JP4146748B2 - ブラシレスモータの制御装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、井戸用ポンプ等電気機器の始動時、あるいは、電気機器の運転途中においてトルクが急激に可変した場合でも、常に所定のトルクに対応して円滑に、かつ、安定した状態で定速運転の継続を可能としたブラシレスモータにおける制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、高効率、可変速、小形軽量等を考慮して家電機器等をはじめとする各種の電機機器にブラシレスDCモータが使用されるようになってきた。これまでのブラシレスDCモータ(以下、モータという)は、回転子の回転位置を検出するための磁極位置検出センサを内蔵して構成されているが、次のような問題があった。例えば、電機子巻線を分布巻するための固定子鉄心(ステータ)は、この固定子鉄心に電機子巻線を分布巻すると、固定子鉄心の軸方向両端部から、電機子巻線部分のコイルエンド部が外方に突出することになる。このため、回転子の磁極位置を検出する磁気センサの取付位置は、必然的にコイルエンドの制約を受ける関係上、回転子は軸方向の長さ寸法をコイルエンド付近まで延出して、磁気センサを確実に磁極位置が検出できる位置に取付けるようにした方式と、回転子の回転子軸端部に小形の磁極位置検出用の永久磁石を装着し、この永久磁石の外側に磁気センサを配置して回転子の磁極位置を検出する方式とが一般に実用化されていた。
【0003】
しかし、前者においては、回転子の外周に設ける磁石量の増加に伴い、モータ自体の大形化、及び、その価格が増大するという問題があり、また、後者においては、回転子の磁極と磁極位置検出用の永久磁石との位置合せを確実に行う必要があるため、モータの組立工数等が増大するという問題があった。しかも、前記両方式においては、コイルエンドの外側において磁気センサを取付けるようにした方式が採用されているので、モータの大形化を避けることは難しく、モータ自体の製造コストを高くするという問題も含んでいた。
【0004】
前記の問題を解消するには、磁気センサを廃止してセンサレス化を実現することにより、磁気センサ自体の利用及びその取付けが不要となるため、上記問題は必然的に解消することはもとより、部品点数、工数の低減化がはかれ、モータの小形化、低コスト化を容易に実現することができる。今日、一般的に使用されているセンサレスドライブ方式、例えば、120度通電形電圧インバータ駆動方式の如く、モータの電機子巻線に生じる速度起電力を唯一の情報源として用いているセンサレス駆動方式においては、センサ基板や信号送出用のハーネス部材を一切必要としていないので、磁気センサ自体における耐使用温度とか、ノイズ等に対する耐環境性や製造コスト面でのメリットが非常に大きい反面、モータの始動時とか低速運転領域におけるモータ自体の回転性能に不安定性が残るとともに、イナーシャトルクが特定される等、特殊な用途にしか使用できないという問題があった。
【0005】
即ち、この種のモータにおけるセンサレス駆動回路は、回転中のモータの電機子巻線に生じる速度起電力と界磁の位置の相関に着目して、該速度起電力によりモータの転流タイミングを決定していた。また、モータの始動時においては、同期モータ、あるいは、ステッピングモータとして、あらかじめ設定された周波数と電圧とで強制転流させて、界磁位置検出に充分な速度起電力が発生する回転領域まで負荷トルクとのバランスを保ちながら徐々に加速するように構成されていた。
【0006】
しかし、前記モータのセンサレス駆動回路においては、モータ始動後の加速時間が必然的に長くなり、しかも、低回転・高トルクでの始動運転が困難であった。即ち、速度トルク特性の不安定さ故に急速な加速制御を行うことが難しく、強制転流モード(いわゆる他制運転)と、推定した位置情報のフィードバックによる同期インバータ運転モード(いわゆる自制運転)との2モードを有し、モータを含む動力系イナーシャや負荷トルクとのバランスを常に維持しながら緩やかに加速する方法しかなかった。また、転流タイミングは速度起電力によって決定されるが、この速度起電力はモータの電機子巻線の電圧を利用して検出していたので、高負荷トルク時には、通電切換に伴う電機子電流の還流作用による転流スパイク電圧が増大するため、検出できる速度起電力情報に大きな誤差が生じる。この結果、界磁磁極位置の推定結果に大きなエラーが生じて、適切な転流タイミングでの転流作用を決定することが非常に困難であった。
【0007】
前記の問題に鑑み、本願出願人は、例えば、特開平9−37586号公報に記載されているブラシレスモータのセンサレス駆動回路を発明した。前記センサレス駆動回路は、図9(ホ)に示すようなモータ各相の電機子電流波形を構成する各波形ブロックに共通する波形的特徴に着目して、ブラシレスモータの電機子巻線の各相における通電領域の各ブロックに現れる2つの顕著な電流増加領域A、Bのうち(図11参照)、第2の電流増加領域Bを検出して、これを転流時期の到来(転流タイミング)と決定し、転流制御を行うものである。この第2の電流増加領域Bの検出は、モータの電機子巻線に流れる電機子電流が、その電流の平均値の所定倍(例えば、1.2倍)となったことを目安として検出するようにしていた(以下、「平均値方式」と称す)(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−37586号公報
【0009】
然るに、前記ブラシレスモータのセンサレス駆動回路においては、電機子電流の平均化処理には所定時間を要するので、かかる平均値方式は、井戸用のポンプとかエアコンの室外機用ファン等のように、負荷トルクが外乱によって急変する電気機器の駆動源用のモータとして使用することができないという問題点があった。即ち、電機子電流の平均値は、負荷トルクの急変に対応して可変することができない。よって、かかる急変時には、第2の電流増加領域Bを誤って検出してしまうので、適切な転流タイミングでの転流作用を実行することができず、モータを振動させてしまったり、同期脱出させて停止させてしまったりして、安定した駆動ができなくなるというおそれがあった。
【0010】
本発明は、前記の種々な問題点に鑑み、ブラシレスモータの運転中に負荷トルクが外乱等により急変した場合においても、負荷トルクの急変に追従してブラシレスモータを定速運転可能に制御するモータ制御装置を具備したブラシレスモータの制御装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ブラシレスモータの複数相の電機子巻線に直流電圧を順次通電するための複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、そのインバータ回路の複数のスイッチング素子をオン・オフさせて前記ブラシレスモータを回転させる通電制御回路とを備えたブラシレスモータの制御装置において、前記ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を電圧に変換して検出する電流検出回路と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値をサンプルホールドしてトルク電流推定値を出力するサンプルホールド手段と、前記トルク電流推定値に基づいて転流目標電流値を演算処理する転流目標電流値演算手段と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値が前記転流目標電流値を上回ったとき転流指令を出力する転流指令出力手段と、前記転流指令出力後の直流電流値をサンプルとして検出する時刻を演算処理して設定するサンプル時刻演算手段と、前記サンプル時刻演算手段により設定した時刻に電流検出回路から出力される直流電流値をトルク電流推定値としてサンプルホールドさせるための電流サンプル指令を前記時刻毎に出力するタイマ手段とを備えてモータ制御装置を構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の発明においては、電流検出回路によりブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流が電圧変換されて検出され、前記検出された直流電流値を適宜モータ制御装置のサンプルホールド手段によりサンプルホールドし、これをトルク電流推定値として転流目標電流値演算手段に出力し、このトルク電流推定値をベースに定常時転流目標電流値を転流目標電流値演算手段により求め、この定常時転流目標電流値と前記電流検出回路により検出された直流電流値とを比較し、前記直流電流値が定常時転流目標電流値を上回った場合、転流指令を出力し、この転流指令はPWM制御手段から通電制御回路を介してインバータ回路に出力される。インバータ回路は通電制御回路からの指令によりスイッチング素子がオン・オフ制御され、ブラシレスモータを転流制御して、ブラシレスモータをセンサレスにて駆動制御するようにモータ制御装置を構成したので、前記ブラシレスモータへの転流指令は、電流検出回路にて検出した直流電流値をモータ制御装置において、トルク電流推定値としてこのトルク電流指定値をベースにして定常時転流目標電流値を演算処理し、これを前記電流検出回路にて検出された直流電流値と比較処理することにより瞬時に出力される結果、最適な転流タイミングによって転流指令を出力することが可能となり、ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流の通電相切換を常に最適な転流タイミングで、円滑に行うことができる。この結果、負荷トルクの急変に際しても、ブラシレスモータの回転速度制御を円滑・良好に、かつ、高効率で行うことができる。従って、ブラシレスモータの運転中に負荷トルクが急変した場合においても、急変したトルクに追従して適切に転流指令を出力することができ、ブラシレスモータを常に所定の回転速度で安定した状態で駆動させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、ブラシレスモータの複数相の電機子巻線に直流電圧を順次通電するための複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、そのインバータ回路の複数のスイッチング素子をオン・オフさせて前記ブラシレスモータを回転させる通電制御回路とを備えたブラシレスモータの制御装置において、前記ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を電圧に変換して検出する電流検出回路と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値をサンプルホールドしてトルク電流推定値を出力するサンプルホールド手段と、前記トルク電流推定値に基づいて転流目標電流値を演算処理する転流目標電流値演算手段と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値が前記転流目標電流値を上回ったとき転流指令を出力する転流指令出力手段と、前記転流指令出力後の直流電流値をサンプルとして検出する時刻を演算処理して設定するサンプル時刻演算手段と、前記サンプル時刻演算手段により設定した時刻に電流検出回路から出力される直流電流値をトルク電流推定値としてサンプルホールドさせるための電流サンプル指令を前記時刻毎に出力するタイマ手段と、更に、前記ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流をあらかじめ設定した最大電流値に対して大・小を判断してブラシレスモータの回転数、あるいは、ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を制御する定電流・回転数制御手段とを備えてモータ制御装置を構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明においては、電流検出回路によってブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流が電圧変換されて検出され、前記検出された直流電流値を適宜モータ制御装置のサンプルホールド手段によりサンプルホールドし、これをトルク電流推定値として転流目標電流値演算手段に出力し、このトルク電流推定値をベースに定常時転流目標電流値を転流目標電流値演算手段により求め、この定常時転流目標電流値と前記電流検出回路により検出された直流電流値と比較し、前記直流電流値が定常時転流目標電流値を上回った場合、転流指令を出力し、この転流指令はPWM制御手段から通電制御回路を介してインバータ回路に出力され、インバータ回路は通電制御回路からの指令によりスイッチング素子がオン・オフされ、ブラシレスモータを転流制御して、ブラシレスモータをセンサレスにて駆動制御するようにモータ制御装置を構成するとともに、このモータ制御装置には、更に、ブラシレスモータに流れる電機子電流を事前に設定した最大電流値に対してその大・小を常に把握して、ブラシレスモータの回転数と電機子巻線に通電される電機子電流を制御するための定電流・回転数制御手段が具備されているので、本発明のモータ制御装置においては、電流検出回路により検出した直流電流値をトルク電流推定値としてこのトルク電流推定値をベースにして定常時転流目標電流値を演算処理し、これを電流検出回路にて検出された直流電流値と比較処理することにより、瞬時にブラシレスモータへの転流指令が出力される結果、最適な転流タイミングにより転流指令を出力することが可能となり、ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流の通電相切換を常に最適な転流タイミングで適切に行うことができる。この結果、ブラシレスモータの回転速度制御は、負荷トルクの急変に際して円滑・良好に、かつ、高効率で行うことができることはもとより、前記定電流・回転数制御手段を採用することによって、ブラシレスモータは、自体の回転速度と、負荷トルクに対応して事前に設定した回転速度の速度指令値とを常に比較して、ブラシレスモータの回転速度を速度指令値と一致させるように通電電圧を制御する回転数制御を行うとともに、負荷トルクの増大により電機子巻線への通電電流が増加して、ブラシレスモータの温度が上昇して、焼損したり、ブラシレスモータの回転子に設けた永久磁石が脱磁する等の問題を未然に回避するために、電機子巻線に通電される最大電流値を設定し、電流検出回路にて検出される直流電流値が前記最大電流値を超えるのを阻止すべく、定電流制御を行って前記の問題を解消するようにしたので、ブラシレスモータはその運転中に負荷トルクの急変によりトルク変動が生じたとしても、適切な転流作用により、常に所定の回転速度で安定した状態での駆動を可能にするとともに、ブラシレスモータの焼損、脱磁等の問題を良好に回避することができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のブラシレスモータの制御装置において、前記定電流・回転数制御手段は、ブラシレスモータの電機子巻線の通電相に流れる電機子電流の転流周期を検出してブラシレスモータの回転数を算出するモータ回転数算出手段を備えて構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明においては、定電流・回転数制御手段に電機子巻線の通電相に流れる電機子電流の転流周期をベースにして、ブラシレスモータの回転速度を演算処理して算出するようにしたモータ回転数算出手段が具備されているので、ブラシレスモータにおいては、負荷トルクの変動によりその回転数(回転速度)が、事前に設定した回転速度に対してその遅・速が即座に判断でき、この結果、電機子巻線に通電する電機子電流を即時に制御することにより、負荷トルクに応じて回転数が急変しても、定電流・回転数制御手段によって回転速度の是正が容易に行えるので利便である。しかも、モータ回転数の検出は、電機子巻線の通電相に流れる電機子電流の転流周期をカウントして演算処理することにより、簡易に、かつ、回転数検出センサ等の検出手段を特別に用いたりすることなく算出することができるため、ブラシレスモータの回転速度制御を適確に、かつ、経済的に行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項2記載のブラシレスモータの制御装置において、前記定電流・回転数制御手段は、前記電流検出回路にて検出される直流電流値に基づいてブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を算出する電機子電流算出手段を備えて構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明においては、電流検出回路にて検出される直流電流値を演算処理して、電機子巻線の各通電相に転流周期毎に通電される電機子電流を検出する電機子電流算出手段が定電流・回転数制御手段に具備されているので、電機子巻線に通電される電機子電流が、負荷トルクの変動により急変しても、その通電電流は電機子電流算出手段によって即座に算出でき、この算出した直流電流値に応じてブラシレスモータの回転数が、事前に速度指令値として設定した回転数(回転速度)に対して急変した場合は、直ちに電機子巻線に通電される電機子電流を制御してモータ回転数を速度指令値の値に復帰させることができるとともに、負荷トルクの関係でモータ回転数が急激に低下した場合においても、定電流・回転数制御手段によって事前に設定した最大電流値をオーバーしないように制御されているので、負荷トルクの変動により電機子巻線に流れる電機子電流が超過して、電機子巻線に悪影響を与えるという問題を確実に回避することができるので利便である。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1、2記載のブラシレスモータの制御装置において、ブラシレスモータの始動時、そのブラシレスモータの始動トルクを発生させるために充分な電流値から時間とともに前記電流値が減衰する始動時における始動時転流目標電流値を用いて転流指令出力手段からブラシレスモータ始動時の転流指令を出力させるための始動時補償手段を備えて構成したことを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明においては、ブラシレスモータの始動時に、電流検出回路にて検出する直流電流値をトルク電流推定値として、転流目標電流値を設定することができないので、ブラシレスモータを始動時に回転させることができない。このため、ブラシレスモータの始動時においては、始動トルクを発生させるために必要な電流値から時間経過とともに前記電流値が減衰する始動時転流目標電流値により、始動時における転流指令を出力させるための始動時補償手段がモータ制御装置に具備されているので、ブラシレスモータはその始動時において、負荷トルクに打ち勝つために充分な電機子電流を電機子巻線に通電させることができるため、始動時においてもブラシレスモータを始動トルクに対応して適確に、かつ、ソフト的に始動させることができる。即ち、前記始動時転流目標電流値は、始動時補償手段によって始動時の負荷トルク条件により設定することができるので、センサレス駆動方式のブラシレスモータをその始動時においても、負荷トルクに対応して迅速・確実に始動させることができる。なお、前記の始動時において、始動時転流目標電流値は時間の経過に伴い減衰させ、定常運転時の転流目標電流値が、前記始動時転流目標電流値を上回った時点で、ブラシレスモータを定常時のセンサレス駆動方式に切換えることは云うまでもない。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1記載のブラシレスモータの制御装置において、前記モータ制御装置には、始動時転流目標電流値がブラシレスモータに通電される最大電流値を上回ったとき、異常と判断してブラシレスモータの始動を停止させる始動停止手段を備えて構成したことを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明においては、ブラシレスモータの始動時において始動時補償手段により始動時転流目標電流値を通電して始動させるものであるが、前記始動時転流目標電流値が所定の最大電流値を上回るような場合は、異常と判断して始動停止手段が作動してブラシレスモータの始動を強制的に停止させるようにしたので、ブラシレスモータは、始動時に電機子巻線に過電流が通電されることによって損傷するといった問題を確実に回避することができる。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のブラシレスモータの制御装置において、前記始動停止手段は、再始動操作を所定回数実行するためのリトライ制御手段を備えて構成したことを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明においては、始動時においてブラシレスモータの始動操作が負荷トルクの増大等によって異常と判断されたとき、リトライ制御手段を用いて再始動操作を行うように構成したので、ブラシレスモータはその始動時において異常と判断された場合、負荷等を点検してリトライ制御手段により再始動操作できるように構成したので、ブラシレスモータの始動時における運転操作を迅速・確実に、かつ、効率的に行い得るので利便である。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項1、2記載のブラシレスモータの制御装置において、前記タイマ手段には、電流サンプル指令の出力後毎に、タイマ手段をゼロリセットするゼロリセット手段を備えて構成したことを特徴とする。
【0026】
請求項8記載の発明においては、タイマ手段により電流検出回路から出力される直流電流値をサンプルとして検出する時刻までカウントした時刻を一旦ゼロに戻した後、次の電流サンプルの検出を行うようにしたゼロリセット手段を具備しているので、これにより、前回の転流周期から正確にトルク電流推定値のサンプルタイミングを設定することができるため、ブラシレスモータにおける回転数制御、定電流制御が負荷トルクの急変に対応して、円滑・良好に行うことができるという利点を備えている。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図10によって説明する。図1に示す回路図は、本発明のブラシレスモータの制御装置を実施した実施例として示すセンサレスDCブラシレスモータに使用する駆動回路(以下、ブラシレスモータ駆動回路という)1である。
【0028】
前記のブラシレスモータ駆動回路1は、例えば、井戸水を汲み上げる井戸用ポンプとか、エアコンの室外ファン等負荷トルクが急変する電気機器の駆動装置として用いるブラシレスモータのセンサレス駆動回路として使用するもので、駆動対象のブラシレスモータ51は、永久磁石の界磁を回転子とし、3相の電機子巻線を固定子とした、いわゆる表面磁石形のブラシレスモータをはじめ、回転子に永久磁石を埋め込んだ埋め込み磁石形のブラシレスモータが該当するものであり、これら各ブラシレスモータ51に、その駆動制御手段として前記ブラシレスモータ駆動回路1を用いるようにしたものである。
【0029】
次にブラシレスモータ駆動回路1の構成について説明する。図1において、ブラシレスモータ駆動回路1は、大別すると、整流・平滑回路2と、制御電源回路3と、電流検出回路4と、モータ制御装置5と、通電制御回路6と、インバータ回路7と、過電流検出回路8と、リセット回路9とによって構成されている。
【0030】
つづいて、前記ブラシレスモータ駆動回路1を構成する各回路、装置について説明する。最初に整流・平滑回路2は、交流電源10をダイオードブリッジ2aと平滑コンデンサ2bとによって整流・平滑し、制御電源回路3及びインバータ回路7に、例えば、140Vの直流電源を供給するように構成されている。制御電源回路3は、例えば、リンギング・チョーク・コンバータ方式のスイッチング電源3aを具備して構成されており、前記各回路、装置にこれら各回路等を駆動させるための制御電源(例えば、5V)を供給する。
【0031】
電流検出回路4は、ブラシレスモータ51の図示しない電機子巻線に流れる電機子電流を電圧に変換して検出する回路で、整流・平滑回路2の出力端とインバータ回路7との間に挿入接続したシャント抵抗4aと、シャント抵抗4aにて検出した電圧を所定電圧に増幅する増幅回路4bとによって構成されており、電機子巻線に流れる電機子電流を前記シャント抵抗4aにて検出し、これを増幅回路4bにより増幅された直流電流を直流電流値としてモータ制御装置5に出力するように構成されている。また、図4は、ブラシレスモータ51の定常運転時における電流検出回路4から出力される直流電流値の出力波形を示すもので、前記直流電流値は、電機子巻線の通電相を切換えるための転流周期の決定及び定電流・回転数制御を行うためのベースとして使用するものである。
【0032】
モータ制御装置5は、例えば、16ビットシングルチップマイクロコンピュータからなり、そのワンチップの大規模集積回路には、例えば、8ビットのA/D変換器をはじめ各種の制御手段等、ブラシレスモータ51を駆動制御させるのに必要な種々な機能が組み込まれており、これら各制御機能は、前記各種の制御手段(後述)をソフトウェア処理するための、例えば、センサレス制御プログラムと、電流制御プログラムと、速度制御プログラムと、異常検知プログラムとによって駆動制御される。
【0033】
通電制御回路6は、モータ制御装置5からの出力をインバータ回路7へ分配して出力するための回路で、所定数の論理積(アンド)回路を用いて構成されており、この通電制御回路6は、前記モータ制御装置5からの出力をインバータ回路7に順次分配して出力させるとともに、後述する過電流検出回路8にブラシレスモータの最大定格によって決定した最大電流値以上の過電流値が入力されたとき、前記過電流検出回路8は、その出力端から瞬時にモータ制御装置5と通電制御回路6とに出力停止指令を出力し、インバータ回路7に過電流が流れるのを阻止させるものである。
【0034】
次にインバータ回路7について説明する。このインバータ回路7は、ブラシレスモータ51の3相(U相、V相、W相)の電機子巻線に、例えば、140Vの直流電圧を各相毎に順次通電・切換するための回路である。そして、このインバータ回路7の整流・平滑回路2のプラス側入力端には、3つのトランジスタu、v、wのコレクタ端子がそれぞれ接続されており、また、整流・平滑回路2のグランド側入力端には、3つのトランジスタx、y、zのエミッタ端子をそれぞれ接続し、これら各トランジスタu、v、w、x、y、zにより、3相の電機子巻線に対応した3つのアームが形成されている。前記各トランジスタu〜zは、それぞれ通電制御回路6の所用の出力端子とそれぞれ接続されており、前記通電制御回路6からの出力に応じてオン・オフ制御できるように構成されている。なお、各トランジスタu〜zのコレクタ・エミッタ間には、各トランジスタu〜zのオン・オフ時にブラシレスモータ51の電機子巻線に生じる逆起電力作用に起因する電流を環流させるための図示しない所要数のダイオードが、それぞれ逆並列に接続されている。
【0035】
過電流検出回路8は、一方を電流検出回路4のシャント抵抗4aの出力端に接続して他方を接地した増幅回路8aと、この増幅回路8aからの出力端に入力端を接続したラッチ回路8bとによって構成されており、ブラシレスモータ51の電機子巻線に流れる電機子電流を電流検出回路4のシャント抵抗4aにより検出し、前記検出した直流電流値が、あらかじめ設定した過電流値に達した場合、これを検出してラッチ回路8bにて保持するとともに、ラッチ回路8bからモータ制御装置5と通電制御回路6とに、これらモータ制御装置5、通電制御回路6から出力される出力信号がインバータ回路7に出力されるのを瞬時に停止させる過電流信号を出力して、電機子巻線に過電流が流れるのを阻止するものである。即ち、ブラシレスモータ51の運転を強制的に停止させて、ブラシレスモータ51が過電流によって損傷するのを防ぐ。
【0036】
リセット回路9は、例えば、アナログスイッチ9aと、リセット用IC素子9bとによって構成されており、前記過電流検出回路8が作動してモータ制御装置5と通電制御回路6とが過電流信号の入力によって出力停止となった場合において、前記過電流が消滅してブラシレスモータ駆動回路1が正常状態に戻った場合、前記モータ制御装置5と通電制御回路6にリセット信号をそれぞれ出力して、モータ制御装置5のマイクロコンピュータを初期化し、次のブラシレスモータ51の再駆動に対処できるようにしたものである。
【0037】
次に、前述したモータ制御装置5の構成を図2、3によって説明する。このモータ制御装置5は前述したように、その動作は前述したモータ制御プログラムによって制御機能を構成する各制御手段を作動させることにより、ブラシレスモータ51の駆動制御を行うように構成されており、その前提となる前記モータ制御プログラムは、概略次のプログラムを具備している。
【0038】
(1)センサレス制御プログラム
このプログラムは、ブラシレスモータ51の電機子巻線の通電相に流れる電機子電流波形により、各通電相を切換えるための転流周期を決定して、ブラシレスモータ51の回転を円滑に制御するものである。
(2)電流制御プログラム
このプログラムは、所定の電流でブラシレスモータ51を駆動させるもので、電流偏差(指令電流値と電機子巻線に通電される電流の差)によって、PWM通電幅指令値(PWM制御信号)を決定するものである。
(3)速度制御プログラム
このプログラムは、事前に設定した速度指令値に従って、ブラシレスモータ51を運転させるもので、回転数偏差(速度指令値とモータ回転数との差)により指令電流値を求め、この指令電流値によりPWM通電幅指令値(PWM制御信号を決定して、ブラシレスモータ51を常に事前に設定した速度指令値にて駆動制御させるものである。
(4)異常検知プログラム
このプログラムは、事前に設定したブラシレスモータ51の速度指令値(回転数)と、この速度指令値を維持させる指令電流値が、あらかじめ設定した最大電流値を上回った場合に運転異常を検出し、ブラシレスモータ51への通電を直ちに停止させるようにしたものである。
【0039】
つづいて、モータ制御装置5の制御機能を構成する各制御手段等について説明する。最初に、図2においてモータ制御装置5のA/D変換器21は、電流検出回路4により検出した直流電流値をデジタル値に変換するもので、前記デジタル値の数値は、事前に電流検出回路4の増幅回路4bから出力される電圧をベースにして求めることができる。
【0040】
即ち、増幅回路4bに入力される電流を例えば、4Aとし、また、A/D変換器21(8ビット)はそのフルスケール値が255であることから、前記フルスケールのときの入力電圧を5Vとした場合、A/D変換器21において電流を電圧に変換するときの比例定数KをK=0.2とする。前記のデータを基にして増幅回路4bからの出力電圧を求めると、V=0.2×4=0.8Vとなる。この出力電圧0.8Vをフルスケール時の入力電圧(5V)で除算すると、0.8(V)/5(V)=0.16となる。この0.16の数値をフルスケール値255で乗算すると、0.16×255=40.8となり、この40.8の小数点以下を切捨てた値、即ち、40となる数値がA/D変換器21から出力されることになる。
【0041】
前記A/D変換器21から出力される前記数値(40)をベースにして、電機子電流算出手段22により後述するサンプルホールド手段23に保持・記憶される電流値を次式[数1]を用いて算出する。
【0042】
【数1】
Figure 0004146748
【0043】
ここで、
i:A/D変換器21から出力する数値(D)にて算出した直流電流値Idc
K:A/D変換器21において電流を電圧に変換する場合の比例定数
Vmax:フルスケール時の入力電圧
Dmax:フルスケール値
【0044】
前記電機子電流算出手段22は、[数1]に示す〔1〕式に、A/D変換器21から出力される数値Dを求める場合に使用した各データ、即ち、段落番号[0040]に記載した数値を代入して演算処理することにより、A/D変換器21から出力される数値Dに対応する直流電流値Idcを算出するものである。
【0045】
【数2】
Figure 0004146748
【0046】
となり、前記電機子電流算出手段22にて算出された直流電流値Idc(4A)が、後述するサンプルホールド手段23に入力される。
【0047】
つづいて、前記サンプルホールド手段23の役割について説明する。このサンプルホールド手段23は前記のように、A/D変換器21から順次出力される数値に基づき演算処理して算出した直流電流値Idcを、所定のサンプル時刻ts毎に保持・記録するための手段で、前記サンプル時刻毎に保持する直流電流値Idcをトルク電流推定値Iqとする。前記サンプリングの時刻tsは、前回の電機子巻線に流れる電機子電流の通電相切換周期(以下、転流周期Tという)Tn-1から演算処理して決定するものである。
【0048】
即ち、本発明においてサンプル時刻tsの設定は、ひとつ前(前回)の転流周期Tn-1に、サンプリング係数Ktを乗じて決定している。なお、サンプリング係数Ktは、0<Kt<1の範囲で対象となる電動機の特性によって決定すればよく、サンプル時刻tsの算出は次式〔2〕の[数3]によって算出する。
【0049】
【数3】
Figure 0004146748
【0050】
ここで、
n:転流回数
Kt:サンプリング係数
前記[数3]に示す〔2〕式によってサンプル時刻tsを算出し、t=tsとなった時点でのA/D変換器21から出力される数値により演算処理して算出した直流電流値Idcをトルク電流推定値Iqとしてサンプルするものである。ここで、tは電機子巻線の所定の通電相における転流周期Tが終了した時刻を示すものである。前記トルク電流推定値Iqは、電機子巻線の通電相の転流周期T毎に発せられる転流指令の時点から、前記サンプル時刻ts後の直流電流値Idcの大半がトルク寄与成分になると推定してサンプルした電流値Iqを表わしている。
【0051】
次に転流目標電流値演算手段24について説明する。この演算手段24は、前記サンプルホールド手段23によって保持・記憶した直流電流値Idcにおけるトルク電流推定値Iqを定数倍して、これを定常時転流目標電流値Isfの初期値とする機能と、前記初期値を時間の経過とともに順次低減する機能とを備えており、この転流目標電流値演算手段24によりトルク電流推定値Iqをベースにして、前記定常時転流目標電流値Isfを[数4]に示す次式により求めるものである。
【0052】
【数4】
Figure 0004146748
【0053】
ここで、
Ks:速度の関数
Iq:トルク電流推定値
τd:低減時定数
ta:サンプル時刻からの時間
但し、サンプル時刻の度にta=0にリセットする。
前記[数4]に示す〔3〕式で算出した定常時転流目標電流値Isfは、常時電機子電流算出手段22にて算出された直流電流値Idcと、次に説明する転流指令出力手段25にて比較される。
【0054】
前記した転流指令出力手段25は、ブラシレスモータ51の電機子巻線に通電される電機子電流の通電相を切換える機能、即ち、各通電相の転流周期Tを設定して転流指令を出力するものである。これは、ブラシレスモータ51の電機子巻線の各通電相への通電をタイミングよく切換えることにより、ブラシレスモータ51の駆動を良好に継続させる。そして、前記所定通電相の転流周期Tは、定常時転流目標電流値Isfと、電機子電流算出手段22から転流指令出力手段25に入力される直流電流値Idcとが一致したとき、あるいは、直流電流値Idcが定常時転流目標電流値Isfを上回ったとき、電機子巻線の通電相を切換(転流)えるものである。
【0055】
サンプル時刻演算手段26は、ブラシレスモータ51の電機子巻線の通電相を切換えたときの転流周期T、即ち、前回の転流周期Tn-1にサンプリング係数を乗じてサンプル時刻tsを演算処理(算出)する機能を備えており、この演算処理により得られたサンプル時刻ts毎に、電機子電流算出手段22から出力される直流電流値Idcをサンプルホールド手段23によりサンプルホールドするものである。なお、サンプル時刻tsの演算処理は前記した[数3]にて行われるため、その説明は重複するので割愛する。
【0056】
タイマ手段27は、前記サンプル時刻演算手段26により演算処理して算出された時刻ts毎に、サンプルホールド手段23に直流電流値Idcをサンプルホールドする指令を出力する機能を備えており、このタイマ手段27の存在によってサンプルホールド手段23は、事前に設定した時刻ではなく、常に、各通電相における最適な切換周期(転流周期T)毎において、確実に直流電流値Idcをホールドして転流目標電流値演算手段24に出力させることができるので、各通電相における転流指令は最適な時刻を選定して行うことができる。なお、前記タイマ手段27には、電流サンプル指令を出力する毎に、タイマ手段27をゼロリセットするゼロリセット手段(図示せず)が具備されている。
【0057】
つづいて、回転数算出手段28は、電機子電流算出手段22から出力された直流電流値Idcをベースとして算出するもので、図4に電機子電流算出手段22から順次出力される電流波形図にて示す如く、直流電流値Idcの周期をカウント手段(図示せず)にてカウントし、このカウント数値から1周期の時間を、例えば、t秒とすることによってブラシレスモータ51の現時点における回転数(回転速度)を算出するもので、その算出式は[数5]に示す式を用いる。
【0058】
【数5】
Figure 0004146748
【0059】
ここで、
P:ブラシレスモータの極数
t:出力波形の1周期の時間(秒)
前記[数5]に示す算出式によってブラシレスモータ51の毎分の回転速度を算出するものである。
【0060】
次に定電流・回転数制御手段29について説明する。この定電流・回転数制御手段29は、前記回転数算出手段28により算出したブラシレスモータ51の回転速度と、事前に設定した回転速度(速度指令値)とを比較し、常にブラシレスモータ51の回転速度を速度指令値と一致させるように電機子巻線に通電される電機子電流の指令電流値i0を制御するように構成されている。
【0061】
また、前記定電流・回転数制御手段29においては、ブラシレスモータ51の駆動中に負荷トルクが変動して電機子巻線の各通電相に流れる電機子電流が増加し、この結果、電機子巻線の温度が上昇し、所定の設定温度を超えたような場合に発生する電機子巻線の焼損や回転子に設けた永久磁石の脱磁現象を防ぐために、事前に電機子巻線に流れる電機子電流の最大値を設定し、電機子電流算出手段22から出力される直流電流値Idcが最大電流値を超えないように定電流制御を行うように構成されている。
【0062】
従って、電機子巻線に通電される電機子電流が、負荷の増大により急上昇するような場合は、未然に回転子の回転速度を速度指令値より低下させて、電機子巻線に通電される電機子電流の増大を阻止して定電流制御が行えるように設けられている。この結果、ブラシレスモータ51の運転中に負荷トルクが急変した場合でも、前記定電流・回転数制御を行うことにより、ブラシレスモータ51を常に所定の回転速度で円滑に駆動制御させることが可能となる。
【0063】
PWM制御手段30は、転流指令出力手段25からの出力によって作動し、かつ、前記定電流・回転数制御手段29からの出力(電圧指令値Vq)によってパルス幅を変調し、この変調したパルス幅の信号をPWM制御信号としてインバータ回路7に出力し、インバータ回路7の所要のトランジスタu〜zのベースを、所要パルス幅に整定されたパルス信号によってオン・オフ動作を制御することにより、ブラシレスモータ51を任意の速度指令値により駆動制御させるものである。
【0064】
始動時補償手段31は、ブラシレスモータ51の始動時に、ブラシレスモータ51が充分な始動トルクが得られるように設けたものである。ブラシレスモータ51は定常時のセンサレス駆動方式においては、定常時転流目標電流値Isfを定めることができず、この結果、始動させることが不可となる。このため、ブラシレスモータ51においては、その始動時のみ始動時転流目標電流値Isbを用いてこれを転流目標値とする。即ち、ブラシレスモータ51においては、その始動時に強制的に始動時転流目標電流値Isb(負荷によって個々に異なるものの、ブラシレスモータ51に通電される最大電流値を目安に設定することは云うまでもない)に基づく電流を電機子巻線に通電してブラシレスモータ51を起動させるものである。なお、前記始動時転流目標電流値Isbは、時間の経過とともに低減し、定常時の転流目標電流値Isfが始動時転流目標電流値Isbを上回ったとき、定常時におけるセンサレス駆動方式に切換えるように構成されている。
【0065】
次に、前記のように構成されたブラシレスモータ駆動回路1の動作について説明する。最初に、ブラシレスモータ51の始動について説明する。ブラシレスモータ51の駆動は、転流周期Tをベースにして算出したサンプル時刻ts後にサンプルホールド手段23にて保持・記憶する直流電流値Idcをトルク電流推定値Iqとみなして転流目標電流値Isを決定する方式においては、最初の通電モードにおける前記転流目標電流値Isが不定、即ち、始動時におけるサンプル時刻tsが不定となり、この結果、転流目標電流値Isを設定することができず、ブラシレスモータ51は始動不能となる。
【0066】
本発明においては、前記の回避策として時間経過に伴い暫時電流値が低下する始動電流指令値(始動時転流目標電流値Isb)を設定して、ブラシレスモータ51の始動初期における転流(電機子巻線の通電相切換)を行うようにした。前記始動時転流目標電流値Isbは、始動時の負荷条件によって事前に設定するもので、本件発明では、図2に示すモータ制御装置5に具備した始動時補償手段31がその役目を担っている。
【0067】
図5、7において、ブラシレスモータ51の始動処理について説明する。始動に際しては、図2に示すPWM制御手段30において、PWMのキャリア周波数、通電比率(デューティサイクル)を初期値として設定するとともに、始動時補償手段31においては、転流目標電流値Isとして始動時転流目標電流値Isbを代入(設定)した後、通電を開始する(図7のステップS1〜S3参照)。
【0068】
これは、始動時において、キャリア周波数、デューティサイクルを低く設定することにより、電流を滑らかに、かつ、順次増加させてブラシレスモータ51のソフトスタートを実現するためのものである。また、始動時転流目標電流値Isbを設けて始動初期の転流を行うことは、負荷に大きな負担、例えば、ブラシレスモータをポンプの駆動源に使用した場合、水の抵抗、ゴミ等の存在によりインペラに大きな負荷が加えられていたり、あるいは、エアコンの室外機を駆動する場合、ファンに逆風等の外乱が加わり負荷が必要以上に増加している場合を想定してのことである。
【0069】
通電が開始されると、交流電源10が整流・平滑回路2を介して制御電源回路3とインバータ回路7に通電される。制御電源回路3からは、5Vの直流電源がモータ制御装置5をはじめ、各回路に供給される。前記モータ制御装置5は直流電源(5V)の通電に伴い作動し、始動時補償手段31によって設定された始動時転流目標電流値Isbにより転流指令手段25→PWM制御手段30を経てインバータ回路7にPWM制御信号を出力し、インバータ回路7の、例えば、トランジスタu、yをオンし、ブラシレスモータ51の電機子巻線のU相からV相へ電機子電流が通電される。この結果、ブラシレスモータ51の駆動が開始される。
【0070】
前記ブラシレスモータ51に通電された電機子電流は、電流検出回路4のシャント抵抗4aに検出され、電圧変換されてモータ制御装置5のA/D変換器21に出力される。電流検出回路4によって検出された直流電流値Idcは、A/D変換器21によってデジタル値に変換されるとともに、前記デジタル値に変換された数値は電機子電流算出手段22に出力され、前記A/D変換器21にて設定された数値をベースにして電機子電流算出手段22は、[数1]により演算処理して直流電流値Idcを算出し、この直流電流値Idcをサンプルホールド手段23と転流指令手段25に出力する。
【0071】
サンプルホールド手段23に入力された直流電流値Idcは、サンプル時刻演算手段26により[数3]に示す〔2〕式により演算処理して算出したサンプル時刻tsが、タイマ手段27から電流サンプル指令が出力される毎に保持・記憶する。このサンプルホールド手段23は前記記憶・保持される直流電流値Idcをトルク電流推定値Iqとしてサンプルするものである。なお、タイマ手段27は、前記電流サンプル指令の出力後ゼロリセット手段(図示せず)により、一旦リセットされて次の電流サンプル指令の出力に備えている。
【0072】
前記サンプルホールドされたトルク電流推定値Iqは次の転流目標電流値演算手段24に出力され、この演算手段24によって始動時転流目標電流値Isbを求める。そして、前記転流目標電流値演算手段24により求めた始動時転流目標電流値Isbが、電機子電流算出手段22から転流指令出力手段25に出力される直流電流値Idcと比較し、Isb<Idcでなければ、転流指令出力手段25は転流指令をPWM制御手段30に出力しない。この場合は、再度始動時転流目標電流値Isb及び定常時転流目標電流値Isfの演算処理を行うことは云うまでもない。
【0073】
前記とは逆に、Isb<Idcとなれば、転流指令出力手段25よりPWM制御手段30に転流指令が出力され、PWM制御手段30からは、インバータ回路7のオンされていたトランジスタu、yに代って、トランジスタu、zをオンさせるPWM制御信号を出力し、電機子巻線のU相からV相に流れていたブラシレスモータ51の電機子電流がU相からW相へ転流される(図7のステップS4〜S6参照)。
【0074】
図5は前記したブラシレスモータ51の始動時における転流タイミングの状況を示す波形図で、図5から判明するように、始動時転流目標電流値Isbは時間の経過とともに減衰するように構成されている。そして、転流目標電流値Isは、始動時転流目標電流値Isbと定常時転流目標電流値Isfのいずれか大きな値が選択されるものの、一度定常時転流目標電流値Isfが始動時転流目標電流値Isbを上回った時点でIs=Isfとなる。しかし、前記したように、ブラシレスモータ51の始動時における定常時転流目標電流値Isfは不定のため、始動時転流目標電流値Isbが転流目標電流値Isとなる。
【0075】
そして、転流指令(転流周期T)は、転流目標電流値Is(始動時転流目標電流値Isb)と直流電流値Idcとが転流指令出力手段25により比較され、直流電流値Idcが転流目標電流値Isに達した時点で転流処理が行われる。この結果、前記のように、直流電流値Idcが転流目標電流値Isを超えるまでの間は、図5に示す波形図の如く、繰返し始動時転流目標電流値Isbと定常時転流目標電流値Isfを計算し、いずれか大きな値が選択される。なお、転流周期Tは転流の都度タイマ手段27によってT=0にリセットされ、始動時転流目標電流値Isbは通電開始からの時間によって計算されることは云うまでもない(図7のステップS6〜S12参照)。
【0076】
図5において、定常時転流目標電流値Isfが始動時転流目標電流値Isbと同等もしくは上回ったとき、即ち、図7のステップS8において、Isf≧Isbとなった時点でブラシレスモータ51は始動時の運転状態から、定常時の運転状態に移行するものである(図7のステップS8、S13参照)。
【0077】
このように、ブラシレスモータ51はその始動時、事前に設定した始動時転流目標電流値Isbをベースにして転流周期Tを設定し、かつ、PWM制御手段30においては、そのキャリア周波数を低く設定して電機子巻線に通電する電機子電流を徐々に滑らかに増加させ、しかも、通電比率は通電開始が定常運転に至る間に0から徐々に増大させて駆動させるようにしたので、負荷トルクに対応して円滑に始動させることができる。
【0078】
次に、ブラシレスモータ51の定常運転状態を図6、8において説明する。前記したように、ブラシレスモータ51の始動運転時から定常運転時に移行した場合においても、基本的には定常時転流目標電流値Isfを算出して転流周期を設定することにより、速度指令値にて設定した回転速度(回転数)を維持させてブラシレスモータ51の駆動を行うものである。
【0079】
図8において、定常時転流目標電流値Isfと直流電流値Idcとを比較し、直流電流値Idcが定常時転流目標電流値Isfに達した時点で転流を行い、電機子巻線の通電相を切換える(図8のステッS22参照)。この場合、直流電流値Idcが定常時転流目標電流値Isfに達していない場合は、定常時転流目標電流値Isfを再度計算し、直流電流値Idcと定常時転流目標電流値Isfとの比較を繰り返す(図8のステップS20、S21参照)。前記の状況は図6の(a)〜(e)に示す転流タイミングの波形図によって明らかである。
【0080】
転流後、図8のステップS23、S24によって次の電流サンプル指令までのタイマ時間を、[数3]に示す〔2〕式を用いて算出する。そして、前記サンプル時刻tsに到達したら、図8のステップS25に移行してトルク電流推定値Iqをベースにして[数4]に示す〔3〕式により定常時転流目標電流値Isfを設定する。このフローチャートに従い転流指令を出力し、電機子巻線の通電相の切換を行うもので、これらの説明については、既に、[数3]、[数4]に示す〔2〕、〔3〕の式によってサンプル時刻ts、定常時転流目標電流値Isfを演算処理して算出するところで説明したので、詳細な説明は省略するが、本発明においては、単に定常時転流目標電流値Isfを算出して転流タイミングを設定するのではなく、前記の転流タイミングは、常に電機子巻線に通電される電機子電流が回転トルクに寄与している最適な時刻に、トルク電流推定値Iqとして前記通電電流をサンプルし、このトルク推定電流値Iqをベースにして定常時転流目標電流値Isfを算出して、ブラシレスモータ51の転流タイミングを設定することができるようにしたので、ブラシレスモータ51は常に負荷の変動に対応して速度指令値の回転速度(回転数)を維持して駆動することができる。
【0081】
この結果、図8のステップS26において、ブラシレスモータ51の電機子巻線に通電される電機子電流が事前に設定した最大電流値に比べて大きいか、小さいかを比較し、図8のステップS27において大きい場合は(負荷の増加)、図3に示す定電流・回転数制御手段29に設定した定電流制御手段が作動して、電機子巻線に通電される電機子電流を抑制し、電機子巻線が過電流によって焼損するのを未然に阻止する。この場合、通電電流が抑制されるため、ブラシレスモータ51の回転速度(回転数)は制御された電流によって制限されることは云うまでもない。
【0082】
また、図8のステップS26において、電機子巻線に通電される電流が最大電流値より小さい場合は、ステップS28に移行し、図3に示す回転数算出手段28にて算出した回転数を、速度指令値にて事前に設定した回転数に一致させるべく、定電流・回転数制御手段29に設定した回転数制御手段が作動して、速度指令値に設定した回転速度が得られるように電流を通電制御させて電機子巻線に通電するように構成されているため、ブラシレスモータ51は常に負荷トルクに対応して所定の速度指令値の回転速度で円滑に駆動させることができる。
【0083】
次に、前記したブラシレスモータ51の定電流・回転数制御処理の詳細は、図9に示すフローチャートに記載した通りのものである。前記の定電流・回転数制御の基本は、本発明のブラシレスモータ駆動回路1が電流波形規範形センサレスドライブ方式を採用している関係上、インバータ回路7の接地側に挿設した電流検出回路4のシャント抵抗4aにより検出した検出電流が、ブラシレスモータ51の回転子の回転位置検出に係る唯一の情報源としているので、ブラシレスモータ51における回転速度(回転数)検出も電機子巻線の通電相を切換えるための転流周期Tから算出している。
【0084】
この結果、図3に示すように、例えば、負荷(井戸用ポンプ等)が最大定格出力以下で運転しているような場合は、回転数算出手段28を有する回転速度制御ループにより負荷の定速運転を実施し、また、負荷の運転中に最大定格出力を超えた場合には、ブラシレスモータ51の保護を図るために、電機子電流算出手段22を有する定電流制御(定出力制御)のみを用いた電流制御ループによって、ブラシレスモータ51の運転を実施している。
【0085】
前記における定電流・回転数制御処理を図9によって説明する。図9のステップS30において、ブラシレスモータ51の転流周期Tをベースにして回転子の回転数rpmを[数5]に示す〔4〕式によって算出する。前記算出した回転数rpmをステップS31において、PWM制御手段30のキャリア周波数変更閾値と同等(大きい)か、否かを比較し、同等の場合は、PWM制御手段30のキャリア周波数を上昇させ、否の場合はキャリア周波数を引下げる。
【0086】
次に、図9のステップS34に移行し、速度指令値rpm0と現在の回転速度(回転数)rpmとの差における回転数偏差値rpmeを算出する。そして、この回転数偏差値rpmeから現在の指令電流値i0をステップS35にて算出する。この指令電流値i0はPI制御によって算出する。即ち、比例要素と積分要素とを含む演算によって前記指令電流値i0を算出するものである。
【0087】
この指令電流値i0はステップS36により最大電流値(最大定格出力)imaxと比較し、指令電流値i0が最大電流値imaxと同等か超える場合は、前記指令電流値i0を最大電流値imaxとする。この時点で、結果的に定電流制御を実行することになる(図9のステップS37参照)。この後、ステップS38に移行し、指令電流値i0と現在のトルク電流推定値Iq(電機子電流算出手段22にて算出)との差を求め、その求めた値を電流偏差ieとする。
【0088】
前記ステップS38により算出した電流偏差ieによって、PWM制御手段30から出力されるパルス信号(PWM通電幅)のPWM通電幅指令値vd0をステップS39により算出する。そして、前記ステップS39にて算出して得られたPWM制御手段30から出力されるPWM通電幅指令値vd0と、PWM制御手段30から出力される事前に設定したPWM通電幅最大値vdmaxとをステップS40により比較し、PWM通電幅指令値vd0がPWM通電幅最大値vdmaxと同等か、あるいは、大きい場合、PWM制御手段30からは、PWM通電幅最大値vdmaxを限度、即ち、PWM通電幅最大値vdmaxをPWM通電指令値vd0としてステップS41においてPWM制御信号を出力し、インバータ回路7の所要トランジスタu〜zを所定時間オン・オフ制御させて、ブラシレスモータ51の回転速度(回転数)を速度指令値に適合させるように構成されている。この後、ステップS41により、前記電機子巻線に流れる電機子電流を通電制御しながら、回転子の回転速度値を個々に調整して、ブラシレスモータ51を所定の速度指令値にて回転を継続させるものである。
【0089】
以上説明したように、本発明において定電流・回転数制御手段29は、図3に示すように、電流検出回路4によって検出した電機子巻線に流れる電機子電流をベースにして、これをモータ制御装置5にプログラム設定した電流制御プログラムと、速度制御プログラムにて作動する電機子電流算出手段22と、回転数制御手段28とにより算出した指令電流値i0や現在の回転速度(回転数)rpmを、それぞれ事前に設定した最大電流値imax、回転数目標値(速度指令値)rpm0と適応させるべく制御可能に構成されているので、ブラシレスモータ51は、負荷変動に対応して回転数を回転数目標値rpm0に一致させるように制御し、かつ、指令電流値i0が最大電流値imaxを超えようとした場合は、指令電流値i0を最大電流値imaxの範囲内に保持することができるため、負荷トルクが急変する場合においても、適切に定電流・回転数制御が行い得、ブラシレスモータ51を安定して駆動することができる。
【0090】
また、前記したモータ制御装置5においては、図10のフローチャートで示すように、ブラシレスモータ51の異常検知の処理機能(始動停止手段)も具備されている。この異常検知によってブラシレスモータ51の始動を停止させる始動停止手段は、主にブラシレスモータ51の起動時に発生する不測の事態を未然に回避するために設けられている。
【0091】
以下、始動停止手段を有する異常検知処理の内容を図10のフローチャートによって説明する。なお、ブラシレスモータ51の始動処理は、既に図7によって詳細に説明したので省略する。ブラシレスモータ51を図10のステップS51により始動させ電機子巻線の通電相を切換えるための転流周期T(時間)を、ステップS52により転流指令が出力される毎に計測し、前記転流指令に要する時間が、ブラシレスモータ51の最高回転速度時における転流周期Tの時間より小さいか、大きいかを次のステップS53に判断する。
【0092】
図10のステップS53にて始動時の転流周期Tが最高回転速度時の転流周期Tより小さいと判断されたときはステップS54に移行し、始動処理は一旦停止する。一方、始動時の転流周期Tが最高回転速度時の転流周期Tより大きい場合、即ち、ブラシレスモータ51の始動時は負荷が停止している関係上図5に示すように、始動時転流目標電流値Isbにて起動させているため、その転流周期Tは必然的に大きく(電機子巻線の通電相切換には時間を要する)なる。しかし、ブラシレスモータ51は定常時運転に変換されると回転速度も速くなる結果、転流周期T(電機子巻線の通電相の切換時間は早くなる)は当然小さくなる。
【0093】
前記により始動時の転流周期Tが最高回転数の転流周期Tより大きいときは、ステップS55に移行してトルク電流推定値Iqを検出する。このトルク電流推定値Iqは、ブラシレスモータ51の始動時においては、実質的に始動時転流目標値Isbに相当し、このトルク電流推定値Iqと事前に設定した最大トルク電流推定値(最大電流値Imax)とをステップS56にて比較する。
【0094】
ステップS56により比較した結果、トルク電流推定値Iqが小さいときは、次のステップS57、S58に移行し、ブラシレスモータ51をセンサレス制御して始動させるとともに、始動後において定常時転流目標電流値Isfが始動時転流目標電流値Isbを上回った時点で、定常運転に移行し、ブラシレスモータ51は定電流・回転数制御手段29により駆動制御されて回転を継続する。逆にトルク電流推定値Iqが最大トルク電流値を上回るようなときは、過電流値に達したと判断し、ステップS54に移行する。
【0095】
即ち、ステップS53、S56にて否と判定された場合は、ステップS54に移行し、ブラシレスモータ51は起動せず、停止状態にある。この場合は、モータ制御装置5の始動停止手段に設けた図示しないリトライ制御手段を操作し、再始動処理を実行する。この場合、リトライ制御手段の操作を例えば、3回繰り返してブラシレスモータ51が始動すれば問題ない。しかし、リトライ制御手段を3回操作してもブラシレスモータが再始動できない場合は、ステップS61にて異常と判断しブラシレスモータ51の始動を中止する。
【0096】
この始動中止は、ブラシレスモータ51の故障か、あるいは、負荷に問題があって始動処理が行えないもので、この異常判断によってブラシレスモータ51の始動時に無理に通電を行うことにより、ブラシレスモータ51が焼損するという問題を未然に回避することができる。なお、前記モータ制御装置5のプログラムで対応できない瞬間的な過電流に対しては、ブラシレスモータ駆動回路1に設けた過電流検出回路8にてこれを検出し、直ちにモータ制御装置5と通電制御回路6に過電流検出信号を出力して動作中の処理を停止するように構成されているので、ブラシレスモータ51が過電流によって検知するのを良好に回避することができる。
【0097】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように、ブラシレスモータをセンサレスにて駆動制御するモータ制御装置は、ブラシレスモータの電機子巻線における転流指令を、電流検出回路にて検出した直流電流値をモータ制御装置においてトルク電流推定値として転流目標電流値に演算処理し、これを電流検出回路にて検出された直流電流値と比較処理することにより瞬時に出力される結果、最適な転流タイミングにより転流指令を出力することが可能となり、ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流の通電相切換は常に最適な時期で円滑に行い得、これにより、ブラシレスモータの回転制御を円滑・良好に、かつ、高効率で行うことができる。従って、ブラシレスモータの運転中に負荷トルクが急変した場合においても、適切なタイミングで転流指令を出力することができるので、ブラシレスモータを常に所定の回転速度にて安定した状態で駆動させることができる。
【0098】
また、本発明においては、モータ制御装置に定電流・回転数制御手段を採用するようにしたので、ブラシレスモータは、自体の回転速度と事前に設定した回転速度の速度指令値とを常に比較して、ブラシレスモータの回転速度を速度指令値と一致させるように回転数制御を行い、しかも、負荷の増大により通電電流が増加して、ブラシレスモータの温度を上昇させたり、ブラシレスモータの回転子に設けた永久磁石が脱磁する等の問題を回避するために、電機子巻線に通電される最大電流値を事前に設定し、電流検出回路にて検出される直流電流値が前記最大電流値を超過するのを阻止して定電流制御を行うようにしたので、ブラシレスモータは、その運転中に負荷トルクの急変によりトルク変動が生じたとしても、適切な転流作用により、常に所定の回転速度で安定した状態での駆動を実現することができる。
【0099】
更に、本発明においては、始動時の転流指令を出力させる始動時補償手段がモータ制御装置に具備されているので、ブラシレスモータはその始動時、始動トルクを発生させるために充分な電機子電流を電機子巻線に通電させることができるため、始動時においてもブラシレスモータを始動トルクに対応して適確に、かつ、ソフト的に始動させることができる。しかも、ブラシレスモータの始動時においては、負荷トルク等の関係から始動時転流目標電流値が最大電流値を超えるような場合は、異常と判断してブラシレスモータの始動を停止させるとともに、異常状態が解消されれば、リトライ操作によって即座に始動操作が行い得るため、この種センサレス駆動方式のブラシレスモータを常に迅速・確実に、かつ、スムースに始動させることができるという利点も備えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブラシレスモータ駆動回路を示す回路図である。
【図2】本発明のブラシレスモータ駆動回路に設けたモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】定電流・回転数制御手段の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】電流検出回路の出力電流波形を示す波形図である。
【図5】ブラシレスモータの始動運転時において、電機子巻線に流れる電流波形を示す図である。
【図6】ブラシレスモータの定常運転時において、各手段の出力電流波形を示す図である。
【図7】ブラシレスモータの始動時の運転処理を説明するフローチャートである。
【図8】同じくブラシレスモータの定常の運転処理を説明するフローチャートである。
【図9】ブラシレスモータの定電流・回転数処理を説明するフローチャートである。
【図10】ブラシレスモータの異常状態における処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 ブラシレスモータ駆動回路
4 電流検出回路
5 モータ制御装置
6 通電制御回路
7 インバータ回路
8 過電流検出回路
21 A/D変換器
22 電機子電流算出手段
23 サンプルホールド手段
24 転流目標電流値演算手段
25 転流指令出力手段
26 サンプル時刻演算手段
27 タイマ手段
28 回転数算出手段
29 定電流・回転数制御手段
30 PWM制御手段
31 始動時補償手段

Claims (8)

  1. ブラシレスモータの複数相の電機子巻線に直流電圧を順次通電するための複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、そのインバータ回路の複数のスイッチング素子をオン・オフさせて前記ブラシレスモータを回転させる通電制御回路とを備えたブラシレスモータの制御装置において、前記ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を電圧に変換して検出する電流検出回路と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値をサンプルホールドしてトルク電流推定値を出力するサンプルホールド手段と、前記トルク電流推定値に基づいて転流目標電流値を演算処理する転流目標電流値演算手段と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値が前記転流目標電流値を上回ったとき転流指令を出力する転流指令出力手段と、前記転流指令出力後の直流電流値をサンプルとして検出する時刻を演算処理して設定するサンプル時刻演算手段と、前記サンプル時刻演算手段により設定した時刻に電流検出回路から出力される直流電流値をトルク電流推定値としてサンプルホールドさせるための電流サンプル指令を前記時刻毎に出力するタイマ手段とを備えてモータ制御装置を構成したことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  2. ブラシレスモータの複数相の電機子巻線に直流電圧を順次通電するための複数のスイッチング素子を有するインバータ回路と、そのインバータ回路の複数のスイッチング素子をオン・オフさせて前記ブラシレスモータを回転させる通電制御回路とを備えたブラシレスモータの制御装置において、前記ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を電圧に変換して検出する電流検出回路と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値をサンプルホールドしてトルク電流推定値を出力するサンプルホールド手段と、前記トルク電流推定値に基づいて転流目標電流値を演算処理する転流目標電流値演算手段と、前記電流検出回路にて検出した直流電流値が前記転流目標電流値を上回ったとき転流指令を出力する転流指令出力手段と、前記転流指令出力後の直流電流値をサンプルとして検出する時刻を演算処理して設定するサンプル時刻演算手段と、前記サンプル時刻演算手段により設定した時刻に電流検出回路から出力される直流電流値をトルク電流推定値としてサンプルホールドさせるための電流サンプル指令を前記時刻毎に出力するタイマ手段と、更に、前記ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流をあらかじめ設定した最大電流値に対して大・小を判断してブラシレスモータの回転数、あるいは、ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を制御する定電流・回転数制御手段とを備えてモータ制御装置を構成したことを特徴とするブラシレスモータの制御装置。
  3. 前記定電流・回転数制御手段は、ブラシレスモータの電機子巻線の通電相に流れる電機子電流の転流周期を検出してブラシレスモータの回転数を算出するモータ回転数算出手段を備えて構成したことを特徴とする請求項2記載のブラシレスモータの制御装置。
  4. 前記定電流・回転数制御手段は、前記電流検出回路にて検出される直流電流値に基づいてブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を算出する電機子電流算出手段を備えて構成したことを特徴とする請求項2記載のブラシレスモータの制御装置。
  5. ブラシレスモータの始動時、そのブラシレスモータの始動トルクを発生させるために充分な電流値から時間とともに前記電流値が減衰する始動時における始動時転流目標電流値を用いて転流指令出力手段からブラシレスモータ始動時の転流指令を出力させるための始動時補償手段を備えて構成したことを特徴とする請求項1、2記載のブラシレスモータの制御装置。
  6. 前記モータ制御装置には、始動時転流目標電流値がブラシレスモータに通電される最大電流値を上回ったとき、異常と判断してブラシレスモータの始動を停止させる始動停止手段を備えて構成したことを特徴とする請求項1記載のブラシレスモータの制御装置。
  7. 前記始動停止手段には、停止したブラシレスモータの再始動操作を所定回数実行するためのリトライ制御手段を備えて構成したことを特徴とする請求項6記載のブラシレスモータの制御装置。
  8. 前記タイマ手段には、電流サンプル指令の出力後毎に、タイマ手段を一旦ゼロリセットさせるためのゼロリセット手段を備えて構成したことを特徴とする請求項1、2記載のブラシレスモータの制御装置。
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