以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1には、本発明の第1の実施形態としての医療用バッグ10が示されている。医療用バッグ10は、液状体が収容される液収容領域12を有する液収容袋14を備えており、液収容領域12に対して、上方への開口部16を通じて液状体が注入され得る。なお、以下の説明において、上下方向とは、図1中の上下方向をいう。また、幅方向とは、図1中の左右方向をいう。
先ず、液収容袋14は、図2に示されるように、相互に同形とされた軟質合成樹脂製の表裏2枚の内側シート18,18が固着されることにより形成されている。本実施形態では、透明な2枚の内側シート18,18の左右両側の辺部分および下辺部分が、それぞれの略全長に亘って延びる溶着部20によって相互に熱溶着(ヒートシール)されている。また、内側シート18,18の重ね合わせ面間には、上方への開口部16を有する液収容領域12が形成されている。なお、図中では、熱溶着されている部分を灰色で示す。
また、これら内側シート18の内面には、熱溶着が可能とされるように略全面に亘ってシーラント層が形成されている。なお、後述する熱溶着面を備えた各部材には、同様に、熱溶着される面の略全面に亘ってシーラント層が形成されている。
液収容袋14の下端にはポート部材22が固着されており、当該ポート部材22を通じて、液収容領域12が外部に連通されている。ポート部材22には、外部管路としてのチューブ24が接続されるようになっており、液収容領域12に収容された液状体が、チューブ24を通じて患者の体内へ注入されるようになっている。なお、ポート部材22は、例えば2枚の内側シート18,18と共に熱溶着されることで液収容袋14に固着されている。
また、液収容袋14の上方部分には、開口内面の幅方向全長に延びるチャック部26が設けられている。チャック部26の具体的な構造は何等限定されるものではないが、本実施形態では、表裏の内側シート18,18の各内面に設けられた凸条28aと凹溝28bからなる公知のチャックシールで構成されている。そして、凸条28aと凹溝28bの嵌合でチャック部26が閉鎖されることで、液収容領域12の開口部16が閉状態に維持可能になっている。
なお、本実施形態では、凸条28aと凹溝28bがそれぞれ幅広なシート状部30a,30bの内面に一体形成されており、シート状部30a,30bが内側シート18,18の各内面に熱溶着されている。
さらに、液収容袋14においてチャック部26より上方に位置する上端部分では、幅方向の一方の縁部が、内側シート18,18の側辺部分同士を固着しないで開放可能とした非固着部32とされている。
また、液収容袋14においてチャック部26より上方に位置する上端部分には、非固着部32と幅方向反対側に位置する他方の縁部において、内側シート18,18の側辺部分同士を固着する溶着部20の幅寸法が大きくされている。溶着部20の幅寸法は、上縁部から下方のチャック部26に向かって次第に幅方向内方に向かって大きくなっており、溶着部20の幅寸法が大きいチャック部26の近くに位置して、貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、内側シート18,18からなる液収容袋14を貫通しており、貫通孔34を利用して医療用バッグ10をスタンドなどに吊り下げることができる。
更にまた、液収容袋14の表面には目盛36が付されており、液収容領域12内に収容された液状体の量を外部から目視で把握することができるようになっている。この目盛36は、一方の内側シート18に付してもよいし、両方の内側シート18,18に付してもよい。本実施形態では、例えば液収容領域12に液状体を注入する場合などに使用される垂直方向の目盛36aと、医療用バッグ10をスタンドなどに吊り下げた状態で使用される斜め方向の目盛36bとを備えている。なお、これらの目盛36a,36bは、内側シート18の表面に代えて、以下の外側シート38に付されてもよい。すなわち、内側シートの表面には目盛を設けず、外側シートにのみ目盛を設けてもよい。なお、この場合、外側シートにのみ印刷層を設けることで製造原価を低減することができる。
表裏の内側シート18,18の各外面側には、表裏の外側シート38,38が重ね合わされている。表裏の外側シート38,38は、相互に同形とされた透明な軟質合成樹脂製のシートとされている。また、外側シート38は、全体に亘って、内側シート18よりも幅寸法及び上下方向の長さ寸法が大きくされている。
そして、表裏の内側シート18,18への重ね合わせ状態で、表裏の外側シート38,38の両側辺部分および下辺部分が、内側シート18,18の幅方向両縁および下縁からそれぞれ外方に延び出して広がっている。内側シート18,18を外方に外れた位置において、互いに重ね合わされた表裏の外側シート38,38が相互に熱溶着されており、両側縁と下縁をそれぞれ連続して延びる溶着部40が形成されている。この結果、表裏の外側シート38,38が有底筒状とされており、内側袋としての液収容袋14を中空内部に収容して外側から覆う外側袋42が構成されている。
また、内側シート18と外側シート38とは、外側シート38の上端縁に設けられた固着部44において固着されて繋がっている。本実施形態では、互いに重ね合わされた内側シート18と外側シート38とが上端縁で熱溶着されることで固着されている。特に本実施形態では、固着部44が一定の上下方向寸法をもって、液収容袋14の幅方向略全長に亘って延びている。
なお、液収容袋14の非固着部32と対応する位置では、外側シート38,38の側辺部分同士が固着されない非固着部46とされている。一方、液収容袋14の貫通孔34は、外側シート38,38に形成された貫通孔48,48を通じて外側袋42も貫通している。
さらに、外側袋42の下部の片方の角部では、ポート部材22が、袋内外に貫通して配設されている。ポート部材22と外側シート38,38とは、固着されていなくても良い。
一方、表裏の外側シート38,38には、それぞれ、外側シート38を貫通するスリット50が形成されている。スリット50は、液収容袋14の上下方向で中央よりも上方に位置して、より好適にはスリット50の少なくとも一部がチャック部26よりも上側に、或いは、チャック部26と重なる位置に設けられる。更に好適には、スリット50の上下方向中央がチャック部26と重なる位置に設けられ、或いは、スリット50がチャック部26よりも上方に外れた位置に設けられる。なお、スリットは、一つの指のみ挿入される寸法としてもよいし、人差指及び中指等、複数の指が挿入されるようにしてもよい。また、スリット以外の挿入口を採用してもよい。
スリット50は、僅かに傾斜して上下方向へ直線的に延びており、手指の指先が挿入可能な指挿入口を構成している。特に、本実施形態では、スリット50が、外側シート38の幅方向中央よりも片側(本実施形態では、図1中の左側)に偏倚して設けられている。
スリット50に対して、左右の偏倚方向(図1中の左側)から挿入された指先は、内側シート18と外側シート38との間の隙間に形成された開口操作部としての指挿入領域52に差し入れられるようになっている。指挿入領域52は、上方が、内外シート18,38が繋がった固着部44とされている一方、下方は、内外シート18,38が固着されずに外側シート38の下端まで達している。
それ故、図3に示されるように、両外側シート38,38のスリット(指挿入口)50,50に対して、幅方向一方の側から片手の手指(例えば親指と人差指)を差し入れて、両外側シート38,38を相互に離隔させる方向に指先を開くことで、液収容領域12の開口部16を開くことができる。そして、反対側の手で薬液などの液状体が入った容器を傾けるなどして、開口部16を通じて液収容領域12へ薬液を注入することができる。
なお、開口部16を開く際において、チャック部26は、開状態であっても閉状態であってもよい。すなわち、スリット50に挿入された手指の指先を開く力を利用して凸条28aと凹溝28bの凹凸嵌合を解除してもよいし、予めチャック部26を開状態とした後に指先を開いて開口部16を拡開させてもよい。
ここにおいて、手指が挿入されるスリット50では、上方の固着部44において内側シート18と外側シート38とが繋がっていることから、内側シート18に繋がっていない下方よりも開口端縁に近い上側に対して、手指による開口操作力が効率的に作用し得る。その結果、液収容領域12の開口部16を上方に向かって大きく開口させて、例えば漏斗状に広げることも容易になる。それ故、使用者は視覚的に開口を広く感じることができて、液収容領域12に対して、内側シート18の開口部16に対して液状体を容易に且つ安定して注入することが可能になる。
また、液収容領域12を形成する内側シート18の中央部分には、外側シート38が溶着されていないことから、内側シート18の中央部分が不必要に大きく開口してしまうこともなく、安定して例えば漏斗状に広げることが可能になる。
また、指挿入口(スリット50)に挿入される外側シート38が内側シート18に比して幅寸法が大きく、表裏の内側シート18,18を幅方向に外れた側縁部において互いに繋がっていることから、外側シート38の変形自由度を高くすることができて、操作性を向上することができる。外側シート38の変形自由度が高いことで、手の動作に問題がある人でも外側シート38を操作しやすく、また、指挿入口50に指を挿入し易い。特に、本実施形態においては、外側シート38が構成する袋(外側袋42)と内側シート18が構成する袋(液収容袋14)とが繋がった部分を除き独立して動くため、汎用性が高い開口操作を実現することができる。また、外側シート38が構成する袋42の幅方向寸法が内側シート18が構成する袋14の幅方向寸法に比して大きく、外側シート38が構成する袋42の側縁が内側シート18の外方にあることで、例えば、開口時の内側シート18の開口形状をより円状に近づけることができたり、医療用バッグ10の開口幅を内側袋14より大きい形状にしたりすることができる。すなわち、内外袋14,42の側縁が固着されていると、側縁の剛性が高くなることで、開口断面形状は細長くなり易かったり、操作力を内側シート18に与える外側シート38の変形可能幅と内側シート18の変形可能幅が同じであることで、内側シート18の側方部に自由度高く力を伝えにくかったりするが、内外袋14,42の側縁が別にあることで内側シート18,18同士の側方部を広げ易くすることができる。
更にまた、本実施形態では、スリット50の少なくとも一部がチャック部26よりも上方に設けられていることから、手指の操作力で開口部16の上端をより効率的に大きく開口させることができる。また、チャック部26の剛性を利用して、開かれた開口部16の形状安定性も向上され得る。
かくの如き医療用バッグ10の製造方法は何等限定されるものではないが、具体的な一例を、図4を示して説明する。なお、以下の製造方法の説明において、基本的にシート同士の固着はプレス溶着装置による熱溶着によって行われるが、手作業により行われてもよいし、例えば接着剤による接着によって行われてもよい。
先ず、内側シート18および外側シート38を構成する所定幅で長尺物の樹脂シートを、それぞれロール状に巻いた状態で準備する。また、チャック部26を構成する凸条28aと凹溝28bも、同様に、長尺物をリール状に巻いた状態で準備する。
なお、内側シート18に付される目盛36は、ロール状に巻いた状態で予め印刷されていてもよいし、内側シート18として所定の形状にカットされた後や、液収容袋14が形成された後に印刷されてもよい。同様に、外側シート38に形成されるスリット50や貫通孔48も、ロール状に巻かれた状態や所定形状にカットされた状態、或いは医療用バッグ10が形成された後に設けられてもよい。
そして、内側シート18を構成する樹脂シートがロールから引き出されるとともに、凸条28aを有するシート状部30aと凹溝28bを有するシート状部30bの各一方がリールから引き出されて、重ね合わされる。これらシート状部30a,30bは、内側シート18,18を構成する各樹脂シートに対して、長さ方向で連続して溶着される。
続いて、これら内側シート18,18を相互に重ね合わせて、溶着部20において熱溶着を施すことで液収容袋14を得る。なお、この熱溶着に際して、溶着部20に位置する凸条28aや凹溝28bは、熱による変形とプレス装置による押圧によって押し潰されて実質的に消失する。
また、内側シート18,18の溶着処理の前又は後の工程において、樹脂シートを所定の形状にカットする。なお、貫通孔34も、内側シート18,18の溶着処理の前又は後の工程において形成される。なお、内側シート18,18の溶着時に、ポート部材22を間に挟んだ状態で溶着することで、内側シート18と共にポート部材22が溶着され得る。尤も、内側シート18,18においてポート部材22の固着部分以外を溶着することで、液収容袋14の形成後に、液収容袋14に対してポート部材22を挿入して接着することなども可能である。
一方、外側シート38を構成する樹脂シートをロールから引き出して、液収容袋14を構成する内側シート18,18の両外面に重ね合わせる。
そして、一対の外側シート38,38の間に液収容袋14を挟んだ状態で、液収容袋14を幅方向両側及び下方にそれぞれ外れた位置で、外側シート38,38同士を溶着部40において熱溶着する。
また、内側シート18と外側シート38とを、各上端縁部において熱溶着して固着部44を形成する。これにより、外側袋42の形成と同時に内側袋(液収容袋)14を外側袋42に収容して、医療用バッグ10を得る。
なお、内側シート18と外側シート38との固着部44における熱溶着は、例えば内側シート18,18同士の間に溶着阻止シートを間に挟んだ状態で熱溶着を行うことで、内側シート18,18同士の溶着が回避され得る。
また、上記の外側シート38,38における溶着部40の溶着処理や内側シート18と外側シート38における固着部44の溶着処理の前又は後の工程において、外側シート38,38を形成する樹脂シートを所定の形状にカットして外側袋42とすることができる。
なお、ここに例示した医療用バッグ10の製造工程において、例えば、チャック部26は、凸条28aと凹溝28bとが噛合した状態(チャック部26が閉じた状態)で、内側シート18,18同士の溶着に伴う液収容袋14の形成と同時に、内側シート18,18の各一方に対して溶着されてもよい。
また、本実施形態では、内側シート18と外側シート38とが別体とされていることから、内側袋(液収容袋)14の材質と外側袋42の材質とを各別に選択することができる。これにより、例えば外側袋42の材質としてより強度の大きい材質を選択することができたり、内側袋14の材質としてより耐薬品性の高い材質を選択することなども可能となる。また、シーラント層が外面にある場合、外表面強度が弱くなる傾向にあるが、内側シート18の外表面がシーラント層であっても、外側シート38の外表面をシーラント層とする必要がないので、外側シート38に強度が高いシート材質を用いることで製品外観に傷が付きにくいようにすることができる。各要求性能を両立させた材質は高額化する傾向があるが、各要求性能を内外シート18,38に分けることで安価なシートを採用することができる。また、例えば開口部16を開く方向に大きな操作力が及ぼされやすい内側シート18と外側シート38をそれぞれ好ましい材質に変えることもできる。
医療用バッグ10の製造方法の別の具体例を、図5〜7に例示する。
図4に示された製造方法では、凸条28aが設けられた内側シート18と凹溝28bが設けられた内側シート18とが、別個に形成されていたが、図5に示される製造方法では、両内側シート18,18が一体に連続した単一の内側シート部材60として形成されている。本態様では、両内側シート18,18が下辺を共通して形成されており、内側シート部材60を中央の一点鎖線で折り返して、両側辺部分および下辺部分の溶着部20を溶着することで液収容袋14を形成する。なお、下辺部分の溶着は必須ではない。
また、本態様では、一対の外側シート38,38が、一体に連続した単一の外側シート部材62として形成されており、両外側シート38,38が下辺を共通して形成されている。そして、外側シート部材62を中央の一点鎖線で折り返して、両側辺部分を溶着することで外側袋42を形成する。
なお、液収容袋14に設けられる貫通孔34や、外側袋42に設けられるスリット50および貫通孔48は、適切なタイミングで設けられ得る。
そして、外側袋42の上方開口部から液収容袋14を挿入して、これら液収容袋14と外側袋42とを、外側袋42の上端の固着部44で溶着することで、医療用バッグ10を形成する。
本態様に従う製造方法では、液収容袋14と外側袋42とが、それぞれ各1枚のシート(内側シート部材60および外側シート部材62)で形成されることから、例えば図4に示された製造方法に比べて、部材点数の減少が図られる。
また、図6に示される製造方法では、先ず、チャック部26を構成する凸条28aを有する矩形状シート70aと、チャック部26を構成する凹溝28bを有する矩形状シート70bとを準備する。そして、両矩形状シート70a,70bの周囲を所定の範囲に亘って溶着した後、図6の中央に示されるように、一対の内側シート18,18と一対の外側シート38,38とを一体として有する袋状部材72を切り出す。
すなわち、両矩形状シート70a,70bのそれぞれからは、内側シート18と外側シート38とが一体とされたシート部材74が切り出されるようになっており、表裏のシート部材74,74が相互に溶着されることで袋状部材72が構成されている。なお、シート部材74において、内側シート18と外側シート38とは、それぞれの上辺を共通とするように形成されている。
なお、本態様では、切り出された袋状部材72において、内側シート18,18同士が溶着部20で溶着されており、袋状部材72の下方部分には、液収容袋14が形成されている。一方、内側シート18の上方に位置する外側シート38は、周囲が溶着されていない状態とされている。また、ポート部材22のシート部材74,74への固着や、貫通孔34,46やスリット50の形成は、適切なタイミングで行われ得る。
このような状態から、袋状部材72の両外側シート38,38のそれぞれを、内側シート18,18に対して外面側から重なるように、中央の一点鎖線で対向方向外側に折り返す。そして、外側シート38,38同士を溶着部40で溶着することにより、医療用バッグ10を形成する。
なお、本態様では、シート部材74(袋状部材72)において、内側シート18と外側シート38とが上辺を共通して一体的に繋がって形成されていることから、外側シート38を折り返した後、外側シート38の上端における固着部44において内側シート18と外側シート38とを固着する必要はないが、要求される強度などに応じて固着されてもよい。
さらに、図7に示される製造方法では、先ず、内側シート18と外側シート38とを一体的に備える形状とされた表裏のシート部材80a,80bを準備する。これらのシート部材80a,80bには、チャック部26を構成する凸条28aと凹溝28bの各一方が固着される。なお、本態様では、前記図6の態様と同様に、シート部材80a,80bでは、内側シート18と外側シート38の上辺が共通とされている。
そして、これらシート部材80a,80bを相互に重ね合わせ、内側シート18,18における溶着部20と外側シート38,38における両側辺部分を相互に溶着して、袋状部材82を形成する。この袋状部材82では、シート部材80a,80bの両側辺部分と下辺部分とが溶着されており、袋状部材82の上辺部分は非固着とされている。そして、内側シート18,18において周囲の溶着部20が溶着されることにより、袋状部材82の下方部分には、液収容袋14が形成されている。
なお、ポート部材22のシート部材80a,80bへの固着や、貫通孔34,48やスリット50の形成は、適切なタイミングで行われ得る。
そして、このような袋状部材82を、上方の開口部(非固着部)から手指などを差し入れて、外側シート38,38を上方から捲るように裏返して内側シート18,18の外面側に重ね合わせる。これにより、医療用バッグ10を形成する。なお、この場合、各シート部材80a,80bには片面表面にのみシーラント層があれば加熱溶着により製袋可能であり、製造コストを低減させることができる。
なお、本態様における医療用バッグ10では、外側シート38,38の下辺部分同士が溶着される必要はない。また、前記図6の態様と同様に、シート部材80a,80bにおいて、内側シート18と外側シート38の上辺部分が共通とされて繋がっていることから、内側シート18と外側シート38とは、外側シート38の上端の固着部44で溶着される必要はない。尤も、要求される強度などの特性に応じて、外側シート38,38の下辺部分や、外側シート38の上端の固着部44は、固着されてもよい。なお、外側シート38,38の下辺部分や固着部44の溶着が行われない場合、シート部材80a,80bの外面におけるシーラント層は必要なものではない。さらに、超音波溶着等によりシーラント層を用いずに各シート部材80a,80b同士を固定してもよい。
また、図6,7に示される態様に従う製造方法においても、医療用バッグ10が、それぞれ2枚のシート(矩形状シート70a,70bおよびシート部材80a,80b)により形成されることから、部材点数の減少が図られる。
以下、図8〜13を示して、本発明の第2〜第7の実施形態について説明する。なお、これらの実施形態に記載の医療用バッグの製造方法は、何等限定されるものではない。
図8には、本発明の第2の実施形態としての医療用バッグ90が示されている。以下の実施形態における医療用バッグの基本的な構造は、前記第1の実施形態と同様であることから、以下の説明では、前記実施形態との相違点のみを説明するとともに、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことで詳細な説明を省略する。
本実施形態では、液収容袋92を構成する内側シート94の上端部分において、図8中の右側の端部に、幅方向外方に突出する突出部96が設けられている。本実施形態では、突出部96が略直角三角形状とされており、当該突出部96が設けられることで、内側シート94における上端の辺の長さが長くされている。
また、外側袋98を構成する外側シート100の上端部分において、内側シート94の突出部96と対応する位置には、当該突出部96と対応する形状とされた突出部102が形成されている。
なお、本実施形態では、内側シート94及び/又は外側シート100の上端において、幅方向略中央から上方に突出する突出片104が設けられており、当該突出片104に貫通孔34が形成されている。尤も、突出片104は、図8中右側の端部などに設けられてもよい。また、図8中の左側の端部における外側シート100,100同士の非固着部46は設けられる必要はなく、図8中の左側の端部の上端まで溶着部40が延びていてもよい。
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ90においても、内側シート94と外側シート100とが、外側シート100の上端に設けられた固着部44において溶着されて繋がっていることから、例えば開口部16を漏斗状に拡開することも可能であり、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
特に、本実施形態では、幅方向外方に突出する突出部96,102により開口部16の周縁の長さが長くされることから、開口部16をより大きく開くことができる。
次に、図9には、本発明の第3の実施形態としての医療用バッグ110が示されている。本実施形態では、液収容袋112を構成する内側シート114の上端部分において、図9中の右側の内側シート114,114同士が固定されている一方、図9中の左側の内側シート114,114同士が固定されていない。このため、内側シート114,114が構成する袋(液収容袋112)は、図9中の左側の非固着部32を介して大きく開口させることが可能となっている。また、図9中の左側の端部に凹部116が形成されており、当該凹部116の形成位置において、内側シート114の幅寸法が小さくされている。凹部116は、内側シート114の上端から上下方向略中央まで延びており、内側シート114の凹部116の形成位置における幅寸法が、凹部116よりも下方の部分における幅寸法よりも小さくされている。なお、以下の実施形態において、医療用バッグを吊り下げるための吊り穴は、内側シートや外側シートに形成したり、別途吊り穴を有するシートを貼り付けたりして設けることができる。
また、本実施形態では、外側袋118を構成する外側シート120にも同様の凹部122が形成されており、当該凹部122の形成位置において、外側シート120の幅寸法が小さくされている。凹部122は、内側シート114の凹部116と略対応する位置に形成されており、外側シート120の凹部122の形成位置における幅寸法が、凹部122よりも下方の部分における幅寸法よりも小さくされている。
さらに、本実施形態では、内側シート114の上下寸法が外側シート120の上下寸法よりも大きくされている。特に、本実施形態では、内側シート114と外側シート120との固着部44が、液収容領域12の開口部16において、内側シート114の上端から下方に離隔した位置に設けられている。
これにより、内側シート114の上方部分が外側シート120の上端よりも上方に突出している。また、本実施形態では、スリット50がチャック部26に跨って設けられており、スリット50が、チャック部26の外側に位置している。これにより、スリット50は、内側シート114および外側シート120に設けられた凹部116,122の幅方向内方に設けられている。
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ110においても、内側シート114と外側シート120とが、外側シート120の上端における固着部44で溶着されて繋がっていることから、例えば開口部16を漏斗状に拡開することも可能であり、前記第1の実施形態等と同様の効果が発揮され得る。
次に、図10には、本発明の第4の実施形態としての医療用バッグ130が示されている。本実施形態の医療用バッグ130は、基本的には前記第3の実施形態の医療用バッグ(110)と同様の形状であるが、本実施形態では、外側シート132の下辺部分が、液収容袋112を構成する内側シート114の下辺部分よりも上方に位置している。
具体的には、外側シート132の下辺部分が、内側シート114における凹部116の下端よりも上方に位置している。これにより、外側シート132が、内側シート114において凹部116が形成されて幅寸法が小さくされた部分の外側に設けられている。それ故、本実施形態においても、凹部116の幅方向内方にスリット50が設けられている。
なお、本実施形態では、外側シート132の幅方向両側において、内側シート114を幅方向に外れた部分の下端部分では、外側シート132,132同士がスポット的に熱溶着されている。これにより、表裏の外側シート132,132の両側縁部が相互に繋がっており、液収容袋112の上方部分、特に本実施形態では、凹部116の形成部分を覆う周方向のカバー状とされている。
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ130においても、内側シート114と外側シート132とが、外側シート132の上端に設けられた固着部44において溶着されて繋がっていることから、例えば開口部16を漏斗状に拡開することも可能であり、前記第1の実施形態等と同様の効果が発揮され得る。
次に、図11,12には、本発明の第5、第6の実施形態としての医療用バッグ140,142が示されている。これらの実施形態では、内側シート114の上端部分において、図11,12中の右側の内側シート114,114同士が固定されている一方、図11,12中の左側の内側シート114,114同士が非固定とされている(非固着部32)。さらに、外側シート144,146の上辺が、左右方向に対して傾斜している。具体的には、図11,12中の右方端部において、内側シート114の上端と外側シート144,146の上端とが相互に重ね合わされているとともに、図11,12中の左方端部において、外側シート144,146の上端が、内側シート114の上端から下方に離隔した位置に重ね合わされている。
これにより、これらの実施形態では、外側シート144,146の上端に設けられた固着部148が、前記第1〜第4の実施形態の固着部(44)よりも大きな面積を有する、三角形乃至は台形形状の領域をもって形成されており、内側シート114の上方において、図11,12中の右側にまで操作力が伝わり易くなっている。なお、固着部148の領域内において、適切な位置や形状をもって非固着部を設けて剛性が小さい部分を形成し、固着部148が、当該非固着部を軸に折れ曲がるようにしてもよい。
なお、図11に示される第5の実施形態では、外側シート144の下辺部分が、内側シート114の下辺部分より上方に位置しており、外側シート144,144が、液収容袋112の上方部分を覆うカバー状とされている。一方、図12に示された第6の実施形態では、外側シート146の下辺部分が内側シート114の下辺部分より下方に位置しており、外側シート146,146が、内側袋としての液収容袋112を収容する外袋状とされている。
以上の如き構造とされた医療用バッグ140,142においても、内側シート114と外側シート144,146とが、外側シート144,146の上方部分に設けられた固着部148で溶着されて繋がっていることから、例えば開口部16を漏斗状に拡開することも可能であり、前記第1の実施形態等と同様の効果が発揮され得る。
次に、図13には、本発明の第7の実施形態としての医療用バッグ160が示されている。本実施形態の医療用バッグ160では、両側辺部分と下辺部分とが固着されて上方への開口部16を有する液収容袋162の上方部分が外方へ捲られるように裏返されて内側シート164の外面側に重ね合わされている。したがって、外方へ捲られる液収容袋162の上方部分により表裏の外側シート166,166が構成されている。
なお、上方部分が外方へ捲られる以前の液収容袋162は、その両側辺部分が略全長に亘って固着されており、外方へ捲られた外側シート166,166の両側辺部分も相互に固着されて繋がっている。これにより、外側シート166,166が、液収容袋162の上方部分を覆う周方向のカバー状とされている。
また、本実施形態においても、内側シート164の上方部分において、図13中の左側の端部に凹部116が設けられており、凹部116が設けられて内側シート164において幅寸法が小さくされた部分を、カバー状の外側シート166,166が覆っている。したがって、本実施形態においても、凹部116の幅方向内方にスリット50が設けられている。なお、外側シート166,166における図13中の下方端部が凹部116に当接することで好ましい裏返し位置を規定してもよい。また、裏返した後に両外面からプレスをかけたり、内側シート164と外側シート166との繋がり部分を加熱等行い、固着部を追加で設けてもよい。
以上の如き構造とされた医療用バッグ160においても、内側シート164の上方部分を外方に捲り裏返すことで外側シート166が構成されることから、内側シート164の上端と外側シート166の上端とが相互に繋がっている。そして、スリット50に手指を差し入れて開くことで、例えば開口部16を漏斗状に開口することも可能であるから、前記第1の実施形態等と同様の効果が発揮され得る。
なお、例えば内側シート164の上端と外側シート166の上端とは、要求される強度等の特性に応じて、相互に固着されてもよい。また、幅方向に連続して固着されることが好ましいが、幅方向に複数のポイントシールを設けてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述の実施形態や解決手段の欄における具体的乃至は限定的な記載によって制限的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、前記実施形態では、指挿入口を構成するスリット50が、上下方向に対して傾斜して延びていたが、上下方向に真っ直ぐ延びていてもよく、また、直線状に延びる必要はなく、波形状であったり、適切な幅寸法を有していてもよい。更にまた、指挿入口はスリット以外のどのような手段で形成されてもよく、あるいは、特許第6088111号公報に記載されているように、外側シートに切片を設けて、当該切片を外側シートと内側シートとの間に折り返したり、切り欠きを形成したりすることで、手指を挿入するための指挿入口が形成されてもよい。また、特許第6088111号公報の図18のように、指挿入領域52が、外側シートと内側シートとの間で非固着とされた部分を通じて側方に開口する場合には、当該非固着とされた部分により指挿入口が構成されてもよい。
さらに、本発明において、外側シートや内側シートの形状は何等限定されるものではない。外側シートおよび内側シートの上下辺部分や両側辺部分は、水平方向や上下方向に対して傾斜したり湾曲していてもよい。また、外側シートの幅寸法は、上下方向の全長に亘って内側シートの幅寸法より大きくされる必要はなく、外側シートは、上下方向の少なくとも一部が内側シートよりも幅方向外方に突出して、当該突出部分において、表裏の外側シートが相互に繋がっていてもよい。
また、前記図5に示される製造方法では、内側シート部材60および外側シート部材62において、内側シート18,18同士、および外側シート38,38同士がそれぞれ下辺部分を共通として繋がっていた。さらに、図6,7に示される製造方法では、シート部材74,80a,80bにおいて、内側シート18と外側シート38とがそれぞれ上辺部分を共通として繋がっていたが、これらのようにシート同士が繋がっている場合、上辺部分や下辺部分に代えて、側辺部分同士が繋がっていてもよい。
更にまた、前記実施形態では、外側シート38,100,120,132,144,146,166が、その上端において内側シート18,94,114,164に繋がっていたが、外側シートが内側シートに固着される場合、外側シートの上端から下方に離隔した位置に固着部が設けられてもよく、固着部が設けられる部分は、外側シートの上端に限定されるものではない。
なお、例えば前記第1〜第4の実施形態において、固着部44は、外側シート38,100,120,132の上端に加えて、手指の挿入が想定される部分よりも手指の挿入方向奥側(例えば図1中の右側)まで、例えば略三角形状や略台形状に広がっていてもよい。尤も、固着部はチャック部を上方に外れた位置に設けられることが好ましい。これにより、例えば外側シートと内側シートとを溶着する場合には、溶着による熱でチャック部が変形することが防止され得る。