WO2012036212A1 - シートリフター装置 - Google Patents

Abstract

　シートリフター装置は、シート支持部材と、第１及び第２の端部を備える前リンクであってシート支持部材の前部に第１の端部が回動自在に連結された前リンクと、第１及び第２の端部を備える後リンクであってシート支持部材の後部に第１の端部が回動自在に連結された後リンクと、前リンクの第２の端部に回動自在に連結される前部と、シート支持部材と後リンクとの連結部位よりも後方で後リンクの第２の端部に回動自在に連結される後部とを有するフレーム部材であってシートバックがフレーム部材の後端部に支持されるフレーム部材と、シートクッションの一部を構成するクッション部材であってフレーム部材に回動自在に連結される前部と、後リンクとフレーム部材との連結部位よりもシート支持部材と後リンクとの連結部位から離れた位置で後リンクに回動自在に連結される後部とを有するクッション部材と、前及び後リンクの一方を回動させる回動伝達部材とを備える。

Description

シートリフター装置

　本発明は、シートクッションの上下位置を調整するシートリフター装置に関する。

　車両の前部シートなど一部の座席は、例えば、着座者が所望の視点を得るべくその体格に合わせてシートクッションの上下位置を調整することが可能であるシートリフター装置を備えている。従来では、こうした種々のシートリフター装置が提案されている。例えば、特許文献１に記載されたシートリフター装置は、アッパレール上のベース板に取り付けられたリフター機構を備えており、該リフター機構により、シートクッションの上下位置が調整される。前記ベース板にはブラケットが固定されるとともに、該ブラケットにはシートバックがリクライニング機構を介して固定されている。このシートリフター装置では、ベース板及びシートバックに対しシートクッションのみが上下動する。

　一方、特許文献２に記載されたシートリフター装置では、シートクッションが、４節回転連鎖を形成する前リンク及び後リンクを介してロアフレームに支持されている。前リンク及び後リンクによりシートクッションの上下位置が調整される。シートクッションには、リクライニング機構を介して、シートバックが固定されている。このシートリフター装置では、特許文献１のそれとは異なり、シートクッション及びシートバックが一体的に上下動する。

特開昭６２－１２９０１３号公報 特開２００２－２２５６００号公報

　一般に、シートバックには、標準的な体格を有する着座者の背中のＳ字カーブに対応するＳ字カーブが設けられている。特許文献１のシートリフター装置では、標準的な体格（身長）を有する着座者が、所望の視点を得るべく、シートクッションの上下位置を調整する場合、その着座者の背中のＳ字カーブはシートバックのそれと、ある程度の範囲で対応することが可能である。しかしながら、小柄な人や大柄な人、すなわち、標準よりも低いまたは高い身長を有する人が、視点の調整のためにシートクッションの上下位置を調整する場合、着座者の背中のＳ字カーブとシートバックのＳ字カーブとが大きくずれる可能性がある。

　特許文献２のシートリフター装置では、シートクッション及びシートバックは一体的に上下動する。このため、大柄な人や小柄な人については、背中のＳ字カーブとシートバックのＳ字カーブとが合わないままの状態になる可能性がある。さらにまた、衝突等でシートバックに加わった荷重は、前リンク及び後リンクによって形成される４節回転連鎖に加わる。このため、前リンク及び後リンクの強度確保のためにその肉厚や幅寸を大きくする必要がある。特に、４節回転連鎖による上下方向へのシートクッションの可能な調整量を大きくするために、これら前リンク及び後リンクを長くする場合には、それらのリンクの強度及び剛性をより一層確保する必要がある。加えて、上下位置の調整によってシートクッションが上方へ移動する場合、それに伴ってシートバックも上方に移動する。このため、該シートバックの上端部に保持されたヘッドレストと天井との間の隙間が小さくなってしまう。

　本発明の目的は、着座者の背中のＳ字カーブとシートバックのＳ字カーブとのずれを抑制しながらも、着座者の視点の位置を調整することができるシートリフター装置を提供することにある。

　上記目的を達成するため、本発明の一態様では、シート支持部材と、第１及び第２の端部を備える前リンクであって、前記シート支持部材の前部に第１の端部が回動自在に連結された前リンクと、第１及び第２の端部を備える後リンクであって、前記シート支持部材の後部に第１の端部が回動自在に連結された後リンクと、前記前リンクの第２の端部に回動自在に連結される前部と、前記シート支持部材と前記後リンクとの連結部位よりも後方において前記後リンクの第２の端部に回動自在に連結される後部とを有するフレーム部材であって、シートバックがフレーム部材の後端部に支持される、フレーム部材と、シートクッションの一部を構成するクッション部材であって、前記フレーム部材に回動自在に連結される前部と、前記後リンクと前記フレーム部材との連結部位よりも前記シート支持部材と前記後リンクとの連結部位から離れた位置で、前記後リンクに回動自在に連結される後部とを有する、クッション部材と、前記前リンク及び前記後リンクのうちの一方を回動させる回動伝達部材とを備えたシートリフター装置を提供する。

本発明の第１の実施形態によるシートリフター装置が適用される車両用シートを示す斜視図。 図１のシートリフター装置を示す平面図。 図１のシートリフター装置を示す分解斜視図。 図１のシートリフター装置の動作を示す側面図。 図１のシートリフター装置の動作を示す側面図。 図１のシートリフター装置の動作を示す側面図。 本発明の第２の実施形態によるシートリフター装置を示す分解斜視図。 図７のシートリフター装置の動作を示す側面図。 図７のシートリフター装置の動作を示す側面図。

　（第１の実施形態）
　以下、本発明を具体化した第１の実施形態について図面に従って説明する。

　図１は、例えば自動車などの車両の前部シートであるシート１を示す斜視図である。同図に示すように、車両フロアＦ（図４参照）には、シート１の幅方向に対向し前後方向に延在する一対のロアレール２が固定されている。各ロアレール２には、該ロアレール２に対し相対移動可能にアッパレール３が装着されている。これら一対のロアレール２及び一対のアッパレール３は、スライド機構を構成する。

　各アッパレール３には、上方に延びる平板状のブラケット４（シート支持部材）が結合されている。詳述すると、図１中の円Ｃ内に横断面図を示したように、アッパレール３は、板材を曲成してなる対向する一対の部材３ａを備える。該一対の部材３ａは互いに対称である。各ブラケット４は、対応するアッパレール３の中央部に形成される縦壁部に、例えばボルト・ナット又はかしめピンにて締結されている。これら両ブラケット４には、リフター機構１０を介して、シート本体５が固定及び支持されている。このシート本体５は、シートクッション６と、該シートクッション６の後端部に傾動（回動）自在に支持されたシートバック７と、該シートバック７の上端部に支持されたヘッドレスト８とを備える。シート本体５の前後位置は、前記スライド機構により調整可能であるとともに、シート本体５の上下位置は、リフター機構１０により調整可能である。これにより、当該シート本体５の着座者は、例えば、所望の視点を得るべく、その体格に合わせてシート本体５の上下位置を調整可能である。

　次に、リフター機構１０及びその周辺部の構造について更に説明する。

　図２及び図３は、それぞれシート本体５の骨格形状を示す平面図及び分解斜視図である。図３に示すように、各ブラケット４の前部には、支持軸１１により前リンク１２の一方の端部（第１の端部）が回動自在に連結されている。各ブラケット４の後部には、支持軸１３により後リンク１４の一方の端部（第１の端部）が回動自在に連結されている。前リンク１２及び後リンク１４は、各々の支持軸１１，１３に対し後方に延びている。各前リンク１２の他方の端部（第２の端部）には、支持軸１５によりチルトリンク１６の一方の端部（第１の端部）が回動自在に連結されている。チルトリンク１６は、支持軸１５に対し前方に延びている。

　各チルトリンク１６の長手方向中間部及び各後リンク１４の他方の端部（第２の端部）には、それぞれ支持軸１７，１８によりロアアーム１９（フレーム部材）の前部及び後部がそれぞれ回動自在に連結されている。これら両ロアアーム１９は、シートクッション６の両側部の骨格をなす。両ロアアーム１９の後端部には、シートバック７の両側部の骨格をなすシートバックフレーム７ａがリクライニング機構２０を介して支持されている。

　なお、各後リンク１４は、支持軸１３（ブラケット４と後リンク１４との間の連結部位）に対し支持軸１８（ロアアーム１９と後リンク１４との間の連結部位）よりも後方に延びる延出部１４ａを有する。これら両延出部１４ａは、シート幅方向に延在する梁部材としての後側連結棒３１の両端部にそれぞれ固定されている。両支持軸１７は、シート幅方向に延在する前側連結棒３２の両端部にそれぞれ固定されている。

　各チルトリンク１６の他方の端部（第２の端部）には、支持軸２１により揺動リンク２２の一方の端部（第１の端部）が回動自在に連結されている。揺動リンク２２は、支持軸２１に対し上方に延びている。

　各揺動リンク２２の他方の端部（第２の端部）には、支持軸２３によりクッション部材としてのクッションパン２４の前部が回動自在に連結されている。このクッションパン２４は、両ロアアーム１９及び後側連結棒３１のなす略四角形状に合わせて略四角皿状に成形されている。クッションパン２４の後部は後側連結棒３１に回動自在に連結されている。クッションパン２４は、シートクッション６の骨格をなすもので、着座用のクッション材を保持する。

　シート前方に向かって左側の後リンク１４（以下、後リンク１４Ｌという）は、支持軸１８を中心にその前方に向かって広がる略扇状のセクタギヤ部１４ｂを備える。シート前方に向かって左側のロアアーム１９（以下、ロアアーム１９Ｌという）の外側面には、回動伝達部材としてのリフター用駆動装置３３が固定されている。このリフター用駆動装置３３は、電動モータ３３ａと、該電動モータ３３ａにより適宜の減速機構を介して回転駆動されるピニオン３３ｂとを有する。ピニオン３３ｂは、ロアアーム１９Ｌを貫通してセクタギヤ部１４ｂと噛合している。

　従って、リフター用駆動装置３３が駆動されると、セクタギヤ部１４ｂにおいてピニオン３３ｂに噛合する後リンク１４Ｌが支持軸１８を中心に回動しようとする。しかしながら、ブラケット４（アッパレール３）は、上下方向に移動できないため、結果として支持軸１８はロアアーム１９Ｌの後部とともに支持軸１３に対し上下動する。リフター用駆動装置３３の駆動が停止されると、セクタギヤ部１４ｂと噛合するピニオン３３ｂが前記減速機構によりロックされ、それによって、該ピニオン３３ｂ（リフター用駆動装置３３）を支持するロアアーム１９Ｌ及び後リンク１４Ｌが実質的に一体化される。このとき、後リンク１４Ｌの運動は、後側連結棒３１を介してシート前方に向かって右側の後リンク１４（以下、後リンク１４Ｒという）に伝達される。これにより、支持軸１３を中心とする左右の後リンク１４Ｌ，１４Ｒは連動して回動する。リフター用駆動装置３３等は、リフター機構１０を形成する。

　シート前方に向かって左側のチルトリンク１６（以下、チルトリンク１６Ｌという）は、支持軸１７を中心にその後方に向かって広がる略扇状のセクタギヤ部１６ａを備える。ロアアーム１９Ｌの外側面には、リフター用駆動装置３３より前方にフロントチルト用駆動装置３４が固定されている。このフロントチルト用駆動装置３４は、電動モータ３４ａと、該電動モータ３４ａにより適宜の減速機構を介して回転駆動されるピニオン３４ｂとを有する。ピニオン３４ｂは、ロアアーム１９Ｌを貫通してセクタギヤ部１６ａと噛合している。

　従って、フロントチルト用駆動装置３４が駆動されると、セクタギヤ部１６ａにおいてピニオン３４ｂに噛合するチルトリンク１６Ｌが支持軸１７を中心に回動しようとする。しかしながら、ブラケット４（アッパレール３）に連結される前リンク１２は、上下方向に移動できないため、結果として支持軸１５に対し支持軸１７が揺動リンク２２及びロアアーム１９Ｌの前部とともに上下動する。フロントチルト用駆動装置３４の駆動が停止されると、セクタギヤ部１６ａと噛合するピニオン３４ｂが前記減速機構によりロックされ、それによって、該ピニオン３４ｂ（フロントチルト用駆動装置３４）を支持するロアアーム１９Ｌ及びチルトリンク１６Ｌが実質的に一体化される。このとき、チルトリンク１６Ｌの運動は、前側連結棒３２を介してシート前方に向かって右側のチルトリンク１６（以下、チルトリンク１６Ｒという）に伝達される。これにより、支持軸１５を中心とする左右のチルトリンク１６Ｌ，１６Ｒは連動して回動する。フロントチルト用駆動装置３４等は、チルト機構３０を形成する。

　ここで、本実施形態のシートリフター装置の動作について図４～図６に従って説明する。

　まず、フロントチルト用駆動装置３４の駆動が停止され、これを支持するロアアーム１９にチルトリンク１６及び揺動リンク２２が実質的に一体化されているものとして、リフター機構１０の動作について説明する。このとき、ブラケット４（アッパレール３）、前リンク１２、後リンク１４及びロアアーム１９は、該ロアアーム１９を媒介節（連接節）とする４節回転連鎖を形成する。また、ブラケット４（アッパレール３）、前リンク１２、後リンク１４及びクッションパン２４は、該クッションパン２４を媒介節とする４節回転連鎖を形成する。

　リフター用駆動装置３３が駆動され、ピニオン３３ｂが図４において図示時計回転方向に回転すると、支持軸１８を中心に回動しようとする後リンク１４（１４Ｌ）がブラケット４（アッパレール３）から押される。これによって、後リンク１４が支持軸１３を中心に図示反時計回転方向に回動する。これに連動して前リンク１２が支持軸１１を中心に図示反時計回転方向に回動する。これにより、図５に示すように、それぞれ支持軸１１，１３よりも後方に配置された支持軸１７，１８がそれぞれ上方に移動し、ロアアーム１９が略上方に移動する。同時に、両ロアアーム１９の後端部にリクライニング機構２０を介して支持されたシートバックフレーム７ａ（シートバック７）も上方に移動する。

　前リンク１２及び後リンク１４の回動に伴い、クッションパン２４も略上方に移動する。クッションパン２４の後部と後リンク１４とを連結する後側連結棒３１は、ロアアーム１９と後リンク１４とを連結する支持軸１８よりも後方に配置されている。すなわち、後側連結棒３１と支持軸１３との間の距離は、支持軸１８と支持軸１３との間の距離より大きい。そのため、クッションパン２４は、それらの距離の間の差に応じた分だけロアアーム１９よりも大きく上方に移動する。

　すなわち、図５に示したように、前リンク１２及び後リンク１４の回動に伴うクッションパン２４の後部、ロアアーム１９の移動距離をそれぞれＡ、Ｂで表すと、
　　ロアアームの移動距離Ｂ＜クッションパンの後部の移動距離Ａ
の関係になっている。

　一方、リフター用駆動装置３３が逆方向に駆動され、ピニオン３３ｂが図５において図示反時計回転方向に回転すると、支持軸１８を中心に回動しようとする後リンク１４（１４Ｌ）がブラケット４（アッパレール３）から引かれる。これによって、後リンク１４が支持軸１３を中心に図示時計回転方向に回動する。これに連動して前リンク１２が支持軸１１を中心に図示時計回転方向に回動する。これにより、それぞれ支持軸１１，１３よりも後方に配置された支持軸１７，１８がそれぞれ下方に移動し、ロアアーム１９が略下方に移動する。同時に、シートバックフレーム７ａ（シートバック７）も下方に移動する。

　前リンク１２及び後リンク１４の回動に伴い、クッションパン２４も略下方に移動する。クッションパン２４の後部は、前述の距離差に応じた分だけロアアーム１９よりも大きく下方に移動する。

　リフター機構１０によるシート本体５の上下位置の調整を通じて、クッションパン２４とリクライニング機構２０との間の距離は変化する。その距離は、リフター機構１０による調整によって前記上下位置が上方に移動するときに小さくなり、反対に下方に移動するときに大きくなる。換言すれば、クッションパン２４（シートクッション６）を上方に大きく移動させたとしても、ロアアーム１９（シートバック７）の上方への移動量はクッションパン２４（シートクッション６）のそれと比較して抑えられる。クッションパン２４（シートクッション６）を下方に大きく移動させたとしても、ロアアーム１９（シートバック７）の下方への移動量はクッションパン２４（シートクッション６）のそれと比較して抑えられる。

　以上により、本実施形態のリフター機構１０により、着座者の視点の位置を調整するためにシートクッション６を上下に大きく移動させた場合であっても、シートバック７の上下への移動量を抑えることができる。

　次に、リフター用駆動装置３３の駆動が停止されているものとして、チルト機構３０の動作について説明する。このとき、チルトリンク１６、ロアアーム１９、揺動リンク２２及びクッションパン２４は、揺動リンク２２を媒介節とする４節回転連鎖を形成する。

　フロントチルト用駆動装置３４が駆動され、ピニオン３４ｂが図５において図示反時計回転方向に回転すると、チルトリンク１６（１６Ｌ）が支持軸１７を中心に回動しようとする。結果として、図６に示すように、支持軸１７が揺動リンク２２とともに支持軸１５に対し上方に移動する。これにより、クッションパン２４が後側連結棒３１を中心に図示時計回転方向に回動し、該クッションパン２４（シートクッション６）の前部が上方に移動する。このとき、両ロアアーム１９の後端部にリクライニング機構２０を介して支持されたシートバックフレーム７ａ（シートバック７）は、概ね停止したままであり、その現在の位置に保持される。

　一方、フロントチルト用駆動装置３４が逆方向に駆動され、ピニオン３４ｂが図６において図示時計回転方向に回転すると、チルトリンク１６（１６Ｌ）が支持軸１７を中心に回動しようする。結果として、支持軸１７が揺動リンク２２とともに支持軸１５に対し下方に移動する。これにより、クッションパン２４が後側連結棒３１を中心に図示反時計回転方向に回動し、該クッションパン２４（シートクッション６）の前部が下方に移動する。このとき、両ロアアーム１９の後端部にリクライニング機構２０を介して支持されたシートバックフレーム７ａ（シートバック７）は、概ね停止したままであり、その現在の位置に保持される。

　以上により、本実施形態のチルト機構３０により、シートバック７をほとんど移動させることなく、シートクッション６の前部の上下位置のみを調整することが可能になる。

　以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す利点が得られるようになる。

　（１）リフター用駆動装置３３による後リンク１４の回動に伴って、ロアアーム１９の後部がシートバック７と一体で上下動する。ブラケット４、クッションパン２４の後部、ロアアーム１９の後部は、それぞれ支持軸１３、後側連結棒３１、支持軸１８によって、後リンク１４と連結されている。後側連結棒３１は、支持軸１８より支持軸１３から離れており、したがってクッションパン２４の後部はロアアーム１９の後部よりも大きく上下動する。これにより、例えば小柄な人がクッションパン２４（シートクッション６）を上方に大きく移動させたとしても、シートバック７の上方への移動量はクッションパン２４（シートクッション６）のそれと比較して抑えられ、それによって、背中のＳ字カーブとシートバックのＳ字カーブとを合わせることができる。一方、大柄な人がクッションパン２４（シートクッション６）を下方に大きく移動させたとしても、シートバック７の下方への移動量はクッションパン２４（シートクッション６）のそれと比較して抑えられ、それによって、同様に背中のＳ字カーブとシートバック７のＳ字カーブとを合わせることができる。

　また、上下方向へのロアアーム１９の可能な調整量をクッションパン２４の後部のそれと比較して少なくできるため、前リンク１２及び後リンク１４を長くする必要がない。したがって、前リンク１２及び後リンク１４に要求される強度及び剛性を低減することができるとともに、前リンク１２及び後リンク１４の質量を低減することができる。さらにまた、シートバック７の上端部に保持されたヘッドレスト８と天井との間の隙間を十分に確保することができる。

　（２）後側連結棒３１は両後リンク１４の間を橋渡しするように両後リンク１４に固定されており、クッションパン２４（シートクッション６）の後部は、後側連結棒３１を介して両後リンク１４に連結されている。したがって、クッションパン２４（シートクッション６）の後部をより堅固に両後リンク１４に連結することができる。

　（３）座面にかかる着座者の体重を、クッションパン２４が単独で支えている。したがって、クッションパン２４の構造を極めて簡素化できる。

　（４）チルト機構３０は、クッションパン２４の後部を支点としてクッションパン２４の前部を傾動させることができるため、所望の通りにシート姿勢をより細かく調整することができる。特に、クッションパン２４の前部の上下の移動量がロアアーム１９のそれよりも大きく確保されるため、リフター機構１０によるロアアーム１９（リクライニング機構２０、シートバック７）の上下の移動量を増加させることなく、シートクッション６の前部の上下の移動量を大きくすることができ、したがって、座面角の変化量を大きくすることができる。

　（５）クッションパン２４の後部の上下の移動量に対し、ロアアーム１９の上下の移動量を少なくできる。このため、クッションパン２４の後部を上方に大きく移動させても、ロアアーム１９及びブラケット４（シートレール）間の上下の隙間を小さくでき、ひいては該隙間への手足の進入を防止するためのプロテクターを割愛することができる。

　（第２の実施形態）
　以下、本発明を具体化した第２の実施形態について図面に従って説明する。なお、第２の実施形態では、主に、ロアアーム１９に連結されるクッション部材の構造が第１の実施形態のそれから変更されている。同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。

　図７及び図８は、それぞれシート本体５の骨格形状を示す分解斜視図及び側面図である。同図に示すように、本実施形態の梁部材としての後側連結棒４１は、両端部に配設された一対の軸部４１ａと、これら両軸部４１ａの軸線から平行にずれた軸線を有して両軸部４１ａ間を接続する偏心部４１ｂとを一体的に有する。各軸部４１ａは、それぞれ後リンク４２の後方端部に固着されるとともに、前記ロアアーム１９の後部に回動自在に連結されている。偏心部４１ｂは、支持軸１３（ブラケット４と後リンク４２との間の連結部位）に対し軸部４１ａ（ロアアーム１９と後リンク４２との間の連結部位）よりも後方に配置されている。なお、本実施形態の後リンク４２の構造は、延出部（１４ａ）が割愛されていることを除き、前記第１の実施形態のそれと同様である。

　また、本実施形態では、クッションパン２４に代えて、クッションパン４６と、ばね部材としての複数のＳばね４７とを備える、クッション部材４５が用いられる。クッション部材４５の前側部を形成するクッションパン４６は、略四角皿状に成形されており、そのシート幅方向両端から後方に延びる一対の取付片４６ａを有する。クッションパン４６の後部は、各取付片４６ａにおいて、ロアアーム１９の長手方向中間部（支持軸１７と軸部４１ａとの間に挟まれる部分）に、支持軸４８により回動自在に連結されている。クッションパン４６の前部は、前記各支持軸２３により揺動リンク２２の他方の端部（第２の端部）に回動自在に連結されている。

　クッション部材４５の後側部を形成する複数のＳばね４７は、シート幅方向に並設されて屈曲しつつ前後方向に延びている。各Ｓばね４７の前端部はクッションパン４６の後端部に配設された係止部４６ｂに係止されるとともに、各Ｓばね４７の後端部は後側連結棒４１の偏心部４１ｂに回動自在に係止されている。つまり、これらＳばね４７は、支持軸１３（ブラケット４と後リンク４２との間の連結部位）に対し軸部４１ａ（ロアアーム１９と後リンク４２との間の連結部位）よりも後方の偏心部４１ｂに連結されている。

　ここで、本実施形態のシートリフター装置の動作について図９を併せ参照して説明する。

　まず、フロントチルト用駆動装置３４の駆動が停止され、これを支持するロアアーム１９にチルトリンク１６及び揺動リンク２２が実質的に一体化されているものとして、リフター機構１０の動作について説明する。このとき、ブラケット４（アッパレール３）、前リンク１２、後リンク４２及びロアアーム１９は、該ロアアーム１９を媒介節（連接節）とする４節回転連鎖を構成する。

　リフター用駆動装置３３が駆動され、ピニオン３３ｂが図８において図示時計回転方向に回転すると、軸部４１ａを中心に回動しようとする後リンク４２がブラケット４（アッパレール３）から押される。これによって、図９に示すように、前述と同様にしてロアアーム１９が略上方に移動する。同時に、両ロアアーム１９の後端部にリクライニング機構２０を介して支持されたシートバックフレーム７ａ（シートバック７）も上方に移動する。

　前リンク１２及び後リンク４２の回動に伴い、クッション部材４５も略上方に移動する。複数のＳばね４７の後端部と後リンク１４とを連結する偏心部４１ｂは、ロアアーム１９と後リンク１４とを連結する軸部４１ａよりも後方に配置されている。すなわち、偏心部４１ｂと支持軸１３との間の距離は、軸部４１ａと支持軸１３との間の距離より大きい。そのため、クッション部材４５は、それらの距離の間の差に応じた分だけロアアーム１９よりも大きく上方に移動する。

　すなわち、図９に示したように、前リンク１２及び後リンク４２の回動に伴うＳばね４７の後端部、ロアアーム１９の移動距離をそれぞれＡ１、Ｂ１で表すと、
　　ロアアームの移動距離Ｂ１＜Ｓばねの後端部の移動距離Ａ１
の関係になっている。

　換言すれば、クッション部材４５（シートクッション６）を上方に大きく移動させたとしても、ロアアーム１９（シートバック７）の上方への移動量はクッション部材４５（シートクッション６）のそれと比較して抑えられている。なお、このときのクッション部材４５に対するＳばね４７の後端部の位置ずれは、該Ｓばね４７の弾性変形によって吸収されている。

　一方、リフター用駆動装置３３が逆方向に駆動され、ピニオン３３ｂが図９において図示反時計回転方向に回転すると、軸部４１ａを中心に回動しようとする後リンク４２がブラケット４（アッパレール３）から引かれる。これによって、前述と同様にしてロアアーム１９が略下方に移動する。同時に、シートバックフレーム７ａ（シートバック７）も下方に移動する。

　前リンク１２及び後リンク４２の回動に伴い、クッション部材４５も略下方に移動する。複数のＳばね４７の後端部は、前述の距離差に応じた分だけロアアーム１９よりも大きく下方に移動する。換言すれば、クッション部材４５（シートクッション６）を下方に大きく移動させたとしても、ロアアーム１９（シートバック７）の下方への移動量はクッション部材４５（シートクッション６）のそれと比較して抑えられている。なお、このときのクッション部材４５に対するＳばね４７の後端部の位置ずれは、該Ｓばね４７の弾性変形によって吸収されている。

　以上により、着座者の視点の位置を調整するためにシートクッション６を上下に大きく移動させた場合であっても、シートバック７の上下への移動量を抑えることができる。

　次に、リフター用駆動装置３３の駆動が停止されているものとして、チルト機構３０の動作について説明する。このとき、チルトリンク１６、ロアアーム１９、揺動リンク２２及びクッションパン４６は、揺動リンク２２を媒介節とする４節回転連鎖を構成する。

　フロントチルト用駆動装置３４が駆動され、ピニオン３４ｂが図９において図示反時計回転方向に回転すると、チルトリンク１６（１６Ｌ）が支持軸１７を中心に回動しようとする。結果として、支持軸１７が揺動リンク２２とともに支持軸１５に対し上方に移動する。これにより、クッションパン４６が支持軸４８を中心に図示時計回転方向に回動し、該クッションパン４６（シートクッション６）の前部が上方に移動する。このとき、両ロアアーム１９の後端部にリクライニング機構２０を介して支持されたシートバックフレーム７ａ（シートバック７）は、概ね停止したままであり、その現在の位置に保持される。

　一方、フロントチルト用駆動装置３４が逆方向に駆動され、ピニオン３４ｂが図示時計回転方向に回転すると、チルトリンク１６（１６Ｌ）が支持軸１７を中心に回動しようとする。結果として、支持軸１７が揺動リンク２２とともに支持軸１５に対し下方に移動する。これにより、クッションパン４６が支持軸４８を中心に図示反時計回転方向に回動し、該クッションパン４６（シートクッション６）の前部が下方に移動する。このとき、両ロアアーム１９の後端部にリクライニング機構２０を介して支持されたシートバックフレーム７ａ（シートバック７）は、概ね停止したままであり、その現在の位置に保持される。

　以上により、シートバック７をほとんど移動させることなく、シートクッション６の前部の上下位置のみを調整することが可能になる。特に、クッションパン４６の回動中心（支持軸４８）は、前記第１の実施形態のクッションパン２４の回動中心（後側連結棒３１）に比べて支持軸２３寄りに配置されている。このため、同じチルトリンク１６の回動量に対し第１の実施形態のそれと比べてクッションパン４６（シートクッション６）の前部をより大きく上下動させることができる。

　以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第１の実施形態における（１）（２）（４）（５）の利点に加えて以下に示す利点が得られるようになる。

　（６）後側連結棒４１（梁部材）は、後リンク４２とロアアーム１９との連結部位（両軸部４１ａ）として、また後リンク４２とクッション部材４５の後部との連結部位（偏心部４１ｂ）として兼用される。このため、部品点数を削減することができる。係る後側連結棒４１は、単に複数のＳばね４７を連結するために従来からある後側連結棒を曲げ加工することによって、簡単に実現することができる。

　（７）クッションパン４６及び複数のＳばね４７からなるクッション部材４５を採用したことで、座面にかかる着座者の体重を、これらクッションパン４６及び複数のＳばね４７が協働して支えることができる。

　なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。

　前記第１の実施形態において、ロアアーム１９の後部及びクッションパン２４の後部を、前記第２の実施形態に準じて後側連結棒４１の軸部４１ａ及び偏心部４１ｂにそれぞれ連結してもよい。

　前記第２の実施形態において、ロアアーム１９の後部及びＳばね４７の後端部を、前記第１の実施形態に準じて支持軸１８及び後側連結棒３１にそれぞれ連結してもよい。

　前記各実施形態において、リフター用駆動装置３３に代えて、後リンク１４（１４Ｌ）を回動させるための操作力を伝達可能な回動伝達部材としての操作ノブを採用してもよい。

　前記各実施形態において、後リンク１４（１４Ｌ）に代えて、リフター用駆動装置３３（又は上述の操作ノブ）により前リンク１２を回動させて、ロアアーム１９等を上下動させてもよい。

　前記各実施形態において、チルト機構３０を割愛してもよい。

Claims (6)

1. 　シート支持部材と、
   　第１及び第２の端部を備える前リンクであって、前記シート支持部材の前部に第１の端部が回動自在に連結された前リンクと、
   　第１及び第２の端部を備える後リンクであって、前記シート支持部材の後部に第１の端部が回動自在に連結された後リンクと、
   　前記前リンクの第２の端部に回動自在に連結される前部と、前記シート支持部材と前記後リンクとの連結部位よりも後方において前記後リンクの第２の端部に回動自在に連結される後部とを有するフレーム部材であって、シートバックがフレーム部材の後端部に支持される、フレーム部材と、
   　シートクッションの一部を構成するクッション部材であって、前記フレーム部材に回動自在に連結される前部と、前記後リンクと前記フレーム部材との連結部位よりも前記シート支持部材と前記後リンクとの連結部位から離れた位置で、前記後リンクに回動自在に連結される後部とを有する、クッション部材と、
   　前記前リンク及び前記後リンクのうちの一方を回動させる回動伝達部材とを備えたシートリフター装置。
2. 　前記後リンクは、シート幅方向に対向する一対の後リンクであり、
   　前記シートリフター装置は、梁部材をさらに備え、同梁部材は、前記両後リンクに固着され同後リンクと前記フレーム部材との前記連結部位を提供する一対の軸部と、該両軸部の軸線からずれた軸線を有して前記両軸部間を延びる偏心部とを有し、
   　前記クッション部材の後部は、前記偏心部を介して前記両後リンクに回動自在に連結されている請求項１に記載のシートリフター装置。
3. 　前記後リンクは、シート幅方向に対向する一対の後リンクであり、
   　前記シートリフター装置は、シート幅方向に延在して前記両後リンクに固定される梁部材をさらに備え、同梁部材は、前記クッション部材の後部と前記両後リンクとの一対の連結部位を通る軸線を有し、
   　前記クッション部材の後部は、前記梁部材を介して前記両後リンクに回動自在に連結されている請求項１に記載のシートリフター装置。
4. 　前記クッション部材は、
   　前記フレーム部材に回動自在に連結され、クッション部材の前側部を形成するクッションパンと、
   　クッション部材の後側部を形成するばね部材であって、前記クッションパンに係止される前端部と、前記梁部材に回動自在に係止される後端部とを有するばね部材とを備えた請求項２又は３に記載のシートリフター装置。
5. 　前記クッション部材はクッションパンであり、前記クッションパンの後部は前記梁部材に回動自在に連結されている請求項２又は３に記載のシートリフター装置。
6. 　前記クッション部材の前部を該クッション部材の後部に対し上下動させるチルト機構をさらに備え、前記クッション部材の前部は前記チルト機構を介して前記フレーム部材に連結されている請求項１～５のいずれか一項に記載のシートリフター装置。

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