JP2004110394A - 車両用障害物検知装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】現時点での操舵角等から車両が走行すると推定される推定進行軌跡を演算する車両推定進行軌跡演算装置24、道路状況(白線,対象物)を撮影するカメラ34の画像を処理する画像処理装置32、及び、車両前方の対象物を検知するレーダ装置36を設ける。これらの装置24,32,36を用いて把握した推定進行軌跡、走行路、及び対象物に基づいて、推定進行軌跡上の対象物が危険な障害物であるか否か及び走行路上の対象物が危険な障害物であるか否かを判別する。そして、推定進行軌跡内障害物が存在しかつその障害物が走行路上に存在する場合には、走行路内障害物が存在する一方で推定進行軌跡内障害物が存在しない場合に比して重度の大きな危険が車両に生じていると判定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用障害物検知装置に係り、特に、車両進行方向に存在する障害物を検知するうえで好適な車両用障害物検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、レーダ装置を用いて自車両の前方に存在する障害物を検知する車両用障害物検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用障害物検知装置は、自車両前方に存在する障害物を検知する障害物検知手段と、車両が走行する走行路を検出する走行路検出手段と、車両が今後走行すると推定される推定進行路を検出する推定進行路検出手段と、を有している。そして、走行路上に位置する対象物が検知された状況下においてその対象物が推定進行路上にも位置する場合に、その検知対象物を車両走行上支障をきたす障害物として把握し、車両に生ずる危険を回避すべく自動制動等の安全確保動作を行う。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−57182号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置する際には、走行路と車両の操舵角に応じた推定進行軌跡とが合致しない事態が生ずる。この点、実際には走行路上に位置する一方、推定進行軌跡上に位置しない、車両にとって危険な障害物が存在することがあり、この場合においても検知対象物を確実に障害物として把握することが必要である。しかしながら、上記特許文献1に開示される装置においては、走行路上に位置する対象物が推定進行路上に位置しない場合、その対象物が障害物として把握されず、車両に危険が生じていないと判定される。このため、上記特許文献1に開示される装置では、車両がカーブ出入口近傍を走行する際に、障害物として検知すべき対象物を障害物として把握しない不都合が生じ、車両走行の安全性の確保が十分に行われていなかった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、車両が走行する上で支障をきたす障害物の判定を木目細かく的確に行うことが可能な車両用障害物検知装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、車両の走行路上に危険な障害物が存在するか否かを判別する走行路障害物判別手段と、
該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在するか否かを判別する推定軌跡障害物判別手段と、
前記推定軌跡障害物判別手段により推定進行軌跡上に存在すると判別された危険な障害物が車両の走行路上に存在するか否かを判別する障害物重畳判別手段と、
前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在すると判別される場合には、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別される場合に比して、重度の大きな危険が車両に生じていると判定する危険度判定手段と、
を備える車両用障害物検知装置により達成される。
【0007】
本発明において、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、その危険な障害物が車両走行路上に存在すると判別される場合には、車両走行路上に危険な障害物が存在すると判別される一方で、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別される場合に比して、重度の大きな危険が車両に生じていると判定される。走行路は車両が走行すべき道路であり、また、推定進行軌跡は現時点で車両が進行すると推定される軌跡であるので、推定進行軌跡上に存在する危険な障害物が走行路上に存在する場合には、走行路上に危険な障害物が存在する一方で推定進行軌跡上には危険な障害物が存在しない場合よりも、車両に生じている危険度は高くなる。従って、本発明によれば、車両が走行する上で支障をきたす危険な障害物の危険判定を木目細かく的確に行うことができる。
【0008】
尚、本発明において、「危険な障害物」とは、自車両から所定距離内に位置し、自車両の走行に影響を与えるおそれのある対象物のことである。
【0009】
ところで、危険な障害物の存在有無に基づいて車両に生ずる危険度の軽重が判定される場合には、その軽重に応じた多段階の警告を行うことが車両運転者にとって便宜である。
【0010】
従って、請求項2に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段により判定される危険度の軽重に応じた多段階の警告を車両運転者に対して行う警告手段を備えることとすれば、危険な障害物により車両に生ずる危険度の軽重を車両運転者に知らせることができる。
【0011】
この場合、請求項3に記載する如く、請求項2記載の車両用障害物検知装置において、前記警告手段は、車両運転者に対して行う警告として車両運転者の意思によらないブレーキ介入制御を実行する制動制御手段を有することとすれば、危険な障害物への車両の衝突や接触等を回避し或いはその衝突等による衝撃を軽減することができる。
【0012】
また、請求項4に記載する如く、請求項3記載の車両用障害物検知装置において、前記制動制御手段は、所定のコーナリングフォースが確保される所定減速度以上の減速度の発生が指令された際、車両の操舵角が中立状態にない場合には車両に前記所定減速度を発生させ、一方、車両の操舵角が中立状態にある場合には車両に該指令減速度をタイヤ−路面間での最大許容減速度を超えない範囲で発生させるブレーキ介入制御を実行することとすれば、制動停止距離を短くすることができる。
【0013】
また、請求項5に記載する如く、請求項3記載の車両用障害物検知装置において、前記制動制御手段は、車両が前車に追従して走行する状況下においてブレーキ介入制御を開始した後に該ブレーキ介入制御の実行を解除するときは、制動力を所定時間をかけて減少させることとすれば、ブレーキ介入制御の実行が解除された後においても車両が制動するため、その解除直後に前車との車間距離が小さくなるのを抑制することができ、その後に再度ブレーキ介入制御が実行されるのを防止することができる。
【0014】
更に、請求項6に記載する如く、請求項3記載の車両用障害物検知装置において、前記制動制御手段は、車両が前車に追従して走行する状態でない非追従走行時にブレーキ介入制御を実行する際には、実行開始から所定期間は所定のコーナリングフォースが確保される所定減速度を発生させ、前記所定期間が経過した後は、車両の操舵角が中立状態にない場合には該所定減速度を継続して発生させ、操舵角が中立状態にある場合には指令減速度をタイヤ−路面間での最大許容減速度を超えない範囲で発生させることとすれば、車両を可能な限り速やかに停止させることができる。
【0015】
尚、請求項7に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段又は前記推定軌跡障害物判別手段により危険な障害物が存在すると判別される状況下において該障害物が該車両の走行路上又は推定進行軌跡上に複数存在する場合には、該複数の障害物のうち自車両の走行に最も近くて影響を与え得る障害物に基づいて危険度を判定するのが、自車両に生ずる危険度を判定するうえで最も有効かつ適切である。
【0016】
ここで、車両の走行路は車両が走行すべき道路であり、車両が走行する蓋然性の高い道路である。また、推定進行軌跡は現時点での操舵角等から算出される車両が進行すると推定される軌跡であるので、車両がカーブ入口や出口近傍に位置する際には、推定進行軌跡が走行路に沿わない可能性が高い。このため、走行路上に危険な障害物が存在しない状況下においては推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しても、車両に危険が生じている可能性は極めて低い。
【0017】
従って、請求項8に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在しないと判別され、かつ、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され又は前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、車両に危険が生じていないと判定することとしてもよい。
【0018】
一方、走行路上に対向車両でない危険な障害物が存在する場合には、車両はその走行路を走行する可能性が極めて高いので、推定進行軌跡上に障害物が存在していなくても、車両に危険が生じている可能性が高い。
【0019】
従って、請求項9に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、該障害物が自車両に対向走行する対向車両でない場合において、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され、又は、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、軽度の危険が車両に生じていると判定することとしてもよい。
【0020】
尚、車両がカーブ出入口近傍でない直線道路やカーブ路を走行する場合には、走行路の端部近傍に存在する危険な障害物が検知されても、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないときは、車両は走行路上の障害物を回避してすり抜けできる可能性が高い。一方、車両がカーブ出入口近傍に位置する場合には、車両挙動の時間遅れに起因して推定進行軌跡が走行路に沿わない可能性が高く、車両が推定進行軌跡上を走行する蓋然性は低い。このため、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しなくても、走行路上に危険な障害物が存在するときは、走行路上の障害物に衝突する危険性が高くなる。
【0021】
従って、請求項10に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置するか否かを判別するカーブ出入口判別手段を備え、前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段の判別結果に基づいて危険度を判定することとすれば、危険度判定を木目細かく的確に行うことができる。
【0022】
この場合、請求項11に記載する如く、請求項10記載の車両用障害物検知装置において、前記カーブ出入口判別手段により車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置すると判別される状況下、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、該障害物が自車両に対向走行する対向車両でない場合において、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され、又は、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、軽度の危険が車両に生じていると判定することとしてもよい。
【0023】
また、請求項12に記載する如く、請求項10記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段により車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置しないと判別される状況下、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別される場合において、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され、又は、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、車両に危険が生じていないと判定することとしてもよい。
【0024】
また、請求項13に記載する如く、請求項10記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段により車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置すると判別され、かつ、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別された危険な障害物が前記障害物重畳判別手段により車両の走行路上に存在すると判別される状況下において、該危険な障害物を車両が通常操舵回避不可能な状態にある場合は、通常操舵回避可能な状態にある場合に比して危険度を高めることとしてもよい。
【0025】
更に、請求項14に記載する如く、請求項10記載の車両用障害物検知装置において、前記カーブ出入口判別手段は、車両の走行路の曲率と推定進行軌跡の曲率との関係に基づいて、車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置するか否かを判別することとしてもよい。
【0026】
ところで、走行路上に危険な障害物が存在する状況下、自車両の車両進行方向位置がその障害物の車両進行方向位置と一致する時点においてその障害物が走行路に対して位置する横方向位置が走行路の中央付近であれば、自車両と障害物とが接触する可能性が高く、車両における危険度は大きい。一方、その横方向位置が走行路の境界線近傍であったり或いは走行路から外れていれば、自車両と障害物とが接触する可能性は低く、車両における危険度は小さい。
【0027】
従って、請求項15に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に存在すると判別される危険な障害物の、該障害物と車両との車両進行方向位置が互いに一致すると推定される時点における該走行路に対する横方向位置に応じて異なる危険度を判定することとすれば、危険度判定を木目細かく的確に行うことができる。
【0028】
また、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在する状況下、自車両の車両進行方向位置がその障害物の車両進行方向位置と一致する時点においてその障害物が推定進行軌跡に対して位置する横方向位置が推定進行軌跡の中央付近であれば、自車両と障害物とが接触する可能性が高く、車両における危険度は大きい。一方、その横方向位置が推定進行軌跡の境界線近傍であったり或いは推定進行軌跡から外れていれば、自車両と障害物とが接触する可能性は低く、車両における危険度は小さい。
【0029】
従って、請求項16に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別される危険な障害物の、該障害物と車両との車両進行方向位置が互いに一致すると推定される時点における該推定進行軌跡に対する横方向位置に応じて異なる危険度を判定することとすれば、危険度判定を木目細かく的確に行うことができる。
【0030】
更に、推定進行軌跡外に物体が存在する状況下、自車両の車両進行方向位置がその物体の車両進行方向位置と一致する時点においてその物体が推定進行軌跡に対して位置する横方向位置が推定進行軌跡の中央付近であれば、自車両と障害物とが接触する可能性が高く、車両における危険度は大きい。一方、その横方向位置が推定進行軌跡の境界線近傍であったり或いは推定進行軌跡から外れていれば、自車両と障害物とが接触する可能性は低く、車両における危険度は小さい。
【0031】
従って、請求項17に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、車両の推定進行軌跡上に存在しない物体の、該物体と車両との車両進行方向位置が互いに一致すると推定される時点における該推定進行軌跡に対する横方向位置に応じて異なる危険度を判定することとすれば、危険度判定を木目細かく的確に行うことができる。
【0032】
ところで、車両の走行路自体が認識されない場合には、走行路障害物判別手段および障害物重畳判別手段による障害物有無の判別が不可能である。走行路上での障害物有無の判別が不可能である場合は、走行路上の障害物有無の判別に依ることなく、推定進行軌跡上での危険な障害物の存在有無に基づいて車両の危険度を判定することが適切である。
【0033】
従って、請求項18に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、車両の走行路自体が認識されない状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することとすればよい。
【0034】
また、請求項19に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、車両の走行路上に危険な障害物が存在するか否かの判別が不可能である状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することとすればよい。
【0035】
また、車両がスリップしている場合には、車両が走行路を逸脱する可能性が高く、走行路障害物判別手段による障害物有無の判別が不可能となる可能性が高い。
【0036】
従って、請求項20に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、車両にスリップが生じている状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することとすればよい。
【0037】
更に、車両が車線変更等により走行路を逸脱する場合には、車両がその走行路を走行しない可能性が高く、走行路障害物判別手段による障害物有無の判別が行われても的確な危険度判定を行うことは困難である。
【0038】
従って、請求項21に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、車両が走行路を逸脱する状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することとすればよい。
【0039】
尚、車両の推定進行軌跡上に存在する危険な障害物がほぼ静止する状況下、車両のスピン等に起因してその静止障害物が車両の検出可能領域外へ相対移動すると、車両がその静止障害物を見失い、その検出が不可能となる。この場合には、車両に生ずる危険が大きくなるとしてその後の処理を進めることが適切である。
【0040】
従って、請求項22に記載する如く、請求項18乃至21の何れか一項記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別される危険な障害物がほぼ静止する状況下で該静止障害物が検出可能領域外への相対移動に起因して推定進行軌跡上に存在しないと判別された際、判定危険度を高めることとしてもよい。
【0041】
また、推定進行軌跡上に存在する危険な障害物を車両が操舵回避可能であれば、車両に危険は生じないと判断できる。
【0042】
従って、請求項23に記載する如く、請求項18乃至21の何れか一項記載の車両用障害物検知装置において、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別される危険な障害物を車両が緊急操舵回避可能な状態にある場合に、前記危険度判定手段による車両に生ずる危険度判定を禁止する危険度判定禁止手段を備えることとすれば、車両に危険が生じていると不必要に判定されるのを防止することができる。
【0043】
ところで、車両運転者により方向指示操作がなされる場合は、車両運転者が覚醒していると判断でき、走行路上又は推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しても、車両運転者の回避操作により危険を回避できる可能性が高い。また、車両運転者の覚醒度は車速が高いほど緊張感と共に高くなる傾向にある。
【0044】
従って、請求項24に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、車両運転者により方向指示操作がなされ、かつ、車速が所定値以上である場合に、前記危険度判定手段による車両に生ずる危険度判定を禁止する危険度判定禁止手段を備えることとすれば、車両に危険が生じていると不必要に判定されるのを防止することができる。
【0045】
尚、請求項25に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記走行路障害物判別手段、前記推定軌跡障害物判別手段、及び前記障害物重畳判別手段はそれぞれ、車両に搭載された撮像手段を用いて検出される車両の走行路上または推定進行軌跡上に存在する物体の有無、並びに、車両に搭載されたレーダ装置を用いて検出される該物体との距離および速度に基づいて、危険な障害物の存在有無を判別することとすればよい。
【0046】
この場合、請求項26に記載する如く、請求項25記載の車両用障害物検知装置において、前記走行路障害物判別手段、前記推定軌跡障害物判別手段、及び前記障害物重畳判別手段はそれぞれ、前記撮像手段を用いて物体が検出されない一方、前記レーダ装置を用いて物体が検知される場合には、該レーダ装置を用いて検出される物体に基づいて、危険な障害物の存在有無を判別することとすれば、撮像手段を用いて物体を検出することができなくても、レーダ装置を用いて危険な障害物が存在するか否かを判別することができる。
【0047】
また、請求項27に記載する如く、請求項25記載の車両用障害物検知装置において、前記撮像手段を用いて車両の走行路を検出する走行路検出手段を備え、前記レーダ装置は、前記走行路検出手段により検出される車両の走行路の少なくとも曲率半径を含む位置情報を用いて該走行路近傍の物体を抽出し、該物体の位置情報および速度情報を検知情報として出力することとすれば、レーダ装置の出力する対象物を走行路近傍に絞ることができ、その後走行路上および推定進行軌跡上に位置する危険な障害物を検知するうえでの処理負担を軽減することができる。
【0048】
更に、走行路上又は推定進行軌跡上に危険な障害物が存在することが判別された後、その障害物との距離が車両における対象物の認知限界距離を下回ることによりその障害物が検知されなくなった場合には、実際には危険が生じているにもかかわらず、危険な障害物が存在しないとして車両に危険が生じていないと判定されるおそれがある。
【0049】
従って、請求項28に記載する如く、請求項1記載の車両用障害物検知装置において、前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段又は前記推定軌跡障害物判別手段により危険な障害物が存在すると判別された後、該障害物と車両との距離が車両における対象物の認知限界距離を下回ることにより該走行路障害物判別手段又は該推定軌跡障害物判別手段により危険な障害物が存在しないと判別される場合には、該障害物が存在しないと判別される前における危険度判定を維持することとすれば、車両に生じている危険度が誤判定されるのを回避することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である車両に搭載される車両用障害物検知装置20のシステム構成図を示す。本実施例の車両用障害物検知装置20は、電子制御ユニット(以下、ECUと称す)22を備えており、ECU22を用いて車両の進行方向に存在する他車両等の危険な障害物を検知する。
【0051】
ECU22には、車両推定進行軌跡演算装置24が接続されている。車両推定進行軌跡演算装置24には、ヨーレートセンサ26、速度センサ28、及び舵角センサ30が接続されている。ヨーレートセンサ26は、車両重心を通る鉛直軸回りに生ずる回転角速度(ヨーレート)に応じた信号を出力する。速度センサ28は、車両の速度に応じた周期でパルス信号を発生する。また、舵角センサ30は、車両のタイヤ舵角に対応する車両運転者の操作するステアリングホイールの操舵角に応じた信号を出力する。各センサ26〜30の出力信号はそれぞれ、車両推定進行軌跡演算装置24に供給されている。
【0052】
車両推定進行軌跡演算装置24は、各センサ26〜30の出力信号に基づいて車両のヨーレート、車速V、及びステアリングホイールの操舵角θを検出する。そして、それらのパラメータに基づいて車両が走行すると推定される道路上における車体幅程度の幅を有する軌跡(以下、推定進行軌跡と称す)を演算する。車両推定進行軌跡演算装置24は、演算した推定進行軌跡の情報をECU22に供給する。ECU22は、車両推定進行軌跡演算装置24からの推定進行軌跡の情報に基づいて車両が走行すると推定される推定進行軌跡を把握する。
【0053】
ECU22には、また、画像処理装置32が接続されている。画像処理装置32には、例えば車体前部のフロントグリルや車室内のバックミラー部やウィンドシールド上部に配設されたカメラ34が接続されている。カメラ34は、配設部位から車両前方へ向けて所定角度に広がる所定の撮影可能領域を有し、車両から所定距離離れた位置から前方への道路状況を撮影する。画像処理装置32は、カメラ34の撮影した画像を処理することにより立体対象物および道路表面に描かれた白線や黄線等を抽出し、立体対象物および車両の走行する走行路を認識する。画像処理装置32は、認識した立体対象物や走行路の位置情報をECU22に供給する。ECU22は、画像処理装置32からの情報に基づいて車両前方に位置する立体対象物および走行路の位置情報を把握する。
【0054】
ECU22には、また、例えばミリ波を用いたFM−CWレーダであるレーダ装置36が接続されている。レーダ装置36は、車体前部のフロントグリル近傍に鉛直方向に延びる回転軸を中心として回動することができるように配設されたレーダアンテナを有している。レーダアンテナは、指向性を有するアンテナであり、所定のビーム角の広がりをもって信号の送受信を行う。レーダ装置36は、回転軸を中心にしてレーダアンテナを回動させながら信号を送受信し、若しくは、レーダアンテナを固定しつつ電子的にビームをスキャンさせながら信号を送受信し、車両前方の検出可能領域内に存在する立体対象物を検知する。
【0055】
レーダ装置36には、ECU22の把握する走行路または推定進行軌跡の位置情報が供給される。レーダ装置36は、供給された車両の走行路または推定進行軌跡近傍の対象物のみを検知対象物として通過させ、それ以外の対象物を検知対象物から除去するフィルタを有している。レーダ装置36は、検知した対象物のうち走行路または推定進行軌跡の近傍に位置する対象物の自車両に対する位置情報および相対速度情報をECU22に供給・出力する。ECU22は、また、レーダ装置36からの対象物の位置情報および相対速度情報に基づいても立体対象物を把握する。そして、自車速Vおよび対象物の相対速度情報に基づいて対象物の速度Vfおよび加減速度μfG(G;重力加速度)を演算する。
【0056】
ECU22には、また、方向指示器38が接続されている。方向指示器38は、車両運転者が車両を左折・右折させる場合や走行路を変更させる車線変更を行う際に入力操作する機器であり、外部に対して車両の進路を示すために設けられている。方向指示器38は、車両の左右それぞれの進路に応じた信号をECU22に供給する。ECU22は、方向指示器38の出力信号に基づいて車両の進路を把握する。
【0057】
ECU22には、また、タイヤ路面間μmax推定装置44が接続されている。タイヤ路面間μmax推定装置44は、タイヤと路面との間における最大摩擦係数μmaxを推定する装置である。ECU22は、タイヤ路面間μmax推定装置44の出力信号に基づいて自車両のタイヤと路面との間の最大摩擦係数μmaxを把握する。そして、その最大摩擦係数μmaxに基づいて、検出された対象物が危険な障害物であるか否かを判定する際に用いる自車両の想定減速度μsGを演算する。具体的には、後述する非追従走行時の介入ブレーキを行う場合には、コーナリングフォースが確保可能であり、かつ、比較的大きな適当(実験的)な値である、例えば最大摩擦係数μmaxに“0.85”を乗じて得られる0.85×μmax・Gを想定減速度μsGとして演算する。
【0058】
ECU22には、更に、情報・警報表示装置40およびブレーキ制御ECU42が接続されている。情報・警報表示装置40は、車両運転者に対して注意を喚起すると共に、警報を与えるスピーカ及びディスプレイを有している。また、ブレーキ制御ECU42には、車両に制動力を発生させるブレーキアクチュエータ46が接続されている。ブレーキ制御ECU42は、車両に必要な制動力を算出する。
【0059】
ECU22は、車両と対象物との関係に基づいて判定する現に車両に生じている危険度の軽重に応じて、後に詳述する如く、スピーカ、ディスプレイ、及びブレーキアクチュエータ46が駆動されるように情報・警報表示装置40およびブレーキ制御ECU42に対して指令を行う。情報・警報表示装置40は、ECU22からの指令に従ってスピーカ及びディスプレイを駆動する。また、ブレーキ制御ECU42は、制動時にタイヤをロックさせないアンチロックブレーキ(ABS)制御および旋回挙動を安定化させるVSC(Vehicle Stability Control)制御等を行いつつ、タイヤ路面間の最大摩擦係数μmaxに応じた最大許容制動力を最大限度として、ECU22からの指令に従ってブレーキアクチュエータ46を駆動する。尚、この際、発生させるべき制動力を演算するうえで、自車両の前後方向減速度計(図示せず)から得られた自車加減速度と自車両の速度センサ28から得られた路面方向の自車加減速度との比較により推定される路面傾斜角が考慮される。
【0060】
次に、本実施例の車両用障害物検知装置20の動作について説明する。本実施例において、ECU22は、車両推定進行軌跡演算装置24および画像処理装置32を用いて車両の推定進行軌跡および白線等で仕切られる走行路を把握すると共に、画像処理装置32およびレーダ装置36を用いてそれぞれ立体対象物を把握する。そして、原則として画像処理装置32からの情報に基づく立体対象物とレーダ装置36からの情報に基づく立体対象物とを融合させることにより、自車両の障害物を検知する。
【0061】
ECU22は、検知した障害物が推定進行軌跡上に位置するか否か及び走行路上に位置するか否かを判別することにより、推定進行軌跡上に位置する障害物および走行路上に位置する障害物をそれぞれ抽出する。この際、推定進行軌跡上に位置する障害物が複数存在する場合または走行路上に位置する障害物が複数存在する場合には、それらの対象物のうち最も自車両に近い障害物を制御物標として把握する。そして、制御物標として把握された障害物と自車両との距離に基づいてその障害物が車両の走行に影響を与えるおそれのある危険な障害物であるか否かを判別する。
【0062】
具体的には、障害物が現時点での減速度μfGを維持し、また、自車両が現時点から空走時間T0後に想定減速度μsGを伴って制動するものとした場合において自車両と障害物とが最も接近する距離(最接近距離)Dnが所定値Dn0以下となるか否かを判別することにより、その障害物が危険な障害物であるか否かを判別する。尚、この際、障害物の、現時点での自車位置に対する将来予測位置は、現時点での自車両と障害物との相対距離D並びに現時点での障害物の速度Vfおよび加減速度μfGに基づいて演算されると共に、自車両の、現時点での自車位置に対する将来予測位置は、現時点での速度V、及び、介入ブレーキを行う場合と警報を行う場合とで値が異なる空走時間T0、並びに想定減速度μsGに基づいて演算される。また、最接近距離Dnの所定値Dn0は、自車両の状況(具体的には、自車両が前車に追従して走行するか否か)に応じて異なり、例えば非追従走行の場合には所定の余裕距離d0であり、一方、追従走行の場合(特に、自車両が減速中に障害物と最接近する場合)には所定の余裕距離d0に将来自車両の速度Vと障害物の速度Vfとが同一となる際のその速度(最接近速度)Vsと、車間距離Dから自車速Vを除算して得られる車頭時間T0´との乗算値を加算して得られる値(=d0+Vs×T0´)である。
【0063】
ECU22は、走行路上に危険な障害物が存在するか否かの判別結果、及び、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在するか否かの判別結果の双方の結果に基づいて、後述する手法に従って、その障害物の存在によって現に車両に生じている危険度を判定する。すなわち、ECU22は、走行路上に危険な障害物が存在するか否かの判別結果と、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在するか否かの判別結果との2つの判別結果を情報として以下のフローチャートに示される制御ルーチンを行う。この場合、走行路上に存在する危険な障害物は、推定進行軌跡上に存在する危険な障害物と同一の障害物であるかもしれないし、異なるかもしれないが、ECU22は、推定進行軌跡上に、走行路上の危険な障害物と同一かもしれないし異なるかもしれない危険な障害物が存在するか否かを独立して判別し、それら2つの判別結果を情報として制御ルーチンで処理するので、車両に生じている危険度の判定について木目細い判断を迅速に行うことが可能である。そして、ECU22は、その判定した危険度の軽重に応じて情報・警報表示装置40およびブレーキ制御ECU42に対して指令を行うことにより車両運転者に対して警告を与える。
【0064】
図2及び図3は、本実施例においてECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図2及び図3に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図2及び図3に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
【0065】
ステップ100では、車両に横滑り傾向が生じていることによりVSC制御が実行されているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされ、車両に横滑り傾向が生じていないと判別された場合は、次にステップ102の処理が実行される。ステップ102では、画像処理装置32によりカメラ34の撮影した画像が処理された結果として、走行路を構成する道路表面に描かれた白線や黄線が検出されているか否かが判別される。その結果、肯定判定がなされ、走行路が認識されていると判別された場合は、次にステップ103の処理が実行される。
【0066】
ステップ103では、カメラ34及び画像処理装置32を用いた対象物検知が可能であるか否かが判別される。その結果、肯定判定がなされ、カメラ34により対象物が検知された場合は、次にステップ104の処理が実行される。また、ステップ104では、画像処理装置32を用いて認識される走行路と車両の推定進行軌跡との位置の時間変化に基づいて、車両が走行路内から外部へ逸脱する車線逸脱が生じているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされ、車両が車線逸脱しないと判別された場合は、次にステップ106の処理が実行される。
【0067】
ステップ106では、▲1▼方向指示器38が車両運転者により左右何れかに操作され、かつ、▲2▼車速が例えば30km/hを超えているか否かが判別される。方向指示器38が操作されている場合には、車両運転者が覚醒していると判断できる。また、車両運転者の覚醒度は車速が高いほど高くなることが経験的に認められている。このため、上記▲1▼及び▲2▼の条件が共に成立する場合には、運転者が覚醒している可能性が高く、車両の制動を運転者の意思(すなわち、ブレーキ操作)に任せる方が、警告が頻繁に発せられるのを回避するうえで適切である。従って、肯定判定がなされた場合は、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、上記▲1▼及び▲2▼の条件の何れかが成立しないと判別された場合は、次にステップ108の処理が実行される。
【0068】
ステップ108では、画像処理装置32を用いて検知され、推定進行軌跡上に位置する制御物標として把握された対象物(推定進行軌跡内対象物)が、車両の走行に影響を与える危険な障害物であるか否かが判別される。その結果、肯定判定がなされた場合は、次にステップ110の処理が実行される。
【0069】
ステップ110では、上記ステップ108の処理結果による危険な障害物(以下、推定進行軌跡内障害物と称す)が、画像処理装置32を用いて検出される走行路上に位置するか否かが判別される。すなわち、推定進行軌跡上に存在する危険な障害物が走行路上に存在するか否かの重畳判別が行われる。その結果、肯定判定がなされる場合は、次にステップ112の処理が実行される。ステップ112では、車両がカーブ出入口近傍に位置しているか否かが判別される。
【0070】
図4は、車両が道路のカーブ入口近傍を走行する際の走行路と推定進行軌跡との位置関係を時系列順に並べた図を示す。また、図5は、車両が道路のカーブ出口近傍を走行する際の走行路と推定進行軌跡との位置関係を時系列順に並べた図を示す。
【0071】
本実施例において、車両が走行すると推定される推定進行軌跡は、現時点での自車速Vおよびステアリングホイールの操舵角θ若しくはヨーレートγをパラメータとして演算される。かかる構成において、車両200が白線202,204で区切られた走行路206を走行する状況下でカーブ入口のかなり手前に位置する場合には、車両200のタイヤが道路の直線部に沿う方向に向くため、図4(A)に示す如く、推定進行軌跡Sの大部分が走行路206内に含まれる。また、車両200がカーブに完全に進入した後は、車両200のタイヤがカーブに沿う方向に向くため、図4(C)に示す如く、推定進行軌跡Sが走行路206内に含まれる。一方、車両200がカーブの入口近傍に達した際は、ヨーレートγが小さく、車両のタイヤがカーブに沿う方向に向かないため、図4(B)に示す如く、走行路206内に含まれない推定進行軌跡Sが多くなる。
【0072】
また、車両200が走行路206を走行する状況下でカーブ出口のかなり手前に位置する場合には、車両のタイヤがカーブに沿う方向に向くため、図5(A)に示す如く、推定進行軌跡Sが走行路206内に含まれる。また、車両200がカーブから完全に出た後は、車両200のタイヤが道路の直線部分に沿う方向に向くため、図5(C)に示す如く、推定進行軌跡Sが走行路206内に含まれる。一方、車両200がカーブの出口近傍に達した際は、車両のタイヤがカーブ後の直線部分に沿う方向に向かないため、図5(B)に示す如く、走行路206内に含まれない推定進行軌跡Sの部分が多くなる。
【0073】
このため、車両200がカーブの出入口近傍を走行する状況下においては、推定進行軌跡内障害物が走行路206上に存在しても、その障害物が白線202,204近傍に位置する場合には、車両200がそのカーブを通常どおり適切に走行すればその障害物を回避してすり抜けできる可能性がある。この点、車両200がカーブ出入口近傍を走行する場合は、直線道路を走行する場合と比較して、車両に生ずる危険度は低くなる。
【0074】
尚、車両がカーブ入口近傍に位置する際は、車両の推定進行軌跡の曲率半径が比較的大きい一方、走行路の曲率半径が比較的小さくなる。また、車両がカーブ出口近傍に位置する際は、走行路の曲率半径が比較的大きい一方、車両の推定進行軌跡の曲率半径が比較的小さくなる。そこで、上記ステップ112の処理は、具体的には、車両推定進行軌跡演算装置24を用いて演算される推定進行軌跡の曲率半径が第1所定値以上であり、かつ、画像処理装置32を用いて検出される走行路の曲率半径が第2所定値より小さいか否かに基づいてカーブ入口の判定を行い、また、推定進行軌跡の曲率半径が上記第1所定値以下の第3所定値より小さく、かつ、走行路の曲率半径が上記第2所定値以上の第4所定値以上であるか否かに基づいてカーブ出口の判定を行う。その結果、車両がカーブ出入口近傍に位置していると判別された場合は、次にステップ114の処理が実行される。一方、車両がカーブ出入口近傍に位置していないと判別された場合は、推定進行軌跡内障害物が走行路内に位置し、かつ、車両が直線道路又はカーブ路に沿って適切に走行するので、車両に重度の大きな危険が迫っていると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ116の処理が実行される。
【0075】
ステップ114では、上記ステップ108で障害物であると判別された対象物と自車両との距離Dが所定距離Ds1を下回るか否かが判別される。尚、所定距離Ds1は、車両運転者の意思によらない介入ブレーキを行うことなく車両運転者の通常操舵による回避操作により自車両が対象物との接触・衝突を回避できると判断される自車両と対象物との最小距離であり、例えば、1.7(V−Vf)(Vf;対象物の速度m/s)に相当する距離に設定されている。その結果、D<Ds1が成立する場合は、車両と障害物とがかなり接近していると判断できるので、次にステップ116の処理が実行される。一方、D<Ds1が成立しない場合は、車両と障害物とが介入ブレーキを行うほど接近しているとは判断できないので、次にステップ120の処理が実行される。
【0076】
ステップ116では、車両に生じている危険が重度であるとして、情報・警報表示装置40に対して車両運転者に対する警報が行われるように指令信号を供給すると共に、ブレーキ制御ECU42に対して車両運転者の意思によらない介入ブレーキが行われるように指令信号を供給する処理が実行される。本ステップ116の処理が実行されると、以後、車両運転者に対してスピーカ及びディスプレイの駆動による警報が行われると共に、ブレーキアクチュエータ46の駆動による介入ブレーキが行われる。
【0077】
尚、この介入ブレーキは、危険な障害物が静止物或いは対向車であって、自車両が前車に追従して走行する状態でない状況下においては、初期に所定のコーナリングフォースが確保される、最大摩擦係数μmaxに基づく最大許容減速度μmaxGよりも小さく割り引いた0・85×μmaxG(以下、μ´maxGと称す)の制動減速度が、また、その後操舵角θがほとんどゼロの中立状態にある場合には最大許容減速度μmaxGを超えない範囲で必要に応じた制動減速度が確保されるように行われる。また、危険な障害物が自車両が追従して走行する前車であって、自車両が前車に追従して走行する状態である状況下においては、初期にμ´maxGよりも小さい例えば0.6×μmaxGの制動減速度が、また、その後操舵角が中立状態にない場合にはμ´maxGを超えない範囲で必要に応じた制動減速度が、操舵角が中立状態にある場合には最大許容減速度μmaxGを超えない範囲で必要に応じた制動減速度が確保されるように行われる。但し、本ステップ116において警報が行われた後に車両運転者が適切な回避操作を行ったときは介入ブレーキの実行が中止又は禁止される。本ステップ116の処理が終了すると、今回の処理が終了される。
【0078】
また、上記ステップ108において推定進行軌跡上に位置する制御物標として把握された対象物が障害物でないと判別された場合、及び、ステップ110において推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置しないと判別された場合は、次にステップ118の処理が実行される。
【0079】
ステップ118では、画像処理装置32を用いて検知され、走行路上に位置する制御物標として把握された対象物(走行路内対象物)が、車両の走行に影響を与える危険な障害物であるか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、推定進行軌跡内にも走行路内にも危険な障害物が存在していないと判断できるので、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ119の処理が実行される。
【0080】
ステップ119では、上記ステップ112と同様に、車両がカーブ出入口近傍に位置しているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされ、車両がカーブ出入口近傍に位置していないと判別された場合は、走行路上に危険な障害物が存在する一方で、推定進行軌跡上には危険な障害物が存在しないので、車両がカーブ出入口以外の直線道路やカーブ路において走行路上の危険な障害物をすり抜けて走行すると判断でき、車両に危険は生じないと判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ120の処理が実行される。
【0081】
ステップ120では、上記ステップ118の処理結果による危険な障害物(以下、走行路内障害物と称す)、又は、上記ステップ108の処理結果により推定進行軌跡内障害物が、自車両と対向して走行する対向車であるか否かが判別される。本ステップ120の処理は、例えば、走行路内障害物,推定進行軌跡内障害物の移動方向に基づいて行われる。その結果、その障害物が対向車である場合は、幅の狭い道路等において自車両と対向車とがすれ違い走行するものと判断できるので、この場合は本ルーチンの処理が終了される。一方、障害物が対向車でない場合は、車両前方の走行路内の空間に割り込んだ他車や静止物が存在すると判断でき、車両にある程度の危険が生じていると判断できるので、この場合は次にステップ122の処理が実行される。
【0082】
ステップ122では、車両に生じている危険が軽度であるとして、情報・警報表示装置40に対して車両運転者に対する注意喚起のための指令信号を供給する処理が実行される。本ステップ122の処理が実行されると、以後、車両運転者に対してスピーカ及びディスプレイの駆動による注意喚起が行われる。本ステップ122の処理が終了すると、今回の処理が終了される。
【0083】
また、上記ステップ100において車両に横滑り傾向が生じており、VSC制御が実行されていると判別された場合は、次にステップ124の処理が実行される。ステップ124では、VSC制御が実行中であるとして、その旨を車両運転者に知らせるべく情報・警報表示装置40に対して注意喚起のための指令信号を供給する処理が実行される。
【0084】
更に、上記ステップ104において車両が車線逸脱すると判別される場合は、次にステップ126の処理が実行される。ステップ126では、方向指示器38が車両運転者により左右何れかに操作されているか否かが判別される。その結果、方向指示操作がなされていない場合は、車両運転者の意思によらずに車両が車線を逸脱すると判断できるので、この場合は車両運転者にその状況を知らせることが適切である。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ128の処理が実行される。ステップ128では、車両が不意に走行路を逸脱する危険があるとして、その旨を車両運転者に知らせるべく情報・警報表示装置40に対して車線逸脱警報のための指令信号を供給する処理が実行される。
【0085】
車両に横滑り傾向が生じている場合、車両が走行路を構成する白線等を検出できない場合、車両が車線を逸脱する場合、及び、車両が方向指示を出しつつ隣接走行レーンに割り込む場合には何れも、画像処理装置32及びカメラ34を用いて走行路上に対象物が存在するか否かを検知することが不可能或いは困難となる。このため、かかる事態が生じた際は、車両推定進行軌跡演算装置24と画像処理装置32又はレーダ装置36とを用いて推定進行軌跡上における対象物の存在有無のみにより車両に生ずる危険を判定する必要がある。従って、上記ステップ102、103、124、126、又は128の処理が終了した後は、次にステップ130の処理が実行される。
【0086】
ステップ130では、画像処理装置32およびレーダ装置36を用いて検出され、或いは、上記ステップ103において対象物検知が不可能であると判別され対象物が検知されない場合にはレーダ装置36を用いて検出され、推定進行軌跡上に位置する制御物標として把握される対象物が、車両の走行に影響を与える危険な障害物であるか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ132の処理が実行される。
【0087】
ステップ132では、上記ステップ130の処理結果による推定進行軌跡内障害物が自車両と同方向に移動しているか否か、具体的には、Vf>Vf0(尚、このVf0は、推定進行軌跡内障害物が自車両に対してほぼ静止していると判断できる程度の速度である。)が成立するか否かに基づいて、自車両が障害物としての前車に追従して走行している否かが判別される。その結果、自車両がその前車に追従して走行していると判別された場合は、次にステップ134の処理が実行される。
【0088】
ステップ134では、上記ステップ106と同様に、▲1▼方向指示器38が車両運転者により左右何れかの方向に操作され、かつ、▲2▼車速が例えば30km/hを超えているか否かが判別される。その結果、肯定判定がなされた場合は、車両運転者が覚醒していると判断できるので、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、否定判定がなされた場合は、車両運転者が覚醒していないと判断し、次にステップ136の処理が実行される。
【0089】
ステップ136では、車両に重度の大きな危険が生じているとして、情報・警報表示装置40に対して車両運転者に対する警報が行われるように指令信号を供給すると共に、ブレーキ制御ECU42に対して車両運転者の意思によらない介入ブレーキが行われるように指令信号を供給する処理が実行される。本ステップ136の処理が実行されると、以後、車両運転者に対してスピーカ及びディスプレイの駆動による警報が行われると共に、ブレーキアクチュエータ46の駆動による介入ブレーキが上記ステップ116における内容と同様に行われる。但し、本ステップ136の処理において、警報が行われた後に車両運転者が適切な回避操作を行ったときは、介入ブレーキの実行が中止又は禁止される。また、本ステップ136の処理が上記ステップ103の処理が行われた後に行われる場合には、警報のみが行われ、介入ブレーキの実行が禁止されることとしてもよい。本ステップ136の処理が終了すると、今回の処理が終了される。
【0090】
また、上記ステップ132において自車両が障害物としての前車に追従していないと判別される場合は、推定進行軌跡内障害物が車両の追従する前車ではなく、対向車や静止・停止物,横断物であると判断できる。この場合は、その障害物を車両が回避できるか否かに応じて車両に生ずる危険度が異なる。従って、上記ステップ132において否定判定がなされた場合は、次にステップ138の処理が実行される。
【0091】
ステップ138では、推定進行軌跡内障害物を車両がその障害物に接触することなく回避できるか否かが判別される。本ステップ138の処理は、具体的には、その障害物と自車両との距離Dが所定距離Ds2以上であるか否かに基づいて判別処理を行い。尚、所定距離Ds2は、緊急操舵による衝突回避が可能であると判断される自車両と障害物との最小距離であり、例えば、0.8(V−Vf)に相当する距離に設定されている。その結果、D≧Ds2が成立する場合は、車両が障害物との衝突を回避できる程度に障害物から離れていると判断できるので、かかる判別がなされた場合は、今回のルーチンは終了される。一方、D≧Ds2が成立しない場合は、次にステップ140の処理が実行される。
【0092】
ステップ140では、上記の如く検知した推定進行軌跡内障害物がカメラ34又はレーダ装置36の認知角範囲(撮影可能領域,検出可能領域)内に継続して滞在しているか否かが判別される。その結果、肯定判定がなされた場合は、車両に重度の大きな危険が生じているとして、次に上記ステップ136の処理が実行される。一方、否定判定がなされた場合は、検知していた推定進行軌跡内障害物を車両がスピン等に起因して見失ったと判断できる。この場合は、次にステップ142の処理が実行される。
【0093】
ステップ142では、上記ステップ140において車両が見失った推定進行軌跡内障害物が、検知されていた際に静止していたか否か、具体的には、かかる障害物の速度Vfがほぼゼロであったか否かが判別される。その結果、この障害物が静止していた場合には、この静止障害物との衝突による衝撃を緩和させることが適切となる。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ144の処理が実行される。一方、上記の障害物が静止していないと判別された場合は、その障害物は自車両に向かって移動しており、対向車であると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、静止障害物との衝突の危険性はないので、本ルーチンの処理は終了される。
【0094】
ステップ144では、車両に極めて重度の危険が生じているとして、情報・警報表示装置40に対して車両運転者に対する警報が行われるように指令信号を供給すると共に、ブレーキ制御ECU42に対して車両運転者の意思によらない介入ブレーキが操舵角θが中立状態にあるか否かにかかわらず最大許容減速度μmaxGで行われるように指令信号を供給する処理が実行される。本ステップ144の処理が実行されると、以後、車両運転者に対してスピーカ及びディスプレイの駆動による警報が行われると共に、ブレーキアクチュエータ46の駆動による介入ブレーキが最大許容制動力で行われる。但し、本ステップ144の処理が上記ステップ103の処理が行われた後に行われる場合には、警報のみが行われ、介入ブレーキの実行が禁止されることとしてもよい。本ステップ144の処理が終了すると、今回の処理が終了される。
【0095】
上記図2及び図3に示すルーチンによれば、カメラ34を用いた画像処理装置32およびレーダ装置36により走行路、推定進行軌跡、及び対象物を把握し、走行路上に存在する対象物が障害物であるのか、推定進行軌跡上に存在する対象物が障害物であるのか、車両がカーブ出入口近傍に位置するのか等に応じて異なる危険度を判定することができる。そして、その判定した危険度の軽重に応じて、タイヤ−路面間における最大許容減速度μmaxGでの介入ブレーキ、通常の介入ブレーキ、警報、及び注意喚起の多段階の警告のうちから選択した警告を車両運転者に対して行うことができる。
【0096】
図6は、自車両200と障害物210との位置関係を表した図を示す。尚、図6(A)には、自車両200に先行する前車210が障害物として走行路206および推定進行軌跡S上に共に存在する状況を表した図を、また、図6(B)には、自車両200に先行する前車210が走行路206上に存在する一方で、推定進行軌跡S上には存在しない状況を表した図を、それぞれ示す。
【0097】
具体的には、本実施例においては、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する場合において、車両が図6(A)に示す如く直線道路又はカーブ路に沿って適切に走行するとき又はカーブ出入口近傍に位置する一方でその障害物との距離が短いときには、車両に重度の危険が生じていると判定し、車両運転者に対してスピーカやディスプレイを用いて警報を発すると共に、車両運転者の意思によらない介入ブレーキを行う。但し、警報後に車両運転者が適切な回避操作を行ったときは介入ブレーキの実行が中止又は禁止される。
【0098】
また、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する場合において車両がカーブ出入口近傍に位置する一方でその障害物との距離が長いとき、車両がカーブ出入口近傍に位置する場合において推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置しない一方で走行路上に推定進行軌跡内障害物でない障害物が存在するとき、或いは、車両がカーブ出入口近傍に位置する場合において推定進行軌跡内障害物が存在しない一方で走行路内障害物が存在するときには、走行路内障害物が対向車でないことを条件に、車両に軽度の危険が生じていると判定し、車両運転者に対してスピーカやディスプレイを用いて注意喚起を行う。
【0099】
一方、推定進行軌跡内障害物が存在しない又は推定進行軌跡内障害物は存在するがその障害物が走行路上に存在しない場合において走行路内障害物が存在しないとき、走行路内障害物が存在しても車両がカーブ出入口近傍に位置するとき、或いは、走行路内障害物が対向車であるときには、車両に危険が生じていないと判定し、何ら措置を行わない。
【0100】
すなわち、本実施例において、推定進行軌跡内障害物の有無と走行路内障害物の有無と推定進行軌跡内障害物の走行路上での存在有無との組み合わせに応じた危険度が車両に生じていると判定される。例えば、推定進行軌跡内障害物が存在しかつその推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する場合には、走行路内障害物が存在する一方で推定進行軌跡内障害物が存在しない場合に比して、車両に重度の大きな危険が生じていると判定される。走行路は、車両が走行する蓋然性が高い道路であり、また、推定進行軌跡は、現時点での操舵角等に基づいて算出される車両の進行すると推定される軌跡であるので、推定進行軌跡上に危険が障害物が存在しかつその危険な障害物が走行路上に存在する場合には、走行路上に危険な障害物が存在するが推定進行軌跡上には危険な障害物が存在しない場合に比して車両の危険度は高くなる。従って、本実施例によれば、車両が走行する上で支障をきたす障害物の危険判定を木目細かく的確に行うことが可能となっている。
【0101】
尚、本実施例において、推定進行軌跡上に位置する対象物または走行路上に位置する対象物が複数存在する場合、車両に生じている危険度の判定対象となる対象物は、それら複数の対象物のうち最も自車両に近い対象物である。自車両に最も近い対象物は、自車両の走行に最も影響を与える対象物である。従って、本実施例においては、車両に生じている危険度の判定が最も有効かつ適切に行われることとなる。
【0102】
また、本実施例において、車両に生じている危険度が判定されると、その後、その危険度が重度である場合には警報および介入ブレーキが、その危険度が軽度である場合には注意喚起が、それぞれ車両運転者に対して行われる。このため、本実施例によれば、車両運転者に車両に生ずる危険度の軽重を知らせることができると共に、車両に実際に生じた危険度に応じた適切な措置を講ずることが可能となっている。
【0103】
上記の如く、車両に生じている危険度が重度であるときには、車両運転者の意思によらない介入ブレーキが行われる。このため、本実施例おいては、車両が障害物との衝突回避操作を自動的に行うので、車両運転者が障害物を認識することができなかったり或いはブレーキ操作が遅れた場合にも、その障害物への車両の衝突や接触を回避することができ、或いは、その衝突等による衝撃を軽減することができる。
【0104】
本実施例において、介入ブレーキは、図2及び図3に示す如く、所定の場合、具体的には例えば、車両がカーブ出入口近傍に位置しない状況下で推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する場合、及び、走行路が検知されない一方、推定進行軌跡上に静止障害物が存在していた状況下で車両がその静止障害物を緊急操舵回避できない場合や、車両が追従走行する前車が障害物として存在する場合等に行われる。
【0105】
この介入ブレーキが行われる際、車両が障害物としての前車に追従して走行する状態でない状況下においては、車両に初期にμ´maxG(=0.85×μmaxG)の制動減速度が、また、その後操舵角θが中立状態にない場合にはμ´maxGの制動減速度が、操舵角θが中立状態にある場合には最大でμmaxGの制動減速度が発生するようにECU22からブレーキ制御ECU42に対して指令がなされる。ブレーキ制御ECU42は、ECU22から介入ブレーキにより車両にμ´maxG〜μmaxGの制動減速度を発生させるように指令されると、車両に実際に発生させる制動力を演算し、その制動力が車両に発生するようにブレーキアクチュエータ46を駆動する。
【0106】
一方、車両が障害物としての前車に追従して走行する状態である状況下においては、車両に初期に0.6×μmaxGの制動減速度が、また、その後操舵角θが中立状態にない場合にはμ´maxGを最大とする必要に応じた制動減速度が、操舵角θが中立状態にある場合にはμmaxGの制動減速度を最大とする必要に応じた減速度が発生するようにECU22からブレーキ制御ECU42に対して指令がなされる。そして、ブレーキ制御ECU42は、車両に実際に発生させる制動力を演算し、その制動力が車両に生ずるようにブレーキアクチュエータ46を駆動する。
【0107】
図7は、本実施例において介入ブレーキが行われる際にブレーキ制御ECU42が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図7に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動される。図7に示すルーチンが起動されると、まずステップ150の処理が実行される。
【0108】
ステップ150では、ECU22から介入ブレーキがコーナリングフォースが確保可能であるμ´maxG以上の制動減速度で行われるように指令がなされているか否かが判別される。その結果、介入制動指令G≧μ´maxGが成立せず、否定判定がなされた場合は、次にステップ151の処理が実行され、指令どおりの制動減速度で介入ブレーキが行われ、今回のルーチンが終了される。一方、介入制動指令G≧μ´maxGが成立し、肯定判定がなされた場合は、次にステップ152の処理が実行される。
【0109】
ステップ152では、舵角センサ30を用いて検出されるステアリングホイールの操舵角θが、ほぼゼロと同一視できる所定角θ0以下であるか否かが判別される。その結果、|θ|≦θ0が成立しないと判別される場合は、次にステップ154の処理が実行される。一方、|θ|≦θ0が成立すると判別される場合は、次にステップ156の処理が実行される。
【0110】
ステップ154では、上記の如く検出されたステアリングホイールの操舵角θを伴って車両が操舵可能となるコーナリングフォース(CF)が確保される範囲のμ´maxGの制動減速度が発生するように介入ブレーキを行う処理が実行される。本ステップ154の処理が実行されると、以後、ブレーキアクチュエータ46の駆動により車両に操舵可能な程度に制動力が発生することとなる。本ステップ154の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0111】
ステップ156では、自車両が危険な障害物との衝突を回避するのに必要な指令減速度G、すなわち、最大でμmaxGの制動減速度が発生するように介入ブレーキを行う処理が実行される。本ステップ156の処理が実行されると、以後、ブレーキアクチュエータ46の駆動により車両に最大でμmaxGの制動減速度が発生することとなる。本ステップ156の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0112】
上記図7に示すルーチンによれば、介入ブレーキがμ´maxGを超える制動減速度で行われるように指令がなされた状況下、車両が操舵されている場合にはある程度制限されたμ´maxG相当の制動力が発生するように介入ブレーキが行われ、一方、車両が操舵されていない場合には最大でμmaxG相当のタイヤ−路面間での最大限の制動力が発生するように介入ブレーキが行われる。このため、車両が直線道路を走行する際にμ´maxGを超える制動減速度での介入ブレーキが指令された場合には、車両のコーナリングフォースが操舵可能な程度に確保されない一方で、介入ブレーキが開始されてからの車両の制動停止距離が、コーナリングフォースを確保する場合に比して短くなる。従って、本実施例によれば、直進時には自車両と危険な障害物との接触を回避する確率を高めることが可能となっている。
【0113】
また、本実施例においては、車両が障害物としての前車に追従して走行する状況下において介入ブレーキが行われる場合、上記の如く、最大許容減速度μmaxGを超えない範囲で衝突回避に必要な指令制動減速度に応じた減速度の発生が指令される。このため、本実施例によれば、車両が障害物としての前車に追従して走行する状況下においては、その前車が例え最大許容減速度μmaxGで制動したとしてもその前車との衝突等を確実に回避することが可能となる。
【0114】
このように介入ブレーキが実行された後、その実行や障害物の消滅等に起因して介入ブレーキの実行条件が不成立になると、介入ブレーキの実行が解除される。この際、車両における制動力の発生が直ちに解除されるものとすると、前方障害物との車間距離がまた再び小さくなり、介入ブレーキが実行され易くなる。特に、障害物が車両が追従走行する前車である場合には、制動力の発生解除直後に前車が制動等すると、車間距離が急速に小さくなる。
【0115】
そこで、本実施例においては、介入ブレーキの実行が解除される際、車両における制動力が徐々に時間をかけて減少される。この場合には、介入ブレーキの実行が解除された後においても車両の制動がある程度継続する。このため、本実施例によれば、介入ブレーキの解除直後に自車両と障害物との車間距離が小さくなるのを抑制することができ、その後再び警報が発令され或いはブレーキ介入制御が実行されるのを防止することが可能となっている。
【0116】
ところで、走行路は、白線等により構成された車両が走行すべき道路であり、車両が走行する蓋然性の高い道路である。また、推定進行軌跡は、現時点での操舵角等に基づいて算出される車両の進行すると推定される軌跡である。従って、車両がカーブ入口や出口近傍に位置する際には、推定進行軌跡が走行路に沿わない可能性が高い。この点、走行路内障害物が存在しない一方で推定進行軌跡内障害物が存在し、かつ、その推定進行軌跡内障害物が走行路外に存在する場合には、車両の走行する走行路上には障害物は存在しないので、車両はカーブ出入口近傍を走行しているものと判断でき、車両に危険が生じている可能性は極めて低い。上記の如く、本実施例において、推定進行軌跡内障害物が存在しない又は走行路上に位置しない推定進行軌跡内障害物が存在する場合において、走行路内障害物が存在しないときには、車両に危険が生じていないと判定される。
【0117】
これに対して、走行路内障害物が存在する場合には、推定進行軌跡内障害物が存在しなくても、車両の走行する走行路上には障害物が存在するので、車両に危険が生じている。本実施例において、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置しない一方で走行路上に推定進行軌跡内障害物でない障害物が存在するとき、或いは、推定進行軌跡内障害物が存在しない一方で走行路内障害物が存在するときには、走行路内障害物が対向車でないこと及び車両がカーブ出入口近傍に位置することを条件に、車両に軽度の危険が生じていると判定される。このように、本実施例によれば、走行路の特性と推定進行軌跡の特性との違いに着目し、車両に生ずる危険度の判定を的確に行うことが可能となっている。
【0118】
尚、本実施例において、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置しない一方で走行路上に推定進行軌跡内障害物でない障害物が存在するとき、或いは、推定進行軌跡内障害物が存在しない一方で走行路内障害物が存在するときにも、その走行路内障害物が対向車である場合には、車両に危険が生じていないと判定される。走行路内障害物が対向車でない場合には、走行路は車両が走行する可能性の高い道路であるので、推定進行軌跡内障害物が存在しなくても、車両がその走行路内障害物に衝突する危険性がある。一方、走行路内障害物が対向車である場合には、車両は走行路内障害物を回避してすれ違い走行できる可能性があり、警報や介入ブレーキを頻繁に行うことは運転者の煩わしさを考慮すると適切でない。従って、本実施例によれば、運転者に煩わしさを与えることなく車両に生ずる危険度の判定を的確に行うことが可能となっている。
【0119】
また、本実施例において、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置しない一方で走行路上に推定進行軌跡内障害物でない障害物が存在するとき、或いは、推定進行軌跡内障害物が存在しない一方で走行路内障害物が存在するときにも、車両がカーブ出入口近傍に位置しない状況下においては、車両に危険が生じていないと判定される。車両がカーブ出入口近傍を走行する場合には、推定進行軌跡は車両の走行する可能性の低い軌跡となるので、推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しても、走行路上に危険な障害物が存在すると、車両がその走行路上の障害物に衝突する危険性は高くなる。一方、車両がカーブ出入口以外の直線道路やカーブ路を走行する場合には、推定進行軌跡は車両の走行する可能性の極めて高い軌跡となるので、走行路の端部近傍に危険な障害物が存在しても、その推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しなければ、車両は走行路上の障害物を回避してすり抜け走行できる可能性が高く、車両がその走行路上の障害物に衝突する危険性はほとんどない。従って、本実施例によれば、走行路内障害物が存在する際、車両がカーブ出入口に位置するか否かに応じた的確な車両の危険度判定を行うことが可能となっている。
【0120】
また、車両がカーブ出入口近傍を走行する状況下において、推定進行軌跡内障害物が走行路上に存在しても、その障害物が走行路内の端部近傍に位置する場合には、車両がそのカーブを通常どおり適切に走行すればその障害物を回避してすり抜け走行できる可能性がある。この点、カーブ出入口走行時には、直線道路走行時に比して、車両に生ずる危険度は低くなる。
【0121】
そこで、本実施例においては、画像処理装置32を用いて検出した走行路の曲率半径と、車両推定進行軌跡演算装置24を用いて検出した推定進行軌跡の曲率半径との関係に基づいて、車両がカーブ出入口近傍に位置するか否かが判別される。そして、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する際、車両がカーブ出入口近傍に位置しない場合には、車両に重度の危険が生じていると判定され、警報と共に介入ブレーキが実行される。但し、警報後に車両運転者が適切な回避操作を行ったときは介入ブレーキの実行が中止又は禁止される。一方、車両がカーブ出入口近傍に位置する場合には、車両と当該障害物との距離が比較的短いときには車両に重度の危険が生じていると判定される一方、その距離が比較的長いときには車両に軽度の危険が生じている或いは危険が生じていないと判定される。
【0122】
このように、本実施例においては、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する際、車両がカーブ出入口を走行するか否かに応じて異なる危険度が判定される。従って、本実施例の処理によれば、推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する状況下において、車両がカーブ出入口近傍を走行するか否かを区別しないことによる危険度の誤判定を防止することができ、車両が走行する上で支障をきたす障害物の危険判定を木目細かく的確に行うことが可能となっている。
【0123】
また、本実施例においては、車両がカーブ出入口近傍に位置する状況下で推定進行軌跡内障害物が走行路上に位置する場合、車両と当該障害物との距離が通常の車両操舵によりその接触・衝突が回避可能な程度であるか否かに応じて異なる危険度が判定される。車両と障害物との距離が短いほど、接触等を回避できる可能性が低くなり、その障害物との関係では車両に生ずる危険度は高くなる。従って、本実施例によれば、障害物との接触が操舵により不可能な場合は可能な場合に比して危険度を高めることで、車両がカーブ出入口近傍を走行する際における危険判定を木目細かく的確に行うことが可能となっている。
【0124】
ところで、本実施例において、車両の走行路は、車両において画像処理装置32の処理するカメラ画像に基づいて認識されるが、走行路を構成する白線と車両との間に異物が存在すること、白線がその周囲と明度やトーンを共通にすること、或いは霧や排ガスの存在等に起因してカメラ画像から認識されないことがある。この場合には、走行路上に対象物が存在するか否かの判別が不可能或いは困難となるので、車両に生ずる危険度を判定するうえではそれ以外の要素を用いることが妥当となる。
【0125】
そこで、本実施例においては、走行路を構成する白線等が検出されない場合、走行路上に危険な障害物が存在するか否かを判別することなく、主として、車両推定進行軌跡演算装置24を用いて検出される推定進行軌跡上に、カメラ34による画像処理装置32およびレーダ装置36を用いて検出される危険な障害物が存在するか否かに基づいて、車両に生ずる危険度が判定される。従って、本実施例によれば、走行路の認識が不可能または困難である場合にも、車両に生ずる危険の判定を適切に行うことが可能となっている。
【0126】
また、車両前方に位置する対象物はカメラ画像に基づいて認識されるが、霧や排ガス等の存在によりそのカメラ画像の一部が認識されないような場合には、走行路は認識可能である一方で対象物が検知不可能なことがある。この場合には、車両に生ずる危険度を判定するうえではそれ以外の要素を用いることが妥当となる。
【0127】
そこで、本実施例においては、カメラ34により対象物が検知されない場合、レーダ装置36を用いて検出される対象物に基づいてその対象物が推定進行軌跡上で危険な障害物であるか否かが判別される。従って、本実施例によれば、カメラ画像に基づいて対象物が検知不可能な場合にも、少なくとも危険な障害物が存在するか否かを判別するので、車両に生ずる危険の判定を実行することが可能となっている。尚、カメラ画像に基づいて対象物が検知不可能な場合においても、図2及び図3に示すルーチンに従えば介入ブレーキが行われるが、この際には、警報のみを行い、介入ブレーキを行わないこととしてもよい。
【0128】
上記の如く、カメラ34は、所定の撮影可能領域を有し、その領域に現れる立体対象物を撮影する。また、レーダ装置36は、車両前方の検出可能領域内に存在する立体対象物を検知する。すなわち、車両の認知角範囲外に存在する立体対象物の検知は不可能である。この点、認知角範囲内に存在するほぼ静止する障害物が検知されていた状態から検知されなくなる状態へ移行した場合には、スピンの発生やその静止障害物との異常接近に起因して車両がその静止障害物を見失ったものと判断できる。この場合には、車両に生ずる危険が高まったとする危険判定を行い、その後の処理を進めることが適切である。
【0129】
そこで、本実施例においては、走行路上に障害物が存在するか否かに関係なく、主として車両推定進行軌跡演算装置24を用いて検出される推定進行軌跡上に障害物が存在するか否かに基づいて車両に生ずる危険度が判定される状況下において、推定進行軌跡上に静止障害物が存在することが検知され、その静止障害物を車両が緊急操舵により衝突回避できない場合、その静止障害物がカメラ34やレーダ装置36の認知角範囲外に至ったときには、車両に生ずる危険度が重度から極めて重度へ変化したと判定される。そして、介入ブレーキ制御が通常の状態から最大許容減速度μmaxGの発生する状態へ移行される。このように、本実施例によれば、上記の場合、車両に生ずる危険度を高めるので、その危険判定を適切に行うことが可能となっている。
【0130】
尚、上記の如く走行路上に障害物が存在するか否かに関係なく主として車両推定進行軌跡演算装置24を用いて検出される推定進行軌跡上に障害物が存在するか否かに基づいて車両に生ずる危険度が判定される状況下、推定進行軌跡内障害物が少なくとも自車両と同方向に移動する障害物でない、例えば静止障害物や対向車である場合において、その障害物を車両が操舵により衝突回避できるときには、車両運転者が車両操舵を行えばよいので、車両の衝突の危険性はない。
【0131】
そこで、本実施例においては、上記の状況下で障害物を車両が衝突回避できるときには、車両に危険が生じないと判定され、何ら警報や介入ブレーキ等の措置が実行されない。従って、本実施例によれば、車両に危険が生じていると不必要に判定されるのを防止することができ、危険判定の精度を向上させることができ、その結果、警報や介入ブレーキによる警告が頻繁に行われることに起因する車両運転者の違和感を低減させることができる。
【0132】
ところで、上記の手法に従って推定進行軌跡上に危険な障害物が存在し或いは走行路上に危険な障害物が存在することにより車両に危険が生じていると判定される状況下においても、車両運転者が覚醒しており、その危険を回避操作により確実に回避できるものと判断できる場合には、制動等による回避動作を装置側に自動的に行わせるよりも運転者の意思による操作に従って行わせる方が、警報や介入ブレーキ等の警告が頻繁に行われるのを防止するうえでは適切である。
【0133】
車両運転者の覚醒度は方向指示器38の操作を行っている場合にはその操作を行っていない場合に比して高く、また、車速が高くなるほど高い傾向がある。そこで、本実施例においては、例え推定進行軌跡上または走行路上に障害物が存在する状況下においても、方向指示操作がなされかつ車速が所定速度を超える場合には、衝突の危険性が少ないので、何ら警報や介入ブレーキ等の措置が実行されない。従って、本実施例によれば、車両運転者の意思による操作が行われているときには車両に危険が生じていると不必要に判定されるのを防止することができ、危険判定の精度を向上させることができ、その結果、警報や介入ブレーキによる警告が頻繁に行われることに起因する車両運転者の違和感を低減させることが可能となっている。
【0134】
また、上記の手法に従って推定進行軌跡内障害物が存在し或いは走行路内障害物が存在することにより車両に危険が生じていると判定された後において、その障害物がカメラ34及びレーダ装置36の死角に進入すること、すなわち、その障害物と自車両との距離がカメラ34及びレーダ装置36の認知距離範囲の下限を下回ることがある。この際、推定進行軌跡上または走行路上に危険な障害物が存在しないと判別されると、実際には重度の大きな危険が車両に生じているにもかかわらず、車両に危険が生じていないと誤判定されるおそれがある。
【0135】
そこで、本実施例においては、推定進行軌跡上または走行路上に危険な障害物が存在することが検知された後、当該障害物の自車両に対する移動履歴を演算する。そして、その障害物がカメラ34及びレーダ装置36の死角に進入することにより推定進行軌跡上または走行路上に障害物が存在しないと検知された場合には、検知されていた際における危険度判定の結果を維持する。かかる手法によれば、推定進行軌跡上等に存在していた危険な障害物が自車両に異常接近することにより存在しないと検知されることとなった際に、車両に危険が生じていないと誤判定されるのを回避することができる。従って、本実施例によれば、車両の危険判定を適切に行うことが可能となっている。
【0136】
ところで、本実施例において車両に生ずる危険を判定するうえでは、走行路上に存在する危険な障害物、及び推定進行軌跡上に存在する危険な障害物を検知することが重要である。すなわち、走行路上に存在しない対象物や推定進行軌跡上に存在しない対象物の検知は不要である。
【0137】
そこで、本実施例において、レーダ装置36は、上述の如く、ECU22の把握した走行路および推定進行軌跡の位置情報の供給を受け、その走行路又は推定進行軌跡近傍の対象物のみを検知対象物として通過させるフィルタを有し、それ以外の対象物を検知対象物から除去してECU22に対して情報を供給・出力する。また、ECU22は、レーダ装置36からの対象物の位置情報および相対速度情報に基づいて立体対象物を把握する。そして、ECU22は、その立体対象物の位置情報および速度情報と、カメラ34を用いた画像処理装置32からの走行路上の立体対象物の位置情報および速度情報とを融合させた結果に基づいて、走行路上および推定進行軌跡上にそれぞれ危険な障害物が存在するか否かを判別する。
【0138】
従って、本実施例においては、レーダ装置36の出力する対象物を、走行路が認識されている場合に走行路近傍に絞ることができ、また、走行路が認識されない場合等に推定進行軌跡近傍に絞ることができ、その後走行路上に存在する危険な障害物を検知するうえでの処理負担、及び、推定進行軌跡上に存在する障害物を検知するうえでの処理負担を軽減することが可能となっている。
【0139】
尚、上記の実施例においては、ECU22が、画像処理装置32およびレーダ装置36からの情報に基づいて走行路上に障害物が存在するか否かを判別することにより特許請求の範囲に記載した「走行路障害物判別手段」が、車両推定進行軌跡演算装置24、画像処理装置32、及びレーダ装置36からの情報に基づいて推定進行軌跡上に障害物が存在するか否かを判別することにより特許請求の範囲に記載した「推定軌跡障害物判別手段」が、上記図2及び図3に示すルーチン中のステップ110の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「障害物重畳判別手段」が、ステップ116、122、136、又は144の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「危険度判定手段」が、それぞれ実現されている。
【0140】
また、上記の実施例においては、情報・警報表示装置40がECU22からの指令に従ってスピーカ及びディスプレイを駆動すること、及び、ブレーキ制御ECU42がECU22からの指令に従ってブレーキアクチュエータ46を駆動することが特許請求の範囲に記載した「警告手段」に、また、ブレーキ制御ECU42がECU22からの指令に従ってブレーキアクチュエータ46を駆動することが特許請求の範囲に記載した「制動制御手段」に、それぞれ相当している。
【0141】
更に、上記の実施例においては、ECU22が、ステップ112又は119の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「カーブ出入口判別手段」が、ステップ138で肯定判定すること、及び、ステップ106又は134で肯定判定することにより特許請求の範囲に記載した「危険度判定禁止手段」が、画像処理装置32からの画像情報に基づいて走行路を認識することにより特許請求の範囲に記載した「走行路検出手段」が、それぞれ実現されている。
【0142】
ところで、上記の実施例においては、走行路上に障害物が存在する際、その障害物が走行路上において何れの車幅方向へ横移動するか否かに関係なく、すなわち、障害物および自車両がそれぞれ現時点での移動状況(速度,加速度)を維持した状況下において障害物の車両進行方向位置と自車両の車両進行方向位置とが互いに一致する時点におけるその障害物の走行路に対する横方向位置に関係なく予め定められた危険度を判定することとしているが、この横移動情報に応じて異なる危険度を判定することとしてもよい。
【0143】
すなわち、図8は、走行路206上に存在する危険な障害物220と車両200に生ずる危険度との関係を説明するための図を示す。走行路206上に危険な障害物220が存在する状況下、その走行路内障害物220が最初は走行路206の端部(図8に示す状態では白線202側)に位置してもその後走行路206内をその中心へ向けて(図8に示す状態では白線204側方向へ向けて)横移動或いは斜め移動することにより、車両200の車両進行方向位置とその走行路内障害物220の車両進行方向位置とが互いに一致する時点、すなわち、車両200と走行路内障害物220とが衝突し得る時点においてその走行路内障害物220が走行路206の中央付近に位置すれば、走行路206は車両200の走行する可能性が高い道路であるので、自車両200における危険度は大きくなる。
【0144】
一方、走行路内障害物220が最初は走行路206の中央付近に位置してもその後何れかの方向へ向けて横移動或いは斜め移動することにより、車両200の車両進行方向位置とその走行路内障害物220の車両進行方向位置とが互いに一致する時点においてその走行路内障害物220が走行路206の端部(白線202,204)近傍に位置し或いは走行路206外に位置すれば、自車両200における危険度は小さくなる。従って、車両に生ずる危険度を適切に判定するうえでは、走行路内障害物220の横移動情報を考慮することが適切である。
【0145】
図9は、かかる変形例においてECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図9に示すルーチンは、所定時間(例えば0.1秒)ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図9に示すルーチンが起動されると、まずステップ170の処理が実行される。
【0146】
ステップ170では、画像処理装置32の処理するカメラ画像に基づいて認識される走行路上に危険な障害物が存在するか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ172の処理が実行される。
【0147】
ステップ172では、現時点での自車両と走行路内障害物との相対距離、自車両の車速Vおよびその時間微分値である加減速度μG、並びに、上記ステップ170で走行路上に存在すると判別された走行路内障害物の速度VfおよびμfGに基づいて、自車両の車両進行方向位置と走行路内障害物の車両進行方向位置とが互いに一致する時点、すなわち、仮に自車両が走行路内障害物に衝突するものとした場合における時刻(衝突推定時刻)を推定し、その衝突推定時刻における走行路内障害物の走行路に対する横方向位置を推定する処理が実行される。
【0148】
ステップ174では、上記ステップ172で推定された走行路内障害物の推定横方向位置が走行路内にあるか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、車両に危険が生じないとして、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ175の処理が実行される。
【0149】
ステップ175では、上記ステップ172で推定された走行路内障害物の推定横方向位置が車両の推定進行軌跡(S)内にあるか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、次にステップ176の処理が実行される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ178の処理が実行される。
【0150】
ステップ176では、車両に生じている危険が軽度であると判定する処理が実行される。本ステップ176の処理が実行されると、以後その危険判定に応じた措置(例えば注意喚起等)が行われる。また、ステップ178では、車両に生じている危険が重度であると判定する処理が実行される。本ステップ178の処理が実行されると、以後、その重度の危険に応じた措置(例えば警報,介入ブレーキ等)が行われる。ステップ176又は178の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0151】
上記図9に示すルーチンによれば、走行路内に危険な障害物が存在する場合には、車両が仮にその障害物に衝突するものとする衝突推定時刻におけるその障害物の推定横方向位置に応じて異なる危険度(重度,軽度,危険なし)を判定することができる。従って、本変形例によれば、車両が走行する上で支障をきたす障害物の危険判定を木目細かく的確に行うことが可能となり、その後の措置も適切に行うことが可能となる。
【0152】
また、上記の実施例においては、推定進行軌跡上に障害物が存在する際、その障害物の推定進行軌跡上における横移動情報に関係なく、すなわち、障害物および自車両がそれぞれ現時点での移動状況(速度,加速度)を維持した状況下において障害物の車両進行方向位置と自車両の車両進行方向位置とが互いに一致する時点におけるその障害物の推定進行軌跡に対する横方向位置に関係なく予め定められた危険度を判定することとしているが、この横移動情報に応じて異なる危険度を判定することとしてもよい。
【0153】
すなわち、図10は、推定進行軌跡S上に存在する障害物230と車両200に生ずる危険度との関係を説明するための図を示す。推定進行軌跡S上に危険な障害物230が存在する状況下、その後も継続してその推定進行軌跡内障害物230が推定進行軌跡S上に位置する場合には、自車両200における危険度は依然として大きい。一方、推定進行軌跡内障害物230が最初は推定進行軌跡S上に位置してもその後相対的に推定進行軌跡Sに対して横移動或いは斜め移動することにより、車両200の車両進行方向位置とその推定進行軌跡内障害物230の車両進行方向位置とが互いに一致する時点、すなわち、車両200と推定進行軌跡内障害物230とが衝突し得る時点においてその推定進行軌跡内障害物230が推定進行軌跡S外に位置すれば、自車両200における危険度は小さくなる。従って、車両に生ずる危険度を適切に判定するうえでは、推定進行軌跡内障害物230の横移動情報を考慮することが適切である。
【0154】
図11は、かかる変形例においてECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図11に示すルーチンは、所定時間(例えば0.1秒)ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図11に示すルーチンが起動されると、まずステップ180の処理が実行される。
【0155】
ステップ180では、車両推定進行軌跡演算装置24を用いて認識される推定進行軌跡上に危険な障害物が存在するか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ182の処理が実行される。
【0156】
ステップ182では、現時点での自車両と推定進行軌跡内障害物との相対距離、自車両の車速Vおよびその時間微分値である加減速度μG、並びに、上記ステップ180で推定進行軌跡上に存在すると判別された推定進行軌跡内障害物の速度VfおよびμfGに基づいて、自車両の車両進行方向位置と推定進行軌跡内障害物の車両進行方向位置とが互いに一致する時点(すなわち、衝突推定時刻)を推定し、その衝突推定時刻における推定進行軌跡内障害物の推定進行軌跡に対する横方向位置を推定する処理が実行される。
【0157】
ステップ184では、上記ステップ182で推定された推定進行軌跡内障害物の推定横方向位置が推定進行軌跡内にあるか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、次にステップ186の処理が実行される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ188の処理が実行される。
【0158】
ステップ186では、車両に生じている危険が軽度である、或いは、車両に危険が生じていないと判定する処理が実行される。本ステップ186の処理が実行されると、以後、その危険判定に応じた措置(例えば注意喚起等)が実行される。また、ステップ188では、車両に生じている危険が重度であると判定する処理が実行される。本ステップ188の処理が実行されると、以後、その重度の危険に応じた措置(例えば警報や介入ブレーキ等)が行われる。ステップ186又は188の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0159】
上記図11に示すルーチンによれば、推定進行軌跡内に危険な障害物が存在する場合には、車両が仮にその障害物に衝突するものとする衝突推定時刻におけるその障害物の推定横方向位置に応じて異なる危険度(重度,軽度,危険なし)を判定することができる。従って、本変形例によれば、車両が走行する上で支障をきたす障害物の危険判定を木目細かく的確に行うことが可能となり、その後の措置も適切に行うことが可能となる。
【0160】
更に、上記の実施例においては、カメラ34およびレーダ装置36の認知角範囲内に位置する対象物が推定進行軌跡外に存在する際には、その対象物が車幅方向へ横移動するか否かに関係なく、すなわち、対象物および自車両がそれぞれ現時点での移動状況(速度,加速度)を維持した状況下において対象物の車両進行方向位置と自車両の車両進行方向位置とが互いに一致する時点におけるその対象物の推定進行軌跡に対する横方向位置に関係なく車両に危険が生じていないと判定することとしているが、この横移動情報に応じて異なる危険度を判定することとしてもよい。
【0161】
すなわち、図12は、カメラ34による画像処理装置32およびレーダ装置36を用いて検出される推定進行軌跡S外に位置する対象物250と車両200に生ずる危険度との関係を説明するための図を示す。カメラ34およびレーダ装置36の認知角範囲内に位置する一方で推定進行軌跡S上には位置しない対象物250が存在する状況下、その後も継続してその対象物250が推定進行軌跡S外に位置する場合には、自車両200における危険度は依然として小さい。一方、出会い頭の衝突等、対象物250が最初は推定進行軌跡S外に位置してもその後推定進行軌跡Sに対して横移動或いは斜め移動することにより、車両200の車両進行方向位置とその対象物250の車両進行方向位置とが互いに一致する時点、すなわち、車両200と対象物250とが衝突し得る時点においてその対象物250が推定進行軌跡S内に位置すれば、自車両200における危険度は大きくなる。従って、車両に生ずる危険度を適切に判定するうえでは、カメラ34およびレーダ装置36の認知角範囲内に位置する一方で推定進行軌跡S外に位置する対象物250の横移動情報を考慮することが適切である。
【0162】
図13は、かかる変形例においてECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図13に示すルーチンは、所定時間(例えば0.1秒)ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図13に示すルーチンが起動されると、まずステップ190の処理が実行される。
【0163】
ステップ190では、カメラ34およびレーダ装置36の認知角範囲内の推定進行軌跡外に、自車両の車両進行方向と直交する向きに移動する対象物が存在するか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ192の処理が実行される。
【0164】
ステップ192では、現時点での自車両と対象物との相対距離D、自車両の車速V、並びに、上記ステップ190で存在すると判別された車両進行方向と直交する方向に移動する対象物の速度Vfおよび車両進行方向からの角度位置δに基づいて、その対象物の速度VfがほぼV・tanδであるか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、車両が現状のまま等速で走行を継続しても、特に、対象物の速度VfがV・tanδよりも十分に大きい場合は自車両よりも先に対象物が車両の推定進行軌跡を横切ると判断でき、また、対象物の速度VfがV・tanδよりも十分に小さい場合は自車両が通過した後に対象物が車両の推定進行軌跡を横切ると判断できるので、車両と対象物とが衝突する可能性は低い。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ194の処理が実行される。
【0165】
一方、肯定判定がなされた場合は、対象物が車両の推定進行軌跡を横切る時点に車両もその位置を通過する者と判断できるので、車両と対象物とが衝突する可能性が高い。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ196の処理が実行される。
【0166】
ステップ194では、車両に生じている危険が軽度である、或いは、車両に危険が生じていないと判定する処理が実行される。本ステップ194の処理が実行されると、以後、通常ブレーキを行えば衝突回避可能となるタイミングでその危険判定に応じた措置(例えば注意喚起等)が実行される。また、ステップ196では、車両に生じている危険が重度であると判定する処理が実行される。本ステップ196の処理が実行されると、以後、介入ブレーキを行えば衝突回避可能となるタイミングでその重度の危険に応じた措置(例えば警報や介入ブレーキ等)が行われる。ステップ194又は196の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0167】
上記図13に示すルーチンによれば、推定進行軌跡外に車両進行方向と直交する方向に移動する対象物が存在する場合にも、その対象物が推定進行軌跡に対して移動する横移動速度に応じて、すなわち、車両が仮にその横移動する対象物の車両方向位置に到達するものとする時刻におけるその対象物の推定横方向位置に応じて異なる危険度(重度,軽度,危険なし)を判定することができる。従って、本変形例によれば、車両が出会い頭に衝突するおそれのある対象物の危険判定を木目細かく的確に行うことが可能となり、その対象物との出会い頭の衝突を回避し或いはその衝突速度を軽減する措置を行うことが可能となる。
【0168】
尚、かかる変形例においては、ECU22に図13に示すルーチンを実行させることとし、直交する向きでの出会い頭衝突を想定して自車両や対象物の加減速度を考慮しないこととしているが、ECU22に図9や図11に示す如きルーチンと同様のルーチンを実行させることとし、直交する向きでの出会い頭衝突以外の衝突も想定して自車両や対象物の加減速度を考慮することとしてもよい。この場合においても、車両が仮に対象物に衝突するものとする衝突推定時刻におけるその対象物の推定横方向位置に応じて異なる危険度(重度,軽度,危険なし)を判定することが可能となる。
【0169】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1並びに7乃至21記載の発明によれば、車両が走行する上で支障をきたす危険な障害物の危険判定を木目細かく的確に行うことができる。
【0170】
請求項2記載の発明によれば、危険な障害物により車両に生ずる危険度の軽重を車両運転者に知らせることができる。
【0171】
請求項3記載の発明によれば、車両運転者の意思によらないブレーキ介入制御を実行することで、危険な障害物への車両の衝突や接触を回避し或いはその衝突等による衝撃を軽減することができる。
【0172】
請求項4記載の発明によれば、ブレーキ介入制御による制動停止距離を短くすることができ、これにより、危険な障害物との接触を回避する確率を高めることができる。
【0173】
請求項5記載の発明によれば、ブレーキ介入制御の実行が解除された後に車両の制動が継続するため、その解除直後に前車との車間距離が小さくなるのを抑制することができ、その後直ちに再度ブレーキ介入制御が実行されるのを防止することができる。
【0174】
請求項6記載の発明によれば、車両を可能な限り速やかに停止させることができる。
【0175】
請求項22記載の発明によれば、静止障害物が車両の検出可能領域外へ移動した際、その障害物により車両に生じている危険が大きいと判定することができる。
【0176】
請求項23記載の発明によれば、推定進行軌跡上に位置する障害物を車両が操舵回避可能な状態にあるにもかかわらず車両に危険が生じていると判定されるのを防止することができる。
【0177】
請求項24記載の発明によれば、車両に危険が生じていると不必要に判定されるのを防止することができる。
【0178】
請求項25記載の発明によれば、車両に搭載された撮像手段およびレーダ装置の双方を用いて車両にとって危険な障害物を検知することができる。
【0179】
請求項26記載の発明によれば、撮像手段を用いて物体を検出することができなくても、レーダ装置を用いて検出される物体の情報から危険な障害物を検知することができる。
【0180】
請求項27記載の発明によれば、レーダ装置の出力する対象物を走行路近傍に絞ることができ、その後走行路上および推定進行軌跡上に位置する危険な障害物を検知するうえでの処理負担を軽減することができる。
【0181】
また、請求項28記載の発明によれば、検知されていた障害物が車両が検知不可能となる距離に進入した際に、車両に生じている危険度が誤判定されるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である車両に搭載される車両用障害物検知装置のシステム構成図である。
【図2】本実施例において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図3】本実施例において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図4】車両が道路のカーブ入口近傍を走行する際の走行路と推定進行軌跡との位置関係を時系列順に並べた図である。
【図5】車両が道路のカーブ出口近傍を走行する際の走行路と推定進行軌跡との位置関係を時系列順に並べた図である。
【図6】図6(A)は、自車両に先行する前車が走行路および推定進行軌跡内に共に存在する状況を表した図である。また、図6(B)は、自車両に先行する前車が推定進行軌跡内に存在する一方で、走行路には存在しない状況を表した図である。
【図7】本実施例において介入ブレーキが行われる際にブレーキ制御ECUが実行する制御ルーチンのフローチャートである。
【図8】走行路上に存在する障害物と車両に生ずる危険度との関係を説明するための図である。
【図9】本実施例の変形例において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図10】推定進行軌跡上に存在する障害物と車両に生ずる危険度との関係を説明するための図である。
【図11】本実施例の変形例において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図12】カメラおよびレーダ装置の認知角範囲内に位置する一方で推定進行軌跡上には位置しない対象物と車両に生ずる危険度との関係を説明するための図である。
【図13】本実施例の変形例において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
20 車両用障害物検知装置
22 電子制御ユニット(ECU)
24 車両推定進行軌跡演算装置
32 画像処理装置
34 カメラ
36 レーダ装置
40 情報・警報表示装置
42 ブレーキ制御ECU
46 ブレーキアクチュエータ
Claims (28)
- 車両の走行路上に危険な障害物が存在するか否かを判別する走行路障害物判別手段と、
該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在するか否かを判別する推定軌跡障害物判別手段と、
前記推定軌跡障害物判別手段により推定進行軌跡上に存在すると判別された危険な障害物が車両の走行路上に存在するか否かを判別する障害物重畳判別手段と、
前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在すると判別される場合には、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別される場合に比して、重度の大きな危険が車両に生じていると判定する危険度判定手段と、
を備えることを特徴とする車両用障害物検知装置。 - 前記危険度判定手段により判定される危険度の軽重に応じた多段階の警告を車両運転者に対して行う警告手段を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記警告手段は、車両運転者に対して行う警告として車両運転者の意思によらないブレーキ介入制御を実行する制動制御手段を有することを特徴とする請求項2記載の車両用障害物検知装置。
- 前記制動制御手段は、所定のコーナリングフォースが確保される所定減速度以上の減速度の発生が指令された際、車両の操舵角が中立状態にない場合には車両に前記所定減速度を発生させ、一方、車両の操舵角が中立状態にある場合には車両に該指令減速度をタイヤ−路面間での最大許容減速度を超えない範囲で発生させるブレーキ介入制御を実行することを特徴とする請求項3記載の車両用障害物検知装置。
- 前記制動制御手段は、車両が前車に追従して走行する状況下においてブレーキ介入制御を開始した後に該ブレーキ介入制御の実行を解除するときは、制動力を所定時間をかけて減少させることを特徴とする請求項3記載の車両用障害物検知装置。
- 前記制動制御手段は、車両が前車に追従して走行する状態でない非追従走行時にブレーキ介入制御を実行する際には、実行開始から所定期間は所定のコーナリングフォースが確保される所定減速度を発生させ、前記所定期間が経過した後は、車両の操舵角が中立状態にない場合には該所定減速度を継続して発生させ、操舵角が中立状態にある場合には指令減速度をタイヤ−路面間での最大許容減速度を超えない範囲で発生させることを特徴とする請求項3記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段又は前記推定軌跡障害物判別手段により危険な障害物が存在すると判別される状況下において該障害物が該車両の走行路上又は推定進行軌跡上に複数存在する場合には、該複数の障害物のうち自車両の走行に最も近くて影響を与え得る障害物に基づいて危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在しないと判別され、かつ、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され又は前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、車両に危険が生じていないと判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、該障害物が自車両に対向走行する対向車両でない場合において、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され、又は、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、軽度の危険が車両に生じていると判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置するか否かを判別するカーブ出入口判別手段を備え、
前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段の判別結果に基づいて危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。 - 前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段により車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置すると判別される状況下、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別され、かつ、該障害物が自車両に対向走行する対向車両でない場合において、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され、又は、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、軽度の危険が車両に生じていると判定することを特徴とする請求項10記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段により車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置しないと判別される状況下、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に危険な障害物が存在すると判別される場合において、前記推定軌跡障害物判別手段により該車両の推定進行軌跡上に危険な障害物が存在しないと判別され、又は、前記障害物重畳判別手段により該危険な障害物が車両の走行路上に存在しないと判別される場合には、車両に危険が生じていないと判定することを特徴とする請求項10記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記カーブ出入口判別手段により車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置すると判別され、かつ、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別された危険な障害物が前記障害物重畳判別手段により車両の走行路上に存在すると判別される状況下において、該危険な障害物を車両が通常操舵回避不可能な状態にある場合は、通常操舵回避可能な状態にある場合に比して危険度を高めることを特徴とする請求項10記載の車両用障害物検知装置。
- 前記カーブ出入口判別手段は、車両の走行路の曲率と推定進行軌跡の曲率との関係に基づいて、車両が走行路のカーブ出入口近傍に位置するか否かを判別することを特徴とする請求項10記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段により車両の走行路上に存在すると判別される危険な障害物の、該障害物と車両との車両進行方向位置が互いに一致すると推定される時点における該走行路に対する横方向位置に応じて異なる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別される危険な障害物の、該障害物と車両との車両進行方向位置が互いに一致すると推定される時点における該推定進行軌跡に対する横方向位置に応じて異なる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、車両の推定進行軌跡上に存在しない物体の、該物体と車両との車両進行方向位置が互いに一致すると推定される時点における該推定進行軌跡に対する横方向位置に応じて異なる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、車両の走行路自体が認識されない状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、車両の走行路上に危険な障害物が存在するか否かの判別が不可能である状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、車両にスリップが生じている状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、車両が走行路を逸脱する状況下においては、前記推定軌跡障害物判別手段の判別結果に基づいて車両に生ずる危険度を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記危険度判定手段は、前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別される危険な障害物がほぼ静止する状況下で該静止障害物が検出可能領域外への相対移動に起因して推定進行軌跡上に存在しないと判別された際、判定危険度を高めることを特徴とする請求項18乃至21の何れか一項記載の車両用障害物検知装置。
- 前記推定軌跡障害物判別手段により車両の推定進行軌跡上に存在すると判別される危険な障害物を車両が緊急操舵回避可能な状態にある場合に、前記危険度判定手段による車両に生ずる危険度判定を禁止する危険度判定禁止手段を備えることを特徴とする請求項18乃至21の何れか一項記載の車両用障害物検知装置。
- 車両運転者により方向指示操作がなされ、かつ、車速が所定値以上である場合に、前記危険度判定手段による車両に生ずる危険度判定を禁止する危険度判定禁止手段を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記走行路障害物判別手段、前記推定軌跡障害物判別手段、及び前記障害物重畳判別手段はそれぞれ、車両に搭載された撮像手段を用いて検出される車両の走行路上または推定進行軌跡上に存在する物体の有無、並びに、車両に搭載されたレーダ装置を用いて検出される該物体との距離および速度に基づいて、危険な障害物の存在有無を判別することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
- 前記走行路障害物判別手段、前記推定軌跡障害物判別手段、及び前記障害物重畳判別手段はそれぞれ、前記撮像手段を用いて物体が検出されない一方、前記レーダ装置を用いて物体が検知される場合には、該レーダ装置を用いて検出される物体に基づいて、危険な障害物の存在有無を判別することを特徴とする請求項25記載の車両用障害物検知装置。
- 前記撮像手段を用いて車両の走行路を検出する走行路検出手段を備え、
前記レーダ装置は、前記走行路検出手段により検出される車両の走行路の少なくとも曲率半径を含む位置情報を用いて該走行路近傍の物体を抽出し、該物体の位置情報および速度情報を検知情報として出力することを特徴とする請求項25記載の車両用障害物検知装置。 - 前記危険度判定手段は、前記走行路障害物判別手段又は前記推定軌跡障害物判別手段により危険な障害物が存在すると判別された後、該障害物と車両との距離が車両における対象物の認知限界距離を下回ることにより該走行路障害物判別手段又は該推定軌跡障害物判別手段により危険な障害物が存在しないと判別される場合には、該障害物が存在しないと判別される前における危険度判定を維持することを特徴とする請求項1記載の車両用障害物検知装置。
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