JP3611655B2 - 油脂組成物及びその製造方法並びに該油脂組成物を用いて製造された焼き菓子類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クッキー、ビスケット、シュー、パイ等の焼き菓子類用油脂として、練り込み用途、折り込み用途、サンド・フィリング用途、スプレー・コーティング用途に適した物性・機能を有するマーガリン、ショートニング等に用いられる油脂組成物及びその製造方法並びに該油脂組成物を用いて製造された焼き菓子類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、クッキー、ビスケット、シュー、パイ等の焼き菓子類用油脂として、パーム油等の植物油脂や植物硬化油、ラードや牛脂、魚硬化油等の動物油脂が用いられている。これらの油脂は各々の結晶サイズや結晶系の違いにより、用途や目的によって単独又はブレンドにより使い分けられている。
【0003】
特公昭61−47491号公報には、ビスケット中の油脂の構成脂肪酸中のトランス酸含量が30重量%以上で特定の固体脂含量を有し、且つ、該油脂の固体脂含量とチョコレート中の油脂の固体脂含量との差が20℃で35重量%以下である油脂が記載されている。また、特開昭64−60325号公報には、必須成分として魚硬化油を20重量%以上とSFI値が20℃で50重量%以上、30℃で30重量%以上である植物性油脂を20重量%以上含有した油脂組成物であって、該油脂組成物のSFI値が20℃で30〜55重量%、30℃で10〜30重量%、40℃で5重量%以下の油脂組成物が記載されている。更に、特開平6−311845号公報には、油脂だけでなく親油性のポリグリセリン脂肪酸エステル及び(又は)親油性のショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を配合した油脂組成物が記載されている。更にまた、特開昭63−126457号公報には、トリグリセリドを構成する3個の脂肪酸の残基の内、少なくとも1個が炭素数20〜24の飽和脂肪酸である2飽和1不飽和型混酸基トリグリセリドを10重量%以上含有する油脂及び該油脂を使用した複合菓子類の製造方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した種々の提案においては、焼き菓子類用に適する油脂として、硬化油やトランス型の油脂、脂肪酸の鎖長の違う油脂のブレンドによる分子間の脂肪酸組成のランダム化や乳化剤配合による、結晶微細化や結晶化促進、結晶ネットワーク化を狙ったものである。しかし、抜本的な油脂の物性改良には至らなかった。
【0005】
また、特開平5−345900公報及び特開平4−66045号公報には、本発明と同様に分子内の脂肪酸組成のランダム化が提案がされているが、前者は油脂組成物ではなく、パーム系油脂及びラウリン系油脂、並びにベヘン酸またはそのエステルの混合物に、リパーゼを作用させてエステル交換することを特徴とする硬質油脂の製造方法の提案であり、1、3位に対して特異性を有するリパーゼを推奨している。後者は特許請求の範囲で、80℃で溶解したあと、30℃に移して60分後のSFC値が前記24時間後のSFCに対して70重量%以上であることを特徴とする油脂組成物として、複合菓子用焼菓子類に限定し、且つエステル交換油脂も5〜90重量部混合し油脂組成物のSFCを調整するとの記載通り、添加油(部分的に用いる)的に使用する提案である。
【0006】
従って、本発明の目的は、クッキー、ビスケット、シュー、パイ等の焼き菓子類用油脂として、練り込み用途、折り込み用途、サンド・フィリング用途、スプレー・コーティング用途に適した物性・機能を有するマーガリン、ショートニング等に用いられる油脂組成物及びその製造方法並びに該油脂組成物を用いて製造された焼き菓子類を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究した結果、分子内の脂肪酸組成のランダム化を特徴とする油脂組成物が、上記目的を達成し得るものであることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50重量%を含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂のみを油脂原料として使用したものであることを特徴とする可塑性油脂組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50重量%を含有する油脂配合物を用いてランダムエステル交換を行ない、該ランダムエステル交換により得られたランダムエステル交換油脂のみを油脂原料として使用し、急冷可塑化を行なうことを特徴とする可塑性油脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記油脂組成物を用いて製造されたことを特徴とする焼き菓子類を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、先ず本発明の油脂組成物について詳述する。
本発明の油脂組成物に用いられる、炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%(以下、単に「%」という)及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50%を含有する油脂配合物は、炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂と炭素数20以上の飽和脂肪酸を含有する油脂とからなる原料油脂を用いて、上記の脂肪酸の割合となるように配合することにより得ることができる。
【0012】
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、パーム核油、ヤシ油、ババス油、乳脂、及びこれらの水添油脂、或いはこれらの分別油脂、エステル交換油脂等の単独若しくは混合油、又は脂肪酸を挙げることができる。
【0013】
また、上記の炭素数20以上の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、ハイエルシンナタネ油、魚油、サル脂、及びこれらの水添油脂、或いはこれらの分別油脂、エステル交換油脂等の単独若しくは混合油、又は脂肪酸を挙げることができる。
【0014】
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂は、上記油脂配合物中に該炭素数14以下の飽和脂肪酸が2〜50%、好ましくは10〜40%、更に好ましくは10〜30%となるように配合される。ここで、該炭素数14以下の飽和脂肪酸の配合量が2%未満では、焼き菓子類用油脂として充分に物性・機能の改良ができず、また、50%を超えると、焼き菓子類用油脂として硬い傾向になり、口溶けの悪さにも影響する。
【0015】
また、上記の炭素数20以上の飽和脂肪酸を含有する油脂は、上記油脂配合物中に該炭素数20以上の飽和脂肪酸が1〜50%、好ましくは5〜30%、更に好ましくは5〜20%となるように配合される。ここで、該炭素数20以上の飽和脂肪酸の配合量が1%未満では、焼き菓子類用油脂として充分に物性・機能の改良ができず、また、50%を超えると、焼き菓子類用油脂として硬い傾向になり、口溶けの悪さにも影響する。
【0016】
上記油脂配合物には、上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸と上記の炭素数20以上の飽和脂肪酸との含有量が上記の範囲であれば、その他の油脂を加えてもよい。該その他の油脂としては、例えば、エステル交換のその他の油脂が挙げられ、詳しくは、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、米油、牛脂、豚脂、カカオバター、及びこれらの水添油脂、或いはこれらの分別油脂、エステル交換油脂等の単独若しくは混合油、又は脂肪酸を挙げることができる。
【0017】
本発明の油脂組成物は、上記油脂配合物を用いてランダムエステル交換を行なうことにより得られるランダムエステル交換油脂からなるものである。
【0018】
本発明の油脂組成物は、上記ランダムエステル交換油脂のみを油脂原料として使用したものである。また、本発明の油脂組成物に、必要であれば、その他の成分として水や乳化剤、呈味物質を添加し、乳化、急冷可塑化することにより、マ−ガリンやショ−トニングが得られる。このとき、上記ランダムエステル交換油脂の含量には特に制限はない。
【0019】
ここで、上記乳化剤としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、上記呈味物質としては、例えば、砂糖、粉糖、食塩、シロップ、カカオマス、ココアパウダー、粉乳、香料等が挙げられる。
【0020】
本発明の油脂組成物は、クッキ−、ビスケット、シュ−、パイ等の焼き菓子類に好適に使用することができる。
【0021】
次に、本発明の油脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、上述した本発明の油脂組成物の好ましい製造方法であり、炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50重量%を含有する油脂配合物を用いてランダムエステル交換を行ない、該ランダムエステル交換により得られたランダムエステル交換油脂のみを油脂原料として使用し、急冷可塑化を行なうことを特徴とする可塑性油脂組成物の製造方法である。
【0022】
上記ランダムエステル交換の方法は、常法のリパーゼ等の酵素による方法でもナトリウムメチラート等のアルカリ触媒による方法でもよく、特に制限されるものではない。
【0023】
上記ランダムエステル交換によるランダム化率(2位の脂肪酸の変換率)は、80%以上とすることが好ましく、100%とすることが最も好ましい。該ランダム化率を80%未満とすると、口溶けが非常に悪く、焼き菓子類用としての物性、機能を有しない恐れがある。
【0024】
次に、本発明の焼き菓子類について説明する。
本発明の焼き菓子類は、上述した本発明の油脂組成物を用いて製造されたことを特徴とするものである。
【0025】
本発明の焼き菓子類における上記油脂組成物の使用量は、焼き菓子類の種類、例えば、クッキ−、ビスケット、シュ−、パイ等に応じて任意であり、特に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
以下に実施例と比較例とを共に挙げて更に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の例における含量を示す%は、特に断りのない限り重量%のことを表す。
【0027】
実施例1
炭素数14(以下、「C14」と表す)以下の飽和脂肪酸含量が73%、炭素数20(以下、「C20」と表す)以上の飽和脂肪酸含量が0%であるヤシ油40%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が45%であるハイエルシンナタネ極度硬化油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%である大豆油30%を配合し、ナトリウムメチラート(対油0.1%)を触媒として80℃、30分間ランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂のC14以下の飽和脂肪酸含量は29%、C20以上の飽和脂肪酸含量は14%で、ランダム化率は98%であった。このランダムエステル交換油脂を81.0%、モノグリ0.5%、レシチン0.3%、脱脂粉乳1.0%、食塩1.0%、水16.0%、フレーバー0.2%を乳化、急冷可塑化により、ロールイン用マーガリンを作製し、その後、該ロールイン用マーガリンを用いてパイを作製した。上記ロールイン用マーガリンは、油脂のコシが良好で、伸展性に優れている為、フレーキーな食感の、且つ口溶けの良好なパイが得られた。
【0028】
比較例1
C14以下の飽和脂肪酸含量が73%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるヤシ油40%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が45%であるハイエルシンナタネ極度硬化油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%である大豆油30%を配合した。該配合油のC14以下の飽和脂肪酸含量は29%、C20以上の飽和脂肪酸含量は14%で、ランダム化率は0%であった。この配合油を81.0%、モノグリ0.5%、レシチン0.3%、脱脂粉乳1.0%、食塩1.0%、水16.0%、フレーバー0.2%を乳化、急冷可塑化により、ロールイン用マーガリンを作製し、その後、該ロールイン用マーガリンを用いてパイを作製した。上記ロールイン用マーガリンは伸展性が悪い為、浮きの悪く、且つワキシーで口溶けが悪いパイになった。
【0029】
実施例2
C14以下の飽和脂肪酸含量が71%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるパーム核油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が7%、C20以上の飽和脂肪酸含量が41%である魚極度硬化油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるナタネ微水添加油40%を配合し、リパーゼ(商品名:SP382、NOVO製、位置特異性なし、キャンディラ属由来)を用いてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂のC14以下の飽和脂肪酸含量は22%、C20以上の飽和脂肪酸含量は13%で、ランダム化率は99%であった。このランダムエステル交換油脂を99.3%、モノグリ0.5%、レシチン0.2%を急冷可塑化により、ショートニングを得た。このショートニングを用いて常法にてビスケットを作製した。このビスケットは、ショートネスに優れた軽い食感で口溶けが良く、チョコレートと複合しても経日的にブルーム(白色化)が起こらなかった。
【0030】
比較例2
C14以下の飽和脂肪酸含量が71%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるパーム核油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が1%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるパーム硬化油40%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるナタネ微水添加油30%を配合し、リパーゼ(商品名:SP382、NOVO製、位置特異性なし、キャンディラ属由来)を用いてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂のC14以下の飽和脂肪酸含量は22%、C20以上の飽和脂肪酸含量は0%で、ランダム化率は90%であった。このランダムエステル交換油脂を99.3%、モノグリ0.5%、レシチン0.2%を急冷可塑化により、ショートニングを得た。このショートニングを用いて常法にてビスケットを作製した。このビスケットは、実施例2で作製したビスケットに比べて、若干ショートネスに欠けた食感で、口溶けは問題ないが、チョコレートと複合した場合、経日的にブルーム(白色化)が発生した。
【0031】
比較例3
C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が1%である大豆硬化油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が45%であハイエルシンナタネ極度硬化油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるナタネ微水添加油40%を配合し、リパーゼ(商品名:SP382、NOVO製、位置特異性なし、キャンディラ属由来)を用いてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂のC14以下の飽和脂肪酸含量は0%、C20以上の飽和脂肪酸含量は14%で、ランダム化率は98%であった。このランダムエステル交換油脂を99.3%、モノグリ0.5%、レシチン0.2%を急冷可塑化により、ショートニングを得た。このショートニングを用いて常法にてビスケットを作製した。このビスケットは、実施例2で作製したビスケットに比べて、若干ショートネスに欠けた食感で、口溶けは問題ないが、チョコレートと複合した場合、経日的にブルーム(白色化)が発生した。
【0032】
比較例4
C14以下の飽和脂肪酸含量が71%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるパーム核油20%、エステル交換等によりC14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が80%にしたハイエルシンナタネ極度硬化油を70%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるナタネ油10%を配合し、リパーゼ(商品名:SP382、NOVO製、位置特異性なし、キャンディラ属由来)を用いてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂のC14以下の飽和脂肪酸含量は14%、C20以上の飽和脂肪酸含量は56%で、ランダム化率は80%であった。このランダムエステル交換油脂を99.3%、モノグリ0.5%、レシチン0.2%を急冷可塑化により、ショートニングを得た。このショートニングを用いて常法にてビスケットを作製した。このビスケットは、実施例2で作製したビスケットに比べて、ショートネスに欠けた食感で、口溶けが非常に悪い為、商品価値が著しく損なわれていた。
【0033】
比較例5
C14以下の飽和脂肪酸含量が71%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるパーム核油30%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が0%であるハイエルシンナタネ油を10%、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C20以上の飽和脂肪酸含量が1%である大豆硬化油60%を配合し、リパーゼ(商品名:SP382、NOVO製、位置特異性なし、キャンディラ属由来)を用いてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂のC14以下の飽和脂肪酸含量は21%、C20以上の飽和脂肪酸含量は0%で、ランダム化率は93%であった。このランダムエステル交換油脂を99.3%、モノグリ0.5%、レシチン0.2%を急冷可塑化により、ショートニングを得た。このショートニングを用いて常法にてビスケットを作製した。このビスケットは、実施例2で作製したビスケットに比べて、ショートネス、口溶け等は同等であったが、チョコレートと複合した場合、経日的にブルーム(白色化)が発生した。
【0034】
実施例3
炭素数14以下の飽和脂肪酸73%、炭素数20以上の飽和脂肪酸0%であるヤシ油40%、炭素数14以下の飽和脂肪酸0%、炭素数20以上の飽和脂肪酸45%であるハイエルシンナタネ極度硬化油20%、炭素数14以下の飽和脂肪酸0%、炭素数20以上の飽和脂肪酸0%である大豆油40%を配合し、ナトリウムメチラート(対油0.1%)を触媒として80℃、30分間ランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してランダムエステル交換油脂(炭素数14以下の飽和脂肪酸含量29%、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量9%、ランダム化率98%)を得た。このランダムエステル交換油脂を61.0%、モノグリ0.5%、レシチン0.3%、脱脂粉乳1.0%、食塩1.0%、水36.0%、フレーバー0.2%を乳化、急冷可塑化により、マーガリンを作製した。このマーガリン50%、砂糖40%、粉乳10%を混合しバタークリームを得た。得られたバタークリームは、シューのセンター用クリームとして、保型性、口溶けが良好であった。
【0035】
以上の結果より、炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50重量%を含有する油脂配合物を用いてランダムエステル交換を行なうことにより得られたランダムエステル交換油脂からなる本発明の油脂組成物(実施例1〜3)は、可塑性、クリ−ミング性、吸水性、ブル−ム耐性に優れたものであることが判る。また、本発明の油脂組成物はパイやビスケット等の焼き菓子類に適用でき、得られた焼き菓子類が食感、口溶け、保型性に良好であることも判る。
【0036】
【発明の効果】
本発明の油脂組成物は、可塑性、クリ−ミング性、吸水性、ブル−ム耐性に優れたものである。従って、本発明の油脂組成物は、練り込み用途、折り込み用途、サンド・フィリング用途、スプレー・コーティング用途に適したものであり、クッキー、ビスケット、シュー、パイ等の焼き菓子類に有用である。
また、本発明の油脂組成物の製造方法によれば、上記の優れた性能を有する油脂組成物を得ることができる。
また、本発明の焼き菓子類は、食感、口溶け、保型性が良好なものである。
Claims (4)
- 炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50重量%を含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂のみを油脂原料として使用したものであることを特徴とする可塑性油脂組成物。
- 炭素数14以下の飽和脂肪酸2〜50重量%及び炭素数20以上の飽和脂肪酸1〜50重量%を含有する油脂配合物を用いてランダムエステル交換を行ない、該ランダムエステル交換により得られたランダムエステル交換油脂のみを油脂原料として使用し、急冷可塑化を行なうことを特徴とする可塑性油脂組成物の製造方法。
- 上記ランダムエステル交換によるランダム化率が、80%以上である請求項2記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
- 請求項1記載の可塑性油脂組成物を用いて製造されたことを特徴とする焼き菓子類。
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