始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、図1〜図9を用いて説明する。本実施例のシート1は、図1に示すように、自動車の運転席として構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成となっている。上記シート1は、いわゆる「パワーシート」の構成となっており、シートバック2の背凭れ角度の調整やシートクッション3の着座位置の調整をそれぞれスイッチの操作による電動操作によって行うことができる構成となっている。
具体的には、シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、図示しない電動式のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結された構成となっている。これにより、シートバック2は、常時は、上述した各リクライナによってその背凭れ角度が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によって各リクライナを電動操作することにより、その背凭れ角度が前後方向に調整されるようになっている。また、シートクッション3は、車両のフロア上に、左右一対の電動式のスライドレール4を介して連結された構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は、上述した各スライドレール4によってその前後方向の着座位置が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によって各スライドレール4を電動操作することにより、その前後方向の着座位置が調整されるようになっている。
また、シートクッション3は、上述した左右一対のスライドレール4との間に、電動式のシートリフタ5が介在して設けられた構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は、上述したシートリフタ5によってその高さ位置が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によってシートリフタ5を電動操作することにより、その高さ位置が調整されるようになっている。また、シートクッション3は、その前部に、電動式のチルト機構6が備えられた構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は、上述したチルト機構6によってその着座乗員の大腿部を支える前部の支持角度(支持高さ)が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によってチルト機構6を電動操作することにより、上記前部の支持角度が高さ方向に調整されるようになっている。
このように、シート1は、シートバック2の背凭れ角度の調整(前後2方向)と、シートクッション3の着座位置の調整(前後2方向と上下2方向)と、シートクッション3の前部の支持角度の調整(上下2方向)と、が可能ないわゆる「8ウェイ」と呼ばれる8方向の調整操作が可能な構成となっている。これらの調整操作は、シートクッション3の車両外側(図示向かって左側)の側部等の所定箇所に設けられた図示しないスイッチの操作による電動操作によって行われるようになっている。
上述したシートリフタ5は、詳しくは後述するが、シートクッション3の各サイドフレーム11とフロア上の各スライドレール4との間に介在する形で、これらに回転可能にリンク連結された左右一対のフロントリンク5Aとリヤリンク5Bとを有する構成となっている。上述したシートリフタ5は、上述した左右一対のフロントリンク5Aとリヤリンク5Bとの協働したリンク運動によって、シートクッション3のフロアに対する高さ位置を変化させる左右一対の4節リンク機構として構成されている。
上述した左右一対のフロントリンク5Aとリヤリンク5Bのうち、図示向かって左側となる車両外側に配されるフロントリンク5Aとリヤリンク5Bとは、同側のサイドフレーム11のシート外側(車両外側)に位置して設けられている。また、図示向かって右側となる車両内側に配されるフロントリンク5Aとリヤリンク5Bとは、同側のサイドフレーム11のシート内側(車両外側)に位置して設けられている。その理由は、シート1のフロアに対するシート幅方向の配設位置を、左右一対のスライドレール4の配置に対して、車両内側寄りとなるようにオフセットして設けるようにしているためである。そして、各側のフロントリンク5Aとリヤリンク5Bとは、それぞれ、それらの上端部が、円鋼管製のブッシュ5G,5Hによって、各側のサイドフレーム11に対して個別に回転可能に連結されている。また、各側のフロントリンク5Aとリヤリンク5Bとは、それぞれ、それらの下端部が、回転軸5J,5Kによって、各側のスライドレール4の上部に対して個別に回転可能に連結されている。
上述した各フロントリンク5Aの上端部を各側のサイドフレーム11に連結する各ブッシュ5Gは、各フロントリンク5Aの上端部と各サイドフレーム11とに貫通して軸方向(シート幅方向)の外側から差し込まれたのみであり、これらに対して回転可能な連結状態とされている。各ブッシュ5Gは、これらの間に架橋されるように挿通されたフロントパイプ5Cと溶接されて一体的に結合された状態とされている。これにより、各ブッシュ5Gは、それらの軸方向(シート幅方向)の外側の端部に形成されたフランジ部5G1によって、それらのシート外側の端部が車両外側のフロントリンク5Aの上端部や車両内側のサイドフレーム11から抜けないように、各フロントリンク5Aの上端部を各側のサイドフレーム11に回転可能に連結した状態となっている。
一方、上述した各リヤリンク5Bの上端部を各側のサイドフレーム11に連結する各ブッシュ5Hは、各サイドフレーム11と各リヤリンク5Bの上端部とに貫通して軸方向(シート幅方向)の外側から差し込まれているが、各リヤリンク5Bの上端部と一体的に溶接され、各側のサイドフレーム11に対して回転可能に連結された状態とされている。そして、各ブッシュ5Hは、これらの間に架橋されるように挿通されたリヤパイプ5Dとも溶接されて一体的に結合された状態とされている。これにより、各ブッシュ5Hは、それらの軸方向(シート幅方向)の外側の端部に形成されたフランジ部5H1によって、それらのシート外側の端部が車両外側のリヤリンク5Bの上端部や車両内側のサイドフレーム11から抜けないように、各リヤリンク5Bの上端部を各側のサイドフレーム11に回転可能に連結した状態となっている。また、両リヤリンク5Bは、上述したリヤパイプ5Dを介して互いに一体的となって回転することができるようになっている。これにより、両リヤリンク5Bは、後述するリフタ用のモータユニット5Fから出力される回転駆動力やブレーキ力を受けて互いに一体的となって回転駆動されたり回転止めされたりする、高い支持剛性を発揮可能な構成とされている。
以下、上述したシートクッション3の各部の具体的な構成について詳しく説明していく。図1に示すように、シートクッション3は、その骨格を成す金属製のクッションフレーム10が、シートクッション3の外周形状に沿った四角枠状に組まれた構成となっている。具体的には、クッションフレーム10は、左右一対のサイドフレーム11と、各サイドフレーム11の前端部間に架橋されて着座乗員の大腿部を下方側から支持するフロントパネル12と、を有し、各サイドフレーム11の前部間と後部間とにそれぞれ鋼管製のフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとが架橋された状態に組み付けられていることにより、全体が平面視四角枠状に組まれた構成とされている。
なお、上述したクッションフレーム10の上部には、着座乗員から受ける荷重を和らげて受け止めることの可能な図示しない発泡ウレタン製のクッションパッドや、シートクッション3の表面全体を覆う図示しない布製のクッションカバーが取り付けられているが、これらの具体的な構成についての説明は省略することとする。また、上述したシートクッション3の前側部や左右両側部には、これらを外周側から覆う樹脂製のシールドSHが装着されている。
上記シールドSHは、シートクッション3の前側部を覆う図示しないフロントシールドと、シートクッション3の車両内側の側部を覆う図示しないインナシールドと、シートクッション3の車両外側の側部を覆うアウタシールド20と、に分割されて、これらが1つに組み付けられた構成とされている。このうち、アウタシールド20は、図2〜図4及び図8に示すように、その前部(嵌合部21)が、車両外側のサイドフレーム11の前部に取り付けられたブラケット14に掛け止められると共に、後部がビス等の締結具によってサイドフレーム11の後部に締結されて固定された状態として設けられている。上記アウタシールド20の前部(嵌合部21)を掛け止めるためのブラケット14は、前述したチルト機構6を駆動させるためのチルト用のモータユニット6Dをサイドフレーム11に取り付けている差込み式の締結構造COにより、チルト用のモータユニット6Dと共にサイドフレーム11に合理的に取り付けられた状態とされている。上記構成については後に詳しく説明することとする。ここで、チルト用のモータユニット6Dが本発明の「モータユニット」に相当する。
ところで、上述した各サイドフレーム11は、それぞれ、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、前後方向に長尺な板形状にカットされて、互いの内側面をシート幅方向に向かい合わせる形に配設された状態とされている。各サイドフレーム11は、それぞれ、それらの上縁部と下縁部とがシート外側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。
フロントパネル12は、上述した各サイドフレーム11と同様に、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、シート幅方向に長尺な板形状にカットされて、シート上方側に面を向けて配設された状態とされている。上記フロントパネル12は、その前側の縁部や左右両側の各縁部がそれぞれシート下方側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められていると共に、乗員が着座するシート上方側や外周側にエッジを立たせない形に形成された状態とされている。
また、上記フロントパネル12の上面中央部には、車両の前部衝突の発生時に着座乗員の潜り込みを防止する図示しないエアバッグユニットを組み込むための凹部12Dがシート幅方向に長尺状に窪んだ形となって形成されている。上記フロントパネル12は、その左右両側の側縁部が、それぞれ、シート後方側に延びる細長状のチルトアーム12Aを介して回転軸12B(ピン)により各サイドフレーム11の前後方向の中間部に高さ方向に回転可能となるように軸連結された状態とされている。
上述した各チルトアーム12Aは、それぞれ、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、前後方向に長尺な板形状にカットされて、各サイドフレーム11の内側面に面を重ねるように立てられて配設された状態とされている。各チルトアーム12Aは、それらの上縁部がシート外側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。各チルトアーム12Aは、上記折り曲げられた各天板面部が、それぞれ、上述した各サイドフレーム11のシート外側に折り曲げられた上縁部の直上部に位置して、フロントパネル12の左右両側の縁部底面にそれぞれ下方側からあてがわれてリベットにより一体的に締結された状態とされている。
そして、上記各チルトアーム12Aは、それらの後端部が、回転軸12B(ピン)により各サイドフレーム11の中間部に回転可能に軸連結された状態とされている。これら回転軸12Bは、互いに同軸線上の位置に並んで設けられた状態とされている。これにより、フロントパネル12は、上記各サイドフレーム11に対して、各回転軸12Bを中心に高さ方向に回転することができる状態に設けられた状態とされている。上記構成により、フロントパネル12の支持角度を高さ方向に変化させて着座乗員の大腿部を支える支持角度を調整することが可能なチルト機構6が構成されている。上述したフロントパネル12を高さ方向に回転移動させるチルトアップやチルトダウンの各動作は、図1の向かって左側に示された車両外側のサイドフレーム11の内側部に取り付けられたチルト用のモータユニット6Dの駆動によって行われるようになっている。
具体的には、上述したチルト用のモータユニット6Dは、図2に示すように、上述したフロントパイプ5Cの車両外側の端部に結合されたブッシュ5Gと一体的に結合されたギヤリンク6Aに対して動力を伝達可能な状態に連結されている。上述したギヤリンク6Aは、上述したチルト用のモータユニット6Dからの動力伝達を受けることにより、ブッシュ5Gと一体的となって同側のサイドフレーム11に対して回転するようになっている。そしてこの回転により、ギヤリンク6Aは、同ギヤリンク6Aとフロントパネル12の底部との間にリンク連結されたチルトリンク6Cを押し上げたり引き下げたりして、フロントパネル12の支持角度を高さ方向に変化させるようになっている。
また、上述したギヤリンク6Aは、上記回転により、上述したブッシュ5Gと一体的に結合されたフロントパイプ5Cも一体的に回転させて、フロントパイプ5Cの車両内側の端部に結合されたブッシュ5Gに一体的に結合されている従動リンク6Bも一体的に回転させるようになっている。上記従動リンク6Bには、ギヤリンク6Aと同様に、フロントパネル12との間にチルトリンク6Cがリンク連結されており、上記回転に伴って、フロントパネル12を車両内側からも上げ下げするようになっている。上記フロントパネル12の上げ下げする動きは、チルト用のモータユニット6Dの駆動が止められることにより、そのブレーキ力によって、ギヤリンク6A及びこれと一体的となって動く従動リンク6Bの動きが止められて制止されるようになっている。
上述したチルト用のモータユニット6Dは、図2〜図4に示すように、その樹脂製のハウジングの外周領域の3箇所からシート外側に向かって延びるように形成された円柱形状の各ボス部6D1〜6D3が、サイドフレーム11に貫通形成された3箇所の締結孔11A1〜11A3にそれぞれ位置合わせされた状態で、差込み式の締結構造COを成す3本の締結ボルトB1〜B3がそれぞれ差し込まれて締結されることにより、サイドフレーム11の内側部に取り付けられた状態とされている。
上述した3つのボス部6D1〜6D3のうち、前側2つのボス部6D1,6D2は、それぞれ、チルト用のモータユニット6Dのハウジングの前縁側領域において、互いに高さ方向に並ぶ比較的近い位置に形成されている。また、残りの後側1つのボス部6D3は、チルト用のモータユニット6Dのハウジングの後縁側領域に形成されており、上記前側2つのボス部6D1,6D2とは前後方向に離間した位置に形成されている。上述した前側2つのボス部6D1,6D2は、サイドフレーム11の前端側近くの上下箇所に空けられた各締結孔11A1,11A2にそれぞれ締結され、後側1つのボス部6D3は、サイドフレーム11の上述したブッシュ5Gが連結される箇所に近い、ブッシュ5Gの前斜め下側の箇所に空けられた締結孔11A3に締結されるようになっている。
上述した3つのボス部6D1〜6D3は、それぞれ、シート幅方向に貫通した丸孔状の貫通孔6D1a〜6D3aを有する略円柱形状に形成されている。そして、上記3つのボス部6D1〜6D3は、図4に示すように、上述したサイドフレーム11の各締結孔11A1〜11A3に位置合わせされた状態で、それらのシート内側の端部から締結ボルトB1〜B3がそれぞれ差し込まれて、各締結ボルトB1〜B3が各締結孔11A1〜11A3に締結されることにより、サイドフレーム11の内側部に一体的に固定されている。
ところで、図2〜図4に示すように、上記3つのボス部6D1〜6D3のうち、前側2つのボス部6D1,6D2には、その取付け先となるサイドフレーム11との間に、上述したアウタシールド20の前部(嵌合部21)を掛け止めるためのブラケット14が介在して取り付けられるようになっている。具体的には、上記ブラケット14は、図4〜図5に示すように、上記前側2つのボス部6D1,6D2をサイドフレーム11の各締結孔11A1,11A2に合わせるのに先立って、前側2つのボス部6D1,6D2のうちの一方(上側のボス部6D1)に差し込まれて仮保持されてから、前側2つのボス部6D1,6D2と一緒にサイドフレーム11の各締結孔11A1,11A2に位置合わせされた状態にセットされるようになっている。
そして、上述したブラケット14は、図6〜図7に示すように、上述した前側2つのボス部6D1,6D2がサイドフレーム11の各締結孔11A1,11A2に位置合わせされて、締結ボルトB1,B2によってサイドフレーム11にそれぞれ締結されることにより、これら前側2つのボス部6D1,6D2と共にサイドフレーム11に強固に一体的に取り付けられた状態とされている。ここで、上述した前上側のボス部6D1が本発明の「第1のボス部」に相当し、前下側のボス部6D2が本発明の「第2のボス部」に相当し、サイドフレーム11が本発明の「シートフレーム」に相当し、締結ボルトB1,B2が本発明の「締結具」に相当する。
ここで、上述したブラケット14は、図3〜図5に示すように、一枚の鋼板材が板厚方向に半抜き加工されたり折り曲げられたりすることによって、上述したサイドフレーム11に取り付けられる部位となる段差のついた段付板部14Aと、段付板部14Aからシート外側に折れ曲がって延びてアウタシールド20の嵌合部21を掛け止められる形とされた掛止板部14Bと、を有した形に形成されている。
上述した段付板部14Aは、図4〜図5に示すように、中央に長円状の嵌合孔14A1を有した嵌合領域14Aaと、中央に正円状の通し孔14A2を有した挟持領域14Abと、が互いにシート幅方向(板厚方向)に段差状にオフセットされた位置に形成された形状となっている。上述したブラケット14は、上述した段付板部14Aの嵌合領域14Aaに形成された長円状の嵌合孔14A1が、上述した前側2つのボス部6D1,6D2のうちの上側のボス部6D1の外周部に嵌め込まれて回り止めされた状態に仮保持されるようになっている。具体的には、上記嵌合孔14A1が嵌め込まれる上側のボス部6D1の外周部は、その嵌合孔14A1が嵌め込まれる先端側領域6D1bが、部分的に、上記嵌合孔14A1と合致する長円状の外周面形状を有した形状とされている。なおかつ、上記上側のボス部6D1の外周部の嵌合孔14A1が嵌め込まれる先端側領域6D1bは、先端側に向かって横断面が先細り状となっていく形に形成されており、その先細りの途中箇所で、ブラケット14の嵌合孔14A1を緩やかに嵌合させられる形に形成されている。
上記ブラケット14は、上記のような先細り形状となっていることにより、その嵌合孔14A1を上側のボス部6D1の外周部に嵌め込む際に、ブラケット14の嵌合孔14A1をそれよりも形状の小さい上側のボス部6D1の先端部につかえさせることなくスムーズに差し込むことができるようになっている。上記ブラケット14は、上記上側のボス部6D1に嵌合孔14A1が嵌め込まれることにより、上側のボス部6D1に対して回り止めされた状態となって、その下側の挟持領域14Abに形成された通し孔14A2が、下側のボス部6D2の貫通孔6D2aと軸方向に重ね合わされて合致した状態に位置決めされるようになっている。
ここで、上記通し孔14A2は、図4に示すように、下側のボス部6D2の外周部よりもひとまわり小さな丸孔形状に形成されている。したがって、上記ブラケット14は、上記通し孔14A2が下側のボス部6D2の貫通孔6D2aと軸方向に並んで合致した状態となることにより、挟持領域14Abが下側のボス部6D2の先端面に軸方向に当接した状態とされるようになっている。また、上記ブラケット14は、上記挟持領域14Abが下側のボス部6D2の先端に当接する位置にて、嵌合孔14A1が上側のボス部6D1の外周部に緩やかに嵌合して外れ止めの弾発力を受けた状態(仮保持状態)とされて保持されるようになっている。
また、下側のボス部6D2は、その軸方向(シート外側)に延び出す長さ位置が上側のボス部6D1よりも短い長さ位置となっており、図6〜図7に示すように、上記ブラケット14の組み付けによってブラケット14の挟持領域14Abが軸方向に面当接した状態となることにより、その面当接したブラケット14の挟持領域14Abの板厚分を足した長さ位置が、上側のボス部6D1の軸方向に延び出す長さ位置と揃えられるようになっている。したがって、上記の仮保持状態で、前側2つのボス部6D1,6D2をサイドフレーム11の各締結孔11A1,11A2に位置合わせするように設置することにより、ブラケット14の挟持領域14Abが、下側のボス部6D2とサイドフレーム11との間に押し挟まれた状態に組み付けられた状態となる。そして、この状態で、前側2つのボス部6D1,6D2に締結ボルトB1,B2を差し込んで、各締結ボルトB1,B2をサイドフレーム11の各締結孔11A1,11A2に締結させることにより、ブラケット14が前側2つのボス部6D1,6D2とサイドフレーム11とに対して、軸方向(シート幅方向)にも回転方向にもガタ付きのない一体的な状態に固定された状態となる。
ここで、図4に示すように、上述した各締結ボルトB1〜B3は、フランジ状の鍔のついた頭部B1a〜B3aと、頭部B1a〜B3aから軸方向に円柱状に延び出す軸足部B1b〜B3bと、軸足部B1b〜B3bの先端の中心部から軸方向に小さく突出するネジ部B1c〜B3cと、を有する構成となっている。上記各締結ボルトB1〜B3は、上述したネジ部B1c〜B3cの付いた先端を各ボス部6D1〜6D3の貫通孔6D1a〜6D3a内にシート内側から差し込んで、各ネジ部B1c〜B3cをサイドフレーム11に貫通形成された締結孔11A1〜11A3に螺合して締結することにより、各ボス部6D1〜6D3をサイドフレーム11に一体的に結合する構成となっている。具体的には、各締結ボルトB1〜B3は、上記のように締結されることにより、それらのフランジ状の鍔のついた頭部B1a〜B3aが各ボス部6D1〜6D3の軸方向の端面に押し付けられて、各ボス部6D1〜6D3を、各頭部B1a〜B3aとサイドフレーム11との間に軸方向に締め付けた状態に保持するようになっている。
上述した図4に示すサイドフレーム11に形成された各締結孔11A1〜11A3は、図7にその一部(各締結孔11A1,11A2)が示されるように、サイドフレーム11にバーリング加工によってシート外側に向けて円筒状に張り出す立ち上がり部11B1〜11B3を形成することにより、その内部に形成される貫通した孔として形成されている。上記各締結孔11A1〜11A3を形成する立ち上がり部11B1〜11B3の孔の内周面には、上述した各締結ボルトB1〜B3のネジ部B1c〜B3c(雄ネジ)を螺合させることのできる雌ネジ(図示省略)が切られている。
図6〜図7に示すように、上述したブラケット14の下側のボス部6D2の貫通孔6D2aと位置合わせされる通し孔14A2は、上記下側のボス部6D2の貫通孔6D2a内に通される軸足部B2bの外径とほぼ同じ(僅かに大きい)内径を有した丸孔形状とされている。そして、上記通し孔14A2は、その内部に、下側のボス部6D2の貫通孔6D2a内に通される締結ボルトB2の軸足部B2bが差し込まれて、軸足部B2bと緩やかに嵌合した状態とされるようになっている。これにより、ブラケット14は、上記通し孔14A2に通された締結ボルトB2の軸足部B2bによって、径方向にガタ付きを生じないように強く支えられた状態とされている(図8〜図9参照)。上記の締結構造により、ブラケット14が、チルト用のモータユニット6Dをサイドフレーム11に取り付けるための差込み式の締結構造COに通されて、チルト用のモータユニット6Dと共にサイドフレーム11に強固に一体的に取り付けられた状態とされている。
次に、図1〜図2に戻って、シートリフタ5の構成について説明する。シートリフタ5は、上述したように、シートクッション3の各サイドフレーム11とフロア上の各スライドレール4との間に介在する左右一対のフロントリンク5Aと左右一対のリヤリンク5Bとを有する。更に、各フロントリンク5Aの上端部を各サイドフレーム11に回転可能な状態に連結する円鋼管製のブッシュ5Gを有する。更に、各リヤリンク5Bの上端部を各サイドフレーム11に回転可能な状態に連結する円鋼管製のブッシュ5Hを有する。更に、各フロントリンク5Aの下端部を各スライドレール4の上部に回転可能な状態に連結する回転軸5Jを有する。更に、各リヤリンク5Bの下端部を各スライドレール4の上部に回転可能な状態に連結する回転軸5Kを有する。
更に、上述した各フロントリンク5Aの上端部を各サイドフレーム11に連結する各ブッシュ5G同士を、互いに一体的な状態に繋ぐ円鋼管製のフロントパイプ5Cを有する。更に、上述した各リヤリンク5Bの上端部を各サイドフレーム11に連結する各ブッシュ5H同士を、互いに一体的な状態に繋ぐ円鋼管製のリヤパイプ5Dを有する。更に、車両外側のリヤリンク5Bにブッシュ5Hを介して回転駆動力やブレーキ力を伝達するギヤリンク5Eを有する。
上記ギヤリンク5Eは、ブッシュ5Hに一体的に結合されており、車両外側のサイドフレーム11の外側部に取り付けられたリフタ用のモータユニット5Fからの動力伝達を受けることにより、ブッシュ5Hと一体的となって同側のサイドフレーム11に対して回転するようになっている。そしてこの回転により、ギヤリンク5Eは、上述したブッシュ5Hと一体的に結合された車両外側のリヤリンク5Bを一体的に駆動回転させると共に、上記ブッシュ5Hと一体的に結合されたリヤパイプ5Dも一体的に回転させて、リヤパイプ5Dの車両内側の端部に結合されたブッシュ5Hに一体的に結合されている車両内側のリヤリンク5Bも一体的に駆動回転させるようになっている。
上記の動作によって、両リヤリンク5B及びこれらと4節リンクを構成する各フロントリンク5Aが一斉にリンク運動し、シート1の着座高さを上げ下げするようになっている。上記シート1の着座高さを上げ下げする動きは、リフタ用のモータユニット5Fの駆動が止められることにより、そのブレーキ力によって、ギヤリンク5E及びこれと一体的となって動く各リヤリンク5Bの動きが止められて制止されるようになっている。
各スライドレール4は、そのうちの車両内側に配設されたスライドレール4が、同側のサイドフレーム11のほぼ直下位置に配設された状態となっているのに対し、車両外側に配設されたスライドレール4が、同側のサイドフレーム11よりも外側(シート外側)に張り出した位置に配設された、シート幅方向の設置間スペースの広い構成とされている。しかし、上記のように各スライドレール4間の設置間隔が各サイドフレーム11間のそれよりも広い構成となっていても、上述したように車両外側に配設されたフロントリンク5Aやリヤリンク5Bが、同側のサイドフレーム11よりも外側(シート外側)に位置して、同側のサイドフレーム11からシート外側へ延びる各ブッシュ5G,5Hの延びた先の箇所に連結される構成となっていることにより、同側のサイドフレーム11とスライドレール4との間のシート幅方向の寸法差を補うためのブラケット等の別部品を追加して設けることなく、これらシート幅方向に寸法差のある各サイドフレーム11と各スライドレール4との間に各フロントリンク5Aと各リヤリンク5Bとを簡単に組み付けることができるようになっている。
また、上述したフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとの間には、シートクッション3のクッションフレーム10の上部に組み付けられる図示しないクッションパッドを下方側から広く弾性的に受け止められるようにするための金属製の支持バネ13(Sバネ)が前後方向に架け渡される形でシート幅方向に4本並んで設けられた状態とされている。これら支持バネ13は、それぞれ、シート幅方向に波状に曲げられた形に形成されており、それらの前後側の各端部が、樹脂キャップ13Aを介してフロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dに上方側から引掛けられて装着された状態とされている。これにより、各支持バネ13は、フロントパイプ5Cやリヤパイプ5Dが上述したシートリフタ5やチルト機構6の動作によって軸回転しても、これらの軸回転する動きに追従することなく、これらの動きを逃がして常にフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとの間で一定の姿勢状態に張設された状態として保持されるようになっている。
以上をまとめると、本実施例のシート1(乗物用シート)は、次のような構成となっている。すなわち、シート1は、チルト用のモータユニット6D(モータユニット)をシートクッション3のサイドフレーム11(シートフレーム)に取り付けるための差込み式の締結構造COを有する。ブラケット14が、上記差込み式の締結構造COに通されてチルト用のモータユニット6Dと共にサイドフレーム11に取り付けられている。このような構成となっていることにより、チルト用のモータユニット6Dをサイドフレーム11に取り付けるための差込み式の締結構造COによって、ブラケット14をサイドフレーム11に取り付けることが可能となる。したがって、ブラケット14やチルト用のモータユニット6Dのサイドフレーム11に対する取付け構造の合理化を図ることができると共に、これら全体の設置スペースを小さく抑えることができる。
上記差込み式の締結構造COは、2本の締結ボルトB1,B2(締結具)を備えて構成されている。ブラケット14は、上記2本の締結ボルトB1,B2のうちの一方(締結ボルトB1)が通されるチルト用のモータユニット6Dのボス部6D1(第1のボス部)に対して外周部に嵌め込まれると共に、2本の締結ボルトB1,B2のうちの他方(締結ボルトB2)が通されるチルト用のモータユニット6Dのボス部6D2(第2のボス部)に対してサイドフレーム11との間に差込み方向に押し挟まれた状態として、2本の締結ボルトB1,B2の締結によりサイドフレーム11に取り付けられている。このような構成となっていることにより、ブラケット14をサイドフレーム11に対して軸方向と径方向とにガタ付かせない状態に取り付けることができる。また、ブラケット14を予めチルト用のモータユニット6Dのボス部6D1に嵌め込んで仮保持させた状態として、これらのサイドフレーム11への設置をひとまとめに行えるようになる。
また、ブラケット14は、チルト用のモータユニット6Dのボス部6D2とサイドフレーム11との間に押し挟まれる挟持領域14Abに対して、チルト用のモータユニット6Dのボス部6D1の外周部に嵌め込まれる嵌合領域14Aaが、ボス部6D1の外周部に深く嵌め込まれるように、段差状に折れ曲がった形状とされている。このような構成となっていることにより、ブラケット14を予めチルト用のモータユニット6Dのボス部6D1に嵌め込んで仮保持させた際に、ブラケット14がボス部6D1から脱落しにくくなるため、ブラケット14の仮保持を安定させることができる。
また、ボス部6D1が樹脂製であり、サイドフレーム11に締結されることに伴う圧縮力により外周部がブラケット14に対して径方向に隙詰めされるようになっている。このような構成となっていることにより、ボス部6D1をブラケット14に干渉させる設計にしても、ボス部6D1やブラケット14に破損が生じにくくなる。したがって、ブラケット14をボス部6D1に対してガタ付きの少ない状態に嵌合させやすくすることができる。
また、ボス部6D1が、ブラケット14を回転止めした状態に嵌合させることのできる外周部形状(長円状の外周面形状)とされている。このような構成となっていることにより、ブラケット14がボス部6D1に対して回り止めされた状態に仮保持されるようになる。したがって、ブラケット14をより簡便にサイドフレーム11に設置することができる。
また、ボス部6D1のブラケット14を嵌合させる外周部領域が先細り状の形に形成されており、サイドフレーム11に締結されることに伴う圧縮力により上記外周部領域がブラケット14に対して径方向に隙詰めされるようになっている。このような構成となっていることにより、ブラケット14をボス部6D1に対してよりガタ付きの少ない状態に嵌合させることができる。
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の運転席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
また、本発明のモータユニットやブラケットが取り付けられる「シートフレーム」は、シートクッションの車両外側のサイドフレームに限らず、シートを構成するいずれかのフレームとして構成されたものであればよい。具体的には、シートバックやシートクッションを構成する各種のフレームやブラケットなどが挙げられる。また、上記シートフレームにブラケットと共に取り付けられる「モータユニット」は、チルト用のモータユニットに限らず、リフタ用のモータユニットやスライドレールを動作させるためのスライド用のモータユニット等、種々のモータユニットを適用することができるものである。また、上記モータユニットと共にシートフレームに取り付けられる「ブラケット」は、アウタシールドをサイドフレームに組み付けるものに限らず、フロントシールドやインナシールドをシートフレームに組み付けたり、ワイヤハーネスや各種電装品等、シールド以外の様々なシート構成部品をシートフレームに組み付けるためのものとして用いることができるものである。
また、モータユニットをシートフレームに取り付けるための「差込み式の締結構造(締結具)」は、締結ボルトの他、リベット等の他の差込み式の締結構造(締結具)からなるものであってもよい。また、「ブラケット」は、2本の締結具のうちの一方が通されるモータユニットの第1のボス部に対して、外周部に嵌め込まれて回転止めされると共に軸方向にもあてがわれた状態として、第1のボス部によってサイドフレームとの間に差込み方向に押し挟まれた状態に組み付けられるようになっているものであってもよい。
また、「ブラケット」は、第2のボス部とサイドフレームとの間に押し挟まれる挟持領域と、第1のボス部の外周部に嵌め込まれる嵌合領域とが、段差状ではなく、面一状の形とされたものであっても構わない。また、上記挟持領域と嵌合領域との厚みを変えることで、嵌合領域が第1のボス部の外周部に深く嵌め込まれる段差形状とされたものであってもよい。
また、モータユニットの第1のボス部や第2のボス部が金属等の樹脂以外の材料によって形成されたものであってもよい。また、ブラケットを回転止めした状態に嵌合させる第1のボス部の外周部形状は、長円以外にも、三角形や四角形等の多角形状とされたものや、形状の一部に凹凸を有する形状としたものなど、正円以外の形状から成るものであればよい。また、「第1のボス部」は、ブラケットを回転止めしたり仮保持したりすることなく、外周部にブラケットを嵌め込むように組み付けられるものであってもよい。また、第1のボスと第2のボスとの双方に、ブラケットを外周部に嵌め込んで仮保持させたりサイドフレームとの間に押し挟んだりする構造を設定したものであってもよい。
また、差込み式の締結構造による締結により第1のボス部をブラケットに対して径方向に隙詰めする構造は、第1のボス部の先端側領域を先細り状にする以外にも、締結に伴う圧縮力によって、外周部が径方向の外側に膨張変形したり突起が軸方向に圧入されたりして径方向に隙詰めする構成を利用したもの等であってもよい。