JP2002040501A - 非線形光学素子、その駆動方法および製造方法 - Google Patents

非線形光学素子、その駆動方法および製造方法

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JP2002040501A JP2000223640A JP2000223640A JP2002040501A JP 2002040501 A JP2002040501 A JP 2002040501A JP 2000223640 A JP2000223640 A JP 2000223640A JP 2000223640 A JP2000223640 A JP 2000223640A JP 2002040501 A JP2002040501 A JP 2002040501A
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nonlinear optical
silica
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Hirokatsu Miyata
浩克 宮田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非線形光学特性を示す化合物を細孔内に担持
したシリカメソ構造体薄膜またはメソポーラスシリカ薄
膜を挟んで形成された一対の電極間に電界を印加するこ
とによって、発生する第二次高調波光強度を制御するこ
とが可能な非線形光学素子を提供する。 【解決手段】 非線形光学特性を有する化合物を細孔中
に担持した多孔質薄膜14と、該多孔質薄膜の両側に配
置され、薄膜の厚さ方向に電界を印加するための一対の
電極12,13とを有する非線形光学素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非線形光学素子、そ
の駆動方法および製造方法に関し、特に無機酸化物多孔
体の応用に関連し、より詳しくは細孔構造の制御された
シリカメソ構造体薄膜を用いて作成された新規な光学素
子、その駆動方法および製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】非線形光学効果は、小型青色レーザーの
作成に応用される可能性があるために様々な研究がなさ
れており、第二次高調波や第三次高調波を用いた装置、
デバイスが既に作成されている。特に有機非線形材料
は、その高い非線形性ゆえに非常に有望な材料である
が、多くの場合その熱的、光学的な安定性が問題とな
る。さらに、2次の非線形光学効果が発現されるために
は、対象の材料が点対称中心を持たないことが要求され
る。有機非線形材料の中には、個々の分子は点対称中心
を有していなくても、結晶状態において点対称中心を有
するものがあり、この様な材料では、高い非線形効果を
示す潜在能力はあるにもかかわらず結晶状態では第二次
高調波の発生は観測されない。
【0003】これらの問題点を克服するために、ホスト
−ゲストの化学を応用し、これらの非線形光学材料を、
ホスト材料のフレームワーク中に取り込んで、優れた非
線形光学特性を有する複合材料を作成しようという試み
がなされている。層状やケージ状の結晶空間に代表され
るようなナノメータスケールでの空間を有する無機化合
物は、機械的強度に優れており、有望なホスト材料であ
る。ALPO−5、MPS3 、サポナイト、カオリナイ
ト、等が用いられ、非線形光学特性を有するゲスト材料
としては、パラニトロアニリン、ジメチルアミノベンゾ
ニトリル等が用いられている。例えば、結晶状態では非
線形光学効果を発現しないパラニトロアニリンをALP
O−5の結晶空間中に取り込むことによって、高い非線
形光学効果を示す複合体が得られたという報告が“Jo
urnal of the American Che
mical Society”の第110巻第2986
頁に記載されている。
【0004】無機ホスト材料として、このような結晶性
の空間を有するものの他に、非晶質な多孔体を用いるこ
とも可能である。例えば、界面活性剤の集合体を鋳型に
して形成されるメソポーラスシリカは、結晶性の多孔質
物質に比較して大きな径の規則的な細孔を有する非晶質
の多孔質シリカであるが、このメソポーラスシリカにパ
ラニトロアニリンを担持させ、第二次高調波の発生を確
認した例も報告されている。メソポーラスシリカは、そ
のマクロスコピックな形態を制御し、ファイバー、薄膜
等の形態に成型することが可能であり、非線形光学材料
以外の物質を担持するためのホスト材料としても注目さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】無機化合物のホスト材
料に非線形光学効果を示す有機物を担持させて形成され
る、非線形光学効果を示す無機−有機複合体には以下の
ような問題点があった。
【0006】すなわち、結晶性無機ホスト材料の多くは
粉末状の形態を有しているため、実用的な形態に成型す
るのが困難で、デバイス作成には好ましくなかった。一
方で、マクロスコピックな形態を制御可能なメソポーラ
スシリカのような非晶質の無機ホスト材料は、細孔径が
大きいために細孔内でのゲスト種の配置が一義的に決定
されず、ゲストの制御性という観点で問題があった。
【0007】本発明は、この様な従来技術の問題点を解
決するためになされたものであり、非線形光学特性を示
す化合物を細孔内に担持したシリカメソ構造体薄膜また
はメソポーラスシリカ薄膜を挟んで形成された一対の電
極間に電界を印加することによって、発生する第二次高
調波光強度を制御することが可能な非線形光学素子、そ
の駆動方法および製造方法を提供することを目的とする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点に
鑑みなされたもので、メソポーラスシリカの透明連続膜
をホスト材料に用い、かつ細孔内に担持された非線形光
学特性を示すゲスト種の、方向性を制御したものであ
る。
【0009】すなわち、本発明の第一の発明は、非線形
光学特性を有する化合物を細孔中に担持した多孔質薄膜
と、該多孔質薄膜を挟むように配置され、薄膜の厚さ方
向に電界を印加するための一対の電極とを有することを
特徴とする非線形光学素子である。
【0010】本発明の第二の発明は、導電性基板と、該
導電性基板上に形成された、非線形光学特性を有する化
合物を細孔中に担持した多孔質薄膜と、該多孔質薄膜の
上面に形成された電極とを有することを特徴とする非線
形光学素子である。
【0011】本発明の第三の発明は、非線形光学特性を
有する化合物を細孔中に担持した多孔質薄膜と、該多孔
質薄膜を挟むように配置され、薄膜の厚さ方向に電界を
印加するための一対の電極とを有する非線形光学素子の
駆動方法であって、素子に光を照射した際に発生する第
二次高調波光の強度を、上記電極間に印加する電界によ
って制御することを特徴とする非線形光学素子の駆動方
法である。
【0012】本発明の第四の発明は、導電性基板と、該
導電性基板上に形成された非線形光学特性を有する化合
物を細孔中に担持した多孔質薄膜と、該多孔質薄膜の上
面に形成された電極とを有する非線形光学素子の駆動方
法であって、素子に光を照射した際に発生する第二次高
調波光の強度を、該導電性基板と上面の電極の間に印加
する電界によって制御することを特徴とする非線形光学
素子の駆動方法である。
【0013】上記の第一乃至第四の本発明の非線形光学
素子に用いられる多孔質薄膜としては、界面活性剤を鋳
型にして形成されるシリカメソ構造体、もしくは該シリ
カメソ構造体から界面活性剤を除去したメソポーラスシ
リカが良好に用いられる。さらに、本発明の非線形光学
素子に用いられる多孔質薄膜として、多孔質薄膜中での
チューブ状の細孔が一軸配向性を有している2次元ヘキ
サゴナル構造の細孔構造を有するシリカメソ構造体薄膜
もしくはメソポーラスシリカ薄膜を用いた場合に特に良
好な特性の素子を作成することが可能である。
【0014】また、本発明の第五の発明は、基板上に電
極材料の薄膜を形成する工程と、該電極が形成された基
板上に細孔内部に非線形光学特性を示す化合物を担持し
た多孔質材料の薄膜を形成する工程と、該多孔質材料の
薄膜上に電極を形成する工程とを含むことを特徴とする
非線形光学素子の製造方法である。
【0015】また、本発明の第六の発明は、導電性を有
する基板上に細孔内部に非線形光学特性を示す化合物を
担持した多孔質材料の薄膜を形成する工程と、該多孔質
材料の薄膜上に電極を形成する工程とを含むことを特徴
とする非線形光学素子の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、実施態様を用いて本発明を
説明する。本発明の非線形光学素子は、例えば図1に模
式的に示すような構成のものである。
【0017】図1において、基板11の上に電極12が
形成され、この電極12上にシリカメソ構造体またはメ
ソポーラスシリカの薄膜14が形成されており、その細
孔内には非線形光学特性を示す材料が担持されている。
ここでいうシリカメソ構造体とは、細孔内に鋳型となる
界面活性剤の集合体を保持した状態のものを指し、細孔
内から界面活性剤を除去することによってメソポーラス
シリカとなる。このシリカメソ構造体薄膜、もしくはメ
ソポーラスシリカの薄膜の上には、さらにもうひとつの
電極13が形成されており、相対する2つの電極の間に
電界を印加することができる構成になっている。15は
2つの電極12,13間に電圧を印加する電源である。
【0018】この構成において、基板に用いられる材料
は、素子作成時のプロセスに耐ええるものであれば特に
制約はなく、ガラス、セラミクス等の一般的な材料を用
いることができる。基板上に形成する電極材料に関して
も、素子作成時のプロセスに耐え得る導電性の高い材料
であれば特に制約はなく、金属、インジウム−スズ系酸
化物(ITO)の薄膜などを用いることができる。シリ
カメソ構造体薄膜、またはメソポーラスシリカ薄膜の上
に形成される電極材料に関しても、特に制約はない。こ
れらの電極は、例えばスパッタリングのような手法を用
いて形成することができる。
【0019】基板として、シリコンのような導電性を有
する基板を用いた場合には、上記製造方法において、基
板に電極を形成する工程は不要になり、図2に示すよう
に、導電性基板21そのものを電極代わりに使用するこ
とが可能である。
【0020】非線形光学特性を示す化合物を細孔内に担
持したシリカメソ構造体の作成方法に関しては、いくつ
かの方法がある。最も簡便な方法は、界面活性剤、シリ
カ源であるシリコンアルコキシド、及び非線形光学特性
を有する有機化合物を溶解した前駆体水溶液をスピンコ
ーティング、ディップコーティング等の手法によって基
板上に塗布する方法である。これらの方法を用いた場
合、界面活性剤と非線形光学特性を示す化合物が細孔内
に共に担持された膜を直接簡単な方法で作成することが
できる。この方法で形成されるシリカメソ構造体の薄膜
は、膜厚が0.1μm〜10μm程度のもので、スピン
コーティングの回転数やディップコーティングの速度、
及び溶液の濃度等のパラメータを調整することによって
制御することが可能である。コーティングした膜が完全
に乾燥してシリカが固まった後に、繰り返し成膜するこ
とで、さらに厚い膜を形成することが可能である。
【0021】ここで、使用する界面活性剤は、4級アル
キルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリ
エチレンオキシドを親水基として有する非イオン性界面
活性剤等の一般的な界面活性剤の中から、目的のシリカ
メソ構造体の構造や細孔径に応じて適宜選択される。シ
リコンアルコキシドとしては、テトラメトキシシランや
テトラエトキシシランが一般的に用いられるが、この2
種類に限定されるわけではない。また、非線形光学特性
を示す化合物としては、例えばパラニトロアニリンや
N,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンのようなもの
が使用されるが、非線形光学効果を示す材料であって細
孔内に導入できるものであれば使用することができる。
【0022】非線形光学特性を示す化合物を細孔内に担
持したシリカメソ構造体の作成方法は上記の方法に限定
されず、界面活性剤とシリコンアルコキシドのみを含む
前駆体溶液を基板上に塗布し、メソ構造体の薄膜を形成
した後に、細孔内の界面活性剤を除去し、空になった細
孔に対して非線形光学特性を有する化合物を導入する方
法も可能である。この方法は、界面活性剤を除去し、非
線形光学特性を有する化合物を吸着させるという2段階
のプロセスが増え、素子作成に要する時間とコストが増
大するが、水に溶解しにくいゲスト化合物に関しては、
上述の方法に比較して細孔内への導入量を増大させるこ
とができるという長所を有している。
【0023】細孔中から界面活性剤を除去する方法はい
くつかあり、焼成、溶剤抽出、超臨界状態の流体を用い
た抽出、オゾン処理等の中から選ばれる。例えば、空気
中、550℃で10時間焼成することによって、メソ構
造、及びその一軸配向性をほとんど破壊することなくメ
ソ構造体薄膜から完全に界面活性剤を除去することがで
きる。また、溶剤抽出を用いると、100%の界面活性
剤の除去は困難ではあるものの、焼成に耐えられない材
質の基板上にメソポーラス薄膜を形成することが可能で
ある。
【0024】細孔中に非線形光学特性を有する化合物を
導入する方法には、大別して目的の化合物の溶液中に膜
を浸漬する方法と、真空中で目的の化合物を加熱して蒸
気を発生させ、気相から導入する方法の2つの方法があ
るが、どちらの方法によっても良好に細孔内に目的の物
質を導入することが可能である。
【0025】シリカメソ構造体の空間構造に関しては種
々のものを用いることが可能で、立方晶構造、二次元ヘ
キサゴナル構造、三次元ヘキサゴナル構造のいずれも適
用可能であり、界面活性剤を適当に選択することで、構
造の異なるシリカメソ構造体を得ることができる。
【0026】シリカメソ構造体の細孔構造において最も
一般的な構造は、二次元ヘキサゴナル構造であるが、こ
の構造の膜を上述のスピンコーティングやディップコー
ティングを用いて形成する場合には形成されるシリカメ
ソ構造体中におけるチャンネルの方向はほぼランダムで
ある。しかし、次に述べるように、一軸配向性のメソチ
ャンネルを有するシリカメソ構造体薄膜を形成する技術
も開発されており、このようなチャンネルの方向の揃っ
たシリカメソ構造体薄膜を用いた場合に、特に電界印加
時の第二次高調波の発生効率の良い素子を作成すること
が可能である。
【0027】ここで、一軸配向性のチャンネル構造を有
するシリカメソ構造体薄膜の作成方法について説明す
る。一軸配向性のチャンネル構造を有するシリカメソ構
造体の薄膜は、配向規制力を有する基板表面と界面活性
剤との相互作用を利用して形成することが可能である。
【0028】配向規制力を有する基板としては、大別し
て次の3種類のものが適用可能である。第一は、ダイヤ
モンド型の結晶構造を有するシリコン単結晶の(11
0)面のような異方性の強い表面原子配列を有する結晶
性基板である。第二は、表面にポリイミドのような高分
子化合物の薄膜を形成した後に、布を巻きつけたローラ
ー等を用いて、表面にラビング処理を施した基板であ
る。第三は、表面にポリイミドのような高分子化合物の
ラングミュア−ブロジェット膜(LB膜)を形成した基
板である。LB膜は、水面上に展開された単分子膜を基
板上に移しとった膜であり、成膜を繰り返すことで所望
の層数の膜を形成することができる。本発明でいうLB
膜とは、基板上に形成されたLB膜に熱処理等の処理を
施し、累積構造を保ったままで化学構造を変化させたL
B膜誘導体の単分子累積膜を包含する。
【0029】これら配向規制力を有する基板を、界面活
性剤とシリコンアルコキシドを含む、シリカの等電点で
あるpH2以下に調整した酸性水溶液中に保持すること
によって、良好な一軸配向性のチャンネル構造を有する
シリカメソ構造体薄膜が基板上に形成されることを本発
明者らは見出している。使用する界面活性剤、及びシリ
コンアルコキシドは、前述したスピンコーティングやデ
ィップコーティング法を用いてシリカメソ構造体を作成
する場合に用いられるものと同様なものを使用すること
が可能である。この方法で基板上に形成されるシリカメ
ソ構造体薄膜の膜厚は、0.1μm〜数μm程度のもの
で、溶液組成、反応時間等により制御することが可能で
ある。
【0030】本発明において、一軸配向性のチャンネル
構造を有するシリカメソ構造体薄膜を形成する場合に
は、上記3種類のいずれの基板を用いることも可能であ
る。
【0031】表面にラビング処理を施した高分子薄膜、
及び高分子化合物のラングミュア−ブロジェット膜を形
成した基板を用いて作成される本発明の素子の構成を模
式的に図3に示す。これらの基板を使用する場合には、
配向規制力を有する高分子化合物薄膜32を形成する前
に基板上に電極材料を形成しておく必要がある。高分子
化合物と電極材料の密着性に問題がある場合には、図3
中に示すように電極材料の上にもう一層密着性を向上さ
せるための材料からなる密着性向上層31を形成する場
合もある。シリコン単結晶の(110)基板のような導
電性の基板を使用する場合には、基板そのものを電極代
わりに用いることができるので、電極形成のプロセスは
省略することが可能であり、さらに基板自体が配向規制
力を有しているために、配向規制力を有する高分子化合
物の膜を形成する必要もない。
【0032】この、一軸配向性のチャンネル構造を有す
るシリカメソ構造体のチャンネル中に、非線形光学特性
を有する化合物を担持させる方法には、前述したスピン
コーティングやディップコーティング法を用いた場合と
同様に、最初に溶液中にあらかじめ界面活性剤と共に非
線形光学特性を示す化合物を溶解させておく方法、及び
形成された膜の細孔内から界面活性剤を除去した後に空
の細孔に導入する方法の2種類がある。前述したよう
に、後者の方法は前者の方法に比較してプロセスが増え
るが、水に溶解しにくい非線形光学特性を示す化合物の
担持量を増大させることができるという利点を有する。
【0033】以上のようにして作成した素子に対して、
図4に示す方向からYAGレーザーのパルスを入力す
る。入射光の電場の方向は、試料面に対して垂直になる
ようにする。試料から放出された第二次高調波光43
は、図4に示すフォトマルチプライア(光電子増倍管)
44で検出する。この時、フォトマルチプライアの前に
は、一次光をカットするためのバンドパスフィルター4
4が置かれる。図4には、入射光と同じ方向に放出され
る第二次高調波光を測定する配置が示されているが、測
定配置はこれに限定されるものではない。
【0034】最初、シリカメソ構造体薄膜もしくはメソ
ポーラスシリカ薄膜を挟んで相対する電極間には電界を
印加することなしに第二次高調波光強度を記録し、その
後に両電極間に電界を印加して印加電圧に対する第二次
高調波光強度を測定する。電界強度は、作成した素子中
のシリカメソ構造体薄膜の膜厚によって調整する必要が
あるが、0.1〜30V/μm程度の電界が好ましく用
いられる。
【0035】本発明で作成された素子は、上記種々の作
成法によって作成されたいずれの素子も電極間に印加す
る電界強度とともに第二次高調波強度が増大し、ほぼ一
定の値に達するという傾向を示した。
【0036】以上説明した本発明の要旨は、薄膜化に代
表されるマクロスコピックな形態の制御が容易で、かつ
比較的大きな規則的細孔構造を有するシリカメソ構造体
を用い、その細孔内に非線形光学特性を示す有機化合物
を担持させ、外部印加電界によって細孔内の非線形光学
特性を示す化合物の方向性を制御し、入射した一次光の
電場の方向に分子の方向を揃えることによって、発生す
る第二次高調波光の強度を強めるというものである。
【0037】
【実施例】以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明を
説明する。
【0038】実施例1 本実施例は、ガラス基板上に、スピンコーティング法に
よって、シリカメソ構造体薄膜を形成し、細孔内に担持
させたN,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンからの
第二次高調波光強度を、薄膜の両側に形成した電極間の
電界強度によって制御した例である。
【0039】実施例1で作成した素子の断面図を模式的
に図5に示す。無アルカリガラス基板51上に、スパッ
タリングにより、Ti(52)8nm、Pt(53)1
50nm、Ti(52)10nmの膜厚で積層し、その
上にさらにSiO2 54を200nmの膜厚でマスク蒸
着する。このSiO2 層は、次の工程で作成するシリカ
メソ構造体薄膜と基板との密着性を向上させるためのも
のであり、SiO2 パターンが形成されていない個所を
通して下電極との電気的コンタクトをとる。
【0040】この基板上に、細孔内にN,N’−ジメチ
ル−p−ニトロアニリンを担持したシリカメソ構造体薄
膜55を形成する。テトラメトキシシラン(TMOS)
を、HClを触媒として含むTMOSのモル数の1/2
の量の純水と混合し、部分加水分解させるために2時間
撹拌した。これに対してカチオン性界面活性剤であるセ
チルトリメチアンモニウムクロリド(CTAC)とN,
N’−ジメチル−p−ニトロアニリンとを添加し、撹拌
して完全に溶解した後、前記基板上に3000回転、1
0秒の条件でスピンコートした。スピンコートする前の
溶液の組成は、モル比で、TMOS:H2 O:HCl:
CTAC:N,N’−ジメチル−p−ニトロアニリン=
1:2:0.06:0.1:0.02である。
【0041】前駆体溶液をスピンコートした基板は、7
0℃で24時間乾燥させ、シリカメソ構造体の薄膜を得
た。得られた薄膜をX 線回折分析で評価したところ、d
=3.80nmの面間隔に相当する鋭い回折ピークが観
測され、2次元ヘキサゴナル構造のメソ構造体の形成が
確認された。形成された膜は均一かつ透明な膜で、顕微
鏡で観察しても表面にはN,N’−ジメチル−p−ニト
ロアニリンの結晶等は確認されなかった。これらの結果
より、N,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンは、シ
リカメソ構造体薄膜中の細孔内に界面活性剤と共に担持
されているものと考えられた。なお本実施例で作成した
薄膜中においては、メソチャンネルはランダムな方向に
配列していた。
【0042】下地にSiO2 を形成していない箇所のシ
リカメソ構造体は、基板との密着性に劣るため、剥離し
やすく、表面をエアガンでブローする等の方法で除去す
ることが可能であり、SiO2 のパターン上に選択的に
シリカメソ構造体の薄膜を形成することが可能である。
【0043】このようにして形成したシリカメソ構造体
薄膜上に、さらにITO(インジウム−スズ酸化物)の
薄膜をスパッタリングにより形成した。ITOの膜厚は
120nmとした。この際、シリカメソ構造体を除去し
た部分にはITOが蒸着されないように、マスクを施す
必要がある。
【0044】このような手順で、形成された素子の、下
電極のPtと上電極のITOにリード線を取り付け、図
4に示したように基板表面に平行な方向からYAGレー
ザーが照射されるように、測定系に設置した。試料に対
してレーザー光が最適条件で入射するように、試料は、
高さを精密に調整するステージと、試料のあおり角を精
密に調整するためのステージとを組み合わせたステージ
の上に固定した。
【0045】第二次高調波発生用のレーザーは、Nd:
YAGの1064nmの発振線で、レーザーパワー80
mW〜300mWで使用した。このレーザーを素子に照
射し、素子から放出される532nmの第二次高調波光
を、光電子増倍管で検出した。検出器の前には、530
nm近傍の波長の光を選択的に通し、その他の波長をカ
ットするバンドパスフィルターを設置した。
【0046】観測される第二次高調波光強度を、印加す
る電圧に対してプロットした結果、図6に示すような強
度の変化が認められた。図6は、電圧を印加しない場合
に観測された強度を1として規格化した強度で表示した
ものである。この図に示されるように、観測された第二
次高調波光強度は、電極間に印加する電圧と共に増大
し、ほぼ一定の値に達していることがわかる。本実施例
で作成した素子の場合、電界を印加した場合には電界を
印加する前に比較して約3.1倍の第二次高調波光強度
の増大効果が確認された。
【0047】実施例2 本実施例は、実施例1で用いたスピンコーティングのか
わりに、ディップコーティングによって、シリカメソ構
造体薄膜を作成した後に、界面活性剤を除去し、その後
で細孔内にN,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンを
担持させるというプロセスで本発明の素子を作成した例
である。素子の構成は、実施例1に示したものと同じで
ある。
【0048】実施例1と同様にテトラメトキシシラン
(TMOS)を、HClを触媒として含むTMOSのモ
ル数の1/2の量の純水と混合し、部分加水分解させる
ために2時間撹拌した。これに対してカチオン性界面活
性剤であるセチルトリメチアンモニウムクロリド(CT
AC)を添加し、撹拌して完全に溶解した後、前駆体溶
液として用いた。この前駆体溶液中に、表面にオゾンに
よる親水化処理を施した無アルカリガラスを浸漬し、2
mm/secの速度で基板を引き上げ、シリカメソ構造
体薄膜を基板上に形成した。ディップコートに用いる前
駆体溶液の組成は、モル比で、TMOS:H2 O:HC
l:CTAC=1:2:0.06:0.1である。
【0049】前駆体溶液をディップコートした基板は、
70℃で24時間乾燥させ、シリカメソ構造体の薄膜を
得た。得られた薄膜をX 線回折分析で評価したところ、
実施例1と同様、d=3.8nmの面間隔に相当する鋭
い回折ピークが観測され、2次元ヘキサゴナル構造のメ
ソ構造体の形成が確認された。形成された膜は均一かつ
透明な膜であった。
【0050】このようにして作成されたシリカメソ構造
体薄膜が形成された基板を、空気中540℃で10時間
焼成し、細孔中の界面活性剤を除去した。この焼成条件
で、細孔内に存在する界面活性剤が完全に除去されるこ
とは、赤外吸光分析等によって確認されている。焼成
後、下地にSiO2 が形成されている箇所に形成された
薄膜は基板から剥離することはなかったが、金属面が露
出した箇所に形成された薄膜は、焼成によって基板から
剥離してしまった。
【0051】焼成後の膜をX線回折分析によって評価し
たところ、d=3.40nmに相当する回折ピークが観
測され、細孔のヘキサゴナル構造が保持されていること
が確認された。この面間隔の縮小は、シリケートの脱水
縮合が進行したためであると考えられる。
【0052】次に、焼成したメソポーラスシリカ薄膜の
細孔に非線形光学特性を有する化合物を導入した。これ
は、作成したメソポーラスシリカ薄膜を真空中に置き、
パラニトロアニリンを150℃に加熱し、その蒸気に曝
すことによって行った。パラニトロアニリンを導入した
後のシリカメソ構造体薄膜上に、Ptを蒸着したガラス
を密着させ、これを上側電極として用いた。
【0053】この構成の素子を、実施例1で用いたもの
と同じ装置を用いて測定し、第二次高調波光強度の印加
電圧依存性を検討した。観測された第二次高調波光強度
を、印加する電圧に対してプロットした結果、図7に示
すような強度の変化が認められた。図7は、電圧を印加
しない場合に観測された強度を1として規格化した強度
で表示したものである。この図に示されるように、観測
される第二次高調波光強度は、実施例1で作成した素子
同様に電極間に印加する電圧と共に増大し、ほぼ一定値
に達している。本実施例で作成した素子の場合、印加電
圧−第二次高調波光強度のグラフにおける、強度増大の
傾きが小さかったが、これは、細孔内に界面活性剤が存
在せず、シリカの壁とゲスト種の相互作用が強いために
外部電界によるゲスト種のコンフォメーション変化が起
こりにくいためであると考えられる。本実施例で作成し
た素子においては、電界を印加した場合には電界を印加
する前に比較して約2.9倍の第二次高調波光強度の増
大効果が確認された。第二次高調波光強度の増大効果は
実施例1で作成した素子とほぼ同じであったが、本実施
例で作成した素子は、第二次高調波光の強度の絶対値が
実施例1で作成した素子に比較して大きく、これは、本
実施例で作成した素子の方が細孔中に担持されている非
線形光学特性を示す化合物の量が多いためであると考え
られる。
【0054】実施例3 本実施例は、シリコン(110)基板を用い、基板を反
応溶液中に保持することによって、導電性のシリコン基
板上に直接、細孔内に非線形光学特性を示す化合物を担
持した、一軸配向性のチャンネル構造を有するシリカメ
ソ構造体薄膜を作成し、表面に形成した電極と基板の間
に電界を印加することによって、発生する第二次高調波
光強度の制御を行った例である。
【0055】1〜2Ωcmのn型シリコン(110)基
板の表面をHF溶液で処理し、表面の酸化物層を除去し
た後、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラ
エトキシシラン(TEOS)、塩酸、及びN,N’−ジ
メチル−p−ニトロアニリンを含む水溶液中に保持し
た。溶液中の各成分のモル比は、TEOS:H2 O:H
Cl:CTAC:N,N’−ジメチル−p−ニトロアニ
リン=0.1:100:10.5:0.11:0.05
である。この条件では、N,N’−ジメチル−p−ニト
ロアニリンの窒素は4級化し、水溶性が向上するため、
溶液中のN,N’−ジメチル−p−ニトロアニリン量を
大きくすることが可能である。また、溶液の酸性度が非
常に高いため、基板上においてのみならず、溶液中にお
いてもシリカメソ構造体の沈殿が発生し、基板上に堆積
する。これを抑制するために、基板はメソ構造体薄膜を
形成する面を下向きに保持した。
【0056】この状態で、基板を保持した容器を密閉
し、80℃の温度で3日〜10日程度反応させ、反応
後、膜を容器から取り出し、純水で洗浄し、乾燥させ
た。この膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔3.
70nmの、ヘキサゴナル構造の(100)面に帰属さ
れる強い回折ピークが確認され、この薄膜がヘキサゴナ
ルな細孔構造を有することが確かめられた。
【0057】このシリカメソ構造体薄膜中のメソチャン
ネルの一軸配向性を定量的に評価するために、面内X線
回折分析による評価を行った。この方法は、“Chem
istry of Materials”誌第11巻1
609頁に記載されているような、基板に垂直な(11
0)面に起因するX線回折強度の面内回転依存性を測定
するもので、メソチャンネルの配向方向とその分布を調
べることができる。本実施例で測定された(110)面
回折強度の面内回転角度依存性より、本実施例で作成さ
れたシリカメソ構造体薄膜中では、メソチャンネルは基
板のシリコンの<001>方向に配向しており、その配
向方向の分布は半値幅が約29°であることが示され
た。
【0058】以上述べた手順によって、一方向に配向し
た細孔内に界面活性剤とN,N’−ジメチル−p−ニト
ロアニリンとを担持したシリカメソ構造体が、シリコン
(110)基板上に形成された。このようにして形成さ
れたシリカメソ構造体薄膜上に、上電極として120n
mのITOをスパッタリングにより形成し、素子を作成
した。本実施例で作成した素子の構成は、図2に模式的
に示したような構成となる。
【0059】こうして作成された素子について、実施例
1、2で使用したものと同じ装置を用いて、基板と表面
のITO電極間に電界を印加した際の第二次高調波光強
度の変化を測定した。
【0060】その結果、図8に示すような第二次高調波
光強度の印加電圧依存性が認められた。強度の絶対値を
除いた強度増大のプロファイルは、実施例1で作成した
素子の場合と類似していたが、本実施例で作成した素子
は、電界印加による第二次高調波光強度の増大率が大き
く、電界を印加した場合には電界を印加する前の約4.
3倍の第二次高調波光強度の増大効果が確認された。こ
れは、一軸配向した細孔によって、担持されたゲスト種
の配向制御がマクロスコピックなスケールで達成された
結果であると考えられている。
【0061】本実施例の素子は、基板がシリコン(11
0)面という特殊なものを用いる必要がある一方で、電
極形成プロセスが省略でき、かつ細孔を一軸配向させる
特殊なプロセスを省略できるという長所を有している。
【0062】実施例4 本実施例は、液晶配向に用いるラビング処理を施したポ
リイミド薄膜を形成した基板を用い、一軸配向性の細孔
中にN,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンを担持し
たシリカメソ構造体の薄膜を作成し、発生する第二次高
調波光強度を、薄膜の両側に形成した電極間の電界強度
によって制御した例である。
【0063】アセトン、イソプロピルアルコール、及び
純水で洗浄し、オゾン発生装置中で表面をクリーニング
した石英ガラス基板に、スパッタリングにより、Ti8
nm、Pt150nm、Ti10nmの膜厚で積層し、
その上にさらにSiO2 を200nmの膜厚でマスク蒸
着した。このSiO2 層は、以降の工程で作成するシリ
カメソ構造体薄膜と基板との密着性を向上させるための
ものであり、SiO2パターンが形成されていない個所
を通して下電極との電気的コンタクトをとる。
【0064】この基板上に、ポリアミック酸AのNMP
溶液をスピンコートにより塗布し、200℃で1時間焼
成して、以下の構造を有するポリイミドAを形成した。
【0065】
【化1】
【0066】これに対して、表1の条件でラビング処理
を施し、基板として用いた。
【0067】
【表1】
【0068】この基板を、セチルトリメチルアンモニウ
ムクロリド、テトラエトキシシラン(TEOS)、塩
酸、及びN,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンを含
む水溶液中に保持した。溶液中の各成分のモル比は、T
EOS:H2 O:HCl:CTAC:N,N’−ジメチ
ル−p−ニトロアニリン=0.1:100:8:0.1
1:0.05である。実施例3の場合と同じく、この条
件では、N,N’−ジメチル−p−ニトロアニリンの窒
素は4級化し、水溶性が向上するため、溶液中のN,
N’−ジメチル−p−ニトロアニリン量を大きくするこ
とが可能である。
【0069】また、本実施例の場合も溶液の酸性度が非
常に高いため、基板上においてのみならず、溶液中にお
いてもシリカメソ構造体の沈殿が発生し、基板上に堆積
する。これを抑制するために、基板はメソ構造体薄膜を
形成する面を下向きに保持する必要がある。さらに、良
好な一軸配向性シリカメソ構造体薄膜を得るために、反
応中スペーサを介して表面にカバーを施す場合もある。
この状態で、基板を保持した容器を密閉し、80℃の温
度で3日〜10日程度反応させた。
【0070】所定の時間反応溶液と接触させた基板は、
容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に、室温に
おいて自然乾燥させた。基板上には、シリカメソ構造体
の連続膜が形成されており、この膜をX線回折分析で分
析した結果、面間隔3.60nmの、ヘキサゴナル構造
の(100)面に帰属される強い回折ピークが確認さ
れ、この薄膜がヘキサゴナルな細孔構造を有することが
確かめられた。
【0071】本実施例において、SiO2 が形成されて
いる箇所に形成されたシリカメソ構造体薄膜は、選択的
に基板上に保持されるが、SiO2 を形成していない電
極が露出している箇所では、形成されたシリカメソ構造
体薄膜は剥離してしまう。この密着性の差を利用して、
所望の位置にシリカメソ構造体の薄膜を形成することが
可能であり、同時に電極への電気的コンタクトをとるこ
とが可能となる。
【0072】本実施例で作成したシリカメソ構造体薄膜
に関しても、膜中のメソチャンネルの一軸配向性を面内
X線回折分析により評価した。その結果、本実施例で作
成されたシリカメソ構造体薄膜中では、メソチャンネル
はラビング方向に対して直交方向に配向しており、その
配向方向の分布は半値幅が約13°であることが示され
た。
【0073】以上説明したように、一方向に並んだ細孔
内に、界面活性剤とN,N’−ジメチル−p−ニトロア
ニリンとを担持した、シリカメソ構造体が電極を形成し
たガラス基板上に形成された。このようにして形成され
たシリカメソ構造体薄膜上に、上電極として120nm
のITOをスパッタリングにより形成し、素子を作成し
た。本実施例で作成した素子の構成を図9に模式的に示
す。
【0074】こうして作成された素子について、実施例
1〜3で使用したものと同じ装置を用いて、基板と表面
のITO電極間に電界を印加した際の第二次高調波光強
度の変化を測定した。
【0075】得られた結果を図10に示す。強度の絶対
値を除いた強度増大のプロファイルは、実施例1、3で
作成した素子の場合と類似していたが、本実施例で作成
した素子は、電界印加による第二次高調波光強度の増大
率が実施例3で作成した素子で認められた増大率よりも
さらに大きく、電界を印加した場合には電界を印加する
前の約5.0倍の第二次高調波光強度の増大効果が確認
された。これは、実施例3で作成した素子よりもさらに
高度に一軸配向した細孔によって、担持されたゲスト種
の高度な配向制御がマクロスコピックなスケールで達成
された結果であると考えられている。
【0076】実施例5 本実施例は、ポリイミドのLB膜を形成した基板を用
い、一軸配向性の細孔中にN,N’−ジメチル−p−ニ
トロアニリンを担持したシリカメソ構造体の薄膜を作成
し、発生する第二次高調波光強度を、薄膜の両側に形成
した電極間の電界強度によって制御した例である。
【0077】ポリアミック酸AとN,N−ジメチルヘキ
サデシルアミンとを1:2のモル比で混合し、ポリアミ
ック酸AのN,N−ジメチルヘキサデシルアミン塩を作
成した。これをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し
0.5mMの溶液とし、この溶液を20℃に保ったLB
膜成膜装置の水面上に滴下した。水面上に形成された単
分子膜は、30mN/mの一定の表面圧を印加しなが
ら、5.4mm/minのディップ速度で基板上に移し
取った。
【0078】基板はアセトン、イソプロピルアルコー
ル、及び純水で洗浄し、オゾン発生装置中で表面をクリ
ーニングした石英ガラス基板に、スパッタリングによ
り、Ti8nm、Pt150nm、Ti10nmの膜厚
で積層し、その上にさらにSiO 2 を200nmの膜厚
でマスク蒸着を行った後、疎水処理を行ったものを用い
た。基板上に30層のポリアミック酸アルキルアミン塩
LB膜を成膜した後、窒素ガスフローの下で300℃で
30分間焼成してポリイミドAのLB膜を形成した。ポ
リアミック酸の脱水閉環によるイミド化、及びアルキル
アミンの脱離は赤外吸収スペクトルより確認した。形成
されたポリイミドLB膜中の高分子鎖の配向性は、赤外
吸収スペクトルの2色性により分析し、高分子鎖はLB
膜作成時の基板の引き上げ方向に平行に配向しているこ
とが確かめられた。
【0079】この基板を実施例4と同じ組成の反応溶液
中に、膜形成面を下向きにして入れ、80℃に保ったオ
ーブン中で3〜10日間保持した。基板は、容器から取
り出し、純水で十分に洗浄した後に、室温において自然
乾燥させた。本実施例で用いた基板の場合にも、基板上
には、シリカメソ構造体の連続膜が形成されており、こ
の膜をX線回折分析で分析した結果、面間隔3.58n
mの、ヘキサゴナル構造の(100)面に帰属される強
い回折ピークが確認され、この薄膜がヘキサゴナルな細
孔構造を有することが確かめられた。
【0080】本実施例の場合にも、SiO2 上と電極上
との密着性の差異を利用して、所望の位置にシリカメソ
構造体の薄膜を形成することが可能であり、同時に電極
への電気的コンタクトをとることが可能となる。
【0081】このシリカメソ構造体薄膜に関しても、メ
ソチャンネルの一軸配向性を定量的に評価するために、
面内X線回折分析による評価を行った。その結果、本実
施例で作成されたシリカメソ構造体薄膜中では、メソチ
ャンネルはLB膜形成時の基板の引き上げ方向に対して
直交方向に配向しており、その配向方向の分布は半値幅
が約12°であることが示された。
【0082】以上説明したように、一方向に並んだ細孔
内に、界面活性剤とN,N’−ジメチル−p−ニトロア
ニリンとを担持した、シリカメソ構造体が基板上に形成
された。このようにして形成されたシリカメソ構造体薄
膜上に、上電極として120nmのITOをスパッタリ
ングにより形成し、素子を作成した。
【0083】本実施例で作成した素子の構成は、実施例
4で作成した素子と同じであり、模式的に図9のように
示されるものである。こうして作成された素子につい
て、実施例1〜4で使用したものと同じ装置を用いて、
基板と表面のITO電極間に電界を印加した際の第二次
高調波光強度の変化を測定した。
【0084】得られた結果は、実施例4で作成した素子
に関する図10に示した結果と実質的に同じプロファイ
ルで、電界を印加した場合には電界を印加する前の約
5.2倍の第二次高調波光強度の増大効果が確認され
た。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の非線形光
学素子によれば、非線形光学特性を示す化合物を細孔内
に担持したシリカメソ構造体薄膜、またはメソポーラス
シリカ薄膜を挟んで形成された一対の電極間に電界を印
加することによって、発生する第二次高調波光強度を制
御することが可能である。
【0086】また、本発明の駆動方法によれば、非線形
光学特性を示す化合物を細孔内に担持したシリカメソ構
造体薄膜、またはメソポーラスシリカ薄膜を挟んで形成
された一対の電極間に電界を印加することによって、発
生する第二次高調波光強度を制御することが可能であ
る。また、本発明の製造方法によれば、上記の非線形光
学素子を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非線形光学素子の最も簡単な構成を示
す模式図である。
【図2】本発明の非線形光学素子の導電性基板を用いた
場合の構成を示す模式図である。
【図3】本発明において、高分子化合物の薄膜を用い
て、一軸配向性の細孔構造を有するシリカメソ構造体薄
膜もしくはメソポーラスシリカ薄膜を作成した非線形光
学素子の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の非線形光学素子について第二次高調波
光測定を行う際の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例1で作成した非線形光学素子の
断面図を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例1で作成した非線形光学素子に
おいて測定された第二次高調波光強度の印加電圧依存性
を説明するグラフである。
【図7】本発明の実施例2で作成した非線形光学素子に
おいて測定された第二次高調波光強度の印加電圧依存性
を説明するグラフである。
【図8】本発明の実施例3で作成した非線形光学素子に
おいて測定された第二次高調波光強度の印加電圧依存性
を説明するグラフである。
【図9】本発明の実施例4で作成した非線形光学素子を
示す模式断面図である。
【図10】本発明の実施例4及び実施例5で作成した非
線形光学素子において測定された第二次高調波光強度の
印加電圧依存性を説明するグラフである。
【符号の説明】
11 基板 12 電極 13 電極 14 非線形光学特性を示す化合物を担持した、シリカ
メソ構造体薄膜又はメソポーラスシリカ薄膜 15 電源 21 導電性基板 31 密着性向上層 32 高分子化合物薄膜 41 パルスレーザー 42 一次光 43 第二次高調波光 44 バンドパスフィルター 45 光電子増倍管 51 無アルカリガラス基板 52 Ti 53 Pt 54 SiO2 55 界面活性剤とN,N’−ジメチル−p−ニトロア
ニリンとを担持したシリカメソ構造体薄膜 56 ITO電極 57 直流電源 91 石英ガラス基板 92 ラビング処理を施したポリイミド配向膜又はポリ
イミドLB膜

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非線形光学特性を有する化合物を細孔中
    に担持した多孔質薄膜と、該多孔質薄膜を挟むように配
    置され、薄膜の厚さ方向に電界を印加するための一対の
    電極とを有することを特徴とする非線形光学素子。
  2. 【請求項2】 導電性基板と、該導電性基板上に形成さ
    れた、非線形光学特性を有する化合物を細孔中に担持し
    た多孔質薄膜と、該多孔質薄膜の上面に形成された電極
    とを有することを特徴とする非線形光学素子。
  3. 【請求項3】 前記多孔質薄膜が界面活性剤を鋳型にし
    て形成されるシリカメソ構造体もしくは該シリカメソ構
    造体から界面活性剤を除去したメソポーラスシリカであ
    ることを特徴とする請求項1または2に項記載の非線形
    光学素子。
  4. 【請求項4】 前記多孔質薄膜が2次元ヘキサゴナル構
    造の細孔構造を有するシリカメソ構造体薄膜もしくはメ
    ソポーラスシリカ薄膜であることを特徴とする請求項1
    乃至3のいずれかの項に記載の非線形光学素子。
  5. 【請求項5】 前記多孔質薄膜中の2次元ヘキサゴナル
    構造の細孔が実質的に一軸配向性を有していることを特
    徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の非線形
    光学素子。
  6. 【請求項6】 非線形光学特性を有する化合物を細孔中
    に担持した多孔質薄膜と、該多孔質薄膜を挟むように配
    置され、薄膜の厚さ方向に電界を印加するための一対の
    電極とを有する非線形光学素子の駆動方法であって、素
    子に光を照射した際に発生する第二次高調波光の強度
    を、上記電極間に印加する電界によって制御することを
    特徴とする非線形光学素子の駆動方法。
  7. 【請求項7】 導電性基板と、該導電性基板上に形成さ
    れた非線形光学特性を有する化合物を細孔中に担持した
    多孔質薄膜と、該多孔質薄膜の上面に形成された電極と
    を有する非線形光学素子の駆動方法であって、素子に光
    を照射した際に発生する第二次高調波光の強度を、該導
    電性基板と上面の電極の間に印加する電界によって制御
    することを特徴とする非線形光学素子の駆動方法。
  8. 【請求項8】 前記光学素子中の多孔質薄膜が、界面活
    性剤を鋳型にして形成されるシリカメソ構造体もしくは
    該シリカメソ構造体から界面活性剤を除去したメソポー
    ラスシリカであることを特徴とする請求項6または7に
    記載の非線形光学素子の駆動方法。
  9. 【請求項9】 前記非線形光学素子中の多孔質薄膜が、
    2次元ヘキサゴナル構造の細孔構造を有するシリカメソ
    構造体薄膜もしくはメソポーラスシリカ薄膜であり、且
    つ該多孔質薄膜中でのチューブ状の細孔が一軸配向性を
    有していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか
    の項に記載の非線形光学素子の駆動方法。
  10. 【請求項10】 基板上に電極材料の薄膜を形成する工
    程と、該電極が形成された基板上に細孔内部に非線形光
    学特性を示す化合物を担持した多孔質材料の薄膜を形成
    する工程と、該多孔質材料の薄膜上に電極を形成する工
    程とを含むことを特徴とする非線形光学素子の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 導電性を有する基板上に細孔内部に非
    線形光学特性を示す化合物を担持した多孔質材料の薄膜
    を形成する工程と、該多孔質材料の薄膜上に電極を形成
    する工程とを含むことを特徴とする非線形光学素子の製
    造方法。
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