JP2003169601A - 焼き菓子用油脂組成物 - Google Patents

焼き菓子用油脂組成物

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英徳 尾方
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造する際に特殊な温度管理をしなくても安
定結晶を含有し、且つソフトな食感で、風味や口溶けが
良好な焼き菓子類を製造することのできる焼き菓子用油
脂組成物を提供すること。 【解決手段】 S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、M
はモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド
とMS3M(S3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を
表す)で表されるトリグリセリドとからなるコンパウン
ド結晶を含有することを特徴とする焼き菓子用油脂組成
物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、風味及び口溶けが
良好であり、ソフトな食感である焼き菓子類を提供する
ことの出来る焼き菓子用油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、マーガリン、ショートニング等の
可塑性油脂に使用される油脂は“マーガリン ショート
ニング ラード“ (P324中澤君敏著:株式会社光琳発
行)に記載の『マーガリン、ショートニングは常温で結
晶性脂肪をもつ可塑性物質と定義されるが、そのためそ
の物理性は主に稠度、可塑性及び結晶構造に関連する。
物理的にその結晶状態はAlfaは蝋状(アセトグリセリド
の如き)、Betaは粗結晶、そしてBeta-primeは微粒状で
ある。融点ではAlfa、Beta-prime、Betaの順に高くな
る。マーガリン、ショートニング組成の望ましい結晶状
態はBeta-primeといわれている。』の通り、その結晶状
態はβプライム型のものが良好とされ、用いられてき
た。
【0003】βプライム型の油脂結晶は、微細結晶をと
り乳化安定性に寄与し、良好な稠度を示す。反面、この
βプライム型結晶はエネルギー的には準安定形であるた
め、保存条件等が適切でない場合等には、更にエネルギ
ー的に安定なβ型結晶へと転移現象を引き起こすという
欠点があった。このβ型結晶は最安定形であるため、こ
れ以上の転移現象を起こすことはないが、一般に結晶サ
イズが大きく、グレイニングやブルームと呼ばれる粗大
結晶粒を形成し、ザラつきや触感の悪さを呈し、製品価
値の全くないものになってしまう。
【0004】βプライム型を経由するβ型結晶であって
も、結晶サイズの比較的小さなものも知られている。例
えば、カカオ脂のV型結晶がこれに相当し、実質はSO
S、POS等の対称型トリグリセリドのβ2型結晶であ
る。しかしながら、これらの結晶サイズの比較的小さな
β型結晶を得るには、テンパリングと呼ばれる特殊な熱
処理工程を経る必要があったり、所定温度まで冷却した
後、結晶核となる特定成分を加える等、極めて煩雑な工
程を要するものであった。結果として、通常の焼き菓子
用油脂組成物を製造するような急冷可塑化工程では、当
該結晶は得られないのが実状である。また、カカオ脂の
V型結晶は可塑性に乏しいものである。
【0005】一方、βプライム型で最安定形の油脂でさ
え経日的に硬くなる傾向があり、結晶の析出方法や保存
方法等を細かく管理しなければならなかった。
【0006】上記のような問題点を解決するため、エネ
ルギー的にも安定で且つ微細な結晶を得る目的で、これ
迄にも種々の発明がなされてきた。特公昭51−976
3号公報には、特定のトリグリセリド比率とすることに
より、β型結晶を得る方法が開示されている。また、特
公昭58−13128号公報ではエステル交換反応によ
り油脂のグレイニングを抑制する方法が、そして特開平
10−295271号公報には高融点油脂を配合するこ
とにより微細な結晶を維持させる方法が、それぞれ開示
されている。さらに、特開平4−135453号公報で
は、構成脂肪酸として炭素数16〜22の飽和脂肪酸を
グリセリンの2位に、炭素数16〜18で一つの不飽和
結合を有する不飽和脂肪酸をグリセリンの1、3位に結
合した混酸型トリグリセリドを含有する方法が開示され
ている。
【0007】しかし、上記特公昭51−9763号公報
の方法では、β型結晶を得るのにテンパリング操作が必
要とされ、特公昭58−13128号公報及び特開平1
0−295271号公報の方法では、得られた組成物は
経日的に硬くなる傾向があり、焼き菓子用油脂組成物と
して安定性の点で十分に満足の得られるものではなかっ
た。また、特開平4−135453号公報の方法は、カ
カオ代用脂及びこれを含有する油脂性菓子用途に限定さ
れたものであった。
【0008】このように、従来、焼き菓子用に使用され
てきた油脂組成物は、安定的な結晶及び可塑性を得るた
めにその製造方法に特殊な温度管理が必要となり、且つ
作製した焼き菓子の食感、主に口溶けは、必ずしも良好
なものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、製造する際に特殊な温度管理をしなくても安定結晶
を含有し、且つソフトな食感で、風味や口溶けが良好な
焼き菓子類を製造することのできる焼き菓子用油脂組成
物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明はS1MS2(S1
及びS2は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)
で表されるトリグリセリドと、MS3M(S3は飽和脂肪
酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリ
セリドとからなるコンパウンド結晶を含有することを特
徴とする焼き菓子用油脂組成物により、上記の目的を達
成したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の焼き菓子用油脂組
成物について詳細に説明する。本発明の焼き菓子用油脂
組成物は、S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、Mはモ
ノ不飽和脂肪酸を表す。以下同じ。)で表されるトリグ
リセリド(以下、S1MS2とも言う。)と、MS3M(S
3は飽和脂肪酸を表す。以下同じ。)で表されるトリグリ
セリド(以下、MS3Mとも言う。)とからなるコンパ
ウンド結晶を含有する。
【0012】上記のS1 MS2 のS1 とS2 及びMS3
MのS3は、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸で
あり、さらに好ましくは、パルミチン酸、 ステアリン
酸、アラキジン酸、ベヘニン酸である。また、本発明に
おいて、上記のS1 、S2 及びS3 が、同じ飽和脂肪酸
であるのが最も好ましい。
【0013】上記のS1 MS2 のMや、MS3 MのM
は、好ましくは炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸、さ
らに好ましくは炭素数18以上のモノ不飽和脂肪酸、最
も好ましくはオレイン酸である。
【0014】本発明において、S1 MS2 とMS3 Mと
からなるコンパウンド結晶とは、構造の異なるS1 MS
2 1分子とMS3 M1分子とが混合された際、あたかも
単一のトリグリセリド分子であるかの如き結晶化挙動を
示すものである。コンパウンド結晶は分子間化合物とも
呼ばれる。このコンパウンド結晶は、トリグリセリド分
子のパッキング状態が2鎖長構造をとることが知られて
いる。
【0015】また、上記のコンパウンド結晶は、熱エネ
ルギー的に不安定なα型結晶から、準安定形のβプライ
ム型結晶を経由せず、最安定形のβ型結晶に直接転移し
たものである。
【0016】つまり、上記のコンパウンド結晶は、S1
MS2とMS3Mとを混合溶解した後、冷却し、結晶化す
ることにより、最安定形のβ型結晶で、且つトリグリセ
リド分子のパッキング状態が2鎖長構造を示す結晶とし
て析出する。この際、上記の結晶化条件は如何なる結晶
化条件であってもよく、テンパリング等の特殊な熱処理
を必要としない。
【0017】また、焼き菓子用油脂組成物がコンパウン
ド結晶を含有するかどうか確認をする一例としては、該
焼き菓子用油脂組成物を70℃で完全溶解した後、0℃
で30分間保持し、そして5℃で30分間保持して得ら
れた結晶をX線回折で結晶型を測定した結果、β型の2
鎖長構造をとるものは、上記のコンパウンド結晶を含有
していると言える。
【0018】本発明の焼き菓子用油脂組成物では、S1
MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶を含有す
ることが必要であり、S1 MS2 とMS3 Mとからなる
コンパウンド結晶を含有しないと、焼き菓子用油脂組成
物として焼き菓子に用いた場合、焼き菓子の食感が硬く
なり、口溶けが悪くなるので好ましくない。
【0019】さらに、本発明では、S1 MS2 とMS3
Mとからなるコンパウンド結晶が実質的に微細結晶であ
ることが好ましい。
【0020】上記の微細結晶とは、コンパウンド結晶が
微細であることであり、口にしたり、触った際にもザラ
つきを感ずることのない結晶であることを意味し、好ま
しくは20μm以下、さらに好ましくは10μm、最も
好ましくは3μm以下のサイズの油脂結晶を指す。上記
サイズとは、結晶の最大部位の長さを示すものである。
結晶のサイズが20μmを超えた油脂結晶を用いた場
合、口にしたり、触った際にザラつきを感じやすく、ま
た焼き菓子用油脂組成物として焼き菓子に用いた場合、
食感及び口溶けが悪くなりやすい。
【0021】本発明では、上述のように、S1 MS2
MS3 Mとからなるコンパウンド結晶が実質的に微細結
晶であることが好ましい。この「実質的に」とは、全て
のS 1 MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶の
うち、微細結晶を好ましくは90重量%以上、さらに好
ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以
上含有することを指す。
【0022】本発明で用いるS1 MS2 とMS3 Mとか
らなるコンパウンド結晶は、「S1MS2 で表されるト
リグリセリド」や「S1 MS2を含有する油脂」と、
「MS3 Mで表されるトリグリセリド」や「MS3 Mを
含有する油脂」を用いて製造できる。
【0023】上記のS1 MS2 やMS3 Mとしては、天
然に存在するS1 MS2 やMS3 Mでも構わないし、又
は分別により純度を上げたものでも構わない。さらに、
トリ飽和トリグリセリド(SSS)とトリ不飽和トリグ
リセリド(MMM)、又はトリ不飽和トリグリセリド
(MMM)と飽和脂肪酸とをエステル交換し(酵素によ
る選択的エステル交換が好ましい)、さらに蒸留や分別
によりS1 MS2 とMS 3 Mの純度を上げたもの等、ど
のような方法によって得られたものでも構わない。
【0024】上記のS1MS2を含有する油脂としては、
例えばパーム油、カカオバター、シア脂、マンゴー核
油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モー
ラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタロー等の各種植物
油脂、これらの各種植物油脂を分別した加工油脂、並び
に下記エステル交換油及び該エステル交換油を分別した
加工油脂を用いることができる。本発明では、上記の中
から選ばれた1種又は2種以上を用いる。
【0025】上記のエステル交換油としては、パーム
油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実
油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー
油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴ
ー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植
物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添
加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、
脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステ
ル交換油が挙げられる。
【0026】上記のMS3Mで表されるトリグリセリド
を含有する油脂としては、例えば豚脂、豚脂分別油、エ
ステル交換油を用いることができ、本発明ではこれらの
中から選ばれた1種又は2種以上を用いる。
【0027】上記のエステル交換油としては、パーム
油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実
油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー
油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴ
ー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植
物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添
加、分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低
級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油
が挙げられる。
【0028】本発明の焼き菓子用油脂組成物は、上記の
1 MS2 とMS3 Mとからなるコンパウンド結晶を必
須成分とするものである。そして、上記のコンパウンド
結晶の含有量は、本発明の焼き菓子用油脂組成物の全油
脂分中、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは2
0重量%以上、最も好ましくは40重量%以上である。
【0029】本発明の焼き菓子用油脂組成物において、
上記のS1 MS2で表されるトリグリセリドやS1 MS
2 を含有する油脂の配合量は、本発明の焼き菓子用油脂
組成物における全油脂分中のS1 MS2の含有量が、好
ましくは2.5重量%以上、さらに好ましくは10重量
%以上、最も好ましくは20〜50重量%となる量であ
る。上記のMS3 Mで表されるトリグリセリドやMS3
Mを含有する油脂の配合量も、本発明の焼き菓子用油脂
組成物における全油脂分中のMS3 Mの含有量が、好ま
しくは2.5重量%以上、さらに好ましくは10重量%
以上、最も好ましくは20〜50重量%となる量であ
る。
【0030】また、本発明の焼き菓子用油脂組成物で
は、S1 MS2 及びMS3 M以外のトリグリセリドや、
1 MS2 及びMS3 Mを含有しない油脂を添加しても
良い。S1 MS2 及びMS3 M以外のトリグリセリド
や、S1 MS2 及びMS3 Mを含有しない油脂を添加す
る場合、これらの添加量は、焼き菓子用油脂組成物の全
油脂分中、好ましくは95重量%以下、さらに好ましく
は80重量%以下、最も好ましくは60重量%以下とす
る。
【0031】本発明の焼き菓子用油脂組成物は、さらに
高融点油脂を含有することが好ましい。高融点油脂を配
合することにより、本発明の焼き菓子用油脂組成物の耐
熱保型性を向上させることができる。上記の高融点油脂
の融点は、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは5
0℃以上、最も好ましくは55℃以上80℃以下であ
る。
【0032】また、上記の高融点油脂は、焼き菓子用油
脂組成物の全油脂分中、好ましくは30重量%以下、さ
らに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量
%以下とする。上記の高融点油脂の焼き菓子用油脂組成
物の全油脂分中の含有量が、30重量%を越えると口溶
けが悪化しやすい。
【0033】上記の高融点油脂の具体例としては、例え
ばパーム油、カカオバター、或いはパーム核油、ヤシ
油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ
油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚
脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚
油、鯨油等の各種動植物油脂を水素添加、分別並びにエ
ステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した
加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用
いて製造したエステル交換油が挙げられる。ただし、本
発明の焼き菓子用油脂組成物において、上記の高融点油
脂が必要でなければ、上記の高融点油脂を用いなくても
よい。
【0034】本発明の焼き菓子用油脂組成物に含有させ
ることができるその他の成分としては、例えば、水、乳
化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢
酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール
類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β―カロチ
ン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、
茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった
植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味
料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果
汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、
ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等
の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0035】上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エ
ステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステ
ル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン
有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステ
ル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステ
アロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウ
ム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエ
チレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン
類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種
以上を用いることができる。上記乳化剤の配合量は、特
に制限はないが、本発明の焼き菓子用油脂組成物中、好
ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1
〜1重量%である。また、本発明の焼き菓子用油脂組成
物において、上記乳化剤が必要でなければ、乳化剤を用
いなくてもよい。
【0036】上記増粘安定剤としては、グアーガム、ロ
ーカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ア
ルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タ
マリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セル
ロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロー
ス、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉
等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以
上を用いることができる。上記増粘安定剤の配合量は、
特に制限はないが、本発明の焼き菓子用油脂組成物中、
好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重
量%である。また、本発明の焼き菓子用油脂組成物にお
いて、上記増粘安定剤が必要でなければ、増粘安定剤を
用いなくてもよい。
【0037】本発明の焼き菓子用油脂組成物は、可塑性
を有することが好ましく、またマーガリンタイプでもシ
ョートニングタイプでもどちらでもよく、またその乳化
形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれ
でも構わない。
【0038】本発明の焼き菓子用油脂組成物は、配合油
のSFCが、好ましくは10℃で20〜60%、20℃
で10〜40%、さらに好ましくは10℃で20〜50
%、20℃で10〜20%となるように調整するのがよ
い。SFCが10℃で20%未満、又は20℃で10%
未満であると、焼き菓子用油脂組成物が軟らかいため、
焼き菓子用油脂組成物として良好な物性が得られにく
い。一方、SFCが10℃で60%を超える、又は20
℃で40%を超えると、焼き菓子用油脂組成物として硬
すぎて使用しにくい。
【0039】上記のSFCは、次のようにして測定す
る。即ち、配合油を60℃に30分保持し、油脂を完全
に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さ
らに、25℃に30分保持し、テンパリングを行い、そ
の後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温
度に30分保持後、SFCを測定する。
【0040】次に、本発明の焼き菓子用油脂組成物の製
造方法を説明する。本発明の焼き菓子用油脂組成物は、
1MS2とMS3Mとを混合溶解した後、冷却し、結晶
化させることにより製造される。
【0041】詳しくは、本発明の焼き菓子用油脂組成物
は、S1MS2とMS3Mとを混合溶解した油相に、必要
により水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理する
のが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、
プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続
式でも構わない。次に、冷却し、必要により可塑化す
る。本発明において、冷却条件は好ましくは−0.5℃
/分以上、さらに好ましくは−5℃/分以上とする。こ
の際、徐冷却より急速冷却の方が好ましいが、本発明で
は徐冷却であっても、微細なβ型結晶をとり、可塑性範
囲が広く、経日的にも硬さが変化せず安定した焼き菓子
用油脂組成物を得ることができる。冷却する機器として
は、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、
コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機
やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダ
イアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げら
れる。
【0042】また、本発明の焼き菓子用油脂組成物を製
造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気
させても、させなくても構わない。
【0043】このような本発明の焼き菓子用油脂組成物
は、カッチングハードビスケット、カッチングソフトビ
スケット、ロータリービスケット、ワイヤーカットビス
ケット、デポジットクッキー、サンドクッキー、各種サ
ンドクッキー、包餡クッキー、各種包餡クッキー、チョ
コ複合クッキー、その他クッキー、バターケーキ、スポ
ンジケーキ、ドライケーキ、その他ケーキ、クラッカ
ー、プレッツェル等様々なタイプの焼き菓子類の生地に
用いることが出来る。
【0044】また、本発明の焼き菓子用油脂組成物の上
記焼き菓子生地における添加量は、上記焼き菓子生地の
穀粉類100重量部に対する油脂の使用量により異な
る。
【0045】例えば、穀粉類100重量部に対し、油脂
を15〜20重量部使用する焼き菓子生地の場合、本発
明の焼き菓子用油脂組成物の添加量は、好ましくは5〜
20重量部、さらに好ましくは10〜20重量部であ
る。また、穀粉類100重量部に対し、油脂を20〜5
0重量部使用する焼き菓子生地の場合、本発明の焼き菓
子用油脂組成物の添加量は、好ましくは5〜50重量
部、さらに好ましくは15〜50重量部である。さら
に、穀粉類100重量部に対し、油脂を50〜80重量
部使用する焼き菓子生地の場合、本発明の焼き菓子用油
脂組成物の添加量は、好ましくは5〜80重量部、さら
に好ましくは40〜80重量部である。そして、穀粉類
100重量部に対し、油脂を80〜120重量部使用す
る焼き菓子生地の場合、本発明の焼き菓子用油脂組成物
の添加量は、好ましくは5〜120重量部、さらに好ま
しくは70〜120重量部である。
【0046】本発明の焼き菓子用油脂組成物を添加した
上記焼き菓子生地を焼成することにより、風味及び口溶
けが良好であり、ソフトな食感である焼き菓子類を得る
ことができる。上記焼き菓子生地の焼成は、直火による
焼成、オーブンによる焼成、電子レンジによる焼成等が
挙げられる。そして、本発明では、上記焼き菓子生地を
冷蔵又は冷凍し、これを焼成してもよい。また、上記焼
き菓子生地を焼成したものを冷凍してもよく、焼き菓子
生地の焼成後冷凍品を電子レンジで解凍調理することも
可能である。
【0047】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、これらの実施例により何ら制限され
るものではない。下記実施例1〜6は、コンパウンド結
晶を含有する本発明の焼き菓子用油脂組成物の製造例及
び該焼き菓子用油脂組成物を用いた焼き菓子類の製造例
を示すものである。また、下記比較例1及び2は、コン
パウンド結晶を含有しない焼き菓子用油脂組成物の製造
例及び該焼き菓子用油脂組成物を用いた焼き菓子類の製
造例を示すものである。下記実施例1及び2並びに下記
比較例1及び2においては、それぞれ得られた焼き菓子
用油脂組成物を用い、下記表1に記載のカッチングハー
ドビスケットの配合及び下記の〔カッチングハードビス
ケットの製法〕により、カッチングハードビスケットを
製造し、評価に供した。下記実施例3及び4において
は、それぞれ得られた焼き菓子用油脂組成物を用い、下
記表1に記載のワイヤーカットビスケットの配合及び下
記の〔ワイヤーカットビスケットの製法〕により、ワイ
ヤーカットビスケットを製造し、評価に供した。下記実
施例5及び6においては、それぞれ得られた焼き菓子用
油脂組成物を用い、下記表1に記載のバターケーキの配
合及び下記〔バターケーキの製法〕により、バターケー
キを製造し、評価に供した。
【0048】
【表1】
【0049】〔カッチングハードビスケットの製法〕水
に食塩及び炭安を溶解する。そして、これとその他原料
をすべて一括してニーダーに投入し、約35℃に調温し
て30分程度ミキシングする。成型機に掛けて、厚さ5
ミリ、直径5センチの丸型に抜き取る。260℃で約3
分程度焼成し、冷却する。
【0050】〔ワイヤーカットビスケットの製法〕焼き
菓子用油脂組成物及び砂糖を混合しペースト状にした
後、全卵、水、食塩及び炭安を混合した水相を少しづつ
加えて攪拌する。最後に薄力粉及び重曹を加えて軽く混
合する。成型機にかけて厚さ7ミリ、直径4センチの丸
型にワイヤーカットする。180℃で約10分程度焼成
し、冷却する。
【0051】〔バターケーキの製法〕焼き菓子用油脂組
成物及び砂糖を混合しペースト状にした後、全卵及び炭
安を混合したものを少しづつ加えて攪拌する。最後に薄
力粉及び重曹を加えて軽く混合した後、パウンドに生地
を約250g流し込む。180℃で約40分程度焼成
し、冷却する。尚、以下の実施例及び比較例において、
Stはステアリン酸、Oはオレイン酸、Pはパルミチン
酸、Sは飽和脂肪酸を示す。
【0052】(実施例1)大豆極度硬化油とオレイン酸
エチルを、重量比2:3の割合で混合、溶解した後、
1,3位置選択的酵素を用いてエステル交換反応を行っ
た。反応物から分子蒸留により脂肪酸を取り除き、得ら
れた油脂を分別、精製することにより、OStO含量6
0重量%の油脂を得た。このOStO含有油脂50重量
%、マンゴー核分別中部油50重量%を混合し、60℃
で溶解し、0℃に冷却し、結晶化させ、混合油(a)を
得た。混合油(a)は、StOStを30重量%、OS
tOを30重量%含有し、DSCにより結晶転移の有無
を確認したところ、βプライム型をとらずにβ型結晶で
あった。
【0053】確認のため、混合油(a)を70℃で完全
溶解し、0℃で30分保持し、そして5℃で30分間保
持し結晶析出させたものを2θ:17〜26度の範囲で
X線回折測定を実施したところ、4.6オングストロー
ムの面間隔に対応する強い回折線が得られ、この油脂結
晶はβ型をとることが確認された。また、光学顕微鏡で
この油脂結晶のサイズを確認したところ、3μm以下の
微細な結晶であった。更に、2θ:0〜8度の範囲でX
線回折測定を実施し、トリグリセリドのパッキング状態
が2鎖長構造であることも確認され、コンパウンド結晶
の形成が示された。
【0054】上記混合油(a)80重量%と、大豆油2
0重量%とを混合し、60℃で溶解させ配合油を得た。
この配合油80.4重量%に乳化剤としてステアリン酸
モノグリセリド0.5重量%、レシチン0.1重量%を
混合溶解した油相81重量%と水16重量%、食塩1重
量%、脱脂粉乳2重量%とを常法により、油中水型の乳
化物(b)とし、急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/
分以上)にかけ、マーガリンを得た。得られたマーガリ
ンは、光学顕微鏡下で3μm以下の微細結晶であり、マ
ーガリンの油相を上記と同条件でX線回折測定を行った
ところ、2鎖長構造のβ型をとり、コンパウンド結晶を
形成することを確認した。そして、マーガリンの全油脂
分中のコンパウンド結晶の含有量は、48重量%であ
り、マーガリンの配合油のSFCは、10℃で37%、
20℃で22%であった。
【0055】また、得られたマーガリンは、5℃のレオ
メーター値が900g/cm2、20℃のレオメーター
値が340g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範囲
が広い、焼き菓子用油脂組成物であった。
【0056】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
カッチングハードビスケットの配合及び製法にてカッチ
ングハードビスケットを得た。得られたカッチングハー
ドビスケットは歯ごたえも軽く、口溶けと風味も良好な
食感であった。
【0057】(実施例2)通常の急冷可塑化工程での冷
却速度は−20℃/分以上であるが、実施例1で用いた
乳化物(b)を更に緩慢な冷却条件(冷却速度にして−
1℃/分)下で冷却可塑化し、マーガリンを得た。得ら
れたマーガリンは、光学顕微鏡下で3μm以下の微細結
晶であり、マーガリンの油相を実施例1と同条件でX線
回折測定を行ったところ、2鎖長構造のβ型をとり、コ
ンパウンド結晶を形成することを確認した。そして、マ
ーガリンの全油脂分中のコンパウンド結晶の含有量は、
48重量%であり、マーガリンの配合油のSFCは、1
0℃で37%、20℃で22%であった。
【0058】また、得られたマーガリンは、5℃のレオ
メーター値が1000g/cm2、20℃のレオメータ
ー値が400g/cm2と低温でも軟らかくて可塑性範
囲が広い、焼き菓子用油脂組成物であった。
【0059】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
カッチングハードビスケットの配合及び製法にてカッチ
ングハードビスケットを得た。得られたカッチングハー
ドビスケットは歯ごたえも軽く、口溶けと風味も良好な
食感であった。
【0060】(実施例3)実施例1で用いた混合油
(a)85重量%と、大豆油15重量%とを混合し、6
0℃で溶解し、乳化剤無添加で常法により急冷可塑化工
程(冷却速度−20℃/分以上)にかけ、ショートニン
グを得た。得られたショートニングは、光学顕微鏡下で
3μm以下の微細結晶であり、ショートニングを実施例
1と同条件でX線回折測定を行ったところ、2鎖長構造
のβ型をとり、コンパウンド結晶を形成することを確認
した。そして、ショートニングの全油脂分中のコンパウ
ンド結晶の含有量は、51重量%であり、ショートニン
グの配合油のSFCは、10℃で49%、20℃で30
%であった。
【0061】また、得られたショートニングは、5℃の
レオメーター値が3360g/cm 2、20℃のレオメ
ーター値が800g/cm2と低温でも軟らかくて可塑
性範囲が広い、焼き菓子用油脂組成物であった。
【0062】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
ワイヤーカットビスケットの配合及び製法にてワイヤー
カットビスケットを得た。得られたワイヤーカットビス
ケットは歯ごたえも軽く、口溶けと風味も良好な食感で
あった。
【0063】(実施例4)実施例1で用いた混合油
(a)45重量%、大豆極度硬化油(融点68℃)5重
量%及び大豆油50重量%を混合し、60℃で溶解し、
乳化剤無添加で常法により急冷可塑化工程(冷却速度−
20℃/分以上)にかけ、ショートニングを得た。得ら
れたショートニングは、光学顕微鏡下で3μm以下の微
細結晶であり、ショートニングを実施例1と同条件でX
線回折測定を行ったところ、2鎖長構造のβ型をとり、
コンパウンド結晶を形成することを確認した。そして、
ショートニングの全油脂分中のコンパウンド結晶の含有
量は、27重量%であり、ショートニングの配合油のS
FCは、10℃で48%、20℃で37%であった。
【0064】また、得られたショートニングは、5℃の
レオメーター値が3180g/cm 2、20℃のレオメ
ーター値が1460g/cm2と低温でも軟らかくて可
塑性範囲が広い、焼き菓子用油脂組成物であった。
【0065】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
ワイヤーカットビスケットの配合及び製法にてワイヤー
カットビスケットを得た。得られたワイヤーカットビス
ケットは歯ごたえも軽く、口溶けと風味も良好な食感で
あった。
【0066】(実施例5)パーム分別中部油21重量%
と豚脂79重量%とを混合し、60℃で溶解し、0℃で
冷却し、結晶化させ、混合油(c)を得た。この混合油
(c)は、StOStを20重量%、OStOを20重
量%含有し、DSCにより結晶転移の有無を確認したと
ころ、βプライム型をとらずにβ型結晶であった。
【0067】確認のため、混合油(c)を70℃で完全
溶解し、0℃で30分保持し、そして5℃で30分間保
持し結晶析出させたものを2θ:17〜26度の範囲で
X線回折測定を実施したところ、4.6オングストロー
ムの面間隔に対応する強い回折線が得られ、この油脂結
晶はβ型をとることが確認された。また、光学顕微鏡で
この油脂結晶のサイズを確認したところ、3μm以下の
微細な結晶であった。更に、2θ:0〜8度の範囲でX
線回折測定を実施し、トリグリセリドのパッキング状態
が2鎖長構造であることも確認され、コンパウンド結晶
の形成が示された。
【0068】上記混合油(c)90重量%と、大豆油1
0重量%とを混合し、60℃で溶解し、乳化剤無添加で
常法により急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/分以
上)にかけ、ショートニングを得た。得られたショート
ニングは、光学顕微鏡下で3μm以下の微細結晶であ
り、ショートニングを実施例1と同条件でX線回折測定
を行ったところ、2鎖長構造のβ型をとり、コンパウン
ド結晶を形成することを確認した。そして、ショートニ
ングの全油脂分中のコンパウンド結晶の含有量は、36
重量%であり、ショートニングの配合油のSFCは、1
0℃で55%、20℃で30%であった。
【0069】また、得られたショートニングは、5℃の
レオメーター値が2820g/cm 2、20℃のレオメ
ーター値が1850g/cm2と低温でも軟らかくて可
塑性範囲が広い、焼き菓子用油脂組成物であった。
【0070】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
バターケーキの配合及び製法にてバターケーキを得た。
得られたバターケーキは歯ごたえも軽く、口溶けと風味
も良好な食感であった。
【0071】(実施例6)サル脂分別中部油20重量%
と豚脂80重量%とを混合し、60℃で溶解し、0℃で
冷却し、結晶化させ、混合油(d)を得た。この混合油
(d)は、StOStを20重量%、OStOを20重
量%含有し、DSCにより結晶転移の有無を確認したと
ころ、βプライム型をとらずにβ型結晶であった。
【0072】確認のため、混合油(d)を70℃で完全
溶解し、0℃で30分保持し、そして5℃で30分間保
持し結晶析出させたものを2θ:17〜26度の範囲で
X線回折測定を実施したところ、4.6オングストロー
ムの面間隔に対応する強い回折線が得られ、この油脂結
晶はβ型をとることが確認された。また、光学顕微鏡で
この油脂結晶のサイズを確認したところ、3μm以下の
微細な結晶であった。更に、2θ:0〜8度の範囲でX
線回折測定を実施し、トリグリセリドのパッキング状態
が2鎖長構造であることも確認され、コンパウンド結晶
の形成が示された。
【0073】上記混合油(d)90重量%と、大豆油1
0重量%とを混合し、60℃で溶解し、乳化剤無添加で
常法により急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/分以
上)にかけ、ショートニングを得た。得られたショート
ニングは、光学顕微鏡下で3μm以下の微細結晶であ
り、ショートニングを実施例1と同条件でX線回折測定
を行ったところ、2鎖長構造のβ型をとり、コンパウン
ド結晶を形成することを確認した。そして、ショートニ
ングの全油脂分中のコンパウンド結晶の含有量は、36
重量%であり、ショートニングの配合油のSFCは、1
0℃で50%、20℃で33%であった。
【0074】また、得られたショートニングは、5℃の
レオメーター値が3580g/cm 2、20℃のレオメ
ーター値が1890g/cm2と低温でも軟らかくて可
塑性範囲が広い、焼き菓子用油脂組成物であった。
【0075】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
バターケーキの配合及び製法にてバターケーキを得た。
得られたバターケーキは歯ごたえも軽く、口溶けと風味
も良好な食感であった。
【0076】(比較例1)魚油を原料とし、ニッケル触
媒を用いて水素添加を行い、融点30℃の魚油硬化油、
融点36℃の魚油硬化油及び融点45℃の魚油硬化油を
得た。これらの融点30℃の魚油硬化油、融点36℃の
魚油硬化油及び融点45℃の魚油硬化油を、それぞれ、
60℃で溶解し、0℃に冷却し、結晶化させ、DSCに
より結晶転移の有無を確認したところ、βプライム型を
とる油脂であった。また、これらの融点30℃の魚油硬
化油、融点36℃の魚油硬化油及び融点45℃の魚油硬
化油は、いずれも、SMS及びMSMを含有しない油脂
であった。
【0077】確認のため、これらの融点30℃の魚油硬
化油、融点36℃の魚油硬化油及び融点45℃の魚油硬
化油を、それぞれ、70℃で完全溶解し、0℃で30分
保持し、そして5℃で30分間保持し結晶析出させたも
のを2θ:17〜26度の範囲でX線回折測定を実施し
たところ、4.2オングストロームの面間隔に対応する
強い回折線が得られ、これらの油脂結晶はβプライム型
をとることが確認された。更に、2θ:0〜8度の範囲
でX線回折測定を実施し、トリグリセリドのパッキング
状態が3鎖長構造であることを確認し、コンパウンド結
晶の形成は認められなかった。
【0078】これらの融点30℃の魚油硬化油75重量
%、融点36℃の魚油硬化油15重量%及び融点45℃
の魚油硬化油10重量%を混合し、60℃で溶解し、乳
化剤無添加で常法により急冷可塑化工程(冷却速度−2
0℃/分以上)にかけ、ショートニングを得た。得られ
たショートニングを実施例1と同条件でX線回折測定を
行ったところ、3鎖長構造のβプライム型をとり、コン
パウンド結晶を含有しないことを確認した。ショートニ
ングの配合油のSFCは、10℃で38%、20℃で2
2%であった。
【0079】このショートニングは、5℃のレオメータ
ー値が6900g/cm2、20℃のレオメーター値が
600g/cm2と低温で硬く、可塑性範囲が狭い、焼
き菓子用油脂組成物であった。
【0080】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
カッチングハードビスケットの配合及び製法にてカッチ
ングハードビスケットを得た。得られたカッチングハー
ドビスケットは食感が硬く、クラムが口で溶解しにくく
口溶けは不良であった。
【0081】(比較例2)比較例1で用いた融点30℃
の魚油硬化油40重量%、融点36℃の魚油硬化油50
重量%及び融点45℃の魚油硬化油10重量%を混合
し、60℃で溶解し、乳化剤無添加で常法により急冷可
塑化工程(冷却速度−20℃/分以上)にかけ、ショー
トニングを得た。得られたショートニングを実施例1と
同条件でX線回折測定を行ったところ、3鎖長構造のβ
プライム型をとり、コンパウンド結晶を含有しないこと
を確認した。ショートニングの配合油のSFCは、10
℃で47%、20℃で33%であった。
【0082】このショートニングは、5℃のレオメータ
ー値が8120g/cm2、20℃のレオメーター値が
700g/cm2と低温で硬く、可塑性範囲が狭い、焼
き菓子用油脂組成物であった。
【0083】この焼き菓子用油脂組成物を用い、上記の
カッチングハードビスケットの配合及び製法にてカッチ
ングハードビスケットを得た。得られたカッチングハー
ドビスケットは食感が硬く、クラムが口で溶解しにくく
口溶けは不良であった。
【0084】
【発明の効果】本発明の焼き菓子用油脂組成物は、製造
する際に特殊な温度管理をしなくても、可塑性範囲が広
く、経日的にも硬さが変化せず安定である焼き菓子用油
脂組成物である。また、本発明の焼き菓子用油脂組成物
を用いた焼き菓子類は、風味や口溶けが良好で、歯ごた
えが軽いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥村 佳史 東京都荒川区東尾久7丁目2番35号 旭電 化工業株式会社内 (72)発明者 板垣 和雄 東京都荒川区東尾久7丁目2番35号 旭電 化工業株式会社内 Fターム(参考) 4B014 GB11 GG14 4B026 DC06 DH05 4B032 DB05 DB21 DK18

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、M
    はモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド
    とMS3M(S3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を
    表す)で表されるトリグリセリドとからなるコンパウン
    ド結晶を含有することを特徴とする焼き菓子用油脂組成
    物。
  2. 【請求項2】 上記S1、S2及びS3が炭素数16以上
    の飽和脂肪酸である請求項1記載の焼き菓子用油脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 上記コンパウンド結晶が実質的に微細結
    晶である請求項1又は2記載の焼き菓子用油脂組成物。
  4. 【請求項4】 可塑性を有する請求項1〜3の何れかに
    記載の焼き菓子用油脂組成物。
  5. 【請求項5】 上記コンパウンド結晶の含有量が、全油
    脂分中、5重量%以上である請求項1〜4の何れかに記
    載の焼き菓子用油脂組成物。
  6. 【請求項6】 さらに高融点油脂を含有する請求項1〜
    5の何れかに記載の焼き菓子用油脂組成物。
  7. 【請求項7】 S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、M
    はモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド
    とMS3M(S3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を
    表す)で表されるトリグリセリドとを混合溶解した後、
    冷却し、結晶化させることを特徴とする焼き菓子用油脂
    組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、M
    はモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド
    とMS3M(S3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を
    表す)で表されるトリグリセリドとからなるコンパウン
    ド結晶を含有する焼き菓子用油脂組成物を用いた焼き菓
    子生地。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の焼き菓子生地を焼成した
    焼き菓子類。
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