本発明は、構造体の製造方法に関連し、より詳しくは、メソ細孔の配向技術を用いて共役高分子の高分子鎖を配向させる技術に関するものである。
共役高分子化合物は、廉価な有機トランジスタを作製できる可能性を有しているため、非常に盛んに研究がなされている。共役高分子化合物は、主鎖方向に共役鎖が伸びた構造を有し、主鎖方向に高い導電性を示す。しかしながら、現在は、共役高分子材料の主鎖を配向させる有望な技術が無く、従ってバルク状態で使用されており、高分子鎖間の伝導はホッピング伝導によっているため、充分な電気伝導率が得られない。高分子鎖を配向させる目的で、ラングミュア−ブロジェット膜を用いた検討等が行われている。
界面活性剤の分子集合体をテンプレートにして作製されるメソ構造体は、無機化合物の母体中に界面活性剤の分子集合体が自己組織化によって規則正しく配列した構造を有する材料である。最初、無機化合物はシリカに限定されていたが、最近では種々の酸化物、金属、硫化物等の幅広い材料での形成が可能となっており、さらには有機−無機ナノコンポジットで構成された細孔壁を有するものも合成されている。また、最初の発見は粉末状の形態であったが、現在では、薄膜、ファイバー、球等、様々な形態のものが作製できるようになってきた。
メソ構造体は、その規則的なナノ空間に他の材料を導入し、それらの材料の構造や配向を制御できる可能性があるために、吸着・分離材や触媒といったような従来の多孔体の応用に加えて、電子材料や光学材料に関する応用が期待されており、幅広い検討が行われている。
Science誌第288巻、652−656ページ
Chemistry of Materials誌第11巻1609ページ
メソ構造体の細孔中に材料を導入する方法には次の方法がある。それは、メソ構造体を形成した後に細孔を形成している界面活性剤集合体を除去し、結果として生じた中空の細孔に、ゲスト材料を導入する方法である。この方法は、主としてメソポーラスシリカに対して適用される一般的な方法であるが、薄膜のような形態の場合には高分子材料等の嵩高いゲスト種の導入が困難である。
また、強磁場で細孔を配向させたシリカメソ構造体モノリスを用いて、共役高分子化合物の部分的配向を行ったことが、非特許文献1に記載されている。この技術は、シリカメソ構造体を作製した後に焼成によって界面活性剤を除去し、形成された中空のナノ空間に共役高分子化合物を導入するというものであるが、得られるシリカメソ構造体は、微細なクラックが無数に入ったもので、光学材料や電子材料に適用することは難しく、クラック部にある高分子はランダムな構造であって全体にわたる制御がなされていない。
そこで本発明は、すべてのメソ細孔内に共役高分子化合物を有する構造体の製造方法であって、
共役高分子化合物を形成するための官能基を分子構造中に有する界面活性剤と細孔壁を構成する材料の原料とを含む溶液を、異方性を示す基板に付与し、前記基板上に前記界面活性剤を含む構造体を形成する工程と、
前記界面活性剤を重合し、前記構造体中で前記共役高分子化合物を形成する工程とを備えることを特徴とする構造体の製造方法を提供する。
分子構造中に重合部位を含む界面活性剤をテンプレートに用い、表面に構造の異方性を有する基板を用いることにより、柱状細孔が一方向に配向したメソ構造体を基板上に作製することができる。さらに配向した細孔中において、界面活性剤分子中の重合部位を光や熱、化学反応により重合させ、共役高分子を細孔内で形成させることによって、マクロスコピックなスケールで、共役高分子が一方向に配向した構造体を作製することができる。
以下、発明を実施するための最良の形態を用いて本発明を説明する。
本発明の共役高分子化合物を含む配向性メソ構造体薄膜は、例えば図1もしくは図2に模式的に示すような構造体である。表面に構造の異方性を有する基板11上に、ハニカム構造の柱状の孔を有するメソ構造体薄膜12が形成されている。メソ構造体薄膜中において、柱状の孔13は、一方向に配置している。柱状の細孔は、基板とメソ構造体薄膜との境界面に対して平行に位置している。メソ構造体薄膜は、層状のものでもよい。細孔中には図に示したように、界面活性剤の重合によって共役高分子が形成されている。1本の柱状の細孔内に、複数の共役高分子鎖14(図1)、21(図2)が含まれていると本発明者らは考察している。ここで、共役高分子鎖14はポリジアセチレン誘導体、21はポリピロール誘導体をそれぞれ示している。共役高分子は、導電性を示す高分子が好ましい。
本発明の上記共役高分子化合物を含む配向性メソ構造体薄膜は、本発明のもうひとつの形態である図3に示すような重合可能な官能基を有する界面活性剤32の集合体を鋳型にして形成される配向性メソ構造体薄膜に対して、細孔内界面活性剤分子の重合反応を起こさせることによって作製される。界面活性剤集合体は柱状の形態で複合体中に存在しており、その断面は、図3の31に模式的に示されるようなものである。
以下、本発明の共役高分子化合物を含む配向性メソ構造体薄膜の作製方法、及び詳細な構成に関して記述する。
図1〜3に示した構成において、11は表面に構造の異方性を有する基板である。本発明に用いられる表面に異方性を有する基板は大別して2種類に分類される。ひとつは、表面の原子配列の異方性が強い結晶性の基板を使用するものであり、もうひとつは、ガラスのような一般的な基板の表面に構造の異方性を有する材料を形成するというものである。
表面の原子配列の異方性が強い結晶性基板を使用する方法は、比較的高価な単結晶基板を使用する必要があるという問題点を有する一方で、基板上に直接配向性の柱状細孔を有するメソ構造体を形成することが可能であるという利点を有する。この場合は、例えば導電性の単結晶基板を使用することで、基板と細孔内の共役高分子との電気的コンタクトが良好になること等が期待される。原子配列の異方性が強い結晶性基板としては、表面の原子配列が2回対称性を有するものが好ましく用いられる。このような結晶性基板表面では、原子の特定の配列方向が一義的に決定され、界面活性剤集合体を配向させる能力を有する。好ましく用いられるのは、ダイヤモンド構造の結晶構造を有する単結晶基板、または閃亜鉛鉱型構造の結晶構造を有する単結晶基板の(110)面であり、特にシリコンの(110)面が好ましく用いられる。
一方、一般的な基板の表面に異方性を有する材料を形成する方法は、基板とメソ構造体の間にごく薄い層が介在するものの、安価な材料を用いて高度な一軸配向性を達成可能であるという利点を有する。基板の表面に形成される構造異方性を有する材料としては、高分子化合物のラングミュア−ブロジェット膜、ラビング処理を施した高分子化合物薄膜等が良好に用いられる。
はじめに、基板の作製方法に関して説明を行う。
まず、表面の原子配列が2回対称性を有する結晶性基板を使用する場合には、メソ構造体を形成する基板を充分に洗浄し、清浄な結晶面を露出させる。さらに、例えばシリコン基板等の場合には、表面に存在する自然酸化膜を除去する。この目的は、希フッ酸中で数分間表面を処理すること等の単純なプロセスによって比較的簡単に達成される。この様な処理によって結晶面が露出した基板は、後述するメソ構造体薄膜作製に、そのまま使用することが可能である。
次に、一般的な基板の表面に構造異方性を有する材料を形成する場合について説明する。
最初に、高分子化合物のラングミュア−ブロジェット膜(LB膜)を形成する方法について説明する。LB膜は、水面上に展開された単分子膜を基板上に移しとった膜であり、成膜を繰り返すことで所望の層数の膜を形成することができる。本発明でいうLB膜とは、基板上に形成されたLB膜に熱処理等の処理を施し、累積構造を保ったままで化学構造を変化させたLB膜誘導体の単分子累積膜を包含する。
LB膜の成膜には一般的な方法が用いられる。一般的なLB膜の成膜装置を模式的に図4に示す。図4において、41は純水42を満たした水槽である。43は固定バリアであり、不図示の表面圧センサーがつけられている。水面上の単分子層46は、目的の物質または目的物質前駆体の溶解した液体を可動バリア44との間の領域の水面上に滴下することで形成され、可動バリア44の移動によって表面圧が印加される構造になっている。可動バリア44は、基板に膜を成膜する間、一定の表面圧が印加されるように表面圧センサーによってその位置が制御されている。純水は不図示の給水装置、及び排水装置により常に清浄なものが供給される様になっている。水槽41には一部窪みが設けられており、この位置に基板45が保持され、不図示の並進装置によって一定の速度で上下する構造になっている。水面上の膜は基板が水中に入っていく際、及び引き上げられる際に基板上に移し取られる。
本発明で用いられるLB膜は、この様な装置を用いて、水面上に展開された単分子層に表面圧をかけながら、基板を水中に出し入れすることで基板上に1層ずつ単分子層を形成することにより得られる。膜の形態、及び性質は、表面圧、基板の押し込み/引き上げの際の移動速度、及び層数でコントロールされる。成膜の際の表面圧は、表面積−表面圧曲線から最適な条件が決定されるが、一般的には数mN/m〜数十mN/mの値である。また、基板の移動速度は、一般的には数mm/分〜数百mm/分である。層数は、数層から数百層の範囲で適宜決定される。LB膜の成膜方法は、以上述べたような方法が一般的であるが、本発明に用いられるLB膜の成膜方法はこれに限定されず、例えば、サブフェイズである水の流動を用いるような方法を用いることもできる。
LB膜の材質も、後述するメソ構造体薄膜の形成プロセスに耐え得るもので、かつメソ構造体中の細孔の一軸配向制御が可能なものであれば基本的に材質には限定はなく、ポリイミド等が好ましく用いられる。
次に、ラビング処理を施した高分子化合物薄膜を形成した基板を用いる方法について説明する。ラビング処理とは、スピンコート等の手法により基板上にポリマーのコーティングを施し、これを布等で一方向に擦る処理のことである。ラビング布はローラーに巻き付けられており、回転するローラーを基板表面に接触させ、基板を固定したステージをローラーに対して一方向に移動させることによってラビングを行う。
ラビング布は使用する高分子材料に対して最適なものを選択するが、ナイロン、レーヨン等一般的なものを使用することができる。ラビング強度は、ローラーの回転数、基板へローラーを押し付ける強度、及び基板を固定したステージの移動速度等のパラメータによって最適化される。ラビング処理を施す高分子化合物は、後述するメソ構造体薄膜の形成プロセスに耐え得るもので、かつメソ構造体中の細孔の一軸配向制御が可能なものであれば基本的に材質には限定はなく、ポリイミド等が好ましく用いられる。
次に、前述した、表面に構造の異方性を有する基板上にメソ構造体の薄膜を作製する方法について説明する。基板上へのメソ構造体薄膜の作製方法は2つの方法に大別される。ひとつは、溶液中から基板表面への不均一核発生−核成長に基づくもので、もうひとつはゾル−ゲル法に基づくものである。
はじめに、溶液中から基板表面への不均一核発生−核成長に基づく方法について説明する。この方法は、シリカメソ構造体薄膜の作製に主に用いられる方法で、結晶成長に類似した方法でメソ構造体の薄膜を作製するものである。この方法では、界面活性剤水溶液に目的の細孔壁構成材料の原料となる物質を添加した前駆体溶液中に、上述の表面に構造の異方性を有する基板を保持することによって、配向性細孔を有するメソ構造体の薄膜が基板上に形成される。
この方法によるメソ構造体の薄膜の形成に用いる反応容器は、例えば図5の様な構成のものである。反応容器51の材質は、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定はなく、ポリプロピレンやテフロン(登録商標)のようなものを用いることができる。反応容器は、反応中に圧力がかかっても破壊されないように、さらにステンレスのような剛性の高い材質の密閉容器に入れることもある。反応容器内には、基板ホルダー53が例えば図5の様に置かれており、基板55はこれを用いて保持される。反応中、メソ構造体の形成は基板上のみならず、溶液中においても起こるために、溶液中の沈殿物が基板上に堆積してしまう。これを防ぐために、基板は反応中膜形成面を下向きにして溶液中に保持される。
反応溶液は、界面活性剤水溶液に酸等を添加して目的の細孔壁を構成する成分の形成に適したpHに調整し、アルコキシドの様な目的とする細孔壁の材料の原料になる物質を添加したものである。アルコキシドを用いる場合には、加水分解の結果生成するアルコールが水に可溶であるようなものが好ましく用いられる。
使用する界面活性剤は、重合して共役高分子化合物を形成し得るような官能基を分子構造中に有するもので、図6B、D、Eに示す、親水基がアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤や、図6A、Cに示す、ポリエチレンオキシドを親水基として有する非イオン性界面活性剤等が好ましい。但し、使用可能な界面活性剤は、これらに限定されるものではない。また、使用する界面活性剤分子の疎水基の長さ、及び親水基の大きさは、目的のメソ構造体の細孔壁に応じて決められる。重合可能な官能基の分子構造中における位置は、最適な重合挙動を示すよう最適化される。
重合して高分子化合物を形成し得る官能基としては、ジアセチレン基、ピロール基、チオフェン基等が特に好ましく、これを構造中に含む界面活性剤を用いることによって後述するように、ポリジアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等を形成することが可能である。
本発明においては、表面に構造の異方性を有する前記基板を、以上説明したような前駆体溶液中に入れ、目的の細孔壁を構成する化合物に対して最適化された温度で1日〜10日程度保持することによって、基板上に、柱状細孔の方向が制御されたメソ構造体の薄膜を作製することができる。膜厚は反応時間等によって制御することが可能である。このメソ構造体においては、重合可能な官能基を分子構造中に有する界面活性剤の集合体が柱状細孔の鋳型になっている。
次に、ゾル−ゲル法に基づく方法について説明する。この方法は、広い材質のメソ構造体薄膜作製に適用可能な、簡便な方法で、界面活性剤と細孔壁の原料とを含む前駆体溶液を、表面に構造の異方性を有する基板上に塗布、もしくは基板上の任意の位置に配置した後、溶媒乾燥、加水分解、縮合等の反応を行う方法である。
この方法で用いられる前駆体溶液は、界面活性剤の溶液に細孔壁を構成する材料の原料を添加したものである。溶媒にはエタノールやイソプロパノール等のアルコールが良好に用いられるが、これらに限定されるわけではなく、目的の細孔壁材料によっては、例えばアルコールと水の混合溶媒、水等が使用可能である。また、反応触媒として酸を加えても良い。
細孔壁材料の原料は、加水分解して目的の材料を形成できる材料であれば特に限定はなく、金属のハロゲン化物、及びアルコキシドが良好に用いられるが、塩化スズ、スズアルコキシド、塩化チタン、チタンアルコキシド、塩化ケイ素、シリコンアルコキシドなどが、特に好ましく用いられる。
使用する界面活性剤は、図6に示した不均一核発生−核成長に基づく方法で使用したのと同様な、重合して共役高分子化合物を形成し得るような官能基を分子構造中に有するものである。しかし使用可能な界面活性剤は、これらの構造のものに限定されるわけではない。また、使用する界面活性剤分子の疎水基の長さ、及び親水基の大きさは、目的のメソ構造体の細孔径に応じて決められる。重合可能な官能基の分子構造中における位置は、最適な重合挙動を示すように最適化される。
以上のような構成の前駆体溶液を、前記表面に構造の異方性を有する基板に塗布もしくは基板上の任意の位置に配置する。塗布する方法には、ディップコーティング、スピンコーティング、ミストコーティング等、種々の方法を使用することができる。これら以外にも、均一な塗布が可能な方法であれば、適用することができる。スピンコートやディップコートを行うための装置は、一般的なものを用いることができ、特に制約はないが、場合によっては溶液の温度を制御するための手段、及びコーティングを行う雰囲気の温度、湿度を制御するための手段を設ける場合もある。
例としてディップコーティングを用いたメソ構造体薄膜の製造方法について説明する。ディップコーティングに用いる装置の一例を図7に模式的に示す。図7において、71は容器、72は基板、73は前駆体溶液である。
メソ構造体薄膜を形成する基板は、基板ホルダー74を用いてロッド75に固定され、zステージ76によって上下させる。基板の異方性の方向は、この場合ディップコートの方向に対して任意の方向に設定可能である。
成膜時、前駆体溶液73は必要に応じてヒーター78と熱電対77を用いて所望の温度に制御される。溶液温度の制御性を向上させるために、容器全体を不図示の断熱容器に入れることもある。薄膜の膜厚は、コーティング条件を変化させることによって制御可能である。
また、前駆体溶液を基板上の任意の位置に配置する方法には、印刷法、インクジェット法、ペンリソグラフィー法等、種々の方法を使用することができる。これらの方法を用いれば、基板上の所望の箇所にメソ構造体薄膜をパターニングすることが可能である。
ソフトリソグラフィー法は、ポリジメチルシロキサン等の材質で作られた弾性のある鋳型(ミクロモールド)を用い、これを基板上に押し付け、型の末端から毛細管現象により前駆体溶液を導入し、細孔壁を形成する物質が重合しメソ構造体が形成された後で、型を取り外し、パターンの作製を行う手法である。この方法では単純な構造であれば非常に簡単にメソ構造体のパターニングを行うことが可能である。
ペンリソグラフィー法は、前駆体溶液をインクのように使い、ペン先から塗布しラインを描くもので、ペン形状、ペンや基板の移動速度、ペンへの流体供給速度等を変化させることで、自由にライン幅を変化させることが可能であり、現在μmオーダーからmmオーダーまでのライン幅で描くことが可能である。直線、曲線等任意のパターンを描くことが可能であり、基板に塗布された反応溶液の広がりが重なるようにすれば、面状のパターニングも可能である。
また、不連続のドット形状のパターンを描きたい場合は、インクジェット法がさらに有効である。これは、反応溶液をインクのように使い、インクジェットノズルから一定量を液滴として吐出し塗布するものである。また、基板に着弾した前駆体溶液の広がりが重なるように塗布すれば、ライン状のパターニングも面状のパターニングも可能である。
現在、インクジェット法による一液滴の吐出量は数plからコントロールが可能で、非常に微小なドットを形成することが可能であり、微小なドット形状のパターニングの際に有利である。
さらに、これらのペンリソグラフィー法、インクジェット法等の塗布方法はCAD等コンピュータシステムを使うことによって容易に所望のパターンを決めることができる。よって、マスクを変えるといった通常のフォトリソグラフィーのパターニングとは異なり、多種なパターンを多種な基板に形成する場合、生産効率上非常に有利である。
以上、説明したような方法によって、表面に構造の異方性を有する基板上に、重合可能な官能基を分子構造中に含む界面活性剤の集合体を柱状細孔内に包含する配向性メソ構造体薄膜が得られる。この薄膜は、次に説明する共役高分子化合物を含む配向性メソ構造体薄膜の前駆体薄膜と位置付けられる。
以上のようにして作製したメソ構造体薄膜に対して、熱又は光による刺激を与えるかもしくは酸化剤等による化学反応を起こし、各々の細孔中に存在する界面活性剤分子を重合させ、細孔内で高分子化合物を形成させる。分子構造中にジアセチレン基、ピロール基、チオフェン基等を有する界面活性剤を用いると、それぞれ細孔内に共役高分子であるポリジアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等を作製することが可能である。
共役高分子の形成は赤外吸収スペクトル、紫外可視吸収スペクトル、及び蛍光スペクトルによって確認することが可能であり、また、吸収スペクトル、発光スペクトルの偏光測定より、細孔内の高分子鎖の配向を確認することが可能である。
以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明を説明する。
本実施例は、ラビング処理を施した基板を用い、ジアセチレン基を含むカチオン性界面活性剤を用いて不均一核発生−核成長により、基板上に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
アセトン、イソプロピルアルコール、及び純水で洗浄し、オゾン発生装置中で表面をクリーニングした石英ガラス基板上に、ポリアミック酸AのNMP溶液をスピンコートにより塗布し、200℃で1時間焼成して、以下の構造を有するポリイミドAを形成した。
これに対して、表1の条件でラビング処理を施し、基板として用いた。
この基板上に、重合可能な官能基を分子構造中に含む界面活性剤を用いて、シリカメソ構造体薄膜を形成する。
本発明で使用したカチオン性界面活性剤Aの分子構造は以下に示すものである。
界面活性剤A 0.36gを12.8mlの純水に溶解し、6.8mlの濃塩酸(36%)を添加した。これに0.28mlのテトラエトキシシランを添加し、3分間撹拌した。
ラビング処理を施したポリイミド膜を形成した上記基板を、ポリイミドの面を下向きにして、この反応溶液中に保持し、反応溶液を入れた容器を密閉した後、80℃で3日間反応させた。良好な一軸配向性シリカメソ構造体薄膜を得るために、反応中スペーサーを介して表面にカバーを施した。反応容器は、図5に模式的に示したようなものを用いた。
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で充分に洗浄した後に、室温において自然乾燥させた。基板上には、シリカメソ構造体の連続膜が形成されており、光学顕微鏡でこの膜を観察したところ、ラビング方向に直交する方向に一軸配向したテクスチュアが観察され、細孔構造の配向性が示唆された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔3.56nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の柱状細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。この方法は、非特許文献2に記載されているような、基板に垂直な(110)面に起因するX線回折強度の面内回転依存性を測定するためのもので、細孔の配向方向とその分布を調べることができる。本実施例で測定された(110)面回折強度の面内回転角度依存性より、本実施例で作製されたシリカメソ構造体薄膜中では、細孔はポリイミドのラビング方向に直交する方向に配向しており、その配向方向の分布は半値幅が約12°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成されていることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に垂直、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1で使用したものと同じ界面活性剤Aを用い、シリコン(110)単結晶基板を用いて、一軸配向性のメソ構造体薄膜を作製し、配向性のポリジアセチレンを細孔内で作製した例である。
シリカメソ構造体作製に用いる反応溶液は、実施例1で使用したものと同じであり、反応容器も実施例1と同じものを使用した。
基板に用いたシリコンは、片面研磨、p型、比抵抗100ΩcmのSi(110)基板で、2cm×2cmの大きさにカットした後、1%のフッ化水素酸溶液で処理し、表面の自然酸化膜を除去した後に使用した。自然酸化膜が除去されるとシリコンウエハーの表面は疎水性になるために自然酸化膜の除去を確認することができる。この処理の後、基板を純水で充分に洗浄した後に、研磨面が下向きになるように基板ホルダーに挟み、反応溶液中に静置し、80℃で3日間反応させ、膜を形成させた。
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で充分に洗浄した後に、室温において自然乾燥させた。基板上には、シリカメソ構造体の連続膜が形成されており、光学顕微鏡でこの膜を観察したところ、一軸配向したテクスチュアが観察され、細孔構造の配向性が示唆された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、実施例1で作製した膜において観測されたのと同じ、面間隔3.56nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の柱状細孔の一軸配向性を、実施例1と同様、面内X線回折分析によって評価した。その結果、本実施例で作製した膜中での細孔の配向方向の分布は半値幅が約29°であることが示された。また、透過電子顕微鏡による観察及び電子線回折分析により、細孔の配向方向は、<001>方向であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、シリコン(110)面上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。本実施例のメソ構造体薄膜では、細孔の配向分布は実施例1で作製した薄膜中における分布に比較して広いものの、ラビングのような工程が不要で、かつ導電性基板上に直接膜形成が可能であるという利点を有している。
このメソ構造体薄膜に、高圧水銀灯の254nmの紫外光を4時間照射した。紫外光照射前後における赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、光照射前のメソ構造体薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、照射後には強度が減少しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、光照射前には確認されなかった蛍光が、照射後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成していることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はSi基板の<001>の方向、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
光重合を用いる方法は、本実施例に関して言えば、赤外吸収スペクトルよりわかるように重合が完全ではない可能性があるものの、マスクを用いて光照射を行うことにより、重合させる部分をパターニングできるという特長を有している。
本実施例は、実施例1、2で使用したものと同じ界面活性剤Aを用い、ラングミュア−ブロジェット膜(LB膜)を形成したガラスを用いて、一軸配向性のメソ構造体薄膜を作製し、配向性のポリジアセチレンを細孔内で作製した例である。実施例1で使用したポリイミドと同じ構造のポリイミドLB膜を使用し、反応溶液組成、反応容器ともに、実施例1、2で使用したものと同じものを用いた。
ポリアミック酸AとN,N−ジメチルヘキサデシルアミンとを1:2のモル比で混合し、ポリアミック酸AのN,N−ジメチルヘキサデシルアミン塩を作製した。これをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し0.5mMの溶液とし、この溶液を20℃に保ったLB膜成膜装置の水面上に滴下した。水面上に形成された単分子膜は、30mN/mの一定の表面圧を印加しながら、5.4mm/minのディップ速度で基板上に移しとった。
基板はアセトン、イソプロピルアルコール、及び純水で洗浄し、オゾン発生装置中で表面をクリーニングした石英ガラス基板に、疎水処理を行ったものを用いた。
基板上に30層のポリアミック酸アルキルアミン塩LB膜を成膜した後、窒素ガスフロー下で300℃、30分間焼成してポリイミドAのLB膜を形成した。ポリアミック酸の脱水閉環によるイミド化、及びアルキルアミンの脱離は赤外吸収スペクトルにより確認した。形成されたポリイミドLB膜中の高分子鎖の配向性は、赤外吸収スペクトルの2色性により分析し、高分子鎖はLB膜作製時の基板の引き上げ方向に平行に配向していることが確かめられた。
実施例1、2で使用した、分子構造中にジアセチレン基を含む界面活性剤Aを使用し、実施例1、2と同じ組成の前駆体溶液を調整した。上記のLB膜を形成した基板を、膜形成面を下向きにしてこの溶液中に保持し、反応溶液を入れた容器を密閉した後、80℃で3日間反応させた。良好な一軸配向性シリカメソ構造体薄膜を得るために、反応中スペーサーを介して表面にカバーを施した。
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で充分に洗浄した後に、室温において自然乾燥させた。基板上には、シリカメソ構造体薄膜が形成されており、光学顕微鏡でこの膜を観察したところ、LB膜作製時の基板の引き上げ方向に直交する方向に一軸配向したテクスチュアが観察され、細孔構造の配向性が示唆された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔3.60nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の柱状細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、LB膜作製時の基板の引き上げ方向に直交する方向に配向しており、配向方向の分布は半値幅が約15°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ポリイミドのLB膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成していることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はLB膜の引き上げ方向に垂直、すなわち細孔の配向方向に、偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1と同じラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、実施例1〜3で使用した界面活性剤Aとを用い、実施例1〜3で使用したシリコンアルコキシドの代わりに、以下の構造で示される前駆体(1.4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン)を使用して、柱状の細孔が一方向に配列した有機−無機ナノコンポジットで構成される細孔壁を有するメソ構造体の薄膜を形成し、細孔内において共役高分子鎖の重合を行った例である。
界面活性剤A 0.36gを12.8mlの純水に溶解し、3.8mlの濃塩酸(36%)を添加した。これに0.50gの1.4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼンを添加し、3分間撹拌した。
ラビング処理を施したポリイミドを形成した上記基板を、ポリイミドの面を下向きにして、この反応溶液中に保持し、反応溶液を入れた容器を密閉した後、70℃で3日間反応させた。良好な一軸配向性シリカメソ構造体薄膜を得るために、反応中スペーサーを介して表面にカバーを施した。
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で充分に洗浄した後に、室温において自然乾燥させた。基板上には、シリカメソ構造体の連続膜が形成されており、光学顕微鏡でこの膜を観察したところ、ラビング方向に直交する方向に一軸配向したテクスチュアが観察され、細孔構造の配向性が示唆された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔3.48nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の柱状細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に直交する方向に配向しており、配向方向の分布は半値幅が約14°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有する、シリカ−有機物ハイブリッド材料の細孔壁を有するメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子、及び細孔壁の有機成分が分解されることなしに界面活性剤分子間の重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成していることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に垂直、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、ラビング処理を施した基板を用い、ジアセチレン基を含む非イオン性界面活性剤を用いて、ゾル−ゲル法に基づく方法によって基板上に一軸配向性の柱状細孔を有する酸化スズメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
本実施例で使用した非イオン性界面活性剤Bは以下のような構造のものである。
20gのエタノールに、非イオン性界面活性剤B 2.0gを溶解した後、5.2gの四塩化スズを添加し、均一な溶液を得た。
実施例1で作製した、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板に、ディップコーティングによってこの溶液を塗布し、40℃、相対湿度20%の雰囲気において乾燥させた。ディップコートの際、基板のラビング方向とディップコートの方向は平行、及び垂直とした。
10時間乾燥後、この薄膜を40℃、相対湿度80%の雰囲気に40時間保持し、再び相対湿度を20%に低下させた。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.60nmに相当する、ヘキサゴナル構造の酸化スズメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
この酸化スズメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に平行な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約36°であることが示された。
ディップコート時の方向が、ラビング方向に平行な場合と垂直な場合とでは、観測された配向状態には差異は認められず、観測された柱状細孔の配向はラビング処理によって付与された基板の配向規制力に起因するものであることが示された。
この酸化スズメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱により、細孔構造周期は収縮するものの、細孔構造は保持されることが、X線回折分析により示された。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに界面活性剤分子間の重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成していることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に平行、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、ラビング処理を施した基板を用い、ジアセチレン基を含む非イオン性界面活性剤を用いて、ゾル−ゲル法に基づく方法によって基板上に一軸配向性の柱状細孔を有する酸化チタンメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
本実施例で使用した非イオン性界面活性剤Bは実施例5で使用したものと同じ、非イオン性界面活性剤Bである。
20gのエタノールに、非イオン性界面活性剤B 2.0gを溶解した後、3.8gの四塩化チタンを添加し、均一な溶液を得た。
実施例1で作製した、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板に、ディップコーティングによってこの溶液を塗布し、40℃、相対湿度20%の雰囲気において乾燥させた。ディップコートの際、基板のラビング方向とディップコートの方向は平行、及び垂直とした。
10時間乾燥後、この薄膜を40℃、相対湿度80%の雰囲気に1時間保持し、再び相対湿度を20%に低下させた。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.56nmに相当する、ヘキサゴナル構造の酸化チタンメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
この酸化チタンメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に平行な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約39°であることが示された。
ディップコート時の方向が、ラビング方向に平行な場合と垂直な場合とでは、観測された配向状態には差異は認められず、観測された柱状細孔の配向はラビング処理によって付与された基板の配向規制力に起因するものであることが示された。
この酸化チタンメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱により、細孔構造周期は収縮するものの、細孔構造は保持されることが、X線回折分析により示された。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに界面活性剤分子間の重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成していることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に平行、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1と同じラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、実施例1〜4で使用した界面活性剤Aとを用い、ディップコート法によって基板上に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤A 1.6gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板に、ディップコーティングによってこの溶液を塗布し、25℃、相対湿度50%の雰囲気において乾燥させた。ディップコートの際、基板のラビング方向とディップコートの方向は平行、及び垂直とした。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.08nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に垂直な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約8°であることが示された。
ディップコート時の方向が、ラビング方向に平行な場合と垂直な場合とでは、観測された配向状態には差異は認められず、観測された柱状細孔の配向はラビング処理によって付与された基板の配向規制力に起因するものであることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内でポリジアセチレンが形成されていることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に垂直、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1と同じラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、チオフェン基を含むカチオン性界面活性剤を用いて、ディップコート法によって基板上に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を化学酸化重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
本実施例で使用したカチオン性界面活性剤Eは図6に示した構造のものである。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤E 2.3gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板に、ディップコーティングによってこの溶液を塗布し、25℃、相対湿度50%の雰囲気において乾燥させた。ディップコートの際、基板のラビング方向とディップコートの方向は平行、及び垂直とした。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.12nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、基板上で一軸配向していることが明らかとなった。さらに、ディップコート時の方向が、ラビング方向に平行な場合と垂直な場合とでは、観測された配向状態には差異は認められず、観測された柱状細孔の配向はラビング処理によって付与された基板の配向規制力に起因するものであることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のチオフェン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このシリカメソ構造体薄膜を、塩化鉄のジエチルエーテル溶液に室温で、1分間浸漬し、界面活性剤のチオフェン基の重合を行った。浸漬前後のメソ構造体薄膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果、浸漬後の薄膜のスペクトルにおいてのみ、ブロードな吸収が500nmに観測され、界面活性剤分子間での重合反応が起こっていることが確認された。すなわち、細孔内においてポリチオフェンが形成していることが確認された。観測された吸収の偏光特性を調べた結果、吸収スペクトルに大きな異方性が生じた。このことから、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、ラビング処理を施した基板を用い、ピロール基を含むカチオン性界面活性剤を用いて、スピンコート法によって基板上に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を化学酸化重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
本実施例で使用したカチオン性界面活性剤Dは図6に示した構造のものである。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤D 1.6gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
実施例1で作製した、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板に、スピンコーティングによってこの溶液を塗布した。スピンコーティングは、回転数:2000rpm、回転時間:20secに調整して成膜を行った。膜作製後は、25℃、相対湿度50%の雰囲気において乾燥させた。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.10nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に平行な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約13°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のピロール基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このシリカメソ構造体薄膜を、塩化鉄のジエチルエーテル溶液に室温で、1分間浸漬し、界面活性剤のピロール基の重合を行った。浸漬前後のメソ構造体薄膜の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定した結果、浸漬後の薄膜のスペクトルにおいてのみ、ブロードな吸収が1000nmに観測され、界面活性剤分子間での重合反応が起こっていることが確認された。すなわち、細孔内においてポリピロールが形成していることが確認された。観測された吸収の偏光特性を調べた結果、吸収はラビング方向に平行、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、ラビング処理を施した基板を用い、ピロール基を含むカチオン性界面活性剤を用いて、ミストコート法によって基板上に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を化学酸化重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
本実施例で使用したカチオン性界面活性剤Dは図6に示した構造のものである。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤D 1.6gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
実施例1で作製した、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板に、前駆体溶液をミストとして吹き付け塗布し、膜作製後は、25℃、相対湿度50%の雰囲気において乾燥させた。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.12nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に平行な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約14°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のピロール基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このシリカメソ構造体薄膜を、塩化鉄のジエチルエーテル溶液に室温で、1分間浸漬し、界面活性剤のピロール基の重合を行った。浸漬前後のメソ構造体薄膜の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定した結果、浸漬後の薄膜のスペクトルにおいてのみ、ブロードな吸収が1000nmに観測され、界面活性剤分子間での重合反応が起こっていることが確認された。すなわち、細孔内においてポリピロールが形成していることが確認された。観測された吸収の偏光特性を調べた結果、吸収はラビング方向に平行、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1と同じラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、実施例1〜4で使用した界面活性剤Aとを用い、ソフトリソグラフィー法によって基板上の任意の位置に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤A 1.6gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板上に、ポリジメチルシロキサンで作製した鋳型であるミクロモールドを押し付け、型の端から前駆体溶液を注ぎ、毛細管現象を利用することで鋳型内に前駆体溶液を導入した。5時間静置した後、基板から型を外し、パターニングされたメソ構造体薄膜を得た。
この基板を空気中に乾燥後に観察すると、ソフトリソグラフィー法で塗布された領域のみに透明な薄膜が形成されていることが確認された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.07nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に垂直な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約11°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内でポリジアセチレンが形成されていることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に垂直、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1と同じラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、実施例1〜4で使用した界面活性剤Aとを用い、ペンリソグラフィー法によって基板上の任意の位置に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤A 1.6gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板上に、ペンリソグラフィー法によって、図8のようにこの溶液をパターニングし、室温、空気中で乾燥させた。ペンリソグラフィーの条件はペンオリフィス50.0μm、基板スピード2.5cm/s、流体供給速度4.0cmである。
この基板を空気中に乾燥後に観察すると、ペンリソグラフィーによって塗布された領域のみに透明な薄膜が形成されていることが確認された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.09nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に垂直な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約10°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内でポリジアセチレンが形成されていることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に垂直、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
本実施例は、実施例1と同じラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、実施例1〜4で使用した界面活性剤Aとを用い、インクジェット法によって基板上の任意の位置に一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を形成し、この細孔内で界面活性剤を熱重合させて、配向性の高分子鎖を有する共役高分子化合物を細孔内で形成した例である。
20gのエタノールに、カチオン性界面活性剤A 1.6gを溶解した後、4.2gのテトラエトキシシランを添加し、均一な溶液を得た。この溶液に、0.27gの水と0.8gの0.1M塩酸を加えた後、2時間撹拌することで前駆体溶液を調整した。
ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した石英基板上に、インクジェット法によって、図8のようにこの溶液をパターニングし、室温、空気中で乾燥させた。
この基板を空気中に乾燥後に観察すると、インクジェットによって塗布された領域のみに透明な薄膜が形成されていることが確認された。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.12nmに相当する、ヘキサゴナル構造のシリカメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
このシリカメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔は、ラビング方向に垂直な方向に配向していることが明らかとなり、配向方向の分布は半値幅が約12°であることが示された。
以上のことより、疎水基に重合性のジアセチレン基を有する界面活性剤を用いて、ラビング処理を施したポリイミド薄膜を形成した基板上に、良好な一軸配向性の柱状細孔を有するシリカメソ構造体薄膜を作製できることが示された。
このメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内でポリジアセチレンが形成されていることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光はラビング方向に垂直、すなわち、細孔の配向方向に偏光した成分を主として含んでいることが確認され、細孔中での高分子鎖の配向制御、さらにはマクロスコピックなスケールでの共役高分子鎖の配向の達成が確認された。
[比較例1]
実施例5で調整したものと同じ、四塩化スズと非イオン性界面活性剤Bのエタノール溶液を用い、表面にコーティング及び特別な処理のなされていない、等方的な石英ガラス基板に、ディップコーティングによって、この前駆体溶液を塗布した。
これを、実施例5で行ったのと同様に、40℃、相対湿度20%の雰囲気中で10時間乾燥させた後、40℃、相対湿度80%の雰囲気に40時間保持し、再び相対湿度を20%に低下させた。得られた薄膜は、完全に透明で、均一性に優れたものであった。
この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔4.60nmに相当する、ヘキサゴナル構造の酸化スズメソ構造体の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜はロッド状細孔がヘキサゴナルパッキングした細孔構造を有することが確かめられた。
この酸化スズメソ構造体薄膜中の細孔の一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線回折分析による評価を行った。その結果、作製した薄膜中の細孔の配向状態は、完全に等方的で、特異な方向でのX線回折強度の増大は認められなかった。
この酸化スズメソ構造体薄膜を窒素ガス雰囲気下において170℃で3時間加熱し、界面活性剤のジアセチレン基の重合を行った。加熱により、細孔構造周期は収縮するものの、細孔構造は保持されることが、X線回折分析により示された。加熱前後のメソ構造体薄膜の赤外吸収スペクトルをATR法で測定した結果、加熱前の薄膜において2260cm−1に観測されていた強いアセチレン結合の吸収帯が、加熱後には消失しており、その一方で、その他のピークには差異が認められなかった。これより界面活性剤分子が分解されることなしに界面活性剤分子間の重合反応が起こっていることが確認された。また、加熱前には確認されなかった蛍光が、加熱後の薄膜では確認され、これより、細孔内においてポリジアセチレンが形成していることが確認された。観測された蛍光の偏光特性を調べた結果、蛍光の強度には偏光依存性が観測されず、高分子鎖には特異的な配向方向が存在していないことが確認された。
本発明のメソ構造体では柱状細孔が一方向に配向制御されている。また、共役高分子をその細孔内で形成させることによって、マクロスコピックなスケールで、共役高分子が一方向に配向した構造体を作製することができる。本発明のメソ構造体は、吸着・分離材や触媒といったような従来の多孔体の応用に加えて、電子材料や光学材料に関する応用が期待される。
本発明において作製された、配向性の共役高分子(ポリジアセチレン誘導体)鎖を細孔内に含むメソ構造体薄膜の模式図である。
本発明において作製された、配向性の共役高分子(ポリピロール誘導体)鎖を細孔内に含むメソ構造体薄膜の模式図である。
本発明において作製された、配向性の共役高分子鎖を細孔内に含むメソ構造体薄膜の前駆体である、重合前のメソ構造体の模式図である。
本発明において用いられる、ラングミュア−ブロジェット膜の作製装置を示す模式図である。
本発明において、不均一核発生−核成長によって配向性の柱状細孔を有するメソ構造体薄膜を作製するための反応容器を説明する模式図である。
本発明で好ましく用いられる界面活性剤の構造を示す化学構造式に関する図である。
本発明におけるシリカメソ構造体薄膜を形成するためのディップコーティング装置を説明する模式図である。
本発明の実施例11及び12で形成したシリカメソ構造体薄膜のパターンを示す説明図である。
符号の説明
11: 表面に構造異方性を有する基板
12: メソ構造体薄膜
13: 細孔
14: 高分子鎖
21: 高分子鎖
31: ミセルの断面
32: 重合性の官能基を有する界面活性剤分子
41: 水槽
42: 純水
43: 固定バリア
44: 可動バリア
45: 基板
46: 水面上の単分子層
51: 容器
52: 蓋
53: 基板ホルダー
54: Oリング
55: 基板
71: 容器
72: 基板
73: 前駆体溶液
74: 基板ホルダー
75: ロッド
76: zステージ
77: 熱電対
78: ヒーター
81: 基板露出部位
82: シリカメソ構造体薄膜形成部位