JP2001058812A - メソ構造体、シリカメソ構造体、メソ構造体の製造方法、シリカメソ構造体の製造方法及びメソ細孔の配向制御方法 - Google Patents
メソ構造体、シリカメソ構造体、メソ構造体の製造方法、シリカメソ構造体の製造方法及びメソ細孔の配向制御方法Info
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Abstract
は、シリカメソ構造体、及びこれらの製造方法、メソ構
造体のメソ細孔の配向を適宜に制御する方法の提供。 【解決手段】 高分子表面に配置されている管状のメソ
細孔を有するメソ構造体であって、該メソ細孔が上記高
分子表面に対して平行な第1の方向に配向していること
を特徴とするメソ構造体、シリカメソ構造体、メソ構造
体の製造方法、シリカメソ構造体の製造方法及びメソ細
孔の配向制御方法。
Description
用いられる無機酸化物多孔体の応用に関連し、より詳し
くは、メソ細孔の配向が制御されたメソ構造体及びその
製造方法に関する。
で利用されている。IUPACによれば、多孔体は、細
孔径が2nm以下のマイクロポーラス、2〜50nmの
メソポーラス、50nm以上のマクロポーラスに分類さ
れる。マイクロポーラスな多孔体には、天然のアルミノ
ケイ酸塩、合成アルミノケイ酸塩等のゼオライト、金属
リン酸塩等が知られている。これらは、細孔のサイズを
利用した選択的吸着、形状選択的触媒反応、分子サイズ
の反応容器として利用されている。
ルにおいては、細孔径は最大で1.5nm程度であり、
更に径の大きな固体の合成は、マイクロポアには吸着で
きない様な嵩高い化合物の吸着、反応を行うために重要
な課題である。この様な大きなポアを有する物質とし
て、シリカゲル、ピラー化粘土等が知られていたが、こ
れらにおいては、細孔径の分布が広く、細孔径の制御が
問題であった。
蜂の巣状に配列した構造を有するメソポーラスシリカの
合成が、ほぼ同時に異なる二つの方法で開発された。一
方は、Nature第359巻710ページに記載され
ている様な、界面活性剤の存在下においてケイ素のアル
コキシドを加水分解させて合成されるMCM−41と呼
ばれる物質であり、他方は、Journal of Chemical S
ociety Chemical Communicationsの1993巻680
ページに記載されている様な、層状ケイ酸の一種である
カネマイトの層間に、アルキルアンモニウムをインター
カレートさせて合成されるFSM−16と呼ばれる物質
である。この両者ともに、界面活性剤の集合体が鋳型と
なってシリカの構造制御が行われていると考えられてい
る。これらの物質は、ゼオライトのポアに入らない様な
嵩高い分子に対する触媒として非常に有用な材料である
だけでなく、光学材料や電子材料等の機能性材料への応
用も考えられている。
ーラス多孔体を、触媒以外の機能性材料分野に応用する
場合、これらの材料を基板上に均一に保持する技術が重
要となる。基板上に均一なメソポーラス薄膜を作成する
方法としては、例えば、Journalof Chemical Society
Chemical Communicationsの1996巻1149ペー
ジに記載されている様な、スピンコートによる方法、N
ature第389巻364ページに記載されている様
なディップコートによる方法、Nature第379巻
703ページに記載されている様な固体表面に膜を析出
させる方法等がある。
メソ構造体薄膜の作成方法には、以下に述べる様な種々
の問題点があった。即ち、スピンコート膜等の場合には
膜全体にわたってのメソ構造体の方向性がなく、ポアを
配向させることができない。又、一方、メソ構造体を基
板上に析出させる方法の場合には形成される膜の基板依
存性が大きく、方向性を持った膜の形成は、雲母やグラ
ファイトのへき開面の様な原子レベルでの秩序性のある
基板に限られており、この場合にも、メソポアが配向し
た微小なエリアが無秩序に存在している状態であり、基
板全体にわたりメソポアの配向性が制御できているもの
ではない。そして、この様なメソ構造体の機能性素子へ
の応用には、メソ細孔の配向を高度に制御する為の技術
開発が必須であるとの結論を本発明者らは得た。
るメソ構造体の機能素子への展開を可能とする全く新規
な構成を有するメソ構造体、更には、シリカメソ構造体
を提供する点にある。又、本発明の他の目的は、形成す
る基板の種類によらず、管状のメソ細孔が高度に配向し
ているメソ構造体、更には、シリカメソ構造体を製造す
る方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的
は、メソ構造体のメソ細孔の配向を適宜に制御する方法
を提供することにある。
発明によって達成される。即ち、本発明の一態様は、高
分子表面に配置されている管状のメソ細孔を有するメソ
構造体であって、該メソ細孔が上記高分子表面に対して
平行な第1の方向に配向していることを特徴とするメソ
構造体である。
発明の別の一態様は、高分子表面上に配置されている管
状のメソ細孔を有するシリカメソ構造体であって、高分
子表面を構成している高分子化合物の分子が上記表面に
対して平行な第1の方向に配向しており、且つ、該高分
子表面上に、化学的相互作用によって界面活性剤の分子
が上記高分子化合物の高分子鎖の配向方向に平行に並ぶ
ことにより形成された高分子鎖の配向方向と直交する方
向に配向したロッド状の界面活性剤ミセル構造を有し、
且つ、該界面活性剤ミセル構造の外側にシリカが存在す
ることにより、上記管状のメソ細孔が上記第1の方向と
ほぼ直交する方向に配向していることを特徴とするシリ
カメソ構造体である。
発明の別の一態様は、高分子表面に配置されている管状
のメソ細孔を有するメソ構造体であって、該メソ細孔
は、高分子表面に対して平行な所定の方向に配向し、且
つ、該所定の方向は、上記高分子表面のラビング方向に
よって規制されていることを特徴とするメソ構造体であ
る。
発明の別の一態様は、高分子表面に配置されている管状
のメソ細孔を有するメソ構造体であって、該メソ細孔
は、高分子表面に対して平行な所定の方向に配向し、該
所定の方向は、上記高分子表面を構成する高分子化合物
の分子鎖の配向方向によって規制されていることを特徴
とするメソ構造体である。そして、上記した様な各態様
のメソ構造体は、機能素子への展開にあたって極めて有
効な構成となることが期待される。
本発明の一態様は、管状のメソ細孔が面内の所定の方向
に配向しているメソ構造体の製造方法であって、(i)
配向処理が施された高分子表面を用意する工程;及び
(ii)配向処理が施された上記表面と、界面活性剤とア
ルコキシドとを含む液体とを接触させた状態でアルコキ
シドを加水分解し、配向処理が施された高分子表面にメ
ソ構造体を形成する工程を有することを特徴とするメソ
構造体の製造方法である。
発明の別の一態様は、高分子表面上に配置されている管
状のメソ細孔を有するシリカメソ構造体の製造方法であ
って、(i)上記高分子表面を構成する高分子化合物の
分子鎖が高分子表面に対して平行な所定の方向に配向し
ている高分子表面を用意する工程;及び(ii)上記高分
子化合物の分子鎖と界面活性剤分子との化学的相互作用
によって、界面活性剤の分子を、高分子化合物の分子鎖
と平行に並ばせることによって該分子鎖の配向方向に直
交する方向に配向させ、その外側にシリカが存在してい
るロッド状の界面活性剤ミセル構造を形成して、内部に
界面活性剤が充填され、且つ、高分子化合物の分子鎖の
配向方向とほぼ直交する方向に配向したメソ細孔を有す
るシリカメソ構造体を形成する工程を有することを特徴
とするシリカメソ構造体の製造方法である。
発明の別の一態様は、メソ構造体が有する管状のメソ細
孔の配向を制御する方法であって、所望の方向にラビン
グ処理された高分子表面と、界面活性剤とアルコキシシ
ランとを含む液体とを接触させた状態でアルコキシシラ
ンを加水分解せしめる工程を有することを特徴とするメ
ソ構造体のメソ細孔の配向制御方法である。
発明の別の一態様は、メソ構造体が有する管状のメソ細
孔の配向を制御する方法であって、所望の方向に高分子
化合物の分子鎖が配向している高分子表面と、界面活性
剤とアルコキシシランとを含む液体とを接触させた状態
でアルコキシシランを加水分解する工程を有することを
特徴とするメソ構造体のメソ細孔の配向制御方法であ
る。
及びメソ構造体のメソ細孔の配向制御方法の各態様によ
れば、メソ構造体の機能素子に展開する上で極めて重要
であると考えられるメソ細孔の配向の制御を容易に行な
うことができる。
て、本発明をより詳細に説明する。ところで、本明細書
中におけるメソ構造体とは、その有するメソ細孔が中空
のものだけでなく、メソ細孔内に界面活性剤の集合体等
を保持したままの状態のものも包含する。そして、界面
活性剤等を保持しているメソ細孔を含むメソ構造体の場
合は、該メソ細孔から界面活性剤を除去してメソ細孔内
を中空にすることによってメソポーラスなメソ構造体と
なる。
グ処理)>図1の(a)及び(b)は、各々、本発明の
実施態様にかかるメソ構造体の一例の概略斜視図であ
る。図1において、11は基材、12は高分子膜、そし
て、14が高分子膜12の表面上に配置されているメソ
構造体である。そして、該メソ構造体14は、図1に示
したように管状のメソ細孔13を有している。
膜12の表面上に島状に高分子膜12の表面に形成さ
れ、且つ、メソ細孔13内に界面活性剤等が存在してい
る構成を示し、又、図1(b)は、メソ構造体14が高
分子膜12の表面に膜状で存在し、メソ細孔13内の物
質が除去されてメソポアとされた構成を示している。図
1に示したこれらのメソ構造体14は、いずれも管状の
メソ細孔13を有し、メソ細孔13は、高分子膜12の
表面に対して平行な所定の方向(図1における矢印A方
向)に配向している。かかる構成を実現する上では、該
メソ構造体14が接する高分子膜12の表面状態が極め
て重要である。例えば、表面状態が制御された高分子膜
12の表面と、界面活性剤とアルコキシシランを含む液
体とを接触させた状態でアルコキシシランの加水分解を
行なえば、メソ細孔13が所定の方向に配向したメソ構
造体を高分子膜12の表面上に容易に形成することがで
き、又、メソ構造体14のメソ細孔13の配向方向を制
御することができる。以下、高分子膜の表面状態の制御
方法、更に、該高分子膜上にメソ構造体を形成する方法
について説明する。
分子膜12の表面状態の制御方法の1例として、ラビン
グ処理が挙げられる。該ラビング処理を施した高分子膜
上にメソ構造体を形成すれば、メソ細孔がラビング方向
に配向したものが得られる。例えば、所定の基材上に形
成した高分子膜の表面を、ナイロンやベルベット等で所
定の方向にラビングする。その後、ラビング処理面上
に、常法に従って、具体的には、例えば、酸性条件下、
界面活性剤の共存下でアルコキシシランを加水分解させ
ると、ラビング処理表面上に管状のメソ細孔を多数有す
るメソ構造体が形成される。そして、このようにして形
成された管状のメソ細孔は、高分子膜の表面のラビング
方向に配向したものとなる。
その条件は特に限定されるものでなく、例えば、液晶化
合物の配向処理等に用いられている方法及び条件を適宜
に応用することができる。一例として、具体的な条件を
挙げれば、ラビング用の布帛としてナイロンやベルベッ
ト等を用い、これらの布帛を直径24mmのローラに巻
き付け、該布帛を巻き付けたローラが、処理されるべき
高分子膜表面に丁度接する状態を基準として0.4mm
程度沈み込むように、該ローラを高分子膜に押し込み
(以降「押し込み量」)、該ローラを毎分1000回転
で回転させ、一方、高分子膜を載置しているステージを
毎秒600mmで移動させることで、高分子膜の表面を
ラビング処理することができる。又、この処置は、1回
でもよく、或いは、複数回繰返して行なってもよい。
がなされる高分子膜の材料は、特に限定されるものでな
いが、例えば、液晶の分野において、液晶化合物の配向
膜として用いることが知られている材料は、本発明にお
いても好適に用いることが出来ると考えられる。具体的
には、例えば、ポリエチレン[−(CH2CH2)−]、ナ
イロン66[−NHC6H12NHCOC4H8CO−]、ナ
イロン69[−NHC6H12NHCOC7H14CO−]、ナ
イロン6TPA[−NHC6H12NHCO−Φ−CO
−]、ポリブチレンテレフタレート[−C4H8OCO−Φ
−COO−]、ポリエチレンテレフタレート[−C2H4
OCO−Φ−COO−]、ポリイミド(例えば、下記化
学式(i)参照)、ポリエステル、パリレンポリパラキ
シレン等が挙げられる。
は、表面処理される高分子膜が基材に保持されている構
成として記載したが、該高分子膜は必ずしも薄膜である
必要はなく、高分子膜自体が基材である様な構成も、
又、本発明の範囲のものである。又、後述するが、高分
子膜表面上に形成されるメソ構造体のメソ細孔内の界面
活性剤の除去工程として、焼成を採用する場合には、高
分子膜は焼成に絶えられる基材上に形成することが好ま
しい。この様な基材材料としては、例えば、石英ガラス
やシリコン等が挙げられる。又、この様な基板上に形成
される高分子膜の厚みは特に限定されるものでないが、
例えば、1〜100nm程度とすればよい。
分子膜12の表面状態を適宜に制御する他の方法として
は、高分子膜をラングミュア−ブロジェット(LB)法
で作成したLB膜とする方法が挙げられる。以下、かか
る態様について説明する。LB膜は、水面上に展開され
た単分子膜を板状の基材(以下、基板と呼ぶ)上に移し
取ることによって形成される膜であり、成膜を繰り返す
ことで、所望の層数の膜を形成することができる。本態
様でいうLB膜には、上記のものの他、基板上に形成さ
れたLB膜に熱処理等を施し、累積構造を保ったままで
化学構造を変化させたLB膜誘導体の単分子累積膜も包
含される。
膜する際には、従来の一般的な方法を用いることができ
る。図2に、一般的なLB膜の成膜装置を模式的に示し
た。図2において、21は、純水22を満たした水槽で
ある。23は固定バリアであり、不図示の表面圧センサ
ーがつけられている。水面上の単分子層26は、目的の
物質或いは目的物質前駆体の溶解した液体を、可動バリ
ア24との間の領域の水面上に滴下することで形成さ
れ、可動バリア24の移動によって表面圧が印加される
構造になっている。可動バリア24は、基板25に膜を
成膜する間、一定の表面圧が印加されるように、表面圧
センサーによってその位置が制御されている。純水22
は、不図示の給水装置及び排水装置により、常に清浄な
ものが供給される様に構成されている。水槽21には、
一部窪みが設けられており、この位置に基板11が保持
され、不図示の並進装置によって一定の速度で上下動す
る構造になっている。水面上の膜は、基板が水中に入っ
ていく際、及び引き上げられる際に基板上に移し取られ
る。
B膜は、この様な装置を用いて、基板11を、水面上に
展開された単分子層に表面圧をかけながら図2の矢印B
方向に往復移動させ、基板11を水中に出し入れするこ
とで基板11上に1層ずつ単分子層を形成して得られ
る。かかる膜の形態及び性質は、単分子層にかけられる
表面圧、基板の押し込み/引き上げの際の移動速度、及
び、層数でコントロールすることができる。成膜の際の
表面圧は、表面積−表面圧曲線から最適な条件が決定さ
れるが、一般的には、数mN/mから数十mN/mの値
である。又、基板の移動速度は、一般的には、数mm/
分〜数百mm/分とする。LB膜の成膜方法は、以上述
べた様な方法が一般的であるが、本発明に用いられるL
B膜の成膜方法はこれに限定されず、例えば、サブフェ
イズである水の流動を用いる様な方法を用いることもで
きる。
せる基板の材質についても特に限定はないが、酸性条件
に対して安定なものを用いることが好ましい。具体的に
は、例えば、石英ガラス、セラミックス、樹脂等が使用
可能である。
材料としては、多くの材料を用いることが可能である
が、その上にシリカメソ構造体を析出させて、一軸配向
性を有するシリカメソ構造体薄膜の形成が良好な状態で
行われるようにするためには、高分子材料からなるLB
膜を用ることが好ましい。このようにすれば、各種材料
からなる基板上にシリカメソ構造体薄膜を形成すること
が可能となる。特に、ポリイミドのLB膜を用いた場合
には、良好な一軸配向性を有するシリカメソ構造体薄膜
の形成が可能となる。
体のメソ細孔が配向性を有する様になる理由は明らかで
ないが、以下の様に考えられる。ここで一例として、L
B膜の形成に下記化学式(ii)で示されるポリアミック
酸を用い、ガラス基板上に成膜したLB膜を窒素ガス雰
囲気下で300℃で30分間焼成すると、前記した化学
式(i)で示される構造のポリイミド膜がガラス基板上
に形成される。
されたポリイミド膜中での高分子鎖の配向は、フーリエ
変換赤外吸光光度計(FT−IR)を用いて確認するこ
とができる。実際に、上記と同じ手順によって、ポリイ
ミドLB膜を赤外光透過性のシリコン基板上に形成した
ものをFT−IRで観測すると、ポリイミドの高分子鎖
が、LB膜成膜時の基板引き上げ方向に平行に配向して
いることが分った。
て、FT−IRスペクトルを測定した場合には、分子鎖
に対して平行な振動モードである、1370cm-1付近
に観測されるC−N伸縮振動に帰属される吸収や、15
20cm-1付近に観測されるフェニルのC−C伸縮振動
に帰属される吸収が強く観測される。一方、引き上げ方
向に垂直な偏光を用いて、FT−IRスペクトルを測定
した場合には、分子鎖に対して垂直な振動モードであ
る、1725cm-1付近に観測されるC=O伸縮振動に
帰属される吸収が強く観測される。
ドの高分子鎖が基板表面に対して平行に、一方向に配向
(図3の矢印C方向)したポリイミド膜上で、後述する
ように、界面活性剤の存在下でアルコキシシランの加水
分解を行なってポリイミド膜上にメソ構造体を形成した
場合には、先ず、界面活性剤分子が、基板上11表面に
対して平行に配向しているポリイミド分子と化学的若し
くは物理的な相互作用を生じる。
親水性基部分31−2と疎水性基部分31−1とを有す
る界面活性剤分子31の疎水性基部分31−1が、基板
11表面に対して平行に、一方向に配向している各々の
ポリイミドの高分子鎖30の疎水性部分に化学的に結合
し、ロッド状のミセル構造体32を形成する。そして、
このミセル構造体の周囲にはシリカ(不図示)が存在す
る。上記のようにして高分子膜表面に形成されるミセル
構造体32は、その上に順次形成されると考えられるロ
ッド状のミセル構造体(不図示)の配向方向を、物理的
若しくは化学的な作用によって実質的に規制する。その
結果、高分子膜上には、ポリイミド分子の配向方向とは
直交する方向(図3の矢印D方向)に全てのロッド状の
ミセル構造体が配向する。これによって、内部に界面活
性剤を含むメソ細孔を有する一軸配向性のシリカメソ構
造体が、ポリイミド膜表面に形成されるものと考えられ
る。そして、この推論は、基板上に形成されたメソ構造
体のメソ細孔が、LB膜形成時の基板引き上げ方向、即
ち、ポリイミド分子の配向方向と直交する方向に配向し
ているという実験事実によっても、その正しさが裏付け
られる。
造体は、上記したようにして、ラビング処理を施した
り、LB膜としたりして表面状態が制御されている高分
子膜を用い、その上にメソ構造体を形成することによっ
て容易に得られる。以下、シリカメソ構造体を形成する
ことを例にとってメソ構造体の製造方法について説明す
る。
応容器としては、例えば、図4の様な構成のものであ
る。反応容器41の材質は、薬品、特に酸に対する耐性
を有するものであれば特に限定はなく、例えば、ポリプ
ロピレンやポリフッ化エチレン系樹脂(商品名:テフロ
ン等)の様なものを用いることができる。反応容器41
内には、耐酸性の材質の基板ホルダー43が、例えば、
図4に示した様に置かれており、前記した様にラビング
処理された高分子膜やLB膜を表面に有する基板45は
これを用いて保持される。図4は、基板45を水平に保
持する例を示してあるが、基板45の保持は水平に限定
されるものではない。尚、図4において、42は、耐酸
性の材料で形成された蓋であり、又、44は、蓋と容器
41の密閉性を高める為のシール材(Oリング等)であ
る。
面活性剤及びアルコキシシランを含む溶液51中に浸漬
された状態で保持するのが一般的だが、図5(B)に示
した様に、ラビング処理された高分子膜やLB膜を有す
る側の面を反応溶液に接するように保持した場合にも、
本態様にかかるメソ構造体を容易に形成することができ
る。尚、反応容器は、反応中に圧力がかかっても破壊さ
れないようにするために、更にステンレスの様な剛性の
高い材質の密閉容器に入れてもよい。
液としては、例えば、界面活性剤の水溶液に塩酸等の酸
を混合し、SiO2の等電点であるpH=2以下に調整
したものに、テトラメトキシシランやテトラエトキシシ
ランの様なケイ素のアルコキシド(アルコキシシラン)
を混合したものが挙げられる。即ち、酸性側、特に等電
点の近くではSiO2の沈殿の発生速度は小さいので、
塩基性条件下での反応の場合のように、アルコキシドの
添加後、瞬間的に沈殿が発生することが生じない。
方法で予め配向処理の施された基板を用いることが好ま
しい。配向処理を施す基板の材質に特に限定はないが、
特に、上記したような酸性条件下においても安定な、耐
酸性の材料を用いることが好ましい。例示すると、石英
ガラス、セラミックス、樹脂等が使用可能である。
際に使用する界面活性剤としては、例えば、4級アルキ
ルアンモニウム塩の様なカチオン性界面活性剤、ポリエ
チレンオキシドを親水基として含む界面活性剤やアルキ
ルアミンの様な非イオン性界面活性剤等の中から適宜に
選択することができる。又、使用する界面活性剤分子の
長さは、目的のメソ構造の細孔径に応じて決めればよ
い。又、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メ
シチレンの様な添加物を加えてもよい。界面活性剤とし
ての4級アルキルアンモニウムの具体例としては、例え
ば、下記化学式(iii)で示される様なものが好適に用
いられる。
うに、上記した様な界面活性剤の水溶液に塩酸等の酸を
混合し、pH=2以下に調整したものに、ケイ素のアル
コキシド(アルコキシシラン)を混合したものを用い、
図4に示した様な構成の反応容器を用いることで、基板
上にシリカメソ構造体を析出させることができる。析出
させる際の温度には特に制約はないが、室温〜100℃
程度の温度領域において選択すればよい。反応時間は、
数時間〜数ヶ月程度で、時間が短いほど薄いシリカメソ
構造体を形成することができる。本発明のシリカメソ構
造体は、この様にして基板上に形成されたシリカメソ構
造体を、純水で洗浄した後、空気中で自然乾燥させるこ
とで容易に得られる。
られたシリカメソ構造体中のメソ細孔の内部には、界面
活性剤が詰まっており、これを除去することでメソ細孔
内を中空とし、メソポーラス構造体を作成することがで
きる。界面活性剤の除去方法は、焼成、溶剤による抽
出、超臨界状態の流体による抽出等の中から適宜に選択
すればよい。例えば、空気中、550℃で10時間焼成
することによって、メソ構造を殆ど破壊することなく、
メソ構造体から完全に界面活性剤を除去することができ
る。又、溶剤抽出等の手段を用いると、100%の界面
活性剤の除去は困難ではあるものの、焼成に耐えられな
い材質の基板上にメソポーラス構造体を形成することが
可能である。このようにして得られる配向性メソポーラ
スシリカの用途としては、例えば、そのポア内部に金属
原子や有機金属分子を導入することで、金属ナノワイヤ
を有する1次元の導電性を有する機能素子等を挙げるこ
とができる。
意の基板上に、メソ細孔が一軸配向したメソ構造体を形
成することができ、しかも、メソ構造体中のメソ細孔の
配向を制御することが可能となる。そして、これらを用
いることで、メソ構造体の機能素子への展開が図られる
ことが期待される。
に詳細に説明する。 (実施例1)本実施例は、ポリマー薄膜にラビング配向
処理を施した基板を用いて配向性メソ構造体を作成した
例である。本実施例では、アセトン、イソプロピルアル
コール、及び純水で洗浄し、オゾン発生装置中で表面を
クリーニングした石英ガラス基板を用いた。そして、該
基板に、スピンコートによって下記化学式(iv)で示
される構造を有するポリアミック酸AのNMP溶液をス
ピンコートにより塗布し、200℃で1時間焼成して下
記化学式(v)で示されるポリイミドAを形成した。
ドAを形成した基板に対して、下記の条件でラビング処
理を施し、基板として用いた。 (ポリイミドAのラビング条件) ・布材質:ナイロン ・ローラー径:24mm ・押し込み:0.4mm ・回転数:1000rpm ・ステージ速度:600mm/s ・繰り返し回数:2回
82gを108mlの純水に溶解し、36%塩酸を4
8.1ml添加して2時間攪拌し、界面活性剤の酸性溶
液とした。この溶液に、テトラエトキシシラン(TEO
S)1.78mlを加え、2分30秒攪拌し、上記のラ
ビング処理を施した基板が保持されている基板ホルダー
の入った図4に示した構成のテフロン容器中に入れて、
基板が、上記で調製した溶液中に保持されるようにし
た。最終的な溶液組成はモル比で、H2O:HCl:セ
チルトリメチルアンモニウム塩化物:TEOS=10
0:7:0.11:0.10である。この容器に蓋を
し、更に、ステンレス製の密閉容器に入れた後に80℃
に保ったオーブン中に保持した。保持時間は、2時間及
び2週間の2種類とした。所定の時間反応溶液と接触さ
せた基板は、容器から取り出し、純水で十分に洗浄した
後に、室温において自然乾燥させた。
させた基板を乾燥させた後に、顕微鏡で観察された形状
を模式的に示した。この図に示したように、ラビングを
施した配向膜を形成した基板上では、個々の粒子がラビ
ング方向に延伸(elongate)されたようになっ
ており、基板の配向規制力によって複合体中の粒子の成
長方向を制御することができた。図6中にwで示した個
々の粒子の短軸方向の幅は、1〜2μmであった。一
方、反応溶液と2週間接触させた基板にも、ほぼ同様の
形状のメソ構造体が形成されていることが確認できた。
更に、2時間接触させた基板と比較すると、メソ構造体
の数が多く、又、各々の粒子の高さが高い傾向が観察さ
れた。
れた基板をX線回折分析で分析した。その結果、面間隔
3.68nmの、ヘキサゴナル構造の(100)面に帰
属される強い回折ピークが確認され、このシリカメソ構
造体が、ヘキサゴナルな細孔構造を有することが確かめ
られた。又、広角の領域には回折ピークが認められない
ことから、壁を構成するシリカは非晶質であることがわ
かった。
フル炉に入れ、1℃/分の昇温速度で550℃まで昇温
し、空気中で10時間焼成した。焼成後の基板表面の形
状には、焼成前と比較して大きな差異は認められなかっ
た。更に、焼成後のシリカメソ構造体のX線回折分析の
結果、面間隔3.44nmの強い回折ピークが観測さ
れ、ヘキサゴナルな細孔構造が保持されていることが確
かめられた。焼成後にも、広角領域には回折ピークは確
認されておらず、壁のシリカは非晶質のままであること
が確認できた。又、赤外吸収スペクトル等の分析によ
り、この焼成後の試料には、既に界面活性剤に起因する
有機物成分は残存していないことが確かめられた。
ストイオンビーム(FIB)を用いてラビング方向に垂
直に切断し、断面の透過電子顕微鏡観察を行ったとこ
ろ、いずれの場合にも、断面にヘキサゴナル構造の細孔
が確認され、メソポアがラビング方向に配向しているこ
とが確認された。図9に、シリカメソ構造体の断面をラ
ビング方向から観察した場合の模式図を示す。
基板への密着性は大きく向上し、焼成後には、表面を布
等で強くこすった場合にも剥離等は起こらなかった。こ
のことは、下地の石英基板とメソポーラスシリカ層と
が、シラノールの脱水縮合による部分的な結合を形成し
たことによると考えられる。又、本実施例において、基
板を溶液中に保持する代わりに、配向処理を施した面を
溶液表面に接触させるように保持したところ、この場合
にも、同様の構造のシリカメソ構造体を作成することが
できることがわかった。
れていない清浄な石英ガラス基板、及び、実施例1と同
じ手順でポリイミドA配向膜を形成した後にラビング処
理を施さなかった石英基板の2種類を用いた。そして、
これらの基板を実施例1で用いたものと同じ反応溶液中
に保持させ、実施例1と同じ80℃の条件で2時間、及
び2週間反応させた。所定の時間、反応溶液と接触させ
た基板は、容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後
に、室温において自然乾燥させた。
の、ポリイミド膜を有しない石英ガラス基板上に形成さ
れたメソ構造体の顕微鏡で観察された形状を模式的に示
した。この図に示したように、1μm程度の粒径のディ
スク状の粒子71が基板を覆いつくした様な構造となっ
ていた。又、この膜のX線回折分析の結果は、ラビング
処理を施したポリマーを形成した基板上に形成された膜
に関する結果とほぼ同じであった。よって、基板表面に
メソ構造体は析出しているものの、配向した薄膜は形成
されていないことがわかった。
ド膜上にメソ構造体を形成した場合のメソ構造体の形状
は、基本的には、ポリイミド膜を形成していない石英ガ
ラス基板上で観察された形状と同じであったが、粒子の
密度がやや低かった。このことから、実施例1で達成さ
れた図6に模式的に示した様な基板上でのメソ構造体の
配向は、ラビング処理によって付与されたものであるこ
とが確認できた。
れたシリカメソ構造体から、溶剤抽出によって界面活性
剤を除去してメソポーラスシリカを作成した例である。
本実施例では、実施例1と同じようにしてポリイミドA
を形成した後に、ラビング処理を施した石英ガラス基板
を用い、実施例1と同じ組成の溶液、同じ手順でシリカ
メソ構造体を作成した。このシリカメソ構造体をエタノ
ール中に浸漬し、70℃で24時間抽出を試みたとこ
ろ、一度の抽出によって、合成されたシリカメソ構造体
から90%以上の界面活性剤が除去された。同じ抽出操
作を2回繰り返し行なった試料では、95%以上の界面
活性剤を除去することができた。そして、抽出後の薄膜
を乾燥させエタノールを除去することによって、メソポ
ーラスシリカを得た。
性剤ミセルを除去する方法は、界面活性剤を完全に除去
することは困難であるものの、酸化雰囲気における熱処
理に弱い樹脂の様な基板上に形成されたシリカメソ複合
体薄膜から界面活性剤を除く方法として有効である。
又、この方法を用いて界面活性剤をメソ細孔から除去し
た場合、実施例1における焼成を用いた界面活性剤のメ
ソ細孔からの除去に比較して、作成されたメソポーラス
シリカ中のシラノール基の量を高レベルに保つことが出
来るという効果があることがわかった。
れたシリカメソ構造体から、超臨界状態の流体を用いた
抽出によって界面活性剤を除去してメソポーラスシリカ
を作成した例である。実施例1と同じようにしてポリイ
ミドAを形成した後に、ラビングを施した石英ガラス基
板を用い、実施例1と同じ組成の溶液、同じ手順でシリ
カメソ構造体を作成した。
構造体中の液相を完全にエタノールに置換した。この場
合、実施例2で述べたように、界面活性剤はエタノール
中に溶出してくる。この後、シリカメソ構造体を、図8
に示した様な構成の超臨界乾燥装置中に入れ、二酸化炭
素を流体として用いて、31℃、72.8気圧の超臨界
条件で有機物の抽出を行った。赤外吸収スペクトル等の
分析により、この超臨界条件の下で乾燥させた後のメソ
ポーラスシリカ中には有機物は殆ど残存しておらず、ほ
ぼ完全に界面活性剤を除去することができたことが確認
された。
た方法よりも複雑な装置が必要となるが、低温におい
て、より完全に界面活性剤を除去できる。又、超臨界状
態の流体を用いた乾燥では、乾燥時に発生する応力をゼ
ロにすることができるため、メソ構造を全く破壊するこ
となしにメソポーラスシリカを得ることができる。又、
焼成によるメソ細孔内の界面活性剤の除去方法と比較し
て、作成したメソポーラスシリカ中のシラノール基の量
を高レベルに保つことができるという効果がある。図8
において、81はCO2ボンベ、82はチラー、83は
ポンプ、84はプレヒーター、85は抽出器、86はヒ
ーター、87はセパレータ、88はガスメータ、89は
バルブを示す。
で用いたと同様の石英ガラス基板表面にポリイミドLB
膜を形成し、該基板の上にシリカメソ構造体を作成した
後、更に、該シリカメソ構造体から界面活性剤剤の集合
体を焼成により除去してメソ細孔を中空にした例であ
る。
面にポリイミドLB膜を形成する。実施例1で用いたも
のと同じ前記化学式(iv)で示されるポリアミック酸
と、N,N−ジメチルヘキサデシルアミンとを1:2の
モル比で混合し、ポリアミック酸のN,N−ジメチルヘ
キサデシルアミン塩を作製した。次に、これを、N,N
−ジメチルアセトアミドに溶解して0.5mMの溶液と
し、この溶液を20℃に保ったLB膜成膜装置の水面上
に滴下した。そして、水面上に形成された単分子膜は、
30mN/mの一定の表面圧を印加しながら、5.4m
m/minのディップ速度で基板上に移し取った。基板
には、アセトン、イソプロピルアルコール、及び純水で
洗浄し、オゾン発生装置中で表面をクリーニングした石
英ガラス基板に対して疎水処理を施したものを用いた。
件で30層のポリアミック酸アルキルアミン塩LB膜を
成膜した後、窒素ガスフローの下で300℃で30分間
焼成して、前記化学式(v)で示される構造のポリイミ
ドのLB膜を形成した。この際に生じるポリアミック酸
の脱水閉環によるイミド化、及び、アルキルアミンの脱
離は、赤外吸収スペクトルにより確認した。更に、FT
−IRによって、ポリイミド分子の主鎖が、LB膜の成
膜時における基板の移動方向に平行な方向に配向してい
ることを確認した。
が形成された石英ガラス基板を用い、その上に、下記の
手順で、シリカメソ構造体を形成した。先ず、セチルト
リメチルアンモニウム塩化物2.82gを108mlの
純水に溶解し、36%塩酸を48.1ml添加して2時
間攪拌し、界面活性剤の酸性溶液を作製した。次に、こ
の溶液に、テトラエトキシシラン(TEOS)1.78
mlを添加し、2分30秒攪拌した後、上記基板を保持
した基板ホルダーの入った図4に示した構成のテフロン
製の反応容器中に入れ、基板が反応溶液中に浸漬された
状態で保持されるようにした。このとき、LB膜の形成
されている面が下向きになるように基板を保持させた
(図5(a)参照)。本実施例において使用した反応溶
液の最終的な組成は、モル比で、H2O:HCl:セチ
ルトリメチルアンモニウム塩化物:TEOS=100:
7:0.11:0.10であった。この容器に蓋をし、
更に、該容器をステンレス製の密閉容器に入れた後、8
0℃に保ったオーブン中に保持した。保持時間は、2時
間、及び2週間とした。更に、所定の時間反応溶液と接
触させた基板は、容器から取り出し、純水で十分に洗浄
した後、室温において自然乾燥させた。
板を乾燥させた後に、顕微鏡で観察した場合の平面形状
を模式的に示した。図10に示したように、ポリイミド
のLB膜が形成された基板上のシリカメソ構造体は、個
々の粒子が一軸方向に延伸されたようになっており、基
板表面の配向規制力によって粒子の成長方向を制御する
ことができた。図10中にwで示した個々の粒子の幅は
1〜2μmであった。シリカメソ構造体粒子の延伸、及
び配向の方向は、LB膜成膜時における基板の移動方向
に対して直交する方向であった。
せた基板についても上記と同様の観察を行なったとこ
ろ、やはり同様に一軸方向に延伸されたシリカメソ構造
体の形成が確認された。更に、2時間の反応を行なった
ものと比較するとメソ構造体の数が多く、又、メソ構造
体の高さも高かった。又、このシリカメソ構造体につい
てX線回折分析で分析した。その結果、面間隔3.74
nmの、ヘキサゴナル構造の(100)面に帰属される
強い回折ピークが確認され、この薄膜が、ヘキサゴナル
な細孔構造を有することが確かめられた。又、広角の領
域には回折ピークが認められないことから、壁を構成す
るシリカは非晶質であることがわかった。
リカメソ構造体から界面活性剤を除去して、メソポーラ
スシリカを形成した。上記で得られたシリカメソ構造体
が形成された基板をマッフル炉に入れ、1℃/分の昇温
速度で550℃まで昇温し、空気中で10時間焼成し
た。焼成後の基板表面の形状には、焼成前と比較して大
きな差異は認められなかった。更に、焼成後のシリカメ
ソ構造体のX線回折分析の結果、面間隔3.46nmの
強い回折ピークが観測され、ヘキサゴナルな細孔構造が
保持されていることが確かめられた。焼成後にも、広角
領域には回折ピークは確認されておらず、壁のシリカは
非晶質のままであることが確認できた。又、赤外吸収ス
ペクトル等の分析により、この焼成後の試料には、既に
界面活性剤に起因する有機物成分は残存していないこと
が確かめられた。
ラスシリカを、フォーカストイオンビーム(FIB)を
用いてLB膜成膜時の基板の移動方向に平行に切断し、
断面の透過電子顕微鏡(TEM)を用いた観察を行った
ところ、いずれの場合にも、断面にヘキサゴナル構造の
細孔が確認され、メソポアがLB膜成膜時の基板の移動
方向に対して直交方向に配向していることが確認でき
た。図11に、LB膜成膜時の基板の移動方向に対して
直交する方向から観察したメソポアを有するシリカメソ
構造体が形成された基板断面のTEM像の模式図を示し
た。上記した焼成によって、メソポーラスシリカ粒子の
基板への密着性は大きく向上し、焼成後には、メソポー
ラスシリカが形成されている側の基板表面を布等で強く
擦った場合にも、該膜の剥離等は起こらなかった。これ
は、下地の石英ガラスと、その上に形成されたメソポー
ラスシリカとが、シラノールの脱水縮合によって部分的
な結合を形成したことによるものと考えている。尚、本
実施例において、基板を反応溶液中に浸漬させた状態で
保持する代わりに、LB膜の成膜された面を反応溶液表
面に接触させるように保持した場合にも(図5(B)参
照)、上記したと同様の構造のシリカメソ構造体、及び
メソポーラスシリカを作成することができた。
れたシリカメソ構造体から、溶剤抽出によって界面活性
剤を除去して、メソポーラスシリカを作成した例であ
る。先ず、実施例4と同じ手順で、30層のポリイミド
AのLB膜を形成した石英ガラス基板を用い、実施例4
と同じ組成の反応溶液、同じ手順で、基板上に一軸配向
性のシリカメソ構造体を作成した。次に、このシリカメ
ソ構造体をエタノール中に浸漬し、70℃で24時間抽
出を試みたところ、一度の抽出によって90%以上の界
面活性剤が、合成されたシリカメソ構造体から除去され
た。同じ抽出操作を2回繰り返し行なった試料では、9
5%以上の界面活性剤を除去することができた。抽出後
の薄膜を乾燥させエタノールを除去することによって、
メソポーラスシリカが得られた。
カメソ構造体から界面活性剤ミセルを除去する方法は、
界面活性剤を完全に除去することは困難であるものの、
酸化雰囲気における熱処理に弱い樹脂の様な材料からな
る基板上に形成したシリカメソ構造体から界面活性剤を
除く方法として有効である。又、実施例4で行なった焼
成による界面活性剤の除去方法と比較して、作成された
メソポーラスシリカ中のシラノール基の量を高レベルに
保つことができるという効果もある。
れたシリカメソ構造体から、超臨界状態の流体を用いた
抽出によって界面活性剤を除去して、メソポーラスシリ
カを作成した例である。先ず、実施例4と同じ手順で、
30層のポリイミドAのLB膜を形成した石英ガラス基
板を用い、実施例4と同じ組成の反応溶液、同じ手順
で、基板上に一軸配向性のシリカメソ構造体を作成し
た。
中に浸漬し、構造体薄膜中の液相を完全にエタノールに
置換する。この場合、実施例2で述べたように、エタノ
ール中に界面活性剤が溶出してくる。この後、シリカメ
ソ構造体試料を図8の様な構成の超臨界乾燥装置中に入
れ、二酸化炭素を流体として用いて、31℃、72.8
気圧の超臨界条件で有機物の抽出を行った。この結果、
赤外吸収スペクトル等の分析により、超臨界条件の下で
乾燥させた後のメソポーラスシリカ中には有機物は殆ど
残存しておらず、ほぼ完全に界面活性剤を除去すること
ができたことが確認された。
た方法よりも複雑な装置が必要となるが、低温におい
て、より完全に界面活性剤を除去できる方法である。こ
の方法の場合にも、実施例4で行なった焼成による界面
活性剤の除去に比較して、作成したメソポーラスシリカ
中のシラノール基の量を高レベルに保つことができると
いう効果がある。更に、超臨界状態の流体を用いた乾燥
では、乾燥時に発生する応力を0にすることができるた
め、シリカメソ構造体を全く破壊することなしにメソポ
ーラスシリカを得ることができる。
メソ細孔を有するメソ構造体の機能素子への展開を可能
とする全く新規な構成を有するメソ構造体、更には、シ
リカメソ構造体が提供される。又、本発明によれば、形
成する基板の種類によらず、管状のメソ細孔が高度に配
向しているメソ構造体、更には、シリカメソ構造体が容
易に得られるメソ構造体の製造方法が提供される。更
に、本発明によれば、メソ構造体のメソ細孔の配向を適
宜に制御するメソ細孔の配向制御方法が提供される。
模式的斜視図である。 (b)本発明のメソ構造体の他の一例の断面を含む模式
的斜視図である。
造体が形成される理由の説明図である。
略説明図である。
ための図である。
の顕微鏡像の模式図である。
模式図である。
臨界乾燥装置の構成を示す概略図である。
像の模式図である。
微鏡像の模式図である。
M像の模式図である。
Claims (54)
- 【請求項1】 高分子表面に配置されている管状のメソ
細孔を有するメソ構造体であって、該メソ細孔が上記高
分子表面に対して平行な第1の方向に配向していること
を特徴とするメソ構造体。 - 【請求項2】 ケイ素が含まれている請求項1に記載の
メソ構造体。 - 【請求項3】 高分子表面を構成している高分子化合物
の分子が、高分子表面内の第2の方向に配向している請
求項1又は2に記載のメソ構造体。 - 【請求項4】 第2の方向が、請求項1に記載の第1の
方向と異なる請求項3に記載のメソ構造体。 - 【請求項5】 第1の方向と該第2の方向とがほぼ直交
する請求項4に記載のメソ構造体。 - 【請求項6】 高分子表面が、ラングミュア−ブロジェ
ット膜からなる請求項3に記載のメソ構造体。 - 【請求項7】 高分子表面が、所定の方向にラビングさ
れた表面である請求項1に記載のメソ構造体。 - 【請求項8】 所定の方向が、請求項1に記載の第1の
方向と同じ方向である請求項7に記載のメソ構造体。 - 【請求項9】 高分子が、ポリエチレン、ナイロン、ポ
リブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエステル、ポリイミド及びパリレンポリパラキ
シリレンから選ばれる少なくとも1つを含んで構成され
ている請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のメソ
構造体。 - 【請求項10】 高分子が、ポリイミドを含む請求項9
に記載のメソ構造体。 - 【請求項11】 高分子表面が基材に支持された高分子
膜からなり、且つ、メソ構造体は、該高分子膜の該基材
と接している面とは反対側の面上に配置されている請求
項1〜請求項10のいずれか1項に記載のメソ構造体。 - 【請求項12】 基材が、ガラスである請求項11に記
載のメソ構造体。 - 【請求項13】 高分子表面上に配置されている管状の
メソ細孔を有するシリカメソ構造体であって、高分子表
面を構成している高分子化合物の分子が上記表面に対し
て平行な第1の方向に配向しており、且つ、該高分子表
面上に、化学的相互作用によって界面活性剤の分子が上
記高分子化合物の高分子鎖の配向方向に平行に並ぶこと
により形成された高分子鎖の配向方向と直交する方向に
配向したロッド状の界面活性剤ミセル構造を有し、且
つ、該界面活性剤ミセル構造の外側にシリカが存在する
ことにより、上記管状のメソ細孔が上記第1の方向とほ
ぼ直交する方向に配向していることを特徴とするシリカ
メソ構造体。 - 【請求項14】 界面活性剤が、カチオン性界面活性剤
若しくはノニオン性界面活性剤である請求項13に記載
のシリカメソ構造体。 - 【請求項15】 カチオン性界面活性剤が、4級アルキ
ルアンモニウム塩である請求項14に記載のシリカメソ
構造体。 - 【請求項16】 4級アルキルアンモニウム塩が、下記
構造式で示されるものである請求項15に記載のシリカ
メソ構造体。 - 【請求項17】 構造式中のR4が、C12〜C16の直鎖
状アルキル基である請求項16に記載のシリカメソ構造
体。 - 【請求項18】 ノニオン性界面活性剤が、アルキルア
ミン又はポリエチレンオキシドを親水基として含む界面
活性剤である請求項14に記載のシリカメソ構造体。 - 【請求項19】 高分子表面がラングミュア−ブロジェ
ット膜からなる請求項13に記載のシリカメソ構造体。 - 【請求項20】 高分子化合物が、ポリエチレン、ナイ
ロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエステル、ポリイミド及びパリレンポ
リパラキシリレンから選ばれる少なくとも1つである請
求項13に記載のシリカメソ構造体。 - 【請求項21】 高分子化合物が、ポリイミドである請
求項20に記載のシリカメソ構造体。 - 【請求項22】 メソ細孔が中空である請求項13に記
載のシリカメソ構造体。 - 【請求項23】 高分子表面が基体に支持された高分子
膜からなり、該基体が酸化ケイ素を含む請求項13に記
載のシリカメソ構造体。 - 【請求項24】 管状のメソ細孔が面内の所定の方向に
配向しているメソ構造体の製造方法であって、(i)配
向処理が施された高分子表面を用意する工程;及び(i
i)配向処理が施された上記表面と、界面活性剤とアル
コキシドとを含む液体とを接触させた状態でアルコキシ
ドを加水分解し、配向処理が施された高分子表面にメソ
構造体を形成する工程、を有することを特徴とするメソ
構造体の製造方法。 - 【請求項25】 工程(i)が、高分子表面を所定の方
向にラビングする過程を含む請求項24に記載のメソ構
造体の製造方法。 - 【請求項26】 工程(i)が、表面にラングミュア−
ブロジェット膜が露出している高分子表面を用意する過
程を含む請求項24に記載のメソ構造体の製造方法。 - 【請求項27】 高分子表面を液体中に浸漬することに
よって配向処理が施された高分子表面と液体とを接触せ
しめる請求項24〜26のいずれか1項に記載のメソ構
造体の製造方法。 - 【請求項28】 高分子が、ポリエチレン、ナイロン、
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリエステル、ポリイミド及びパリレンポリパラ
キシリレンから選ばれる少なくとも1つを含んで構成さ
れている請求項24〜27のいずれか1項に記載の製造
方法。 - 【請求項29】 高分子が、ポリイミドを含む請求項2
8に記載のメソ構造体の製造方法。 - 【請求項30】 更に、メソ細孔内の界面活性剤を除去
し、該メソ細孔を中空とする工程を有する請求項24に
記載のメソ構造体の製造方法。 - 【請求項31】 界面活性剤を除去する工程が、請求項
24に記載の工程(ii)で得られたメソ構造体を焼成す
る過程を含む請求項30に記載のメソ構造体の製造方
法。 - 【請求項32】 界面活性剤を除去する工程が、請求項
24に記載の工程(ii)で得られたメソ構造体から該界
面活性剤を溶剤抽出する過程を含む請求項30に記載の
メソ構造体の製造方法。 - 【請求項33】 界面活性剤を除去する工程が、請求項
24に記載の工程(ii)で得られたメソ構造体から超臨
界状態の流体を用いて除去する過程を含む請求項30に
記載のメソ構造体の製造方法。 - 【請求項34】 高分子表面上に配置されている管状の
メソ細孔を有するシリカメソ構造体の製造方法であっ
て、(i)上記高分子表面を構成する高分子化合物の分
子鎖が高分子表面に対して平行な所定の方向に配向して
いる高分子表面を用意する工程;及び(ii)上記高分子
化合物の分子鎖と界面活性剤分子との化学的相互作用に
よって、界面活性剤の分子を、高分子化合物の分子鎖と
平行に並ばせることによって該分子鎖の配向方向に直交
する方向に配向させ、その外側にシリカが存在している
ロッド状の界面活性剤ミセル構造を形成して、内部に界
面活性剤が充填され、且つ、高分子化合物の分子鎖の配
向方向とほぼ直交する方向に配向したメソ細孔を有する
シリカメソ構造体を形成する工程、を有することを特徴
とするシリカメソ構造体の製造方法。 - 【請求項35】 界面活性剤が、カチオン性界面活性剤
若しくはノニオン性界面活性剤である請求項34に記載
のシリカメソ構造体の製造方法。 - 【請求項36】 カチオン性界面活性剤が、4級アルキ
ルアンモニウム塩である請求項35に記載のシリカメソ
構造体の製造方法。 - 【請求項37】 4級アルキルアンモニウム塩が、下記
構造式で示されるものである請求項36に記載のシリカ
メソ構造体の製造方法。 - 【請求項38】 構造式中のR4が、C12〜C16の直鎖
状アルキル基である請求項37に記載のシリカメソ構造
体の製造方法。 - 【請求項39】 ノニオン性界面活性剤が、アルキルア
ミン又はポリエチレンオキシドを親水基として含む界面
活性剤である請求項35に記載のシリカメソ構造体の製
造方法。 - 【請求項40】 工程(i)が、高分子化合物のラング
ミュア−ブロジェット膜からなる表面を所定の基体上に
形成する過程を含む請求項34に記載のシリカメソ構造
体の製造方法。 - 【請求項41】 高分子化合物が、ポリエチレン、ナイ
ロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエステル、ポリイミド及びパリレンポ
リパラキシリレンから選ばれる少なくとも1つである請
求項34〜40のいずれか1項に記載のシリカメソ構造
体の製造方法。 - 【請求項42】 高分子化合物が、ポリイミドである請
求項41に記載のシリカメソ構造体の製造方法。 - 【請求項43】 工程(ii)が、高分子表面と、界面活
性剤とアルコキシシランとを含む液体とを接触させた状
態でアルコキシシランを加水分解する過程を含む請求項
34に記載のシリカメソ構造体の製造方法。 - 【請求項44】 更に、メソ細孔内の界面活性剤を除去
する過程を有する請求項34に記載のシリカメソ構造体
の製造方法。 - 【請求項45】 界面活性剤を除去する工程が、請求項
34に記載の工程(ii)で得られたシリカメソ構造体を
焼成する過程を含む請求項44に記載のシリカメソ構造
体の製造方法。 - 【請求項46】 界面活性剤を除去する工程が、請求項
34に記載の工程(ii)で得られたメソ構造体から該面
活性剤を溶剤抽出する過程を含む請求項44に記載のシ
リカメソ構造体の製造方法。 - 【請求項47】 界面活性剤を除去する工程が、請求項
34に記載の工程(ii)で得られたメソ構造体から超臨
界状態の流体を用いて除去する過程を含む請求項44に
記載のシリカメソ構造体の製造方法。 - 【請求項48】 高分子表面に配置されている管状のメ
ソ細孔を有するメソ構造体であって、該メソ細孔は、高
分子表面に対して平行な所定の方向に配向し、且つ、該
所定の方向は、上記高分子表面のラビング方向によって
規制されていることを特徴とするメソ構造体。 - 【請求項49】 ラビング方向と所定の方向とが同一で
ある請求項48に記載のメソ構造体。 - 【請求項50】 高分子表面に配置されている管状のメ
ソ細孔を有するメソ構造体であって、該メソ細孔は、高
分子表面に対して平行な所定の方向に配向し、該所定の
方向は、上記高分子表面を構成する高分子化合物の分子
鎖の配向方向によって規制されていることを特徴とする
メソ構造体。 - 【請求項51】 分子鎖の配向方向と所定の方向とが異
なる請求項50に記載のメソ構造体。 - 【請求項52】 分子鎖の配向方向と所定の方向とが直
交する関係にある請求項51に記載のメソ構造体。 - 【請求項53】 メソ構造体が有する管状のメソ細孔の
配向を制御する方法であって、所望の方向にラビング処
理された高分子表面と、界面活性剤とアルコキシシラン
とを含む液体とを接触させた状態でアルコキシシランを
加水分解せしめる工程を有することを特徴とするメソ構
造体のメソ細孔の配向制御方法。 - 【請求項54】 メソ構造体が有する管状のメソ細孔の
配向を制御する方法であって、所望の方向に高分子化合
物の分子鎖が配向している高分子表面と、界面活性剤と
アルコキシシランとを含む液体とを接触させた状態でア
ルコキシシランを加水分解する工程を有することを特徴
とするメソ構造体のメソ細孔の配向制御方法。
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