JP2002121584A - 油脂組成物 - Google Patents
油脂組成物Info
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Abstract
なるという特性とテンパリング操作なしで安定なβ型結
晶が得られるという特性とを併せ有し、分子蒸留といっ
た手間のかかる工程がなく、簡便に製造することが可能
な油脂組成物を提供する。 【解決手段】 SUS(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂
肪酸)で表されるトリグリセリドを20重量%以上、U
SU(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)で表される
トリグリセリドを20重量%以上それぞれ含有し、かつ
該SUSで表されるトリグリセリドと該USUで表され
るトリグリセリドの重量比が1:0.5〜1.3である
ことを特徴とする油脂組成物。
Description
脂肪酸、U:不飽和脂肪酸;以下同様)で表されるトリ
グリセリドとUSU(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪
酸;以下同様)で表されるトリグリセリドをそれぞれ特
定量含有する油脂組成物に関する。
16の飽和脂肪酸をP、炭素数18の飽和脂肪酸をS、
炭素数18で1つの不飽和結合を有する脂肪酸をOで表
すと、対称型トリグリセリドPOPとその逆対称型のO
PO、同様にSOSとOSO、POPとOSO、POS
とOSOは、それぞれモル比1:1の割合で分子間化合
物(molecular compound)を形成すること、またこの分
子間化合物は、テンパリング操作なしで、2鎖長構造で
安定なβ型という独特の結晶構造が得られることが知ら
れている。分子間化合物の構造に関して、日本食品科学
工学会誌、第45巻、第10号、579−588(19
98)では、対称型トリグリセリドは分子中に飽和鎖と
シス型オレフィン基を含む不飽和鎖との立体障害が存在
するが、逆対称型トリグリセリドと隣り合い、分子間で
互いに別の分子とペアを組むことにより、 単独分子中で
は解消し得なかった飽和鎖と不飽和鎖間の立体障害を解
消し、結晶全体としての格子エネルギーを減少させるも
のと推定している。
て、特開平4−135453号公報では、グリセリン骨
格の2位に炭素数16〜22の飽和脂肪酸を、1,3位
に炭素数16〜18で一つの不飽和結合を有する脂肪酸
を結合した混酸型トリグリセリドが、カカオ脂と特異な
結晶構造を形成し、融点はカカオ脂とほぼ同等であるに
もかかわらず、 耐圧力変形性はカカオ脂よりも著しく小
さいという特異な物理的性質を付与し、チョコレートの
品質を向上させると述べている。このような性質を利用
して、従来の方法では作り得なかった新しい物性を有す
る製品の開発が期待される。
の2位に不飽和脂肪酸を、1,3位に飽和脂肪酸を結合
した混酸型トリグリセリド、及びその逆対称型トリグリ
セリドを単に混合することにより分子間化合物が形成さ
れることが示されている。
1,3位に飽和脂肪酸を結合した混酸型トリグリセリド
は、例えばハードバターの原料となる植物性油脂に多く
含まれており、容易に入手することができる。
脂肪酸を、1,3位に不飽和脂肪酸を結合した混酸型ト
リグリセリドは、入手が困難であり、その製造方法に関
する特許出願としては、特開平5−76283号公報や
特表平8−509620号公報がある。前者は、グリセ
リドの1及び3位においてのみ活性な位置特異的である
酵素リパーゼの転位触媒としての存在下で、菜種油又は
大豆油の加水分解により得られる遊離脂肪酸類又はそれ
らのアルキルエステル類と、実質的に2−パルミチルグ
リセリドからなるグリセリドをエステル交換させた後、
脂肪酸、 ジグリセリドを除去する方法である。後者は、
グリセリドの1及び3位においてのみ活性な位置特異的
である酵素リパーゼの転位触媒としての存在下で、3飽
和トリグリセリドと炭素数18以上の不飽和脂肪酸をエ
ステル交換させ、脂肪酸、ジグリセリドを除去した後、
さらに、1,3位にパルミチン及び/又はステアリン酸
以外の酸を多く含み、かつ炭素鎖16以上の飽和脂肪酸
の総量の40重量%以上が2位にない油ブレンドと混合
し、1,3−特異酵素を使用して酵素処理することによ
って、3飽和トリグリセリドのレベルを下げる方法であ
る。両者とも、1,3位に不飽和脂肪酸を結合した混酸
型トリグリセリドを得るために、グリセリドの1及び3
位においてのみ活性な位置特異的である酵素リパーゼを
用いて、2位に飽和脂肪酸を有するトリグリセリドと不
飽和脂肪酸をエステル交換させており、反応後、蒸留し
て脂肪酸を除去するという工程が必要であり、工程が複
雑で、かつコストがかかる点に問題があった。
かかわらず、可塑性が大きくなるという特性とテンパリ
ング操作なしで安定なβ型結晶が得られるという特性と
を併せ有し、分子蒸留といった手間のかかる工程がな
く、簡便に製造することが可能な油脂組成物を提供する
ことにある。
果、SUSで表されるトリグリセリドとUSUで表され
るトリグリセリドとをそれぞれ特定割合で含有し、結晶
化させることにより分子間化合物を形成させる油脂組成
物によって、上記目的が達成し得ることを知見した。
リグリセリドを20重量%以上、USUで表されるトリ
グリセリドを20重量%以上それぞれ含有し、かつ該S
USで表されるトリグリセリドと該USUで表されるト
リグリセリドの重量比が1:0.5〜1.3であること
を特徴とする油脂組成物を提供するものである。
の形態について説明する。
USで表されるトリグリセリド(以下、単にSUSとい
う)を20重量%以上、USUで表されるトリグリセリ
ド(以下、単にUSUという)を20重量%以上それぞ
れ含有し、かつ該SUSと該USUの重量比が1:0.
5〜1.3であることを特徴とする。
%以上、好ましくは25〜50重量%、さらに好ましく
は30〜50重量%含有する。SUSが20重量%より
も少ないと、結晶化させたときの分子間化合物の形成量
が少なくなるため好ましくない。
0重量%以上、好ましくは25〜50重量%、さらに好
ましくは30〜50重量%含有する。USUが20重量
%よりも少ないと、結晶化させたときの分子間化合物の
形成量が少なくなるため好ましくない。
USUの重量比が1:0.5〜1.3、好ましくは1:
0.7〜1.2、さらに好ましくは1:0.9〜1.1
である。SUSとUSUの重量比が1:0.5〜1.3
の範囲外であると、効率良く分子間化合物を形成しない
ので好ましくない。
ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%
以下含有し、SUUを好ましくは15重量%以下、さら
に好ましくは12重量%以下、UUUを25重量%以
下、さらに好ましくは20重量%以下含有する。なお、
ここにおいて、上記と同様に、Sは飽和脂肪酸、Uは不
飽和脂肪酸を示し、以下においても同様である。
であるため、油脂組成物を結晶化させることによりSU
S1分子とその逆対称型のUSU1分子が分子間化合物
(molecular compound)を形成する。そして分子間化合
物を形成していることは2θ:0〜25°の範囲でX線
回折測定をしたときに、2鎖長構造であり、かつ安定な
β型を示すことにより確認することができる。上記分子
間化合物の油脂組成物中の形成量は現在のところ測定す
ることはできない。よって、本発明では、分子間化合物
の形成量とは、分子間化合物形成量の予測しうる最大値
を計算により求めたものとする。計算方法は以下の通り
である。
成物中の、SUSの重量%とUSU重量%のうち、より
少ないほうの重量%)×2
組成物の分子間化合物の形成量は、好ましくは40重量
%以上、さらに好ましくは50重量%以上、最も好まし
くは60重量%以上である。
子パン、デニッシュ、パイ、シュー、ドーナツ、ケー
キ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン
等のベーカリー製品に練り込み用、折込み用、フィリン
グ用、サンド用、トッピング用、スプレッド用、スプレ
ー用、コーティング用、フライ用として使用することが
できる。
うな方法で得ることができる。まず、SUSを含有する
油脂(以下、油脂Aという)と、USUを含有する油脂
(以下、油脂Bという)を混合する。そして、これを硬
部油と軟部油に分別し、得られた硬部油が本発明の油脂
組成物である。
飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以上の飽和脂
肪酸を示す。具体的には、パルミチン酸、 ステアリン
酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。Uは不
飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以上のモノエ
ン酸及び/又はジエン酸(パルミトレイン酸、オレイン
酸、リノール酸、エイコセン酸、エルシン酸等)、 さら
に好ましくは炭素鎖16〜18のモノエン酸(パルミト
レイン酸、オレイン酸)を示す。
した対称型トリグリセリドである。本発明では、このS
USの1位と3位に同一の飽和脂肪酸が結合している必
要はない。
しくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以
上、最も好ましくは60重量%以上である。
ア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂、コクム脂、パ
ーム油から選ばれた1種又は2種以上、ならびにこれら
を水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又
は2以上の処理を施した加工油脂から選ばれた1種又は
2種以上を挙げることができる。
USUを含有する。油脂Bにおいても、Sは飽和脂肪酸
を示し、好ましくは炭素鎖16以上の飽和脂肪酸を示
す。Uは不飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以
上のモノエン酸及び/又はジエン酸、 さらに好ましくは
炭素鎖16〜18のモノエン酸を示す。
合した対称型トリグリセリドである。本発明ではこのU
SUの1位と3位に同一の不飽和脂肪酸が結合している
必要はない。
くは4重量%以上、さらに好ましくは8重量%以上、最
も好ましくは12重量%以上である。
トリグリセリド(以下、SUU、U3とそれぞれいう)
を含有していてもよい。SUUは、1位にS、2位と3
位にUを結合した非対称型トリグリセリドである。
合計量は、好ましくは84重量%以下、さらに好ましく
は82重量%以下、最も好ましくは重量80重量%以下
である。
2Uで表されるトリグリセリド(以下、S3、S2Uと
それぞれいう)を含んでもよい。ここでいうS2Uと
は、1,2位にS、3位にUを結合した非対称型トリグ
リセリド及び1,3位にS、2位にUを結合した対称型
トリグリセリド両方を含むものとする。
合計量は、好ましくは12重量%以下、さらに好ましく
は10重量%以下、最も好ましくは8重量%以下であ
る。
脂、乳脂等、もしくはその分別軟部油が挙げられる。ま
た、パーム油、パーム軟部油、シア脂軟部油、サル脂軟
部油をランダムエステル交換した油脂、もしくはその分
別軟部油が挙げられる。さらに、パーム油、パーム軟部
油、パーム硬部油、シア脂軟部油、サル脂軟部油、ラー
ド、 ラード硬部油、 牛脂、牛脂硬部油等と、ハイオレイ
ックひまわり油、大豆油、菜種油等の液状油とを、ラン
ダムエステル交換した油脂、もしくはその分別軟部油
や、大豆油、 菜種油、 コーン油、パーム油、パーム硬部
油、ラード、 牛脂等の極度硬化油と、ハイオレイックひ
まわり油、大豆油、菜種油等の液状油とを、ランダムエ
ステル交換した油脂、もしくはその分別軟部油が挙げら
れる。
は特に制限はないが、好ましくは重量比で、油脂A:油
脂B=10〜30:90〜70の割合で混合するのがよ
く、さらに好ましくは油脂Aと油脂Bの混合油中のSU
Sのモル数とUSUのモル数の比率が、1:1となるよ
うにするのがよい。
硬部油と軟部油に分別する。分別方法は、特に制限はな
く、溶剤を用いても用いなくても、またいかなる温度で
分別してもよいが、得られる硬部油における非対称型ト
リグリセリドSUU及びU3の割合が小さく、軟部油に
おける対称型トリグリセリドUSUの割合が小さい条件
で分別するのがよい。具体的には、 溶剤を用いる場合に
は、好ましくはアセトン及び/又はヘキサンを用いて、
重量比率で油脂: 溶剤=1: 5、分別温度はアセトンを
用いるときは10〜−5℃、ヘキサンを用いるときは0
〜−20℃で分別するのがよく、さらに好ましくは油
脂: 溶剤=1: 1〜3、分別温度はアセトンを用いると
き5〜−3℃、ヘキサンを用いるときは−5〜−13℃
で分別するのがよい。
しくは30〜10℃、さらに好ましくは25〜15℃で
分別するのがよい。
るよりは、溶剤を用いて分別するのがよい。
明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によ
り何ら制限されるものではない。また、「部」はすべて
重量基準である。
硬部油、 油脂Bとして下記のエステル交換油の分別軟部
油を用いた。
0部を混合し、対油1.5部のリパーゼQLC(名糖産
業(株) 製)を添加して65℃で16h撹拌し、ランダ
ムエステル交換反応を行い、エステル交換油を得た。得
られたエステル交換油とアセトンを重量比率で1:2の
割合で混合し、0℃で分別して分別軟部油を得た。
合した油脂Cを原料油とし、油脂Cとアセトンを重量比
率で1:3の割合で混合し、−3℃で分別して硬部油と
軟部油を得た。得られた分別硬部油を精製し、これを油
脂Dとした。
示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリ
グリセリド組成を表5に示す。
間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持
した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、
結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実
施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖
長構造で、かつ安定なβ型であることも確認され、分子
間化合物を形成していることが分かった。
USとUSUからなる分子間化合物を67重量%形成し
ていた。
油、 油脂Bとして下記のエステル交換油の分別軟部油を
用いた。
5部を混合し、対油1.5部のリパーゼQLC(名糖産
業(株) 製)を添加して65℃で16h撹拌し、ランダ
ムエステル交換反応を行い、エステル交換油を得た。得
られたエステル交換油とアセトンを重量比率で1:3の
割合で混合し、5℃で分別して分別軟部油を得た。
合した油脂Cを原料油とし、油脂Cとアセトンを重量比
率で1:3の割合で混合し、−3℃で分別して得た分別
硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリ
グリセリド組成を表5に示す。
間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持
した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、
結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実
施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖
長構造で、かつ安定なβ型であることも確認され、分子
間化合物を形成していることが分かった。
USとUSUからなる分子間化合物を61重量%形成し
ていた。
油脂Bとしてパーム軟部油のランダムエステル交換油と
アセトンを重量比率で1:3の割合で混合し、5℃で分
別して得た分別軟部油を用いた。
合した油脂Cを原料油とし、油脂Cとアセトンを重量比
率で1:3の割合で混合し、−3℃で分別して得た分別
硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリ
グリセリド組成を表5に示す。
間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持
した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、
結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実
施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖
長構造で、かつ安定なβ型であることも確認され、分子
間化合物を形成していることが分かった。
USとUSUからなる分子間化合物を60重量%形成し
ていた。
硬部油、 油脂Bとしてサル脂分別軟部油を用いた。
合した油脂Cを原料油とし、実施例1と同様の方法で分
別して得た分別硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリ
グリセリド組成を表5に示す。
間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持
した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、
結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実
施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖
長構造となっておらず、かつ準安定形のβ’型で、分子
間化合物を形成していないことが分かった。
形成する油脂組成物であり、そのため融点が高いにもか
かわらず、可塑性が大きくなるという特性とテンパリン
グ操作なしで安定なβ型結晶が得られるという特性とを
併せ有するものである。
いった手間のかかる工程がなく、簡便に製造することが
可能である。
Claims (4)
- 【請求項1】 SUS(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂
肪酸)で表されるトリグリセリドを20重量%以上、U
SU(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)で表される
トリグリセリドを20重量%以上それぞれ含有し、かつ
該SUSで表されるトリグリセリドと該USUで表され
るトリグリセリドの重量比が1:0.5〜1.3である
ことを特徴とする油脂組成物。 - 【請求項2】 上記SUSで表されるトリグリセリド
を含有する油脂と、上記USUで表されるトリグリセリ
ドを含有する油脂とを混合、分別することにより得られ
た硬部油である請求項1記載の油脂組成物。 - 【請求項3】 上記SUSで表されるトリグリセリドを
含有する油脂が、SUSで表されるトリグリセリドを4
0重量%以上含有する請求項2記載の油脂組成物。 - 【請求項4】 上記USUで表されるトリグリセリドを
含有する油脂が、USUで表されるトリグリセリドを4
重量%以上含有する請求項2記載の油脂組成物。
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---|---|---|---|
JP2000311391A JP4900996B2 (ja) | 2000-10-12 | 2000-10-12 | 油脂組成物の製造方法 |
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