JP7154694B2 - 可塑性油脂組成物 - Google Patents
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Description
前記粉末油脂組成物が、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含み、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の油脂結晶が2鎖長β型を含む、
前記可塑性油脂組成物。
[2]前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める前記油脂粉末の割合が、0.5~30質量%である、[1]の可塑性油脂組成物。
[3]前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の、HHO含有量とOHO含有量の合計量(HHO+OHO)に対する、HOH含有量の質量比(HOH/(HHO+OHO))が0.3~2.0である、[1]または[2]の可塑性油脂組成物。
ただし、H、O、HHO、OHOおよびHOHは、以下を意味する。
H:炭素数16~24の飽和脂肪酸
O:オレイン酸
HHO:グリセロールの1位または3位にオレイン酸(O)、2位および3位、または、1位および2位に炭素数16~24の飽和脂肪酸(H)がエステル結合したトリアシルグリセロール
OHO:グリセロールの1位および3位にオレイン酸(O)、2位に炭素数16~24の飽和脂肪酸(H)がエステル結合したトリアシルグリセロール
HOH:グリセロールの2位にオレイン酸(O)、1位および3位に炭素数16~24の飽和脂肪酸(H)がエステル結合したトリアシルグリセロール
[4]前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占めるHHO、OHOおよびHOHの合計含有量が、10~60質量%である、[1]~[3]の何れか1つの可塑性油脂組成物。
[5]前記油脂粉末が50μm以下の平均粒径を有する、[1]~[4]の何れか1つの可塑性油脂組成物。
[6]前記油脂粉末の粒子が2.5以上のアスペクト比(2)を有する板状形状である、[1][5]の何れか1つの可塑性油脂組成物。
[7]前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含み、前記炭素数xは14~22から選択される整数である、[1]~[6]の何れか1つの可塑性油脂組成物。
[8]前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05~0.6g/cm3である、[1]~[7]の何れか1つの可塑性油脂組成物。
[9][1]~[8]の何れか1つの可塑性油脂組成物を含む食品。
[10]50℃未満の融液状態にある可塑性油脂組成物生地に、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を分散した後、冷却する、可塑性油脂組成物の製造方法。
[11]50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を有効成分とする、可塑性油脂組成物の結晶化促進剤。
本発明の可塑性油脂組成物は、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含む。当該粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。また、当該50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末の原料となる油脂は、食用油脂である限り特に制限はない。例えば、50℃以上の融点を有する、パームステアリン、極度硬化菜種油、極度硬化高エルシン酸菜種油、極度硬化ひまわり油、極度硬化紅花油、極度硬化パーム油などが挙げられる。これらの50℃以上の融点を有する油脂は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記油脂粉末の原料となる油脂の融点は、好ましくは55℃以上であり、より好ましくは58℃以上であり、さらに好ましくは61℃以上である。油脂粉末の原料となる油脂の融点が上記範囲内にあると、2鎖長β型の結晶シードとして効果的に機能する。なお、油脂粉末(の原料となる油脂)の融点は、基準油脂分析試験法(日本油化学会編-1996)2.2.4.2融点(上昇融点)に準じて測定できる。
2dsinθ=nλ(n=1,2,3・・・)
この式を満たす位置に回折ピークが現れる。ここでdは格子定数、θは回折(入射)角、λはX線の波長、nは自然数である。短面間隔に対応する回折ピークの2θ=16~27°からは、結晶中の側面のパッキング(副格子)に関する情報が得られ、多形の同定を行なうことができる。特にトリアシルグリセロールの場合、2θ=19、23、24°(4.6Å付近、3.9Å付近、3.8Å付近)にβ型の特徴的ピークが、21°(4.2Å)付近にα型の特徴的なピークが出現する。なお、X線回折測定は、例えば、20℃に維持したX線回折装置(例えば、(株)リガク、試料水平型X線回折装置UItimaIV)を用いて測定される。X線の光源としてはCuKα線(1.54Å)が最もよく利用される。X線回折の測定により得られる回折ピークの強度解析においては、油脂の非晶質部分がベースラインに及ぼす影響を除くための補正を行うのが適切である。例えば、Sonneveld-Visser法などによる、バックグラウンド除去処理を行ってもよい。
粒子のアスペクト比(2)は、例えば、以下の(a)及び(b)の方法で測定することができる。
(a)粒子の電子顕微鏡写真から、1個1個の粒子について長径、及び厚さを測定できる場合
電子顕微鏡写真に写った1個1個の粒子について、長径及び厚さ(縦及び横)を測定し、それぞれの粒子について、アスペクト比(2)を求め、その平均値を粒子のアスペクト比(2)とする。例えば、粒子が球形のような場合に、この測定方法を用いることができる。
(b)粒子の電子顕微鏡写真から、1つ1つの粒子について長径、又は厚さを測定できない場合
例えば、粒子が扁平な形や板状形状の場合、電子顕微鏡写真に写った1個1個の粒子について、長径を測定することはできるが、厚さは写真では見えないことが多く、写真から直接測定することが難しい。このような場合、粒子をガラスビーズのような芯物質の表面に付着させて電子顕微鏡写真を撮り、芯物質表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さを、粒子の厚さとして測定し、この値を厚さとして用いる。
これを図1の模式図で説明すると、図1のAは芯物質、Bはアスペクト比(2)を測定する粒子で、線分abの長さ(芯物質表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さ)が、この粒子の厚さの値である。また、長径の値は、上述のレーザー回折散乱法に基づいて測定した平均粒径(d50)を用いる。このようにして測定した粒子の長径と厚さの値から、アスペクト比(2)〔=長径/厚さ〕を求めることができる。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行ってその平均値を取ることが好ましい。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT-X)で測定することができる。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm3)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求める。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3)
また、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、1mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することでも求めることができる。
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる粉末油脂組成物の製造方法において、50℃以上の融点を有する油脂を、2鎖長β型結晶を有する粉末状の油脂結晶(油脂粉末あるいは油脂結晶粉末ともいう)とする方法は特に限定されず、凍結粉砕、押出造粒、噴霧冷却造粒など、従来公知の方法を適用してもよい。しかし、50℃以上の融点を有する油脂を、粉末状の油脂結晶とする好ましい態様の1つとしては、50℃以上の融点を有する油脂として、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含み、前記炭素数xは14~22から選択される整数である、油脂を使用する態様が挙げられる。
冷却温度(℃) = 炭素数x × 6.6 - 68
から求められる冷却温度以上の温度で行われる。このような温度範囲で冷却すれば、β型の細かい油脂結晶ができるので、油脂結晶粉末を容易に得ることができる。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記の、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含有する。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末の含有量は、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは2~13質量%であり、ことさらに好ましくは3~8質量%である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末の含有量が上記範囲内にあると、可塑性油脂組成物に含まれる油脂が2鎖長β型の安定な結晶多形をとり易い。
本発明の可塑性油脂組成物の製造方法は、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含み、可塑化された状態にできる方法であれば、特に限定されない。しかし、好ましい態様の1つとしては、可塑化(結晶化)前の融解状態にあるベースとなる油脂組成物(以下、ベース油脂組成物ともいう)に、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を、混合ないし添加し、冷却可塑化(結晶化)する方法が挙げられる。融解状態にあるベース油脂組成物の温度は、好ましくは、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末の融点-5℃以下であり、より好ましくは、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末の融点-10℃以下である。例えば、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末の融点が55℃である場合、融解状態にあるベース油脂組成物の温度は、好ましくは、50℃以下である。50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物とベース油脂組成物とを混合する割合は、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末とベース油脂組成物に含まれる油脂とを基準として、質量比で、好ましくは0.5:99.5~30:70であり、より好ましくは1:99~20:80であり、さらに好ましくは2:98~13:87であり、ことさらに好ましくは3:97~8:92である。
本発明の可塑性油脂組成物は、製菓製パンにおける作業性がよい。また、可塑性油脂組成物に含まれる油脂が2鎖長β型の安定な結晶多形を有するので、保存時の物性の変化が少ない(良好な作業性が維持される)。本発明の可塑性油脂組成物は、例えば、菓子・パンなどのベーカリー生地への練り込み用や折り込み用、ベーカリー食品へのスプレッド用やコーティング用、ならびに、無水クリームやバタークリームなどのクリーム用など、として好適に使用できる。特に、ベーカリー生地への練り込み用として好適に使用できる。
・トランス脂肪酸
油脂のトランス脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じてガスクロマトグラフィー法で測定した。
・トリグリセリド組成
油脂の各トリアシルグリセロール含有量は、ガスクロマトグラフィー法(AOCS Ce5-86準拠)で測定した。トリアシルグリセロールの対称性は、銀イオンカラムクロマトグラフィー法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105-107(1995)準拠)で測定した。
・X線回折測定
X線回折装置UltimaIV(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96~30.0°、測定速度2°/分の条件で測定した。この測定により、4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂結晶であると判断した。
なお、上記X線回析測定の結果から、ピーク強度比=[β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å))/(α型(およびβ’型)の特徴的ピークの強度(2θ=21°(4.2Å))+β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å)))]をβ型油脂結晶の存在量を表す指標として測定した。
実施例などで得られた粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度(g/cm3)は、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端の2cm程度上方から粉末油脂組成物を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めた。
・アスペクト比
走査型電子顕微鏡S-3400N(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により直接観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製 Mac-View)を用いて、任意に選択した粒子について、その長軸方向の長さおよび短軸方向の長さを計測し、計測した個数の平均値として測定した。
・アスペクト比(2)
(A)本発明の粉末油脂組成物A(0056段落)の粒子のアスペクト比(2)
本発明の粉末油脂組成物Aは、板状形状であるため、顕微鏡写真から粒子の厚さを測定することが難しい。したがって、粒子の厚さは、粉末油脂組成物Aをガラスビーズに付着させたときの顕微鏡写真から測定した。また、長径の値は、レーザー回折散乱法に基づいて測定した平均粒径(d50)を用いた。
具体的には、ガラスビーズ(アズワン株式会社製、型番BZ-01、寸法0.105~0.125mmφ)に粉末油脂組成物Aを添加、混合することで、ガラスビーズ表面に粉末油脂組成物Aを付着させ、その様子を3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で撮影した。ガラスビーズ表面に付着した1個の粉末油脂組成物Aの粒子の付着面から垂直方向の長さを、その粒子の厚さとして測定し、計25個の粒子の厚さの平均値を取り、その値を粉末油脂組成物Aの粒子の厚さの値とした。
図2は、粉末油脂組成物Aの粒子の厚さの測定に使用した電子顕微鏡写真(1500倍)の1つで、この写真では、写真中の直線で示した部分(2か所)の長さ(ガラスビーズ表面に付着した粒子の付着面からの垂直方向の長さ)を、粉末油脂組成物Aの粒子の厚さとして測定した。
また、長径の値は、上述のレーザー回折散乱法に基づいて測定した平均粒径(d50)を用いた。
このようにして測定した粉末油脂組成物Aの粒子の長径と厚さの値から、アスペクト比(2)〔=長径/厚さ〕を求めた。
(a)粉末油脂組成物a(0056段落)の粒子のアスペクト比(2)
粉末油脂組成物aは、ほとんどが球形であり、粒子の電子顕微鏡写真から1個1個の粒子について直接、長径及び厚さを測定できる。そこで、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で撮影した写真に写った1個1個の粒子について、長径及び厚さ(縦及び横)を測定した。それぞれの粒子について、アスペクト比(2)を求め、計20個の粒子のアスペクト比(2)の平均値を、粒子のアスペクト比(2)とした。
・平均粒径(d50)
粒度分布測定装置(日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて測定した。なお、測定した平均粒径は、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径(d50)の値である。
以下の粉末油脂組成物Aおよびaを準備した。
(1)粉末油脂組成物A
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、融点67.3℃、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末状の油脂結晶(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比:1.6、アスペクト比(2):4.6、平均粒径8.0μm、X線回折測定回析ピーク:4.6Å、ピーク強度比:0.89)を得た。この油脂粉末を粉末油脂組成物Aとした。
(2)粉末油脂組成物a
パーム極度硬化油(融点58℃)を原料として、スプレークーラーによる噴霧冷却で、粉末状の油脂結晶(ゆるめ嵩密度:0.5g/cm3、アスペクト比:1.1、アスペクト比(2):1.1、平均粒径162μm、X線回折測定回析ピーク:4.2Å、ピーク強度比:0.03)を得た。この油脂粉末を粉末油脂組成物aとした。
(1)パーム油(日清オイリオ株式会社製、ヨウ素価52、HOH含有量31.7質量%)を使用した。PMOと略号表記する場合がある。
(2)パーム中融点画分(日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価45、HOH含有量50.4質量%)を使用した。PMFと略号表記する場合がある。
(3)パームオレイン(日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価56)に、触媒としてナトリウムメトキシドを用いたランダムエステル交換を適用した。得られたエステル交換油脂を、常法に従って精製して使用した。IEPLと略号表記する場合がある。
(4)菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、不飽和脂肪酸含有量93質量%)を使用した。RSOと略号表記する場合がある。
(5)菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製、ヨウ素価値1)を使用した。FHRSOと略語表記する場合がある。
以下の製造手順1~4により、表1~3に示す配合に従って、例1~12の可塑性油脂組成物(ショートニング)を製造した。製造した例1~12の可塑性油脂組成物を25℃で24時間調温した。調温前後の可塑性油脂組成物のX線回折像を測定し、ピーク強度比(β型(4.6Å)のピーク強度/(α型およびβ’型(4.2Å)のピーク強度+β型(4.6Å)のピーク強度))を求めた。結果は、表1~3に示した。
1.表1~3のベース油脂組成物の配合に従って、ベース油脂組成物を混合し、80℃で融解した。
2.1で融解したベース油脂組成物を45℃に調温し、表1~3に従って、粉末油脂組成物を添加した。
3.2で粉末油脂組成物を添加後、ミキサーで撹拌し、粉末油脂組成物が十分に分散した分散体を得た。
4.3の分散体を小型コンビネーターで冷却可塑化(冷却速度-10℃/分)し、ショートニングを得た。
以下の手順に従って、パン職人歴23年の職人が、ロールパンを製造した。すなわち、強力粉700g、生イースト30g、全卵150g、水270gをミキサーボウルに投入し、低速で2分間、中速で2分間、混捏して。捏上げ温度25℃の中種を得た。得られた中種を28℃で2時間発酵させた。発酵させた中種をミキサーボウルに投入し、さらに強力粉300g、上白糖120g、食塩17g、脱脂粉乳40g、水180gを投入し、低速で2分間、中速で5分間、混捏した。ここで、練り込み用油脂として、例3および例12において得られた可塑性油脂組成物150gを投入し、さらに低速で2分間、中速で5分間、混捏して、捏上げ温度28℃の生地を得た。フロアタイムを30分取った後、45gに分割し、次いでベンチタイムを30分取った後、テーブルロール成型を行った。さらに、38℃で相対湿度85%のホイロに60分間入れて最終発酵を行った。最終発酵後、全卵を上面に塗布し、上火210℃、下火200℃のオーブンに入れた。オーブンで、9分30秒焼成し、例3および例12の可塑性油脂組成物をそれぞれ生地に練り込んだロールパンを得た。
例3の可塑性油脂組成物は、例12と比較して生地に練り込まれ易く、明らかに作業性が良好であった。また、例3の可塑性油脂組成物を使用して製造されたロールパンは、例12の可塑性油脂組成物を使用して製造されたロールパンと比較して、内層のキメが細かく、ソフトな食感であった。
Claims (8)
- 50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含有する可塑性油脂組成物であって、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める前記油脂粉末の割合が、1~10質量%であり、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占めるHHO、OHOおよびHOHの合計含有量が25~38.9質量%、かつ、HHO含有量とOHO含有量の合計量(HHO+OHO)に対する、HOH含有量の質量比(HOH/(HHO+OHO))が0.3~2.0、であり、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の油脂結晶が2鎖長β型を含む、
前記可塑性油脂組成物。
ただし、H、O、HHO、OHOおよびHOHは、以下を意味する。
H:炭素数16~24の飽和脂肪酸
O:オレイン酸
HHO:グリセロールの1位または3位にオレイン酸(O)、2位および3位、または、
1位および2位に炭素数16~24の飽和脂肪酸(H)がエステル結合したトリアシルグ
リセロール
OHO:グリセロールの1位および3位にオレイン酸(O)、2位に炭素数16~24の
飽和脂肪酸(H)がエステル結合したトリアシルグリセロール
HOH:グリセロールの2位にオレイン酸(O)、1位および3位に炭素数16~24の
飽和脂肪酸(H)がエステル結合したトリアシルグリセロール - 前記油脂粉末が50μm以下の平均粒径を有する、請求項1に記載の可塑性油脂組成物。
- 前記油脂粉末が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含み、前記炭素数xは14~22から選択される整数である、請求項1または2に記載の可塑性油脂組成物。
- 前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05~0.6g/cm3である、請求項1~3の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物。
- 前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂のX線回折測定における4.6Å/(4.6Å+4.2Å)が0.4以上1以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物。
ただし、4.6Å、4.2Åおよび4.6Å/(4.6Å+4.2Å)は、以下を意味する。
4.6Å:2θ=4.5~4.7Åに検出されるX線回折ピークの強度
4.2Å:2θ=4.1~4.3Åに検出されるX線回折ピークの強度
4.6Å/(4.6Å+4.2Å):4.6Åと4.2Åの和に対する、4.6Åの比 - 請求項1~5の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物を含む食品。
- 請求項1~5の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法であって、
50℃未満の融液状態にある可塑化前のベースとなる油脂組成物に、50℃以上の融点と2鎖長β型結晶を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を分散した後、冷却可塑化する、前記可塑性油脂組成物の製造方法。 - 前記冷却可塑化後に、15~35℃で3時間以上、調温する、請求項7に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
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