以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,2には、本発明の第1の実施形態としての医療用バッグ10が示されている。この医療用バッグ10は袋状とされており、内部には、液状体が収容される収容領域12が形成されている。そして、かかる収容領域12に、栄養液や薬液、輸液などが収容されることで、医療用バッグ10が、栄養剤補給用バッグや輸液バッグとして利用されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、使用時に略鉛直方向とされる図1,2中の上下方向をいう。
より詳細には、医療用バッグ10は、図3にも示されているように、正面側に位置する表面側シートとしての第1のシート14と背面側に位置する裏面側シートとしての第2のシート16が相互に重ね合わされることで構成されており、これら両シート14,16の重ね合わせ面間に収容領域12が形成されている。すなわち、これら第1のシート14と第2のシート16のそれぞれにより本体シートが構成されている。
第1のシート14および第2のシート16は、軟質の合成樹脂により形成された薄肉の部材とされており、有色または無色の透明とされている。尤も、第1および第2のシート14,16を不透明にすることも可能であるが、収容領域12における液体量を外部から視認できるように透明部分が設けられることが望ましい。また、本実施形態では、両シート14,16が相互に同形状とされて、且つ同じ材質で形成されており、それ故、同じ部材を使用することが可能となっている。これら第1および第2のシート14,16は、それぞれ上下方向が長手方向とされる縦長の略矩形状とされている。特に、本実施形態では、第1および第2のシート14,16が、上下方向の略全長に亘って略一定の幅方向寸法をもってストレートに延びている。
また、本実施形態では、第1および第2のシート14,16の上端において、幅方向中央部分から上方に突出する吊下部18が設けられており、吊下部18の中央には、円形の係止孔20が形成されている。かかる係止孔20に対して、スタンドなどから延びるフックなどが挿通されることで、医療用バッグ10をスタンドなどに吊り下げることができるようになっており、係止孔20をバッグ吊下用として利用することができる。なお、かかる吊下部18(係止孔20)は、第1および第2のシート14,16の何れか一方だけに設けられてもよいし、形成位置も、第1および第2のシート14,16の上端における幅方向中央部分に限定されるものではない。また、本実施形態では、これら吊下部18,18が、第1および第2のシート14,16に一体形成されているが、別体として形成されて後固着されてもよい。
そして、かかる第1のシート14と第2のシート16とが相互に重ね合わされて、下辺部分と幅方向両側辺部分とにおいて互いに固着されている。これにより、第1のシート14と第2のシート16との重ね合わせ面間に縦長形状の収容領域12が形成されており、当該収容領域12が上方に開口している。すなわち、第1および第2のシート14,16において互いに溶着されていない上端縁(上辺部分)が、収容領域12の開口部22とされている。
ここで、本実施形態では、収容領域12における開口部22に近い位置において、第1のシート14と第2のシート16の重ね合わせ面間を幅方向の略全長に亘って延びるプラスチックファスナー24が設けられている。そして、このプラスチックファスナー24の開閉操作に伴い、収容領域12の開口部22が開閉可能とされている。
すなわち、第1のシート14における上側部分の内面には、プラスチックファスナー24を構成する凸条24aが設けられている一方、第2のシート16における上側部分の内面には、プラスチックファスナー24を構成する凹溝24bが設けられており、これら凸条24aおよび凹溝24bが相互に噛合することでプラスチックファスナー24および開口部22が閉状態とされるようになっている。本実施形態では、これら凸条24aおよび凹溝24bが、第1のシート14および第2のシート16の上端から所定距離だけ下方に離隔した位置を幅方向に延びて設けられている。なお、これら凸条24aや凹溝24bは、第1および第2のシート14,16において、相互に反対に設けられてもよい。
特に、本実施形態では、凸条および凹溝24a,24bが、第1および第2のシート14,16に対して別部材とされて後固着されている。即ち、これら凸条および凹溝24a,24bは、幅方向両側(上下方向両側)に延び出すシート状部26を一体的に備えており、上下のシート状部26において第1および第2のシート14,16に固着されている。また、凸条および凹溝24a,24bの変形剛性は、第1および第2のシート14,16よりも大きいことが好ましいが、何等限定されるものではなく、かかる凸条24aや凹溝24bが第1のシート14および第2のシート16に設けられることで、第1および第2のシート14,16における凸条および凹溝24a,24bの配設位置の変形剛性が向上される。
また、本実施形態では、第1のシート14と第2のシート16との固定が、熱溶着(ヒートシール)により行われている。すなわち、第1のシート14と第2のシート16において、外周縁部における下辺部分と幅方向両側辺部分には、所定の幅寸法をもって連続して延びる溶着部28が設けられている。尤も、第1のシート14と第2のシート16との固定手段は、熱溶着に限定されるものではなく、熱以外の超音波などを利用した溶着であってもよいし、例えば接着など、従来公知の固着手段などにより固定され得る。
すなわち、これら第1のシート14や第2のシート16などは、熱溶着が可能とされたシーラント層が設けられた構造とされており、溶着される面の略全面に亘ってシーラント層が設けられている。本実施形態では、第1のシート14の内外両面、第2のシート16の内外両面、後述する第3および第4のシート32,34の内面、および凸条および凹溝24a,24bに設けられるシート状部26の外面にシーラント層が設けられている。尤も、第1のシート14や第2のシート16などを構成する材質は、強度(柔軟性)や耐蝕性、ガスバリア性、透明性、印刷対応性等、要求される特性などに応じて適宜選択されて積層され得るものであり、何等限定されるものではない。
さらに、これら第1のシート14と第2のシート16の重ね合わせ面間において、下辺部分には、硬質の合成樹脂からなる略筒状のポート部材30が配されて固着されている。なお、当該ポート部材30の固着方法は何等限定されるものではないが、例えば上記の如き第1のシート14と第2のシート16との熱溶着が、ポート部材30の配設箇所を除いた位置で行われた後に、ポート部材30を所定位置に配設して、溶着や接着により固着されてもよい。あるいは、第1のシート14と第2のシート16との間にポート部材30を挟んだ状態で熱溶着が行われることで、第1のシート14と第2のシート16の固着と同時にポート部材30が固着されてもよい。かかるポート部材30は、収容領域12の内外を連通しており、当該ポート部材30に接続される図示しないカテーテルなどを通じて、収容領域12に収容された液状体が患者の体内に注入されるようになっている。
なお、ポート部材30は、カテーテル等の外部流路を収容領域12に連通接続し得るものであれば良く、限定されない。また、外部流路を構成するカテーテルの一方の端部を第1のシート14と第2のシート16との間に挟んで固着して、或いは一方のシートを貫通するように固着して、収容領域12へ直接に連通させてもよい。
ここにおいて、第1のシート14および第2のシート16の外面には、これら第1および第2のシート14,16とは別体とされた第3のシート32および第4のシート34が重ね合わされて固着されている。すなわち、本実施形態では、第3のシート32および第4のシート34のそれぞれにより、本体シート(第1のシート14および第2のシート16)の外面に配される外側シートが構成されている。
これら第3および第4のシート32,34は、本実施形態では、第1および第2のシート14,16と略等しい形状とされているとともに、同じ材質で形成されている。特に、第3および第4のシート32,34にも、吊下部18および係止孔20を設けることで、第1、第2、第3および第4のシート14,16,32,34として同じ部材を用いることも可能である。なお、第3および第4のシートは、第1および第2のシートに対して、要求される特性などに応じて形状や材質を異ならせることが可能であるし、また、第3のシートと第4のシートについても形状や材質を相互に異ならせてもよい。
ここで、第3のシート32は、第1のシート14と略同形状とされていることから、第1のシート14の外面に対して略全面に亘って重ね合わされている。そして、本実施形態では、第1のシート14と第3のシート32とが、それらの外周辺部において上辺部分、下辺部分、および幅方向両側辺部分、即ち周囲の4辺に対して、全周に亘って連続的に又は不連続で部分的に固着されている一方、外周辺部を除く中央部分は固着されずに非固着状態で重ね合わされている。
同様に、第4のシート34は、第2のシート16と略同形状とされていることから、第2のシート16の外面に対して略全面に亘って重ね合わされている。そして、第2のシート16と第4のシート34とが、外周辺部における周囲の4辺に対して、全周に亘って連続的に又は不連続で部分的に固着されている一方、外周辺部を除く中央部分は固着されずに重ね合わされている。
なお、第1のシート14と第2のシート16との固着手段だけでなく、第1のシート14と第3のシート32、および第2のシート16と第4のシート34との固着手段は、何れも限定されるものではなく、熱溶着や超音波溶着などの溶着や接着など、従来公知の固着手段が何れも採用され得る。また、本実施形態では、第1〜4のシート14,16,32,34の相互の固着が、例えば同時の熱溶着等によって行われることで、各シート14,16,32,34の溶着部の幅寸法(固着代)が同じとされているが、互いに異なっていても良い。
そして、これら第3および第4のシート32,34における上側部分には、後述する手指44を挿し入れる挿入孔40(後述)となる挿入スリット36が、第3および第4のシート32,34を貫通して形成されている。この挿入スリット36は、第3及び第4のシート32,34の上端及び下端からそれぞれ離れた位置で所定の寸法(例えば、第3および第4のシート32,34の略半分または半分以下)をもって上下方向に延びており、第3および第4のシート32,34の下辺部分よりも上辺部分に近い位置、本実施形態では、第3および第4のシート32,34の略上半分に設けられている。
また、本実施形態では、一対の挿入スリット36,36が設けられており、これら一対の挿入スリット36,36が、第3および第4のシート32,34の幅方向両側辺部分から幅方向中央へ離れた位置において、所定の幅方向の相互離隔距離をもって略平行に設けられている。特に、本実施形態では、第3のシート32に設けられる挿入スリット36,36と、第4のシート34に設けられる挿入スリット36,36とが、医療用バッグ10(第3および第4のシート32,34)の表裏で略同じ位置に略同じ大きさで形成されている。
これにより、医療用バッグ10に対して横方向の両側から、即ち図1中の右側の挿入スリット36(それと同時に図2中の左側の挿入スリット36)に対しても、図1中の左側の挿入スリット36(それと同時に図2中の右側の挿入スリット36)に対しても後述する手指44を挿し入れることができるようになっている。これらの挿入スリット36は、第3および第4のシート32,34の上端から所定距離だけ下方に位置した部分から下方に延び出しており、第1および第2のシート14,16間に設けられたプラスチックファスナー24を跨いで形成されている。すなわち、プラスチックファスナー24の外側(図1,2中の紙面手前奥方向両側)に挿入スリット36が形成されている。
さらに、かかる第3および第4のシート32,34において幅方向で対向する一対の挿入スリット36,36が設けられることで、これら挿入スリット36,36の幅方向間において、第1のシート14と第3のシート32との間、および第2のシート16と第4のシート34との間には、幅方向で貫通する挿入部38が形成されている。すなわち、本実施形態では、かかる挿入部38が、医療用バッグ10における第1および第2のシート14,16側、即ち医療用バッグ10の表裏両側に設けられている。そして、当該挿入部38における幅方向両側の開口部が、第1のシート14と第3のシート32、または第2のシート16と第4のシート34との間において実質的に手指44が挿入される挿入孔40,40とされており、当該挿入孔40が挿入スリット36を含んで構成されている。本実施形態では、挿入スリット36がプラスチックファスナー24を上下に跨いで形成されていることから、挿入部38もプラスチックファスナー24を上下に跨いで設けられており、プラスチックファスナー24の外側に挿入部38が位置している。
更にまた、本実施形態では、第3のシート32に目盛り42が付されており、特に本実施形態では、第3のシート32の外面に対して目盛り42が印刷されている。これにより、収容領域12に収容された液状体の収容量が、外部から目視で把握できるようになっている。尤も、かかる目盛り42は、外部から目視できる限り、第3のシート32の外面に代えて、または加えて、第3のシート32の内面に付されてもよいし、第1や第2、第4のシート14,16,34に付されてもよい。
ところで、このような医療用バッグ10の製造方法は、何等限定されるものではないが、医療用バッグ10の製造方法の具体的な1例を以下に説明する。
先ず、第1のシート14や第2のシート16、第3のシート32や第4のシート34等を、予め目的とする形状をもって準備するようにしても良いが、好適には、所定幅で長尺物の樹脂シートをロール状に巻いた状態で、第1、第2、第3および第4のシート14,16,32,34をそれぞれ準備する。なお、第1、第2、第3および第4のシート14,16,32,34として同じ部材を使用することも可能であることから、かかる場合には、第1、第2、第3および第4のシート14,16,32,34をロール状に巻いた部材として、同一の部材が使用されて、第3および第4のシート32,34を第1および第2のシート14,16に固着した後に、挿入スリット36,36や目盛り42が形成されるようにしてもよい。また、プラスチックファスナー24を構成する凸条24aと凹溝24bも、同様に、長尺物をリール状に巻いた状態で準備する。
そして、樹脂シートを熱溶着するためのプレス溶着装置のプレス溶着エリアに対して、第1のシート14の樹脂シートと、第2のシート16の樹脂シートと、第3のシート32の樹脂シートと、第4のシート34の樹脂シートとを、それぞれロールから引き出して、それら各シート14,16,32,34を導き入れる。なお、プレス溶着エリアに至るまでの前加工エリアにおいて、第3および第4のシート32,34に対して、挿入スリット36,36が形成されるとともに、第1〜4のシート14,16,32,34に対して、目盛り42などの必要な印刷を行う。本実施形態では、挿入スリット36の幅方向寸法が略0とされているが、挿入スリット36は、所定の幅方向寸法で開口していてもよい。
また、第1および第2のシート14,16には、両シート14,16のプレス溶着エリアに至るまでの準備エリアとしてのファスナー溶着エリアにおいて、プラスチックファスナー24を構成する凸条24aと凹溝24bの各一方がリールから引き出されて、重ね合わされる。そして、これら凸条24aと凹溝24bは、第1のシート14の樹脂シートと第2のシート16の樹脂シートとに対して、長さ方向で連続して溶着される。なお、かかる溶着は、公知のとおり、凸条24aや凹溝24bから幅方向両側に張り出して一体的に備えるシート状部26において、第1のシート14の樹脂シートや第2のシート16の樹脂シートに対して長さ方向で直線状に連続的に溶着することで、凸条24aや凹溝24bの開閉機能部分への熱影響を避けることができる。なお、凸条24aや凹溝24bから幅方向両側に張り出して一体的に備えるシート状部26は、変形剛性が比較的大きいシート材質により形成されることが好ましい。
このように、予め重ね合わせ面に対してプラスチックファスナー24を構成する凸条24aと凹溝24bの各一方が固着されて、プレス溶着エリアに導き入れられた第1のシート14の樹脂シートと第2のシート16の樹脂シートと、更に第3のシート32の樹脂シートと第4のシート34の樹脂シートは、互いに重ね合わされた状態で、医療用バッグ10における上辺部分と下辺部分、および幅方向両側辺部分に対して溶着型が押し付けられてプレス溶着される。これにより、第1のシート14と第3のシート32、および第2のシート16と第4のシート34とは周囲の4辺で溶着される一方、第1のシート14と第2のシート16とは、開口部22である上辺部分を除く周囲の3辺が溶着される。
なお、その際、第1および第2のシート14,16における上辺部分の溶着を回避するために、例えば溶着阻止シートを第1および第2のシート14,16の上辺部分間に挟み入れた状態でプレス溶着が実行される。また、このプレス溶着に際して、溶着部28に位置する凸条24aや凹溝24bは、熱変形して押しつぶされて実質的に消失する。
その後、プレス溶着エリアから送り出された重ね合わせシート状の溶着体は、カッティングエリアに導き入れられ、プレスカッタによって、目的とする医療用バッグ10の平面形状で打ち抜き切断される。これにより、幅方向両側辺部分と下辺部分とが一体的に固着された第1および第2のシート14,16の重ね合わせ面間に、プラスチックファスナー24で開閉可能とされた上方への開口部22を備えた収容領域12が形成される。それとともに、第1のシート14と第2のシート16の外面に、第3のシート32と第4のシート34が、周囲の4方が固着された状態で重ね合わされる。
なお、前述の第3および第4のシート32,34に対する挿入スリット36の形成や、外面への印刷は、上述の如きプレス溶着工程の後に行うことも可能である。また、ポート部材30は、前述のように、プレス溶着工程において、第1および第2のシート14,16間にポート部材30を挟み入れた状態で、ポート部材30に応じた凹みのある溶着型を用いてプレス溶着することで、第1〜第4のシート14,16,32,34のプレス溶着と同時にポート部材30も溶着することができる。或いは、ポート部材30の固着部分だけ溶着せずに残した状態で、第1〜第4のシート14,16,32,34を溶着した後、ポート部材30を挿し入れて別工程で溶着したり、接着固定するようにしても良い。
以上、本実施形態の医療用バッグ10の製造工程を例示したが、前述したように上述の製造工程によって限定的に解釈されるものでない。例えば、プラスチックファスナー24は、凸条24aと凹溝24bとが噛合した状態(プラスチックファスナー24が閉じた状態)で、第1のシート14と第2のシート16のプレス溶着エリアに送り込まれて、プレス溶着と同時に、それら両シート14,16の各一方に対して溶着することも可能である。また、上述の説明では、第1〜第4のシート14,16,32,34がそれぞれ同時に熱溶着により固着される態様を示したが、固着手段は熱溶着に限定されるものではない。さらに、第1〜第4のシート14,16,32,34は、同時に固着される必要もなく、例えば第1〜第4のシート14,16,32,34が順次に固着されてもよい。
上述の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ10は、図4に示されるように、表裏両側(第1および第2のシート14,16側)に設けられた挿入部38における一方の挿入孔40に対して横方から手指44を挿し入れることで把持することができる。なお、図4では、右利きの使用者を想定して、左手で医療用バッグ10を把持する状態が図示されており、表裏の挿入部38,38に対して図1中の左側(図2中の右側)の挿入孔40から手指44が挿し入れられて、反対側の挿入孔40から手指44の先端が突出しているが、左利きの使用者の場合には、反対方向から手指44が挿し入れられてもよい。また、図4では、表面側(第1のシート14側)に設けられた挿入部38に親指が挿し入れられるとともに、裏面側(第2のシート16側)に設けられた挿入部38に親指を除く4本の手指44が挿し入れられている状態が図示されているが、表裏両側の挿入部38,38に手指44が挿し入れられるのであれば、挿入部38(挿入孔40)に挿し入れられる手指の種類や本数等は限定されるものではない。
このように表裏両側の挿入部38,38に手指44を挿し入れた状態で、これらの手指44を相互に離隔させる(開口部22の開操作を行う)ことで、第1のシート14と第2のシート16とが相互に離隔して、開口部22が、より確実に開口状態に保持される。これにより、開口部22を通じて、収容領域12内に液状体を注入することができて、ポート部材30および当該ポート部材30に接続されるカテーテルなどを通じて体内に液状体が投与され得る。なお、挿入部38,38に挿し入れた手指44を相互に離隔させて開口部22の開操作を行う際には、予めプラスチックファスナー24の凸条24aと凹溝24bとの噛合が解除されていることが望ましいが、限定されるものでない。
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ10では、第3および第4のシート32,34が第1および第2のシート14,16に対して中央部分を除く外周辺部の4辺で固着されており、特に、第3および第4のシート32,34の幅方向両側辺部分と下辺部分は、第1のシート14と第2のシート16との溶着部28に重ね合わされて固着されている。すなわち、第3および第4のシート32,34における幅方向両側辺部分と下辺部分は、実質的に第1および第2のシート14,16の2枚分のシート厚さとされた部分に固着されていることから、第3および第4のシート32,34における固着部分の強度を確保することができて、耐久性の向上が図られる。
また、第3および第4のシート32,34の固着部分が、第1および第2のシート14,16における中央部分でなく外周辺部であることから、挿入部38に手指44を挿し入れて収容領域12の開口部22を拡開させる際にも、例えば第1および第2のシート14,16の中央部分が引っ張られたりすることがなく、歪な変形が発生したり局所的に強度が小さくなることなども回避され得る。
更にまた、第1および第2のシート14,16には、開口部22近くの内面にプラスチックファスナー24を構成する凸条24aと凹溝24bの各一方が固着されて変形強度乃至は変形弾性が大きくされていることから、開口状態に変形させた状態での開口形状への保持がより安定して実現可能となっている。
さらに、本実施形態では、製造段階において第1、第2、第3および第4のシート14,16,32,34として同じ部材を使用することも可能であり、複数の異なる部材を製造するなどの手間やコストを削減することも可能となる。
次に、図5,6には、本発明の第2の実施形態としての医療用バッグ50が示されている。本実施形態の医療用バッグ50においても、図7に示されているように、2枚の本体シートとしての第1のシート14と第2のシート16と、これら第1および第2のシート14,16の外面に配される外側シートとしての第3のシート52と第4のシート54とを備えている。なお、第1および第2のシート14,16は、前記第1の実施形態と同様の構造とされているとともに、本実施形態においても、第3および第4のシート52,54の形状が第1および第2のシート14,16と略等しくされている。また、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態の第3および第4のシート52,54における上下方向中間部分には、略幅方向(図5,6中の左右方向)に直線状に延びる開口スリット56が設けられており、当該開口スリット56が、第3および第4のシート52,54を貫通して形成されている。なお、本実施形態の第3および第4のシート52,54には、前記第1の実施形態と同様に、上方部分に、一対の挿入スリット36,36が形成されているとともに、当該挿入スリット36,36よりも下方に離れた位置に開口スリット56が形成されている。また、第3のシート52の外面において、当該開口スリット56よりも下方には、目盛り42が付されている。
かかる第3のシート52が、前記第1の実施形態と同様に、第1のシート14の外面に対して略全面に亘って重ね合わされて、中央部分を除く外周辺部の周囲の4辺において固着されている。これにより、第1のシート14と第3のシート52との間には閉状空間が形成されており、当該閉状空間が、第3のシート52を貫通する開口スリット56を通じて外部空間と連通している。これにより、第1のシート14と第3のシート52との間には、開口スリット56を上部の開口とするポケット部58が形成されている。また、同様に、第4のシート54が、第2のシート16の外面に対して略全面に亘って重ね合わされて周囲の4辺が固着されており、第2のシート16と第4のシート54との間にも、開口スリット56を上部の開口とするポケット部58が形成されている。すなわち、本実施形態では、医療用バッグ50における表裏両側(第1および第2のシート14,16の外方)に外部に開口して任意の物を差し入れたりすることができるポケット部58が形成されている。
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ50においても、手指(44)が挿し入れられる挿入部38を有する第3および第4のシート52,54が、前記第1の実施形態と同様に、第1および第2のシート14,16の中央部分には固着されないで設けられることから、第1および第2のシート14,16の中央部分の耐久性の低下を回避しつつ開口部を開状態へ容易に保持することができるなどといった、第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、医療用バッグ50の外部にポケット部58が設けられることから、当該ポケット部58に、医療用バッグ50を用いた薬液の投与などに付加的に必要となるシリンジなどの部材を収容することができる。
次に、図8,9には、本発明の第3の実施形態としての医療用バッグ60が示されている。本実施形態の医療用バッグ60においても、図10に示されているように、2枚の本体シートとしての第1のシート14と第2のシート16と、これら第1および第2のシート14,16の外面に配される外側シートとしての第3のシート62と第4のシート64とを備えている。なお、本実施形態では、第3および第4のシート62,64の形状が、第1および第2のシート14,16に対して異ならされている。特に、本実施形態では、第3および第4のシート62,64の幅方向寸法が第1および第2のシート14,16と略等しくされているとともに、第3および第4のシート62,64の上下方向寸法が第1および第2のシート14,16よりも小さく、略半分程度とされている。
また、本実施形態では、第3および第4のシート62,64が、第1および第2のシート14,16に対して、その上辺部分と幅方向両側辺部分で固着されている。すなわち、本実施形態では、第3および第4のシート62,64が、第1および第2のシート14,16の略上半分に溶着されている。したがって、本実施形態では、第1および第2のシート14,16の略下半分は外部に露出しており、特に本実施形態では、外部に露出した第1のシート14の略下半分に付された目盛り42が直接に外部から視認可能とされている。一方、第3および第4のシート62,64の下辺部分は、第1および第2のシート14,16の上下方向中間部分に対して固着されておらず、第1のシート14と第3のシート62との間の空間、および第2のシート16と第4のシート64との間の空間が下方に開口している。
そして、かかる第3および第4のシート62,64には、当該第3および第4のシート62,64よりも上下方向寸法が小さくされた挿入スリット36,36が設けられることから、本実施形態においても、第1および第2のシート14,16における下辺部分よりも上辺部分に近い位置に挿入スリット36,36が設けられることとなる。
このような本実施形態においても、第1および第2のシート14,16の中央部分の耐久性の低下を回避しつつ開口部を開状態へ容易に保持することができるなどといった、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。
特に、本実施形態では、第3および第4のシート62,64の下辺部分が、第1および第2のシート14,16の上下方向中間部分に固着されていないことから、第3および第4のシート62,64の変形自由度が一層大きくされ得て、挿入部38に手指(44)を挿入して、開口部22を開口状態に維持した際にも、第1および第2のシート14,16への変形や拘束力の作用がより効果的に回避され得る。また、第1のシート14と第3のシート62との間の空間、および第2のシート16と第4のシート64との間の空間が下方に開口していることから、挿入スリット36を通じて、これらの空間に異物が入り込んだ場合でも容易に排除することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、前記実施形態では、第1のシート14および第2のシート16が、予め凸条24aおよび凹溝24bが固着された状態で製造されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、表面側シートと裏面側シートとの熱溶着に際して、表面側シートと裏面側シートとの間に凸条および凹溝(または凹溝を構成する凸部)を相互に噛合した状態で挟み込んで熱溶着を行うことにより、表面側シートと裏面側シートの固着と同時に、表面側シートと凸条との固着および裏面側シートと凹溝との固着を行うことも可能である。
なお、前記実施形態では、第1のシート14および第2のシート16に対して、別体とされた凸条24aおよび凹溝24bが固着されていたが、これらは一体的に形成されてもよい。すなわち、表面側シートおよび裏面側シートが部分的に厚肉とされたり薄肉とされることで、プラスチックファスナーを構成する凸条や凹溝が形成されてもよい。
また、前記実施形態では、収容領域12の開口部22を開閉可能とする部材としてプラスチックファスナー24が採用されていたが、プラスチックファスナーに代えて、または加えて、面状に広がる面ファスナーや点状の凹凸などが採用されて、これらを閉状態とすることで収容領域の開口部が閉鎖されるようになっていてもよい。尤も、本発明において、収容領域の開口部を開閉可能とする部材は必須なものではないが、収容領域の開口部を閉状態とすることで液状体内への落下菌の混入が防止され得る。
更にまた、前記実施形態では、プラスチックファスナー24の外側に挿入スリット36(挿入孔40)、即ち挿入部38が設けられていたが、挿入部はプラスチックファスナーを上下方向で外れた位置に形成されてもよく、例えばプラスチックファスナーを下方に外れた位置に挿入部が設けられていてもよい。
さらに、前記実施形態では、第1のシート14および第2のシート16が、略同じ形状、且つ同じ材質で形成されていたが、2枚の本体シートは相互に異なる形状とされてもよいし、相互に異なる材質で形成されてもよい。すなわち、これら本体シートで構成される医療用バッグおよび収容領域の形状は何等限定されるものではない。更にまた、本体シートは、部分的に異なる材質で形成されてもよく、例えば部分的に変形剛性が大きくされたり小さくされてもよい。同様に、外側シートなども部分的に異なる材質で形成されてもよい。すなわち、医療用バッグを構成する各シートは、単一の層で形成されるものに限定されず、例えば基材層の表面側および/または裏面側に印刷層や溶着層(シーラント層)が積層されるなどしてもよく、備えさせたい機能に従って積層した構造とされてもよい。
また、前記実施形態では、シートなどの固着が熱溶着により行われていたが、熱溶着以外の溶着や接着など、従来公知の固着手段が何れも採用され得る。
なお、前記実施形態では、吊下部18(係止孔20)やポート部材30が、第1および第2のシート14,16の幅方向中央部分に設けられており、医療用バッグ10,50,60がスタンドに吊り下げられた際に下方に真っ直ぐ延びるようになっていた。また、これにより、第3のシート32,52,62に付される目盛り42を構成する直線なども、医療用バッグ10,50,60が真っ直ぐ吊り下げられた際に見やすいように幅方向に延びていたが、かかる態様に限定されない。すなわち、係止孔は、本体シートの上端部分において幅方向一方に設けられるとともに、ポート部材が、本体シートの下端部分において幅方向他方に設けられてもよい。これにより、医療用バッグは、スタンドに、上下方向に対して傾斜して吊り下げられ得る。かかる場合には、目盛りを構成する直線などは、見やすいように、医療用バッグの吊下方向に対応して、幅方向に対して傾斜して延びていてもよい。
更にまた、前記実施形態では、手指44を挿入する挿入孔40(挿入スリット36)が幅方向で対向して一対設けられて、横方の両方向から手指が挿し入れられるようになっていたが、挿入孔は、少なくとも1つ設けられればよい。例えば挿入孔が1つしか設けられない場合、手指は、横方のうちの一方向からしか挿し入れられないようになっていてもよいし、例えば前記実施形態において、挿入スリット(挿入孔)が外側シートの幅方向中央部分に形成されることで、横方の両方向から手指が挿し入れられるようになっていてもよい。
また、前記実施形態では、利き手の違いも考慮して、挿入部38への指先の挿し入れ口とされる挿入孔40が左右一対設けられていたが、左右の何れか一方の側だけに挿入部が開口されて、挿入部に挿し入れられた手指の先端が挿入部内に留まる態様でもよい。尤も、挿入孔(挿入スリット)が左右一対設けられる場合であっても、手指の先端は、他方の挿入孔(挿入スリット)から突出することなく、外側シートにより外側から覆われて挿入部内に留まってもよい。
また、収容領域の開口部を安定的に開状態とするための手段として、医療用バッグの外面(即ち、例えば外側シートの外面)に、手指で引っ張ることが可能とされる引張タブが設けられてもよい。すなわち、一方の手指(例えば、前記実施形態では左手の手指)で医療用バッグの開口部を把持しつつ、他方の手指(例えば、右手の手指)で引張タブを引っ張ることで、医療用バッグの開口部を大きく開口させることができる。かかる引張タブは医療用バッグに対して別途形成されて後固着されてもよいし、他方の手指側の挿入部に手指を挿入して引っ張ってもよい(即ち、引張タブが挿入部により構成されてもよい)し、吊下部を摘まんで引っ張ってもよい(即ち、引張タブが吊下部により構成されてもよい)。
更にまた、本体シートと外側シートとは略全面に亘って重なり合った状態で固着されてもよいが、例えば本体シートに対して外側シートが上下方向または幅方向で湾曲して弛んだ状態で固着されてもよい。
さらに、挿入部や挿入孔の数は何等限定されるものではない。例えば、上下方向に延びる挿入スリットを上下方向で複数設けて、挿入孔を、挿入予定の手指の数だけ上下方向に形成してもよいし、挿入部の内部において本体シートと内面シートとを上下方向の複数箇所で固着して、挿入部を、挿入予定の手指の数だけ上下方向に仕切るようにしてもよい。
また、前記実施形態では、第3のシート32,52,62と第4のシート34,54,64が何れも相互に同じ形状とされていたが、例えば一方の外側シートとして前記第1や第2の実施形態の外側シート(第3のシート32,52または第4のシート34,54)が採用されるとともに、他方の外側のシートとして前記第3の実施形態の外側シート(第3のシート62や第4のシート64)が採用されてもよい。あるいは、前記第2の実施形態では、第3および第4のシート52,54に開口スリット56,56が設けられて、医療用バッグ50の表裏両側にポケット部58,58が設けられていたが、第3のシートと第4のシートの何れか一方は、開口スリットを有さない第1の実施形態の形状や第3の実施形態の形状とされてもよく、ポケット部は、医療用バッグの表裏両側のうちの何れか一方に設けられるだけでもよい。また、2枚の外側シート(第3のシートおよび第4のシート)は、2枚の本体シート(第1のシートおよび第2のシート)の下辺より下方に延び出して、それら2枚の外側シートの下辺部分が、2枚の本体シートに重ね合わされることなく、相互に固定されてもよい。このようにすることで、2枚の外側シートに付加される開口操作力を、2枚の外側シートの上辺を介して2枚の本体シートの開口部に効率よく伝達させることができる。なお、この場合、2枚の外側シートは、2枚の本体シートの両側辺部分より幅方向外方に延び出して、それら2枚の外側シートの両側辺部分が、2枚の本体シートに重ね合わされることなく、相互に固定されてもよい。また、前記実施形態において、第3のシート32,52,62および第4のシート34,54,64の幅方向両側辺部分を、第1のシート14および第2のシート16よりも幅方向外方に大きく延び出させて、第1のシート14および第2のシート16へ固定することなく、かかる第3のシート32,52,62および第4のシート34,54,64の幅方向両側辺部分同士を相互に固定しても良い。
さらに、前記実施形態では、挿入スリット36が上下方向に直線状に延びていたが、全体的に上下方向に延びていれば、上下方向に対して傾斜していてもよいし、湾曲や屈曲していてもよい。更にまた、前記実施形態では、開口スリット56が幅方向に直線状に延びていたが、幅方向に対して傾斜していてもよいし、湾曲や屈曲していてもよい。尤も、開口スリットは幅方向に延びる必要はなく、ポケット部の開口となり得るのであれば上下方向に延びていてもよい。
本発明は、充填量を確認するための目盛りを有する経腸栄養法に用いられるバッグとして特に好適である。