JP2006327853A - メソポーラス材料薄膜及びその製造方法 - Google Patents

メソポーラス材料薄膜及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 一方向に制御されたチューブ状メソ細孔を有するメソポーラスシリカ薄膜をゲスト種の細孔内への導入が容易になったメソポーラス材料の薄膜及びその製造方法に関する。
【解決手段】 実質的に均一な径のチューブ状メソ細孔がハニカムパッキングした細孔構造を有し、かつチューブ状細孔が膜面内において一方向に配向制御されている、基板上に形成されたメソポーラス材料の薄膜であって、薄膜が、100ナノメートル未満の実質的に均一な幅の複数の溝で分断されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、多孔体に関するものであり、詳しくは、触媒担体、吸着剤、分離剤等に用いられる多孔体の薄膜及びその製造方法に関するものである。
本発明は、より詳しくは、巨視的なスケールで精密に細孔の配向を制御したメソポーラス材料薄膜において、細孔内への物質の導入を容易にするために、その多孔質膜を微細に分離加工する技術に関するものである。
半導体加工技術の進歩は目覚しく、100nm精度の加工技術の実用化は目前に迫っている。
半導体素子の小型化に伴い、スイッチング速度は増大する一方消費電力は低下するために、半導体素子の小型化は高性能LSI作製には必須である。
これまで、半導体素子の集積度は、年とともに直線的に増大してきたが、もはや加工精度が従来のフォトリソグラフィーの限界に達するのは時間の問題であり、それに代わる新しいプロセスの開発が急務となっている。
従来のフォトリソグラフィーの限界を超える加工プロセスとして、材料の持つ性質等を利用して自発的に微細な構造を作製させる、いわゆる自己組織化に基づくプロセスが注目を集めている。
自己組織化により形成される微細な構造は、層状、繊維状、柱状、球状、多孔質等、多岐に渡っており、それぞれに対して有望な応用が提案されている。
その中でも、特に、基板上に形成される多孔質の薄膜は、産業上の利用分野が広く、最も有望視されているものである。
多孔質の薄膜として現在最も注目されているものの一つに、アルミニウムを陽極酸化して形成されるアルミナナノホールがある。
これは、アルミニウムの薄膜をある条件のもとで陽極酸化することで、電界の集中が原因となって微細な空孔が表面に対して垂直に形成されるというものである。
この技術に関しては、例えば、非特許文献1に記載されている。
このアルミナナノホール膜の応用としては、電子放出素子や磁性体を導入した記録媒体等の提案が数多く提案されている。
またもう一つの注目されている材料として、界面活性剤の集合体を鋳型にして、ゾル−ゲル法等の方法で作製されるメソポーラス材料の薄膜がある。
これらは、ディップコート等の簡単な方法で、規則的な細孔構造を有する材料を作製するものである。
この技術に関しては、例えば、非特許文献2に包括的記載がなされている。
メソポーラス材料薄膜の中で最も安定で産業上有用なものはメソポーラスシリカ薄膜であり、これに関しても、触媒、発光材料等、数多くの応用に関する提案がなされている。
応用物理 第69巻第5号 p558-562 Angewandte Chemie誌 Internatioal Edition 第38巻 p56-77 Chemistry of Materials誌 第9巻 p1505−1507 米国特許第6004444号明細書
これらのメソポーラス薄膜は、局所的に高い細孔構造規則性を有しているが、一般的に面内での長周期構造秩序性はなく、巨視的なスケールでは細孔の面内での方向性はランダムである。この巨視的スケールでの細孔の配向制御に関してはいくつか提案がなされている。
上記細孔の配向制御方法にはいくつかの問題点があった。
すなわち、上記非特許文献3に記載されている方法は、反応溶液の流れを利用し、そのシェアストレスで細孔を配向制御したものであるが、この手法では、細孔の配向制御性が高くなく、さらに広い面積にわたって均一な膜を形成することが難しいものであった。
また、性格上、工業プロセスには適しているとはいえないものであった。
一方、上記特許文献1に記載されている方法は、微細なキャピラリーを形成した、弾性のある樹脂製のスタンプを、基板上に押し付け、スタンプの溝の中に電気浸透流により反応溶液を流す方法である。
この方法では、狭いキャピラリーを流体が通る際のシェアストレスで細孔の配向制御がなされると同時に、ジュール熱が発生することでメソポーラスシリカ薄膜の形成が促進されるというものである。
しかし、この方法では、細孔の配向制御が可能なメソポーラスシリカ薄膜は、微細なパターンになっている必要があり、広い面積を均一に配向制御することは原理的に不可能である。
さらに、この両者の技術ともに、形成される構造は、チューブ状の1次元細孔がヘキサゴナルパッキングした構造である。
したがって、連続膜の場合には、理想的には膜の端部にしか細孔の開口部がないことになり、このことは、細孔内にゲスト種を担持させる目的に対しては、二次元ヘキサゴナル構造を不利なものにしている。
しかし、二次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカは、個々のメソ細孔が非常に異方性の高いナノ空間を与えるために、分子配向制御等に使用するには好ましく、この構造の細孔にゲストを導入する技術が非常に重要である。
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、一方向に制御されたチューブ状メソ細孔を有するメソポーラスシリカ薄膜をナノスケールの均一な幅の微細な溝で分断し、ゲスト種の細孔内への導入を容易にしたメソポーラス材料の薄膜及びその製造方法に関する。
本発明は、上記課題を解決するべくなされたもので、基板上に形成されたメソポーラス材料の薄膜において、前記メソポーラス材料薄膜が、実質的に均一な径のチューブ状メソ細孔がハニカムパッキングした細孔構造を有し、前記チューブ状メソ細孔がその膜面内において一方向に配向制御されており、かつ該薄膜が100ナノメートル未満の実質的に均一な幅の複数の溝で分断されていることを特徴とする。
また、本発明は、表面に構造の異方性を有する基板を準備する工程と、該表面に異方性を有する基板上に、チューブ状の細孔が一方向に配向制御されているメソポーラス材料薄膜を形成する工程と、該メソポーラス材料薄膜上にブロックポリマーを塗布しミクロ相分離構造を発現させる工程と、前記ミクロ相分離を起こしたブロックポリマーの一方の成分を選択的に除去する工程と、除去されずに残ったもう一方の成分をマスクとしてメソポーラス材料薄膜をエッチングする工程と、を含むことを特徴とするメソポーラス材料薄膜の製造方法である。
本発明によれば、一軸配向性の細孔構造を有するメソポーラス材料薄膜を、ブロックポリマーの相分離構造を利用して微細に分断することで、光学的透明性を保持したままで、細孔内に導入するゲスト種の細孔へのアクセシビリティを飛躍的に向上させることが可能である。
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のメソポーラス材料薄膜の模式図である。
本発明のメソポーラス材料薄膜中では、基板11と平行に形成されたチューブ状の細孔13が、面内で一方向に配向制御されている。
このメソポーラス材料薄膜12は、実質的に均一な幅の溝で分断されている。
この膜を分断する溝は、細孔の方向に垂直に形成されているのが最も望ましいが、この図に示すように、必ずしもその方向が制御されていなくても良い。
メソポーラス材料薄膜を分断する溝は、100nm未満が好ましく、30nm未満がさらに好ましく、20nm未満がなおさらに好ましい。
これ以上の幅の溝になると、膜の光学的に透明な性質が失われる傾向にあり、また、メソポーラス材料薄膜の面積が減少してしまう。
はじめに、メソポーラス材料薄膜から説明する。
本発明のメソポーラス材料薄膜の細孔は、界面活性剤分子集合体(ミセル)が形成するもので、ある条件においてはミセルを形成する分子の会合数が等しいために、同じ径の細孔が形成されるものである。
ミセルの形状は、球状、チューブ状、層状等種々の形態が知られているが、本発明に係わるメソポーラス材料薄膜を形成するミセルの形状は基本的にチューブ状のものである。
本発明でいうメソ細孔とは、IUPACの定義によるもので、2nmから50nmの範囲の径の細孔をいう。
本発明のメソポーラス薄膜において、細孔径は実質的に均一な径である。
ここでいう均一径の細孔とは、窒素ガス吸着測定の結果から、細孔径を算出する手法により求められた細孔径分布が、単一の極大値を有し、かつ該細孔径分布において、60%以上の細孔が10nmの幅を持つ範囲に含まれることを示す。
メソポーラス材料薄膜という言葉は、厳密には、中空の細孔を有するものを指すものであるが、本発明においては、界面活性剤を除去する前の、界面活性剤ミセルを保持した構造のものも包含する言葉として使用する。
本発明のメソポーラス材料薄膜は、チューブ状メソ細孔が一方向に配向制御されているという構造的特徴を有しているものであれば、細孔内から界面活性剤が除去されていても、界面活性剤が充填された状態であっても良い。
本発明のメソポーラス材料薄膜において、多孔質材料の細孔壁を形成する材料は、チューブ状メソ細孔が一方向に配向制御されているという細孔構造を有するものであれば、どのようなものでも適用可能であるが、シリカを成分として含む材料、特にシリカが好ましく用いられる。
本発明のメソポーラス材料薄膜において、面内での細孔の配向方向は、基板表面の構造異方性によって一方向に規定されている。
基板表面の構造異方性とは、例えば、結晶性基板上の特定の結晶面における原子配列の異方性や、基板上に形成された凹凸構造の異方性、基板上に形成された高分子化合物薄膜内の構造異方性等を指す。
本発明に適用できる、表面に異方性を有する基板は、チューブ状メソ細孔が一方向に配向制御された細孔構造を有するメソポーラス材料薄膜の形成という目的を達成しえるものであれば、特に制限は無く、どのようなものを用いても良い。
本発明に適用可能な基板について詳しく説明する。
まず、表面での原子配列の異方性を有する結晶性基板について説明する。
表面での原子配列の異方性を有する結晶面としては、例えば、ダイヤモンド構造の結晶構造を有する単結晶基板、または閃亜鉛鉱型構造の結晶構造を有する単結晶基板の(110)面が好ましく使用され、特にシリコンの(110)面が好ましく用いられる。
これらの表面では原子の特定の配列方向が一義的に決定されるため、界面活性剤集合体を配向させる能力を有する。
表面の原子配列が2回対称性を有するシリコン単結晶(110)面のような基板を用いたシリカメソ構造体薄膜中の細孔の配向制御は、本発明者らが発見し特開2000−233995号公報に記載されている。
これらの基板を使用する際には、清浄な結晶面を露出させる必要がある。
例えば、シリコン基板等の場合には、表面に存在する自然酸化膜を除去する必要がある。
この目的は、希フッ酸中で数分間表面を処理すること等の単純なプロセスによって比較的簡単に達成される。
次に、構造異方性を有する高分子化合物薄膜を形成した基板について説明する。
ここでは、ラングミュア−ブロジェット法とラビング法について説明するが、構造異方性を有する高分子化合物を基板上に形成することができる技術であれば、これ以外の手法でも用いることができる。
最初に、ラングミュア−ブロジェット法、すなわち高分子化合物のラングミュア−ブロジェット膜(LB膜)を形成する方法について簡単に説明する。
LB膜は、水面上に展開された単分子膜を基板上に移しとった膜であり、成膜を繰り返すことで所望の層数の膜を形成することができる。
本発明でいうLB膜とは、基板上に形成されたLB膜に熱処理等の処理を施し、累積構造を保ったままで化学構造を変化させたLB膜誘導体の単分子累積膜を包含する。
例えば、ポリアミック酸のアルキルアミン塩を水面上に展開し、LB法で膜を積層した後加熱することにより、ポリイミドLB膜を作製することができる。
このように作製したポリイミドLB膜中では、高分子鎖がLB膜作製時の基板の引き上げ方向に平行に配向することが、赤外吸光分析等により明らかにされている。
この基板表面の高分子膜の構造異方性ゆえに、高分子化合物のLB膜を形成した基板は、その上に形成するメソポーラス材料薄膜中のチューブ状細孔を一方向に配向制御することができる。
この技術は、やはり本発明者らが見出したもので、特開2001−058812号公報に記載されている。
続いて、ラビング処理を施した高分子化合物薄膜を形成した基板について説明する。
本発明のメソポーラス材料薄膜には、このラビング処理を施した高分子薄膜を形成した基板が特に良好に用いられる。
ラビング処理は、スピンコート等の手法により、基板上にポリマーのコーティングを施し、これを布等で一方向に擦る処理である。
ラビング布はローラーに巻き付けられており、回転するローラーを基板表面に接触させ、基板を固定したステージをローラーに対して一方向に移動させることによってラビングを行う。
ラビング布は使用する高分子材料に対して最適なものを選択するが、ナイロン、レーヨン等一般的なものを使用することができる。
ラビング強度は、ローラーの回転数、基板へローラーを押し付ける強度、及び基板を固定したステージの移動速度等のパラメータによって最適化される。
ラビング処理を施す高分子化合物は、後述するメソ構造体薄膜の形成プロセスに耐え得るもので、かつメソ構造体中の細孔の配向制御が可能なものであれば基本的に材質には限定はなく、ポリイミド等が好ましく用いられる。
ラビング処理によって基板表面の高分子化合物薄膜には2種類の構造異方性が誘起される。
一つは、高分子膜の表面を布で強くこすることによって表面につけられる微細な凹凸であり、ローラーを用いて一方向にラビングするためにこの凹凸構造は高い異方性を有することになる。
もう一つの異方性は、ラビング処理時に発生する熱によって高分子化合物がそのガラス転移点以上に加熱されつつ延伸されることによる、高分子鎖の配列異方性である。
このうち前者はラビング処理によって、ほとんど全ての高分子化合物薄膜に対して形成されるが、後者は高分子鎖の構造に基づく物性とラビング条件の相対的な関係において、ある条件において形成されると本発明者らは考察している。
この、ラビング処理を施した基板も、その表面の構造の異方性故に、その上に形成されるメソポーラス材料薄膜中のチューブ状細孔を一方向に配向制御することが可能である。
この技術も本発明者らが見出し、同じく特開2001−058812号公報に記載されている。
次に、基板上にメソポーラス材料の薄膜を作製する方法について説明する。
基板上へのメソポーラス材料薄膜の作製方法は二つの方法に大別される。
一つは、溶液中から基板表面への不均一核発生−核成長に基づくもので、もう一つはゾルーゲル法に基づく溶媒蒸発法と呼ばれる方法である。
前者に関しては、例えば、Chemistry of Materials誌第14巻p766−772に記載がなされており、後者に関しては、例えば、Nature誌第389巻p364−368に記載がなされている。
はじめに、溶液中から基板表面への不均一核発生−核成長に基づく方法について説明する。
この方法は、メソポーラスシリカ薄膜の作製に主に用いられる方法で、結晶成長に類似した方法でメソポーラス材料の薄膜を作製するものである。
この方法では、界面活性剤水溶液に目的の細孔壁構成材料の原料となる物質を添加した前駆体溶液中に、上述の基板を保持することによって、メソポーラス材料の薄膜が基板上に形成される。
この方法によるメソポーラス材料薄膜の形成に用いる反応容器21は、例えば図2のような構成のものである。
反応容器21の材質は、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定はなく、ポリプロピレンやテフロン(登録商標)のようなものを用いることができる。
反応容器21は、反応中に圧力がかかっても破壊されないように、さらにステンレスのような剛性の高い材質の密閉容器に入れることもある。
反応容器21内には、基板ホルダー23が例えば図2のように置かれており、基板25はこれを用いて保持される。
反応中、メソポーラス材料の形成は基板上のみならず、溶液中においても起こるために、溶液中の沈殿物が基板上に堆積してしまう。これを防ぐために、基板は反応中膜形成面を下向きにして溶液中に保持される。
反応溶液は、界面活性剤とアルコキシド等の目的無機材料の原料になる物質を含む溶液である。
細孔壁を形成する材料に応じて、無機成分原料の加水分解反応触媒である酸等を適当量添加する場合もある。
アルコキシドを用いる場合には、加水分解の結果生成するアルコールが水に可溶であるようなものが好ましく用いられる。
例えば、細孔壁がシリカの場合には、界面活性剤の酸性水溶液にテトラエトキシシラン、もしくはテトラメトキシシランを添加して反応溶液が調整される。
使用する界面活性剤は、4級アルキルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシドを親水基として含む非イオン性界面活性剤等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
使用する界面活性剤分子の長さは、目的のメソ構造の細孔径に応じて決められる。
また、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メシチレンのような添加物を加えても良い。
使用する酸も塩酸、硝酸のような一般的なものを使用することが可能である。
基板上に析出する膜の形状や構造は、界面活性剤、酸、無機成分の原料の濃度に大きく影響されるのみならず、基板表面の性質によっても影響を受ける。
したがって、使用する基板によって反応溶液組成を最適化して膜形成を行う必要がある。
このような条件で基板上にメソポーラス材料を析出させることができる。
析出させる際の温度には特に制約はなく、室温〜100℃程度の温度領域において選択される。
反応時間は数時間〜数ヶ月程度で、時間が長いほど厚いメソポーラス材料薄膜が得られる。
このようにして基板上に形成されたメソポーラス材料薄膜は、純水で洗浄した後に空気中で自然乾燥させ、最終的な薄膜が得られる。
以上のように、作製されたメソポーラス材料薄膜からテンプレートの界面活性剤ミセルを除去することで中空の細孔を有するメソポーラス材料薄膜を作製することができる。
界面活性剤の除去には、一般的な方法を用いることができ、焼成、紫外光照射により発生したオゾンによる酸化・分解、溶剤による抽出、超臨界状態の流体による抽出等の中から選択される。
例えば、メソポーラスシリカの場合には、空気中、550℃で10時間焼成することによって、細孔構造をほとんど破壊することなく、完全に界面活性剤を除去することができる。
焼成温度と時間は、細孔壁を形成する材料と使用する界面活性剤により、最適化されるのが好ましい。
細孔の配向制御を行うために基板表面に高分子化合物を作製した場合には、焼成によってメソポーラス材料薄膜と基板の間に存在する配向制御用高分子膜も除去され、基板上に直接配向制御されたメソポーラス材料薄膜が形成されている構造となる。
また、溶剤抽出等の手段を用いると、100%の界面活性剤の除去は困難ではあるものの、焼成に耐えられない材質の基板上にメソポーラス材料薄膜を形成することが可能である。
次に、溶媒蒸発法による膜形成について説明する。
溶媒蒸発法は、臨界ミセル濃度以下の界面活性剤と、細孔壁を形成する無機物の前駆体とを含む水溶液または有機溶媒/水混合溶液を、スピンコート、ディップコート、ミストコート等によって基板上に塗布するもので、コーティング中の溶媒の乾燥による界面活性剤濃度の上昇に従ってメソ構造が形成されていくものである。
有機溶媒としてはアルコール等が用いられる。
この方法は、比較的反応条件が穏やかなために基板材質の制約が小さく、また短時間で膜作製が可能である等の利点を有している。
スピンコートやディップコートを行うための装置は、一般的なものを用いることができ、特に制約は無いが、場合によっては溶液の温度を制御するための手段及びコーティングを行う雰囲気の温度、湿度を制御するための手段を設ける場合もある。
例として、ディップコーティングを用いたメソポーラス材料薄膜の作製方法について説明する。
ディップコーティングに用いる装置の一例を図3に模式的に示す。
図3において、31は容器、32は基板、33は前駆体溶液である。
前駆体溶液33は臨界ミセル濃度以下の界面活性剤と、無機成分の前駆物質を含む水溶液もしくは有機溶液もしくは有機溶液と水の混合溶液で、加水分解重縮合触媒として作用する酸等が添加される場合もある。
例えば、メソポーラスシリカ薄膜を作製する場合の溶液は、界面活性剤をアルコール/水混合溶媒に溶解し、ここに、加水分解触媒である酸を添加したものである。
使用する界面活性剤は、不均一核発生−核成長による作製方法と同様に、4級アルキルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシドを親水基として含む非イオン性界面活性剤等が用いられるが、これらに限定されるものではない。
使用する界面活性剤分子の長さは、目的のメソ構造の細孔径に応じて決められる。
また、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メシチレンのような添加物を加えても良い。
メソポーラス材料薄膜を作製する基板32は、ホルダー34を用いてロッド35に固定され、zステージ36によって上下させる。
成膜時、反応溶液33は必要に応じてヒーター38と熱電対37を用いて所望の温度に制御される。
溶液温度の制御性を向上させるために、容器全体を不図示の断熱容器に入れることもある。
反応溶液を塗布した基板は、温度や湿度の制御が可能な装置の中で乾燥させることが好ましい。
乾燥工程の後に、高湿度雰囲気中でエージングを行うこともある。
ディップコーティング、スピンコーティングの他に、Nature第405巻p56に記載されているペンリソグラフィー法やインクジェット法も、溶媒蒸発法に基づく有効なメソポーラス材料薄膜作製方法である。
これらの方法を用いれば、基板上の所望の箇所にメソポーラス材料薄膜をパターニングすることが可能である。
ペンリソグラフィー法は、反応溶液をインクのように使い、ペン先から塗布しラインを描くもので、ペン形状、ペンや基板の移動速度、ペンへの流体供給速度等を変化させることで、自由にライン幅を変化させることが可能であり、μmオーダーからmmオーダーまでのライン幅で描くことが可能である。
直線、曲線等任意のパターンを描くことが可能であり、基板に塗布された反応溶液の広がりが重なるようにすれば、面状のパターニングも可能である。
また、不連続なドット形状のパターンを描きたい場合は、インクジェット法がさらに有効である。
これは、反応溶液をインクのように使い、インクジェットノズルから一定量を液滴として吐出し塗布するものである。
また、基板に着弾した反応溶液の広がりが重なるように塗布すれば、ライン状のパターニングも面状のパターニングも可能である。
この溶媒蒸発法によって作製されたメソポーラス材料薄膜の場合にも、不均一核発生−核成長で作製した膜の場合と同様な方法によって、細孔内から界面活性剤を除去し、中空の細孔を有するメソポーラス材料薄膜を作製することができる。
本発明のメソポーラス材料薄膜中の細孔構造は、透過電子顕微鏡及びX線回折分析で評価することが可能である。
ただし、本発明のメソポーラス材料薄膜の場合には、チューブ状細孔は、基板に平行に形成されるために、面内での配向を評価する場合には、面内X線回折分析を使用することが必要になる。
本発明の一軸配向性のチューブ状細孔を有するメソポーラス材料薄膜を面内X線回折によって評価した場合、面内のロッキングカーブには、180°おきに2本の回折ピークが観測されることになる。
本発明のメソポーラス材料薄膜では、細孔の配向方向は、基板の異方性の方向によって規定されており、ラビング処理の方向、またはLB膜成膜時の基板の引き上げ方向に対して、垂直な方向に配向することが多い。
但し、基板上の高分子化合物の構造や、使用する界面活性剤によっては、これと逆の方向、すなわち、ラビング処理の方向、またはLB膜成膜時の基板の引き上げ方向に対して、平行な方向に配向することもある。
本発明で作製したメソポーラス材料薄膜は、実質的に均一なメソ細孔を有することを特徴としている。
細孔のサイズと細孔径分布は、窒素ガスの等温吸着線測定結果から求めることができる。
本発明のメソポーラス材料薄膜は、窒素ガス吸着等温線測定結果から、Barret−Joyner−Halenda(BJH)法によって求められた細孔径分布が、2nm〜50nmの範囲に単一のピークを有し、求められた細孔径分布において、60%以上の細孔が幅10nmの細孔径範囲に含まれることを特徴としている。
本発明のメソポーラス材料薄膜は、以上のようにして作製したメソポーラス材料薄膜を、均一な幅の溝で分断した構造を有している。
この分断の方法について説明する。
均一な微細の溝で膜を分断するために、本発明では、ブロックポリマーの相分離現象を利用している。
但し、メソポーラス材料薄膜を微細に分断する方法は、この方法に限定されるわけではなく、均一な幅で分断できる方法であれば、どのような方法でも良好に用いることが可能である。
ブロックポリマーは、異なる構造の高分子鎖が、共有結合して形成される高分子である。
例えば、二つの異なる部分から構成されるものをジブロックポリマー、三つの異なる部分から構成されるものをトリブロックポリマーという。
リビング重合法を用いると、このブロックポリマー中のそれぞれの構成成分の分子量を精密に制御することができる。
リビング重合法には、カチオンリビング重合法、アニオンリビング重合法、リビングラジカル重合法がある。
ブロックポリマーを構成する各成分の化学的な性質が大きく異なる場合、ブロックポリマーの中で微細な相分離(ミクロ相分離)が起こり、二つのブロックの組成比に応じて、規則的なナノ構造が形成される。
例えば、ジブロックポリマーの場合には、ラメラ相(層状構造)、ヘキサゴナル相(シリンダー状構造)、キュービック相(球状構造)、キュービック相(ダブルジャイロイド構造)が形成される。
トリブロックポリマーの場合には、ミクロ相分離によって発現される構造はさらに複雑で多岐に富んでいる。
ミクロ相分離を起こしたブロックポリマーは、成分間の化学的性質の差を利用して、その一成分のみを選択的に除去することが可能である。
例えば、UV/O雰囲気下での処理や溶媒での選択溶出などが可能である。
本発明のメソポーラス材料薄膜は、連続的なメソポーラス材料薄膜上に、相分離を起こすブロックポリマーの薄膜を成膜し、ミクロ相分離を起こさせた後に、片方の成分を選択的に除去し、残った方の成分をマスクとしてエッチングすることによって、メソポーラ材料薄膜を微細にパターニングしたものである。
したがって、用いるブロックポリマーは、シリンダー構造を示すもので、膜厚方向には単一のシリンダーを形成する膜厚で使用するか、もしくは、ラメラ構造のもので、層構造が基板と垂直に形成されるようなものを用いる。
この工程を、図4を用いて説明する。
基板41上のメソポーラス材料薄膜42に、ブロックポリマーをコートし、規則的ミクロ相分離構造を発現させる(B)。
このために、基板を加熱する等のプロセスを施すこともある。
次に、相分離した構造にUV/O処理を行うなどして、片一方の成分を選択除去する(C)。
この後、膜上に残った成分をマスクにして、下地のメソポーラス材料薄膜をエッチング除去する(D)。
最後に、マスクとして使用した成分を焼成等によって除去し(E)、微細な溝で分断された本発明のメソポーラス材料薄膜が得られる。
このようにブロックポリマーの相分離構造を用いて膜を分断する場合、相分離構造の大きさが、通常は20nm未満となるので、非常に微細な溝で分断することが可能である。
この幅は、可視光の波長に比較してずっと小さいので、本発明のメソポーラス材料薄膜は、細かに分断されているにもかかわらず、分断前と同様に、可視光に対して透明である。
このことは、本発明の膜を光学材料として使用することが可能であることを示している。
本発明のメソポーラス材料薄膜は、チューブ状細孔が配向制御されたものであるが、勿論同じプロセスによって、細孔の配向制御を行っていないメソポーラス薄膜の微細分断も可能である。
この場合にも、チューブ状細孔が分断されるので、後述するように、ゲスト種の細孔内への導入が容易になる。
さらに、本発明は、この配向したチューブ状細孔内に、共役高分子化合物を保持した複合材料をも包含する。
この複合体薄膜について説明する。
面内で配向方向が一方向に制御されたメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に、共役高分子を導入した例に関しては、本発明者らの研究があり、Journal of the American Chemical Society誌第126巻p4476−4477に内容が記載されている。
この研究では一方向に制御されたメソ細孔内で高分子鎖が高度に配向制御されることが明示されている。
本発明の、微細な溝で分断された構造を有するメソポーラス材料薄膜の場合にも、同様のプロセスで共役高分子化合物を細孔内に導入することが可能である。
共役高分子化合物を導入する場合、先ず、細孔内部表面を疎水処理することが好ましい。
細孔内を疎水性にすることで、高分子化合物の細孔への導入は著しく改善される傾向がある。
例えば、フェニルジメチルクロロシランや1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンで薄膜を処理することによって、細孔内のシラノール基に有機物を結合させ、細孔内を効率的に疎水化することが可能である。
しかし、細孔内疎水化処理に使用可能なものは、これに限定されず、また、シランカップリング剤以外のものであっても、同様な効果が得られるものであれば使用可能である。
細孔表面の処理とは、具体的には、メソポーラス材料薄膜を目的のシランカップリング剤に浸漬するような処理を指すが、修飾の方法はこれに限定されるわけではなく、例えば、気相中において反応させるような方法も適用可能である。
カップリング反応を行う場合には、その反応の触媒としてはたらく物質を添加しても良い。
添加する触媒としては、例えばトリメチルシランのようなものが使用される。
細孔内の疎水処理に続いて、細孔内に共役高分子化合物を導入する。
共役高分子としては、さまざまなものが使用可能である。
例示すると、ポリフェニレンビニレン骨格を有するもの、ポリチオフェン骨格を有するもの、ポリピロール骨格を有するもの、ポリフルオレン骨格を有するもの等が使用可能であるが、これらに限定されるわけではない。
共役高分子化合物の細孔への導入法としては、例えば、共役高分子化合物の溶液に、前記配向制御された細孔構造を有するメソポーラスシリカ薄膜を浸漬する方法や、共役高分子の溶液を基板上に滴下して加熱する方法等、いくつかの方法を用いることが可能である。
本発明においては、細孔内に共役高分子化合物を導入することができる方法であれば、どのような方法を用いても良い。
高分子材料の溶液に接触させて細孔内に高分子材料を導入した場合には、膜の外表面、及び微細な溝の部分に余分な共役高分子材料が付着しているので、これを除去する工程を施す。
このようにして作製した、細孔内に共役高分子化合物を保持した複合材料薄膜は、偏光子下で観察するとある偏光方向でのみ着色が認められ、これは、高分子化合物が細孔内で配向していることを示している。
その配向方向は、面内X線回折分析で測定された細孔の配向方向と一致している。
共役高分子の異方性は吸収のみならず、発光においても観測される。
強い蛍光発光を示す共役高分子化合物を細孔内に導入した場合には、吸収の偏光依存性に加えて、膜から放出される蛍光も同様に偏光している。
これは、蛍光スペクトルの検出器の手前に偏光子を置き、偏光角度を変化させながらスペクトルを測定することで確かめられる。
本発明の膜からは、面内X線回折分析で測定された細孔の配向方向と同じ方向に偏光した蛍光が発せられる。
蛍光性の共役高分子化合物を細孔内に導入した本発明の薄膜は、微細な溝の存在に関らず、光の散乱のような現象は観測されなかった。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例は、ラビング処理を施したポリイミドをコートした基板を用いて、不均一核発生−核成長に基づく方法によって、ラビング方向に垂直な方向に一軸配向したチューブ状細孔から構成されるメソポーラスシリカ薄膜を作製し、ブロックポリマーのシリンダー状ミクロ相分離構造を利用して、微細に膜を分断した例である。
アセトン、イソプロピルアルコール、及び純水で洗浄し、オゾン発生装置中で表面をクリーニングした石英ガラス基板にスピンコートによって、ポリアミック酸AのNMP(N-メチルピロリドン)溶液をスピンコートにより塗布し、200℃で1時間焼成して、下記の化学式1に示す構造を有するポリイミドAを形成した。ポリイミドAの膜厚は100nmである。
これに対して、表1の条件でラビング処理を施し、基板として用いた。
ラビング後のポリイミド薄膜中では、分子の配向状態はランダムではなく、ポリイミドの分子鎖が、ラビング方向に配向していることが、偏光を用いた赤外吸光分析によって明らかになった。
また、同じ膜を原子間力顕微鏡を用いて測定した結果、ラビング方向に幅数nm〜数十nmの微細な溝が配列している様子が確認された。
この基板上に、メソポーラスシリカ薄膜を形成する。
本実施例で用いた界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン−10−セチルエーテル(C16EO10と略記、商品名Brij56)である。
この界面活性剤を純水に溶解した後、塩酸とテトラエトキシシランを添加し、最終的な溶液中の各成分のモル比が、TEOS:HO:HCl:C16EO10=0.10:100:3.0:0.10となるようにした。
この溶液中に、上記ラビング処理を施したポリイミドをコートした基板を、ポリイミド面を下向きにして保持し、80℃で3日間反応させ、メソポーラスシリカ薄膜を作製した。
反応溶液から取り出した基板は純水で十分に洗浄した後に風乾させた。
基板上には、透明な膜が形成されており、均一な干渉色が確認された。
この膜をX線回折分析で測定した結果、膜厚方向に5.1nmの周期構造を有することが確認された。
この膜の断面の透過電子顕微鏡観察結果より、この薄膜中では、チューブ状細孔がハニカムパッキングした構造であることが明らかとなった。
次に、この膜について面内X線回折分析を試みた。
その結果、面内において、7.4nmの周期構造があることが確認された。
この回折ピークを与える構造について、面内での配向分布を調べるため、面内ロッキングカーブを測定した。
その結果、180°おきに2本の回折ピークが観測され、この結果から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ薄膜中では、チューブ状の細孔が一方向に配向していることがわかった。
その配向方向は、ラビング処理の方向に対して垂直な方向であった。
チューブ状細孔の一軸配向は、透過電子顕微鏡でも確認され、膜厚方向に関して膜全体にわたって完全に細孔が配向制御されていることが確認された。
この膜の細孔径に関する情報を得るために、この薄膜を焼成し、細孔内から界面活性剤を除去し、窒素ガス吸着等温線を測定した。
その結果、吸着はタイプIVの挙動を示した。
この結果をBarret−Joyner−Halenda(BJH)法で解析した結果、本実施例で作製したメソポーラスシリカ薄膜中の細孔径分布は3.2nmに単一のピークを有する狭い分布で、細孔の80%以上が10nmの分布内にあった。
この膜は、焼成によって膜厚方向には構造の収縮が起こるが、面内では細孔構造が変化しないことが確認されている。
次に、焼成前の、細孔内に界面活性剤を保持した状態のメソポーラス薄膜に対して、ブロックポリマーをコートした。
使用したブロックポリマーは、ポリスチレンとポリイソプレンのジブロックポリマー(PS−b−PI)で、分子量Mw=290000、Mw/Mn=1.12のものである。
これらは、リビングアニオン重合で合成した。
このブロックポリマーにおいて、ポリイソプレンの体積比は29.7%と求められた。
このブロックポリマーを1重量%の濃度になるようにトルエンに溶解し、基板上にスピンコートした。
乾燥後に膜厚を測定したところ、50nmであった。
この膜を空気中において170℃で60時間加熱し、ミクロ相分離の規則構造を発現させた。
同じ条件でシリコン基板上に塗布し、同じ条件で熱処理を行った膜について、走査型電子顕微鏡で観察し、シリンダー構造のミクロ相分離構造が確認され、シリンダーは基板と平行に形成されていることがわかった。
シリンダーはポリイソプレンで、面内において、その径は約20nmであった。
膜厚から判断して、膜厚方向には単一のシリンダーが形成されていると考えられる。
この膜を形成したメソポーラスシリカ薄膜をUVオゾン発生装置内に入れ、50℃で15分間処理した後24時間メタノールに浸漬した。
この処理によって、ポリイソプレン成分のみが選択的に除去できる。
以上の工程でポリイソプレン成分を除去したメソポーラスシリカ薄膜に対して、続いてドライエッチングのプロセスを施した。
ドライエッチングはCFをエッチングガスに用いて150Wのパワーで行った。
エッチング工程を終えた後、基板上のメソポーラスシリカ薄膜は、ポリスチレンがついたままの状態で、550℃で焼成し、界面活性剤とポリスチレンを除去した。
焼成後のメソポーラスシリカ薄膜を走査型電子顕微鏡で観察した結果、メソポーラスシリカ薄膜が、約20nmの均一な幅の溝で分断されていることが確認された。
この膜は、光学的に透明な状態を保持していた。
[実施例2]
本実施例は、実施例1と同様のメソポーラスシリカ薄膜を、溶媒蒸発法に基づいたディップコート法で作製し、ブロックポリマーの相分離構造を用いて微細な溝で分断した例である。
石英ガラス基板上に、実施例1と同じ手順で同じポリイミドを塗布し、同じ条件でラビング処理を施した。
この基板の上に、ディップコート法でメソポーラスシリカ薄膜を形成する。本実施例でも、メソポーラスシリカ薄膜の作製に、実施例1と同じ界面活性剤を用いた。
使用した前駆体溶液の組成は、C16EO100.08:TEOS1.0:EtoH22:HO 5:HCl 0.004となるように調整した。
この前駆体溶液に上記基板を浸漬し、3mm/secの速さで引き上げた。
この膜を40℃−50%の雰囲気に24時間保持し、細孔内に界面活性剤を保持したメソポーラスシリカ薄膜を作製した。
基板上には、透明な膜が形成され、均一な干渉色が確認された。
この膜をX線回折分析で測定した結果、膜厚方向に4.6nmの周期構造を有することが確認された。
この膜の断面の透過電子顕微鏡観察結果より、この薄膜は、チューブ状細孔がハニカムパッキングした構造を有することが明らかとなった。
この薄膜について面内X線回折分析を試みた。
その結果、面内において、7.2nmの周期構造があることが確認された。
この回折ピークを与える構造について、面内での配向分布を調べるため、面内ロッキングカーブを測定した。
その結果、180°おきに2本の回折ピークが観測され、この結果から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ薄膜中では、チューブ状の細孔が一方向に配向していることがわかった。
面内ロッキングカーブのピークの半値幅は、実施例1で作製した膜よりも小さく、面内での配向分布が狭いことがわかった。
配向方向は、ラビング処理の方向に対して垂直な方向であり、これは実施例1のメソポーラスシリカ薄膜の場合と同様である。
チューブ状細孔の一軸配向は、透過電子顕微鏡でも確認され、膜厚方向に関して膜全体にわたって完全に細孔が配向制御されていることが確認された。
この膜の細孔径に関する情報を得るために、この薄膜を焼成し、細孔内から界面活性剤を除去し、窒素ガス吸着等温線を測定した。
その結果、吸着はタイプIVの挙動を示した。
この結果をBarret−Joyner−Halenda(BJH)法で解析した結果、本実施例で作製したメソポーラスシリカ薄膜中の細孔径分布は3.0nmに単一のピークを有する狭い分布で、細孔の80%以上が10nmの分布内にあった。
この膜は、焼成によって膜厚方向には構造の収縮が起こるが、面内では細孔構造が変化しないことが確認されている。
面内方向での収縮の程度は、実施例1で作製した膜の場合よりも大きかった。
界面活性剤を細孔内に保持したままの状態で、この配向性細孔を有するメソポーラスシリカ薄膜上に、実施例1と同じブロックポリマーを同じ条件でコート、熱処理し、ポリイソプレン成分を除去した。
それに続いて、実施例1と同じ条件でドライエッチングを施し、膜上に残存しているポリスチレン成分をマスクにしてメソポーラスシリカ薄膜を分断した。
最後に、実施例1と同様に、550℃で焼成し、ポリスチレンと界面活性剤を除去した。
焼成後のメソポーラスシリカ薄膜を走査型電子顕微鏡で観察した結果、メソポーラスシリカ薄膜が、約20nmの均一な幅の溝で分断されていることが確認された。この膜は、光学的に透明な状態を保持していた。
[実施例3]
本実施例は、実施例1で作製した、均一な溝で分断されたメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に、発光性の共役高分子化合物であるpoly[2−methoxy−5−(2’−ethy−hexyloxy)−1,4−phenylene vinylene](MEH−PPVと略記)を導入し、偏光した発光を示す、蛍光性薄膜を作製した例である。
実施例1で、焼成により中空の細孔構造とした、微細溝で分断されたメソポーラスシリカ薄膜を、まず、シランカップリング処理し、細孔表面を疎水化する。
具体的には、トリメチルクロロシランと1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンの1:1混合物中に焼成直後の膜を浸漬し、2時間放置した後、エタノールで洗浄して余分なシランカップリング剤を除去した後に、乾燥させた。
これに続いて、細孔内にMEH−PPVを導入する。
精製し、低分子量成分を除去したMEH−PPV 0.12gを9mlのクロロベンゼンに溶解し、この溶液に上述のシランカップリング処理を施したメソポーラスシリカ膜を浸漬した。
この状態で、細孔内にMEH−PPVを導入することができる。
6時間、MEH−PPV溶液と基板を接触させた後、基板をクロロフォルムで洗浄し、該表面に付着した余分な高分子化合物を除去し、乾燥させた。
この、MEH−PPVの導入工程は、本発明の、細孔を微細な溝で分断した薄膜を用いた場合には、迅速に進行し、膜を分断していない場合に比較して短時間のうちに膜全体に共役高分子化合物を導入することができた。
また、高分子化合物の導入量も多いため、光学密度の高い薄膜が作製できた。さらに、導入量の再現性も高かった。
乾燥後の薄膜を観察すると、赤色に着色しており、MEH−PPVの細孔内への導入が示唆された。
可視域の偏光吸収スペクトルを測定した結果を図5に示す。
偏光方向が細孔の配向方向に平行な場合(ラビング方向に垂直な場合)には非常に強い吸収が観測されている一方で、偏光方向が細孔の配向方向に垂直の場合(ラビング方向に平行な場合)には、ほとんど吸収が観測されなかった。
最も吸収が強かったのは、細孔方向と偏光方向が平行な場合であり、このことから、本発明の共役高分子化合物を保持したメソポーラスシリカ薄膜中においては、共役高分子化合物の分子鎖が細孔の配向方向に配向制御されていることがわかる。
次にこの薄膜から放出される蛍光の偏光挙動について測定を行った。
発光挙動に関しては、励起光の偏光方向と蛍光の偏光方向の二つを独立に変化させて測定を行った。
本実施例で作製したMEH−PPV−配向性メソポーラスシリカ薄膜からの発光は、細孔の配向方向に対して平行な偏光で励起し、同じ角度に蛍光側の偏光子をセットして観測した場合に、最も強度が強くなった。
反対に、細孔方向に垂直な偏光方向の光で励起し、蛍光の細孔方向に垂直な偏光成分を観測した場合には、ほとんど発光が観測されなかった。
本実施例で、配向性ナノ空間を用いたこのような偏光発光薄膜が、簡単なプロセスで再現性良く、短時間で作製できることが示された。
本発明のメソポーラス材料薄膜の細孔構造及び分断された膜の構造を説明するための模式図である。 本発明において、不均一核発生−核成長法でメソポーラス材料薄膜を作製するための反応容器の模式図である。 本発明において、溶媒蒸発法でメソポーラス材料薄膜を作製する方法のうち、ディップコート法に用いられる成膜装置の模式図である。 本発明において、メソポーラス材料薄膜を微細な溝で分断するプロセスの各工程を説明するための模式図である。 本発明の実施例3で作製された、MEH−PPVを細孔内に導入したメソポーラスシリカ薄膜の吸収スペクトルの偏光依存性を示す結果である。
符号の説明
11 基板
12 メソポーラス材料薄膜
13 チューブ状細孔
14 溝
21 (テフロン(登録商標)製)反応容器
22 蓋
23 基板ホルダー
24 Oリング
25 基板
31 容器
32 基板
33 前駆体溶液
34 基板ホルダー
35 ロッド
36 zステージ
37 熱電対
38 ヒーター
41 基板
42 メソポーラス材料薄膜
43 ブロックポリマーの除去されずに残る成分
44 ブロックポリマーの除去される成分

Claims (13)

  1. 基板上に形成されたメソポーラス材料の薄膜において、
    前記メソポーラス材料薄膜が、実質的に均一な径のチューブ状メソ細孔がハニカムパッキングした細孔構造を有し、前記チューブ状メソ細孔がその膜面内において一方向に配向制御されており、かつ該薄膜が100ナノメートル未満の実質的に均一な幅の複数の溝で分断されていることを特徴とするメソポーラス材料薄膜。
  2. 前記細孔中に両親媒性分子の分子集合体が充填されていることを特徴とする請求項1記載のメソポーラス材料薄膜。
  3. 前記チューブ状メソ細孔の細孔壁を形成する材料がシリカを成分として含むことを特徴とする請求項1又は2記載のメソポーラス材料薄膜。
  4. 窒素ガス吸着測定により求められた前記メソ細孔の径の分布が、単一の極大値を有し、かつ該細孔径分布において、60%以上の細孔が10nmの幅を持つ範囲に含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のメソポーラス材料薄膜。
  5. 前記チューブ状メソ細孔内の少なくとも一部に、共役高分子化合物を保持していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のメソポーラス材料薄膜。
  6. 前記チューブ状メソ細孔内に保持された共役高分子化合物が、チューブ状メソ細孔の配向方向に略平行に配向していることを特徴とする請求項5記載のメソポーラス材料薄膜。
  7. 細孔内の共役高分子が励起状態から定常状態に遷移する際に、放出される発光の偏光状態が細孔の配向方向に平行な方向に制御されていることを特徴とする請求項5又は6記載のメソポーラス材料薄膜。
  8. 前記基板が、表面に構造の異方性を有する基板である請求項1から7のいずれか1項記載のメソポーラス材料薄膜。
  9. 表面に構造の異方性を有する基板を準備する工程と、
    該表面に異方性を有する基板上に、チューブ状の細孔が一方向に配向制御されているメソポーラス材料薄膜を形成する工程と、
    該メソポーラス材料薄膜上にブロックポリマーを塗布しミクロ相分離構造を発現させる工程と、
    前記ミクロ相分離を起こしたブロックポリマーの一方の成分を選択的に除去する工程と、
    除去されずに残ったもう一方の成分をマスクとしてメソポーラス材料薄膜をエッチングする工程と、を含むことを特徴とするメソポーラス材料薄膜の製造方法。
  10. チューブ状細孔から界面活性剤を除去する工程を含むことを特徴とする請求項9記載のメソポーラス材料薄膜の製造方法。
  11. チューブ状細孔内に共役高分子化合物を導入する工程を含むことを特徴とする請求項10記載のメソポーラス材料薄膜の製造方法。
  12. 前記表面に構造の異方性を有する基板を準備する工程が、表面に構造異方性を有する高分子化合物薄膜を形成した基板を作製する工程であることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載のメソポーラス材料薄膜の製造方法。
  13. 前記表面に構造異方性を有する高分子化合物薄膜を形成した基板を作製する工程が、基板上に高分子化合物を塗布し、ラビング処理を施す工程であることを特徴とする請求項12記載のメソポーラス材料薄膜の製造方法。
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