JP2010180113A - メソポーラス酸化チタン膜およびその製造方法 - Google Patents

メソポーラス酸化チタン膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基板表面に対し、孔の配向方向が傾斜しているメソポーラス酸化チタン膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向方向のなす配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向しているメソポーラス酸化チタン膜。両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する工程と、酸化チタンの前駆体物質と両親媒性物質と水とを含有する反応溶液を準備する工程と、前記基板上に前記反応溶液を塗布して上記のメソポーラス酸化チタン膜を形成する工程とを有するメソポーラス酸化チタン膜の製造方法。
【選択図】図1(b)

Description

本発明は、メソポーラス酸化チタン膜およびその製造方法に関する。
多孔質材料は、吸着、分離など様々な分野で利用されている。なかでも、2nmから50nmの孔径をもつメソポーラス材料は、2nm以下の孔径を持つマイクロポーラス材料の孔には導入できない分子量の大きな化合物を導入することができるために注目を集めている。
このメソポーラス材料は、酸化ケイ素を中心として多くの研究が行われてきた。しかし、光学分野への応用を考えると,より屈折率の高い酸化チタン、酸化スズ等のその他の酸化物への展開が望まれていた。
これらのメソポーラス材料は、小さな領域(たとえば1μm以下程度)における孔の構造規則性を有しているが、一般的にそれより大きな領域における構造規則性はない。そのために、光学素子への応用を考えると、メソポーラス材料の孔が広い範囲の孔径にわたって構造規則性をもつことが望まれていた。
特許文献1には、金属酸化物の前駆体を含む反応溶液を塗布した基板を、水蒸気を含む雰囲気中に保持することにより、基板上の金属酸化物からなるメソポーラス膜の孔を一つの方向に配向させる技術が開示されている。
特開2004−91318号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術によって形成される孔の配向方向は、基板表面に対して平行である。さらにその孔はヘキサゴナル構造を形成しているが、その(01)面の法線方向は、基板に垂直である。すなわち、メソポーラス薄膜中での細孔の、基板に対する配向方向は、一義的に決定される。このような孔の配向方向は、一部の応用、たとえば位相差板としての応用を考えたときには、Aプレートとしての利用に適している。しかし、特定の光学的な応用、たとえば位相差板としての応用を考えたときには、Oプレートとしての利用を考えたときには、その孔の配向方向が基板に対して傾いていることが望まれる。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、基板表面に対し、孔の配向方向が傾斜しているメソポーラス酸化チタン膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するメソポーラス酸化チタン膜は、基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、基板に対して傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向していることを特徴とする。
また、上記の課題を解決するメソポーラス酸化チタン膜は、基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、基板に対して平行にヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ基板面内にわたって一方向に配向制御されたシリンダー状の孔を有し、さらに前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上30度未満の範囲にあることを特徴とする。
また、上記の課題を解決するメソポーラス酸化チタン膜の製造方法は、両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する工程と、酸化チタンの前駆体物質と両親媒性物質と水とを含有する反応溶液を準備する工程と、前記基板上に前記反応溶液を塗布し、酸化チタンメソ構造体膜を作製する工程とを有することを特徴とする。
本発明によれば、基板表面に対し、孔の配向方向が傾斜しているメソポーラス酸化チタン膜、およびその製造方法を提供することができる。
本発明に係るシリンダー状の孔の配向方向が傾斜したメソポーラス酸化チタン膜を斜めから見た模式図である。 本発明に係るシリンダー状の孔の配向方向が傾斜したメソポーラス酸化チタン膜の膜断面を示す断面模式図である。 本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜の孔の配向方向の基板上に射影した射影方向を説明するための模式図である。 本発明に係るヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して傾斜している構造を説明するための模式図である。 本発明に係るヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して傾斜していない(90°の角度をもつ)構造を説明するための模式図である。 本発明のメソポーラス酸化チタン膜の孔の配向方向を説明する説明図である。 本発明のメソポーラス酸化チタン膜の孔の配向方向を基板上に射影した射影方向の一実施態様を説明する説明図である。 本発明の比較として、孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内で一定方向に配向していない状態を示す模式図である。 本発明に係るシリンダー状の孔により構成されるヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して傾斜していることを説明する説明図である。 本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜の製造工程を示す概念図である。 実施例1のメソポーラス酸化チタン膜について、Bragg−Brentano配置のエックス線回折分析の結果を示す図である。 実施例1のメソポーラス酸化チタン膜について、面内エックス線回折分析のラジアルスキャンの結果を示す図である。 実施例1のメソポーラス酸化チタン膜について、面内エックス線回折分析の面内ロッキングカーブ測定の結果を示す図である。 実施例1のメソポーラス酸化チタン膜の断面透過型電子顕微鏡写真を示す。 実施例1の酸化ケイ素の前駆体と反応させたメソポーラス酸化チタン膜について、Bragg−Brentano配置のエックス線回折分析を行った結果を示す図である。 実施例1の界面活性剤の除去を行ったメソポーラス酸化チタン膜について、Bragg−Brentano配置のエックス線回折分析を行った結果を示す図である。 実施例1の酸化ケイ素の除去を行ったメソポーラス酸化チタン薄膜について、Bragg−Brentano配置のエックス線回折分析を行った結果を示す図である。 本発明に係るヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して傾斜している構造を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜は、基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、基板に対して傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向していることを特徴とする。
また、本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜は、基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、基板に対して平行にヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ基板面内にわたって一方向に配向制御されたシリンダー状の孔を有し、さらに前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上30度未満の範囲にあることを特徴とする。
図1は、本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜の一実施態様を示す。図1(a)は基板に対して傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向している、本発明のメソポーラス酸化チタン膜を斜めから見た模式図、図1(b)はこのメソポーラス酸化チタン膜の膜断面を示す断面模式図、図1(c)はこのメソポーラス酸化チタン膜の孔の配向方向を基板上に射影した射影方向を説明するための図である。
図1(d)は、基板に対して実質的に平行に、ヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ、基板全体にわたって面内で一方向に配向制御された、シリンダー状の孔を有し、さらに、前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上、30度未満の範囲にある、本発明のメソポーラス酸化チタン膜の構造を説明するための模式図である。
図1(e)は、図1(d)の対照として、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に垂直に配向している、従来のメソポーラス酸化チタン膜の構造を説明するための模式図である。ヘキサゴナル構造とは、厳密にはシリンダー状細孔が正6角形の断面形状に成るように、最密パッキングしているものを指すが、ここでは、正6角形が変形した構造のものも含む。メソポーラス膜を作製する場合には、後述する界面活性剤を除去する工程において、膜が厚さ方向に選択的に収縮することが多く、断面は正6角形にならないことが多い。
図1において、100は基板、101はメソポーラス酸化チタン膜の壁部、102は壁部に囲まれたシリンダー状の孔、103は基板面、104は孔の配向方向、105は孔の配向方向104を基板上に射影した射影方向、θは孔の配向方向のなす配向角度、106は、ヘキサゴナル構造の(01)面、107は、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向、108は、シリンダー状細孔の配向方向、109は、(01)面の法線方向と基板面のなす角を示す。本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜は、図1(a)から(c)に示すように、孔の配向方向のなす配向角度が基板面に対してθで示す角度をもって配向している。孔の配向方向104を基板上に射影した射影方向を105で示す。本発明のメソポーラス酸化チタン膜においては、105の方向、または、108の方向が基板面内で一定方向にそろっている。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜では、膜中の、ヘキサゴナル構造を形成するシリンダー状孔の、基板に対する配向方向を、基板に垂直な方向から傾斜させることにより、特定の光学的な応用、たとえば位相差板のOプレートに適応した構造となる。この幾何学的配置を満たす一つの構造は、以下のようなものである。シリンダー状の孔がヘキサゴナル構造をとり、孔の配向方向は基板に対して実質的に平行なメソポーラス膜として従来知られている構造では、図1(e)に示すように106で示す(01)面の法線方向(107)と基板面は垂直(角度90°)となっている。これに対し、本発明にかかるヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板に対して傾斜している構造では、図1(d)に示すように106で示す(01)面の法線方向(107)と基板面のなす角度(109)は90°ではない角度をとる。
(1)メソポーラス膜
本発明において、メソポーラス膜とは、メソ孔を持つ多孔膜を表す。メソ孔とは2nmから50nmの範囲の径をもつ孔のことである。本発明におけるメソポーラス膜は、中空のメソ孔を有するものに加え、そのメソ孔内に両親媒性物質の集合体、溶媒、酸等を保持した構造のものをも包含する。両親媒性物質の例としては、界面活性剤が挙げられる。両親媒性物質の集合体の例としては、界面活性剤分子が集合、形成するミセルが挙げられる。溶媒の例としては、水、アルコールをはじめとする有機溶媒が挙げられる。酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
(2)酸化チタン膜
本発明において酸化チタン膜は、酸化チタン(TiO)を主成分とする膜を示す。主成分とするとは、メソポーラス膜の壁を構成する材料のうち、その重量の50%以上が酸化チタンであることを意味する。この酸化チタン膜には、酸化チタンを主成分とする限りにおいて、酸化チタン以外の化合物を含んでいても良い。
この酸化チタン以外の化合物の例としては、酸化物が挙げられる。その酸化物の例としては、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムが挙げられる。それらの中でも酸化ケイ素(SiO)が好ましい。また、酸化チタン膜は、異元素をドープされていても良い。酸化チタンにドープされる異元素の例としては、窒素、炭素、硫黄、フッ素、クロム、アンチモンなどが挙げられる。また、この酸化チタン膜は、必要に応じて有機、無機の化合物で修飾されていても良い。
(3)孔の形状
本発明のメソポーラス酸化チタン膜の孔は、両親媒性物質の集合体、具体的には、界面活性剤分子が集合、形成するミセルによって形成される。ミセルの形状は、球状、シリンダー状、層状等種々の形態が知られているが、本発明に係わるメソポーラス酸化チタン膜を形成するミセルの形状は、基本的にシリンダー状のものである。本発明におけるシリンダー状の孔とは、円柱状またはそれに類似する多角形柱状の他、断面が楕円のような歪んだものも含む。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜において、孔の孔径は実質的に均一な径であることが好ましい。ここで孔径とは、孔のサイズを意味する。孔の孔径の具体的な例としては、孔が円柱状の場合はその断面直径、孔が多角形の場合は、孔の中心から孔の頂点までの距離の2倍で表される。実質的には、孔の多角形を円とみなし、その円の直径として表される。ここでいう均一径の孔とは、窒素ガス吸着測定の結果から、孔径を算出する手法により求められた細孔径分布において、単一の極大値を有し、且つ孔径分布において、60%以上のメソ孔が、10nmの幅を持つ範囲に含まれることを示す。この孔は、膜形成時の条件によって、ミセルを形成する分子の会合数が規定されるために、基本的に均一の径を持つメソ孔が形成される。孔は、膜が基板と接触する面、その反対側の基板と接触している面と反対側の面、それぞれの面に対して、開かれていても良いし、または閉じられていても良い。
(4)孔の配向方向
最初に、基板に対して傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向していることを特徴とする、本発明のメソポーラス酸化チタン膜について説明する。この場合、孔の配向方向とは、シリンダー状孔の中心を通る線の膜の厚さ方向の中心における傾きを意味する。
孔の配向方向を、図2を用いて説明する。図2は、本発明のメソポーラス酸化チタン膜の孔の配向方向を説明する説明図である。図2において、200は基板、201はメソポーラス酸化チタン膜の壁部、202および203は壁部に囲まれた孔、204はメソポーラス酸化チタン膜の膜厚、205は膜厚を二分した厚さ、206は膜の厚さ方向の中心、207、208はシリンダー状の孔の中心を通る中心線、209,210はシリンダー状の孔の中心を通る線の膜の厚さ方向の中心における傾き、211は基板面、θ1、θ2はシリンダー状の孔の中心を通る線の膜の厚さ方向の中心における傾きの基板面に対する配向角度を示す。
孔の配向方向とは、図2に示すシリンダー状の孔の断面を想定したときに、以下のように説明される。
孔が直線状である場合の孔(202)の配向方向は、シリンダー状の孔の中心を通る線207の膜の厚さ方向の中心206における傾き209(ここでは線207と一致)を意味する。また、孔の配向方向の基板に対する角度はθ1となる。
孔が湾曲している場合の孔(203)の配向方向は、シリンダー状の孔の中心を通る中心線208膜の厚さ方向の中心206における傾き210を意味する。このとき、孔の配向方向の基板に対する角度はθ2となる。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜では、前記孔の配向方向のなす配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲で傾斜していることを特徴とする。この配向角度は、19度以上64度以下の範囲にあることが好ましく、40度以上50度以下の範囲であることがさらに好ましい。
次に、基板に対して実質的に平行に、ヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ、基板全体にわたって面内で一方向に配向制御された、シリンダー状の孔を有し、さらに、前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上、30度未満の範囲にあることを特徴とする、本発明のメソポーラス酸化チタン膜について説明する。
ここで言う、基板に対して実質的に平行であるとは、孔の配向方向と基板のなす角が5°以下であることを意味する。
この構造の膜における孔の配向方向を図3(c)を用いて説明する。図3において、300は基板、301は壁部、302は孔である。この図は、基板に平行に、ヘキサゴナル構造を形成して配されたシリンダー状孔を有するメソポーラス酸化チタン膜を、孔の配向方向に垂直な断面で描いた模式図である。
従来のメソポーラス酸化チタン膜においては、(a)(または(d))で示すように、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向306は、基板に対して垂直である。本発明のメソポーラス酸化チタン膜においては、この(01)面の法線方向が、基板に対して垂直な方向から傾斜している。この様子を図3(C)の(b)、(c)に示してある。(b)では、(01)面法線方向と基板法線方向とのなす角ψが15°、(c)では、ψが30°である。ψがさらに大きくなっても、それは、ψが小さい場合と幾何学的に等価になる。例えば、(d)のようにψ=60°の場合は、ψ=0°の場合と等価である。従って、ψの範囲は0≦ψ≦30°である。本発明の膜では、ψが5°以上30°未満の角度を有して、ヘキサゴナル構造が形成されている。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜は、さらに前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が、基板面内にわたって一定方向に配向していることを特徴とする。
孔の射影方向を、図3(a)を用いて説明する。図3(a)は、本発明のメソポーラス酸化チタン膜の孔の配向方向を基板上に射影した射影方向の一実施態様を説明する説明図である。図3(a)において、300は基板、301はメソポーラス酸化チタン膜の壁部、302は壁部に囲まれた孔、303は孔の配向方向、304は前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向、305は、基板面内で射影の一定方向、θ3は孔の配向方向の基板に対する配向角度、306は基板面を示す。
図3(a1)には、孔の配向方向を基板に射影した方向の基板内での配向方向を説明するために、孔の配向方向を基板に射影した方向の模式図を基板上面からの視点で示す。また、図3(a2)には、本発明のメソポーラス酸化チタン膜の断面模式図を示す。ここでは、基板300上の孔302の配向方向303を基板上に射影した射影方向304が基板面内で一定方向305に配向している。
本発明の比較として、図3(b)に前記孔の配向方向を基板上に射影した方向が基板面内で一定方向に配向していない場合の模式図を示す。図3(b1)は、孔の配向方向を基板に射影した方向の模式図を基板上面からの視点で示す。図3(b2)には断面模式図を示す。ここで、基板300上の孔302の配向方向303は、基板に対して同じ配向角度θ4を持っていたとしても、この配向方向を基板上に射影した射影方向304’、304’’が基板面内にわたって一定方向に配向していない。
ここで、前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が、基板面内にわたって一定方向に配向していることについて説明する。
両親媒性物質の集合体を鋳型としてメソポーラス膜を調製した場合には、その鋳型となる両親媒性物質の集合体に特段、配向を与える工夫を行わなくても、極めて小さな範囲、たとえばメソポーラス膜のうち1μm四方以下程度の領域に注目すると、その領域内で孔の方向がそろった部位が形成されることはある。しかし、この孔の方向のそろった部位は、ランダムに発生し、サイズも小さいために、孔の方向がそろっていることに由来する機能を出すことはできない。
本発明において、射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向させるには、メソポーラス膜の孔の鋳型となる両親媒性物質の集合体に、特別に配向を与える工夫する。このことにより、孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が広い範囲、たとえばメソポーラス膜のうち10μm以上、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは、1cm以上の領域にわたって一定方向に配向していることを意味している。
本発明の、メソポーラス酸化チタン膜では、基板に対して傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向している領域、または、基板に対して実質的に平行に、ヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ、基板全体にわたって面内で一方向に配向制御された、シリンダー状の孔を有し、さらに、前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上、30度未満の範囲にある領域が基板面内で50%以上あればよいが、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上存在することが望ましい。また、膜厚方向にも50%以上あればよいが、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上存在することが望ましい。
また、本発明のメソポーラス酸化チタン膜は、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上、30度未満の範囲にあることを特徴とするが、この角度は、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が、膜内の厚さ方向によらず一定である場合には、この法線方向と基板のなす角度のことであり、法線方向が膜内の厚さ方向によって変化する場合には、膜の厚さ方向の中心における法線方向と基板のなす角度を意味する。
(5)基板
本発明に用いる基板は、本発明のメソポーラス酸化チタン膜を形成可能なものであれば、特に限定することなく用いることができる。例示すると、材料としては、シリコン、石英、ガラス、セラミクス、ポリマー(例えばポリイミド)、金属等が挙げられる。形状は、平面を基本とするが、フレキシブルなフィルムなども用いることもできる。
(6)評価法
本発明のメソポーラス酸化チタン膜の細孔構造は、窒素ガスの等温吸着線測定、透過型電子顕微鏡観察、エックス線回折分析を行うことで評価できる。
孔径分布、孔径範囲については、窒素ガス吸着等温線の測定結果から、Barret−Joyner−Halenda(BJH)法によって求めることができる。
メソポーラス酸化チタン膜中の複数のシリンダー状の孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が、基板面内にわたって一定方向に配向していることを定量的に評価する方法としては、面内エックス線回折分析による評価法がある。この方法は、基板に対して非平行な面に起因するエックス線回折強度の面内回転依存性を測定するもので、メソ孔の配向方向とその分布を調べることができる。
具体的には、面内エックス線回折分析のラジアルスキャンで面間隔を測定し、面内における周期構造を確認し、この回折ピークについて、同一面内ロッキングカーブ測定を行うことで同一面内での配向分布を調べることができる。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜は、この面内エックス線回折によって評価した場合、面内エックス線回折分析において観測される最も強度の大きい回折ピークについて、面内でのロッキングカーブを測定した際に、180度離れた角度に2つの回折ピークをもち、前記2つの回折ピークが異なった強度を示すことを特徴とする。
180度離れた角度に2つの回折ピークを持つということは、メソポーラス酸化チタン膜中のシリンダー状孔の配向方向を基板上に射影した方向が基板面内にわたって一つの方向に配向していることをあらわしている。ここで、180°離れたという記載の意味は、二つのピークの間隔が180±0.5°の範囲にあることをいう。
また、本発明のメソポーラス酸化チタン膜では、2本のピークとして観測される同一面内エックス線回折ピークは、実質的に異なった回折強度を示す。孔の配向方向が基板に対して傾斜しているか、または、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板に垂直な方向から一方向に傾いていることを意味する。ここで、2本のピークとして観測される同一面内エックス線回折ピークが、実質的に異なった回折強度を示すという記載の意味は、高い強度を示すピークのピーク強度の値を、低い強度を示すピークのピーク強度の値で割った値が1.5以上になることをいう。
上記、面内ロッキングカーブ測定により測定された面内X線の2本のピークの半値幅が80°の範囲内にあれば、孔の配向方向を基板上に射影した方向が基板面内にわたってひとつの方向に配向しているものと言うことができる。
次に、本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜の製造方法について説明する。
本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜の製造方法は、両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する工程と、酸化チタンの前駆体物質と両親媒性物質と水とを含有する反応溶液を準備する工程と、前記基板上に前記反応溶液を塗布して、酸化チタンメソ構造体膜を作製する工程とを有することを特徴とする。
前記酸化チタンメソ構造体膜を作製する工程は、基板に対して傾斜して配向している中に両親媒性物質の集合体を含むシリンダー状の孔を有するメソポーラス酸化チタン膜を形成する工程からなることを特徴とする。
前記メソポーラス酸化チタン膜を形成した後で、前記両親媒性物質を除去する工程の前に、酸化ケイ素の前駆体と反応させる工程をさらに含むことが好ましい。
前記両親媒性物質を除去する工程の後に、酸化ケイ素を除去する工程をさらに含むことが好ましい。
前記両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する工程が、基板上に高分子膜を形成した後に、ラビング処理を行う工程であることが好ましい。
図4は、本発明に係るメソポーラス酸化チタン膜の製造工程を示す概念図である。同図4において、400工程は加水分解、脱水縮合反応してメソポーラス構造の基本骨格を形成する酸化チタンの前駆体物質と、両親媒性物質を含有する反応溶液を準備する工程、401工程は両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる力を有する基板を準備する工程、402工程は両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる力を有する基板上に反応溶液を塗布する工程、及び403工程は細孔内に両親媒性物質の集合体を含むメソポーラス酸化チタン膜を形成する工程を示す。
上記の工程を経ることにより、前記基板上にメソポーラス酸化チタン膜が形成される。このような構造体が形成されるのは、両親媒性物質が自己集合し、集合体(ミセル)を形成して、孔の鋳型となるためである。
ここで、402工程は、実質的に403工程と同一工程として行われていてよい。
以下、各工程を詳細に説明する。本発明の製造方法により、基板に対して傾斜して配向しているシリンダー状の孔を有し、前記孔の配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向していることを特徴とするメソポーラス酸化チタン膜、もしくは、基板に対して実質的に平行に、ヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ、基板全体にわたって面内で一方向に配向制御された、シリンダー状の孔を有し、さらに、前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上、30度未満の範囲にあることを特徴とするメソポーラス酸化チタン膜を形成することができる。この方法によって製造される基板上に形成された多孔質膜は、孔内に界面活性剤等の両親媒性物質を含んでいる。
さらに、図4に示すように、405の両親媒性物質を除去する工程を行うことで、中空である孔をもつ、メソポーラス酸化チタン膜を形成することができる。
さらに、この酸化チタン膜に対し、必要に応じて、両親媒性物質を除去する工程の前に404の酸化ケイ素の前駆体と反応させる工程を行ってもよい。この工程によって、部分的に酸化ケイ素を形成することで、例えば焼成を行ったとしても、メソポーラス酸化チタン膜の構造規則性が低下することを抑制することができる。
さらに必要に応じて、両親媒性物質を除去する工程の後に、406の酸化ケイ素を除去する工程を行ってもよい。この工程を行うことで、酸化ケイ素の前駆体と反応させる工程で生成した酸化ケイ素を除いたメソポーラス酸化チタン膜を形成することができる。
(1)反応溶液を準備する工程
まず、反応溶液を準備する。反応溶液は、酸化チタンの前駆体、両親媒性物質、溶媒、水を含有する。また、必要に応じてその他の物質を添加してもよい。
この工程は、特に限定されるものではないが、たとえば、溶媒に、その他の反応溶液を構成する物質を投入し、攪拌することにより行われる。これらの工程は、必要に応じて、雰囲気、温度、湿度、攪拌強度などを制御して行うことができる。また必要に応じて、超音波処理、ろ過等の工程を加えることができる。
(1−1)酸化チタンの前駆体
酸化チタン前駆体としては、チタンのハロゲン化物やアルコキサイドが好ましく用いられる。ハロゲン化物の例としては、四塩化チタン、アルコキサイドの例としては、チタンテトライソプロポキサイド、チタンテトラエトキサイドがあげられる。これらの中でも特に四塩化チタンが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
(1−2)両親媒性物質
両親媒性物質は、特に限定されるものではないが、界面活性剤が適している。この界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。例示すると、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンからなるトリブロックコポリマーなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレンオキサイドを親水基、アルキル基を疎水基として含む非イオン性界面活性剤が好ましい。このアルキル鎖の鎖長の例としては、炭素数で10から22、ポリエチレンオキサイドの繰返し数の例としては、2から50を挙げることができる。この具体的な例としては、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル<C1837(CHCHO)10OH>を挙げることができる。このアルキル鎖、ポリエチレンオキサイド鎖長を変化させることによりメソ孔の径を変化させることが可能である。一般的にアルキル鎖、ポリエチレンオキサイド鎖を増大させることにより孔径を拡大することが可能である。
また、界面活性剤に加えて、ミセルの径を調整するための添加物を加えてもよい。このミセルの径を調整するための添加物としては、疎水性物質が挙げられる。この疎水性物質の例としては、アルカン類、親水性基を含まない芳香族化合物が挙げられ、その具体的な例としては、オクタンが挙げられる。
(1−3)溶媒
反応溶液の溶媒は、酸化チタンの前駆体、両親媒性物質を溶解できるものが用いられる。この溶媒の例としては、エタノール、プロパノール、メタノール、ブタノール等のアルコールが挙げられる。また、2種以上の溶媒の混合物も好ましく用いられる。
(1−4)水
反応溶液には水を含有し、水は酸化チタンの前駆体と反応し、これを加水分解し、最終的に酸化チタンを生成する。本発明にかかるメソポーラス酸化チタン膜は、メソポーラス化合物として広く知られている酸化ケイ素前駆体と比較して反応性の高い酸化チタン前駆体を含む反応溶液に、水を含むことを特徴とする。このことによって、比較的に反応性の高い酸化チタン前駆体が速やかに反応し、最安定な構造である、基板に平行な構造を形成する前に構造が規定されるために、孔の配向方向が基板に対して傾斜した構造、または、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して傾斜している構造が形成されると考えられる。
(1−5)その他の添加物
反応溶液には、必要に応じて、その他の物質を添加することができる。たとえば、反応溶液の酸性、塩基性を調整するための物質を添加してもよい。この酸性、塩基性を調整するための物質の例としては、塩酸等の酸や水酸化アンモニウム等の塩基が挙げられる。これらは、前駆体物質の加水分解、縮合反応速度を制御するために加えられることが多い。また、この酸化チタンにドーピングを行うための物質を添加してもよい。
(2)表面が配向規制力を有する基板を準備する工程
本発明において、孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が、基板面内にわたって一定方向に配向しているメソポーラス酸化チタン膜を形成するためには、基板として表面が配向規制力を有する基板を用いる。そのために両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する。この配向規制力を有する基板としては、表面の原子配列の異方性が強い結晶性の基板と、一般的な基板の表面に構造の異方性を有する材料を形成した基板が挙げられる。
(2−1)基板の材質
表面の原子配列の異方性が強い結晶性の基板の例としては、表面の原子配列が2回対称性を有するものが挙げられる。このような結晶性基板表面では、原子の特定の配列方向が一義的に決定され、界面活性剤集合体を配向させる能力を有する。この具体的な例としては、ダイヤモンド構造の結晶構造を有する単結晶基板、または閃亜鉛鉱型構造の結晶構造を有する単結晶基板の(110)面が挙げられ、その中でも特にシリコンの(110)面が好ましく用いられる。
一方、一般的な基板としては、材質に特に限定はないが、反応溶液に対して安定なものが好ましく用いられる。具体的な例としては、ガラス、石英、半導体ウエハ(含シリコン)、セラミクス、樹脂(例えばポリイミド)、金属が挙げられる。必要に応じて、プラスチックなどのフレキシブルなフィルムを基板や、透明導電性膜を付与した基板も用いることもできる。
この一般的な基板の場合は、基板表面に別途、配向規制力を付与する必要がある。この配向規制力を付与する方法の例としては、ラビング処理を施した高分子化合物膜、高分子化合物のラングミュア−ブロジェット膜(LB膜)を挙げることができる。
(2−2)基板の準備工程
表面の原子配列が2回対称性を有する結晶性基板を使用する場合は、基板を充分に洗浄し、清浄な結晶面を露出させることによって行われる。さらに、必要に応じて、表面に存在する自然酸化膜を除去することを行っても良い。この具体的な例としては、シリコン基板を希フッ酸中で処理することが挙げられる。この様な処理によって結晶面が露出した基板は、メソポーラス酸化チタン膜調製工程に、そのまま使用することが可能である。
ラビング処理を施す高分子化合物は、メソポーラス酸化チタン膜の形成工程に耐え得るもので、かつ配向規制力を有するものが用いられる。具体的な例としては、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドとしては、繰り返し構造単位中に2つ以上の連続したメチレン基を含んでいるものが好ましく用いられる。この高分子化合物を基板上に形成する方法としては、スピンコート等が挙げられる。
ラビング処理とは、基板上に形成したポリマー等を布等で一方向に擦る処理により行なわれる。ラビング処理の例としては、ラビング布をローラー上に配置し、回転させたローラーを基板表面に接触させ、基板を固定したステージをローラーに対して一方向に移動させることによって行うことが挙げられる。このラビング布は使用する高分子材料に対して最適なものを選択するが、ナイロン、レーヨン等一般的なものを使用することができる。ラビング処理の強度は、ローラーの回転数、基板とローラーの距離、基板を固定したステージの移動速度等のパラメータによって制御される。
LB膜は、水面上に展開された単分子膜を基板上に移しとった膜である。この膜は、成膜を繰り返すことで累積構造を形成することができる。本発明において、LB膜は、基板上に形成されたLB膜に熱処理等の処理を施し、累積構造を保ったままで化学構造を変化させたLB膜誘導体の単分子累積膜を含む。LB膜の材料は良好な配向を達成できる材料であれば特に材質に限定はない。この例としては、ポリイミドのような高分子化合物が挙げられる。
LB膜の成膜には一般的な方法が用いられ、例えば、水面上に展開された単分子層に表面圧をかけながら、基板を水中に出し入れすることで基板上に1層ずつ単分子層を形成する方法により行う。膜の形態及び性質は、表面圧、基板の押し込み/引き上げの際の移動速度、及び層数等で制御される。
(3)反応溶液を、配向規制力を有する基板上に塗布する工程
反応溶液を、両親媒性物質の集合体の配向規制力を有する基板上に塗布する工程としては、一般的な塗付方法を用いることができる。この例としては、ディップコート法、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ペンリソグラフィー法等が挙げられる。
それらの中でも、ディップコート法は、簡便に均一な膜を形成できる塗布方法として有効である。ディップコート法による塗布方法は、反応溶液に基板を浸し、基板を引き上げることで基板上に溶液を塗布する。この塗布量は、塗布条件によって制御可能である。代表的な条件としては、溶液の組成、基板の引き上げ速度が挙げられる。例えば、一般的に反応溶液中の溶媒を増大させること、引上げ速度を増大させることにより、塗布量(膜の厚さ)は減少する。この塗布は周囲の環境によって影響を受ける。そのため、必要に応じて、雰囲気、温度、湿度、雰囲気中の溶媒濃度等を制御して行うことができる。
(4)細孔内に両親媒性物質の集合体を含むメソポーラス酸化チタン膜を形成する工程
配向した複数の両親媒性物質の集合体を含むメソポーラス酸化チタン膜を形成する工程は、反応溶液を、配向規制力を有する基板上に塗布する工程に続いて行われる。これらの両工程は、分けて記載はしているが、基本的には、反応溶液が基板に接触した時点から、孔中に両親媒性物質の集合体を含むメソポーラス酸化チタン膜の形成は始まっていると考えられる。
本工程の具体的な例としては、制御された環境下で、基板上の反応溶液(特に溶媒)を乾燥させ、酸化チタンの生成を行うことが挙げられる。ディップコート法を用いた場合の一例としては、溶媒と塩化水素が、基板上の塗布後の反応溶液から失われるにしたがって、水と酸化チタン前駆物質との反応が進行し、酸化チタン膜が形成される。この環境を制御する条件としては、温度、湿度が挙げられる。温度条件、湿度条件を制御することによって、前駆体物質の加水分解、縮合速度は制御され、両親媒性物質の集合体の配列規則性が変化する。例えば、過度の温度上昇は縮合反応の著しい促進につながり、均一な薄膜形成を損なう場合がある。逆に、温度が低すぎると溶媒蒸発速度を低下させ薄膜形成に時間がかかるという問題が生じる。具体的な例としては、温度は0℃から50℃の範囲であり、相対湿度が0%から50%の範囲が挙げられる。また、保持時間は、用いる前駆体物質の反応性や温度、湿度にあわせて決定され、具体的な例としては、30分から1週間の範囲が挙げられる。
本工程を経た多孔質膜の厚さは特に限定されるものではないが、例としては、0.005μmから10数μmの値が挙げられる。例えば、ディップコート法の場合は0.05μmから3μm程度の膜形成が可能である。
(5)両親媒性物質を除去する工程
両親媒性物質の除去方法としては、とくに限定されるものではないが、分解除去や、抽出などの方法を用いることができる。分解除去の例としては、焼成、UV照射、Oによる方法、抽出の例としては、溶剤や超臨界流体による方法が挙げられる。
焼成による界面活性剤の除去は、多孔質膜からほぼ完全に界面活性剤を除去することができ、酸化チタンの結晶化を促進するという点で有意である。一方で、メソポーラス膜の構造規則性を乱す可能性や焼成に耐えうる基板を使用する必要があるなどの制限がある。
焼成温度、時間は、内部に保持している両親媒性物質の種類によって変わる。具体的な例としては、例えば、温度として300℃から600℃、時間として15分から24時間の範囲が挙げられる。溶剤抽出法を用いると、100%の界面活性剤の除去は困難ではあるが、焼成に耐えられない材質の基板上にメソポーラス酸化チタン膜を形成することが可能である。
(6)酸化ケイ素の前駆体を反応させる工程
焼成工程は、多孔質膜からほぼ完全に界面活性剤を除去し、酸化チタンの結晶化を促進するという点において効果がある。一方で、メソポーラス膜の構造規則性を乱し、さらには構造を崩壊させる可能性もある。これは焼成時の高温環境によって物質移動が容易になるためにアモルファスや、小さな結晶からより大きな結晶への変化が起こるためであると考えられる。これを防止するためには、メソポーラス酸化チタン膜の孔の壁を強化すること、かつ、または、結晶の成長を抑制することが有効であると考えられる。
この具体的な方法としては、メソポーラス酸化チタン膜の形成後に酸化ケイ素の前駆体を反応させ、部分的に酸化ケイ素を形成する方法が挙げられる。この方法を用いることで、焼成による界面活性剤の除去や酸化チタンの結晶化を行いながらも、メソポーラス膜の構造規則性を乱すことを抑制することができる。
(6−1)酸化ケイ素の前駆体
この酸化ケイ素の前駆体としては、焼成後に酸化ケイ素を与えるものが用いられる。この例としては、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、ハロゲン化シラン化合物が挙げられる。アルコキシシラン化合物の例としては、テトラエトキシシランのようなテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの一部のアルコキシル基がメチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基に置換されたものが挙げられる。シロキサン化合物の例としては、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンが挙げられる。シラザン化合物の例としては、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。ハロゲン化シラン化合物の例としては、テトラクロロシラン、テトラクロロシランの塩素の一部がメチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基に置換されたものが挙げられる。
(6−2)酸化ケイ素の前駆体を反応させる方法
この酸化ケイ素の前駆体を反応させる方法としては、メソポーラス酸化チタン膜内部に酸化ケイ素を形成できる方法を用いることができる。この例としては、酸化ケイ素の前駆体をメソポーラス酸化チタン膜に接触させる方法が挙げられる。
この接触方法の例としては、メソポーラス酸化チタン膜を酸化ケイ素の前駆体の蒸気に接触させる方法、酸化ケイ素の前駆体又はその溶液をメソポーラス酸化チタン膜に滴下する方法、酸化ケイ素の前駆体又はその溶液中にメソポーラス酸化チタン膜を浸漬する方法が挙げられる。酸化ケイ素の前駆体溶液を用いるときに使用される溶媒としては、酸化ケイ素の前駆体を溶解可能でメソポーラス酸化チタン膜の内部に浸透可能なものが用いられる。この例としては、有機溶媒、超臨界流体が挙げられる。
これらの工程は、必要に応じて雰囲気、温度、湿度を制御して行われる。また焼成を行う前に、別途加熱、洗浄等の工程を行ってもよい。
(7)酸化ケイ素を除去する工程
メソポーラス酸化チタン膜の焼成工程において、メソポーラス膜の構造規則性を保持するために酸化ケイ素を形成した場合には、必要に応じてこれを除く工程を行ってよい。この酸化ケイ素を除去する方法は、酸化ケイ素が除去され、メソポーラス酸化チタン膜が除去されない方法が用いられる。この例としては、アルゴンエッチング、塩基性の溶液に浸漬する方法が挙げられる。この塩基性の溶液の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の水溶液、アルコール溶液等が挙げられる。これらの工程は、必要に応じて加温、攪拌、超音波の印加を行ってよい。本工程における酸化ケイ素の除去は、繰り返しこの工程を行っても窒素ガス吸着等温線測定の結果が変化しないことで確認できる。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜の用途について説明する。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜は、光学、電気、触媒などの分野に応用可能である。なかでも、液晶表示装置等に組み込まれて使用される位相差板のうちのOプレートとしての応用が期待できる。
位相差板の位相差層は、光学軸の方向によって分類される。光学軸の方向が層面に沿っているものはAプレート、光学軸の方向が層に垂直な法線方向に向いているものはCプレート、光学軸の方向が法線方向から傾いているものはOプレートと呼ばれる。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜は、孔の配向方向が基板に対して傾斜しており、かつ孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向しているので、このOプレートとして応用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明の方法は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(1)反応溶液の調製
エタノールに四塩化チタン、水、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル<C1837(CHCHO)10OH>を溶解、撹拌して反応溶液とした。このときのエタノール/四塩化チタン/水/ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテルのモル比は、1.8/0.05/1/0.014であった。
(2)表面が配向規制力を有する基板の調製
シリコンウエハ(100)をUVオゾン洗浄した後に、ポリアミック酸のNMP溶液をスピンコートにより塗布、200℃で1時間焼成して、以下の構造式(1)の構造を有するポリイミドAの薄膜を形成した。
このポリイミドAの薄膜に対して、下記の表1のラビング条件で、基板全体に一方向のラビング処理を施し、配向規制力を有する基板を調製した。
(3)反応溶液の塗布、酸化チタン膜の形成
反応溶液は、ラビングしたポリイミドコート基板にディップコート法で塗布した。基板に2mm/sの引上げ速度でディップコートを行った。その基板を空気中で湿度、温度が制御できる環境試験器内に保持した。環境試験器内では、20℃、20%RHに10時間保持し、酸化チタン膜を調製した。基板上に形成された薄膜は亀裂等がなく均一であり、さらに透明であった。
さらに形成された酸化チタンメソ構造体膜について、Bragg−Brentano配置のエックス線回折分析、面内エックス線回折分析を行った。Bragg−Brentano配置のエックス線回折分析の結果を図5(a)、面内エックス線回折分析のラジアルスキャンの結果を図5(b)、ラジアルスキャンで観測された、最も強度の大きい回折ピークに関して測定された、面内ロッキングカーブ測定の結果を図5(c)に示す。図5(a),(b)より、この酸化チタンメソ構造体膜は,積層方向,面内方向共に高い秩序性をもつことが確認された。観測された面内X線回折のロッキングカーブには、180°間隔で2本の回折ピークが観測されている。これは、膜面内で、基板と平行でない格子面が、好ましい一つの方向に配向制御されていることを示している。
面内X線ロッキングカーブの2本の回折強度は、図5(c)に示したように、大きく異なっている。従来の一方向に配向したシリンダー状孔を有するメソポーラス膜の場合には、面内X線回折のロッキングカーブで観測される2本の回折ピークは、測定の誤差を除けば、同じ強度で観測される。これは、ヘキサゴナル構造を形成しているシリンダー状孔が、基板面にほぼ平行であり、且つ、ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が、基板面に対してほぼ垂直であることを示している。従って、本実施例で作製した酸化チタンメソ構造体の構造は、従来の、配向性のシリンダー状孔が面内で一方向に配向したヘキサゴナル構造とは異なる構造であることが証明された。
また、この酸化チタンメソ構造体膜の断面透過型電子顕微鏡写真を図6に示す。図6(a)、(b)、(c)は上述の方法で調製した酸化チタンメソ構造体膜の断面透過型電子顕微鏡写真を示す。
(4)酸化チタンメソ構造体膜と酸化ケイ素の前駆体との反応
密閉容器中に、調製した酸化チタンメソ構造体膜と、酸化ケイ素の前駆体であるテトラエトキシシランを入れ、40℃で10時間保持することにより、酸化チタンメソ構造体膜と酸化ケイ素の前駆体とを反応させた。
この酸化ケイ素の前駆体と反応させた酸化チタンメソ構造体膜についてBragg−Brentano配置のエックス線回折分析を行った。その結果を図7に示す。エックス線パターンにおいて、ピークが観測され、調製した酸化チタンメソ構造体膜は、酸化ケイ素の前駆体との反応工程を経てもメソ構造を保持していることが確認された。
(5)界面活性剤の除去
酸化ケイ素の前駆体を反応させた酸化チタンメソ構造体膜を350℃で4時間焼成することにより、酸化ケイ素を含んだメソポーラス酸化チタン膜を得た。焼成を行っても、膜は剥離することなくその形状が保持された。
この酸化ケイ素の前駆体を反応させ、界面活性剤の除去をおこなったメソポーラス酸化チタン膜についてBragg−Brentano配置のエックス線回折分析を行った。その結果を図8に示す。エックス線パターンにおいて、ピークが観測され、調製したメソポーラス酸化チタン薄膜は、焼成工程を経てもメソ構造を保持していることが確認された。また、エネルギー分散型エックス線分光を行い、メソポーラス酸化チタン膜中のケイ素の分布を観察した。その結果、酸化ケイ素の前駆体との反応、焼成工程を経たサンプルの膜内には均一にケイ素が分布していることが確認された。
(6)酸化ケイ素の除去
酸化ケイ素を含んだメソポーラス酸化チタン膜の酸化ケイ素をアルゴンエッチングすることで酸化ケイ素の除去を行った。
これらの基板に形成された薄膜についてBragg−Brentano配置のエックス線回折分析を行った。その結果を図9に示す。エックス線パターンにおいて、ピークが観測され、調製したメソポーラス酸化チタン薄膜は、酸化ケイ素の除去の工程を経てもメソ構造を保持していることが確認された。
また、エネルギー分散型エックス線分光を行い、メソポーラス酸化チタン膜中のケイ素の分布を観察した。その結果、メソポーラス酸化チタン膜からは、酸化ケイ素の除去工程によって、ケイ素が除去されていることが確認された。
次に、実施例1に関する考察をする。
実施例1で記述したように、図5に示した面内X線回折のロッキングカーブの結果により、この酸化チタンメソ構造体膜においては、膜面内で、基板と平行でない格子面が、好ましい一つの方向に配向制御されていることを示している。
さらに図5の面内X線回折のロッキングカーブの2つのピークはその強度が大きく異なり、また、図6の断面透過電子顕微鏡像では、基板に対して、角度を持ってストライプが配向している様子が明瞭に観察される。
これらの結果から、本発明の酸化チタンメソ構造体膜には、2つの構造の可能性が示唆される。
(1)シリンダー状孔を有するメソポーラス酸化チタン膜が形成されており、シリンダー状孔の配向方向が基板面に対して傾斜している構造。図6の像から確認される孔の配向方向の基板面に対する配向角度は、図6(a)では19度から33度の間、図6(b)では22度から36度の間、図6(c)では31度から64度の間であった。焼成して配向性メソ構造が保持される事実は、この構造を支持する。
(2)工程(3)反応溶液の塗布、酸化チタンメソ構造体膜の形成の段階において、層面が基板面に対して傾斜したラメラ構造をとる。その後の工程(6)の酸化ケイ素の前駆体を付与する工程、及びそれに続く界面活性剤を除去する工程を通して、このラメラ構造は、シリンダー状孔からなるヘキサゴナル構造へと変化する。この変化は、縮合が進行していない状態の酸化チタンから成る無機成分部位にシリカ源が供給され、シリカを形成するために、界面活性剤の親水部分と相互作用している無機成分の大きさが増大することによって引き起こされると考えられる。親水部分のサイズの増大は、界面活性剤分子集合体の曲率を増大させ、直線的なシート状構造がチューブ状の構造に変化するのは、良く知られた現象である。その際、チューブ状の無機−有機構造体は、基板とほぼ平行に形成され、ヘキサゴナル構造を形成する。しかし、元のラメラ構造が基板表面に対して傾斜しているので、形成されたヘキサゴナル構造の(01)面の層法線方向は、基板に平行にはならず、基板法線方向から5°以上30°未満の範囲で傾斜した構造となる。この構造では、基板界面での界面活性剤の配置が論理的に説明可であり、焼成によって構造が保持されることも説明できる。
この構造の変化を、図10を用いて説明する。図10において、1000は基板、1001は酸化ケイ素の前駆体を付与する工程(5)以降で生成するチューブ状の壁、1002はその壁部に囲まれたシリンダー状孔、1003は工程(3)の時点で生成しているラメラ構造の酸化チタン部位である。元のラメラ構造が基板と平行に形成されていないので、ヘキサゴナル構造に転移した際の(01)面法線方向は基板に対して完全には垂直にならない。ラメラ構造の基板に対する角度が分布を有しているため、(01)面法線方向も分布を有することになる。このモデルでも、面内X線回折分析の、非対称なロッキングカーブを説明することができる。
実施例1の(1)から(3)の工程を行い調製した酸化チタンメソ構造体膜に、酸化ケイ素の前駆体として、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンのエタノール溶液を滴下、密閉容器中で保持することで、酸化ケイ素の前駆体を反応させた酸化チタンメソ構造体膜を調製する。
その後、実施例1の(5)と同様の焼成工程を行う。酸化ケイ素の前駆体と反応させることで、メソポーラス酸化チタン膜は、焼成工程の後でも、膜形状、メソ構造を保持することが確認される。
その後、pH14の水酸化カリウム水溶液中に保持し、100℃で30分間保持することを2から3度繰り返すことで、酸化ケイ素を除去する。その結果、界面活性剤、酸化ケイ素が除去されたメソポーラス酸化チタン膜を得られることが確認される。
実施例1の(1)から(3)の工程を行い調製した酸化チタンメソ構造体膜を20mLの耐圧容器に入れ、酸化ケイ素の前駆体として0.02mLのテトラメトキシシランを加える。容器中に高圧ポンプを用いて二酸化炭素を導入、炉の中で400℃、約40MPaとし超臨界流体として15分保持することで、酸化ケイ素の前駆体と反応させた酸化チタンメソ構造体膜を調製する。
その後、実施例1の(5)と同様の焼成工程を行う。酸化ケイ素の前駆体を反応させることで、メソポーラス酸化チタン膜は、焼成工程の後でも、膜形状、メソ構造を保持する。
石英基板を、有機溶媒を用いて超音波洗浄し、UVオゾン洗浄した後に、ポリアミック酸のNMP溶液をスピンコートにより塗布、200℃で1時間焼成して、前記構造式(1)の構造を有するポリイミドAの薄膜を形成した。
このポリイミド膜を製膜した基板の一部にマスクをのせ、基板の一部が露出される状態とする。その上で、表1の条件で、マスクを含む基板全体に一方向のラビング処理を施し、基板表面の一部が配向規制力を有する基板を調製する。このときの基板全体に対する露出部分の割合は50%、80%、95%とする。
その後、実施例1の(1)と同様の反応溶液を用いて、実施例1の(3)の工程を行なうことで、配向方向を基板に射影した射影方向が一定方向に配向している領域の基板全体に対する割合が、50%、80%、95%の酸化チタンメソ構造体膜を調製した。
比較例1
実施例1の(2)と同様の工程を用いてポリイミド膜を形成したシリコン基板を調製する。このとき、ラビング処理は行わない。
その後、実施例1の(1)と同様の反応溶液を用いて、実施例1の(3)の工程を実施することで、酸化チタンメソ構造体膜を調製する。
この薄膜について、面内エックス線回折分析を行う。面内エックス線回折分析のロッキングカーブを測定しても、明確なピークは出現しない。このことから、配向規制力を有しない基板を用いた場合では、本発明の孔の配向方向を基板上に射影した方向が基板面内にわたって一定方向に配向しているメソポーラス酸化チタン薄膜は得られないことが確認される。
本発明のメソポーラス酸化チタン膜は、光学、電気、触媒などの分野に利用可能であり、特に液晶表示装置等に組み込まれて使用される位相差板のうちのOプレートとして利用することができる。
100 基板
101 メソポーラス酸化チタン膜の壁部
102 孔
103 基板面
104 孔の配向方向
105 射影方向
θ 配向角度
106 ヘキサゴナル構造の(01)面
107 ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向
108 ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向を基板上に射影した方向
109 ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向と基板面のなす角
200 基板
201 メソポーラス酸化チタン膜の壁部
202、203 孔
204 メソポーラス酸化チタン膜の膜厚
205 膜厚を二分した厚さ
206 膜の厚さ方向の中心
207、208 孔の中心を通る中心線
209,210 状の孔の中心を通る線の傾き
211 基板面
θ1、θ2 配向角度
300 基板
301 メソポーラス酸化チタン膜の壁部
302 孔
303 孔の配向方向
304、304’、304’’ 射影方向
305 基板面内での射影の一定方向
θ3、θ4 配向角度
306 基板面
1000 基板
1001 後の工程で生成するチューブ状の壁
1002 後の工程で生成するシリンダー状の孔
1003 壁の連続している部位

Claims (11)

  1. 基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、傾斜して配向しているチューブ状の孔を有し、前記孔の配向方向のなす配向角度が基板面に対して10度以上80度以下の範囲であり、かつ前記孔の配向方向を基板上に射影した射影方向が基板面内にわたって一定方向に配向していることを特徴とするメソポーラス酸化チタン膜。
  2. 前記メソポーラス酸化チタン膜に酸化チタン以外の酸化物が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のメソポーラス酸化チタン膜。
  3. 前記酸化物が酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1または2に記載のメソポーラス酸化チタン膜。
  4. 前記孔の中に両親媒性物質の集合体を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のメソポーラス酸化チタン膜。
  5. 前記メソポーラス酸化チタン膜が、面内エックス線回折分析において観測される最も強度の大きい回折ピークについて、面内でのロッキングカーブを測定した際に、180度離れた角度に2つの回折ピークをもち、前記2つの回折ピークが異なった強度を示すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のメソポーラス酸化チタン膜。
  6. 基板上に形成されたメソポーラス酸化チタン膜であって、基板に対して平行にヘキサゴナル構造を形成して配置され、かつ基板面内にわたって一方向に配向制御されたシリンダー状の孔を有し、さらに前記ヘキサゴナル構造の(01)面の法線方向が基板面に対して5度以上30度未満の範囲にあることを特徴とするメソポーラス酸化チタン膜。
  7. メソポーラス酸化チタン膜の製造方法であって、両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する工程と、酸化チタンの前駆体物質と両親媒性物質と水とを含有する反応溶液を準備する工程と、前記基板上に前記反応溶液を塗布し、
    酸化チタンメソ構造体膜を作製する工程とを有することを特徴とするメソポーラス酸化チタン膜の製造方法。
  8. 前記メソポーラス酸化チタン膜を形成した後に、前記両親媒性物質を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のメソポーラス酸化チタン膜の製造方法。
  9. 前記メソポーラス酸化チタン膜を形成した後で、前記両親媒性物質を除去する工程の前に、酸化ケイ素の前駆体と反応させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載のメソポーラス酸化チタン膜の製造方法。
  10. 前記両親媒性物質を除去する工程の後に、酸化ケイ素を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかの項に記載のメソポーラス酸化チタン膜の製造方法。
  11. 前記両親媒性物質の集合体を所定の方向に配向させる機能を有する基板を準備する工程が、基板上に高分子膜を形成した後に、ラビング処理を行う工程であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかの項に記載のメソポーラス酸化チタン膜の製造方法。
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