検出し、それを位置
信号として制御部１５に送出する。制御部１５は、位置
信号を用いて、インバータ１２の出力周波数が電動機１
３の回転周波数と同期するようにインバータ１２を制御
する。なお、電動機１３は実質的に三相同期電動機であ
って、それに対応しインバータ１２も三相ブリッジ型に
構成され、Ｕ，Ｖ，Ｗ各相の正側アームはＵ＋，Ｖ＋，
Ｗ＋で示され、負側アームはＵ−，Ｖ−，Ｗ−で示され
ている。図示の回路構成により、直流式の無整流子電動
機が構成されている。なお、電動機回転子位置を電動機
端子電圧に基づいて検出する方式はセンサレス方式また
は間接式位置検出方式と言われるものである。

【０００５】電動機１３の各相巻線には、周知のごとく
各瞬時には、いずれか一つの相の正側アームと他の一つ
の相の負側アームとが対をなしてオン動作し、他の各ア
ームはオフ状態にある。オンすべきアームを３相間で順
次切り換えることによってインバータ１２から所望の三
相出力が電動機１３に供給される。

【０００６】図６は図４に示した電動機の固定子歯２の
回りに巻装した固定子巻線４を図示し、クロスおよびド
ットで電流の通流方向を、インバータ１２の一連の通電
モードのうち、具体例として正側アームＵ＋および負側
アームＶ−とがオン動作しており、電流が正側アームＵ
＋から電動機Ｕ相巻線およびＶ相巻線を通って負側アー
ムＶ−へと流れる時の通電状態を示したものである。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】固定子１および回転子
５の鉄心には基本的には永久磁石７の磁束が通るが、固
定子巻線４の起磁力による磁束すなわち電機子反作用磁
束もこれに重畳されて通る。この電機子反作用磁束はリ
ラクタンストルクを生成し、永久磁石の磁束によるトル
クに加算されて電動機のトルクを大きくすると共に、駆
動電流を減少させて銅損を減少させる効果がある。しか
し、他方で、電機子反作用磁束は駆動時の総磁束を増大
させ、固定子１および回転子５の鉄心の磁束密度増大に
より鉄損を増大させる作用もある。

【０００８】さらに、電機子反作用磁束は駆動電流の高
調波成分との相互作用により電動機の騒音増大をもたら
し、鉄心の固有振動数との間に共振がが起こると、特に
騒音を増大させる作用もある。

【０００９】図６に示す駆動状態におけるトルクは、図
３の固定子１および回転子５の位置関係を電気角０°と
して図７のように表され、一般的に合成トルクが最大と
なる位置を中心として電気角で前後３０°の範囲で通電
が行われる。

【００１０】回転子極数２ｎ、固定子歯数３ｎの電動機
１３において、特に永久磁石７の外周に磁極鉄心６を配
置している場合、通電の中心的な位置関係において、図
８に示すように、固定子歯２から回転子磁極鉄心６を通
って他相の固定子歯２に至る電機子反作用磁束が多くな
り、前述した電機子反作用磁束による鉄損増大・騒音増
大の作用が大きくなる。

【００１１】なお、永久磁石７として希土類磁石を用い
た場合は、図９に示すように、永久磁石７が薄くなり、
回転子位置による巻線リアクタンスの変化が小さくな
り、リラクタンストルクが大幅に減少する。このため、
電機子反作用磁束の影響は、鉄損増大・騒音増大の方が
トルク増大より大きくなり、電動機の特性をより悪化さ
せる。そのため、従来、永久磁石７として希土類磁石を
用いることは好ましくないとされた。

【００１２】以上は、極数４・固定子歯数６の電動機の
場合についての説明であるが、一般的に極数２ｎ・固定
子歯数３ｎの永久磁石電動機に共通の現象である。

【００１３】本発明は上記事情を考慮してなされたもの
で、固定子歯から回転子磁極鉄心を通って他相の固定子
歯に至る電機子反作用磁束を抑制し、鉄損および騒音の
増大を抑制し得る永久磁石電動機を提供することを目的
とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項１に係る発明は、極数が２ｎ（ｎは２以上の
整数）で永久磁石を鉄心に形成した磁石収容穴に挿入し
てなる回転子と、３ｎなる歯数を有する固定子とからな
る永久磁石電動機において、回転子の永久磁石外周の磁
極鉄心に電機子反作用磁束に対する磁路抵抗を大きくす
るために、ほぼ法線方向に走る複数の細長いスリットを
法線に対して直角な方向に並べて形成すると共に、法線
に対してほぼ直角な方向に見てスリットと回転子磁極鉄
心の外周面との間の間隔およびスリットと永久磁石との
間の間隔を、スリット相互間の間隔および固定子の隣り
合う歯の磁極片相互間の間隔よりも小さくした回転子の
永久磁石外周の磁極鉄心に電機子反作用磁束に対する磁
路抵抗を大きくするためのほぼ法線方向に走る複数のス
リットを法線に対して直角な方向に並べて形成すると共
に、固定子の隣り合う歯の磁極片相互間の間隔をスリッ
トの相互間隔に対して同等以上としたことを特徴とす
る。

【００１５】請求項２に係る発明は、永久磁石として希
土類磁石を用いたことを特徴とする。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。

【００１７】図１は本発明の一実施形態を示すものであ
り、電動機としての基本構成は図４に示すものと同一で
ある。この電動機の特徴は、回転子５の永久磁石７外周
の磁極鉄心６に、電機子反作用磁束φa（図２参照）に
対する磁路抵抗を大きくするために、ほぼ法線方向に走
る複数の細長いスリット８を法線に対して直角な方向に
並べて形成した点にある。スリット８は、ここでは、打
ち抜き穴として形成されている。法線に対してほぼ直角
な方向に見てスリット８と回転子磁極鉄心６の外周面と
の間の間隔Ｗo、およびスリット８と永久磁石７との間
の間隔Ｗi、すなわち電機子反作用磁束φaの磁路断面積
が、スリット８相互間の間隔Ｗsおよび固定子１の隣り
合う歯２の磁極片３相互間の間隔Ｗpよりも相当に小さ
いのが特徴である。

【００１８】図２は、図１の電動機のある瞬時の通電状
態を示したものである。電機子反作用磁束φaは実線で
示すように固定子歯２の磁極片３から出て回転子磁極鉄
心６を通り、さらに他相の固定子歯２の磁極片３へと入
って行くが、電機子反作用磁束φaが通る磁路の磁路抵
抗に関係する間隔ＷoおよびＷiがスリット８の存在によ
り相当狭められ、その結果、電機子反作用磁束φaが通
る磁路、すなわち回転子磁極鉄心６の法線にほぼ直角な
方向の磁路は相当に狭められ、そのため、電機子反作用
磁束φaに対する磁路抵抗は相当大きくなる。それに対
して、永久磁石７の磁束φpが通る磁路、すなわち法線
方向の磁路はほとんど狭められておらず、従って永久磁
石７の磁束φpに対する磁路抵抗はほとんど変わらな
い。

【００１９】このようにして、永久磁石７の磁束φpに
ほとんど影響を与えることなく、電機子反作用磁束φa
を減少させることができる。従って、上記実施の形態に
よれば、次の効果を奏することができる。

【００２０】１．電機子反作用磁束が減少し、これによ
って生ずる鉄損増大・騒音増大を抑制でき、高効率で静
かな電動機を提供することができる。

【００２１】２．永久磁石に希土類磁石を用いた場合で
も、リラクタンストルクが元々小さいので、リラクタン
ストルク減少の影響は小さく、鉄損増大の抑制による効
率向上を期待することができる。

【００２２】図３は本発明の他の実施形態を示すもので
ある。ここでは、図１，２の打ち抜き穴からなるスリッ
ト８の代わりに、回転子５の外周側に開口された溝とし
て形成したスリット９を形成したものである。これによ
っても図１および２の実施形態と同様に電機子反作用磁
束φaに対する磁路抵抗を増大し、図１，２のものと同
等の作用・効果を奏することができる。なお、スリット
９は回転子外周側ではなく、永久磁石収容穴側に開口さ
せてもよいことは明らかである。

【００２３】この実施形態によれば、電機子反作用磁束
φaの通る磁路がさらに狭められて磁路抵抗が増大し、
上記効果をさらに増強することができる。

【００２４】

【発明の効果】本発明によれば、永久磁石の磁束に対す
る磁路にはほとんど影響を与えることなく、電機子反作
用磁束に対する磁路抵抗を大きくして電機子反作用磁束
を減少させ、固定子・回転子の鉄損増大抑制によって効
率を向上させることができ、また電動機の騒音を小さく
することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態による永久磁石電動機の要
部の横断面図。

【図２】図１の永久磁石電動機における電機子反作用磁
束を説明するための図。

【図３】本発明の他の実施形態の回転子部分の横断面
図。

【図４】従来の永久磁石電動機の横断面図。

【図５】永久磁石電動機のセンサレスで駆動する無整流
子電動機の回路構成図。

【図６】駆動状態の永久磁石電動機の断面図。

【図７】図６の駆動状態におけるトルク特性を示す線
図。

【図８】駆動状態の永久磁石電動機における電機子反作
用磁束を説明するための図。

【図９】永久磁石に希土類磁石を用いた回転子の横断面
図。

【符号の説明】

１ 固定子 ２ 固定子歯 ３ 磁極片 ４ 固定子巻線 ５ 回転子 ６ 回転子磁極鉄心 ７ 永久磁石 ８，３ スリット

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】極数が２ｎ（ｎは２以上の整数）で永久磁
   石を鉄心に形成した磁石収容穴に挿入してなる回転子
   と、３ｎなる歯数を有する固定子とからなる永久磁石電
   動機において、前記回転子の永久磁石外周の磁極鉄心に
   電機子反作用磁束に対する磁路抵抗を大きくするため
   に、ほぼ法線方向に走る複数の細長いスリットを前記法
   線に対して直角な方向に並べて形成すると共に、前記法
   線に対してほぼ直角な方向に見て前記スリットと前記回
   転子磁極鉄心の外周面との間の間隔および前記スリット
   と前記永久磁石との間の間隔を、前記スリット相互間の
   間隔および前記固定子の隣り合う歯の磁極片相互間の間
   隔よりも小さくしたことを特徴とする永久磁石電動機。
2. 【請求項２】前記永久磁石として希土類磁石を用いたこ
   とを特徴とする請求項１記載の永久磁石電動機。