JP4077970B2 - シリカメソ構造体薄膜及びメソポーラスシリカ薄膜及びシリカメソ構造体薄膜の作成方法及びメソポーラスシリカ薄膜の作成方法 - Google Patents

シリカメソ構造体薄膜及びメソポーラスシリカ薄膜及びシリカメソ構造体薄膜の作成方法及びメソポーラスシリカ薄膜の作成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒や吸着剤などに用いられる無機酸化物多孔体の応用に関連し、より詳しくは、細孔構造の制御されたメソ多孔体の基板への形成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多孔質材料は、吸着、分離など様々な分野で利用されている。IUPACによれば、多孔体は、細孔径が2nm以下のマイクロポーラス、2〜50nmのメソポーラス、50nm以上のマクロポーラスに分類される。マイクロポーラスな多孔体には天然のアルミノケイ酸塩、合成アルミノケイ酸塩等のゼオライト、金属リン酸塩等が知られている。これらは、細孔のサイズを利用した選択的吸着、形状選択的触媒反応、分子サイズの反応容器としての利用されている。
【0003】
報告されているマイクロポーラスクリスタルにおいては、細孔径は最大で1.5nm程度であり、さらに径の大きな固体の合成はマイクロポアには吸着できないような嵩高い化合物の吸着、反応を行うために重要な課題である。この様な大きなポアを有する物質としてシリカゲル、ピラー化粘土等が知られていたが、これらにおいては細孔径の分布が広く、細孔径の制御が問題であった。
【0004】
この様な背景の中、径の揃ったメソポアが蜂の巣状に配列した構造を有するメソポーラスシリカの合成が、ほぼ同時に異なる二つの方法で開発された。一方は、Nature第359巻710ページに記載されているような界面活性剤の存在下においてケイ素のアルコキシドを加水分解させて合成されるMCM−41と呼ばれる物質であり、他方は、Journalof Chemical Society Chemical Communicationsの1993巻680ページに記載されているような、層状ケイ酸の一種であるカネマイトの層間にアルキルアンモニウムをインターカレートさせて合成されるFSM−16と呼ばれる物質である。この両者ともに、界面活性剤の集合体が鋳型となってシリカの構造制御が行われていると考えられている。これらの物質は、ゼオライトのポアに入らないような嵩高い分子に対する触媒として非常に有用な材料であるだけでなく、光学材料や電子材料等の機能性材料への応用も考えられている。
【0005】
このような規則的な細孔構造を有するメソポーラス多孔体を、触媒以外の機能性材料分野に応用する場合、これらの材料を基板上に均一に保持する技術が重要である。基板上に均一なメソポーラス薄膜を作成する方法としては、例えばChemical Communicationsの1996巻1149ページに記載されているようなスピンコートによる方法、Nature第389巻364ページに記載されているようなディップコートによる方法、Nature第379巻703ページに記載されているような固体表面に膜を析出させる方法等がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら従来のメソ構造体薄膜の作成方法には以下に述べるような問題点があった。すなわち、スピンコート膜等の場合には膜全体にわたってのメソ構造体の方向性がなく、ポアを配向させることができない。また、一方メソ構造体を基板上に析出させる方法の場合には形成される膜の基板依存性が大きく、方向性を持った平坦な膜の形成は雲母やグラファイトのへき開面のような基板に限られており、これらの基板は光学材料や電子材料への応用のためにはサイズ、剛性、導電性等を考慮すると、好ましい基板とは言い難い。
【0007】
また、析出した膜には、クラックが入ってしまい、基板全体にわたって連続した膜を形成することができなかった。
【0008】
このため、配向性を有するメソポーラス薄膜を、基板の広い範囲にわたってクラックを生じないように、導電性を有する実用的な基板上に形成するための方法が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、実用的な基板上に、配向性を有するメソポーラス薄膜を広い範囲においてクラックを生じさせずに形成する簡単な方法を提供するものである。
【0010】
そこで、本発明は、表面における原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板上にメソ構造体薄膜が配置されていることを特徴とするシリカメソ構造体薄膜とする。
【0012】
そこで、本発明は、表面における原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板上にメソポーラス薄膜が配置されていることを特徴とするメソポーラスシリカ薄膜とする。
【0014】
また、本発明では、酸性条件下、界面活性剤の存在下においてケイ素アルコキシドを加水分解して作成するシリカメソ構造体薄膜の作成方法において、表面における原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板上にメソ構造体薄膜を形成することを特徴とするシリカメソ構造体薄膜の作成方法とする。なお、単結晶基板材料として、シリコン、砒化ガリウムを用いた場合に良好な配向性の薄膜を得ることができる。
【0015】
ここで言うメソ構造体とは、界面活性剤の集合体をメソ細孔内に保持したままの状態のものを示し、メソ構造体から界面活性剤を除去してメソ細孔内を中空にすることによってメソポーラスな物質となる。
【0016】
この場合、基板上に膜を析出させる際の基板は、反応溶液中に保持されても、基板の配向の施された側の表面を反応溶液表面に接するように保持されてもよい。使用する単結晶の(110)基板は、平坦なメソ構造体薄膜を形成するために表面が研磨されたものを用いるのが望ましい。
【0017】
また、単結晶基板としてシリコンを用いる場合には、単結晶基板表面には自然酸化膜が形成されているため、膜形成の直前にシリコン基板をフッ化水素酸溶液で処理して表面の酸化膜を除去すると良好な配向状態を有するメソ構造体薄膜を得ることができる。砒化ガリウム基板の場合には、表面の酸化物相は酸性の反応溶液によって除去可能であるために、この操作は不要である。
【0018】
さらに本発明は、上記の方法によって作成されたメソ構造体薄膜から界面活性剤を除去することによるメソポーラス薄膜の形成方法である。メソ構造体から界面活性剤を除去する方法は、メソ構造体の焼成、溶剤による抽出、超臨界状態の流体を用いる方法等があるが、これ以外の方法でもであってもメソ細孔構造を破壊することなく界面活性剤を除去できる方法であれば用いることが可能である。以下、実施態様を用いて本発明を説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のメソ構造体薄膜の形成に用いる反応容器は、例えば図2の様な構成のものである。反応容器の材質は、薬品、特に酸に対する耐性を有するものであれば特に限定はなく、ポリプロピレンやテフロンのようなものを用いることができる。反応容器内には、耐酸性の材質の基板ホルダーが例えば図2の様に置かれており、基板はこれを用いて保持される。図2は基板を水平に保持する例を示してあるが、基板の保持は水平に限定されるものではない。また、基板は、図3(A)の様に溶液中に保持するのが一般的だが、図3(B)の様に基板の配向の施された側の表面を反応溶液表面に接するように保持した場合にも同様の膜を形成することができる。反応容器は、反応中に圧力がかかっても破壊されないように、さらにステンレスのような剛性の高い材質の密閉容器に入れることもある。
【0020】
この図において、反応溶液は界面活性剤水溶液に塩酸等の酸を混合し、SiO2の等電点であるpH=2以下に調整したものに、テトラエトキシシランの様なケイ素のアルコキシドを混合したものである。界面活性剤は、3級アルキルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤、アルキルアミンやポリエチレンオキシドのような非イオン性界面活性剤等の中から適宜選択される。使用する界面活性剤分子の長さは、目的のメソ構造の細孔径に応じて決められる。また、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メシチレンのような添加物を加えても良い。界面活性剤の濃度は界面活性剤の種類によって適宜最適濃度が決定される。
【0021】
酸性側、特に等電点の近くではSiO2の沈殿の発生速度は小さく、塩基性条件の下での反応の場合のようにアルコキシドの添加後瞬間的に沈殿が発生することはない。
【0022】
基板には、表面における原子配列が2回対称性を有する方位の単結晶基板として、シリコンに代表されるダイヤモンド型構造の単結晶、もしくは砒化ガリウムに代表される閃亜鉛鉱型構造の(110)基板を用いる。基板の大きさに特に制約はなく、また、基板へのドープ種、基板の抵抗が形成されるメソ複合体薄膜の配向性、連続性に与える影響は一般的に非常に小さい。基板の結晶方位の(110)方向からのオフアングルは小さいほど良い。
【0023】
この様な条件で基板上にシリカのメソ構造体を析出させることができる。析出させる際の温度は60〜100℃程度の温度領域において選択される。反応温度が低い場合には、形成されるメソポアの構造が乱れる傾向がある。反応時間は数時間〜数ヶ月程度で、時間が短いほど薄い膜が形成される。
【0024】
この様にして基板上に形成された膜は、純水で洗浄した後に空気中で自然乾燥させ、シリカメソ複合体薄膜が得られる。
【0025】
このシリカメソ複合体からテンプレートの界面活性剤ミセルを除去することでメソポーラスシリカ薄膜を作成することができる。界面活性剤の除去は、焼成、溶剤による抽出、超臨界状態の流体による抽出等の中から選択される。例えば、空気中、550℃で10時間焼成することによって、メソ構造をほとんど破壊することなくメソ構造体薄膜から完全に界面活性剤を除去することができる。また、溶剤抽出等の手段を用いると、100%の界面活性剤の除去は困難ではあるものの、焼成時に起こる基板単結晶材料の酸化を防ぐことが可能である。
【0026】
以上述べた本発明の要旨は、結晶性の基板の対称性の低い面にメソ構造体を析出させることによって、結晶性基板の特定方向に粒子を成長させ、膜全体にわたって粒子内のポアの方向を揃えたというものである。
【0027】
以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明が達成される範囲内で、界面活性剤種、アルコキシド種、及び反応条件等が異なるものも含有する。
【0028】
本発明の配向性メソポーラスシリカ薄膜の用途的なものとしては、例えば、そのポア内部に有機金属分子を導入、焼成することで金属ナノワイヤを形成させた1次元の導電性を有する薄膜などを挙げることができる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
本実施例は、シリコン単結晶(110)基板上にシリカメソ構造体薄膜、及びメソポーラスシリカ薄膜を作成した例である。
【0030】
片面研磨、p型、比抵抗100ΩcmのSi(110)基板を2cm×2cmの大きさにカットした後、1%のフッ化水素酸溶液で処理し、表面の自然酸化膜を除去した。自然酸化膜が除去されるとシリコンウェハーの表面は疎水性になるために自然酸化膜の除去を確認することができる。この処理の後、基板を純水で十分に洗浄した後に、研磨面が下向きになるように基板ホルダーに挟み、テフロン容器中に静置した。
【0031】
セチルトリメチルアンモニウム塩化物2.82gを89.6mlの純水に溶解した後、36%塩酸を72.1ml添加して2時間攪拌し、界面活性剤の酸性溶液とした。この溶液にテトラエトキシシラン(TEOS)1.78mlを加え、2分30秒攪拌し、上記基板を保持した基板ホルダーの入った図2の構成のテフロン容器中に入れ、基板が溶液中に保持されるようにした。最終的な溶液組成はモル比で、H2O 100:HCl 10.5:セチルトリメチルアンモニウム塩化物 0.11:TEOS 0.10である。この容器に蓋をし、さらにステンレス製の密閉容器に入れた後に80℃に保ったオーブン中に保持した。保持時間は、2時間〜2週間とした。
【0032】
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に試料として用いた。
【0033】
反応溶液と2時間接触させた基板を乾燥させた後に、(110)基板上に作成されたメソ構造体の光学顕微鏡で観察された形状を模式的に図4(A)に示す。この図に示したように、(110)基板上では、個々の粒子が一軸方向に延伸されたようになっており、かつ、その粒子の長軸方向はほぼ一定の方向に揃っていた。反応容器中に1週間保持した基板上には光沢を有する連続的な膜が形成されており、図4(B)に示すような方向性を有する細長い形状の組織が観察された。
【0034】
このシリカメソ構造体の薄膜が形成された基板をX線回折分析で分析した。その結果、面間隔3.50nmの、ヘキサゴナル構造の (100) 面に帰属される強い回折ピークが確認され、この薄膜がヘキサゴナルな細孔構造を有することが確かめられた。広角の領域には回折ピークが認められないことから、壁を構成するシリカは非晶質であることがわかった。
【0035】
このシリカメソ構造体の中のメソポアの配向を調べるために、高分解能走査型電子顕微鏡で、図4(A)の粒子のエッジ部分の観察を行った。その結果、図5に模式的に示すように、粒子の長軸方向に平行に約40Åの間隔の縞が観察された。この縞模様は連続膜上の組織のエッジでも認められた。このことから、本実施例で作成したメソポーラスシリカ膜内でのメソポアの配向が確認された。
【0036】
この、シリカメソ構造体の薄膜を作成した基板をマッフル炉に入れ、1℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、空気中で10時間焼成した。焼成後の基板表面の形状には、焼成前と比較して大きな差異は認められなかった。さらに、焼成後の薄膜のX線回折分析の結果、面間隔3.3nmの強い回折ピークが観測され、ヘキサゴナルな細孔構造が保持されていることが確かめられた。焼成後にも、広角領域には回折ピークは確認されておらず、壁のシリカは非晶質のままであることが確認された。また、赤外吸収スペクトル等の分析により、この焼成後の試料には既に界面活性剤に起因する有機物成分は残存していないことが確かめられた。
【0037】
焼成前後の薄膜を、フォーカストイオンビーム(FIB)を用いて、図4で観察されるような細長い構造の長軸方向に垂直な方向に切断し、断面の透過電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、いずれの場合にも、断面にヘキサゴナル構造の細孔が確認され、メソポアはこの方向に配向していることがここでも確認された。シリカメソ複合体薄膜の断面を観察した場合の模式図を図1に示す。
【0038】
この様に、シリコン(110)基板上で、シリカメソ複合体、及びメソポーラスシリカの配向性を有する連続膜を形成することができた。
【0039】
本実施例において、基板を溶液中に保持するかわりに、(110)研磨面を溶液表面に接触させるように保持した場合にも、同様の構造のシリカメソ複合体薄膜、及びメソポーラスシリカ薄膜を作成することができた。
【0040】
(比較例)
片面研磨、p型、比抵抗100ΩcmのSi(100)、及び(111)基板を2cm×2cmの大きさにカットした後、実施例1と同様に1%のフッ化水素酸溶液で処理し、表面の自然酸化膜を除去した。この処理の後、基板を純水で十分に洗浄した後に、研磨面が下向きになるように基板ホルダーに挟み、テフロン容器中に静置した。
【0041】
Si(100)基板は、表面での原子配列は4回対称性を有し、(111)基板では表面の原子配列は3回対称性を有している。
【0042】
実施例1と同じ組成の界面活性剤溶液を調整し、実施例1と同量のTEOSを添加し、2分30秒攪拌した後、上記基板を保持した基板ホルダーの入ったテフロン容器中に入れ、基板が溶液中に保持されるようにした。この後実施例1と同じステンレス製の密閉容器に入れた後に80℃に保ったオーブン中に保持した。保持時間は、2時間〜2週間とした。
【0043】
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に試料として用いた。
【0044】
反応溶液と1日接触させた基板を乾燥させた後に(111)基板上に作成されたメソ構造体膜の、光学顕微鏡で観察された形状を模式的に図6に示す。この図に示したように、(111)基板上では、個々の粒子が特定の方向に揃っておらず、ランダムな粒子同士の融合が確認された。1週間以上反応容器中に保持した試料では、連続した光沢のある膜が得られたものの、光学顕微鏡において粒界に起因するランダムなストライプ状組織が観察された。(100)基板上で形成される膜の形状も(111)基板上で形成される構造とほとんど差異はなかった。
【0045】
粒子内部のメソポアの配向は実施例1と同様に高分解能走査型電子顕微鏡を用いて調べた。その結果、ランダムな形状の粒子のエッジにおいて、粒子の形状に平行な縞状のストライプが観察され、膜内部のメソポアは面内で一軸配向していないことが確認された。
【0046】
(実施例2)
本実施例は、基板として、砒化ガリウムの(110)基板を用いた場合の例である。
【0047】
片面研磨、p型、比抵抗100ΩcmのGaAs(110)基板を2cm×2cmの大きさにカットした後、研磨面が下向きになるように基板ホルダーに挟み、テフロン容器中で、実施例1で用いたものと同じ組成の溶液中に保持した。保持時間は、2時間、及び2週間とした。
【0048】
所定の時間反応溶液と接触させた基板は、容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に試料として用いた。
【0049】
反応溶液と接触させたGaAs(110)基板を乾燥させた後に、光学顕微鏡で観察したところ、シリコン(110)基板上で観察された形状とほぼ同じ、方向の揃った細長いメソ構造体粒子の析出が確認された。反応容器中に1週間保持した基板上には光沢を有する連続的な膜が形成されており、シリコン(110)の場合同様に、方向性を有する細長い形状の組織が観察された。
【0050】
実施例1の場合と同様にX線回折分析によって、この膜の構造を検討した結果、砒化ガリウム基板上にもシリコン基板上と同様ヘキサゴナルな細孔構造を有するシリカメソ構造体薄膜が形成されていることが確認された。
【0051】
このシリカメソ構造体の中のメソポアの配向を高分解能走査型電子顕微鏡で調べたところ、実施例1のシリコン基板の場合と同様に配向した粒子のエッジに粒子の長軸方向と平行に間隔約40Åのストライプが観察され、膜内でのメソポアの配向が確認された。
【0052】
このメソ構造体薄膜をエタノール中に浸漬し、70℃で24時間抽出を試みたところ、一度の抽出によって90%以上の界面活性剤が、シリカメソ構造体薄膜から除去された。同じ抽出操作を2回繰り返し行なった試料では、95%以上の界面活性剤を除去することができた。抽出後の薄膜を乾燥させエタノールを除去することによってメソポーラスシリカを得た。
【0053】
本実施例に用いた、溶剤抽出により界面活性剤ミセルを除去する方法は、界面活性剤を完全に除去することは困難であるものの、酸化雰囲気における熱処理に比較的弱い基板上に形成されたシリカメソ複合体薄膜から界面活性剤を除く方法として有効であることが示された。
【0054】
(実施例3)
本実施例は、基板上に形成されたシリカメソ複合体から、超臨界状態の流体を用いた抽出によって界面活性剤を除去して配向メソポーラスシリカ薄膜を作成した例である。実施例1と同じ、シリコン(110)基板上に実施例1と同じ手順でシリカメソ構造体薄膜を作成した。
【0055】
このメソ構造体薄膜をエタノール中に浸漬し、複合体中の液相を完全にエタノールに置換する。この場合、実施例3で述べたように、エタノール中に界面活性剤は溶出してくる。この後、薄膜試料を図7のような構成の超臨界乾燥装置中に入れ、二酸化炭素を流体として用いて31℃、72.8気圧の超臨界条件で有機物の抽出を行った。赤外吸収スペクトル等の分析により、超臨界条件の下で乾燥させた後のメソポーラスシリカ中には有機物はほとんど残存しておらず、ほぼ完全に界面活性剤を除去することができたことが確認された。図7において、71はCO2ボンベ、72はチラー、73はポンプ、74はプレヒーター、75は抽出器、76はヒーター、77はセパレータ、78はガスメータ、79はバルブを示す。
【0056】
本実施例で用いた方法は、実施例3で述べた方法よりも複雑な装置が必要となるが、低温において、より完全に界面活性剤を除去できる方法である。
【0057】
また、超臨界状態の流体を用いた乾燥では、乾燥時に発生する応力を0にすることができるため、メソ構造を全く破壊することなしにメソポーラスシリカ薄膜を得ることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、表面における原子配列が2回対称性を有する方位の単結晶基板として最も一般的である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板を用いることで、配向性を有するシリカメソ複合体薄膜、及びメソポーラスシリカ薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作成した本発明の配向シリカメソ複合体薄膜、及びメソポーラス薄膜の断面TEM像の模式図である。
【図2】本発明において、シリカメソ複合体薄膜を形成するための反応容器の図である。
【図3】反応溶液中における基板の保持方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1で、2時間、及び2週間の反応時間で作成された薄膜の光学顕微鏡像の模式図である。
【図5】本実施例1で作成した膜において、高分解能走査型電子顕微鏡で観察されたメソポアの様子の模式図である。
【図6】本明細書の比較例において1日の反応時間で作成されたシリコン(111)基板上のシリカメソ複合体薄膜の光学顕微鏡像の模式図である。
【図7】本発明の実施例3で使用した超臨界乾燥装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
11 石英ガラス基板
12 界面活性剤ロッド状ミセルまたは空孔
13 シリカ
21 テフロン容器
22 テフロン蓋
23 テフロン製基板ホルダー
24 シール(Oリング)
25 基板
31 反応溶液
32 基板
71 CO2ボンベ
72 チラー
73 ポンプ
74 プレヒーター
75 抽出器
76 ヒーター
77 セパレータ
78 ガスメータ
79 バルブ

Claims (14)

  1. 表面における原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板上にメソ構造体薄膜が配置されていることを特徴とするシリカメソ構造体薄膜。
  2. 前記単結晶材料がシリコン又は砒化ガリウムである請求項に記載のシリカメソ構造体薄膜。
  3. 表面における原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板上にメソポーラス薄膜が配置されていることを特徴とするメソポーラスシリカ薄膜
  4. 前記単結晶材料がシリコン又は砒化ガリウムである請求項に記載のメソポーラスシリカ薄膜
  5. 酸性条件下、界面活性剤の存在下においてケイ素アルコキシドを加水分解して作成するシリカメソ構造体薄膜の作成方法において、表面における原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板である、ダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板上にメソ構造体薄膜を形成することを特徴とするシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  6. 前記単結晶材料がシリコンである請求項に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  7. 前記単結晶材料が砒化ガリウムである請求項に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  8. 前記単結晶基板を前記界面活性剤及びケイ素アルコキシドを有する反応溶液中に保持する請求項5〜7のいずれか一項に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  9. 前記単結晶基板を前記界面活性剤及びケイ素アルコキシドを有する反応溶液表面に接するように保持する請求項5〜7のいずれか一項に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  10. 前記単結晶基板の少なくとも一方の表面が研磨されている請求項5〜9のいずれか一項に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  11. 前記反応溶液と接触させる前に前記単結晶基板表面の酸化物層をフッ化水素酸溶液で除去する処理を施した請求項に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  12. 請求項5〜11のいずれか一項の方法で作成されたシリカメソ構造体薄膜を焼成することにより界面活性剤を除去し中空の構造とするメソポーラスシリカ薄膜の作成方法。
  13. 請求項5〜11のいずれか一項の方法で作成されたシリカメソ構造体薄膜から溶剤抽出によって界面活性剤を除去し、中空の構造とするメソポーラスシリカ薄膜の作成方法。
  14. 請求項5〜11のいずれか一項の方法で作成されたシリカメソ構造体薄膜から超臨界状態の流体によって界面活性剤を除去し、中空の構造とするメソポーラスシリカ薄膜の作成方法。
JP03561099A 1998-12-07 1999-02-15 シリカメソ構造体薄膜及びメソポーラスシリカ薄膜及びシリカメソ構造体薄膜の作成方法及びメソポーラスシリカ薄膜の作成方法 Expired - Fee Related JP4077970B2 (ja)

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