JP7114322B2 - 可塑性油脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

可塑性油脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、可塑性油脂組成物およびその製造方法などに関する。より具体的には、粉末油脂組成物を含有する可塑性油脂組成物およびその製造方法などに関する。
ショートニング、マーガリンなどの可塑性油脂組成物は、主に、パンなどへのスプレッド、ベーカリー生地への練り込みや折り込み、バタークリームやシュガークリームなどのクリームに使用される。クリームに使用される可塑性油脂組成物には、特に、良好な口どけが必要とされる。
良好な口どけを得るために、ラウリン系油脂などのSFC(固体脂含有量)曲線が縦型の油脂が使用される。例えば、特開平7-203846号公報には、沃素価30~40、融点15℃以下であって、固体脂含有指数が特定値であるラウリン系油脂の分画軟部油からなる油脂を、油脂成分の一部に使用したバタークリームが開示されている。
しかしながら、SFC曲線が縦型の油脂は、滑らかな組織とするために急冷可塑化する必要がある。SFC曲線が縦型の油脂を急冷すると、油脂結晶が一度に析出するため、製造装置への負荷が大きい。したがって、可塑性油脂組成物に配合できるSFC曲線が縦型の油脂の量は限られる。
また、特開2003-144054号公報には、主要構成脂肪酸がエルカ酸であり、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する油相からなる、油性感が少なく、口溶けが良好で、清涼感のある無水クリームが開示されている。しかし、乳化剤の多用は、好ましくない風味を付与し易い。
特開平7-203846号公報 特開2003-144054号公報
したがって、良好な口どけを有し、加工し易い可塑性油脂組成物が求められている。本発明の課題は、良好な口どけを有し、加工し易い可塑性油脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を達成するため、鋭意検討を行った。そして、特定の融点と平均粒径を有する油脂粉末を含有する粉末油脂組成物を可塑性油脂組成物に含有させることにより、急冷しなくても(徐冷であっても)、良好な組織と良好な口どけを有する可塑性油脂組成物が得られることを見出した。これにより、本発明は完成された。即ち、本発明は、以下の態様を含み得る。
[1]粉末油脂組成物を含有する可塑性油脂組成物であって、
前記粉末油脂組成物が、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む、前記可塑性油脂組成物。
[2]前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める前記油脂粉末の割合が、4~40質量%である、[1]の可塑性油脂組成物。
[3]50質量%を超えるH2UおよびHU2を含有するH2U+HU2油脂を含有する、[1]または[2]の可塑性油脂組成物。
(ただし、H、UおよびH2Uは、以下を意味する。
H:炭素数16~24の飽和脂肪酸
U:炭素数16~24の不飽和脂肪酸
H2U:グリセロール1分子に2分子のHと1分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロール
HU2:グリセロール1分子に2分子のUと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロール)
[4]50質量%を超えるCN32~42TGを含有するCN32~42TG油脂を含有する、[1]~[3]の何れかの可塑性油脂組成物。
(ただし、CN32~42TGは、構成脂肪酸残基の炭素数の合計が32~42であるトリアシルグリセロールを意味する。)
[5]前記油脂粉末の粒子が2.5以上のアスペクト比Bを有する板状形状である、[1]~[4]の何れかの可塑性油脂組成物。
[6]前記油脂粉末がβ型油脂結晶を含有する、[1]~[5]の何れかの可塑性油脂組成物。
[7]前記油脂粉末が、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリアシルグリセロールを含み、前記炭素数xは12~22から選択される整数である、[1]~[6]の何れかの可塑性油脂組成物。
[8]前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05~0.4g/cmである、[1]~[7]の何れかの可塑性油脂組成物。
[9][1]~[8]の何れかの可塑性油脂組成物を含む食品。
[10]融解した状態にある油脂に、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を分散した後、冷却する、可塑性油脂組成物の製造方法。
[11]40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を有効成分とする、可塑性油脂組成物の結晶化促進剤。
本発明は、良好な口どけを有する可塑性油脂組成物を提供する。また、本発明は、粉末油脂組成物を使用した簡易な可塑性油脂組成物の製造方法を提供する。
粉末油脂組成物Aを、+2℃/分で加熱したときの吸熱量の変化を測定したDSCチャートである。
以下、本発明の可塑性油脂組成物について順を追って記述する。
<粉末油脂組成物>
本発明の可塑性油脂組成物は、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含む。当該粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。また、当該40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の原料となる油脂は、食用油脂である限り特に制限はない。例えば、油脂を構成する脂肪酸の80質量%以上が炭素数12以上の飽和脂肪酸からなる、パームステアリン、極度硬化菜種油、極度硬化高エルシン酸菜種油、極度硬化ひまわり油、極度硬化紅花油、極度硬化パーム油、トリラウリンなどが挙げられる。これらの油脂は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記油脂粉末の融点は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは56℃以上であり、さらに好ましくは61℃以上である。油脂粉末の融点が上記範囲内にあると、可塑性油脂組成物の製造条件が徐冷却であっても、良好な組織と良好な口どけを有する可塑性油脂組成物が得られる。なお、油脂粉末の融点は、DSC(示差走査熱量計)測定において、油脂粉末を、+1~+5℃(好ましくは+2℃)/分の昇温速度で加熱して、吸熱がなくなる温度である。より具体的には、図1に見られるように、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの、交点の温度として求めることができる。
上記粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末は、50μm以下の平均粒径を有する。当該油脂粉末の平均粒径は、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは1~20μmであり、さらに好ましく1~15μmである。なお、平均粒径(平均粒子径、有効径ともいう)は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて、湿式測定により測定した値(d50)である。有効径は、測定対象となる油脂粉末(油脂結晶)の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザー回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状形状であっても球状形状であっても同じ原理で測定できる。40℃以上の融点を有する油脂粉末の平均粒径が上記範囲内にあると、可塑性油脂組成物は良好な口どけを有する。
上記粉末油脂組成物は、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の他に、乳化剤、香料、脱脂粉乳、全脂粉乳、ココアパウダー、砂糖、デキストリン、カゼインナトリウムなどのその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができる。例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、その他の成分は、好ましくは0~70質量%であり、より好ましくは0~50質量%であり、さらに好ましくは0~30質量%である。その他の成分は、その90質量%以上が、好ましくは平均粒径1000μm以下の紛体であり、より好ましくは平均粒径500μm以下の紛体である。
上記粉末油脂組成物の好ましい態様の1つとしては、実質的に上記40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末からなる粉末油脂組成物が挙げられる。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末以外の成分の含有量が、粉末油脂組成物を100質量%とした場合、例えば、0~15質量%であり、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0~5質量%であることを意味する。
上記粉末油脂組成物の好ましい態様の1つとしては、また、上記40℃以上の融点と5μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の粒子が板状形状である。ここで、油脂粉末の粒子が板状形状であるかどうかは、アスペクト比Bで判定できる。ここでいうアスペクト比Bは、粒子の長径を厚さで除した値であり、長径/厚さで定義される。すなわち、粒子が球状の場合はアスペクト比Bが1であり、扁平な度合いが増すにつれてアスペクト比Bは大きくなる。粒子の長径および厚さは、例えば、以下のように測定することができる。長径の大きさは、主に上述のレーザー回折散乱法に基づいて求めることができる。この場合、長径の大きさには平均粒径が通常用いられる。粒子の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、複数の粒子を撮影する。その観察像から、粒子を任意に50個選択し、厚さ方向の寸法をそれぞれ測定する。厚さの全てを積算して個数で除したものを平均厚さとする。そして、平均厚さに対する平均粒径を粉体集合体(油脂粉末)としての平均アスペクト比とし、アスペクト比Bとする。ここで、本発明における40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の粒子形状は、アスペクト比Bが、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは2.5~100であり、さらに好ましくは3~50であり、ことさらに好ましくは3~20であり、最も好ましくは3~15である。上記40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末のアスペクト比Bが上記範囲内にあると、徐冷却であっても、良好な組織を有する可塑性油脂組成物が得られる。
上記粉末油脂組成物の好ましい態様の1つとしては、また、上記40℃以上の融点と350μm以下の平均粒径を有する油脂粉末(油脂結晶)の結晶形がβ型である、粉末油脂組成物が挙げられる。β型とは、油脂の結晶多形の一つである。油脂の結晶には、同一組成でありながら、異なる副格子構造(結晶構造)を持つものがあり、結晶多形と呼ばれている。代表的には、六方晶型、斜方晶垂直型および三斜晶平行型があり、それぞれα型、β’型およびβ型と呼ばれている。ここで油脂結晶の結晶形がβ型であるとは、好ましくは、上記油脂結晶が、X線回折測定において、4.5~4.7Å付近、好ましくは4.6Å付近に回析ピークを有し、特に、4.2Å付近に回折ピークを有さない場合である。より具体的には、X線回折測定において、β型の特徴的ピークである2θ=19°(4.6Å)のピーク強度(G)とα型の特徴的ピークである2θ=21°(4.2Å)のピーク強度(G’)の比率:G/(G+G’)を算出することでβ型結晶の存在量を表す指標とできる。本発明では、上記ピーク強度比が1であることが好ましい。しかし、ピーク強度比の下限値が、例えば0.4以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上、ことさらに好ましくは0.75以上、最も好ましくは0.8以上であればよい。ピーク強度比が0.4以上であれば、油脂結晶の50質量%超がβ型であるとみなすことができる。ピーク強度比の上限値は1であることが好ましいが、0.99以下、0.98以下、0.95以下、0.93以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下などであってもかまわない。ピーク強度比は、上記下限値および上限値のいずれか、もしくは、任意の組み合わせであり得る。40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の結晶形がβ型(ピーク強度比が上記範囲内)であると、徐冷却であっても、良好な組織と良好な口どけを有する可塑性油脂組成物が得られる。
上記粉末油脂組成物の好ましい態様の1つとしては、また、ゆるめ嵩密度が0.05~0.4g/cmである、粉末油脂組成物が挙げられる。粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂粉末のみからなる場合、好ましくは0.1~0.4g/cm3であり、より好ましくは0.15~0.4g/cm3であり、さらに好ましくは0.2~0.3g/cm3である。
本発明における上記ゆるめ嵩密度は、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm)は、例えば、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT-X)で測定することができる。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求める。
ゆるめ嵩密度(g/cm)=A(g)/100(cm
また、ゆるめ嵩密度は、メスシリンダーを用いても測定できる。例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填する。そして、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、1mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することにより、ゆるめ嵩密度が求められる。
<粉末油脂組成物の製造方法>
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる粉末油脂組成物の製造方法において、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する粉末状の油脂結晶(油脂粉末あるいは油脂結晶粉末ともいう)を調製する方法は特に限定されない。40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末となるように、凍結粉砕、押出造粒、噴霧冷却造粒など、従来公知の方法を適用してもよい。しかし、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を得る好ましい態様の1つとしては、当該油脂粉末の原料油脂として、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリアシルグリセロールを含み、前記炭素数xは12~22から選択される整数である、油脂を使用する態様が挙げられる。
上記油脂粉末の原料油脂に含まれるXXX型トリアシルグリセロールは、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリアシルグリセロールであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは12~22から選択される整数であり、好ましくは16~22から選択される整数、より好ましくは16~20から選択される整数、さらに好ましくは16~18から選択される整数である。脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、およびベヘン酸などの残基が挙げられる。しかし、これに限定するものではない。脂肪酸残基Xは、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびベヘン酸であり、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸であり、ことさら好ましくは、パルミチン酸およびステアリン酸である。40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の原料油脂に含まれる当該XXX型トリアシルグリセロールの含有量は、油脂の全質量を100質量%とした場合、例えば、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を下限とし、例えば、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下を上限とする範囲である。XXX型トリアシルグリセロールは1種類または2種類以上を用いることができ、好ましくは1種類または2種類であり、より好ましくは1種類が用いられる。XXX型トリアシルグリセロールが2種類以上の場合は、その合計値がXXX型トリアシルグリセロールの含有量となる。
上記油脂粉末の原料油脂は、上記XXX型トリアシルグリセロール以外の、その他のトリアシルグリセロールを含んでいてもよい。その他のトリアシルグリセロールは、複数の種類のトリアシルグリセロールであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。天然油脂としては、例えば、パーム油、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油などが挙げられる。上記油脂粉末の原料油脂を100質量%とした場合、上記XXX型トリアシルグリセロール以外のその他のトリアシルグリセロールは、1質量%以上、例えば、5~50質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリアシルグリセロールの含有量は、例えば、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~18質量%、さらに好ましくは0~15質量%、ことさらに好ましくは0~8質量%である。
上記の、XXX型トリアシルグリセロールを有する油脂粉末の原料油脂は、溶融状態とし、特定の冷却温度に保ち、冷却固化することにより、噴霧やミルなどの粉砕機による機械粉砕などの特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂結晶(油脂粉末)を得ることができる。より具体的には、(a)XXX型トリアシルグリセロールを有する原料油脂を準備し、任意に工程(b)として、工程(a)の原料油脂を加熱し、前記原料油脂に含まれるトリアシルグリセロールを融解して溶融状態の前記原料油脂を得、さらに(d)前記溶融状態の原料油脂を冷却固化して、β型油脂結晶を含有し、その粒子形状が板状である粉末状の油脂結晶(油脂粉末)を得る。
上記工程(d)の冷却は、例えば、溶融状態の原料油脂を、当該原料油脂のβ型結晶の融点より低い温度であって、かつ、次式:
冷却温度(℃) = 炭素数x × 6.6 ― 68
から求められる冷却温度以上の温度で行われる。このような温度範囲で冷却すれば、β型の細かい油脂結晶ができるので、油脂結晶粉末を容易に得ることができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として油脂結晶の粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、および/または(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに上記工程(d)で得られる油脂結晶粉末は、工程(d)の冷却後に得られる固形物を粉砕して粉末状の油脂結晶を得る工程(e)によって得られるものであってもよい。
上記工程(e)において、冷却後に得られる固形物は、ハンマーミル、カッターミルなど、公知の粉砕加工手段を適用して、50μm以下の平均粒径を有する粉末状の油脂結晶(油脂結晶粉末、油脂粉末ともいう)を生産することもできる。なお、上記工程において、XXX型トリアシルグリセロールを有する油脂粉末の原料油脂は、すでに述べた油脂以外の成分を0~15質量%含む油脂組成物の状態で工程(a)~(e)に供されてもよいし、β型油脂結晶粉末とした後、すでに述べた油脂以外のその他の成分と混合されてもよい。
上記のようにして得られた、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末であって、かつ、XXX型トリアシルグリセロールを有する油脂粉末は、好ましくは、アスペクト比Bが2.5以上の板状形状であり、油脂結晶の結晶形がβ型であり、ゆるめ嵩密度が0.05~0.4g/cmである。そして、当該油脂粉末を含有する粉末油脂組成物は、本発明の可塑性油脂組成物に好適に使用できる。なお、当該粉末油脂組成物については、本出願人が先に出願したPCT/JP2016/078122(特願2015-187271)の明細書に詳述されるので、詳細は割愛する。前記出願の内容は、本明細書の中に取り込まれる。
<可塑性油脂組成物>
本発明の可塑性油脂組成物は、上記の、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含有する。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の含有量は、好ましくは4~40質量%であり、より好ましくは6~30質量%であり、さらに好ましくは8~22質量%である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の含有量が上記範囲内にあると、徐冷却であっても、良好な組織と良好な口どけを有する可塑性油脂組成物が得られる。
本発明の可塑性油脂組成物は、水の含有量が3質量%以下である実質的に無水物であってもよいし、乳化物であってもよい。乳化物は、油中水型乳化物、水中油型乳化物、あるいは複合乳化物であってもよい。しかし、本発明の可塑性油脂組成物は、好ましくは無水物である。本発明の可塑性油脂組成物の具体例としては、例えば、マーガリン、ショートニングなどが挙げられる。
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂の含有量は、粉末油脂組成物に含まれる油脂を含め、具体的な可塑性油脂組成物の特質に応じて適宜設定されればよい。例えば、ショートニングの場合、油脂の含有量は、好ましくは80~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%であり、さらに好ましくは95~100質量%である。マーガリン(油中水型乳化物)の場合、油脂の含有量は、好ましくは40~96質量%であり、より好ましくは60~92質量%であり、さらに好ましくは70~88質量%である。
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂の供給源としては、粉末油脂組成物に含まれる40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を除き、通常の食用油脂および/または含油食品素材に含まれる油脂が使用できる。食用油脂の具体例としては、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン、パーム中融点部、およびパームステアリンなど)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、ココアバター、ヤシ油、パーム核油、豚脂、牛脂、および乳脂などや、これらの混合油、加工油脂(水素添加油、エステル交換油、および分別油など)などが挙げられる。これらの食用油脂は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、好ましくは、50質量%を超えるH2UおよびHU2の合計量、を含有するH2U+HU2油脂を含有する。以下、H、UおよびH2Uは、以下を意味する。Hは、炭素数16~24の飽和脂肪酸である。Uは、炭素数16~24の不飽和脂肪酸である。H2Uは、グリセロール1分子に2分子のHと1分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロールである。HU2は、グリセロール1分子に2分子のUと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロールである。Hは、好ましくは炭素数16~20の飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数16~18の飽和脂肪酸である。また、Uは、好ましくは炭素数16~20の不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数16~18の不飽和脂肪酸である。HおよびUは、好ましくは直鎖脂肪酸である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、H2U+HU2油脂の含有量は、好ましくは10~96質量%であり、より好ましくは20~92質量%あり、さらに好ましくは30~90質量%である。本発明の可塑性油脂組成物はH2U+HU2油脂を含有しても良好な可塑性を有する。
上記H2U+HU2油脂は、例として、ココアバター、パーム油、シア脂、サル脂、アランブラッキア脂、モーラー脂、イリッペ脂、およびマンゴー核油、ならびに、それらの分別油が挙げられる。また、すでに知られているように、パルミチン酸、ステアリン酸、あるいは、それらの低級アルコールエステルと、ハイオレイックヒマワリ油などの高オレイン酸油脂とを、1,3位選択性リパーゼ製剤を用いて、エステル交換反応をさせた後、必要に応じて分別して得られる油脂を使用してもよい。また、油脂を構成する脂肪酸の90質量%以上が炭素数16以上である非ラウリン系油脂のエステル交換油脂、もしくは、その分別油であってもよい。H2U+HU2油脂は、1種または2種以上が含まれてもよい。H2U+HU2油脂は、H2UおよびHU2を合計量で、好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは70質量%以上含有する。
本発明の可塑性油脂組成物は、好ましくは、50質量%を超える構成脂肪酸残基の炭素数の合計が32~42であるトリアシルグリセロール(CN32~42TG)を含有するCN32~42TG油脂を含有する。ここで構成脂肪酸残基の炭素数の合計とは、トリアシルグリセロールにエステル結合している3つの脂肪酸の炭素数の合計値である。例えば、トリラウリンは36である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、CN32~42TG油脂の含有量は、好ましくは5~96質量%であり、より好ましくは10~92質量%あり、さらに好ましくは20~90質量%である。CN32~42TG油脂はSFC(固体脂含有量)が縦型の油脂であり、可塑性油脂組成物の口どけをよくする。本発明の可塑性油脂組成物はCN32~42TG油脂を含有しても良好な可塑性を有する。
上記CN32~42TG油脂は、例として、油脂を構成する脂肪酸全量に占めるラウリン酸の含有量が30質量%以上であるラウリン系油脂、すなわち、ヤシ油、パーム核油、およびババス油など、ならびに、それらの分別油が挙げられる。CN32~42TG油脂は、また、ラウリン系油脂と、油脂を構成する脂肪酸全量のうち90質量%以上が炭素数16以上である非ラウリン系油脂と、を含む混合油脂のエステル交換油脂であってもよい。もしくは、その分別油脂であってもよい。当該混合油脂は、ラウリン系油脂と、油脂を構成する脂肪酸全量のうち90質量%以上が炭素数16以上である非ラウリン系油脂とを、好ましくは30:70~70:30の質量比で含み、より好ましくは35:65~65:35の質量比で含む。CN32~42TG油脂は、1種または2種以上が含まれてもよい。CN32~42TG油脂は、CN32~42TGを好ましくは60質量%以上し、より好ましくは70質量%以上含有する。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記、H2U+HU2油脂とCN32~42TG油脂とを含有してもよい。その場合、本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、H2U+HU2油脂の含有量は、好ましくは25~91質量%であり、より好ましくは30~83質量%であり、さらに好ましくは35~78質量%である。また、CN32~42TG油脂の含有量は、好ましくは4~70質量%であり、より好ましくは9~62質量%であり、さらに好ましくは12~55質量%である。本発明の可塑性油脂組成物が、H2U+HU2油脂とCN32~42TG油脂とを上記範囲内で含有すると、可塑性油脂組成物の口どけが極めて良くなるという副次効果を有する。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記の、H2U+HU2油脂およびCN32~42TG油脂の他に、非ラウリン系油脂の極度硬化油脂(FHNL油脂)を含有してもよい。FHNL油脂は、ヨウ素価5以下かつ構成脂肪酸全量に占める炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量が90質量%以上の油脂である。FHNL油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、紅花油、コーン油、パーム油、パーム分別油などの極度硬化油が挙げられる。FHNL油脂は、好ましくは菜種油の極度硬化油である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、FHNL油脂の含有量は、好ましくは0.1~8質量%であり、より好ましくは0.5~6質量%であり、さらに好ましくは1~5質量%である。本発明の可塑性油脂組成物が、FHNL油脂を上記範囲内で含有すると、可塑性油脂組成物の口どけが損なわれることなく、耐熱性が向上するという副次効果を有する。
本発明の可塑性油脂組成物は、油脂以外のその他の成分として、通常、ショートニング、マーガリンなどの可塑性油脂組成物に配合される成分を配合できる。その他の成分としては、水、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガムなどの増粘安定剤、食塩および塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸およびグルコン酸などの酸味料、糖類、糖アルコール類、ステビアおよびアスパルテームなどの甘味料、β-カロテン、カラメルおよび紅麹色素などの着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキンなど)およびルチンなどの酸化防止剤、小麦蛋白および大豆蛋白などの植物蛋白、全脂粉乳、脱脂粉乳および乳清蛋白などの乳製品、卵および卵加工品、香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類および魚介類など、の食品素材や食品添加物が挙げられる。
<可塑性油脂組成物の製造方法>
本発明の可塑性油脂組成物の製造方法は、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含み、可塑化された状態にできる方法であれば、特に限定されない。しかし、好ましい態様の1つとしては、可塑化(結晶化)前の融解状態にあるベースとなる油脂組成物(以下、ベース油脂組成物ともいう)に、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を、混合ないし添加し、冷却可塑化(結晶化)する方法が挙げられる。融解状態にあるベース油脂組成物の温度は、好ましくは、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末の融点-5℃以下であり、より好ましくは、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末の融点-10℃以下である。例えば、粉末油脂組成物に含まれる油脂粉末の融点が45℃である場合、融解状態にあるベース油脂組成物の温度は、好ましくは、40℃以下である。40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物とベース油脂組成物とを混合する割合は、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末とベース油脂組成物に含まれる油脂とを基準として、質量比で、好ましくは4:96~40:60であり、より好ましくは6:94~30:70であり、さらに好ましくは8:92~22:78である。
本発明の可塑性油脂組成物がショートニングの場合、上記ベース油脂組成物は、典型的には。油脂と必要に応じて乳化剤などを含む、融液状の油脂組成物である。また、マーガリンの場合、典型的には、油脂と必要に応じて乳化剤などを含む融液状の油脂組成物に、水と必要に応じて食品添加素材などを含む水溶液を乳化させた、乳化油脂組成物である。ベース油脂組成物は、適時殺菌処理されてもよい。可塑化(結晶化)前の融解状態にあるベースとなる油脂組成物に、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を、混合攪拌した後は、通常の可塑性油脂組成物の製造で行われる急冷可塑化を行ってもよい。急冷可塑化は、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクターなどの急冷可塑化装置を使用できる。冷却条件は、好ましくは-10℃/分以上、より好ましくは-20℃/分以上である。しかし、本発明の可塑性油脂組成物は、冷却が徐冷で行われてもよい。典型的には、可塑化(結晶化)前の融解状態にあるベースとなる油脂組成物に、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を、混合攪拌した後、緩慢に攪拌をしながら、または、攪拌しないで、好ましくは5~30℃程度、より好ましくは10~25℃程度の冷媒(例えば、冷却水)で冷却して、または、好ましくは5~30℃程度、より好ましくは10~25℃程度、さらに好ましくは15~20℃程度の温度で放冷(空冷)して、可塑化(結晶化)してもよい。冷却時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは12時間以上、ことさらに好ましくは24時間以上であってもよい。冷却時間の上限は、特に限定されない。しかし、冷却時間は、300時間以下、100時間以下または50時間以下であってもよい。冷却時間の下限と上限は任意に選択できる。また、冷却速度は、好ましくは-0.01℃/分~-5℃/分程度、より好ましく-0.01℃/分~-3℃/分程度、さらに好ましくは-0.01℃/分~-1℃/分程度、の緩慢な冷却速度であってもよい。
本発明の可塑性油脂組成物は、良好な組織と良好な口どけを有する。本発明の可塑性油脂組成物は、例えば、菓子・パンなどのベーカリー生地への練り込み用や折り込み用、ベーカリー食品へのスプレッド用やコーティング用、ならびに、無水クリームやバタークリームなどのクリーム用など、として使用できる。特に、その特長を活かした、クリーム用途に好適である。
次に、例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに何ら制限されない。また。以下において「%」は、特別な記載がない場合、質量%を示す。
<分析方法>
・トリアシルグリセロール組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
・X線回折測定
X線回折装置(株式会社リガク社製 UltimaIV)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96~30.0°、測定速度2°/分の条件で測定した。この測定により、4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断した。
なお、上記X線回析測定の結果から、β型の特徴的ピークである2θ=19°(4.6Å)のピーク強度(G)とα型の特徴的ピークである2θ=21°(4.2Å)のピーク強度(G’)の比率:G/(G+G’)をβ型結晶の存在量を表す指標とする。
・融点
DSC(メトラー・トレド社製 DSC1)を使用して、油脂粉末を、+2℃/分の昇温速度で加熱し、吸熱曲線を測定した。融点は、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの、交点の温度として求められた。
・ゆるめ嵩密度
実施例などで得られた粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度(g/cm3)は、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めた。
・平均粒径
粒度分布測定装置(日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて測定した。すなわち、上記の装置に極小容量循環器(日機装株式会社製、装置名:USVR)を取り付け、分散溶媒として水を循環させた。そして、100mlビーカーに試料を0.06g、中性洗剤を0.6g入れ、スパチュラで混合し、混合後に水を30ml加え、超音波洗浄器(アイワ医科工業株式会社製、装置名:AU-16C)に1分間供したものを滴下、循環させて測定した。得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)を、平均粒径とした。
・アスペクト比B
粒度分布測定装置(日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて平均粒径を計測し平均長径とした。また、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VE-8800)により直接観察し、任意に選択した粒子について、その厚さ方向の寸法をそれぞれ測定した。厚さの全てを積算して個数で除したものを平均厚さとした。そして、平均粒径を平均厚さで除すことで粉体集合体としての平均アスペクト比を算出し、アスペクト比Bを測定した。
<粉末油脂組成物の調製>
以下の粉末油脂組成物Aおよびaを準備した。また、比較参考用として粉末組成物bおよびcを準備した。
(1)粉末油脂組成物A
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリアシルグリセロール(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末状の油脂結晶(融点:69.9℃、ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比B:4.7、平均粒径9.0μm、X線回折測定回析ピーク:4.6Å、ピーク強度比(G/(G+G’)):0.89)を得た。この油脂粉末を粉末油脂組成物Aとした。
(2)粉末油脂組成物a
市販の油脂粉末(理研ビタミン株式会社製:スプレーファットNR100)を、粉末油脂組成物aとした。これは、菜種極度硬化油をスプレークラーにより粉末化した油脂粉末であり、ビーズ状の球形粉末であり、平均粒径は85.6μmであった。
(3)粉末組成物b
市販のタルク(小林製薬株式会社製、平均粒径20.8μm)を、粉末組成物bとした。
(4)粉末組成物c
市販のステアリン酸カルシウム(メルク株式会社製、平均粒径6.5μm)を、粉末組成物cとした。
<食用油脂の準備>
・H2U+HU2油脂
(1)パーム中融点部(日清オイリオグループ株式会社製、H2UおよびHU2の合計含有量81.8質量%)を使用した。PMFと略号表記する場合がある。
(2)65質量部のパーム中融点部と35質量部のパームステアリンとを混合した。当該混合油脂に、触媒としてナトリウムメトキシドを用いたランダムエステル交換を適用した。乾式分別した当該ランダムエステル交換油脂の低融点画分(H2UおよびHU2の合計含有量77.3質量%)を、常法に従って精製した。NLIEOLと略号表記する場合がある。
(3)パームオレインに、触媒としてナトリウムメトキシドを用いたランダムエステル交換を適用した。当該ランダムエステル交換油脂(H2UおよびHU2の合計含有量70.5質量%)を、常法に従って精製した。IEPLと略号表記する場合がある。
・CN32~42TG油脂
(4)パーム核油(日清オイリオグループ株式会社製、CN32~42TG含有量75.8質量%)を使用した。PKOと略号表記する場合がある。
(5)パーム核ステアリン極度硬化油(日清オイリオグループ株式会社製、CN32~42TG含有量86.3質量%)を使用した。FHPKSと略号表記する場合がある。
・FHNL油脂
(6)菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製、ヨウ素価値1)を使用した。FHRSOと略語表記する場合がある。
<可塑性油脂組成物の調製>
以下の製造手順1~4により、表1~5に示す配合に従って、例1~25の可塑性油脂組成物(ショートニング)を製造した。製造した例1~25の可塑性油脂組成物を20℃で1ヵ月維持した。1ヵ月後に組織の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果は、表1~5に示した。
(製造手順)
1.表1~5のベース油脂組成物の配合に従って、ベース油脂組成物を混合し、80℃で融解した。
2.1で融解したベース油脂組成物を45℃に調温し、表1~5に従って、粉末油脂組成物または粉末組成物を添加した。
3.2で粉末油脂組成物または粉末組成物を添加後、ミキサー(KitchenAid社製)で7分間撹拌し、粉末油脂組成物または粉末組成物が十分に分散した分散体を得た。
4.3の分散体500gを容器へ流し込み、20℃で4日間維持して、ショートニングを得た。
(組織の評価基準)
◎:組織が滑らかで良好
〇:組織の荒れはなく、良好
△:組織にやや荒れが見られる。
×:グレインが発生し、不良
<シュガークリームの調製>
50質量部の例1~25の各ショートニングに対して、それぞれ50質量部の粉糖を加え、ミキサーで比重が0.6になるまでホイップし、シュガークリームを調製した。調製したシュガークリームの口どけについて、資格登録された5名の社内パネルにて、以下の評価基準に従って採点した。採点の合計値により、以下に示す基準に従って総合的に評価した。
(シュガークリームの口どけの評価基準)
3・・・極めて口どけが良い
2・・・口どけが良い
1・・・ふつう
0・・・口どけが悪い

(総合評価基準)
採点合計 評価
13以上15以下 ◎(非常に良好)
9以上12以下 ○(良好)
5以上8以下 △(ふつう)
0以上4以下 ×(不良)
Figure 0007114322000001
Figure 0007114322000002
Figure 0007114322000003
Figure 0007114322000004
Figure 0007114322000005

Claims (9)

  1. 粉末油脂組成物を含有する可塑性油脂組成物の製造方法であって、
    前記粉末油脂組成物が、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含み、
    前記油脂粉末の融点-5℃以下の温度であり、かつ、融液状態にある、ベース油脂組成物に、前記粉末油脂組成物を分散した後、冷却する
    前記可塑性油脂組成物の製造方法
  2. 前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める前記油脂粉末の割合が、4~40質量%である、請求項1に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
  3. 50質量%を超えるH2UおよびHU2を含有するH2U+HU2油脂を含有する、請求項1または2に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
    (ただし、H、UおよびH2Uは、以下を意味する。
    H:炭素数16~24の飽和脂肪酸
    U:炭素数16~24の不飽和脂肪酸
    H2U:グリセロール1分子に2分子のHと1分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロール
    HU2:グリセロール1分子に2分子のUと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロール)
  4. 50質量%を超えるCN32~42TGを含有するCN32~42TG油脂を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
    (ただし、CN32~42TGは、構成脂肪酸残基の炭素数の合計が32~42であるトリアシルグリセロールを意味する。)
  5. 前記油脂粉末の粒子が2.5以上のアスペクト比Bを有する板状形状である、請求項1~4の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
  6. 前記油脂粉末がβ型油脂結晶を含有する、請求項1~5の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
  7. 前記油脂粉末が、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリアシルグリセロールを含み、前記炭素数xは12~22から選択される整数である、請求項1~6の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
  8. 前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05~0.4g/cm3である、請求項1~7の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法
  9. 0.5時間以上、5~30℃の冷媒または空気で冷却することにより結晶化する、請求項1~8の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
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