WO2014002730A1 - パウチ容器 - Google Patents

Abstract

パウチ容器（１０）は、表面シート（１１）及び裏面シート（１２）を備え、該シートに囲まれた充填部（１４）に内容物が充填され、充填部（１４）に繋がる開口部（１５）が容器上部の表面シート（１１）と裏面シート（１２）との間に形成される容器である。パウチ容器（１０）は、表面シート（１１）及び裏面シート（１２）の上部にそれぞれ設けられた袋状部（２０Ａ，２０Ｂ）を備え、袋状部（２０Ａ，２０Ｂ）は、充填部（１４）から隔離された内部空間（２２Ａ，２２Ｂ）をそれぞれ有し、容器幅方向から該空間への指の挿入を可能とする挿入口（２４Ａ，２４Ｂ）をそれぞれ有する。

Description

パウチ容器

　本発明は、パウチ容器に関する。

　パウチ容器は、密封性や取り扱い性に優れることから、食料品やトイレタリー製品はもとより、経腸栄養剤や静脈栄養剤、輸液等の容器としても広く用いられている。栄養剤を患者に投与する際に使用される医療用パウチ容器には、栄養剤やその希釈液を注入するための開口部が設けられている。

　ところで、上記開口部から栄養剤等を注入する場合には、容器の開口部周辺を片手で把持しながら開口部を押し広げるという不安定な作業を余儀なくされるため、かかる作業性の改善が求められている。このような状況に鑑みて、壁面シートと該シートの外面に固定された軟質プラスチックシートとの間に指を挿入するための貫通路を形成する１対の開閉操作部を備えた医療用パウチ容器が提案されている（特許文献１参照）。

　なお、本発明に関連する技術として、特許文献１には、チューブを湾曲させて挿入可能な開口をシール領域に形成した医療用パウチ容器が開示されている。

特開２０１１－０７８７３７号公報 特開２００９－１２５１６２号公報

　上記特許文献１に開示されたパウチ容器によれば、貫通路に指を挿入して容器を保持することで上記作業性がある程度改善できる。しかし、当該パウチ容器の場合、同文献の図面に記載されているように、容器を保持したときに貫通路から指先が出るため、栄養剤等の充填物が指にかかる恐れがあるなど、未だ改良の余地がある。

　本発明に係るパウチ容器は、少なくとも表面部及び裏面部を構成する壁面シートを備え、該シートに囲まれた充填部に内容物が充填され、前記充填部に繋がる開口部が容器縦方向一端側の前記表面部と前記裏面部との間に形成されるパウチ容器において、前記表面部及び前記裏面部の前記容器縦方向一端側にそれぞれ設けられた袋状部を備え、前記各袋状部は、前記充填部から隔離された内部空間を有し、容器横方向から該空間への指の挿入を可能とする挿入口を有することを特徴とする。

　上記構成によれば、容器横方向から袋状部の内部空間に指を挿入することができる。袋状部内に挿入される指（例えば、親指と人差し指）は容器横方向に沿った状態となり、この状態で親指と人差し指の間隔を開けることにより開口部を容易に広げることができる。
　親指と人差し指は袋状部内にすっぽりと挿入されるため、容器の保持性に優れ、内容物の重量が重い場合であっても指が抜け難く容器を安定に保持できる。そして、親指と人差し指は指先まで袋状部に覆われているため、充填物が指にかかることを防止できる。また、親指と人差し指との間隔を開けておくだけで開口状態が維持されるので、例えば、注入作業中に開口部が閉じてしまい充填物が零れるといった不具合を防止できる。

　本発明に係るパウチ容器において、前記壁面シートには、前記開口部を閉じるチャックが設けられ、前記各袋状部は、前記チャックよりも前記容器縦方向一端側に延出したフラップ状部に形成されていることが好適である。
　当該構成によれば、容器を保持する手によって充填部が隠れ難いため、充填物の量を確認し易い。

　前記各袋状部が前記チャックよりも上方に設けられた構成において、前記各挿入口は、前記袋状部の前記容器横方向一端側に設けられ、前記各フラップ状部の間には、それぞれの前記容器横方向他端部同士を接合するシール部が設けられていることが好適である。一対のフラップ状部は、容器横方向他端側が一体化されて閉止部とされ、一端側が接合されずに開放部とされることが好適である。
　当該構成によれば、開口部をより広げ易くなる。一対のフラップ状部の容器横方向他端部同士が接合されていない場合、例えば、親指と人差し指の間隔を広げたときに各袋状部がその付け根で外側に折れ曲がり易くなるが、シール部（閉止部）を設けることで当該折れ曲がりを抑えることができ、開口部を広げる方向に力が作用し易くなる。また、一対のフラップ状部は、開放部において大きく広げられることで十分な幅をもって拡開されると共に、閉止部において樋状の案内路が形成される。例えば、閉止部が開放部よりもやや下方に位置するように開口部を傾けることにより、閉止部によって形成される樋状の案内路を一層効果的に利用することが可能になる。

　前記シール部が設けられた構成において、前記シール部は、前記チャックに向かって次第に前記各フラップ状部の拡開量が小さくなるように、前記容器縦方向及び前記容器横方向に傾斜して形成されていることが好適である。
　当該構成によれば、閉止部によって形成される樋状の案内路が、案内口部の開口側からチャックに向かって次第に狭まる漏斗状に形成される。ゆえに、開口部を大きく傾けなくても、かかる樋状の案内路による案内作用がより効果的に発揮されて、液状物を一層容易に注ぎ入れることが可能になる。

　本発明に係るパウチ容器において、前記各袋状部には、前記各挿入口を塞ぐ舌片が設けられ、前記各挿入口は、前記舌片が前記内部空間内に折り込まれることで開口することが好適である。
　当該構成によれば、袋状部内に指を挿入し易くなる。内部空間内に折り込まれた舌片によって、例えば、挿入口の縁部が浮き上がって指の挿入性が向上する。

　本発明に係るパウチ容器において、前記容器縦方向他端側に設けられた、可撓性の長尺状チューブが取り付けられる充填物の注出部と、前記表面部及び前記裏面部の端縁同士を接合して形成される端縁シール部と、を備え、前記端縁シール部には、前記チューブを保持可能なチューブ保持部が形成されており、当該チューブ保持部は、前記端縁シール部の外端から少なくとも前記チューブの直径以上の長さで前記壁面シートを切り込んで又は切り欠いて形成されることが好適である。
　当該構成によれば、チューブ保持部によってチューブを保持することで、例えばチューブが移動中に他の物に絡み付く、引っ掛かる、或いは脱落するといった不具合を防止できる。本チューブ保持部は、端縁シール部の外端から壁面シートを切り込んで又は切り欠いて形成されているため、チューブの保持操作、取り外し操作が容易であり、片手の作業であってもチューブのスムーズな取り扱いを可能にする。例えば、チューブ保持部が形成された端縁シール部の外端にチューブを押し当てることでチューブを当該保持部に簡単に挿入することができ、また当該保持部からチューブを取り外す際には、チューブを外側に引っ張ることで容易に取り外すことができる。

　前記チューブ保持部が設けられた構成において、前記チューブ保持部は、前記チューブの直径よりも小さな幅を有する導入路と、当該導入路と連通し、前記チューブの直径と同等以上の寸法を有する収容孔と、を含むことが好適である。
　当該構成によれば、チューブの保持性が向上し、例えばチューブ保持部からのチューブの抜け落ち等をより高度に防止できる。

　前記チューブ保持部が設けられた構成において、前記チューブ保持部は、前記収容孔の少なくとも一部を覆い、前記チューブが前記収容孔に挿入されたときに当該チューブに接する舌片を有することが好適である。
　当該構成によれば、例えば舌片がチューブを押えるのでチューブの保持性がさらに向上する。

　前記チューブ保持部が設けられた構成において、前記端縁シール部は、局部的に幅を大きくして形成された拡幅シール部を有し、当該拡幅シール部の１つに吊り下げ孔と前記チューブ保持部とが形成されることが好適である。
　当該構成によれば、例えば、拡幅シール部を１箇所とすることができ、容器容量を大きく設計し易い。また、吊り下げ孔をハンガー等に引っ掛けて容器を吊り下げた状態でチューブの保持操作等を行う場合、支持点からチューブ保持部までの距離が近くなるため、パウチ容器本体の揺動が生じ難く安定して作業を行うことができ、操作性がさらに向上する。

　本発明に係るパウチ容器において、前記各挿入口は、前記袋状部の幅方向一端部側に設けられ、前記各袋状部の前記挿入口よりも幅方向他端側の上部には、前記袋状部の内面同士を接合する指掛け用シール部が設けられていることが好適である。
　当該構成によれば、指掛け用シール部に、例えば親指の先を引っ掛けることができるので、袋状部における親指の掛かりが良くなって開口部を広げる方向に力が作用し易くなる。当該構成は、特に手の小さな女性等の使用に有用である。

　前記シール部が設けられた構成において、前記各袋状部には、前記容器縦方向に沿った折り曲げ部を形成するための折曲形成部を設けることが好適である。特に、袋状部内に挿入される指が届かない幅方向他端部側に折曲形成部を設けることが好ましい。
　当該構成によれば、開口部をより広げ易くなる。パウチ容器は柔軟性が高いことから、袋状部の指が挿入された部分は指に沿った形状を呈する。一方、指先よりも前方に位置する部分は、例えば、指先の位置から容器横方向他端部にかけて湾曲する又は指先の位置で折れ曲がるが、折曲形成部を設けることによって、開口部を広げたときに折曲形成部で袋状部が優先的に折れ曲がり、容器縦方向に延びる折り曲げ部（例えば、折れ線等）が形成される。これにより、例えば、指先よりも前方に位置する部分が、指に沿って折れ線（折曲形成部）まで真っ直ぐに延び、開口部がより広がり易くなる。

　本発明によれば、充填物が指にかかる等の不具合を防止できると共に、開口部を広げながら容器を安定に保持することが容易なパウチ容器を提供できる。本発明のパウチ容器は、例えば、長尺状のシートを用いた既存の製袋プロセスによって簡便且つ安価に製造可能である。

本発明の第１の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 本発明の第１の実施形態であるパウチ容器の正面図（袋状部拡大図）であって、舌片を袋状部内に折り込んだ様子を示す図である。 図２のＡ‐Ａ線断面を模式的に示す図である。 本発明の第１の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す図である。 本発明の第１の実施形態であるパウチ容器の製造工程の一部を示す図である。 本発明の第１の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、充填口を開口する様子を示す図である。 本発明の第１の実施形態であるパウチ容器の上面図であって、充填口を開口する様子を示す図である。 本発明の第２の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、袋状部を拡大して示す図である。 本発明の第２の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す図である。 図９のＢ‐Ｂ線断面を模式的に示す図である。 本発明の第２の実施形態であるパウチ容器の上面図であって、充填口を開口する様子を示す図である。 本発明の第３の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、袋状部を拡大して示す図である。 本発明の第３の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す図である。 本発明の第３の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す図である。 本発明の第３の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す図である。 本発明の第３の実施形態であるパウチ容器の上面図であって、充填口を開口する様子を示す図である。 本発明の第４の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、袋状部を拡大して示す図である。 本発明の第５の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、袋状部を拡大して示す図である。 本発明の第６の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 本発明の第７の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 本発明の第８の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、袋状部を拡大して示す図である。 図８のパウチ容器において、充填口を開口する様子を示す図である。 本発明の第８の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す図である。 本発明の第９の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 図２４に示されたパウチ容器の背面図である。 図２４に示されたパウチ容器の右側面図である。 図２４に示されたパウチ容器の左側面図である。 図２４に示されたパウチ容器の斜視図であって、充填口を開口する様子を示す図である。 本発明の第１０の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 本発明の第１１の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 図３０のＡ‐Ａ線断面を模式的に示す図である。 図３０のＢ部拡大図である。 本発明の第１１の実施形態であるパウチ容器の製造工程を示す図である。 本発明の第１１の実施形態であるパウチ容器の使用状態を示す図である。 図３４の使用状態を上方から見た図である。 本発明の第１１の実施形態であるパウチ容器の使用状態を示す図である。 図３６のチューブ保持部近傍を拡大して示す図である。 本発明の第１２の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 本発明の第１３の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 第１３の実施形態の変形例を示す図である。 第１３の実施形態の変形例を示す図である。 本発明の第１４の実施形態であるパウチ容器の正面図である。 本発明の第１１，１２，１４の実施形態の変形例を示す図である。 本発明の第１１，１２，１４の実施形態の変形例を示す図である。

　以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。

　以下では、パウチ容器に注入される充填物として液状の栄養剤（図示せず）を例示する。但し、充填物は、これに限定されず、例えば、栄養剤を希釈するための水等であってもよく、ゼリー状やペースト状の物であってもよい。本発明のパウチ容器は、内部に栄養液や輸液等の液状物が収容されて栄養剤補給用バッグや輸液バッグ等の医療用バッグとして好適に用いられるが、本発明の構成は医療用途に限定されず、各種食料品等の容器に適用されてもよい。

　以下では、袋状部（手指用袋状部）を除く部分が表面シート１１及び裏面シート１２のみから構成される平パウチを例示するが、スタンディングパウチやサイドガゼットパウチなど、他のパウチ形態に本発明の構成を適用してもよい。なお、これらのガゼットを有するパウチ容器において、当該ガゼット部のシール部に本発明のチューブ保持部を設ける場合は、表面部又は裏面部のいずれかに当該ガゼット部を含む。即ち、表面部及び裏面部の端縁同士を接合して形成される端縁シール部は、例えば、表面部とガゼット部（裏面部の一部）の端縁同士を接合して形成される端縁シール部をも含むものである。

　以下では、便宜上「容器縦方向」を「容器上下方向」とし、開口部１５が形成される「縦方向一端側」を「上」、注出部１７が設けられる「容器縦方向他端側」を「下」として説明する。また、各シートが積層される方向を「容器表裏方向」とし、容器上下方向及び容器表裏方向に直交する方向（容器幅方向）を「容器横方向、又は容器幅方向」として説明する。以下では、単に、上下方向、表裏方向、横方向又は幅方向という場合がある。なお、挿入口２４Ａ，２４Ｂは、横方向一端側に設けられているものとする。

　＜第１の実施形態＞
　図１～図７を参照しながら、第１の実施形態であるパウチ容器１０について詳説する。
　まず、図１～図３を参照する。図１，２は、パウチ容器１０の正面図であって、図２では、舌片２６Ａ，２６Ｂを袋状部２０Ａ，２０Ｂの内側（内部空間２２Ａ，２２Ｂ）に折り込んだ様子を示している。図３は、幅方向に平行な図２のＡ‐Ａ線で、袋状部２０Ａ，２０Ｂを表裏方向に切断したときの断面を示す。

　パウチ容器１０は、互いに重ね合わされた表面シート１１及び裏面シート１２を備える。表面シート１１及び裏面シート１２は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成する一対の壁面シートである。パウチ容器１０は、各シートの上端縁を除く端縁同士を接合して形成された端縁シール部１３を有する。即ち、表裏面シートの幅方向両端縁（側端縁）及び下端縁に端縁シール部１３が形成され、容器上部には充填部１４に繋がる開口部１５（後述の図７参照）が形成されている。開口部１５は、上方に向いた開口部であって、表面シート１１と裏面シート１２とが接合されないことにより各シートの間に形成される。

　パウチ容器１０には、開口部１５を閉じるチャック１６（チャック状封止部）が設けられる。そして、端縁シール部１３とチャック１６とにより、壁面シートに囲まれた容器内部空間が密閉される。この密閉される容器内部空間が、栄養剤が充填される充填部１４（収容領域）である。チャック１６は、例えば、凸条部付きの第１のシートと、凸条部に嵌合する凹条部付きの第２のシートとを対向配置して構成される。例えば、第１のシートが表面シート１１の内面に接合され、第２のシートが裏面シート１２の内面に接合される。

　チャック１６の噛合力は、その形状や大きさ等により調節可能である。チャック１６の噛合力が強すぎる場合には、後述の袋状部２０Ａ，２０Ｂに挿入される指の拡開作用力のみでチャック１６を開状態とするのが困難となるおそれがあり、またチャック１６の噛合力が弱すぎる場合には、液状物の充填部１４への注入後、チャック１６を閉状態とした際に、充填部１４を密封状態とする効果が十分に発揮され難くなるおそれがある。したがって、パウチ容器１０使用者に応じて、或いは一対の袋状部２０Ａ，２０Ｂの位置に応じてチャック１６の噛合力が調節され得る。チャック１６の噛合力が強い場合には、袋状部２０Ａ，２０Ｂに手を差し入れる際に、予めチャック１６を開状態としておけばよい。

　パウチ容器１０には、充填部１４に充填された栄養剤を注出するための注出部１７（ポート部）が設けられる。注出部１７は、例えば、栓付きのプラスチック管であって、壁面シートの斜めにカットされた下端と側端との角部に取り付けられている。注出部１７は、後述の吊り下げ孔１８と対角線方向で対向する角部に設けられている。具体的には、表面シート１１と裏面シート１２の間に注出部１７を挟んだ状態で各部材を接合することにより注出部１７が取り付けられる。

　注出部１７には、例えば、充填部１４に連通接続される内側開口部と反対の外側開口部に対して長尺状のチューブ１０３（後述の図２４等参照）が接続される。チューブ１０３は、従来公知のものが使用可能であって詳しい説明を省略するが、可撓性のチューブであり、必要に応じてチャンバー（点滴筒）やクレンメ（流量調整器）、コネクター等（何れも図示せず）が設けられて、鼻腔等から挿入されて胃や十二指腸等の患者体内（図示せず）に至っている。そして、充填部１４に収容される液状物がチューブ１０３を通じて患者の体内に投与される。

　パウチ容器１０には、注出部１７の長手方向の延長線上に吊り下げ孔１８が設けられる。吊り下げ孔１８は、端縁シール部１３の一部を幅広に形成し、当該幅広シール部を表裏方向に打ち抜くことで形成される。パウチ容器１０に充填された栄養剤を患者に投与する際には、吊り下げ孔１８をフック等に引っ掛けることで注出部１７の長手方向が鉛直方向に沿った状態となり、栄養剤を容易に注出することができる。

　パウチ容器１０では、吊り下げ孔１８が形成される幅方向端部と反対側にカット部１９が形成されて、容器上部の幅が容器下部の幅よりも狭くなっている。容器上部の幅を狭くする、特に挿入口２４Ａ，２４Ｂ側をカットして縮幅することで、容器の保持性等を向上させることができる。本実施形態では、充填部１４の上下方向中間部分から下方が、幅方向において、上方より後述の挿入口２４Ａ，２４Ｂ側に大きくされた拡幅部とされている。これにより、幅方向の重心が挿入口２４Ａ，２４Ｂ側に偏倚しており、吊下フックを吊り下げ孔１８に挿通して、パウチ容器１０をスタンドに懸架する際、パウチ容器１０が図１の状態から吊り下げ孔１８を中心として右回りに傾斜して静置される。この結果、注出部１７が鉛直方向に延びるように位置する。また、充填部１４における注出部１７の周辺部分が狭幅となっていることから、パウチ容器１０がスタンドに懸架された際に、充填部１４に収容される液状物が注出部１７に流れ込み易くなっており、液状物の注出部１７に残る量を軽減させることができる。

　さらに、パウチ容器１０は、表面部の上部に設けられた袋状部２０Ａ、及び裏面部の上部に設けられた袋状部２０Ｂを備える。袋状部２０Ａ，２０Ｂは、開口部１５を広げて栄養剤を充填部１４に注入する際に使用される部分であって、一対の壁面シートと、その間に挿入された袋状部形成シート２１Ａ，２１Ｂ（以下、単に「シート２１Ａ，２１Ｂ」という）とにより形成される。具体的には、シート２１Ａと表面シート１１が端縁シール部２３Ａにより、シート２１Ｂと裏面シート１２が端縁シール部２３Ｂによりそれぞれ接合されて袋状部２０Ａ，２０Ｂが形成される。

　各袋状部２０Ａ，２０Ｂは、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂにそれぞれ形成されている。即ち、一対の壁面シートには、それぞれ開口部１５の外方（上方）に所定の領域だけ延び出した一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂが形成されており、相互に重ね合わされている。具体的には、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂは、一対の壁面シートの重ね合わせ部であるチャック１６の上方に設けられており、本実施形態では略矩形状とされている。

　本実施形態では、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂは同形とされているが、一対のフラップ状部は形状が同一でなくてもよい。例えば、一対のフラップ状部において相互に重ならないで外方に突出する摘み片を突設して、かかる摘み片を手指で摘むことにより一対のフラップ状部を開く操作をし易くすること等も可能である。なお、本実施形態では、フラップ状部２８Ａ，２８Ｂの全体が、それぞれ袋状部２０Ａ，２０Ｂであるといえる。

　パウチ容器１０を構成する各シートは、通常、樹脂フィルムから構成される。シートを構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上記各シール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シートにはヒートシール性も要求される。シートとしては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シートが好適であり、高いガスバリア性や遮光性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にバリア層を設けることが好適である。なお、ベースフィルム層そのものにバリア性を付与してもよい。この場合は、バリア層をベースフィルム層として用い、バリア層とシーラント層とを有する複層シートとなる。また、シートの両面にヒートシール性を付与する場合は、後述のシーラント層を形成する単層フィルムを用いてもよいし、複層シートの場合は、同種又は異種のシーラント層を二層有するか（このとき、シーラント層の一層を形式的にベースフィルム層として用いることになる）、或いはベースフィルム層の両面にシーラント層を有するシートを用いてもよい。本実施形態では、シート２１Ａ，２１Ｂとして、両面ヒートシール性の積層シート、具体的には異種のシーラント層を二層積層した積層シートが使用されている。

　ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。

　ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル（ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリエチレンナフタレ－ト（ＰＥＮ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ）、ポリカーボネート（ＰＣ）など）、ポリオレフィン（ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）など）、ポリアミド（ナイロン－６、ナイロン－６６など）、ポリアクリロニトリル（ＰＡＮ）、ポリイミド（ＰＩ）、ポリ塩化ビニル（ＰＶＣ）、ポリ塩化ビニリデン（ＰＶＤＣ）、ポリメチルメタクリレート（ＰＭＭＡ）、及びポリエーテルスルフォン（ＰＥＳ）等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。

　シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン（ＬＤＰＥ）、直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）、エチレン－プロピレン共重合体（ＥＰ）、未延伸ポリプロピレン（ＣＰＰ）、二軸延伸ナイロン（ＯＮ）、エチレン－オレフィン共重合体、エチレン－アクリル酸共重合体（ＥＡＡ）、エチレン－メタクリル酸共重合体（ＥＭＡＡ）及びエチレン－酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。

　ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン（ＰＶＤＣ）、エチレン－ビニルアルコール共重合体（ＥＶＯＨ）などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム（例えば、ベースフィルム層であってもよい）に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着（又はスパッタリング）したフィルムが例示できる。

　壁面シートには、例えば、栄養剤の液量を計測するための目盛り（図示せず）を設けることが好適である。なお、目盛りの他にも、商品名や原材料、使用上の注意事項などを表示する印刷層を設けてもよい。

　以下、袋状部２０Ａ，２０Ｂの構成について、さらに詳説する。

　パウチ容器１０は、チャック１６よりも上方に袋状部２０Ａ，２０Ｂ（フラップ状部２８Ａ，２８Ｂ）を備える。チャック１６は幅方向に沿って設けられ、袋状部２０Ａ，２０Ｂはチャック１６（幅方向）と略平行に設けられている。パウチ容器１０は、チャック１６より下部は２枚の壁面シートから構成される平パウチの形態であるが、チャック１６より上部は４枚のシートから構成されている。上記のように、袋状部２０Ａは、表面シート１１の内面にシート２１Ａを接合することで形成され、袋状部２０Ｂは、裏面シート１２の内面にシート２１Ｂを接合することで形成されている。

　袋状部２０Ａ，２０Ｂは、表裏方向に重なり、開口部１５を挟んで対向配置されている。本実施形態では、シート２１Ａ，２１Ｂが互いに接合されておらず、袋状部２０Ａ，２０Ｂは分離されている。袋状部２０Ａ，２０Ｂは、上下方向よりも幅方向に長くなった略矩形形状を呈し、互いに同じ形状、同じ寸法を有している。以下、袋状部２０Ａ，２０Ｂで共通する内容は、袋状部２０Ａを例に挙げて説明する。

　袋状部２０Ａは、壁面シートの全幅に亘って設けられている。即ち、壁面シートのチャック１６よりも上方に位置する部分の幅方向長さと、シート２１Ａの幅方向長さとが同じである。シート２１Ａの幅方向長さはより短くてもよいが、生産性の観点から当該構成とすることが好ましい。これにより、長尺状シートを用いた既存の製袋プロセスによって簡便且つ安価にパウチ容器１０を製造することができる。

　袋状部２０Ａは、充填部１４から隔離された内部空間２２Ａを有する。また、袋状部２０Ａは、幅方向から内部空間２２Ａへの指の挿入を可能とする挿入口２４Ａを有する。なお、図１に示す形態では、挿入口２４Ａが後述の舌片２６Ａにより閉じられている。

　内部空間２２Ａは、充填部１４と連通しない独立の空間であって、正面視状態（図１参照）における周縁が端縁シール部２３Ａにより塞がれている。内部空間２２Ａは、少なくとも１本の指、例えば、親指を収容可能な寸法を有する（内部空間２２Ｂには、例えば、人差し指が収容される）。より詳しくは、指の先から付け根まですっぽりと収容できる程度の寸法に設定することが好適である。また、内部空間２２Ａには、指が幅方向に沿った状態で収容されるため、幅方向に長く延びた空間となっている。内部空間２２Ａは、挿入口２４Ａだけが外部との接続口であり、その他の部分はシート及び端縁シール部２３Ａにより閉塞されている。

　挿入口２４Ａは、カット部１９が形成された袋状部２０Ａの幅方向一端部側、即ち吊り下げ孔１８が形成された幅方向他端部と反対側に設けられている。挿入口２４Ｂは、挿入口２４Ａのちょうど裏側に設けられる。挿入口２４Ａは、幅方向一端部側から指が挿入される設計であって、挿入口２４Ａから挿入された指は内部空間２２Ａにおいて指先が幅方向他端部側を向いた状態で収容される。

　挿入口２４Ａは、表面部の外面（袋状部２０Ａを構成する表面シート１１）に切り込み線２５Ａを形成することで設けられる。容器の保持性等の観点から、幅方向一端部に近接して切り込み線２５Ａを形成することが好適である。

　切り込み線２５Ａは、正面視略Ｕ字状を呈し、その両端（以下、「切り込み端」という）が幅方向他端側を向くように形成されている。即ち、切り込み線２５Ａの略直線状の部分が幅方向に沿って形成され、切り込み線２５Ａの円弧状の部分が幅方向一端部側に凸となるように形成されている。袋状部２０Ａには、切り込み線２５Ａと切り込み端同士を結んだ仮想線（以下、舌片２６Ａの「付け根線」という）とに囲まれた部分である舌片２６Ａが設けられており（図１参照）、付け根線で舌片２６Ａを折り曲げることで挿入口２４Ａが開口する（図２参照）。なお、挿入口２４Ａに幅方向一端部から指を挿入する場合、幅方向他端部側の縁部（即ち、付け根線部分）とシート２１Ａとの間から挿入される。

　切り込み線２５Ａは、指を挿入し易くしながら容器の保持性を高めるため、上側の直線部分よりも下側の直線部分の方が長くなっている。そして、付け根線は、その下端が上端よりも幅方向他端側に位置し、上下方向及び幅方向に対して傾いている。これにより、容器の重量がかからない指の下側では挿入口２４Ａの寸法を大きくとり、容器の重量がかかる指の上側では挿入口２４Ａの寸法を小さくしている。このため、指にかかる負担が低減されると共に、指を挿入することが容易になる。

　舌片２６Ａは、内側（内部空間２２Ａの中）に折り込まれていることが好適である（図２，３参照）。舌片２６Ａは、挿入口２４Ａの幅方向他端部側の縁部に繋がっており、これを内側に折り込むことで当該縁部が浮き上がり易くなる。即ち、当該構成では、指の挿入性を高めるため、舌片２６Ａを利用して指を挿入する隙間（当該縁部とシート２１Ａとの隙間）を広げている。なお、舌片２６Ａは、使用時に折り込まれてもよいし、製造時に折り込まれてもよい。また、舌片２６Ａは内側に折り込まれた状態で表面シート１１に接合されていてもよい。

　図４に、第１の実施形態の変形例を示す。図４は、袋状部２０Ａ，２０Ｂを斜め上方から見た斜視図であって、一部を上下方向に切断した断面図としている。
　図４に示す形態では、シート２１Ａ，２１Ｂの代わりに、ガゼットシート２１Ｇを用いて袋状部２０Ａ，２０Ｂを形成している。ガゼットシート２１Ｇは、下方に向かって山折りされた断面視Ｖ字状のシートである。ガゼットシート２１Ｇは、折り目線２７が幅方向に対して略平行となるように一対の壁面シートの間に挿入されている。そして、折り目線２７により二分された一方のシート部分が表面シート１１の内面に接合され、他方のシート部分が裏面シート１２の内面に接合されて、２つの袋状部２０Ａ，２０Ｂが形成されている。

　図４に示す形態では、一対の壁面シート及び１枚のガゼットシート２１Ｇにより袋状部２０Ａ，２０Ｂが形成されているため、使用される前（開封前）において各袋状部は互いに繋がっている。これにより、開封前における充填部１４の密封性を高めることができる。ガゼットシート２１Ｇには、例えば、折り目線２７上に、ハーフカット線やミシン目線等の切断補助線を形成することができ、使用時に切断補助線に沿ってガゼットシート２１Ｇを切断することで袋状部２０Ａ，２０Ｂを互いに分離することができる。当該分離によって、シート２１Ａ，２１Ｂを用いた場合と同様の形態となり、開口部１５の開口が可能となる。

　次に、図５を参照しながら、図１の構成を備えるパウチ容器１０の製造方法の一例について説明する。図５は、パウチ容器１０の製造工程のうち、各シートの長尺体を積層し、各シール部を形成する工程を模式的に示す。

　図５に示すように、まず、表面シート１１、裏面シート１２、チャック１６を構成するシート（例えば、凸条部付きの第１のシート及び凹条部付きの第２のシート）、及びシート２１Ａ，２１Ｂの長尺体（以下、「長尺体１１ｚ，１２ｚ，１６ｚ，２１Ａｚ，２１Ｂｚ」とする）をそれぞれ準備して互いに積層する。長尺体１６ｚは、第１のシートの凸条部と第２のシートの凹条部とが嵌合した状態で積層され、長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚは、互いに重ね合わされた状態で積層される。

　各長尺体の積層工程では、まず、互いに重ね合わされた長尺体１１ｚ，１２ｚの間に長尺体１６ｚ，２１Ａｚ，２１Ｂｚをそれぞれ挿入する。このとき、長尺体１１ｚ，１２ｚは各々のシーラント層同士が向かい合うように積層され、長尺体２１Ａｚのシーラント層は長尺体１１ｚのシーラント層と向かい合うように、長尺体２１Ｂｚのシーラント層は長尺体１２ｚのシーラント層と向かい合うように積層される。これにより、ヒートシール工程で長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚ同士が接合することを防止しながら、上記各シール部を形成することができる。

　積層工程を経た上記各長尺体には、ヒートシール工程で各シール部が形成される。ヒートシール工程では、例えば、注出部１７を取り付ける部分を残して、長尺体１１ｚ，１２ｚの下端縁、ＴＤ方向に沿って所定部位をヒートシールすることにより端縁シール部１３ｚを形成する。ここで、長尺体の下端縁は、パウチ容器１０の下端縁となる部分であり、所定部位は、パウチ容器１０の側端縁となる部分である。ヒートシール工程では、さらに、長尺体１６ｚ，２１Ａｚ，２１Ｂｚを長尺体１１ｚ，１２ｚにそれぞれ接合する。これにより、開口部１５が閉じられ、また端縁シール部２３Ａ，２３Ｂが形成される。なお、両面ヒートシール性の長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚを使用する場合、拡幅シール部１３ｚ以外の端縁シール部２３Ａ，２３Ｂにおいて長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚ同士が接合しないように、それらの間に金属板や非溶融樹脂シートを挟んでヒートシールすることが好ましい。

　続いて、ダイカットロール等を用いて、例えば、切断予定線Ｘに沿って上記長尺体をカットし、個々の容器サイズに分割する。なお、上記ヒートシール及び当該カットは同時に行なわれてもよい。このとき又は別工程で、吊り下げ孔１８及び切り込み線２５Ａ，２５Ｂが形成される。これにより、内部空間２２Ａ，２２Ｂに指が挿入可能な袋状部２０Ａ，２０Ｂが形成される。最後に、注出部１７を取り付けてパウチ容器１０が得られる。

　本製造工程では、図１に示すパウチ容器を製造するために長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚを用いた例を説明したが、図４に示す形態のパウチ容器を製造するためには、これら長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚの代わりに、長尺状のガゼットシート２１Ｇを用いればよい。また、図１に示すパウチ容器を製造するには、長尺状のガゼットシート２１Ｇを製袋機に供給し、壁面シートにヒートシールする前又はヒートシールした後、折り目線に沿ってガゼットシート２１Ｇを切断して長尺体２１Ａｚ，２１Ｂｚ又は袋状部２０Ａ，２０Ｂに分離してもよいし、壁面シートの上部を内側又は外側に折り返して袋状部２０Ａ，２０Ｂを形成することも可能である。

　次に、図６，７に示すパウチ容器１０の使用状態の一例を参照しながら、パウチ容器１０の作用効果について詳説する。

　パウチ容器１０の開口部１５から充填部１４に栄養剤を注入する際には、例えば、片手（以下、右手とする）で容器を保持しながらチャック１６を開けて開口部１５を広げる。まず初めに、袋状部２０Ａの内部空間２２Ａには親指を挿入し、袋状部２０Ｂの内部空間２２Ｂには人差し指を挿入して容器を保持する。このとき、親指と人差し指は、幅方向一端部側から挿入口２４Ａ，２４Ｂを通って各内部空間に挿入される。挿入口２４Ａ，２４Ｂは、幅方向一端部に近接して形成され、また上側よりも下側の方が長くなった略Ｕ字状の切り込み線２５Ａ，２５Ｂにより形成され、また舌片２６Ａ，２６Ｂが内側に折り込まれて開口している。このため、挿入口２４Ａ，２４Ｂから指をスムーズに挿入することができる。

　続いて、袋状部２０Ａ，２０Ｂ内に挿入された親指と人差し指との間隔を開けることによりチャック１６を外して開口部１５を広げる。即ち、親指を表側に動かし、人差し指を裏側に動かす。親指と人差し指の間隔をさらに広げることで、開口部１５を大きく広げることができる。

　続いて、親指と人差し指の間隔を開けて開口部１５を大きく広げた状態で、栄養剤の注入を開始する。親指と人差し指との間隔を開けておくだけで開口状態が維持されるので、例えば、栄養剤を袋状部２０Ａ，２０Ｂの付け根付近まで近づけて注入でき、且つ注入作業中に開口部１５が閉じて栄養剤が零れることを防止できる。また、栄養剤を注入することにより容器の重量が増加するが、容器を保持する指は袋状部２０Ａ，２０Ｂ内にすっぽりと挿入されているため抜け難く、容器を安定に保持することができる。さらに、栄養剤が誤って容器の外側に流れ出た場合であっても、親指と人差し指は指先まで各袋状部に覆われているため、栄養剤が指にかかることを防止できる。

　栄養剤等の液状物を充填部１４へ注入した後に、チャック１６を閉状態とすることにより、充填部１４を密封状態とすることができる。これにより、パウチ容器１０の上部からの液状物の漏出が防ぎ得ると共に、液状物が細菌等に汚染されるおそれを低減させることができる。

　以上のように、パウチ容器１０によれば、片手で容器を保持しながら栄養剤の注入作業を容易に行なうことができ、当該注入作業の作業性を大幅に改善することが可能となる。つまり、片手でパウチ容器１０を把持して、この手の指で開口部１５を開封可能とすると共に、当該指の離隔状態を維持することで、パウチ容器１０の開状態を維持することができる。このため、もう一方の手で液状物を充填部１４へ注入させることができる。このように、この作業の従事者が１人でも、十分に高精度及び高効率な作業が実施可能となる。

　＜第２の実施形態＞
　図８～図１１を参照し、第２の実施形態であるパウチ容器３０について説明する。
　ここでは、第１の実施形態との相違点を主に説明し、第１の実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。

　図８に示すように、パウチ容器３０は、袋状部２０Ａ，２０Ｂ（フラップ状部２８Ａ，２８Ｂ）の幅方向他端部同士が接合されてシール部３１が設けられている点でパウチ容器１０と異なる。シール部３１は、挿入口２４Ａ，２４Ｂと反対側に設けられている。図８に示す形態では、シート２１Ａ，２１Ｂの幅方向他端部に切り欠き３２Ａ，３２Ｂがそれぞれ形成されており、シール部３１は、切り欠き３２Ａ，３２Ｂが形成された部分のみに設けられるポイントシール部である。具体的に、シール部３１は、切り欠き３２Ａ，３２Ｂを介して表面シート１１と裏面シート１２の内面同士が接合された形態である。これにより、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂの幅方向他端部が互いに一体化された閉止部３３とされている。一方、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂの幅方向一端部は互いに分離された開放部３４とされている。

　図９，１０に、図８に示す形態の変形例を示す。図９，１０に示す形態では、シール部３１は、各袋状部の上下方向に沿って隙間なく形成されている。当該シール部３１は、シート２１Ａ，２１Ｂ同士が接合されて形成されることが好適である。当該シール部３１は、例えば、両面全域又は一部の領域にシーラント層を有する所謂両面ヒートシール性のシート２１Ａ，２１Ｂを用いてヒートシール工程により形成される。なお、袋状部２０Ａ，２０Ｂの幅方向他端部のみでシート２１Ａ，２１Ｂがヒートシールされるように、例えば、シート２１Ａ，２１Ｂが向かい合う面のシーラント層の軟化温度を、壁面シートと向かい合う面のシーラント層の軟化温度よりも高く設定することができる。また、シート２１Ａ，２１Ｂ同士を接着剤で接合してもよい。

　図１１に示すように、シール部３１を設けて袋状部２０Ａ，２０Ｂの幅方向他端部同士を接合して閉止部３３とすることにより、開口部１５をより広げ易くなる。例えば、幅方向他端部同士が接合されていない場合（第１の実施形態）よりも小さな力で開口部１５をより大きく開くことが可能となる。第１の実施形態では、例えば、親指と人差し指の間隔を広げたときに各袋状部がその付け根等で外側に折れ曲がり各袋状部のみが外側に開く場合があるが、シール部３１で幅方向他端部同士を固定して幅方向他端部が外側に開かないようにすることで、開口部１５を広げる方向に力が作用し易くなる。これにより、開口部１５の開口性がさらに向上する。

　さらに、各袋状部の上下方向に沿って隙間なくシール部３１を形成することで、栄養剤を注入する際に、幅方向他端部から栄養剤が漏れることを防止できる。また、当該他端部領域があたかも漏斗様に機能し、当該シール部３１に沿わして栄養剤を注入することが可能となる。

　＜第３の実施形態＞
　図１２～図１６を参照し、第３の実施形態であるパウチ容器４０について説明する。
　以下では、上記実施形態との相違点を主に説明し、上記実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。

　図１２に示すように、パウチ容器４０は、袋状部２０Ａ，２０Ｂの上端縁に位置する端縁シール部２３Ａ，２３Ｂに折曲形成部であるノッチ４１Ａ，４１Ｂが設けられている点でパウチ容器３０と異なる。ノッチ４１Ａ，４１Ｂは、袋状部２０Ａ，２０Ｂの幅方向中央部から幅方向他端部との間の袋状部内に挿入された指先が届かない位置、例えば、袋状部内に挿入された指先の位置と幅方向他端部との中間に形成されている。

　折曲形成部は、袋状部の剛性を局部的に低くして又は高くして上下方向に延びる折り曲げ部（例えば、折れ線等）を形成する機能を有する。折曲形成部としては、ノッチに限定されず、例えば、図１３に示す上下方向に沿ったミシン目線４２、図１４に示す上下方向に沿ったシール部４３であってもよい。また、ミシン目線４２の代わりにハーフカット線を形成してもよく、図１５に示すように、シール部４３の位置から幅方向他端部に亘って幅広のシール部４４を形成してもよい。シール部４３，４４は、例えば、袋状部の内面同士をヒートシールすることにより形成できる。なお、ミシン目線４２、シール部４３，４４等は、袋状部２０Ａだけでなく袋状部２０Ｂにも形成されることが好適である。

　図１６に示すように、袋状部２０Ａ，２０Ｂに挿入される指先よりも前方にノッチ４１Ａ，４１Ｂを設けることにより、開口部１５の開口性をさらに向上させることができる。袋状部２０Ａ，２０Ｂの指先よりも前方に位置する部分は、例えば、指先の位置から幅方向他端部にかけて湾曲する又は指先の位置で折れ曲がる（図１１参照）。そこで、ノッチ４１Ａ，４１Ｂを設けることによって、それが形成された部分で袋状部２０Ａ，２０Ｂが優先的に折れ曲がり、上下方向に沿った折れ線４２Ａ，４２Ｂが形成され易い構成とする。これにより、指先よりも前方に位置する部分が、指に沿って折れ線４２Ａ，４２Ｂの位置まで真っ直ぐに延び、開口部１５がより広がり易くなる。開口部１５の開口形状は、例えば、上から見ると略ホームベース状を呈する。

　＜第４の実施形態＞
　図１７を参照し、第４の実施形態であるパウチ容器５０について説明する。

　パウチ容器５０は、正面視略Ｕ字状の切り込み線２５Ａの代わりに、無端状の切り込み線５２Ａにより挿入口５１Ａが形成されている点（袋状部２０Ｂについても同様）でパウチ容器３０と異なる。即ち、挿入口５１Ａは、表面シート１１を打ち抜いて形成された貫通孔であって、その縁部には舌片が存在しない。挿入口５１Ａは、正面視略楕円形状を呈し、その長軸は幅方向に沿っている。但し、挿入口５１Ａの形状は、これに限定されず、正面視真円形状や半円形状、四角形等の多角形状であってもよい。

　＜第５の実施形態＞
　図１８を参照し、第５の実施形態であるパウチ容器６０について説明する。

　パウチ容器６０は、袋状部２０Ａの幅方向一端部に端縁シール部２３Ａを設けず、幅方向一端部から指の挿入を可能にした挿入口６１Ａを有する点（袋状部２０Ｂについても同様）でパウチ容器３０と異なる。挿入口６１Ａは、幅方向に向いた開口部であって、表面シート１１とシート２１Ａとの間に形成されている。袋状部２０Ａを構成する表面シート１１の幅方向一端部には、切り欠き６２Ａを形成することができ、これにより、挿入口６１Ａを広げ易くなって指の挿入性が向上する。

　＜第６の実施形態＞
　図１９を参照し、第６の実施形態であるパウチ容器７０について説明する。

　パウチ容器７０は、容器上部の幅方向両側にカット部７１，７２が形成されて容器上部の幅が容器下部の幅よりも小さくなっている点、及び袋状部２０Ａに２つ挿入口を形成する切り込み線２５Ａ，７３Ａが設けられている点（袋状部２０Ｂについても同様）でパウチ容器１０と異なる。切り込み線７３Ａは、袋状部２０Ａの幅方向他端側に近接して形成されており、切り込み線２５Ａと同様に正面視略Ｕ字状を呈する。なお、切り込み線２５Ａは幅方向一端部側から指が挿入される設計であり、切り込み線７３Ａは幅方向他端部側から指が挿入される設計である。パウチ容器７０は、上半分の幅が狭く各袋状部の幅方向長さも短いため、例えば、袋状部内に挿入される指先が幅方向中央部に位置する。或いは、幅方向中央部を超えて反対側の幅方向端部の近傍に位置する。これにより、例えば、開口部１５を広げる力が開口部１５の全幅に亘って作用し、小さな力で開口部１５を大きく広げることができる。また、開口部１５の開口状態を維持することがさらに容易となる。

　＜第７の実施形態＞
　図２０を参照し、第７の実施形態であるパウチ容器８０について説明する。

　パウチ容器８０は、パウチ容器７０と同様の外形形状を有するが、チャック１６よりも下方に袋状部２０Ａが設けられている点（袋状部２０Ｂについても同様）でパウチ容器７０と異なる。袋状部２０Ａは、例えば、表面シート１１の内面にシート２１Ａが接合されて形成されている。そして、切り込み線２５Ａは、表面シート１１に形成されている。一対の壁面シートのチャック１６よりも上方に位置する部分には、充填部１４の密封性をたかめるために端縁シール部１３が形成されている。また、当該端縁シール部１３とチャック１６との間には、開封用のノッチ７４が形成されている。

　なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記では、袋状部形成シートを壁面シートの内面に設けて袋状部を形成する形態を例示したが、袋状部形成シートを壁面シートの外面に設けて袋状部を形成してもよい。

　＜第８の実施形態＞
　図２１～図２３を参照し、第８の実施形態であるパウチ容器９０について説明する。

　図２１に示すように、パウチ容器９０には、袋状部２０Ａの内面同士を接合する指掛け用シール部９１Ａが設けられている（袋状部２０Ｂについても同様）。具体的には、挿入口２４Ａよりも幅方向他端側の上部に指掛け用シール部９１Ａが設けられている。指掛け用シール部９１Ａは、袋状部２０Ａの挿入口２４Ａよりも幅方向他端側であって、挿入口２４Ａの上端近傍に設けられることが好適である。また、指掛け用シール部９１Ａは、袋状部２０Ａにおいて、舌片２６Ａが内側に折り込まれたときに該舌片と干渉しない位置、即ち内側に折り込まれた舌片２６Ａよりも上部側に設けられることが好適である。なお、舌片２６Ａを有さない場合は、袋状部２０Ａの上半分、好ましくは袋状部２０Ａの上端から該袋状部の上下方向長さの１／３程度の範囲内に設けることが好ましい。

　指掛け用シール部９１Ａは、袋状部２０Ａの上端に沿って形成された端縁シール部２３Ａの一部が下部側に突出して設けられている。指掛け用シール部９１Ａは、挿入口２４Ａから挿入される親指が引っ掛かり易い形状であれば特に限定されず、例えば、図２１に示すように山型に突出した形状を有する。

　図２２に示すように、パウチ容器９０では、指掛け用シール部９１Ａに、親指の先を引っ掛けることができる。親指は人差し指よりも袋状部の奥まで入り難いが、指掛け用シール部９１Ａを設けたことで、袋状部２０Ａにおける親指の掛かりが良くなって開口部１５を広げる方向に力が作用し易くなる。パウチ容器９０は、特に手の小さな女性等の使用に有用である。

　図２３に示すように、端縁シール部２３Ａから離れた位置にポイントシール部として、指掛け用シール部９２Ａを設けてもよい。この場合も、挿入口２４Ａの上端近傍であって、内側に折り込まれた舌片２６Ａよりも上部側に指掛け用シール部９２Ａを設けることが好適である。

　＜第９の実施形態＞
　図２４～図２８を参照し、第９の実施形態であるパウチ容器１００について説明する。
　なお、図２６，２７におけるパウチ容器１００は、理解を容易とするために上下方向に比べて表裏方向の縮尺を拡大して図示している。

　図２４，２５に示すように、パウチ容器１００では、閉止部３３を形成するシール部１０１が、フラップ状部２８Ａ，２８Ｂの上端から内方（下方）に行くに従って、閉止部３３側から開放部３４側（図２４中の左方から右方）に傾斜している。このように、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂの閉止部３３側が傾斜して接合されていることにより、後述する各フラップ状部２８Ａ，２８Ｂの拡開時において開口部１５に向かって上方から次第に幅方向での拡開量が小さくなるように傾斜している傾斜案内部１０２が形成される。

　これに対して、開放部３４では、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂが、上端部分（チャック１６からの延び出し方向における先端部分）から下方（チャック１６方向）に向かって少なくとも半分以上の領域が相互に接合されておらず、互いに引き離し可能に開放されている。

　本実施形態では、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂに、指を開放部３４側から閉止部３３側に向かって挿入可能な挿入口を有する袋状部２０Ａ，２０Ｂが形成されている。曲折部（舌片２６Ａの付け根線）の傾斜角度を調節することにより袋状部２０Ａ，２０Ｂの角度、即ち、挿入する指の角度を調節することが可能である。

　また、開口部１５の外方（上方）には、貫通孔である吊り下げ孔１８が形成されている。本実施形態では、吊り下げ孔１８が一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂにおける閉止部３３側に、互いに重ね合わせ状態に固着された一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂを貫通して形成されている。なお、吊り下げ孔１８は、例えば一方のフラップ状部だけに外周縁部から延び出す延出片を形成し、かかる延出片に形成してもよい。吊り下げ孔１８に吊下フック等を挿通させることにより、図示しない点滴スタンド等に対して、パウチ容器１００を吊り下げ支持させることができる。

　図２８では、左手でパウチ容器１００を把持して、親指と人差し指を一対の袋状部２０Ａ，２０Ｂに挿入してフラップ状部２８Ａ，２８Ｂを拡開している状態を示している。右利きの人であるならば、図２８のような状態で液状物を充填部１４に注入させる場合、より高精度に注入させることができる。或いは、左右の手を反対にすると、より確実にパウチ容器１００を拡開状態に維持することができる。したがって、パウチ容器１００は表裏対象であることが好適である。一対の袋状部２０Ａ，２０Ｂに挿入される指も親指と人差し指に限定されるものではなく、例えば親指と中指等も可能である。一対の袋状部２０Ａ，２０Ｂの形状は実際に挿入される指の形状に合わせることが好適である。

　パウチ容器１００では、上記実施形態のパウチ容器と同様に、親指と人指を相互に開く方向に操作することによりフラップ状部２８Ａ，２８Ｂ同士の間隔が拡開されて、フラップ状部２８Ａ，２８Ｂが重ね合わせ方向と反対の引き離し方向へ相互に離隔される。そして、さらに拡開作用力を及ぼすと一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂに続くチャック１６の設けられた開口部１５が閉状態から開状態とされる。

　また、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂの幅方向他端側に閉止部３３が、幅方向一端側に開放部３４がそれぞれ設けられており、開放部３４側から一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂ同士の間隔を拡開させる。このため、フラップ状部の両端が封止されている場合に比較して、容器上部を大きく拡開させることができる。これにより、容易に液状物を充填部１４へ注入させることができ、作業者の精神的及び労力的な負担が軽減され得る。

　パウチ容器１００では、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂの閉止部３３側の端縁部分が傾斜しており、一対のフラップ状部２８Ａ，２８Ｂの拡開時において、開口部１５に向かって次第に拡開量が小さくなるようにされた傾斜案内部１０２が形成されている。これにより、液状物を傾斜案内部１０２の傾斜面に伝わせて充填部１４へ注入することが可能となる。したがって、液状物が開口部１５へ集約され易く液状物が零れ落ちるおそれが低減され得ると共に、作業者に更なる負担をかけることなく、より高精度な作業を行うことができる。即ち、傾斜案内部１０２が漏斗のような効果を発揮し得る。

　＜第１０の実施形態＞
　図２９を参照し、第１０の実施形態であるパウチ容器１１０について説明する。

　パウチ容器１１０は、一対のフラップ状部１１１Ａ，１１１Ｂの幅方向長さがチャック１６よりも下の部分である袋本体の幅方向長さより閉止部３３側に長くなっている点でパウチ容器１００と異なる。また、パウチ容器１１０では、吊下フック等が挿通される吊り下げ孔１８が、一対のフラップ状部１１１Ａ，１１１Ｂの少なくとも一方から上方に延び出して設けられた突出片１１２に貫通形成されている。突出片１１２と吊り下げ孔１８は、幅方向において充填部１４及びチャック１６の略中央に位置して設けられている。さらに、パウチ容器１１０では、袋本体に拡幅部が設けられていない。

　このような構造とされたパウチ容器１１０では、一対のフラップ状部１１１Ａ，１１１Ｂの閉止部３３側の端縁部分である傾斜案内部１０２が、開口部１５の上方において、チャック１６よりも幅方向外方に向かって広がって形成されている。一対のフラップ状部１１１Ａ，１１１Ｂを、このように開口部１５におけるチャック１６よりも大きな開口幅をもって形成することにより、パウチ容器１００等に比べてフラップ状部１１１Ａ，１１１Ｂ同士の間隔の拡開量を大きくすることができる。したがって、開口部１５から充填部１４へ液状物を注入するための作業を一層容易とすることができ、作業者の精神的及び労力的負担の更なる軽減が図られ得る。

　なお、本実施形態では、吊り下げ孔１８が袋本体の幅方向略中央に設けられていることから、注出部１７も、袋本体の幅方向略中央に設けてもよい。また、閉止部３３（傾斜案内部１０２）は、チャック１６が設けられた開口部１５から外方に向かって直線的に広がる傾斜形状に限定されるものでなく、例えば段階的に傾斜角度が変化する形状や、曲線状に湾曲して傾斜角度が変化する形状等も採用可能である。

　＜第１１の実施形態＞
　図３０～図３７を参照し、第１１の実施形態であるパウチ容器１２０について詳説する。

　パウチ容器１２０は、チューブ１０３を保持可能なチューブ保持部１２１（以下、単に「保持部１２１」という）を備える点で上記実施形態と異なる。保持部１２１は、端縁シール部１３のうち、吊り下げ孔１８が形成された拡幅シール部１３ｚに形成されることが好適である。本実施形態では、拡幅シール部１３ｚに２つの保持部１２１が形成されている。保持部１２１は、１つであってもよいが、チューブ１０３の保持性向上の観点から複数形成されることが好ましい。

　拡幅シール部１３ｚは、端縁シール部１３の幅を局部的に大きくした部分であって、本実施形態では容器上部の横方向他端側に１箇所設けられている。拡幅シール部１３ｚは、チャック１６より下方からチャック１６を超えて容器上端まで形成されており、チャック１６の上方では容器上端に近づくほど次第に幅が小さくなるように形成されている。チャック１６よりも上方（フラップ状部２８Ａ，２８Ｂ）では、４枚のシートが互いに接合されて拡幅シール部１３ｚが形成されており、シール部の形状はパウチ容器１００の場合と同様である。即ち、フラップ状部２８Ａ，２８Ｂの幅方向他端部は閉止部３３となっており、傾斜案内部１０２が形成されている。

　保持部１２１は、吊り下げ孔１８が形成された拡幅シール部１３ｚにおいて、上下方向に並んで２つ形成されている。各保持部１２１は、吊り下げ孔１８よりも下に形成されることが好適である。これにより、吊り下げ孔１８をハンガー等に引っ掛けて容器を吊り下げた状態であっても保持部１２１にチューブ１０３を取り付け易い。また、各保持部１２１は、操作性向上等の観点から、互いに近接して形成されることが好ましく、例えば互いの間隔をチューブ１０３の直径（以下、「直径ｄ」という）の２倍～５倍程度の長さに設定することが好ましい。

　保持部１２１は、拡幅シール部１３ｚの外端から少なくとも直径ｄ以上の長さで壁面シートを切り込んで又は切り欠いて形成される。保持部１２１の横方向長さは、チューブ１０３の保持性や充填部１４の容量確保等の観点から、好ましくは直径ｄの１．５倍～５倍程度、より好ましくは直径ｄの１．８倍～３倍程度である。これにより、保持部１２１に対して、チューブ１０３を湾曲させて挿入するといった煩雑な操作が不要となり、チューブ１０３の中間部分を容易に挿入することが可能となる。ここで、「拡幅シール部１３ｚの外端」とは、壁面シートの外形線（輪郭線）に沿う端部である。なお、拡幅シール部１３ｚの内端は、充填部１４の外形線に沿う端部である。また、「切り込み」とは、壁面シートを切除しないカット部を意味し、「切り欠き」とは、壁面シートを切除するカット部を意味する。

　保持部１２１は、直径ｄよりも小さな幅を有する導入路１２２と、直径ｄと同等以上の寸法を有する収容孔１２３とを含むことが好適である。導入路１２２は、拡幅シール部１３ｚの外端から所定長さで形成される。当該所定長さは、例えば直径ｄの０．５倍～３倍程度である。収容孔１２３は、チューブ１０３が保持される部分であって、導入路１２２と連通して形成される。即ち、チューブ１０３は、壁面シートの外端から導入路１２２を通って収容孔１２３に挿入され、収容孔１２３の縁部に引っ掛かった状態で保持される。なお、壁面シート及びチューブ１０３は、いずれも可撓性を有するため、導入路１２２の幅を直径ｄより小さくしてもチューブ１０３を挿入することが可能である。

　導入路１２２は、平面視略三角形状の切り欠き１２５ａ、及び直線状の切り込み線１２５ｂにより形成されている。切り欠き１２５ａは、拡幅シール部１３ｚの外端近傍において、外側に向かって導入路１２２の幅が広がるように形成されている。チューブ１０３のスムーズな挿入を可能とすべく、導入路１２２の入り口が丸みを帯びるように切り欠き１２５ａを形成することが好適である。切り込み線１２５ｂは、切り欠き１２５ａの先端から収容孔１２３まで横方向に沿って形成されている。

　収容孔１２３は、切り込み線１２５ｂにつながった円弧状の切り込み線１２５ｃにより形成されている。本実施形態では、切り込み線１２５ｃが略Ｃ字状に形成されており、壁面シートが切除されずに残っている。即ち、保持部１２１には、切り込み線１２５ｃと当該切り込み端同士を結んだ線とに囲まれた部分である舌片１２４が設けられている。なお、舌片１２４が押し出されて開口する収容孔１２３の形状は、チューブ１０３の形状に合わせて略円形状とすることが好ましい。収容孔１２３の寸法（直径）は、直径ｄと略同等又はやや大きいことが好ましい。これにより、チューブ１０３を収容孔１２３に挿入した後であっても、チューブ１０３の保持位置を調製することが容易になる。

　舌片１２４は、チューブ１０３が収容孔１２３に挿入されていない状態において、収容孔１２３を覆っている。即ち、当該状態では、収容孔１２３が舌片１２４により閉じられている。舌片１２４は、チューブ１０３を収容孔１２３に挿入しようとするときに、チューブ１０３により表裏方向の一方に押し出され、これにより収容孔１２３が開口する（図３８参照）。本実施形態では、舌片１２４が収容孔１２３の上縁部につながっており、チューブ１０３が収容孔１２３に挿入されたときに当該チューブ１０３を上方から押さえることになり、チューブ１０３をより安定して保持することができる。

　各保持部１２１は、横方向に対して略平行に形成されている。即ち、導入路１２２の中心と収容孔１２３の中心とが横方向に対して略一致する。これにより、チューブ１０３を横方向に動かして保持操作、取り外し操作を行うことができ、操作性が向上する。本実施形態の保持部１２１は、上述の通り、チューブ１０３の直径よりも小さな幅を有する導入路１２２と、チューブ１０３の直径と同等以上の寸法を有する収容孔１２３により形成されていることから、略平行に形成されていてもチューブ１０３が容易に脱落することがない。

　図３３に、上記構成を備えるパウチ容器１２０の製造方法の一例を示す。図３３は、パウチ容器１２０の製造工程のうち、各シートの長尺体を積層し、各シール部を形成する工程を模式的に示す。ここでは、図５に示す例と異なる点について説明する。

　積層工程を経た各長尺体には、ヒートシール工程で各シール部が形成される。ヒートシール工程では、例えば、注出部１７を取り付ける部分を残して、長尺体１１ｚ，１２ｚの下端縁、ＴＤ方向に沿って所定部位をヒートシールすることにより拡幅シール部１３ｚを含む端縁シール部１３を形成する。ここで、長尺体の下端縁は、パウチ容器１０の下端縁となる部分であり、所定部位は、パウチ容器１０の側端縁となる部分である。ヒートシール工程では、さらに、長尺体１６ｚ，２１Ａｚ，２１Ｂｚを長尺体１１ｚ，１２ｚにそれぞれ接合する。これにより、開口部１５が閉じられ、また端縁シール部２３Ａ，２３Ｂが形成される。吊り下げ孔１８及び保持部１２１を設ける拡幅シール部１３ｚは、長尺体１１ｚ，１２ｚ，１６ｚ，２１Ａｚ，２１Ｂｚに跨って形成される。

　続いて、ダイカットロール等を用いて、例えば、切断予定線Ｘに沿って上記長尺体をカットし、個々の容器サイズに分割する。なお、上記ヒートシール及び当該カットは同時に行なわれてもよい。また、このとき又は別工程で、吊り下げ孔１８、切り込み線２５Ａ，２５Ｂ、及び切り欠き１２５ａ、切り込み線１２５ｂ，１２５ｃが形成される。これにより、内部空間２２Ａ，２２Ｂに指が挿入可能な袋状部２０Ａ，２０Ｂ、及びチューブ１０３を挿入可能な保持部１２１がそれぞれ形成される。最後に、注出部１７を取り付けてパウチ容器１２０が得られる。

　次に、図３４～図３７に示すパウチ容器１２０の使用状態の一例を参照しながら、パウチ容器１２０の作用効果について詳説する。

　パウチ容器１２０は、例えば、袋状部２０Ａ，２０Ｂを用いて開口部１５が広げられ、充填部１４に栄養剤が充填された後、注出部１７に可撓性のある長尺状のチューブ１０３を取り付けて使用される。パウチ容器１２０は、注出部１７にチューブ１０３を接続した状態で病室等の目的とする場所まで運ばれる。このため、チューブ１０３が移動中に他の物に絡み付く、引っ掛かる、或いは脱落すること等を防止すべく、保持部１２１を用いてチューブ１０３を保持する。

　図３４，３５は、充填部１４に栄養剤を注入すべく開口部１５を広げた状態を示す。
　パウチ容器１０の開口部１５から充填部１４に栄養剤を注入する際には、上記実施形態と同様に、袋状部２０Ａの内部空間２２Ａに親指を挿入し、袋状部２０Ｂの内部空間２２Ｂに人差し指を挿入して容器を保持する。このとき、親指と人差し指は、横方向一端部側から挿入口２４Ａ，２４Ｂを通って各内部空間に挿入される。そして、袋状部２０Ａ，２０Ｂ内に挿入された親指と人差し指との間隔を開けることによりチャック１６を外して開口部１５を広げる。続いて、開口部１５を大きく広げた状態で栄養剤の注入を開始する。親指と人差し指との間隔を開けておくだけで開口状態が維持されるので、例えば、注入作業中に開口部１５が閉じて栄養剤が零れることを防止できる。また、袋状部２０Ａ，２０Ｂの横方向他端部同士を隙間なく接合し、特に容器上端に近づくほど次第に幅が小さくなるように（シール部形状が正面視略三角形状となるように）接合したことで、栄養剤を注入する際に横方向他端部から栄養剤が漏れることを防止できると共に、当該他端部があたかも漏斗様に機能し、当該シール部に沿わせてより簡便に栄養剤を注入することが可能となる。

　上記のように、パウチ容器１２０によれば、上記実施形態と同様に、片手で容器を保持しながら栄養剤の注入作業を容易に行なうことができ、当該注入作業の作業性を大幅に改善することが可能となる。なお、栄養剤の注入作業が完了したパウチ容器１２０には、注出部１７に可撓性の長尺状チューブ１０３を取り付ける。例えば、チューブ１０３の一端にはジョイント１０４が設けられており、当該ジョイント１０４が注出部１７に嵌め込まれる。

　図３６，３７は、保持部１２１にチューブ１０３を引っ掛けた保持状態を示す。
　保持部１２１を利用してチューブ１０３を保持する際には、例えば、チューブ１０３を保持部１２１が形成された拡幅シール部１３ｚの外端、即ち導入路１２２の入り口に押し付ける。これにより、チューブ１０３が導入路１２２を通って収容孔１２３に挿入され、収容孔１２３の縁部に引っ掛かる。なお、壁面シート及びチューブ１０３は、可撓性を有するため、導入路１２２が広がり、またチューブ１０３が変形してチューブ１０３の挿入が可能となる。従い、片手でも容易にチューブ１０３の保持作業を行うことができる。特に、本実施形態では、横方向一端側から挿入口２４Ａ，２４Ｂが、横方向他端側に保持部１２１が、それぞれ設けられているため、例えば注入作業終了直後に右手で容器を保持したまま、左手でチューブ１０３を保持部に引っ掛けることも、容易に行うことができる。また、パウチ容器１２０は、ハンガー等に吊り下げられた状態であってもよい。吊り下げられた状態でも、支持点である吊り下げ孔１８と保持部１２１との距離が近いので、保持操作が容易であり、片手で行うことも可能である。

　チューブ１０３が挿入される前は、収容孔１２３が舌片１２４により覆われているが、チューブ１０３を挿入することで舌片１２４が表裏方向の一方に押し出されて収容孔１２３が開口する。そして、押し出された舌片１２４は、チューブ１０３を上方から押さえる。これにより、チューブ１０３の保持性が向上する。なお、２つの保持部１２１にチューブ１０３を挿入することで、より安定してチューブ１０３を保持することができる。

　なお、チューブ１０３を保持部１２１から取り外す際には、チューブ１０３を横方向に沿って外側に引っ張る。これにより、チューブ１０３が収容孔１２３から導入路１２２を通って容易に保持部１２１から外れる。当該取り外し操作も片手で行うことができる。

　上記のように、パウチ容器１２０によれば、容器運搬時や栄養剤の投与作業時等において、保持部１２１を利用してチューブ１０３を安定的に保持できる。これにより、例えばチューブ１０３が他の物に絡み付く、引っ掛かる、或いは脱落するといった不具合を防止できる。また、保持部１２１は、拡幅シール部１３ｚの外端から壁面シートを切り込んで又は切り欠いて形成されているため、チューブ１０３の保持操作、取り外し操作が容易であり、チューブ１０３のスムーズな取り扱いが可能となる。

　＜第１２の実施形態＞
　図３８を参照し、第１２の実施形態であるパウチ容器１３０について説明する。

　パウチ容器１３０は、吊り下げ孔１８が形成される拡幅シール部１３１とは異なる拡幅シール部１３２に保持部１２１が形成されている点でパウチ容器１２０と異なる。パウチ容器１３０では、拡幅シール部１３ｚと同様の位置に形成される拡幅シール部１３１の他に、保持部１２１を形成するための拡幅シール部１３２が設けられる。本実施形態では、容器下端と側端との角のうち注出部１７が設けられる角と反対側の角に拡幅シール部１３２（複数の保持部１２１）が設けられている。

　＜第１３の実施形態＞
　図３９～図４１を参照し、第１３の実施形態であるパウチ容器１４０について説明する。

　図３９に示すように、パウチ容器１４０では、保持部１４２の形状がパウチ容器１２０の保持部１２１の形状と大きく異なる。なお、パウチ容器１４０は、吊り下げ孔１８と同じ拡幅シール部１４１に保持部１４２が形成されている点でパウチ容器１２０と共通する。保持部１４２は、拡幅シール部１４１において、直径ｄと略同等又はやや大きな幅で壁面シートを切り欠いて形成されている。保持部１４２を形成する切り欠きは、拡幅シール部１４１の外端から注出部１７側に向かって、即ち斜め下方に向かって真っすぐに形成されている。

　図４０，４１にパウチ容器１４０の変形例を示す。
　図４０に示す保持部１４２ｘは、拡幅シール部１４１において、直径ｄと略同等又はやや大きな幅で壁面シートを切り欠いて形成されている点で保持部１４２と共通するが、保持部１４２ｘが中間部で折れ曲がっている点で保持部１４２と異なる。保持部１４２ｘを形成する切り欠きは、中間部が上方に凸となるように緩やかに曲がって形成されている。また、保持部１４２ｘは、その始点（外端）と終点（内端）が横方向に沿って略一致している点でも保持部１４２と異なる。

　図４１に示す保持部１４２ｙは、折れ曲がった部分よりも外側で幅が小さくなっている点で保持部１４２ｘと異なる。幅が小さくなった部分は、直径ｄよりも小さな幅とすることが好適である。これにより、保持部１４２ｘに比べてチューブ１０３の保持性が向上する。

　＜第１４の実施形態＞
　図４２を参照し、第１４の実施形態であるパウチ容器１５０について説明する。

　パウチ容器１５０は、チャック１６よりも下方に袋状部２０Ａが設けられている点（袋状部２０Ｂについても同様）でパウチ容器１２０と異なる。袋状部２０Ａは、例えば、表面シート１１の内面にシート２１Ａが接合されて形成されている。そして、切り込み線２５Ａは、表面シート１１に形成されている。一対の壁面シートのチャック１６よりも上方に位置する部分には、充填部１４の密封性をたかめるために端縁シール部１３が形成されている。また、当該端縁シール部１３とチャック１６との間には、開封用のノッチ１５１が形成されている。

　なお、第１１，１２，１４の実施形態では、舌片１２４が収容孔１２３の上縁部につながって設けられ、収容孔１２３に挿入されたチューブ１０３を上方から押さえたが、図４３に示すように、略Ｃ字状の切り込み線１２５ｃの形成パターンを変更して、収容孔１２３の下縁部につながった舌片１２４としてもよい。この場合、重力によりチューブ１０３は下方に垂れ下がるため、収容孔１２３に挿入されたチューブ１０３と容器（舌片１２４）との接触面積をより大きくすることができる。

　また、図４４に示すように、切り込み線１２５ｃを略円形状に形成して、即ち切り込み線１２５ｃの両端を切り込み線１２５ｂにつなげて壁面シートを切除し、舌片１２４をなくしてもよい。この場合、収容孔１２３が常時開口した形態となる。

　なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
　例えば、上記では、袋状部形成シートを壁面シートの内面に設けて袋状部を形成する形態を例示したが、袋状部形成シートを壁面シートの外面に設けて袋状部を形成してもよい。袋状部形成シートを壁面シートの外面に設けて、チャック１６に相当する位置に袋状部を形成してもよい。

　また、上記実施形態では、一対のフラップ状部の幅方向一方の端部が互いに分離している開放部３４とされていたが、例えば、パウチ容器の使用前は一体化されていて、使用する際に、開放部に相当する部分が分離されるようになっていてもよい。この場合、例えば、開放部に相当する部分では、ミシン目状の切断容易部を設ける、又は固着代を小さくすること等により、開放部３４の形成部分の強度を閉止部３３の固着強度よりも小さくすることが好適である。袋状部に挿入される指による拡開操作力を当該部分に及ぼすことにより開放部に相当する部分が分離される。

　吊下フック等が挿通される吊り下げ孔の形状は円形に限定されない。例えば、三角形等にすることにより、パウチ容器をスタンド等に懸架した際の、パウチ容器の向きを調節することができる。

　パウチ容器の形状も略矩形状に限定されない。例えば、平面視において、円形状、楕円形状、オーバル（卵）形状、三角形（好適には逆三角形）、多角形等の各種形状が採用され得る。

　１０　パウチ容器、１１　表面シート、１２　裏面シート、１３，２３Ａ，２３Ｂ　端縁シール部、１４　充填部、１５　開口部、１６　チャック、１７　注出部、１８　吊り下げ孔、１９　カット部、２０Ａ，２０Ｂ　袋状部、２１Ａ，２１Ｂ　袋状部形成シート、２２Ａ，２２Ｂ　内部空間、２４Ａ，２４Ｂ　挿入口、２５Ａ，２５Ｂ　切り込み線、２６Ａ，２６Ｂ　舌片、２７　折り目線、２８Ａ，２８Ｂ　フラップ状部。

Claims (11)

1. 　少なくとも表面部及び裏面部を構成する壁面シートを備え、該シートに囲まれた充填部に内容物が充填され、前記充填部に繋がる開口部が容器縦方向一端側の前記表面部と前記裏面部との間に形成されるパウチ容器において、
   　前記表面部及び前記裏面部の前記容器縦方向一端側にそれぞれ設けられた袋状部を備え、
   　前記各袋状部は、前記充填部から隔離された内部空間を有し、容器横方向から該空間への指の挿入を可能とする挿入口を有することを特徴とするパウチ容器。
2. 　請求項１に記載のパウチ容器において、
   　前記壁面シートには、前記開口部を閉じるチャックが設けられ、
   　前記各袋状部は、前記チャックよりも前記容器縦方向一端側に延出したフラップ状部に形成されていることを特徴とするパウチ容器。
3. 　請求項２に記載のパウチ容器において、
   　前記各挿入口は、前記袋状部の前記容器横方向一端側に設けられ、
   　前記各フラップ状部の間には、それぞれの前記容器横方向他端部同士を接合するシール部が設けられていることを特徴とするパウチ容器。
4. 　請求項３に記載のパウチ容器において、
   　前記シール部は、前記チャックに向かって次第に前記各フラップ状部の拡開量が小さくなるように、前記容器縦方向及び前記容器横方向に傾斜して形成されているパウチ容器。
5. 　請求項１～４のいずれか１項に記載のパウチ容器において、
   　前記各袋状部には、前記各挿入口を塞ぐ舌片が設けられ、
   　前記各挿入口は、前記舌片が前記内部空間内に折り込まれることで開口することを特徴とするパウチ容器。
6. 　請求項１～５のいずれか１項に記載のパウチ容器において、
   　前記容器縦方向他端側に設けられた、可撓性の長尺状チューブが取り付けられる充填物の注出部と、
   　前記表面部及び前記裏面部の端縁同士を接合して形成される端縁シール部と、
   　を備え、
   　前記端縁シール部には、前記チューブを保持可能なチューブ保持部が形成されており、
   　当該チューブ保持部は、前記端縁シール部の外端から少なくとも前記チューブの直径以上の長さで前記壁面シートを切り込んで又は切り欠いて形成されることを特徴とするパウチ容器。
7. 　請求項６に記載のパウチ容器において、
   　前記チューブ保持部は、
   　前記チューブの直径よりも小さな幅を有する導入路と、
   　当該導入路と連通し、前記チューブの直径と同等以上の寸法を有する収容孔と、
   　を含むことを特徴とするパウチ容器。
8. 　請求項６又は７に記載のパウチ容器において、
   　前記チューブ保持部は、前記収容孔の少なくとも一部を覆い、前記チューブが前記収容孔に挿入されたときに当該チューブに接する舌片を有することを特徴とするパウチ容器。
9. 　請求項６～８のいずれか１項に記載のパウチ容器において、
   　前記端縁シール部は、局部的に幅を大きくして形成された拡幅シール部を有し、
   　当該拡幅シール部の１つに吊り下げ孔と前記チューブ保持部とが形成されることを特徴とするパウチ容器。
10. 　請求項１～９のいずれか１項に記載のパウチ容器において、
    　前記各挿入口は、前記袋状部の前記容器横方向一端部側に設けられ、
    　前記各袋状部の前記挿入口よりも前記容器横方向他端側の上部には、前記袋状部の内面同士を接合する指掛け用シール部が設けられていることを特徴とするパウチ容器。
11. 　請求項３に記載のパウチ容器において、
    　前記各フラップ状部には、前記容器縦方向に沿った折り曲げ部を形成するための折曲形成部が設けられていることを特徴とするパウチ容器。

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