JP3729451B2 - モータの駆動回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファン等に使用される単相ブラシレスDCモータ(以下モータと称する)の駆動回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスDCモータはファン等の動力源として使用されている。モータコイルへの通電方法としては、小形で比較的出力の小さなファンでは2相ユニポーラ通電方式が主流であるが、近年のファンの高風量化に伴い、モータの通電電流が増加し、単相バイポーラ通電が効率の点で良いため多く採用されている。
【0003】
また、複写機に使用されるファンは、複写機の動作中は全速で回転し、待機中はファンの騒音低減やモータの温度上昇を低下させてファンの軸受けの長寿命化を計る目的で低速にする場合が多い。また、冷蔵庫に使用されるファンも急速冷却時には全速で回転し、保存状態ではファンを低速に運転して騒音を低減する。モータを低速運転するとファンの羽根による風切り音は小さくなるが、モータの振動や電磁音が強調され不快感が生じる。
【0004】
モータコイルにバイポーラ通電される電流波形は、図6−1のようにモータの回転による逆起電力の影響で、半周期毎に通電前半部と通電末期の2ヶ所(eとf部)に大きな突部が生じて歪み、騒音や振動の原因となる。
改善策として、電流帰還ループによる定電流方式があるが、電流の立ち上がり、立ち下がり部分はシャープになり、電流波形は矩形波状になる。矩形状の電流がコイルに通電されると、その高調波分から電磁音や振動が生じる。
【0005】
そこで、本発明者等は特開平11−178384において、モータコイルの逆起電力に影響されず、一定な電流値となる回路構成を提案した。
図7は特開平11−178384の電流帰還ループを設けた定電流方式の実施例を示すもので、この種のモータは電気角180度位相差の二相モータコイル1に交互に通電することで、図示省略の永久磁石を含むロータと羽根が回転するものである。
磁極センサ3の出力信号で分配回路を含むモータ駆動用IC4から正逆相の通電信号を出力し、トランジスタ10を経由して、モータコイルに通電する2個のNPNトランジスタを駆動している。また、二相のモータコイルに流れる電流を電流検出抵抗9で電圧に変換して、比較回路2で回転数指令電圧11と比較して差分電圧を出力し、抵抗8で電流値に変換して2個のトランジスタ10のエミッタに供給し、この電流がNPNトランジスタ5のベース電流になる。回転中モータコイルに発生する誘起電圧の影響でモータコイルの電流が低下すると、電流検出抵抗9の電圧が低下し、比較回路2の差分電圧が増加してモータコイル電流を増加させることで電流帰還ループが構成され定電流制御となっている。17は時定数用コンデンサでベース抵抗6とバイアス抵抗13に接続されている。18はNPNトランジスタ5のベースとコレクタ間に接続されている。
【0006】
モータ駆動用IC4から出力される正逆相の通電信号を、通電信号立ち上がり時にはベース抵抗6と時定数用コンデンサ17の時定数で遅れさせ、通電信号の立ち下がり時にはバイアス抵抗13と時定数用コンデンサ17の時定数で遅れさせる。また、モータコイルに通電されている電流が急激に減少するとモータコイル1とNPNトランジスタ5のコレクタ接続点電圧は急激に上昇する。
この電圧が上昇している間、コンデンサ18を等してNPNトランジスタをONさせて、通電を継続させる。
【0007】
図8の8−1、8−2は、一般的な2相モータコイル1の電流波形を示すもので、図9はファンモータ駆動用IC4の正逆相の通電信号を示すものである。図10は特開平11−178384の動作を説明するもので、10−1,10−2は時定数用コンデンサ17により立ち上がり、立ち下がりの遅れた通電信号を示し、51はトランジスタ10の動作レベル電圧を示すもので、立ち上がりの時定数よりも立ち下がりの時定数を若干長くしておくことで、通電切換時に二相モータコイル共に通電して、その二相分の和電流は定電流制御により10−5のように一定に保たれる。即ち、時定数用コンデンサ17により通電電流の立ち上がり、立ち下がりが2ステップとなり、これにコンデンサ18の影響で電流波形を鈍らせ10−3,10−4のようにソフトスイッチング化が可能になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の如き従来の構成では、下記のような問題が生じる。
1.通電開始時や通電終了時に生じる急激なモータ電流変化には高調波成分が多くモータコイルが直接振動して騒音の原因になるため、特開平11−178384ではモータコイル電流波形の通電開始部と通電末期部に傾斜を設けているが不十分であり、回路構成がやや複雑となり必要電子部品数も多い。
2.一般的にモータの可変速は電源電圧を変化させて実現する場合が多く、回転数指令電圧を供給されない場合が多い。
3.また、定電流制御のためトランジスタ5のコレクタ・エミッタ間の残り電圧が大きくトランジスタ5の発熱が大きい。また、回路構成がやや複雑となっている。
4.一般的にモータを通電したときの電流波形には、モータコイルに生じる逆起電力のために、通電前半部と通電末期部に突部が生じる。この突部電流は図6に示すように脈動トルク(以下トルクリップルと称する)の原因となり、ファンの羽根を含むロータが振動して騒音の原因になっている。図6はバイポーラ通電によるトルクリップルの発生を示すもので、6−1のコイル電流波形と6−2の逆起電力波形により6−3kの通電トルクが生じる。また、モータにはコギングトルクjが存在し、iはモータ全体の合成トルクである。この合成トルクに生じるトルクリップル値bが生じる。
本発明は上述の従来問題に留意し、通電電流の高調波成分を低下させ、モータに生じるトルクリップルを低減し低振動化を図り、モ−タコイル通電トランジスタに負担のかからないモータ回路を安価に供給することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明においては、モータコイルを巻装した固定子と、固定子と対向して回転自在に支持される多極着磁されたマグネットロータが配置し、マグネットロータの磁極位置を検出する磁極センサと、磁極センサの信号から作られる通電信号を発生させる手段を設け、通電信号によりモータコイルをバイポーラ通電する。また、設定電圧に応じて通電信号のオンデューティを変化させるPWM回路とを具備する。また、モータコイルに流れる電流波形を検出する手段と電源電圧に応じて変化する比較電圧とを付加し、比較電圧と電流波形を比較し、電流波形が比較電圧を超えた区間で、指令電圧値を自動的に可変して、PWM回路のオンデューティを可変して、電流波形の突部電流値を制限し、モータに生じるトルクリップルを低減し、ファンモータとしての低振動・低騒音化を図る。
【0010】
また、通電開始時はモータコイルインダクタンスのため、電流はモータコイルインダクタンス分と抵抗分で決まる時定数によりある傾きを持って上昇する。通電終了時にはモータコイルに蓄積されたエネルギーが電流として放出されるまで回路で循環し、ある傾きを持って減衰する。この電流の上昇・減衰傾きを利用して電流波形の高調波成分を低減させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る単相ブラシレスDCモータの駆動回路の構成を示すブロック図である。図において、1はモータコイル、3は磁極センサでモータ内に配置されている。4はバイポーラ通電信号を出力するファン用モータ駆動用IC、23はPWM回路、24はPWM発生回路、25はコンパレータ、26と27はバイポーラ通電するパワートランジスタ、28と29は環流用ダイオードである。
【0012】
モータコイル1を巻装した固定子と、上記固定子と対向して回転自在に支持される多極着磁されたマグネットロータと、マグネットロータの磁極位置を検出する磁極センサ3を内蔵するモータがあり、磁極センサ3の信号からゼロクロスコンパレータで作られるバイポーラ通電信号を発生させる手段を有するファン用モータ駆動IC4を設け、IC4に同期してモータコイル1をバイポーラ通電するバイポーラ通電回路はHブリッジ構成のパワートランジスタ26、27で構成されている。
【0013】
また、比較電圧となる基準電圧1は電源電圧の分圧で構成され、電源電圧の変動に合わせて変化する。一方、設定電圧となる基準電圧2は定電圧電源の分圧で構成され、電源電圧の変動の影響を受けない。コンパレータ25は、コイル電流波形の検出抵抗9と基準電圧1を比較し、コイル電流値が基準電圧1を越えた場合に分圧抵抗31の分圧比を下げ基準電圧2を低下させる。PWM発生回路24は、図5に示すように、決められた周波数パルスのデューティ比を基準電圧2に応じて可変し出力する機能を有するものである。PWM回路23は、IC4の通電信号とPWM発生回路24の信号により、PWM通電信号を発生するものである。
【0014】
図2の2−1は従来のコイル電流波形であり、2−2は検出抵抗9に生じる電源ラインの電圧波形であり、破線は基準電圧1である。2−3はコンパレータ25の出力波形あり、電源ライン電流が基準電圧1を越えた場合に出力がLレベルとなる。コンパレータ25の出力がHレベルではPWMのオンデューティは100%であり、Lレベルになると、図1の基準電圧値2が低下して設定されたPWMのオンデューティとなる。2−4と2−5はIC4の通電信号出力で上アームのパワートランジスタ26の通電指令の基本となるもので、Lレベルが通電するタイミングとなっている。2−6、2−7は2−3と2−4,2−5から合成されるPWM回路23の出力波形で、2−3のLレベル区間に同期してPWMで通電を制限する区間が生じている。その結果、2−8のようにモータコイル電流の2ヶ所の突部電流eとfはほぼ一定となる。
【0015】
また、図3は電流3−1によって通電された場合のトルクリップルを示すもので、リップル値aは従来のもの6−3のbと比較して大幅に低減されていることが分かる。
【0016】
また、図4は、電源電圧の変化により、基準電圧1が変化した場合の電流波形を示すもので、4−1は電源電圧が低い場合であり、4−2は電源電圧が高い場合である。電流抑制値がcからdに上昇し、モータの回転数も上昇する。このように、トルクリップルを低減しながら、電源電圧に比例して電流も増加させることが可能である。
【0017】
また、本発明の実施例を単相バイポーラ通電として説明したが、2相ユニポーラ通電に応用が可能であることは言うまでもない。
【0018】
【発明の効果】
本発明の効果は下記のように列挙される。
1.騒音の原因となるモータコイル電流の高調波成分については、モータコイル自身のインダクタンス分と抵抗分で決まる時定数と、モータコイル自身に蓄積されるエネルギー放出により生じる電流の上昇・減衰傾きを利用して低減させることが可能である。
2.トルクリップルによる振動が起因する騒音については、モータコイル電流波形の通電前半部と通電末期部に生じる2ヶ所の突部電流値を制限し、モータに生じるトルクリップルを低減させることで対策が可能である。
3.トルクリップルを低減させながら、電源電圧に応じて回転数を可変することも可能である。
4.上記モータコイル電流波形の突部の電流制限も、PWM駆動のためモータコイル駆動パワートランジスタの損出が低減される。
5.本発明の回路構成は容易にIC化が可能であり安価に構成できる。
以上説明したように、本発明に係る単相ブラシレスDCモータの駆動回路においては、従来品に比較し大幅な低振動・低騒音化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路構成図
【図2】本発明の動作説明図
【図3】本発明の動作説明図
【図4】本発明の動作説明図
【図5】本発明の動作説明図
【図6】従来方式の動作説明図
【図7】従来方式の回路構成図
【図8】従来方式の動作説明図
【図9】従来方式の動作説明図
【図10】従来方式の動作説明図
【符号の説明】
Claims (2)
- 単相モータコイルを巻装した固定子と、該固定子と対向して回転自在に支持される多極着磁されたマグネットロータと、該マグネットロータの磁極位置を検出する磁極センサと、該磁極センサの信号から作られる通電信号を発生させる手段と、該通電信号により単相モータコイルを全波通電するパワートランジスタ群からなる通電回路と、設定電圧値により、前記通電信号のオンデューティを変化させるPWM回路とを具備する駆動回路において、設定電圧値を自動的に可変して、定格運転状態で電源電圧に関係せず、単相モータコイル電流波形に生じる2ヶ所の突部電流値のみを制限した、ことを特徴とする単相ブラシレスDCモータの駆動回路。
- 単相モータコイルに流れる電流波形を電圧として検出する検出手段と、電源電圧に応じて変化する比較電圧とを付加し、該比較電圧と該検出手段出力を比較し、該検出手段出力が該比較電圧を超えた区間で、前記設定電圧値を自動的に可変する請求項1に記載の単相ブラシレスDCモータの駆動回路。
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