JP7114322B2 - 可塑性油脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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前記粉末油脂組成物が、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む、前記可塑性油脂組成物。
[2]前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める前記油脂粉末の割合が、4~40質量%である、[1]の可塑性油脂組成物。
[3]50質量%を超えるH2UおよびHU2を含有するH2U+HU2油脂を含有する、[1]または[2]の可塑性油脂組成物。
(ただし、H、UおよびH2Uは、以下を意味する。
H:炭素数16~24の飽和脂肪酸
U:炭素数16~24の不飽和脂肪酸
H2U:グリセロール1分子に2分子のHと1分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロール
HU2:グリセロール1分子に2分子のUと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロール)
[4]50質量%を超えるCN32~42TGを含有するCN32~42TG油脂を含有する、[1]~[3]の何れかの可塑性油脂組成物。
(ただし、CN32~42TGは、構成脂肪酸残基の炭素数の合計が32~42であるトリアシルグリセロールを意味する。)
[5]前記油脂粉末の粒子が2.5以上のアスペクト比Bを有する板状形状である、[1]~[4]の何れかの可塑性油脂組成物。
[6]前記油脂粉末がβ型油脂結晶を含有する、[1]~[5]の何れかの可塑性油脂組成物。
[7]前記油脂粉末が、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリアシルグリセロールを含み、前記炭素数xは12~22から選択される整数である、[1]~[6]の何れかの可塑性油脂組成物。
[8]前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05~0.4g/cm3である、[1]~[7]の何れかの可塑性油脂組成物。
[9][1]~[8]の何れかの可塑性油脂組成物を含む食品。
[10]融解した状態にある油脂に、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を分散した後、冷却する、可塑性油脂組成物の製造方法。
[11]40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を有効成分とする、可塑性油脂組成物の結晶化促進剤。
本発明の可塑性油脂組成物は、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含む。当該粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。また、当該40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の原料となる油脂は、食用油脂である限り特に制限はない。例えば、油脂を構成する脂肪酸の80質量%以上が炭素数12以上の飽和脂肪酸からなる、パームステアリン、極度硬化菜種油、極度硬化高エルシン酸菜種油、極度硬化ひまわり油、極度硬化紅花油、極度硬化パーム油、トリラウリンなどが挙げられる。これらの油脂は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記油脂粉末の融点は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは56℃以上であり、さらに好ましくは61℃以上である。油脂粉末の融点が上記範囲内にあると、可塑性油脂組成物の製造条件が徐冷却であっても、良好な組織と良好な口どけを有する可塑性油脂組成物が得られる。なお、油脂粉末の融点は、DSC(示差走査熱量計)測定において、油脂粉末を、+1~+5℃(好ましくは+2℃)/分の昇温速度で加熱して、吸熱がなくなる温度である。より具体的には、図1に見られるように、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの、交点の温度として求めることができる。
本発明における上記ゆるめ嵩密度は、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、例えば、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT-X)で測定することができる。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm3)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求める。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3)
また、ゆるめ嵩密度は、メスシリンダーを用いても測定できる。例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填する。そして、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、1mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することにより、ゆるめ嵩密度が求められる。
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる粉末油脂組成物の製造方法において、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する粉末状の油脂結晶(油脂粉末あるいは油脂結晶粉末ともいう)を調製する方法は特に限定されない。40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末となるように、凍結粉砕、押出造粒、噴霧冷却造粒など、従来公知の方法を適用してもよい。しかし、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を得る好ましい態様の1つとしては、当該油脂粉末の原料油脂として、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリアシルグリセロールを含み、前記炭素数xは12~22から選択される整数である、油脂を使用する態様が挙げられる。
冷却温度(℃) = 炭素数x × 6.6 ― 68
から求められる冷却温度以上の温度で行われる。このような温度範囲で冷却すれば、β型の細かい油脂結晶ができるので、油脂結晶粉末を容易に得ることができる。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記の、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含む粉末油脂組成物を含有する。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の含有量は、好ましくは4~40質量%であり、より好ましくは6~30質量%であり、さらに好ましくは8~22質量%である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末の含有量が上記範囲内にあると、徐冷却であっても、良好な組織と良好な口どけを有する可塑性油脂組成物が得られる。
・トリアシルグリセロール組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
・X線回折測定
X線回折装置(株式会社リガク社製 UltimaIV)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96~30.0°、測定速度2°/分の条件で測定した。この測定により、4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断した。
なお、上記X線回析測定の結果から、β型の特徴的ピークである2θ=19°(4.6Å)のピーク強度(G)とα型の特徴的ピークである2θ=21°(4.2Å)のピーク強度(G’)の比率:G/(G+G’)をβ型結晶の存在量を表す指標とする。
DSC(メトラー・トレド社製 DSC1)を使用して、油脂粉末を、+2℃/分の昇温速度で加熱し、吸熱曲線を測定した。融点は、加熱により吸熱が完全になくなったベースラインと、最後の吸熱からベースラインへ回帰する立ち上がりのラインとの、交点の温度として求められた。
・ゆるめ嵩密度
実施例などで得られた粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度(g/cm3)は、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めた。
・平均粒径
粒度分布測定装置(日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて測定した。すなわち、上記の装置に極小容量循環器(日機装株式会社製、装置名:USVR)を取り付け、分散溶媒として水を循環させた。そして、100mlビーカーに試料を0.06g、中性洗剤を0.6g入れ、スパチュラで混合し、混合後に水を30ml加え、超音波洗浄器(アイワ医科工業株式会社製、装置名:AU-16C)に1分間供したものを滴下、循環させて測定した。得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)を、平均粒径とした。
・アスペクト比B
粒度分布測定装置(日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて平均粒径を計測し平均長径とした。また、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VE-8800)により直接観察し、任意に選択した粒子について、その厚さ方向の寸法をそれぞれ測定した。厚さの全てを積算して個数で除したものを平均厚さとした。そして、平均粒径を平均厚さで除すことで粉体集合体としての平均アスペクト比を算出し、アスペクト比Bを測定した。
以下の粉末油脂組成物Aおよびaを準備した。また、比較参考用として粉末組成物bおよびcを準備した。
(1)粉末油脂組成物A
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリアシルグリセロール(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物を機械粉砕することで粉末状の油脂結晶(融点:69.9℃、ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比B:4.7、平均粒径9.0μm、X線回折測定回析ピーク:4.6Å、ピーク強度比(G/(G+G’)):0.89)を得た。この油脂粉末を粉末油脂組成物Aとした。
(2)粉末油脂組成物a
市販の油脂粉末(理研ビタミン株式会社製:スプレーファットNR100)を、粉末油脂組成物aとした。これは、菜種極度硬化油をスプレークラーにより粉末化した油脂粉末であり、ビーズ状の球形粉末であり、平均粒径は85.6μmであった。
(3)粉末組成物b
市販のタルク(小林製薬株式会社製、平均粒径20.8μm)を、粉末組成物bとした。
(4)粉末組成物c
市販のステアリン酸カルシウム(メルク株式会社製、平均粒径6.5μm)を、粉末組成物cとした。
・H2U+HU2油脂
(1)パーム中融点部(日清オイリオグループ株式会社製、H2UおよびHU2の合計含有量81.8質量%)を使用した。PMFと略号表記する場合がある。
(2)65質量部のパーム中融点部と35質量部のパームステアリンとを混合した。当該混合油脂に、触媒としてナトリウムメトキシドを用いたランダムエステル交換を適用した。乾式分別した当該ランダムエステル交換油脂の低融点画分(H2UおよびHU2の合計含有量77.3質量%)を、常法に従って精製した。NLIEOLと略号表記する場合がある。
(3)パームオレインに、触媒としてナトリウムメトキシドを用いたランダムエステル交換を適用した。当該ランダムエステル交換油脂(H2UおよびHU2の合計含有量70.5質量%)を、常法に従って精製した。IEPLと略号表記する場合がある。
・CN32~42TG油脂
(4)パーム核油(日清オイリオグループ株式会社製、CN32~42TG含有量75.8質量%)を使用した。PKOと略号表記する場合がある。
(5)パーム核ステアリン極度硬化油(日清オイリオグループ株式会社製、CN32~42TG含有量86.3質量%)を使用した。FHPKSと略号表記する場合がある。
・FHNL油脂
(6)菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製、ヨウ素価値1)を使用した。FHRSOと略語表記する場合がある。
以下の製造手順1~4により、表1~5に示す配合に従って、例1~25の可塑性油脂組成物(ショートニング)を製造した。製造した例1~25の可塑性油脂組成物を20℃で1ヵ月維持した。1ヵ月後に組織の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果は、表1~5に示した。
1.表1~5のベース油脂組成物の配合に従って、ベース油脂組成物を混合し、80℃で融解した。
2.1で融解したベース油脂組成物を45℃に調温し、表1~5に従って、粉末油脂組成物または粉末組成物を添加した。
3.2で粉末油脂組成物または粉末組成物を添加後、ミキサー(KitchenAid社製)で7分間撹拌し、粉末油脂組成物または粉末組成物が十分に分散した分散体を得た。
4.3の分散体500gを容器へ流し込み、20℃で4日間維持して、ショートニングを得た。
◎:組織が滑らかで良好
〇:組織の荒れはなく、良好
△:組織にやや荒れが見られる。
×:グレインが発生し、不良
50質量部の例1~25の各ショートニングに対して、それぞれ50質量部の粉糖を加え、ミキサーで比重が0.6になるまでホイップし、シュガークリームを調製した。調製したシュガークリームの口どけについて、資格登録された5名の社内パネルにて、以下の評価基準に従って採点した。採点の合計値により、以下に示す基準に従って総合的に評価した。
3・・・極めて口どけが良い
2・・・口どけが良い
1・・・ふつう
0・・・口どけが悪い
(総合評価基準)
採点合計 評価
13以上15以下 ◎(非常に良好)
9以上12以下 ○(良好)
5以上8以下 △(ふつう)
0以上4以下 ×(不良)
Claims (9)
- 粉末油脂組成物を含有する可塑性油脂組成物の製造方法であって、
前記粉末油脂組成物が、40℃以上の融点と50μm以下の平均粒径を有する油脂粉末を含み、
前記油脂粉末の融点-5℃以下の温度であり、かつ、融液状態にある、ベース油脂組成物に、前記粉末油脂組成物を分散した後、冷却する、
前記可塑性油脂組成物の製造方法。 - 前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める前記油脂粉末の割合が、4~40質量%である、請求項1に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
- 50質量%を超えるH2UおよびHU2を含有するH2U+HU2油脂を含有する、請求項1または2に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
(ただし、H、UおよびH2Uは、以下を意味する。
H:炭素数16~24の飽和脂肪酸
U:炭素数16~24の不飽和脂肪酸
H2U:グリセロール1分子に2分子のHと1分子のUがエステル結合したトリアシルグリセロール
HU2:グリセロール1分子に2分子のUと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロール) - 50質量%を超えるCN32~42TGを含有するCN32~42TG油脂を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
(ただし、CN32~42TGは、構成脂肪酸残基の炭素数の合計が32~42であるトリアシルグリセロールを意味する。) - 前記油脂粉末の粒子が2.5以上のアスペクト比Bを有する板状形状である、請求項1~4の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
- 前記油脂粉末がβ型油脂結晶を含有する、請求項1~5の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
- 前記油脂粉末が、グリセロールの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリアシルグリセロールを含み、前記炭素数xは12~22から選択される整数である、請求項1~6の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
- 前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05~0.4g/cm3である、請求項1~7の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
- 0.5時間以上、5~30℃の冷媒または空気で冷却することにより結晶化する、請求項1~8の何れか1項に記載の可塑性油脂組成物の製造方法。
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