WO2023100847A1

WO2023100847A1 - 冷菓ミックス用油脂

Info

Publication number: WO2023100847A1
Application number: PCT/JP2022/043893
Authority: WO
Inventors: 詢大永渕
Original assignee: 不二製油グループ本社株式会社; 不二製油株式会社
Priority date: 2021-12-01
Filing date: 2022-11-29
Publication date: 2023-06-08
Also published as: JPWO2023100847A1

Abstract

本発明の課題は、冷菓の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感がバランス良く付与できる新規油脂を提供することである。特定の脂肪酸組成を持つランダムエステル交換油、及び非ラウリン油脂を原料油脂とするランダムエステル交換油とを含む冷菓ミックス用油脂が、冷菓への口溶けの良さ、すっきり感、濃厚感をバランス良く付与できることを見出した。

Description

冷菓ミックス用油脂

　本発明は、冷菓ミックス用油脂およびそれを使用した冷菓に関する。

　従来から、アイスクリーム類と呼ばれる、アイスクリームやアイスミルク、ラクトアイス等の製造において、風味の付与、食感の改良、物性の改善などを目的として油脂が配合されている。

　アイスクリーム類など、冷菓の製造の際には、まず原料を混合溶解し、均質化、殺菌等の処理後、これを冷却してミックス液と呼ばれる原料混合液を調製する。このミックス液は通常エージングという貯蔵工程を経て使用に供される。このミックス液をフリージングして、充填・包装工程ののち、硬化工程にて凍結されて最終製品である冷菓が得られる。

　油脂を冷菓に使用する場合、乳脂とは異なる様々な機能、特徴を利用することが可能となり、これまでにもいくつかの試みがなされてきた。例えば、特許文献１ではヤシ油６０～８０質量％とパーム油４０～２０質量％との混合油を使用する方法、特許文献２では対称型トリグリセリド（ＳＵＳ）を４０質量％以上含有する油脂９５～４０質量％とラウリン系油脂５～６０質量％を含有させる方法が開示されている。さらに、特許文献３では、非ラウリン系油脂由来のＳＳＳ型トリグリセリド及びＳＵＳ型トリグリセリド、並びにラウリン系油脂を使用することによって、乳脂含有率が低い冷菓において、口溶け、コク味に優れた冷菓が得られることが開示されている。

特開昭５７－３６９４３号公報特開平８－２９８９３４号公報特開２００７－１６６９６５号公報

　冷菓に油脂を利用する従来技術に関しては、前記の通り、冷菓にヤシ油などのラウリン系油脂を配合することで、すっきり感は得られるが、冷菓本来の風味の発現が弱くなる傾向にある。また冷菓に対称型トリグリセリドやパーム油を配合することで、濃厚感のような風味発現が良くなるが、風味発現の良さが故のすっきり感が得られない。このような特徴を持つラウリン系油脂と対称型トリグリセリドやパーム油の配合において、口溶けの良さやすっきり感、風味発現の良さをバランス良く得ることは非常に困難であり、解決できていない。さらに、冷菓においては油脂の配合量は限られている状況下では、油脂種やその配合量の調整だけでは、冷菓への風味付与、喫食時のコクや乳味などの濃厚感とすっきり感を同時に解決することは、困難な課題であった。

　よって本発明の目的は、冷菓の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感の付与が可能な新規な油脂を提供することにある。

　本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の脂肪酸組成を持つランダムエステル交換油、及び非ラウリン油脂を原料油脂とするランダムエステル交換油とを含む冷菓ミックス用油脂が、冷菓への口溶けの良さ、すっきり感、濃厚感をバランス良く付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。

　すなわち、本発明は、
（１）下記（ａ）～（ｃ）を満たすランダムエステル交換油Ａ、及び非ラウリン油脂を原料油脂としたランダムエステル交換油Ｂを含む、冷菓ミックス用油脂、
（ａ）ランダムエステル交換油の原料油脂として、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）を含有
（ｂ）構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量が０．３～３０質量％
（ｃ）構成脂肪酸組成中、炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量が４５～８０質量％
なお、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）は、構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の脂肪酸を主成分とする油脂
（２）ランダムエステル交換油Ａの配合量に対するランダムエステル交換油Ｂの配合量の質量比率（Ｂ／Ａ比）が０．５～５．０である、（１）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（３）さらに、ランダムエステル交換油Ａが下記（ｄ）を満たす、（１）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（ｄ）構成脂肪酸組成中、オレイン酸の含有量が１０質量％以下
（４）ランダムエステル交換油Ｂが、パーム系油脂を原料油脂としたものである、（１）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（５）ランダムエステル交換油Ｂが、パームオレインを原料油脂としたものである、（４）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（６）さらに、パーム系油脂を含む、（１）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（７）パーム系油脂がパーム中融点油である、（６）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（８）さらに、ラウリン系油脂を含む、（１）又は（６）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（９）ラウリン系油脂がヤシ油である、（８）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（１０）冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％である、（１）又は（４）に記載の冷菓ミックス用油脂、
ここでいう不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸をさす、
（１１）冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％である、（７）に記載の冷菓ミックス用油脂、
ここでいう不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸をさす、
（１２）冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％である、（８）に記載の冷菓ミックス用油脂、
ここでいう不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸をさす、
（１３）冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が５質量％以下である、（１）又は（４）に記載の冷菓ミックス用油脂、
ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、該飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす、
（１４）冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が５質量％以下である、（７）に記載の冷菓ミックス用油脂、
ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、該飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす、
（１５）冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が５質量％以下である、（８）に記載の冷菓ミックス用油脂、
ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、該飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす、
（１６）冷菓１００質量部中、（１）又は（６）に記載の冷菓ミックス用油脂を１～２５質量部使用した冷菓、
（１７）冷菓ミックス用油脂にラウリン系油脂を含む、（１６）に記載の冷菓、
（１８）（１）又は（６）に記載の冷菓ミックス用油脂を使用して乳化物を調製する工程と、殺菌工程と、均質化工程と、冷却工程を行う、冷菓ミックスの製造方法、
（１９）冷菓ミックス用油脂にラウリン系油脂を含む、（１８）に記載の冷菓ミックスの製造方法、
（２０）（１８）で得られた冷菓ミックスを使用し、フリージングして凍結させる、冷菓の製造方法、
（２１）（１９）で得られた冷菓ミックスを使用し、フリージングして凍結させる、冷菓の製造方法、
（２２）（１）に記載の冷菓ミックス用油脂を使用する、冷菓喫食時の風味改善方法、
に関するものである。
　また、換言すれば、
（３１）下記（ａ）～（ｃ）を満たすランダムエステル交換油Ａ、及び非ラウリン油脂を原料油脂としたランダムエステル交換油Ｂを含む、冷菓ミックス用油脂、
（ａ）ランダムエステル交換油の原料油脂として、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）を含有
（ｂ）構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量が０．３～３０質量％
（ｃ）構成脂肪酸組成中、炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量が４５～８０質量％
なお、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）は、構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の脂肪酸を主成分とする油脂
（３２）ランダムエステル交換油Ａの配合量に対するランダムエステル交換油Ｂの配合量の質量比率（Ｂ／Ａ比）が０．５～５．０である、（３１）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（３３）さらに、ランダムエステル交換油Ａが下記（ｄ）を満たす、（３１）又は（３２）に記載の冷菓ミックス用油脂、
（ｄ）構成脂肪酸組成中、オレイン酸の含有量が１０質量％以下
（３４）ランダムエステル交換油Ｂが、パーム系油脂を原料油脂としたものである、（３１）～（３３）の何れか１項に記載の冷菓ミックス用油脂、
（３５）ランダムエステル交換油Ｂが、パームオレインを原料油脂としたものである、（３１）～（３４）の何れか１項に記載の冷菓ミックス用油脂、
（３６）さらに、パーム系油脂を含む、（３１）～（３５）の何れか１項に記載の冷菓ミックス用油脂、
（３７）冷菓１００質量部中、（３１）～（３６）のいずれか１項に記載の冷菓ミックス用油脂を１～２５質量部使用した冷菓、
（３８）（３１）～（３６）のいずれか１項に記載の冷菓ミックス用油脂を使用して乳化物を調製する工程と、殺菌工程と、均質化工程と、冷却工程を行う、冷菓ミックスの製造方法、
（３９）（３８）に記載の冷菓ミックスを使用し、フリージングして凍結させる、冷菓の製造方法、
（４０）（３１）～（３６）のいずれか１項に記載の冷菓ミックス用油脂を使用する、冷菓喫食時の風味改善方法、
に関するものである。

　本発明によれば、口溶けが良く、後半のすっきり感がありつつも濃厚感のある冷菓を得ることができる。

　以下、本発明を具体的に説明する。

（冷菓および冷菓ミックス）
　本発明でいう冷菓は、冷凍温度域で喫食される菓子類であれば、特にその種類は限定されず、代表的な物として「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、いわゆる「乳等省令」で規定される、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスや、厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」で規定される氷菓が挙げられる。
　アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスなどのアイスクリーム類は、通常、脂肪源、無脂乳固形分、糖分、乳化剤及び水を主要成分とする。
　本発明の冷菓の代表的な例示がアイスクリーム類であって、アイスクリーム類の成分は乳脂肪、無脂乳固形分、甘味料、安定剤、乳化剤、香味料、水分などからなる。

　次に、冷菓の製造工程を例示する。まず原料を混合融解し、分散して乳化物を調製する。調製した乳化物を、均質化、殺菌等の処理後、それを冷却して原料混合液を調製する。本明細書でいう冷菓ミックスは、前記の原料混合液のことをいう。この冷菓ミックスは通常エージングという貯蔵工程を経て使用に供される。冷菓はこの冷菓ミックスを工場にてフリージングして凍結し、冷菓の最終製品として流通、販売する方法と、冷菓ミックスの状態で流通され店頭にてフリージング後に最終製品である冷菓として販売する方法がある。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、冷菓を製造する際に使用される油脂で、以下記載の特徴を持つランダムエステル交換油Ａ、及びランダムエステル交換油Ｂを含有する。

（ランダムエステル交換油Ａ）
　本発明の冷菓ミックス用油脂は、ランダムエステル交換油Ａを含有することを特徴とする。本発明に係るランダムエステル交換油Ａは、下記（ａ）～（ｃ）を満たす。該ランダムエステル交換油Ａを冷菓ミックスに配合することで、冷菓喫食時に口溶けが良く、後半のすっきり感を得ることができる。
（ａ）ランダムエステル交換油の原料油脂として、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）を含有
（ｂ）構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量が０．３～３０質量％
（ｃ）構成脂肪酸組成中、炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量が４５～８０質量％
なお、ＭＣＴは、構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の脂肪酸を主成分とする油脂である。

　該ランダムエステル交換油Ａは、好ましくは（ｂ）構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量が１～３０質量％、より好ましくは５～３０質量％である。炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量がこの範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　該ランダムエステル交換油Ａは、好ましくは（ｃ）構成脂肪酸組成中、炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量が５０～８０質量％、より好ましくは６０～７５質量％である。炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量がこの範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　該ランダムエステル交換油Ａは、好ましくは（ｄ）構成脂肪酸組成中、オレイン酸の含有量が１０質量％以下、より好ましくは８質量％以下、さらに好ましくは７質量％以下である。オレイン酸の含有量がこの範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　該ランダムエステル交換油Ａは、前記構成を満たせば、種々の油脂を原料油脂として使用することができる。使用することができる油脂類として、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、シア脂、サル脂等の植物性油脂及び牛脂、豚脂、乳脂等の動物脂、藻類油、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。

　該ランダムエステル交換油Ａの原料油脂として好ましい態様は、ＭＣＴを必須成分として含有する他に、好ましくはヤシ油、パーム核油、乳脂等、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等である。該ランダムエステル交換油Ａの原料油脂としてさらに好ましい態様は、ＭＣＴの他に、ヤシ油、パーム核油、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂である。

　本発明でいうランダムエステル交換とは、油脂に結合した脂肪酸を、触媒を用いてランダムにエステル交換する加工方法をいう。本発明で用いる触媒は、ナトリウムメチラートなどの化学触媒、ランダムエステル交換活性を有するリパーゼなどを用いることができる。なお、リパーゼを用いる場合、リパーゼは市販品を使用することができ、ランダムエステル交換活性を有するリパーゼであれば、その種類は問わない。

（ランダムエステル交換油Ｂ）
　本発明の冷菓ミックス用油脂には、ランダムエステル交換油Ａと共にランダムエステル交換油Ｂを含む。ランダムエステル交換油Ｂの特徴として、原料油脂にラウリン油脂を使用する必要がない。ランダムエステル交換油Ｂは、非ラウリン油脂を原料油脂としてランダムエステル交換した油脂である。より好ましくは、ランダムエステル交換油Ｂは、パーム系油脂を原料油脂とし、ランダムエステル交換した油脂である。具体的には、パーム系油脂は、パーム油、並びにパーム油を分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂、さらにはこれらの混合油脂である。さらに好ましくは、ランダムエステル交換油Ｂは、パームオレインを原料油脂とし、ランダムエステル交換した油脂である。さらにより好ましくは、ランダムエステル交換油Ｂは、パームスーパーオレインを原料油脂とし、ランダムエステル交換した油脂である。該ランダムエステル交換油Ｂを冷菓ミックスに配合することで、冷菓喫食時に濃厚感を得ることができる。
　該ランダムエステル交換油Ｂのランダムエステル交換の方法は上記と同様の方法で行うことができる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、好ましくは、ランダムエステル交換油Ａの配合量に対するランダムエステル交換油Ｂの配合量の質量比率（Ｂ／Ａ比）が０．５～５．０、より好ましくは０．６～４．５、さらに好ましくは０．７～４．５である。Ｂ／Ａ比がこの範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば、他に種々の油脂類を使用することができる。使用することができる油脂類としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、米油、紅花油、サフラワー油、オリーブ油、ごま油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、シア脂、サル脂、カカオ脂等の植物性油脂及び牛脂、豚脂、乳脂等の動物脂、藻類油、並びにこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。より好ましくはパーム系油脂、さらに好ましくはパームスーパーオレイン、パーム中融点油である。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂに、さらにラウリン系油脂を含むことが好ましい。ここでいうラウリン系油脂は、ラウリン酸を主要な構成脂肪酸として含む油脂である。具体的には、パーム核油、ヤシ油、又はパーム核油、ヤシ油の１種以上の油脂を分別、硬化、エステル交換の１つ以上の加工を経た油脂を挙げることができる。より好ましくはヤシ油である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば良いが、該冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％であることが好ましい。より好ましくは３８～６０質量％、さらに好ましくは４０～５５質量％である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。なお、ここでいう不飽和脂肪酸とは、オレイン酸とリノール酸とリノレン酸の合計量をさす。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば良いが、該冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、パルミチン酸が２０～６０質量％であることが好ましい。より好ましくは２５～５５質量％、さらに好ましくは３０～５０質量％である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば良いが、該冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、ステアリン酸が１０質量％以下であることが好ましい。より好ましくは８質量％以下、さらに好ましくは７質量％以下である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば良いが、該冷菓ミックス用油脂の３０℃でのＳＦＣが６％以下であることが好ましい。より好ましくは５％以下、さらに好ましくは４％以下、さらにより好ましくは３％以下である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。また、該冷菓ミックス用油脂の３０℃でのＳＦＣが０．１％以上であることが好ましい。より好ましくは０．３％以上、さらに好ましくは０．５％以上、さらにより好ましくは０．８％以上、最も好ましくは１．０％以上である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。なお、ＳＦＣ（固体脂含量）は、ＩＵＰＡＣ.２　１５０（ａ）Ｓｏｌｉｄ　Ｃｏｎｔｅｎｔ　Ｄｅｔｅｒｍｉｎａｔｉｏｎ　Ｉｎ　Ｆａｔｓ　Ｂｙ　ＮＭＲに準じて測定して得られる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば良いが、該冷菓ミックス用油脂の２０℃でのＳＦＣが２５％以下であることが好ましい。より好ましくは２０％以下、さらに好ましくは１８％以下である。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂを含有すれば良いが、該冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリドが５質量％以下であることが好ましい。より好ましくは４質量％以下、さらに好ましくは３質量％以下、さらにより好ましくは２．５質量％以下、最も好ましくは２．３質量％以下である。また、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量の下限は、０．８質量％以上であることが好ましい。より好ましくは、１質量％以上、さらに好ましくは１．３質量％以上、さらにより好ましくは１．５質量％以上である。これら上下限値を適宜設定することができる。この範囲を満たすことで、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が良好となる。なお、ここでいう飽和脂肪酸とは、炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、トリグリセリド骨格に該飽和脂肪酸が３分子結合したものをさす。該トリグリセリドの測定は、高速液体クロマトグラフ法で測定して得られる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂の好ましい態様は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂに、さらにパーム系油脂とを含む。最も好ましい態様は、該ランダムエステル交換油Ａ及び該ランダムエステル交換油Ｂとパーム系油脂に、さらにラウリン系油脂とを含む。これらの油脂の組み合わせにより、冷菓喫食時の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感がより良好となる。

　本発明の実施の好ましい態様としては、本発明の冷菓ミックス用油脂は、前記の冷菓ミックスを製造する際に使用される。本発明の冷菓ミックス用油脂を冷菓ミックス用途で使用することで、口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が冷菓に付与することができる。

　本発明の冷菓ミックス用油脂を使用した冷菓の好ましい態様は、冷菓原料１００質量部中に、本発明の冷菓ミックス用油脂を１～２５質量部使用する配合が例示できる。より好ましくは、１～２３質量部使用である。

　本発明はまた、冷菓喫食時の風味を改善する方法ととらえることもできる。具体的には、下記（ａ）～（ｃ）を満たすランダムエステル交換油Ａ及び非ラウリン油脂を原料油脂としたランダムエステル交換油Ｂを含む冷菓ミックス用油脂を、冷菓に使用することを特徴とする。このような冷菓ミックス用油脂を冷菓に使用することで、具体的には、冷菓の口溶けの良さ、後半のすっきり感、濃厚感が感じられる冷菓を得ることができる。
（ａ）ランダムエステル交換油の原料油脂として、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）を含有
（ｂ）構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量が０．３～３０質量％
（ｃ）構成脂肪酸組成中、炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量が４５～８０質量％
なお、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）は、構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の脂肪酸を主成分とする油脂である。

　冷菓喫食時の風味を改善する方法において、より好ましい態様として、該ランダムエステル交換油Ｂは、上述した非ラウリン油脂を原料油脂として、ランダムエステル交換を施した油脂である。さらに好ましくは、パーム系油脂のランダムエステル交換油、さらにより好ましくは、パームオレインのランダムエステル交換油である。

　さらに、冷菓喫食時の風味を改善する方法において、より好ましい態様として、好ましくは、ランダムエステル交換油Ａの配合量に対するランダムエステル交換油Ｂの配合量の質量比率（Ｂ／Ａ比）が０．５～５．０である。

　その他、冷菓喫食時の風味を改善する方法において、前述の冷菓ミックス用油脂のより好ましい態様に記載した冷菓ミックス用油脂を使用することができる。

（実施例）
　以下、実施例により、より詳細に発明の実施態様を説明する。なお、文中「部」及び「％」は特に断りのない限り質量基準を意味する。

（分析方法）
　脂肪酸組成はＡＯＣＳ　Ｏｆｆｉｃｉａｌ　Ｍｅｔｈｏｄ　Ｃｅ　１ｈ－０５の方法に準じて測定した。

（冷菓ミックス用油脂）
○ランダムエステル交換油Ａ―１
　パーム核ステアリン極度硬化油（ヨウ素価１以下、不二製油株式会社製）８０部と中鎖脂肪酸結合油脂（ヨウ素価１以下、不二製油株式会社製）２０部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒として、８０℃にて３０分間ランダムエステル交換を行った後、常法に従い水洗、脱色、脱臭を行い、ランダムエステル交換油Ａ―１を得た。
○ランダムエステル交換油Ａ―２
　パーム核ステアリン（ヨウ素価７、不二製油株式会社製）８０部と中鎖脂肪酸結合油脂２０部を混合し、ランダムエステル交換油Ａ―１と同様の方法でエステル交換、水洗、脱色、脱臭を行い、ランダムエステル交換油Ａ―２を得た。
○ランダムエステル交換油Ａ―３
　パーム核油（ヨウ素価１７．５、不二製油株式会社製）９５部と中鎖脂肪酸結合油脂５部を混合し、ランダムエステル交換油Ａ―１と同様の方法でエステル交換、水洗、脱色、脱臭を行い、ランダムエステル交換油Ａ―３を得た。
　上記３種の油脂のそれぞれの組成を表１に示した。
○ランダムエステル交換油Ｂ
　パームスーパーオレイン（ヨウ素価６８、不二製油株式会社製）を、ランダムエステル交換油Ａ―１と同様の方法でエステル交換、水洗、脱色、脱臭を行い、ランダムエステル交換油Ｂ（Ｐ２Ｏ含量１４．７質量％）を得た。

　上記以外の油脂として、以下を検討に用いた。
ヤシ油：不二製油株式会社製「精製ヤシ油」（ヨウ素価８．５）
パーム油：不二製油株式会社製「精製パーム油」（ヨウ素価５２、Ｐ２Ｏ含量２９．１質量％）
パームスーパーオレイン：不二製油株式会社製「パームエース１０」（ヨウ素価６８、Ｐ２Ｏ含量１０．５質量％）
パーム中融点油：不二製油株式会社製「パーメル２６」（ヨウ素価４６、Ｐ２Ｏ含量４６．２質量％）

　上記の冷菓ミックス用油脂を用いて、ラクトアイスを作製して評価した。

（ラクトアイスの作製方法）
　表２－１、２－２の配合量に従い、下記手順で作製した。
１．脱脂粉乳、グラニュー糖、粉末水あめ、乳化剤、安定剤を混合した。
２．温めたイオン交換水（品温８０℃以上）に混合した１を投入した。
３．ホモミキサーで撹拌しながら（７０００ｒｐｍ）、凍結加糖卵黄、各油脂の順に投入した。
４．１９分間撹拌した。
５．バニラフレーバーを投入し、１分間撹拌した。
６．高圧ホモゲナイザーにて乳化、均質化した（１５０ｋｇｆ／ｃｍ２を１パス、エスエムテー株式会社製ＬＡＢ１０００）。
７．冷蔵（５℃）で一晩エージングを行い、冷菓ミックスを得た。
８．得られた冷菓ミックスを、アイスクリーマー（ＡＩＫＯＨ社製）で、フリージングを１５分行った。
９．容器に分注し、－４０℃で６０分間ショックフリージングをした。
１０．冷凍保存した。得られたラクトアイスを本発明の冷菓とした。

　なお、ラクトアイスの原材料は、下記を使用した。
脱脂粉乳：よつ葉乳業株式会社製「脱脂粉乳」
加糖凍結卵黄：キューピータマゴ株式会社製「加糖凍結卵黄２０」
粉末水あめ：三和澱粉加工株式会社製「サンデックス１００」
乳化剤：理研ビタミン株式会社製「エマルジーＰ－１００」
安定剤：三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「サンベストＮＮ３０５」
バニラフレーバー：小川香料株式会社製「ＯＷ－０１０」

（冷菓ミックス用油脂の分析方法）
　冷菓ミックス用油脂の脂肪酸組成は、ＡＯＣＳ　Ｏｆｆｉｃｉａｌ　Ｍｅｔｈｏｄ　Ｃｅ　１ｈ－０５の方法に準じて測定した。
　冷菓ミックス用油脂の１０℃、２０℃、３０℃でのＳＦＣは、ＩＵＰＡＣ．２　１５０（ａ）Ｓｏｌｉｄ　Ｃｏｎｔｅｎｔ　Ｄｅｔｅｒｍｉｎａｔｉｏｎ　Ｉｎ　Ｆａｔｓ　Ｂｙ　ＮＭＲの方法に準じた。すなわち、８０℃環境下で３０分間各油脂を保持し、６０℃環境下で３０分間保持して各油脂を完全に融解した後、０℃環境下で６０分間保持して固化させた。その後、１０℃、２０℃、３０℃それぞれの温度環境下に３０分間保持した後の固体脂含量をＮＭＲ（Ｂｒｕｋｅｒ社製「ｍｉｎｉｓｐｅｃ　ｍｑ２０」）で測定した。
　冷菓ミックス用油脂中の、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量（ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸である）は、高速液体クロマトグラフ分析にて測定した。測定条件は、カラム：ＯＤＳ、溶媒：アセトン／アセトニトリル＝８０／２０、液量：０．９ｍＬ／分、カラム温度：２５℃、検出機：示差屈折計にて実施した。

（評価方法）
　製造１日後のラクトアイスを「口溶けの良さ」、「すっきり感」、「濃厚感」の３項目について、下記基準で評価した。パネラー１３名で官能評価を行い、パネラーの合議で３項目全てにおいて３点以上獲得したものを合格とした。結果を表２－１、２－２に示した。

○口溶けの良さ（喫食直後に速やかに口腔内で溶ける）
１点：だらだらと溶け、後残りする。
２点：溶けるものの、後残りがある。
３点：速やかに溶けるが、４点よりも弱い。
４点：速やかに溶ける。
５点：速やかに溶け、後残りもない。
○すっきり感（後半でテーリングしない）
１点：油脂が口に残り、もったりして、すっきり感が感じられない。
２点：すっきりするが、時間がかかる。
３点：すっきりしているが、４より弱い。
４点：すっきりしている。
５点：かなりすっきりしている。
○濃厚感（喫食直後から広がるフレーバーリリース（風味の良さ）及びコク深さ（味の強度））
１点：フレーバーリリース及びコクが感じられない。
２点：フレーバーリリース及びコクが感じられるが、かなり弱い。
３点：フレーバーリリース及びコクが感じられる。
４点：フレーバーリリース及びコクが強く感じられる。
５点：フレーバーリリース及びコクがバランス良く、強く感じられる。

飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量とは、炭素数１６以上の飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす。

　実施例１～３のランダムエステル交換油Ａとランダムエステル交換油Ｂを配合すると、口溶けが良く、後半のすっきり感があり、フレーバーリリース及びコク深さも付与されていた。特に、ランダムエステル交換油Ａ―１とランダムエステル交換油Ｂの組み合わせが最も良好であった。ランダムエステル交換油Ｂの配合量を変えても、口溶け、すっきり感、濃厚感何れも良いものが得られた。また、実施例７のランダムエステル交換油Ａとランダムエステル交換油Ｂにパーム系油脂を配合すると、口溶けが良く、後半のすっきり感があり、濃厚感が感じられた。一方、ランダムエステル交換油Ｂを配合しない比較例１～３において、濃厚感は得られるものの、口溶けの良さやすっきり感は弱く、バランスが悪かった。
　さらに、実施例８～実施例１４においても、口溶けが良く、後半のすっきり感があり、濃厚感も付与されていた。最も風味が良く、そして風味のバランスが良かったのは、ランダムエステル交換油２種にパーム中融点油、ヤシ油を含む配合であった（実施例１２～１４）。また、冷菓ミックス油脂中の飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が０．８質量％以上５質量％以下であると、口溶けが良く、後半のすっきり感があり、濃厚感が感じられた。

Claims

下記（ａ）～（ｃ）を満たすランダムエステル交換油Ａ、及び非ラウリン油脂を原料油脂としたランダムエステル交換油Ｂを含む、冷菓ミックス用油脂。
（ａ）ランダムエステル交換油の原料油脂として、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）を含有
（ｂ）構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の飽和脂肪酸の含有量が０．３～３０質量％
（ｃ）構成脂肪酸組成中、炭素数１２～１４の飽和脂肪酸の含有量が４５～８０質量％
なお、中鎖脂肪酸結合油脂（ＭＣＴ）は、構成脂肪酸組成中、炭素数６～１０の脂肪酸を主成分とする油脂
ランダムエステル交換油Ａの配合量に対するランダムエステル交換油Ｂの配合量の質量比率（Ｂ／Ａ比）が０．５～５．０である、請求項１に記載の冷菓ミックス用油脂。
さらに、ランダムエステル交換油Ａが下記（ｄ）を満たす、請求項１に記載の冷菓ミックス用油脂。
（ｄ）構成脂肪酸組成中、オレイン酸の含有量が１０質量％以下
ランダムエステル交換油Ｂが、パーム系油脂を原料油脂としたものである、請求項１に記載の冷菓ミックス用油脂。
ランダムエステル交換油Ｂが、パームオレインを原料油脂としたものである、請求項４に記載の冷菓ミックス用油脂。
さらに、パーム系油脂を含む、請求項１に記載の冷菓ミックス用油脂。
パーム系油脂がパーム中融点油である、請求項６に記載の冷菓ミックス用油脂。
さらに、ラウリン系油脂を含む、請求項１又は請求項６に記載の冷菓ミックス用油脂。
ラウリン系油脂がヤシ油である、請求項８に記載の冷菓ミックス用油脂。
冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％である、請求項１又は請求項４に記載の冷菓ミックス用油脂。
ここでいう不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸をさす。
冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％である、請求項７に記載の冷菓ミックス用油脂。
ここでいう不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸をさす。
冷菓ミックス用油脂の構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸が３５～６５質量％である、請求項８に記載の冷菓ミックス用油脂。
ここでいう不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸をさす。
冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が５質量％以下である、請求項１又は請求項４に記載の冷菓ミックス用油脂。
ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、該飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす。
冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が５質量％以下である、請求項７に記載の冷菓ミックス用油脂。
ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、該飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす。
冷菓ミックス用油脂に含まれる、飽和脂肪酸のみが結合したトリグリセリド含量が５質量％以下である、請求項８に記載の冷菓ミックス用油脂。
ここでいう飽和脂肪酸とは炭素数１６以上の飽和脂肪酸で、該飽和脂肪酸がトリグリセリド骨格に３分子結合したものをさす。
冷菓１００質量部中、請求項１又は請求項６に記載の冷菓ミックス用油脂を１～２５質量部使用した冷菓。
冷菓ミックス用油脂にラウリン系油脂を含む、請求項１６に記載の冷菓。
請求項１又は請求項６に記載の冷菓ミックス用油脂を使用して乳化物を調製する工程と、殺菌工程と、均質化工程と、冷却工程を行う、冷菓ミックスの製造方法。
冷菓ミックス用油脂にラウリン系油脂を含む、請求項１８に記載の冷菓ミックスの製造方法。
請求項１８で得られた冷菓ミックスを使用し、フリージングして凍結させる、冷菓の製造方法。
請求項１９で得られた冷菓ミックスを使用し、フリージングして凍結させる、冷菓の製造方法。
請求項１に記載の冷菓ミックス用油脂を使用する、冷菓喫食時の風味改善方法。