WO2010074322A1

WO2010074322A1 - 車高調整装置

Info

Publication number: WO2010074322A1
Application number: PCT/JP2009/071862
Authority: WO
Inventors: 望月隆久
Original assignee: カヤバ工業株式会社
Priority date: 2008-12-24
Filing date: 2009-12-24
Publication date: 2010-07-01
Also published as: CN102026835B; EP2368728A4; EP2368728B1; US20110101632A1; EP2368728A1; US8408561B2; CN102026835A

Abstract

車両の懸架バネ (S) の一端を支持する変位可能なスプリングシート (2) を作動室 (J) の流体圧で支持する。作動室 (J) に作動流体を供給するねじポンプ (P) はシリンダ (10) の内側にピストン (11) に画成されたポンプ室 (L) を備える。ピストン (11) にはナット (13) が一体化され、ナット (13) にねじ軸 (14) が螺合する。ねじ軸 (14) の回転駆動により、ナット (13) を介してピストン (11) をねじ送りすべく、シリンダ (10) に固定されたガイド部材 (16) がナット (13) またはピストン (11) の外周に嵌合する。非金属製の低摩擦材料で構成されたガイド部材 (16) がピストン (11) の駆動抵抗を減らし、ナット (13) とねじ軸 (14) との螺合部の耐久性を高める。

Description

車高調整装置

　この発明は、車両の高さを調整する車高調整装置に関する。

　日本国特許庁が２００１年に発行したＪＰ２００１−０８８５２８Ａは、車両の車高調整装置を開示している。
　車高調整装置は、例えば車両の車軸と車体との間に介装される油圧緩衝器と、その外周に配置される懸架バネとからなる懸架システムに適用される。懸架バネの一端を支持するスプリングシートを油圧緩衝器の外周に軸方向に摺動可能に嵌合させ、油圧緩衝器の外周に形成された作動室の圧力でスプリングシートの支持位置を変化させるのである。作動室には油圧緩衝器の外側に設けたねじポンプから油圧が供給される。
　ねじポンプは、シリンダと、シリンダに収装されたピストンとを備え、シリンダ内にピストンによってポンプ室が画成される。ポンプ室は配管を通じて作動室に連通する。ピストンは電動モータに回転駆動されるネジ軸と、ネジ軸に螺合し、かつシリンダに対する回転を阻止されたナットとを介してシリンダの軸方向に駆動される。電動モータがネジ軸を回転させると、ナットが軸方向に変位し、ナットに支持されたピストンがシリンダに対して軸方向に変位することで、ポンプ室を収縮させる。
　ポンプ室から押し出された作動油が作動室へ供給されると作動室は拡大し、懸架バネを押し縮める向きにスプリングシートを変位させる。スプリングシートのこの変位により車両の車高は高くなる。一方、ねじポンプのピストンがポンプ室を拡大すると、懸架バネのばね荷重により作動室の作動油が拡大するポンプ室に流入し、スプリングシートは懸架バネを伸長させる向きに変位する。その結果、車高は低くなる。

　このねじポンプにおいて、ナットは、射出成形したプラスチック材で構成される。ナットには側方に突出するアームが一体に形成される。アームがシリンダに軸方向に形成したスリットに挿入されることで、ナットの回り止めが施される。ネジ軸に螺合するナットは、したがって、ネジ軸の回転により軸方向にのみ変位する。
　ナットをプラスチック材で形成することは、アームがスリット内を変位する際の摩擦抵抗を小さく抑え、ナットを軸方向へ駆動するための電動モータの負荷とエネルギ消費を小さくするうえで好ましい。
　一方、作動室には懸架バネのばね荷重による圧縮力が常に作用している。ポンプ室は常時作動室に連通しているので、ナットにはピストンを介して常に車体重量に基づく軸方向力が加えられる。車両の走行中は車体が上下に振動して懸架バネは圧縮と伸長を繰り返す。その結果、ナットに加わる最大軸方向力は車体重量に基づく軸方向力を大幅に上回る。この最大軸方向力はナットとネジ軸との螺合部にせん断力として作用する。ナットをプラスチック材で構成した従来技術の車高調整装置においては、ナットのねじ山がせん断力により損傷する可能性がある。
　この発明の目的は、したがって、車高調整装置のねじポンプに適用されるナットとねじ軸との螺合部のせん断力に対する耐久性を高めることである。
　以上の目的を達成するために、この発明は、車両の車高を調整する車高調整装置において、車両の懸架バネの一端を支持するスプリングシートと、スプリングシートを流体圧で支持する、流体を充填した作動室と、作動室へ作動流体を供給するねじポンプと、を備えている。
　ねじポンプは、シリンダと、シリンダの内周に摺接するピストン、シリンダ内にピストンに画成され、作動室に連通するポンプ室と、ピストンに一体化された金属製のナット、ナットは内周に雌ねじを備える、と、動力によって回転駆動されるねじ軸、螺子軸は雌ねじに螺合する雄ねじを備える、と、シリンダに固定され、ナットまたはピストンの外周に嵌合することで、ナットの回転を阻止しつつナットまたはピストンを軸方向に案内する非金属製の低摩擦材料で構成されたガイド部材と、を備える。
　この発明の詳細並びに他の特徴や利点は、明細書の以下の記載の中で説明されるとともに、添付された図面に示される。

　ＦＩＧ．１はこの発明の第１の実施例による車高調整装置の縦断面図である。
　ＦＩＧ．２はこの発明の第１の実施例によるピストンの拡大縦断面図である。
　ＦＩＧ．３はこの発明の第２の実施例による車高調整装置の縦断面図である。
　ＦＩＧ．４はこの発明の第２の実施例によるねじポンプの要部縦断面図である。
　ＦＩＧ．５はこの発明の第３の実施例による車高調整装置の縦断面図である。
　ＦＩＧ．６はこの発明の第３の実施例によるねじポンプの要部横断面図である。
　ＦＩＧ．７はこの発明の第４の実施例による車高調整装置の縦断面図である。
　ＦＩＧ．８はこの発明の第４の実施例によるガイド部材の斜視図である。

　図面のＦＩＧ．１を参照すると、車高調整装置１は、モータサイクルにおいて後輪軸を支持するスイングアームと車体との間に介装される懸架バネＳと油圧緩衝器Ｄとからなる車両懸架装置に適用される。懸架バネＳは油圧緩衝器Ｄの外側に配置される。油圧緩衝器Ｄはアウターシェル３とロッド４との伸縮に対して減衰力を発生させるように構成されている。アウターシェル３の基端、すなわち図における上端は車体に係止され、ロッド４の先端、すなわち図における下端はスイングアームに係止される。
　懸架パネＳの一端は油圧緩衝器Ｄのロッド４の先端に固定されたスプリングシート６に支持される。
　車高調整装置は、懸架パネＳのもう一端を支持するスプリングシート２と、スプリングシート２に油圧を及ぼす作動室Ｊと、作動室Ｊに作動油を供給するねじポンプＰとを備える。
　アウターシェル３の基端部の外周はハウジング５に覆われる。ハウジング５は、アウターシェル３を所定の間隔を空けて覆う筒体５ａと、筒体５ａの上端から内周側に突出してアウターシェル３の外周に固定される基部５ｂとを備える。スプリングシート２は油圧緩衝器Ｄのアウターシェル３の外周に摺動自由に嵌合してハウジング５の内側に侵入する筒状の侵入部２ａと、侵入部２ａの下端に設けられて懸架バネＳの上端を支持する環状のシート部２ｂとからなる。作動室Ｊはハウジング５の内側に侵入部２ａの上端に臨んで形成される。
　懸架バネＳは、スプリングシート２と６に挟持されることで、油圧緩衝器Ｄと一体に伸縮する。懸架バネＳは油圧緩衝器Ｄに伸長方向の荷重を常に及ぼしている。その結果、作動室Ｊには懸架バネＳのばね荷重に基づく圧縮力が常に作用する。
　ねじポンプＰから作動室Ｊに作動油を供給すると、作動室Ｊの容積が増大し、スプリングシート２が図の下方へ移動する。その結果、車体とスイングアームとの間隔が押し広げられ、モータサイクルの車高が高くなる。作動室Ｊから作動油をねじポンプＰに還流させると、懸架バネＳのばね荷重で作動室Ｊが収縮し、スプリングシート２が図の上方へ移動する。その結果、車体とスイングアームとの間隔が縮まり、モータサイクルの車高が低くなる。
　ねじポンプＰは、シリンダ１０と、シリンダ１０内に摺動自在に収装される樹脂製のピストン１１とを備える。シリンダ１０内にはピストン１１に臨んでポンプ室Ｌが画成される。
　ピストン１１を駆動するため、ねじポンプＰは内周に雌ねじ１３ａを形成した金属製の筒状のナット１３と、雌ねじ１３ａに螺合する雄ねじ１４ａを形成したねじ軸１４とからなる送りねじ機構と、ねじ軸１４を回転駆動する電動モータＭとを備える。
　シリンダ１０は、底部を上にしたシリンダ本体１０ａと、シリンダ本体１０ａの下端の開口部から外側に向かってラジアル方向に広がるフランジ１０ｂと、フランジ１０ｂの縁部に形成されたブラケット１０ｄとを備える。シリンダ本体１０ａには、開口端の近傍に径の大きな拡径部１０ｃが形成される。拡径部１０ｃの内周には全長に渡って雌ねじが形成される。
　ＦＩＧ．２を参照すると、ピストン１１はピストン本体１１ａと、ピストン本体１１ａからポンプ室Ｌと反対方向に伸びる筒部１１ｂとを備える。ピストン本体１１ａと筒部１１ｂは樹脂により一体形成される。
　ナット１３は筒部１１ｂの内周に嵌合する。これらの嵌合部、すなわちナット１３の外周と、筒部１１ｂの内周は、それぞれ六角形断面に形成される。ただし、嵌合部の断面は六角形に限らず、円形以外のいかなる形状であっても良い。
　再びＦＩＧ．１を参照すると、シリンダ１０には筒部１１ｂの外周を覆う樹脂製のガイド部材１６が固定される。ガイド部材１６は拡径部１０ｃの内周に螺合する、外周に雄ねじを形成した大径筒１６ａと、大径筒１６ａから上方に伸びるガイド筒１６ｂと、これらを接続するステップ１６ｄからなる。大径筒１６ａの内周は例えば六角形のような円形以外の断面形状に形成される。大径筒１６ａの内周に形状に嵌合する治具を用いて、大径筒１６ａの雄ねじをシリンダ１０の拡径部１０ｃの雌ねじにねじ込むことで、ガイド部材１６はシリンダ１０に固定される。
　ピストン１１の筒部１１ｂはガイド筒１６Ｂの内周に摺接する。筒部１１ｂとガイド筒１６Ｂの相対回転を阻止するために、嵌合部の横断面は円形以外の形状、例えば六角形に形成される。ガイド筒１６ｂにより、ピストン１１はシリンダ１０に対して軸方向に変位可能かつ相対回転を阻止された状態で支持される。
　このように、ピストン１１の筒部１１ｂがガイド部材１６を介してシリンダ１０に対する回転を阻止されることで、ナット１３もシリンダ１０に対する回転を阻止される。その結果、ピストン１１とナット１３はシリンダ１０に対して、軸方向、すなわち図の上下方向への変位のみが許容される。
　なお、筒部１１ｂのガイド部材１６に対する回転の阻止のために、必ずしも、筒部１１ｂの外周とガイド筒１６ｂの内周が全周に渡って嵌合している必要はない。例えば、筒部１１ｂにキーあるいはキー溝を形成し、ガイド筒１６ｂにキー溝あるいはキーを形成し、キーとキー溝の係合により回り止めを図ることも可能である。
　一方、ガイド筒１６ｂを筒部１１ｂの全周に摺接させると、筒部１１ｂのラジアル方向の位置決めが行われ、ナット１３を保持する筒部１１ｂの軸のぶれやがたつきを抑制することがてきる。したがって、ピストン１１をシリンダ１０に対して軸方向へスムーズに変位させることができる。
　ガイド筒１６ｂを全長に渡って同一断面とする必要もない。例えばガイド筒１６ｂの先端部の内周を六角形の断面に形成し、基端部の内周を六角形より大きな円形断面とすることが可能である。このように嵌合部の長さを短くすると、筒部１１ｂがガイド部材１６に対して軸方向に変位する際の摩擦抵抗を減らすことがてきる。
　ポンプ室Ｌは、シリンダ本体１０ａの頂部に接続される管路１２を介して作動室Ｊに連通する。ピストン本体１１ａの外周には、シールリング１５が装着される。シールリング１５はシリンダ本体１０ａの内周に摺接することで、ポンプ室Ｌの作動油がピストン１１の下方にリークするのを阻止する。
　ねじ軸１４は、基部１４ｂと、基部１４ｂからナット１３の内側に侵入する軸部１４ｃと、基部１４ｂからラジアル方向に外側に向かって円盤状に広がるフランジ１４ｄと、基部１４ｂの下端に形成された孔部１４ｅとを備える。前述の雄ねじ１４ａは軸部１４ｃの先端外周に形成される。孔部１４ｅの内周は円形以外の断面に形成される。フランジ１４ｄはガイド部材１６のステップ１６ｄに接することでねじ軸１４の上方への変位を規制する。シリンダ１０の拡径部１０ｃの内周には下方から蓋１８が螺合する。蓋１８とフランジ１４ｄとの間にはねじ軸１４を水平方向に回転自由かつ軸方向上向きに支持するスラスト軸受１７が介装される。基部１４ｂは蓋１８を貫通して孔部１４ｅを下向きに露出させる。フランジ１４ｄの径は、大径筒１６ａの内側でフランジ１４ｄが回転するのに支障のない大きさに設定する。
　ねじポンプＰの組み立てに当たっては、シリンダ１０にピストン１１、ナット１３、ガイド部材１６を組み付け、ねじ軸１４をナット１３に螺合させ、フランジ１４ｄがステップ１６ｄに接するまでねじ軸１４を回転させる。その状態でスラスト軸受１７がフランジ１４ｄと蓋１８の先端に挟持されるように、蓋１８をシリンダ１０の拡径部１０ｃの内周にねじ込む。
　蓋１８にはあらかじめ筒状のブッシュ１９が装着される。ブッシュ１９はねじ軸１４の基部１４ｂの外周に摺接することで、ねじ軸１４のラジアル方向の軸のぶれを阻止しつつ、ねじ軸１４をシリンダ１０に回転自由に支持する。
　蓋１８の上端の外周にはあらかじめステップ１８ａが形成される。ステップ１８ａは蓋１８をシリンダ１０の拡径部１０ｃの内周に螺合させた時に、同じく拡径部１０ｃに螺合するガイド部材１６の下端に当接する。つまり、ガイド部材１６と蓋１８とがダブルナットのように機能することで、ガイド部材１６のシリンダ１０に対する弛みを阻止し、ガイド部材１６がピストン１１と一体にシリンダ１０に対して回転しないようにする。
　孔部１４ｅには、ウォームホイール２０のシャフト２０ａの一端が嵌合する。シャフト２０ａの一端は、孔部１４ｅの内周の断面形状に等しい断面形状を備え、孔部１４ｅに一端を嵌合したシャフト２０ａは、ウォームホイール２０とねじ軸１４とをシリンダ１０に対して一体に回転させる。
　シャフト２０ａのもう一端はウォームホイール２０の下方へ伸びて、シリンダ１０のフランジ１０ｂに付設したギヤホルダ２１の孔部２１ａに侵入する。ウォームホイール２０は、ギヤホルダ２１によってシリンダ１０に回転自在に支持される。
　ウォーム２２がウォームホイール２０に噛み合わされる。ウォーム２２はブラケット１０ｄに固定される電動モータＭに結合し、電動モータＭの回転に応じてウォームホイール２０を回転させる。電動モータＭの回転を減速してねじ軸１４へ伝達する必要がなければ、ウォーム２２とウォームホイール２０を省略し、電動モータＭで直接ねじ軸１４を回転駆動しても良い。また、減速を要する場合でも、ウォーム２２とウォームホイール２０による減速機構に代えて他の歯車によるいかなる減速機構を適用しても良い。
　電動モータＭを駆動すると、ウォーム２２とウォームホイール２０により電動モータＭの回転が減速されてねじ軸１４に伝達される。ねじ軸１４が回転すると、雌ねじ１３ａと雄ねじ１４ａによるねじ送り機構がピストン１１をシリンダ１０に対して軸方向変位させる。
　ピストン１１が図の上方へ変位すると、ポンプ室Ｌが圧縮され、ポンプ室Ｌの容積減少分相当の作動油がねじポンプＰから作動室Ｊへ流入し、車高が高くなる。ピストン１１を図の下方へ変位させると、ポンプ室Ｌが拡大し、懸架バネＳのばね荷重で収縮する作動室ＪからねじポンプＰのポンプ室Ｌへと作動油が流出し、車高が低くなる。
　ピストン１１の筒部１１ｂはガイド部材１６によって回転を阻止され、ナット１３も筒部１１ｂに対して回転を阻止される。そのため、電動モータＭを駆動してねじ軸１４を回転させると、ナット１３は回転することなくねじ送りされて軸方向へ変位し、ピストン１１もこれに伴って変位する。
　ピストン１１にはねじ軸１４のトルクが伝達され、ガイド部材１６のガイド筒１６ｂの内周とピストン１１の筒部１１ｂの外周との摩擦により、ガイド部材１６とピストン１１間に摩擦抵抗が発生する。この車高調整装置１においては、ピストン１１とガイド部材１６とがともに低摩擦の樹脂製であるためガイド部材１６とピストン１１を間に生じる摩擦抵抗は小さい。したがって、電動モータＭの負荷を軽減でき、電動モータＭがピストン１１を駆動する際のエネルギ消費量を減らすことができる。また、電動モータＭに要求される出力トルクが小さくなるため、電動モータＭの小型化にも好ましい作用をもたらす。
　雌ねじ１３ａは、金属製のナット１３の内周に形成されるので、強度が充分に確保されている。懸架バネＳのばね荷重でポンプ室Ｌに過大な圧縮力が作用し、ナット１３の雌ねじ１３ａとねじ軸１４の雄ねじ１４ａとの噛み合い部のねじ山に大きなせん断力が作用する場合でも、雌ねじ１３ａのねじ山が潰れる心配はない。
　また、ピストン１１全体が樹脂製であるので、ピストン１１におけるピストン本体１１ａがシリンダ１０におけるシリンダ本体１０ａの頂部や、ガイド部材１６の上端に接触しても金属同士の衝突とはならない。また、ピストン１１がシリンダ１０やガイド部材１６に衝突して停止する事態となっても衝突の衝撃が樹脂により緩和され、衝突音も小さく抑えられる。
　ＦＩＧｓ．３と４を参照して、この発明の第２の実施例を説明する。
　ＦＩＧ．３を参照すると、この実施例による車高調整装置１はねじポンプＰの一部の構成が第１の実施例と異なる。第１の実施例との同一構成部には同一番号を付して説明を省略する。
　この実施例によるねじポンプＰにおいて、ピストン１１は金属製で、ピストン本体１１ａの下方にナット１３を一体に形成した構造を備える。ナット１３の内周には第１の実施例と同様に構成されたねじ軸１４が螺合する。
　ナット１３は樹脂製のガイド部材１６のガイド筒１６ｂの内周に嵌合する。嵌合部の横断面は例えば円形の両端を平行な２本の直線で切り落とした断面とする。ただし、嵌合部の横断面は円形以外のいかなる形状も可能である。嵌合部に関して、ガイド筒１６ｂの内周は必ずしもナット１３の外周と同一断面形状でなくても良い。要はガイド筒１６ｂがナット１３の回転を阻止できる嵌合状態であれば良い。ただし、ガイド筒１６ｂの内周をナット１３の外周と同一断面形状とすると、ナット１３のラジアル方向の変位が全方向に関して規制されるので、結果としてナット１３の変位が安定する。
　この実施例においては、樹脂製のガイド部材１６が金属製のナット１３の回転を阻止しつつ、ナット１３の軸方向の変位を案内する。したがって、第１の実施例と同様に、ガイド部材１６がピストン１１の変位に及ぼす摩擦抵抗を小さく抑えることができる。
　さらに、この実施例においては、ねじ軸１４の雄ねじ１４ａのねじ山の数を次のように決定する。
　この実施例では、雄ねじ１４ａはねじ軸１４の軸部１４ｃの先端外周にのみ形成されている。一方、雌ねじ１３ａはナット１３の全長に渡って形成されている。したがって、雄ねじ１４ａのねじ山数は、ナット１３の雌ねじ１３ａのねじ山数より少なく、ナット１３の雌ねじ１３ａとねじ軸１４の雄ねじ１４ａの螺合部のねじ山の数は雄ねじ１４ａのねじ山数によって決まる。
　そこで、この実施例では、雄ねじ１４ａのねじ山数をポンプ室Ｌ内の圧力によって雌ねじ１３ａと雄ねじ１４ａの螺合部に作用するせん断力に対抗可能な強度を満足する最小数に設定する。具体的には、螺合部に作用する最大せん断力と、ねじ山の材質、形状、及び寸法から定まるねじ山１個のせん断強度から、最大せん断力に耐えるねじ山の最小数を計算する。そして、雄ねじ１４ａのねじ山数をこのようにして求めた最小数に等しく設定する。
　雄ねじ１４ａのねじ山数をこのように設定することで、ねじ軸１４とナット１３との相対回転抵抗を最小限に抑えることができる。
　ＦＩＧ．４を参照すると、電動モータＭを駆動してねじ軸１４を回転させると、ナット１３は回転することなくねじ送りされ、ピストン１１がポンプ室Ｌを収縮させる方向へと軸方向に変位する。図は、ピストン１１がシリンダ１０の底部に当接し、ポンプ室Ｌが最収縮状態となった状態を示す。
　この状態で、ねじ軸１４の雄ねじ１４ａのすべてのねじ山が、ナット１３の雌ねじ１３ａとかみ合いうように、あらかじめ軸部１４ｃへの雄ねじ１４の形成位置を選択する。この設定により、ピストン１１のストローク位置によらず、雄ねじ１４ａと雌ねじ１３ａの螺合部のねじ山数が、最小数を下回ることはない。したがって、この実施例によれば、螺合部が充分なせん断抵抗を保持しつつ、ねじ軸１４とナット１３との相対回転抵抗を最小限に抑えられる。そのため、電動モータＭの負荷を軽減でき、電動モータＭがピストン１１を駆動する際のエネルギ消費量を減らすことができる。また、電動モータＭに要求される出力トルクが小さくなるため、電動モータＭの小型化にも好ましい作用をもたらす。
　ＦＩＧｓ．５と６を参照してこの発明の第３の実施例を説明する。
　この実施例は第２の実施例とガイド部材１６の構成が異なる。第２の実施例との同一構成部には同一番号を付して説明を省略する。
　この実施例においても、第２の実施例と同様にピストン本体１１ａとナット１３を一体に形成した金属製のピストン１１が用いられる。
　この実施例においては、ガイド部材１６のガイド筒１６ｂはナット１３の外周に摺接せず、ガイド筒１６ｂの上端内周に螺合する低摩擦の樹脂製のガイド１６ｘがナット１３の外周に摺接する。ガイド１６ｘは、ガイド筒１６ｂの上端内周に螺合する筒部材１６ｙと、ガイド筒１６ｂの上方で筒部材１６ｙからラジアル方向外側に延びるフランジ１６ｚとを備える。ガイド１６ｘとガイド筒１６ｂとの相対回転を阻止するために、筒部材１６ｙはガイド筒１６ｂの上端内周との螺合部は接着剤で固定する。あるいは筒部材１６ｙをガイド筒１６ｂの上端内周に螺合させる代わりに、筒部材１６ｙをガイド筒１６ｂの上端内周に圧入しても良い。
　筒部材１６ｙは非円形断面に形成され、ナット１３の外周に嵌合する。筒部材１６ｙの内周の断面はナット１３の外周の断面と同一形状に形成される。フランジ１６ｚは筒部材１６ｙをガイド筒１６ｂの上端に当接することで、筒部材１６ｙをガイド筒１６ｂの上端外周に螺合させる際の筒部材１６ｙの位置決めを行う。フランジ１６ｚはまた、下降するピストン１１に当接することで緩衝材の役割を果たす。なお、ガイド筒１６ｂの内周はナット１３の外周と接触しないように、第２の実施例よりも大きな径に形成される。
　この実施例においては、第２の実施例よりも、ナット１３とガイド部材１６との摺接距離が短く、したがって、ガイド部材１６がピストン１１の変位に及ぼす摩擦抵抗をより小さく抑えることができる。
　この実施例において、ガイド１６ｘは樹脂製であるが、ガイド部材１６の大径筒１６ａ、ガイド筒１６ｂ、及びステップ１６ｄは樹脂製であっても金属製であっても良い。
　ＦＩＧｓ．７と８を参照して、この発明の第４の実施例を説明する。
　この実施例は第２の実施例とガイド部材１６の構成が異なる。第２の実施例との同一構成部には同一番号を付して説明を省略する。
　この実施例においても、第２の実施例と同様にピストン本体１１ａとナット１３を一体に形成した金属製のピストン１１が用いられる。
　この実施例においては、樹脂製の一体のガイド部材１６により、ナット１３の回転阻止と、軸方向の案内とを行う。ナット１３の外形の断面は六角形に形成される。
　ＦＩＧ．８を参照すると、ガイド部材１６は大径筒１６ａ、ステップ１６ｄ、ガイド筒１６ｂ、及びテーパ部１６ｃを備える。
　大径筒１６ａは第１−第３の実施例と異なり、外周に雄ねじを形成せず、拡径部１０ｃの内径より小径に形成される。ステップ１６ｄには４個の上向きの突起１６ｅが等しい角度間隔で形成される。
　ＦＩＧ．７を参照すると、シリンダ１０の拡径部１０ｃの上端となるステップ１０ｅに下向きの４個の凸部１０ｆが角度間隔で形成される。ねじポンプＰの組み立てプロセスにおいて、ガイド部材１６をシリンダ１０の開口端から上向きに挿入する際に、ステップ１６ｄに形成された４個の上向きの突起１６ｅを、ステップ１０ｅに下向きに形成された４個の凸部１０ｆの間に嵌合させる。この状態で蓋１８を拡径部１０ｃに螺合させ、大径筒１６ａを蓋１８の先端とシリンダ１０のステップ１０ｅで挟持することで、ガイド部材１６はシリンダ１０に固定される。突起１６ｅがステップ１０ｅに当接することでガイド部材１６の軸方向の位置決めが行われるように、突起１６ｅの高さを凸部１０ｆの高さより高くすることも可能である。
　大径筒１６ａの内側には第１−第３の実施例と同様に、ねじ軸１４のフランジ１４ｄがスラスト軸受１７により回転自由に支持される。
　ガイド筒１６ｂはシリンダ本体１０ａの内周に嵌合する径に形成される。ＦＩＧ．７に示すように、ガイド筒１６ｂの内周の径は、ナット１３の外径より大きく形成される。テーパ部１６ｃはガイド筒１６ｂの上端から上方に外径を徐々に縮小するように向かって形成される。テーパ部１６ｃの先端は、図に示すように、ピストン１１が最も下向きに変位した位置でピストン１１に当接し、ピストン１１の下方への変位を規制する。
　テーパ部１６ｃの内周面１６ｆは、ナット１３の外周に摺接すべく、ナット１３の外形と同じ六角形に形成される。
　この実施例においては、ナット１３の外周はテーパ部１６ｃの内周面１６ｆのみに摺接する。したがって、第２の実施例と比べてナット１３とガイド部材１６との摺接距離が短く、ガイド部材１６がピストン１１の変位に及ぼす摩擦抵抗をより小さく抑えることができる。
　さらに、この実施例においては、ガイド筒１６ｂがシリンダ本体１０ａの内周に嵌合する。そのため、シリンダ本体１０ａとピストン１１とガイド部材１６とナット１３との同軸性が確保され、シリンダ１０内におけるピストン１１のスムーズな摺動が実現する。
　以上の説明に関して２００９年１２月２４日を出願日とする日本国における特願２００８−３２６９５５号、特願２００８−３２６９５６号、特願２００８−３２６９５７号、及び特願２００８−３２６９５８号内容をここに引用により合体する。
　以上、この発明をいくつかの特定の実施例を通じて説明してきたが、この発明は上記の各実施例に限定されるものではない。当業者にとっては、クレームの技術範囲でこれらの実施例にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。
　例えば、以上説明した実施例では、作動室Ｊとスプリングシート２を油圧緩衝器Ｄのアウターシェル３の外側に、油圧緩衝器Ｄと一体に設けているが、作動室Ｊやスプリングシート２を油圧緩衝器Ｄから独立して配置することも可能である。
　第２−第４の実施例では、ピストン本体１１ａとナット１３を一体に形成した金属製のピストン１１を用いているが、ピストン本体１１ａにはポンプ室Ｌの圧力が常に作用しているので、ピストン本体１１ａは軸方向に関して常にナット１３と一体に変位する。したがって、ピストン本体１１ａとナット１３を別体とすることも可能である。この場合にピストン本体１１ａを樹脂製とすれば、ピストン本体１１ａとシリンダ１０との摺動抵抗を小さく抑えることができる。
　第１、第３、及び第４の実施例においても、ねじ軸１４の雄ねじ１４ａとナット１３の雌ねじ１３ａとの螺合部のねじ山の数を、第２の実施例と同様に最大せん断力に耐えるねじ山の最小数に等しく設定することが可能である。その場合には、螺合部が充分なせん断抵抗を保持しつつ、ねじ軸１４とナット１３との相対回転抵抗を最小限に抑えられる。そのため、第１、第３、及び第４の実施例において、電動モータＭの負荷をさらに軽減でき、電動モータＭがピストン１１を駆動する際のエネルギ消費量をさらに減らすことができる。また、電動モータＭに要求される出力トルクがより小さくなるため、電動モータＭの小型化にも好ましい作用をもたらす。
　以上の各実施例においては、ねじ軸１４を電動モータＭで駆動しているが、ねじ軸１４はいかなる回転機械で駆動しても良い。

　以上述べたように、この車高調整装置は特にモータサイクルの車高調整に適しているが、他の車両にも適用可能である。
　この発明の実施例が包含する排他的性質あるいは特長は以下のようにクレームされる。

Claims

車両の車高を調整する車高調整装置において：
車両の懸架バネ（Ｓ）の一端を支持するスプリングシート（２）と；
スプリングシート（２）を流体圧で支持する作動室（Ｊ）と；
スプリングシート（２）を流体圧で支持する、流体を充填した作動室（Ｊ）と；
作動室（Ｊ）へ作動流体を供給する、次のように構成されたねじポンプ（Ｐ）：
　シリンダ（１０）と；
　シリンダ（１０）の内周に摺接するピストン（１１）と；
　シリンダ（１０）内にピストン（１１）に画成され、作動室（Ｊ）に連通するポンプ室（Ｌ）と；
　ピストン（１１）に一体化された金属製のナット（１３）、ナット（１３）は内周に雌ねじ（１３ａ）を備える、と；
　動力によって回転駆動されるねじ軸（１４）、ねじ軸（１４）は雌ねじ（１３ａ）に螺合する雄ねじ（１４ａ）を備える、と；
　シリンダ（１０）に固定され、ナット（１３）またはピストン（１１）の外周に嵌合することで、ナット（１３）の回転を阻止しつつナット（１３）またはピストン（１１）を軸方向に案内する非金属製の低摩擦材料で構成されたガイド部材（１６）と、を備える、と；
を備える。
クレーム１の車高調整装置において、ピストン（１１）は樹脂材料で構成され、シリンダ（１０）に摺接するピストン本体（１１ａ）とピストン本体（１１ａ）からポンプ室（Ｌ）と反対方向に伸びる筒部（１１ｂ）とを備え、ナット（１３）は筒部（１１ｂ）の中心に固定され、ガイド部材（１６）は樹脂材料で構成され、筒部（１１ｂ）の外周に嵌合する。
クレーム２の車高調整装置において、ガイド部材（１６）は全周を筒部（１１ｂ）に摺接する。
クレーム１の車高調整装置において、ピストン（１１）は金属材料で構成され、ナット（１３）はピストン（１１）と一体に形成され、ガイド部材（１６）は樹脂材料で構成され、ナット（１３）の外周に嵌合する。
クレーム１から４のいずれかの車高調整装置において、雄ねじ（１４ａ）と雌ねじ（１３ａ）の螺合部のねじ山の数は、螺合部に要求されるせん断強度を満たす最小数に設定される。
クレーム５の車高調整装置において、雄ねじ（１４ａ）と雌ねじ（１３ａ）のいずれか一方に形成されるねじ山の数を、最小数に等しく設定する。
クレーム１の車高調整装置において、ピストン（１１）は金属材料で構成され、ナット（１３）はピストン（１１）と一体に形成され、ガイド部材（１６）はナット（１３）の変位と干渉しない内径を有するガイド筒（１６ｂ）と、ガイド筒（１６）に固定され、ナット（１３）の外周に摺接する樹脂製のガイド（１６ｘ）とを備える。
クレーム７の車高調整装置において、ガイド（１６ｘ）はナット（１３）の外周に摺接する筒部材（１６ｙ）と筒部材（１６ｙ）の一端に形成され、ガイド筒（１６）とピストン（１１）の間に介在するフランジ（１６ｚ）とを備える。
クレーム７または８の車高調整装置において、筒部材（１６ｙ）は全周に渡って筒部（１１ｂ）に摺接する。
クレーム１から９のいずれかの車高調整装置において、ねじ軸（１４）はガイド部材（１６）に当接することで、ねじ軸（１４）とガイド部材（１６）の軸方向の相対変位を規制するフランジ（１４ｄ）を備える。
クレーム１０の車高調整装置において、シリンダ（１０）は内周の径を拡大した拡径部（１０ｃ）を備え、ガイド部材（１６）は軸方向の突起（１６ｅ）を備え、シリンダ（１０）は拡径部（１０ｃ）の内側において突起（１６ｅ）に係合して、ガイド部材（１６）の回転を阻止する凸部（１０ｆ）を備える。
クレーム１から１１のいずれかの車高調整装置において、ガイド部材（１６）はシリンダ（１０）の内周に嵌合するガイド筒（１６ｂ）と、ガイド筒（１６ｂ）の先端に連続して形成され、ナット（１３）の外周に嵌合する内周面（１６ｆ）を形成した部材（１６ｃ）とを備え、ガイド筒（１６ｂ）の内周の径はナット（１３）の外周の形より大きく設定される。