JP2000233995A - シリカメソ構造体薄膜及びメソポーラスシリカ薄膜及びシリカメソ構造体薄膜の作成方法及びメソポーラスシリカ薄膜の作成方法 - Google Patents

シリカメソ構造体薄膜及びメソポーラスシリカ薄膜及びシリカメソ構造体薄膜の作成方法及びメソポーラスシリカ薄膜の作成方法

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JP2000233995A JP11035610A JP3561099A JP2000233995A JP 2000233995 A JP2000233995 A JP 2000233995A JP 11035610 A JP11035610 A JP 11035610A JP 3561099 A JP3561099 A JP 3561099A JP 2000233995 A JP2000233995 A JP 2000233995A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、配向性を有するメソポーラ
ス薄膜を、基板の広い範囲にわたってクラックを生じな
いように、導電性を有する実用的な基板上に形成するこ
とにある。 【解決手段】 そこで、本発明では、表面における原子
配列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板上に
メソポーラス薄膜が配置されている構成をとる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、触媒や吸着剤など
に用いられる無機酸化物多孔体の応用に関連し、より詳
しくは、細孔構造の制御されたメソ多孔体の基板への形
成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】多孔質材料は、吸着、分離など様々な分
野で利用されている。IUPACによれば、多孔体は、
細孔径が2nm以下のマイクロポーラス、2〜50nm
のメソポーラス、50nm以上のマクロポーラスに分類
される。マイクロポーラスな多孔体には天然のアルミノ
ケイ酸塩、合成アルミノケイ酸塩等のゼオライト、金属
リン酸塩等が知られている。これらは、細孔のサイズを
利用した選択的吸着、形状選択的触媒反応、分子サイズ
の反応容器としての利用されている。
【0003】報告されているマイクロポーラスクリスタ
ルにおいては、細孔径は最大で1.5nm程度であり、
さらに径の大きな固体の合成はマイクロポアには吸着で
きないような嵩高い化合物の吸着、反応を行うために重
要な課題である。この様な大きなポアを有する物質とし
てシリカゲル、ピラー化粘土等が知られていたが、これ
らにおいては細孔径の分布が広く、細孔径の制御が問題
であった。
【0004】この様な背景の中、径の揃ったメソポアが
蜂の巣状に配列した構造を有するメソポーラスシリカの
合成が、ほぼ同時に異なる二つの方法で開発された。一
方は、Nature第359巻710ページに記載されているような
界面活性剤の存在下においてケイ素のアルコキシドを加
水分解させて合成されるMCM−41と呼ばれる物質で
あり、他方は、Journalof Chemical Society Chemical
Communicationsの1993巻680ページに記載されているよ
うな、層状ケイ酸の一種であるカネマイトの層間にアル
キルアンモニウムをインターカレートさせて合成される
FSM−16と呼ばれる物質である。この両者ともに、
界面活性剤の集合体が鋳型となってシリカの構造制御が
行われていると考えられている。これらの物質は、ゼオ
ライトのポアに入らないような嵩高い分子に対する触媒
として非常に有用な材料であるだけでなく、光学材料や
電子材料等の機能性材料への応用も考えられている。
【0005】このような規則的な細孔構造を有するメソ
ポーラス多孔体を、触媒以外の機能性材料分野に応用す
る場合、これらの材料を基板上に均一に保持する技術が
重要である。基板上に均一なメソポーラス薄膜を作成す
る方法としては、例えばChemical Communicationsの199
6巻1149ページに記載されているようなスピンコートに
よる方法、Nature第389巻364ページに記載されているよ
うなディップコートによる方法、Nature第379巻703ペー
ジに記載されているような固体表面に膜を析出させる方
法等がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これら従来の
メソ構造体薄膜の作成方法には以下に述べるような問題
点があった。すなわち、スピンコート膜等の場合には膜
全体にわたってのメソ構造体の方向性がなく、ポアを配
向させることができない。また、一方メソ構造体を基板
上に析出させる方法の場合には形成される膜の基板依存
性が大きく、方向性を持った平坦な膜の形成は雲母やグ
ラファイトのへき開面のような基板に限られており、こ
れらの基板は光学材料や電子材料への応用のためにはサ
イズ、剛性、導電性等を考慮すると、好ましい基板とは
言い難い。
【0007】また、析出した膜には、クラックが入って
しまい、基板全体にわたって連続した膜を形成すること
ができなかった。
【0008】このため、配向性を有するメソポーラス薄
膜を、基板の広い範囲にわたってクラックを生じないよ
うに、導電性を有する実用的な基板上に形成するための
方法が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点に鑑
みなされたもので、実用的な基板上に、配向性を有する
メソポーラス薄膜を広い範囲においてクラックを生じさ
せずに形成する簡単な方法を提供するものである。
【0010】そこで、本発明は、表面における原子配列
が2回対称性を有するような方位の単結晶基板上にメソ
構造体薄膜が配置されていることを特徴とするシリカメ
ソ構造体薄膜とする。
【0011】更に、前記表面における原子配列が2回対
称性を有するような方位の単結晶基板がダイヤモンド型
構造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(11
0)基板であるシリカメソ構造体薄膜が好ましい。
【0012】そこで、本発明は、表面における原子配列
が2回対称性を有するような方位の単結晶基板上にメソ
ポーラス薄膜が配置されていることを特徴とするメソポ
ーラスシリカ薄膜とする。
【0013】更に、前記表面における原子配列が2回対
称性を有するような方位の単結晶基板がダイヤモンド型
構造、もしくは閃亜鉛鉱型を有する単結晶の(110)
基板であるメソポーラスシリカ薄膜が好ましい。
【0014】また、本発明では、酸性条件下、界面活性
剤の存在下においてケイ素アルコキシドを加水分解して
作成するシリカメソ構造体薄膜の作成方法において、表
面における原子配列が2回対称性を有するような方位の
単結晶基板上にメソ構造体薄膜を形成することを特徴と
するシリカメソ構造体薄膜の作成方法とする。表面にお
ける原子配列が2回対称性を有するような方位の単結晶
基板の最も一般的なものとしてダイヤモンド型構造、も
しくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(110)基板
があり、単結晶基板材料として、シリコン、砒化ガリウ
ムを用いた場合に良好な配向性の薄膜を得ることができ
る。
【0015】ここで言うメソ構造体とは、界面活性剤の
集合体をメソ細孔内に保持したままの状態のものを示
し、メソ構造体から界面活性剤を除去してメソ細孔内を
中空にすることによってメソポーラスな物質となる。
【0016】この場合、基板上に膜を析出させる際の基
板は、反応溶液中に保持されても、基板の配向の施され
た側の表面を反応溶液表面に接するように保持されても
よい。使用する単結晶の(110)基板は、平坦なメソ
構造体薄膜を形成するために表面が研磨されたものを用
いるのが望ましい。
【0017】また、単結晶基板としてシリコンを用いる
場合には、単結晶基板表面には自然酸化膜が形成されて
いるため、膜形成の直前にシリコン基板をフッ化水素酸
溶液で処理して表面の酸化膜を除去すると良好な配向状
態を有するメソ構造体薄膜を得ることができる。砒化ガ
リウム基板の場合には、表面の酸化物相は酸性の反応溶
液によって除去可能であるために、この操作は不要であ
る。
【0018】さらに本発明は、上記の方法によって作成
されたメソ構造体薄膜から界面活性剤を除去することに
よるメソポーラス薄膜の形成方法である。メソ構造体か
ら界面活性剤を除去する方法は、メソ構造体の焼成、溶
剤による抽出、超臨界状態の流体を用いる方法等がある
が、これ以外の方法でもであってもメソ細孔構造を破壊
することなく界面活性剤を除去できる方法であれば用い
ることが可能である。以下、実施態様を用いて本発明を
説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明のメソ構造体薄膜の形成に
用いる反応容器は、例えば図2の様な構成のものであ
る。反応容器の材質は、薬品、特に酸に対する耐性を有
するものであれば特に限定はなく、ポリプロピレンやテ
フロンのようなものを用いることができる。反応容器内
には、耐酸性の材質の基板ホルダーが例えば図2の様に
置かれており、基板はこれを用いて保持される。図2は
基板を水平に保持する例を示してあるが、基板の保持は
水平に限定されるものではない。また、基板は、図3
(A)の様に溶液中に保持するのが一般的だが、図3
(B)の様に基板の配向の施された側の表面を反応溶液
表面に接するように保持した場合にも同様の膜を形成す
ることができる。反応容器は、反応中に圧力がかかって
も破壊されないように、さらにステンレスのような剛性
の高い材質の密閉容器に入れることもある。
【0020】この図において、反応溶液は界面活性剤水
溶液に塩酸等の酸を混合し、SiO 2の等電点であるp
H=2以下に調整したものに、テトラエトキシシランの
様なケイ素のアルコキシドを混合したものである。界面
活性剤は、3級アルキルアンモニウムのようなカチオン
性界面活性剤、アルキルアミンやポリエチレンオキシド
のような非イオン性界面活性剤等の中から適宜選択され
る。使用する界面活性剤分子の長さは、目的のメソ構造
の細孔径に応じて決められる。また、界面活性剤ミセル
の径を大きくするために、メシチレンのような添加物を
加えても良い。界面活性剤の濃度は界面活性剤の種類に
よって適宜最適濃度が決定される。
【0021】酸性側、特に等電点の近くではSiO2
沈殿の発生速度は小さく、塩基性条件の下での反応の場
合のようにアルコキシドの添加後瞬間的に沈殿が発生す
ることはない。
【0022】基板には、表面における原子配列が2回対
称性を有する方位の単結晶基板として、シリコンに代表
されるダイヤモンド型構造の単結晶、もしくは砒化ガリ
ウムに代表される閃亜鉛鉱型構造の(110)基板を用
いる。基板の大きさに特に制約はなく、また、基板への
ドープ種、基板の抵抗が形成されるメソ複合体薄膜の配
向性、連続性に与える影響は一般的に非常に小さい。基
板の結晶方位の(110)方向からのオフアングルは小
さいほど良い。
【0023】この様な条件で基板上にシリカのメソ構造
体を析出させることができる。析出させる際の温度は6
0〜100℃程度の温度領域において選択される。反応
温度が低い場合には、形成されるメソポアの構造が乱れ
る傾向がある。反応時間は数時間〜数ヶ月程度で、時間
が短いほど薄い膜が形成される。
【0024】この様にして基板上に形成された膜は、純
水で洗浄した後に空気中で自然乾燥させ、シリカメソ複
合体薄膜が得られる。
【0025】このシリカメソ複合体からテンプレートの
界面活性剤ミセルを除去することでメソポーラスシリカ
薄膜を作成することができる。界面活性剤の除去は、焼
成、溶剤による抽出、超臨界状態の流体による抽出等の
中から選択される。例えば、空気中、550℃で10時
間焼成することによって、メソ構造をほとんど破壊する
ことなくメソ構造体薄膜から完全に界面活性剤を除去す
ることができる。また、溶剤抽出等の手段を用いると、
100%の界面活性剤の除去は困難ではあるものの、焼
成時に起こる基板単結晶材料の酸化を防ぐことが可能で
ある。
【0026】以上述べた本発明の要旨は、結晶性の基板
の対称性の低い面にメソ構造体を析出させることによっ
て、結晶性基板の特定方向に粒子を成長させ、膜全体に
わたって粒子内のポアの方向を揃えたというものであ
る。
【0027】以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明
を説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるも
のではなく、本発明が達成される範囲内で、界面活性剤
種、アルコキシド種、及び反応条件等が異なるものも含
有する。
【0028】本発明の配向性メソポーラスシリカ薄膜の
用途的なものとしては、例えば、そのポア内部に有機金
属分子を導入、焼成することで金属ナノワイヤを形成さ
せた1次元の導電性を有する薄膜などを挙げることがで
きる。
【0029】
【実施例】(実施例1)本実施例は、シリコン単結晶
(110)基板上にシリカメソ構造体薄膜、及びメソポ
ーラスシリカ薄膜を作成した例である。
【0030】片面研磨、p型、比抵抗100ΩcmのS
i(110)基板を2cm×2cmの大きさにカットし
た後、1%のフッ化水素酸溶液で処理し、表面の自然酸
化膜を除去した。自然酸化膜が除去されるとシリコンウ
ェハーの表面は疎水性になるために自然酸化膜の除去を
確認することができる。この処理の後、基板を純水で十
分に洗浄した後に、研磨面が下向きになるように基板ホ
ルダーに挟み、テフロン容器中に静置した。
【0031】セチルトリメチルアンモニウム塩化物2.
82gを89.6mlの純水に溶解した後、36%塩酸
を72.1ml添加して2時間攪拌し、界面活性剤の酸
性溶液とした。この溶液にテトラエトキシシラン(TE
OS)1.78mlを加え、2分30秒攪拌し、上記基
板を保持した基板ホルダーの入った図2の構成のテフロ
ン容器中に入れ、基板が溶液中に保持されるようにし
た。最終的な溶液組成はモル比で、H2O 100:HC
l 10.5:セチルトリメチルアンモニウム塩化物
0.11:TEOS 0.10である。この容器に蓋を
し、さらにステンレス製の密閉容器に入れた後に80℃
に保ったオーブン中に保持した。保持時間は、2時間〜
2週間とした。
【0032】所定の時間反応溶液と接触させた基板は、
容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に試料とし
て用いた。
【0033】反応溶液と2時間接触させた基板を乾燥さ
せた後に、(110)基板上に作成されたメソ構造体の
光学顕微鏡で観察された形状を模式的に図4(A)に示
す。この図に示したように、(110)基板上では、個
々の粒子が一軸方向に延伸されたようになっており、か
つ、その粒子の長軸方向はほぼ一定の方向に揃ってい
た。反応容器中に1週間保持した基板上には光沢を有す
る連続的な膜が形成されており、図4(B)に示すよう
な方向性を有する細長い形状の組織が観察された。
【0034】このシリカメソ構造体の薄膜が形成された
基板をX線回折分析で分析した。その結果、面間隔3.
50nmの、ヘキサゴナル構造の (100) 面に帰属され
る強い回折ピークが確認され、この薄膜がヘキサゴナル
な細孔構造を有することが確かめられた。広角の領域に
は回折ピークが認められないことから、壁を構成するシ
リカは非晶質であることがわかった。
【0035】このシリカメソ構造体の中のメソポアの配
向を調べるために、高分解能走査型電子顕微鏡で、図4
(A)の粒子のエッジ部分の観察を行った。その結果、
図5に模式的に示すように、粒子の長軸方向に平行に約
40Åの間隔の縞が観察された。この縞模様は連続膜上
の組織のエッジでも認められた。このことから、本実施
例で作成したメソポーラスシリカ膜内でのメソポアの配
向が確認された。
【0036】この、シリカメソ構造体の薄膜を作成した
基板をマッフル炉に入れ、1℃/分の昇温速度で550
℃まで昇温し、空気中で10時間焼成した。焼成後の基
板表面の形状には、焼成前と比較して大きな差異は認め
られなかった。さらに、焼成後の薄膜のX線回折分析の
結果、面間隔3.3nmの強い回折ピークが観測され、
ヘキサゴナルな細孔構造が保持されていることが確かめ
られた。焼成後にも、広角領域には回折ピークは確認さ
れておらず、壁のシリカは非晶質のままであることが確
認された。また、赤外吸収スペクトル等の分析により、
この焼成後の試料には既に界面活性剤に起因する有機物
成分は残存していないことが確かめられた。
【0037】焼成前後の薄膜を、フォーカストイオンビ
ーム(FIB)を用いて、図4で観察されるような細長
い構造の長軸方向に垂直な方向に切断し、断面の透過電
子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、いずれの場合
にも、断面にヘキサゴナル構造の細孔が確認され、メソ
ポアはこの方向に配向していることがここでも確認され
た。シリカメソ複合体薄膜の断面を観察した場合の模式
図を図1に示す。
【0038】この様に、シリコン(110)基板上で、
シリカメソ複合体、及びメソポーラスシリカの配向性を
有する連続膜を形成することができた。
【0039】本実施例において、基板を溶液中に保持す
るかわりに、(110)研磨面を溶液表面に接触させる
ように保持した場合にも、同様の構造のシリカメソ複合
体薄膜、及びメソポーラスシリカ薄膜を作成することが
できた。
【0040】(比較例)片面研磨、p型、比抵抗100
ΩcmのSi(100)、及び(111)基板を2cm
×2cmの大きさにカットした後、実施例1と同様に1
%のフッ化水素酸溶液で処理し、表面の自然酸化膜を除
去した。この処理の後、基板を純水で十分に洗浄した後
に、研磨面が下向きになるように基板ホルダーに挟み、
テフロン容器中に静置した。
【0041】Si(100)基板は、表面での原子配列
は4回対称性を有し、(111)基板では表面の原子配
列は3回対称性を有している。
【0042】実施例1と同じ組成の界面活性剤溶液を調
整し、実施例1と同量のTEOSを添加し、2分30秒
攪拌した後、上記基板を保持した基板ホルダーの入った
テフロン容器中に入れ、基板が溶液中に保持されるよう
にした。この後実施例1と同じステンレス製の密閉容器
に入れた後に80℃に保ったオーブン中に保持した。保
持時間は、2時間〜2週間とした。
【0043】所定の時間反応溶液と接触させた基板は、
容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に試料とし
て用いた。
【0044】反応溶液と1日接触させた基板を乾燥させ
た後に(111)基板上に作成されたメソ構造体膜の、
光学顕微鏡で観察された形状を模式的に図6に示す。こ
の図に示したように、(111)基板上では、個々の粒
子が特定の方向に揃っておらず、ランダムな粒子同士の
融合が確認された。1週間以上反応容器中に保持した試
料では、連続した光沢のある膜が得られたものの、光学
顕微鏡において粒界に起因するランダムなストライプ状
組織が観察された。(100)基板上で形成される膜の
形状も(111)基板上で形成される構造とほとんど差
異はなかった。
【0045】粒子内部のメソポアの配向は実施例1と同
様に高分解能走査型電子顕微鏡を用いて調べた。その結
果、ランダムな形状の粒子のエッジにおいて、粒子の形
状に平行な縞状のストライプが観察され、膜内部のメソ
ポアは面内で一軸配向していないことが確認された。
【0046】(実施例2)本実施例は、基板として、砒
化ガリウムの(110)基板を用いた場合の例である。
【0047】片面研磨、p型、比抵抗100ΩcmのG
aAs(110)基板を2cm×2cmの大きさにカッ
トした後、研磨面が下向きになるように基板ホルダーに
挟み、テフロン容器中で、実施例1で用いたものと同じ
組成の溶液中に保持した。保持時間は、2時間、及び2
週間とした。
【0048】所定の時間反応溶液と接触させた基板は、
容器から取り出し、純水で十分に洗浄した後に試料とし
て用いた。
【0049】反応溶液と接触させたGaAs(110)
基板を乾燥させた後に、光学顕微鏡で観察したところ、
シリコン(110)基板上で観察された形状とほぼ同
じ、方向の揃った細長いメソ構造体粒子の析出が確認さ
れた。反応容器中に1週間保持した基板上には光沢を有
する連続的な膜が形成されており、シリコン(110)
の場合同様に、方向性を有する細長い形状の組織が観察
された。
【0050】実施例1の場合と同様にX線回折分析によ
って、この膜の構造を検討した結果、砒化ガリウム基板
上にもシリコン基板上と同様ヘキサゴナルな細孔構造を
有するシリカメソ構造体薄膜が形成されていることが確
認された。
【0051】このシリカメソ構造体の中のメソポアの配
向を高分解能走査型電子顕微鏡で調べたところ、実施例
1のシリコン基板の場合と同様に配向した粒子のエッジ
に粒子の長軸方向と平行に間隔約40Åのストライプが
観察され、膜内でのメソポアの配向が確認された。
【0052】このメソ構造体薄膜をエタノール中に浸漬
し、70℃で24時間抽出を試みたところ、一度の抽出
によって90%以上の界面活性剤が、シリカメソ構造体
薄膜から除去された。同じ抽出操作を2回繰り返し行な
った試料では、95%以上の界面活性剤を除去すること
ができた。抽出後の薄膜を乾燥させエタノールを除去す
ることによってメソポーラスシリカを得た。
【0053】本実施例に用いた、溶剤抽出により界面活
性剤ミセルを除去する方法は、界面活性剤を完全に除去
することは困難であるものの、酸化雰囲気における熱処
理に比較的弱い基板上に形成されたシリカメソ複合体薄
膜から界面活性剤を除く方法として有効であることが示
された。
【0054】(実施例3)本実施例は、基板上に形成さ
れたシリカメソ複合体から、超臨界状態の流体を用いた
抽出によって界面活性剤を除去して配向メソポーラスシ
リカ薄膜を作成した例である。実施例1と同じ、シリコ
ン(110)基板上に実施例1と同じ手順でシリカメソ
構造体薄膜を作成した。
【0055】このメソ構造体薄膜をエタノール中に浸漬
し、複合体中の液相を完全にエタノールに置換する。こ
の場合、実施例3で述べたように、エタノール中に界面
活性剤は溶出してくる。この後、薄膜試料を図7のよう
な構成の超臨界乾燥装置中に入れ、二酸化炭素を流体と
して用いて31℃、72.8気圧の超臨界条件で有機物
の抽出を行った。赤外吸収スペクトル等の分析により、
超臨界条件の下で乾燥させた後のメソポーラスシリカ中
には有機物はほとんど残存しておらず、ほぼ完全に界面
活性剤を除去することができたことが確認された。図7
において、71はCO2ボンベ、72はチラー、73は
ポンプ、74はプレヒーター、75は抽出器、76はヒ
ーター、77はセパレータ、78はガスメータ、79は
バルブを示す。
【0056】本実施例で用いた方法は、実施例3で述べ
た方法よりも複雑な装置が必要となるが、低温におい
て、より完全に界面活性剤を除去できる方法である。
【0057】また、超臨界状態の流体を用いた乾燥で
は、乾燥時に発生する応力を0にすることができるた
め、メソ構造を全く破壊することなしにメソポーラスシ
リカ薄膜を得ることができる。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
表面における原子配列が2回対称性を有する方位の単結
晶基板、例えばダイヤモンド型構造、もしくは閃亜鉛鉱
型構造を有する単結晶の(110)基板を用いること
で、配向性を有するシリカメソ複合体薄膜、及びメソポ
ーラスシリカ薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作成した本発明の配向シリカメソ複
合体薄膜、及びメソポーラス薄膜の断面TEM像の模式
図である。
【図2】本発明において、シリカメソ複合体薄膜を形成
するための反応容器の図である。
【図3】反応溶液中における基板の保持方法を説明する
ための図である。
【図4】本発明の実施例1で、2時間、及び2週間の反
応時間で作成された薄膜の光学顕微鏡像の模式図であ
る。
【図5】本実施例1で作成した膜において、高分解能走
査型電子顕微鏡で観察されたメソポアの様子の模式図で
ある。
【図6】本明細書の比較例において1日の反応時間で作
成されたシリコン(111)基板上のシリカメソ複合体
薄膜の光学顕微鏡像の模式図である。
【図7】本発明の実施例3で使用した超臨界乾燥装置の
構成を示す概略図である。
【符号の説明】
11 石英ガラス基板 12 界面活性剤ロッド状ミセルまたは空孔 13 シリカ 21 テフロン容器 22 テフロン蓋 23 テフロン製基板ホルダー 24 シール(Oリング) 25 基板 31 反応溶液 32 基板 71 CO2ボンベ 72 チラー 73 ポンプ 74 プレヒーター 75 抽出器 76 ヒーター 77 セパレータ 78 ガスメータ 79 バルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G066 AA22B AA32D AB18A BA03 BA31 FA11 FA21 FA40 4G069 AA01 AA08 AA12 BA02A BA02B BA17 BA18 BA21C BD05C BE06C BE17C EA08 EC09X EC14Y EC22X EC22Y FA01 FA03 FB08 FB17 FB18 FB36 FC02 FC03 4G075 AA25 BA10 BD16 CA02 CA51 CA57 EA06 FC02 4G077 AA02 AB02 BA04 BE46 FJ06 HA12

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面における原子配列が2回対称性を有
    するような方位の単結晶基板上にメソ構造体薄膜が配置
    されていることを特徴とするシリカメソ構造体薄膜。
  2. 【請求項2】 前記表面における原子配列が2回対称性
    を有するような方位の単結晶基板がダイヤモンド型構
    造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(11
    0)基板である請求項1に記載のシリカメソ構造体薄
    膜。
  3. 【請求項3】 前記単結晶材料がシリコン又は砒化ガリ
    ウムである請求項2又は請求項3に記載のシリカメソ構
    造体薄膜。
  4. 【請求項4】 表面における原子配列が2回対称性を有
    するような方位の単結晶基板上にメソポーラス薄膜が配
    置されていることを特徴とするシリカメソポーラス薄
    膜。
  5. 【請求項5】 前記表面における原子配列が2回対称性
    を有するような方位の単結晶基板がダイヤモンド型構
    造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(11
    0)基板である請求項3に記載のシリカメソポーラス薄
    膜。
  6. 【請求項6】 前記単結晶材料がシリコン又は砒化ガリ
    ウムである請求項4又は請求項5に記載のシリカメソポ
    ーラス薄膜。
  7. 【請求項7】 酸性条件下、界面活性剤の存在下におい
    てケイ素アルコキシドを加水分解して作成するシリカメ
    ソ構造体薄膜の作成方法において、表面における原子配
    列が2回対称性を有するような方位の単結晶基板上にメ
    ソ構造体薄膜を形成することを特徴とするシリカメソ構
    造体薄膜の作成方法。
  8. 【請求項8】 前記表面における原子配列が2回対称性
    を有するような方位の単結晶基板がダイヤモンド型構
    造、もしくは閃亜鉛鉱型構造を有する単結晶の(11
    0)基板である請求項5に記載のシリカメソ構造体薄膜
    の作成方法。
  9. 【請求項9】 前記単結晶材料がシリコンである請求項
    7又は請求項8に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方
    法。
  10. 【請求項10】 前記単結晶材料が砒化ガリウムである
    請求項7又は請求項8に記載のシリカメソ構造体薄膜の
    作成方法。
  11. 【請求項11】 前記単結晶基板を前記界面活性剤及び
    ケイ素アルコキシドを有する反応溶液中に保持する請求
    項7〜10に記載のシリカメソ構造体薄膜の作成方法。
  12. 【請求項12】 前記単結晶基板を前記界面活性剤及び
    ケイ素アルコキシドを有する反応溶液表面に接するよう
    に保持する請求項7〜10項に記載のシリカメソ構造体
    薄膜の作成方法。
  13. 【請求項13】 前記単結晶基板の少なくとも一方の表
    面が研磨されている請求項7〜12に記載のシリカメソ
    構造体薄膜の作成方法。
  14. 【請求項14】 前記反応溶液と接触させる前に前記単
    結晶基板表面の酸化物層をフッ化水素酸溶液で除去する
    処理を施した請求項9に記載のシリカメソ構造体薄膜の
    作成方法。
  15. 【請求項15】 請求項7〜14の方法で作成されたシ
    リカメソ構造体薄膜を焼成することにより界面活性剤を
    除去し中空の構造とするメソポーラスシリカ薄膜の作成
    方法。
  16. 【請求項16】 請求項7〜14の方法で作成されたシ
    リカメソ構造体薄膜から溶剤抽出によって界面活性剤を
    除去し、中空の構造とするメソポーラスシリカ薄膜の作
    成方法。
  17. 【請求項17】 請求項7〜14の方法で作成されたシ
    リカメソ構造体薄膜から超臨界状態の流体によって界面
    活性剤を除去し、中空の構造とするメソポーラスシリカ
    薄膜の作成方法。
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