JP3894916B2 - メソ構造シリカ薄膜の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、触媒担体・吸着剤等として利用される多孔質の無機構造体の技術分野に属し、さらに詳しくは、薄膜状のメソ構造シリカ複合体およびメソ多孔性シリカの製造方法に関する。
近年、メソ多孔性シリカ、所謂、メソポーラスシリカと呼ばれる特徴的なメソ細孔を有するシリカが注目されている。よく知られているように、多孔性材料中の細孔は、ミクロ細孔(マイクロポア)、メソ細孔(メソポア)およびマクロ細孔(マクロポア)に大別され、メソ細孔とは一般に径が2〜50nmの範囲の細孔として分類される。これに対して、一般に、孔径2nm以下がミクロ細孔であり、50nm以上をマクロ細孔と呼ぶことがIUPACでも提唱されている。この特徴的な細孔構造をもつメソ多孔性シリカは、均一かつ規則的細孔構造を有するゼオライトと同様に、細孔の径および形状に起因する選択的な吸着および触媒反応等が期待できると同時に、ゼオライトの持つミクロ細孔より大きいメソ細孔を有するため、これまで実現できなかった巨大な分子に関連する吸着および触媒反応を対象とすることが可能となった。具体的には高分子重合反応(例えば、Science,
285, 2113 (1999):非特許文献1)、ポルフィリン合成(例えば、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1801 (1995):非特許文献2)、酵素反応(例えば、Nature,
368, 289, (1994) :非特許文献3)等が挙げられる。
メソ多孔性シリカは一般に以下のように作製される。ミセル等の界面活性剤の集合構造を細孔の鋳型とするため、ミセル等の周囲(表面)で適当なシリカ源を原料としたゾルゲル反応を進行させてシリカを生成し、シリカを介してミセル等が規則的に配列したメソ構造シリカ複合体を得る。その後に鋳型と成る界面活性剤を焼成などにより除いてシリカ骨格のみを残し、生じた空孔が均一で規則的に配列したメソ細孔となり、メソ多孔性シリカを得る。
メソ多孔性シリカの規則構造としては様々の種類のものが知られているが、最も一般的なものは界面活性剤の棒状ミセルに由来して形成され円筒状(シリンダー状)の細孔が蜂の巣状に配列した所謂ヘキサゴナル(六方晶)構造のものである。例えば、米国特許第5098684号公報(特許文献1)には、細孔径が1.5nm以上で、(100)面間隔が1.8nm以上のX線回折ピークを有する、ヘキサゴナルの規則性を持って細孔が配列したメソ多孔性シリカ(所謂、MCM−41)が記載されている。
メソ多孔性シリカの形態としては、前述の触媒担体および吸着剤等の用途として一般的な粉体のみでなく、太さが数μm程度の繊維、および厚さが数百nm〜数μmの薄膜が良く知られている。特に薄膜は透明性が高く、簡易な調製法により均一な薄膜を得られることから、電子・光デバイスへの応用が期待されている。また、細孔の鋳型として、機能性を有する分子を用いることにより、鋳型分子を細孔内に含んだメソ構造シリカ複合体としても、有用な材料として利用されている。
本発明においては、同一の工程で作製される上述のメソ多孔性シリカ薄膜およびメソ構造シリカ複合体薄膜(メソ多孔性シリカ薄膜の前駆体であり、鋳型分子を含む複合構造体)をまとめてメソ構造シリカ薄膜と総称する。
メソ構造シリカ薄膜は、一般的には、ゾルゲル反応が進行中のゾル液を基板上に展開し、溶媒を蒸発させ乾燥することでゾルゲル反応を完了させることにより調製される。優れたメソ構造シリカ薄膜を得るためには、メソ構造の成長を適度に促進する技術が重要である。しかし、ゾルゲル反応は不可逆に進行することもあり、メソ構造を得るための反応制御は限られたものとなるので、可及的に規則性が高く、膜全体に分布する構造を持つ理想的なメソ構造シリカ薄膜を得ることはきわめて困難である。
メソ構造の成長を促進する技術として、加熱処理やアルコキシシラン処理等が知られているが、これらの技術は予めメソ構造を持っている薄膜に対してのみ効果を持つものであり、その役割は補助的なものに過ぎない。また余分な工程を必要とするという意味でも完成された技術と言えるものではない。
反応液中に添加物を加えることによってゾル液からメソ構造を得ることが出来る期間を延長させる技術も知られている。しかしながら、添加物は不純物であるため、少なからず薄膜の性質に影響を及ぼしてしまう。
これらのことからも分かるように、メソ構造の成長を促進する理想的な技術は、これまでに報告されていない。
Science, 285, 2113 (1999)。 J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1801 (1995)。 Nature, 368, 289 (1994)。 米国特許第5098684号公報。
本発明の目的は、メソ構造シリカ薄膜調製において、簡便な手段でメソ構造の成長を促進し、完成された規則構造を持つ薄膜を得るための新しい技術を提供することにある。
本発明者は、ゾルゲル反応が進行中のゾル液を基板上に展開し、溶媒を蒸発させ乾燥することによりメソ構造シリカ薄膜を調製するのに際し、乾燥の進行を抑制しながら乾燥するというきわめて簡単な手段により上記の目的を達成し得ることを見出した。
かくして、本発明は、鋳型分子、シリカ源、ゾルゲル反応触媒、水および必要に応じて有機溶媒から構成される反応溶液を調製してゾルゲル反応を行ない、ゾルゲル反応が進行中の溶液を基板に塗布し、乾燥の進行を抑制しつつ塗布膜を乾燥させることを特徴とする、メソ構造シリカ薄膜の製造方法を提供するものである。
本発明の特に好ましい態様に従えば、密閉空間で塗布膜を乾燥する。
本発明に従えば、構造規則性の高いメソ構造を持ち、有用性の向上したメソ構造シリカ薄膜を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。本発明を実施するに当たり最も重要な点は、メソ構造シリカ薄膜の原料となるゾル液を基板に塗布して乾燥させる際に、塗布した基板を一定期間内、塗布膜の乾燥が抑制されるような条件下に供し、乾燥の進行を制御することにある。
塗布膜の乾燥が抑制される条件としては、種々の態様が適用可能であり、例えば、乾燥温度を通常よりも低くするなどの手段もあるが、乾燥の進行の制御が容易且つ確実であり実用的な面から好ましい態様は、密閉空間で塗布膜を乾燥することである。以下の説明も密閉空間で塗布膜を乾燥する場合を中心に行なっている。
本発明に従えば、密閉空間のように塗布膜の乾燥が抑制される条件下に置くことで溶媒の蒸発速度を律し、メソ構造シリカ薄膜の規則構造を向上させることができる。
本発明に従い、乾燥工程の一部において乾燥の進行を抑制することにより、メソ構造シリカ薄膜の規則構造が向上する理由として以下のことが考えられるが、これによって、本発明が何らかの意味で拘束されるものではない。
一般に、メソ構造シリカ複合体薄膜が生成する機構は以下の通りである。鋳型分子およびシリカ源を含み、ゾルゲル反応が適度に進行したゾル溶液を基板上に展開し、溶媒の蒸発によりゲル化を進行させ、成長するシリカ骨格を介し鋳型分子が規則的に配列する。メソ構造シリカ複合体薄膜の鋳型を除去することにより、細孔を発現させたものがメソ多孔性シリカ薄膜となる。この機構において、溶媒蒸発速度を律することにより、基板上でのシリカのゲル化進行が抑制され、鋳型分子の配列のための十分な時間が与えられる。それに加え、鋳型分子が溶媒を吸収することによりシリカとの親和性が向上するため、シリカを介した鋳型分子の配列が円滑に進行することも考えられる。これらにより、鋳型分子の配列の歪みが抑制され、メソ構造の規則性が向上するものと予想される。
本発明の方法は、特に好ましい態様として、密閉空間で塗布膜を乾燥することによって実施されるが、場合によっては密閉空間内に揮発性溶媒を適量共存させることにより行なう。ここで、本発明における揮発性溶媒とは、分解を伴わずに揮発し、一般に、常温で100Pa以上の蒸気圧を持つことが可能な溶媒であり、アルカン類、エーテル類、アルコール類等を含む有機溶媒が例として挙げられる。密閉空間内に共存させる揮発性溶媒としては、好ましくは反応溶液(ゾルゲル反応溶液)に使用する有機溶媒があり、具体的にはエタノール等の炭素数1〜5に該当する低級アルコール等が挙げられる。
本発明を実施する密閉空間としては、特別な耐圧構造を必要としなくても、反応液に使用した有機溶媒の飽和蒸気圧程度の耐圧があれば十分である。例えば、密閉性を保つための蓋のある、汎用のプラスチックやガラス容器等などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、蒸発により発生する気体が、密閉空間内で飽和蒸気圧に到達してしまうと蒸発が完了せず、ゲル化も完了しない可能性があるため、密閉空間の容積については溶媒が十分に蒸発する程度の大きさが適当である。
本発明に従うメソ構造シリカ薄膜の調製方法は、乾燥工程の一部を密閉条件下で行うことを除いては、従来のメソ構造シリカ薄膜の調製と同様に実施される。即ち、鋳型分子、シリカ源、ゾルゲル反応触媒、水および必要に応じて有機溶媒から構成される反応溶液(ゾルゲル反応溶液)を調製してゾルゲル反応を開始し、一定期間攪拌することでゾルゲル反応を進行させ、完全にゲル化する前のゾル液を、スピンコート法、ディプコート法、またはキャスト法等のコーティング法により基板に塗布する。ゾルゲル反応開始から塗布するまでの攪拌時間をゾルゲル反応時間とする。
塗布直後の薄膜試料は密閉条件下に1時間以上静置して溶媒を蒸発させる。一般に、ディプコート法、およびキャスト法においては、塗布されたゾル液が十分に溶媒を含んでいることから、多くの場合、密閉空間内に新たに溶媒を添加する必要は無い。スピンコート法の場合、塗布の最中に大部分の溶媒が蒸発してしまっているので、これを補うために密閉空間内に適当な溶媒を、塗布膜に触れないように添加するのが代表的である。密閉空間内に添加する溶媒としては、反応溶液に含まれる有機溶媒が最も効果的であるが、必ずしもこれに限るものではない。なお、本発明におけるコーティング法は、ディップコート法、キャスト法およびスピンコート法が一般的であるが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて他のコーティング法を用いることもできる。
また、塗布後、塗布した基板を密閉空間内に封入するまでの時間としては、1分以内のできるだけ早い時間が好ましいが、構造が完全に構築されていない10分程度以内であれば、条件によってはある程度の効果を得ることができる。
密閉空間として蓋付きの容器を用いた場合における、スピンコート法、キャスト法についての具体的な工程の流れを、図13に簡単に示した。
密閉条件下から開放された試料は、さらに室温で5時間以上風乾した後、100℃で5〜24時間乾燥し、メソ多孔性シリカ複合体薄膜を得る。メソ多孔性シリカ薄膜を得る場合には、鋳型分子を高温焼成または溶媒洗浄等の方法により除去して細孔を形成させる。高温焼成としては空気中450℃で3時間放置、溶媒洗浄としては1N塩酸/エタノール溶液中に薄膜を浸し、60℃で10時間放置することにより行うが、これに限定されるものではない。
本発明に用いられる鋳型分子としては、主に、例えば界面活性剤と呼ばれるような、親水性部位と疎水性(親油性)部位とを併せ持つ構造からなり、その親水・疎水バランスによって、水溶液中でミセルのような会合体を形成する性質を持った物質が挙げられる。疎水基の多くはアルキル基などの長鎖炭化水素基であり、水溶液中で疎水性相互作用によって会合する性質を持つが、これ以外にもπ共役構造を含む官能基もあり、この場合π電子相互作用によっても会合が促進される。親水性部位にはイオン性解離基や、ヒドロキシ基などの非イオン性極性基がある。図1に疎水基として好ましい官能基または原子団、図2に親水基として好ましい官能基または原子団の例を挙げるが、これに限定されるものではない。
本発明に用いられるシリカ源としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン等のアルコキシド、珪酸ソーダ、テトラメチルアンモニウムシリケート等の水溶性珪酸塩、コロイダルシリカ、等が使用可能であるが、中でもアルコキシドが好ましい。
ゾルゲル反応溶液には、必要に応じて混合を円滑にするため、有機溶媒を添加することが好ましく、具体的にはエタノール等の、炭素数1〜5に該当する低級アルコール類が一般的に用いられるが、これに限定されるものではない。
ゾルゲル反応触媒としては、良く知られている酸(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸など)または塩基(水酸化ナトリウム、アンモニアなど)が用いられるが、好ましいものとしては塩酸等の揮発性の酸が挙げられる。
かくして、本発明の好ましい態様の一つに従えば、シリカ源としてアルコキシド、ゾルゲル反応触媒として塩酸、有機溶媒として低級アルコールを用いてメソ構造シリカ薄膜を製造する。
薄膜塗布用の基板としては、平滑な表面を持つものであれば良く、素材としては、ガラス、雲母、グラファイト、石英、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない
以上のような操作により、本発明に従えば、鋳型分子の集合形態から形成される各種のメソ構造、すなわち、従来より良く知られているヘキサゴナル構造、キュービック構造、あるいは層状構造を持つメソ構造シリカ薄膜が得られる。規則的なメソ細孔の存在はX線回折により確認することができ、また、メソ構造の規則性の評価はX線回折のピーク強度により行うことができる。
本発明は、以上のような各種のメソ構造を有するメソ構造シリカ薄膜を調製するのに適用できるが、特に、ヘキサゴナル構造の規則性を有するメソ構造シリカ薄膜を調製するのに最も適している。メソ構造がヘキサゴナル構造の規則性を持つことは、鋳型除去前のシリカ複合体薄膜および除去後のシリカ薄膜いずれにおいても、少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上のX線回折ピーク、すなわち、低角側から順に、ヘキサゴナル構造の(100)面、(200)面、および場合によっては更なる高次の面に対応する回折ピークを持つことにより確認できる。この場合、通常ヘキサゴナル構造に見られるはずの(110)面の回折ピークは確認されない。このことが、鋳型分子および細孔が基板に対して平行な方向にのみ配列していることに起因することは良く知られている。
ヘキサゴナル構造の場合(100)面のX線回折ピークが最も強度が強いので、規則性の評価には(100)面のピーク強度(I100)を用いる。また、異なる薄膜の規則性の違いを比較する場合は、薄膜が同じ面積であれば、I100が大きいものが規則性が高いと言える。
本発明の方法により調製した、メソ構造シリカ薄膜がヘキサゴナル構造を持つことは、透過型電子顕微鏡観察により視覚的に確認することも出来る。(図6)
本発明の方法により調製したメソ構造シリカ薄膜は、乾燥工程全体を開放下で行う以外は同一の条件で調製したメソ構造シリカ薄膜と比較し、著しくI100が増加しており、本発明の方法により、メソ構造の成長が促進され、より完成度の高い規則構造を持つメソ構造シリカ薄膜が得られることは明らかである。
以下、本発明を実施例によって、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何らの制限を受けるものではない。
水4.1g、11N濃塩酸0.021g、エタノール8.9g、TEOS4.9gを混合し、室温で1時間攪拌することで、シリカ源がオリゴマー化した溶液を調製した。また、鋳型分子である塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTA−Cl、図3−a)0.42gをエタノール4.5gに溶解して調製した溶液に、前出のシリカオリゴマー溶液10gを添加しゾルゲル反応を開始した。この液を室温で攪拌しながらゾルゲル反応の進行を継続させ、この間随時、この溶液を1.8cm四方のガラス基板に、2000rpmで10秒間スピンコートを行い、薄膜を塗布した。
塗布後1分以内に薄膜試料を、容積1000mlの密閉可能なプラスチック容器内に静置し、揮発性溶媒としてエタノール0.01gを薄膜試料に触れないように滴下した後、蓋を閉めて容器を密閉した。5時間後に薄膜試料を密閉容器から取り出し、開放下で10時間以上風乾した。また、比較のために容器内に静置しない薄膜も同時に作製し、開放下で風乾した。風乾後の薄膜試料は空気中100℃で12時間乾燥しメソ構造シリカ薄膜を作製し、さらに、鋳型分子除去のために空気中450℃で3時間焼成して、メソ多孔性シリカ薄膜を得た。
ゾルゲル反応時間34時間および125時間で作製した薄膜試料の450℃焼成前後のX線回折パターンを、それぞれ図4および図5に示す。ゾルゲル反応時間34時間では、密閉容器なしの場合でも規則構造は存在するが、密閉容器を使用することによりI100が2倍程度増加し、規則性が向上した。またゾルゲル反応時間125時間では、ゾルゲル反応が過度に進行したため、密閉容器なしでは規則構造が存在しないが、密閉容器を使用することにより、通常のメソ多孔性シリカ同様の規則構造が発現した。このことは、密閉容器中で作製した薄膜の焼成後の透過型電子顕微鏡像(図6)によって、ハニカム状のヘキサゴナル細孔構造が観察されることからも確認できる。
また、I100のゾルゲル反応時間依存性を図7に示す。上述のように、密閉容器なしでもメソ構造作製が可能なゾルゲル反応時間が短い場合においては、密閉容器により構造規則性がさらに向上し、密閉容器なしではメソ構造作製が不可能な、ゾルゲル反応時間が長い場合においても、密閉容器によりメソ構造の作製が可能となった。このように、溶媒蒸発過程において密閉容器を使用することにより、メソ構造の構築が大いに促進されることが明らかとなった。
水4.1g、11N濃塩酸0.021g、エタノール8.9g、オルト珪酸テトラエチル4.9gを混合し、室温で1時間攪拌することで、シリカ源がオリゴマー化した溶液を調製した。また鋳型分子である1−セチル,3−メチルイミダゾリウムクロライド(CMI−Cl、図3−b)0.090gをエタノール0.90gに溶解して調製した溶液に、前出のシリカオリゴマー溶液2.0gを添加しゾルゲル反応を開始した。薄膜塗布、乾燥、焼成等、以下の過程は実施例1と同様の操作を行い薄膜を作製した。
ゾルゲル反応時間53時間および197時間で作製した薄膜試料の450℃焼成前後のX線回折パターンを、それぞれ図8および図9に示す。これらの結果からCMI−Clを鋳型として用いた場合においても、CTA−Clを鋳型とした実施例1の場合と同様、密閉容器の使用により、メソ構造の構築が大いに促進されることが明らかとなった。
水4.1g、11N濃塩酸0.021g、エタノール8.9g、オルト珪酸テトラエチル4.9gを混合し、室温で1時間攪拌することで、シリカ源がオリゴマー化した溶液を調製した。また鋳型分子である塩化セチルピリジニウム(CPy−Cl、図3−c)0.089gをエタノール0.90gに溶解して調製した溶液に、前出のシリカオリゴマー溶液2.0gを添加しゾルゲル反応を開始した。薄膜塗布、乾燥、焼成等、以下の過程は実施例1と同様の操作を行い薄膜を作製した。
ゾルゲル反応時間118時間で作製した薄膜試料の450℃焼成前のX線回折パターンを図10に示す。これらの結果からCPy−Clを鋳型として用いた場合においても、実施例1、2の場合と同様、密閉容器使用により、メソ構造の構築が大いに促進されることが明らかとなった。
図3−dに示すHAT10−EO3を20mgと、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン(TCNB)を2.9mg、1mlのアセトニトリルに溶解し、アセトニトリルを完全に蒸発させて、室温で真空乾燥することでHAT10−EO3/TCNB複合体を調製した。これに、水0.25g、11N濃塩酸0.019g、エタノール3.7gを混合して調製した、水/塩酸/エタノール溶液0.71gを添加して均一な溶液とし、オルト珪酸テトラブチル(TBOS)0.18gを添加し、ゾルゲル反応を開始した。
この液を室温で攪拌しながらゾルゲル反応の進行を継続させ、この間随時、実施例−1で示すようなスピンコート法、および同様のガラス基板上に、ゾル液をパスツールピペット一滴に相当する16[μl]程度滴下して展開させるキャスト法を用いて薄膜を塗布した。スピンコート法により塗布した薄膜については、乾燥等の工程は実施例1と同様の操作を行い、薄膜を作製した。キャスト法により塗布した薄膜については、プラスチック容器内にエタノール等の有機溶媒を滴下せず容器を密閉することを除き、実施例1と同様の操作を行い薄膜を作製した。実際の操作の流れは、図13に示す通りに行った。
ゾルゲル反応時間15日でキャスト法により作製した薄膜試料の、100℃乾燥後のX線回折パターンを図11に示す。また、ゾルゲル反応時間43日でスピンコート法により作製した薄膜試料の、100℃乾燥後のX線回折パターンを図12に示す。
これらの結果から非イオン性のHAT10−EO3を鋳型として用いた場合においても、イオン性の親水部位をもつ鋳型を用いた実施例1、2、3の場合と同様、メソ構造の構築が大いに促進されることが明らかとなった。またスピンコート法で作製した薄膜だけでなく、キャスト法によって作製した薄膜にも適用できる技術であることも明らかとなった。
本発明により、上記のメソ構造シリカ薄膜を調製する方法として、鋳型分子、シリカ源、ゾルゲル反応触媒、水および必要に応じて有機溶媒から構成される反応溶液を調製してゾルゲル反応を行い、完全にゲル化する前のゾル液を基板に塗布し、溶媒を蒸発させ乾燥することによりメソ構造シリカ複合体薄膜を、さらに高温焼成または有機溶媒による抽出により鋳型分子を除去してメソ多孔性シリカ薄膜を調製するにおいて、乾燥工程の一部を密閉条件下で、場合によっては密閉空間内に揮発性溶媒を適量共存させることにより行う方法が提供される。本発明における揮発性溶媒とは、分解を伴わずに揮発し、100Pa以上の蒸気圧を持つことが可能な溶媒であり、アルカン類、エーテル類、アルコール類等を含む有機溶媒が例として挙げられる。密閉空間内に共存させる揮発性溶媒としては、好ましくは反応溶液に使用する有機溶媒、具体的にはエタノール等の炭素数1〜5に該当する低級アルコール等が挙げられる。
本発明によって得られるシリカ薄膜はきわめて規則性の高いメソ構造を有する構造体であり、優れた触媒担体、吸着剤、さらには電子・光デバイス等として利用に供することができる。
本発明で用いられる、鋳型分子の疎水部を構成するのに好ましい官能基または原子団の例の化学構造式を示す。 本発明で用いられる、鋳型分子の親水部を構成するのに好ましい官能基または原子団の例の化学構造式を示す。 本発明で使用されている、鋳型分子として好適な例の化学構造式を示す。 本発明に従い、CTA−Clを鋳型とし、ゾルゲル反応時間34時間後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した、メソ構造シリカ複合体およびメソ多孔性シリカ薄膜のX線回折パターンを示す。 本発明に従い、CTA−Clを鋳型とし、ゾルゲル反応時間125時間後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した薄膜の、450℃焼成前後のX線回折パターンを示す。 本発明に従い、CTA−Clを鋳型とし、ゾルゲル反応時間125時間後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行い、450℃焼成して作製したメソ多孔性シリカ薄膜の透過型電子顕微鏡像を示す。 本発明に従い、CTA−Clを鋳型とし、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した作製した薄膜の、450℃焼成前後の薄膜のI100のゾルゲル反応時間依存性を示す。 本発明に従い、CMI−Clを鋳型とし、ゾルゲル反応時間53時間後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した作製した薄膜の、450℃焼成前後のX線回折パターンを示す。 本発明に従い、CMI−Clを鋳型とし、ゾルゲル反応時間197時間後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した作製した薄膜の、450℃焼成前後のX線回折パターンを示す。 本発明に従い、CPy−Clを鋳型とし、ゾルゲル反応時間118時間後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した、450℃焼成前のメソ構造シリカ複合体薄膜のX線回折パターンを示す。 本発明に従い、HAT10EO3とTCNBの複合体を鋳型とし、ゾルゲル反応時間15日後にキャスト法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製した、450℃焼成前のメソ構造シリカ複合体薄膜のX線回折パターンを示す 本発明に従い、HAT10EO3とTCNBの複合体を鋳型とし、ゾルゲル反応時間43日後にスピンコート法で基板に塗布した後、乾燥工程を密閉容器内または開放系で行うことにより作製したパターンを示す。 本発明に従い、乾燥工程を密閉容器内で行うことによるメソ構造シリカ薄膜作製の工程の流れを示す。

Claims (6)

  1. 鋳型分子、シリカ源、ゾルゲル反応触媒、水、および有機溶媒から構成される反応溶液を調製してゾルゲル反応を行い、ゾルゲル反応が進行中の溶液を基板に塗布し、乾燥の進行を抑制しつつ塗布膜を乾燥させることを特徴とする、メソ構造シリカ薄膜の製造方法。
  2. 密閉空間で塗布膜を乾燥することを特徴とする、請求項1に記載のメソ構造シリカ薄膜の製造方法。
  3. 塗布膜の乾燥を行う密閉空間内に、予め揮発性溶媒を共存させることを特徴とする、請求項1または2に記載のメソ構造シリカ薄膜の製造方法。
  4. 塗布膜の乾燥に使用する密閉空間内に予め共存させる揮発性溶媒として、反応溶液を構成する溶媒を用いることを特徴とする、請求項3に記載のメソ構造シリカ薄膜の製造方法。
  5. ゾルゲル反応によって調製した溶液を基板に塗布する方法として、スピンコート法、ディップコート法、またはキャスト法を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のメソ構造シリカ薄膜の製造方法。
  6. シリカ源としてアルコキシド、ゾルゲル反応触媒として塩酸、有機溶媒として低級アルコールを用いることを特徴とする、請求項5に記載のメソ構造シリカ薄膜の製造方法。
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