JP6788238B1 - 冷菓用油脂組成物及び冷菓用チョコレート類 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1記載の油脂は、固化性は良好だが、噛みだしの食感が硬いことに加え、風味が薄いにもかかわらず口中融解性が悪いために油性感を感じる問題があった。また、選択的エステル交換油脂であり、ランダムエステル交換油脂であるとアイスコーティング用途には適さないとの記載もあった。特許文献2記載の油脂は、融点が高く、特定のSFCとするために液状油を多く使用する必要があり、風味が薄くなり油性感を感じる問題があった。
特許文献3記載の油脂は、油脂組成中のPOP成分含有率が多いため、カリっと砕けるナッツ様の食感(クリスピー感)のため、冷菓生地との食感の対比が鮮明すぎる場合があった。
(1)下記(i)〜(vi)の条件をすべて満たすことを特徴とする、冷菓用エステル交換油脂組成物、
(i)構成脂肪酸中の飽和脂肪酸含量が20.0〜30.0重量%、
(ii)構成脂肪酸中の炭素数8〜10の飽和脂肪酸含量が1.0〜8.0重量%、
(iii)構成脂肪酸中の炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が2.0重量%未満、
(iv)構成脂肪酸中のステアリン酸含量が5.0〜15.0重量%、
(v)構成脂肪酸中のパルミチン酸/ステアリン酸の重量比(P/St)が0.5〜2.5、
(vi)5℃での固体脂含量(SFC)が10.0%未満、および15℃でのSFCが6.0%未満、
(2)(vii)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が2.0重量%未満である、(1)記載の冷菓用エステル交換油脂組成物、
(3)(1)または(2)に記載の冷菓用エステル交換油脂組成物を含有する、冷菓用チョコレート類、
(4)(1)または(2)に記載の冷菓用エステル交換油脂組成物を10.0〜25.0重量%、及びパーム分別低融点部を10.0〜45.0重量%含有する、冷菓被覆用チョコレート類、
(5)さらに、ラウリン系油脂の含有が25.0重量%以下である、(3)または(4)に記載の冷菓被覆用チョコレート類、
(6)(1)または(2)に記載の冷菓用エステル交換油脂組成物を3.0〜38.0重量%含有し、冷菓中に滴下・混合して、粒状ないしは破片状に存在させて使用する冷菓練り込み(滴下)用チョコレート類、
に関するものである。
本発明において練り込み(滴下)用途として使用するとは、溶解した冷菓用チョコレート類を冷菓中に滴下しながら混合し、冷菓中に粒状ないしは破片状に冷菓用チョコレート類を残す用途で用いられるものである。特別な成型機などを使わずとも、冷菓中に口どけの良いチョコレート等が点在する商品が簡便に得られるため、比較的多用される用途である。
冷菓用エステル交換油脂組成物について、油脂中の脂肪酸分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。また、トランス型不飽和脂肪酸は、AOCS Official Method Ce 1h-05の方法に準じて測定した。SFCは、IUPAC.2 150(a) SOLID CONTENT DETERMINATION IN FATS BY NMRに準じて測定した。なお、固化温度を0℃ではなく、-10℃に変更して行った。
構成脂肪酸中のオレイン酸含量が86.0%の高オレイン酸ヒマワリ油30.0重量部とステアリン酸エチル70.0重量部を混合した後、1,3位選択性のあるリパーゼを用いてエステル交換を行い、反応油を得た。この反応油よりエチルエステルを蒸留により留去し、アセトンを用いて溶剤分別を行い、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として分別中融点部である油脂A-1(ヨウ素価:33.0、飽和脂肪酸含量:64.2重量%)を得た。
油脂A-1と同様の反応油よりエチルエステルを蒸留により留去し、アセトンを用いて溶剤分別を行い、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として分別低融点部である油脂A-2(ヨウ素価:58.0、飽和脂肪酸含量:38.1重量%)を得た。
中鎖脂肪酸トリグリセリド(ヨウ素価:0.5以下、飽和脂肪酸含量:100重量%、炭素数8と10の脂肪酸が60:40) 5.0重量部、コーン油(ヨウ素価:123.0、飽和脂肪酸:14.5重量%) 82.0重量部、及び油脂A-1 13.0重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂1を得た。
中鎖脂肪酸トリグリセリド 5.0重量部、コーン油 59.0重量部、及び油脂A-2 36.0重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂2を得た。
中鎖脂肪酸トリグリセリド 5.0重量部、コーン油 80.0重量部、油脂A-2 5.0重量部及びパーム極度硬化油(ヨウ素価:0.5以下、飽和脂肪酸含量:100重量%) 10.0重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂3を得た。
コーン油 81.5重量部及び油脂A-1 18.5重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂4を得た。
中鎖脂肪酸トリグリセリド 5.0重量部、コーン油 86.6重量部及びヤシ油(ヨウ素価:8.5、飽和脂肪酸:91.6重量%) 8.4重量部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った。その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂5を得た。
下表2、3、5及び6の配合に従い、冷菓用チョコレート類を調製した。なお、チョコレート類の調製条件は、公知の方法に従った。すなわち、ココア(油分11.0重量%)、カカオマス、全粉乳、乳糖、砂糖に適量の植物性油脂とレシチンを加え、ミキサーで加温しながら混和しドウを作成する。このドウをロールリファイナー(BUHLER社製Three-roll mill SDY300)により、約20μmの粒度に微粒化し、ここへ残余の油脂とレシチンを全量加え、コンチングマシン(コンチェ)にて均一に練り上げ、チョコレート類を得た。
得られた冷菓用チョコレート類を、50℃まで加温し、油脂結晶を完全に溶解した後、40℃まで冷却して一定温度に保持した。一方、市販のバーアイス(ロッテ株式会社製、ラクトアイス)を−18℃の冷凍庫から取り出し、速やかに40℃のチョコレート中に浸漬して、1秒後に引き上げ、室温20℃の環境下で、被覆用チョコレート類の表面が完全に固化するまでの時間を計測した後、−25℃の急速冷凍庫で、一晩安定化させた。
このようにして得られた被覆済みバーアイスは、試食1時間前に家庭用の冷凍庫(-15℃)に移した。それを、冷菓用素材の開発に従事し、日々、冷菓の試作を行っているパネラー5名により下記の評価基準に基づき、官能評価を実施した。この際、合議にて決定したそれぞれの評点が○と◎を合格とした。
乾き) 被覆用チョコレート類の表面が完全に固化するまでの時間
◎: とても速い。
○: 速い。
△: 普通。
×: 遅い。
噛みだし)
○: 柔らかく、可塑性が感じられる。
△: 柔らかいが、可塑性は感じられない。
×: 噛みだしが硬い、または柔らかくない。
ボディ感)
◎: 適度に残存性あり、チョコレート類の風味に厚みがある。
○: 適度に残存性あり、チョコレート類の風味が感じられる。
△: 口の中に残るものの、チョコレート類の風味の持続性が短い。
×: すぐに溶けてしまい、チョコレート類の風味が感じられない。
表5の配合で得られた冷菓練り込み(滴下)用チョコレート類を、50℃まで加温し、油脂結晶を完全に溶解した後、30℃まで冷却して一定温度に保持した。一方、市販のバニラアイス(商品名:「バニラアイスクリーム」(販売者イオン株式会社)アイスクリーム・ 無脂乳固形分11%、乳脂肪分10%)を製菓用ミキサーで低速攪拌し、品温−5℃のペースト状とし、攪拌を続けながら、30℃に温調した上記のチョコレート類を滴下する。これにより、滴下したチョコレート類はアイスクリームで冷やされ、数ミリメートル大の不定形に固化し、アイスクリーム中に分散する。なお、滴下するチョコレートの量は、アイスクリーム重量の10%とした。チョコレートを混合後、−30℃の急速冷凍庫で一晩安定化させた。
このようにして得られた冷菓用チョコレート類を練り込んだ(滴下した)チョコレート粒入り冷菓は、匙で無理なくすくえる程度の硬さ、すなわち、−10℃前後の品温で、上述したパネラー5名により下記の評価基準に基づき、官能評価を実施した。この際、合議にて決定したそれぞれの評点が○と◎を合格とした。
チップの保形性および生地への着色)
◎: 適度な粒の大きさがあり、生地が着色しない 。
○: 適度な粒の大きさがあり、わずかに着色する。
△: 粒が小さく生地が着色する。
×: 生地に練りこまれ、粒にならない。
存在感)
◎: アイスクリーム中のチップの存在感が非常に強い。
○: アイスクリーム中のチップの存在感が強い。
△: アイスクリーム中のチップの存在感は感じるものの弱い。
×: 粒になっておらず、アイスクリーム中のチップの存在感はない。
風味の持続性)
◎: 適度に残存性あり、チョコレート類の風味に厚みがある。
○: 適度に残存性あり、チョコレート類の風味が感じられる。
△: 口の中に残るものの、チョコレート類の風味の持続性が短い。
×: すぐに溶けてしまい、チョコレート類の風味が感じにくい。
また、本願の冷菓用エステル交換油脂組成物を規定量含有した実施例の冷菓練り込み(滴下)用チョコレート類は、すべてアイスクリーム中のチップの存在感を保ちながらチップの保形性も維持し、かつ適度に残存性があり、風味に厚みが感じられた。
Claims (6)
- 下記(i)〜(vi)の条件をすべて満たすことを特徴とする、冷菓用エステル交換油脂組成物。
(i)構成脂肪酸中の飽和脂肪酸含量が20.0〜30.0重量%、
(ii)構成脂肪酸中の炭素数8〜10の飽和脂肪酸含量が1.0〜8.0重量%、
(iii)構成脂肪酸中の炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が2.0重量%未満、
(iv)構成脂肪酸中のステアリン酸含量が5.0〜15.0重量%、
(v)構成脂肪酸中のパルミチン酸/ステアリン酸の重量比(P/St)が0.5〜2.5、
(vi)5℃での固体脂含量(SFC)が10.0%未満、および15℃でのSFCが6.0%未満。 - (vii)構成脂肪酸中のラウリン酸含量が2.0重量%未満である、請求項1記載の冷菓用エステル交換油脂組成物。
- 請求項1または2に記載の冷菓用エステル交換油脂組成物を含有する、冷菓用チョコレート類。
- 請求項1または2に記載の冷菓用エステル交換油脂組成物を10.0〜25.0重量%、及びパーム分別低融点部を10.0〜45.0重量%含有する、冷菓被覆用チョコレート類。
- ラウリン系油脂の含有が25.0重量%以下である、請求項3または4に記載の冷菓被覆用チョコレート類。
- 請求項1または2に記載の冷菓用エステル交換油脂組成物を3.0〜38.0重量%含有し、冷菓中に滴下・混合して、粒状ないしは破片状に存在させて使用する冷菓練り込み(滴下)用チョコレート類。
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