明 細 書
半導体装置及び半導体装置の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関し、特に、高周波用の Ga N (窒化ガリウム)系 FET (電界効果トランジスタ)及びその製造方法に関する。
背景技術
[0002] GaN等の化合物半導体 FETを用いた高周波大電力用の半導体装置においては 、ドレイン電極に高い電圧が印加されるため、ゲート電極の角部に電界集中が生じ、 半導体素子が破壊されることがある。
[0003] 従来、ゲート電極とソース電極との間の絶縁層上に、第 4の電極としてフィールドプ レートを設け、このフィールドプレートをソース電極と電気的に接続させることにより、 ゲート電極における電界集中を緩和し、半導体素子の破壊を防止する技術が知られ ている。
[0004] 図 11はこのようなフィールドプレート電極を設けた半導体装置の一例を示す断面図 である。この半導体装置は、図に示すように、半絶縁性 SiC (炭化シリコン) 47上に、 GaN層 48と、 AlGaN (窒化アルミニウムガリウム)層 49が積層形成され、 AlGaN層 4 9の表面上には、ショットキー電極であるゲート電極 50と、ォーミック電極であるソース 電極 51及びドレイン電極 52とが形成されている。ゲート電極 50、ソース電極 51、ドレ イン電極 52力 互いに平行に配列されている。これらの電極を含む AlGaN層 49の 表面は絶縁膜 54によって覆われている。この絶縁膜 54上には、ゲート電極 50及びド レイン電極 52の間にフィールドプレート電極 55が設けられている。
[0005] このフィールドプレート電極 55は、同じくストライプ状の導体により形成されており 、ゲート電極 50及びドレイン電極 52に平行に配置されている。このフィールドプレー ト電極 55は、図示しないがその幅方向においてゲート電極 50と並行、もしくは一部ォ 一バーラップして用いられ、また、ワイヤ等の配線部材によりソース電極 51に接続さ れ、ソース電極 51と同じ電位に保持されている。
[0006] このフィールドプレート電極 55によって、高いドレイン電圧によるゲート電極 50のェ
ッジ部 56における電界集中が緩和される。これにより、フィールドプレート電極 55に よって FETの耐圧が向上し、電流コラブス現象が抑制されることは、例えば、特許文 献 1および特許文献 2に記載されるものが知られている。
[0007] 特許文献 1:特開平 9 205211号公報
特許文献 2 :特開 2002— 231733号公報
しかしながら、フィールドプレート電極 55がゲート電極 50の近傍に配置されることに よって、ゲート電極 50には寄生容量が発生する。また、ゲート電極 50とフィールドプ レート電極 55とがオーバーラップする部分は、寄生容量が大きくなり、高周波領域で の FETの増幅特性が劣化する。すなわち、寄生容量によって FETの利得が低下す る。そして、フィールドプレート電極 55の下の絶縁膜 54の膜厚が薄いほど、この利得 の低下は大きい。
[0008] このように、第 4の電極であるフィールドプレート電極による FETの電流コラブスの 防止あるいは耐圧の向上と FETの増幅利得とは互いにトレードオフの関係にある。
[0009] 本発明の目的は、このトレードオフの関係を解決し、電界集中の緩和による素子破 壊を防止するとともに、利得の低下をも防止することができる半導体装置を提供する ことにある。
[0010] さらに、本発明の目的は、上記の課題に鑑み、高周波信号が入出力される第 4の 電極を備えた半導体装置において、素子上の電極の占有する面積を小さくし、簡便 に製造することが可能な半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することにあ 発明の開示
[0011] 上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、基板上に形成された窒化 物系化合物半導体層と、この半導体層上に形成されたソース電極と、このソース電極 力、ら離間した前記半導体層上の位置に形成されたドレイン電極と、このドレイン電極 及び前記ソース電極間の前記半導体層上に形成されたゲート電極と、このゲート電 極を覆うように前記半導体層及びこの上に形成された絶縁膜と、この絶縁膜上に形 成されたフィールドプレート電極と、このフィールドプレート電極と前記ソース電極とを 接続する抵抗体とを備え、この抵抗体は、前記ゲート電極と前記フィールドプレート
電極間の浮遊容量の高周波インピーダンスより大きな抵抗値を有する半導体装置が 提供される。
[0012] 本発明の他の態様によれば、基板上に形成された窒化物系化合物半導体層と、こ の半導体層上に形成されたソース電極と、このソース電極から離間した前記半導体 層上の位置に形成されたドレイン電極と、このドレイン電極及び前記ソース電極間の 前記半導体層上に形成されたゲート電極と、このゲート電極を覆うように前記半導体 層及びこの半導体層の上に形成された絶縁膜と、この絶縁膜上に形成されたフィー ルドプレートと、このフィールドプレートと前記ソース電極とを接続する抵抗体とを備え 、この抵抗体は、前記ゲート電極と前記フィールドプレート間の浮遊容量の高周波ィ ンピーダンスよりも大きな抵抗値を有し、前記半導体層のシート抵抗によって形成さ れた半導体装置が提供される。
[0013] 本発明の他の一態様によれば、基板上に形成された窒化物系化合物半導体層上 に形成されたソース電極、このソース電極から離間した前記半導体層上の位置に形 成されたドレイン電極、及びこのドレイン電極及び前記ソース電極間の前記半導体層 上に形成されたゲート電極の各一つを有してなる単位 FETと、前記半導体層上の所 定領域とを電気的に分離する工程と、 Ti/Alを前記半導体層に蒸着してォーミック 電極を形成する工程と、 Ni/Auを前記半導体層に蒸着してショットキー電極を形成 する工程と、前記ゲート電極を覆うように前記半導体層及びこの半導体層の上に、 Si N又は SiOからなる絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を貫通するトレンチをエツ チングによって形成する工程と、前記ソース電極の上に前記トレンチの内壁に沿った 金属領域を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]本発明の第 1の実施形態に係る半導体装置の模式的断面構造図。
[図 2]本発明の第 1の実施形態に係る半導体装置の電極の配置を表す模式的平面 パターン構成図。
[図 3]本発明の第 1の実施形態に係る半導体装置における金属薄膜による抵抗体の 一例を示す平面パターン構成図。
[図 4]本発明の第 2の実施形態に係る半導体装置の電極配置を示す模式的平面パ
ターン構成図。
[図 5] ω本発明の第 3の実施形態に係る半導体装置の模式的平面パターン構成図
。 (b)本発明の第 3の実施形態の変形例に係る半導体装置の模式的平面パターン 構成図。
[図 6]本発明の第 4の実施形態に係る半導体装置の模式的断面構造図。
[図 7]本発明の第 5の実施形態に係る半導体装置の電極の配置を表す模式的平面 パターン構成図。
[図 8]図 7における鎖線 A— Bに沿った模式的断面構造図。
[図 9]本発明の第 6の実施形態に係るマルチフィンガー型の半導体装置の電極構造 を示す模式的平面パターン構成図。
[図 10]本発明の第 7の実施形態に係るマルチフィンガー型の半導体装置の電極構 造を示す模式的平面パターン構成図。
[図 11]従来の半導体装置の電極構成を説明するための模式的断面構造を含む鳥瞰 図。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載にお いて、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図 面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面 相互間におレ、ても互!/、の寸法の関係や比率が異なる部分が含まれて!/、ることはもち ろんでめ ·ο。
[0016] また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置 や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置など を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲に おいて、種々の変更を加えることができる。
[0017] 以下の説明にお!/、て、半導体素子は、 SiC基板、 GaN/SiC基板、 AlGaN/Ga N/SiC基板、ダイヤモンド基板、サファイア基板より選択された基板上に形成される
〇
[0018] 特に、例えば、 AlGaN/GaN/SiC基板を使用する場合には、半導体素子は、へ
テロ接合界面に誘起される 2次元ガス(2DEG : Two Dimensional Electron Gas)中の 高電子移動度を利用する高電子移動度トランジスタ(HEMT : High Electron Mobilit y Transistor)として構成される。また、例えば、 GaN/SiC基板を使用する場合には 、半導体素子は、ショットキーゲート(Schottky Gate)を利用する金属一半導体(ME S: Metal semiconductor) FETとして構成可能である。
[0019] [第 1の実施の形態]
図 1は、本発明の第 1の実施形態に係る半導体装置の模式的断面構造図を示す。 また、図 2は、本発明の第 1の実施形態に係る半導体装置の電極の配置を表す模式 的平面パターン構成図を示す。また、図 3は、本発明の第 1の実施形態に係る半導 体装置における金属薄膜による抵抗体の一例を示す平面パターン構成図を示す。
[0020] 本発明の第 1の実施形態に係る半導体装置は、図 1および図 2に示すように、基板
11上に形成された窒化ガリウム系の化合物半導体層 12を備えている。化合物半導 体層 12は、基板 11上に形成された GaN層 13、この GaN層 13上に形成された AlGa N層 14を含んでいる。化合物半導体層 12の表面、すなわち、 AlGaN層 14の表面に は、ソース電極 21、ゲート電極 22及びドレイン電極 23が設けられている。ここで、ソ ース電極 21とドレイン電極 23は、例えば A1のストライプ状の導体により形成され、 A1 GaN層 14に対してォーミックコンタクトにより設置される。また、ゲート電極 22は例え ば Auのストライプ状の導体により形成され、 AlGaN層 14に対してショットキーコンタ タトにより設置される。 AlGaN層 14の表面にはソース電極 21、ゲート電極 22及びド レイン電極 23を除く部分にたとえば窒化膜のような絶縁膜 24が形成される。絶縁膜 2 4の表面には、ゲート電極 22に並行、もしくは図 2に符号 25cで示されるように一部ゲ ート電極 22を覆うように第 4の電極である、フィールドプレート電極 25が形成される。 このフィールドプレート電極 25は、例えば Auのストライプ状の導体により形成される。 このフィールドプレート電極 25は、高!/、抵抗値を有する抵抗体 26を介してソース電 極 21に接続されている。すなわち、図 2に示すように、抵抗体 26は一端がソース電 極 21の下端に接続され、他端はゲート電極 22を跨ぐ配線部材 25bを介してフィール ドプレート電極 25の下端の配線部材 25aに接続されている。
[0021] 抵抗体 26の抵抗値は、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22との間の寄生容
量の使用する高周波信号に対するインピーダンスに比べて十分高い値をもつように 決められる。
[0022] この寄生容量 C は、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22との間の絶縁膜 2
GFP
4の厚さを T、誘電率を εとし、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22とが対峙す る面積を Sとした場合、
C = ε X S/T
GFP
によって求められる。この寄生容量の使用する高周波信号に対するインピーダンスは
、使用する高周波信号の角周波数を ωとすると、 l/ωθ であらわされる。したがつ
GFP
となるように選定される。
[0023] この抵抗値を具体的な例を用いて計算すると次のようになる。フィールドプレート電 極 25とゲート電極 22とが対じする幅を 1 m、ゲート幅 (ストライプ状導体の長さ)が 1 mm、 SiNの比誘電率 ε を 7、真空中の誘電率 ε を 8. 854 X 10— 12 (F/m)、絶縁
r 0
膜 24の厚さを 0. 2 a mとすると、ゲート幅 lmmあたりの容量 C は、概ね、
GFP
C =7X8. 854X10— 12X IX 10— 6Χ 1Χ10—3/0. 2X10—。
GFP
=0. 310X10— 12 (F/mm)
となる。ここで使用周波数が例えば周波数 10GHzとすると、ゲート幅 lmmに対する 抵抗値 Rは、
R〉〉l/(co XC )=50(Ω)
GFP
を満たすような値に選定される。
[0024] 本実施形態に係るマルチフィンガー型 FETでは、単位トランジスタ、すなわち、 1組 のゲート電極 22、ソース電極 21及びドレイン電極 23におけるゲート幅は 100 mで あるため、単位トランジスタごとに、最小でも 500(Ω)、これより十分に大きな抵抗値と しては 5 &Ω)程度の抵抗値を有する抵抗体 26を、フィールドプレート電極 25とソー ス電極 21との間に揷入することが望ましい。
[0025] このように構成された化合物半導体装置において、例えば、ソース電極 21をグラン ド電位、すなわち O(V)とし、ゲート電極 22には— 5 (V)、ドレイン電極 23には +50 (
V)の直流バイアス電圧が印加されると共に、ソース電極 21とゲート電極 22間に高周 波信号が印加されると、ドレイン電極 23には増幅された高周波信号が出力される。こ のとき、ゲート電極 22とドレイン電極 23間には 55 (V)という高電圧が印加されるが、 フィールドプレート電極 25が設けられているため、電界集中が緩和され、絶縁膜 24 の破壊による素子のコラブスが回避される。
[0026] すなわち、フィールドプレート電極 25はゲート電極 22に対しては絶縁膜 24を介し て分離されているため、その間には直流電流は流れない。しかし、フィールドプレート 電極 25は抵抗体 26を介してソース電極 22に接続されているため、その直流電位は O (V)に維持される。これによつて、ゲート電極 22に対する電界集中を緩和すること ができる。
[0027] 他方、フィールドプレート電極 25は高周波信号に対しては、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22間の寄生容量により形成される低インピーダンスを介してゲート電 極 22に接続され、抵抗体 26には高周波の電流が流れるため、この抵抗値を十分に 大きくすることにより、フィールドプレート電極 25をゲート電極 22と実質的にオープン な状態とすることができ、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22間の寄生容量を 才卬えること力 Sできる。
[0028] ところで、本発明を適用するための化合物半導体装置において設ける抵抗体 26と しては、半導体層 12の表面に絶縁膜を介して平面的に形成することが望ましい。表 1に代表的な抵抗体の金属材料の比抵抗値 p、厚さ t = 0. 1 11 mにおけるシート抵 抗値、線幅 1 μ mの場合の 500 ( Ω )の抵抗とするための長さが示されて!/、る。
[表 1]
これらの金属薄膜を用いて、例えば 5 &Ω )の抵抗体 26を形成するためには、幅 1 〃mで長さ 10000 mの線状抵抗体を用いる必要があるため、図 3に示すように、コ ィル状パターンとして形成する。すなわち、これらの金属のシート抵抗値は表 1に示
すように比較的小さいため、高い抵抗値を得るためには金属薄膜の長さがかなり長く なる。なお、図 3では、図を簡素化するためにゲート電極 22およびフィールドプレート 電極 25は直線で示されている。
[0030] [第 2の実施の形態]
図 4は、本発明の第 2の実施形態に係る半導体装置の電極配置を示す模式的平 面パターン構成図を示す。
[0031] 本発明の第 2の実施形態に係るマルチフィンガー型の化合物半導体装置において は、図 3に示す 1組の電極パターンが 100組ほど繰り返し配列されている。すなわち、 この半導体装置においては、ソース電極 21、ゲート電極 22、ドレイン電極 23および フィールドプレート電極 25が横方向に繰り返し配列されている。ここで、ゲート電極 2 2およびフィールドプレート電極 25は、図を簡素化するために直線で示されているが 、実際には図 2に示されるようなパターン配置となっている。
[0032] 複数本のドレイン電極 23は、それらの上端部が共通のドレイン電極配線 23— 1に 接続されている。ゲート電極 22は、それらの下端部が共通のゲート電極用配線 22— 2に接続されている。ゲート電極用配線 22— 2は、連続する所定の本数、例えば 5本 のゲート電極 22毎に 1個設けられたゲート電極パッド 22— 3に接続されている。フィ 一ルドプレート電極 25は、連続する所定の本数、例えば 10本のフィールドプレート 電極 25毎に共通に設けられたフィールドプレート電極用配線 25 2にブリッジ配線 2 5— 3を介して接続されている。ソース電極 21は、連続する所定の本数、例えば 5本 毎にそれらの下端部が共通のソース電極用配線 21— 1にブリッジ配線 21—2を介し て接続されている。ソース電極用配線 21— 1は、隣接する 2個のゲート電極パッド 22 —3間に配置されたソース電極パッド 21— 2に接続されている。フィールドプレート電 極用配線 25— 2とソース電極パッド 21— 2間には、ストライプ状の抵抗体 26が接続さ れている。
[0033] ここで、ソース電極配線 21—1は、ほぼその中央部で分離されている。抵抗体 26はソ ース電極配線 21— 1が分離された隙間を介してソース電極パッド 21—2に接続され ている。
[0034] 前述したように、通常この種の半導体装置では、 100本前後のマルチフィンガーァ
レーが配列形成される。本発明において、 10本のフィールドプレート電極 25が、 1つ の抵抗体 26を介してソース電極 21に接続されることによって、抵抗体 26の抵抗値は 50 ( Ω )に下げることが出来る。
[0035] [第 3の実施の形態]
図 5 (a)は、本発明の第 3の実施形態に係る半導体装置の模式的平面パターン構 成図を示す。また、図 5 (b)は、本発明の第 3の実施形態の変形例に係る半導体装置 の模式的平面パターン構成図を示す。
[0036] 本発明の第 3の実施形態に係る半導体装置は、図 5 (a)に示すように、全てのフィー ルドプレート電極 25に対して、共通のフィールドプレート電極用配線 25— 2が設けら れ、その両端とソース電極パッド 21— 2間に抵抗体 26が設けられている。これらの抵 抗体 26の抵抗値は、 100 Ω程度で済ませることができる。
[0037] また、本発明の第 3の実施形態の変形例に係る半導体装置は、図 5 (b)に示すよう に、全てのフィールドプレート電極 25に対して、共通のフィールドプレート電極用配 線 25— 2が設けられる力 この配線が長くなることに伴う発振を抑制するために、使 用する高周波信号の波長の 1/2程度の長さ毎に分割抵抗体 28が揷入されている。 なお、図 5の他の部分は図 4の各部の構成とほぼ同じであるため、対応する部分には 同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
[0038] [第 4の実施の形態]
図 6は、本発明の第 4の実施形態に係る半導体装置の模式的断面構造図を示す。
[0039] 本発明の第 4の実施形態に係る半導体装置は、図 6に示すように、図 1に示した第 1の実施形態に比較して、ゲート電極 22に設けられたフィールドプレート 22— 1が形 成されている点、この結果、化合物半導体層 12表面に形成される絶縁膜 24は二層( 第 1の絶縁膜 24a及び第 2の絶縁膜 24b)となる点が異なっており、その他の構成は ほぼ同一である。したがって、図 6においては、図 1の構成部分と同一の構成部分に は同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
[0040] このように構成された化合物半導体装置において、例えば、ソース電極 21をグラン ド電位、すなわち 0 (V)とし、ゲート電極 22には— 5 (V)、ドレイン電極 23には + 50 ( V)の直流バイアス電圧が印加されると共に、ソース電極 21とゲート電極 22間に高周
波信号が印加されると、ドレイン電極 23には増幅された高周波信号が出力される。こ のとき、ゲート電極 22とドレイン電極 23間には 55 (V)という高電圧が印加されるが、 フィールドプレート電極 25が設けられているため、電界集中が緩和され、絶縁膜 24a および絶縁膜 24bの破壊による素子のコラブスが回避される。
[0041] すなわち、フィールドプレート電極 25はゲート電極 22に対しては絶縁膜 24aおよび 絶縁膜 24bを介して分離されているため、その間には直流電流は流れない。し力、し、 フィールドプレート電極 25は抵抗体 26を介してソース電極 22に接続されているため 、その直流電位は O (V)に維持される。これによつて、ゲート電極 22に対する電界集 中を緩和することができる。
[0042] 他方、フィールドプレート電極 25は高周波信号に対しては、フィールドプレート電極
25とゲート電極 22間の寄生容量により形成される低インピーダンスを介してゲート電 極 22に接続され、抵抗体 26には高周波の電流が流れるため、この抵抗値を十分に 大きくすることにより、フィールドプレート電極 25をゲート電極 22と実質的にオープン な状態とすることができ、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22間の寄生容量を 才卬えること力 Sできる。
[0043] 本発明の第 4の実施形態に係る半導体装置では、第 2の絶縁膜 24bの膜厚を十分 に小さくしても、トランジスタ素子としての増幅利得を低下することがなぐかつフィー ルドプレート電極 25の電界集中緩和機能を十分に発揮することができる。
[0044] [第 5の実施の形態]
図 7は、本発明の第 5の実施形態に係る半導体装置の電極の配置を表す模式的平 面パターン構成図を示す。また、図 8は、図 7における鎖線 A— Bに沿った模式的断 面構造図を示す。
[0045] 本発明の第 5の実施形態に係る半導体装置は、図 7および図 8に示すように、基板
11に形成された窒化ガリウム系の化合物半導体層 12を備えている。化合物半導体 層 12は、基板 11上に形成された GaN層 13と、この GaN層 13上に形成された AlGa N層 14を含んでいる。化合物半導体層 12の表面、すなわち、 AlGaN層 14の表面に は、ソース電極 21、ゲート電極 22及びドレイン電極 23が設けられている。
[0046] ここで、ソース電極 21とドレイン電極 23は、例えば A1のストライプ状の導体により形
成され、 AlGaN層 14に対してォーミックコンタクトにより設置される。また、ゲート電極 22は、例えば Auのストライプ状の導体により形成され、 AlGaN層 14に対してショット キーコンタクトにより設置される。 AlGaN層 14の表面には、ソース電極 21、ゲート電 極 22及びドレイン電極 23を除く部分に、例えば窒化膜のような絶縁膜 24が形成され ている。
[0047] この絶縁膜 24上には、図 7に示されるように、ゲート電極 22に幅方向の一端部が重 なるとともに、幅方向の他端部がドレイン電極 23方向に延長された第 4の電極である 、フィールドプレート電極 25が形成される。このフィールドプレート電極 25は、例えば A1のストライプ状の導体により形成される。フィールドプレート電極 25は、高い抵抗値 を有する抵抗体 26を介してソース電極 21に接続されている。この抵抗体 26は、一端 力 Sソース電極 21の上端に接続され、他端が配線部材 27を介してフィールドプレート 電極 25の上端に接続されたシート抵抗として、化合物半導体層 12上に絶縁層を介 して形成される。
[0048] 図 8において、基板 11、窒化ガリウム系の化合物半導体層 12は、図 1に示した半導 体装置と同じである。化合物半導体層 12の表面には Ti/A なる端子部材 28お よびソース電極 21が蒸着され、これらは AlGaN層 14とォーミックコンタクトを形成す る。端子部材 28およびソース電極 21の表面は SiN又は SiO等の絶縁層 29で覆わ れている。この絶縁層 29には端子部材 27およびソース電極 21の表面部分に反応性 イオンエッチング(RIE : Reactive Ion Etching)法などによってコンタクトホールが形成 され、それぞれを介して配線部材 27および後述のブリッジ配線 21—2が接続される。
[0049] このように構成された化合物半導体装置において、例えば、ソース電極 21をグラウ ンド電位、すなわち 0Vとし、ゲート電極 22に 5V、ドレイン電極 23には + 50Vの直 流バイアス電圧が印加されるとともに、ソース電極 21とゲート電極 22間に高周波信号 が印加されると、ドレイン電極 23には増幅された高周波信号が出力される。このとき、 ゲート電極 22とドレイン電極 23間には 55Vという高電圧が印加される力 ゲート電極 22には、フィールドプレート電極 25が設けられているため、電界集中が緩和され、素 子の破壊が回避される。
[0050] すなわち、フィールドプレート電極 25は、ゲート電極 22に対しては絶縁膜 24を介し
て分離されているため、その間には直流電流は流れない。しかし、フィールドプレート 電極 25は、抵抗体 26を介してソース電極 22に接続されているため、その直流電位 は 0Vに維持される。これによつて、ゲート電極 22に対する電界集中を緩和することが できる。他方、フィールドプレート電極 25は高周波信号に対しては、フィールドプレー ト電極 25とゲート電極 22間の寄生容量により形成される低インピーダンスを介してゲ ート電極 22に接続されるが、高い抵抗値の抵抗体 26が介在しているため、ソース電 極 21とゲート電極 22間のインピーダンスは抵抗体 26の抵抗値により支配され、この 抵抗値を十分に大きくすることにより、フィールドプレート電極 25とゲート電極 22間の 寄生容量により形成される低インピーダンスの影響を無視し、実質的にオープンな状 態とすること力 Sできる。従って、絶縁膜 24の膜厚を十分に小さくすることによって、トラ ンジスタ素子としての増幅利得を低下することなぐフィールドプレート電極 25の電界 集中緩和機能を十分に発揮することができる。
[0051] [第 6の実施形態]
図 9は、本発明の第 6の実施形態に係るマルチフィンガー型の半導体装置の電極 構造の一部を示す模式的平面パターン構成図を示す。
[0052] 本発明の第 6の実施形態に係る半導体装置においては、図 9に示すように、図 7に 示す 1組の電極パターン力 S、複数組、例えば 100組程繰り返し配列されている。図 9 では、ソース電極 21、ゲート電極 22、ドレイン電極 23及びフィールドプレート電極 25 力、らなる 4組の単位 FETが横方向に繰り返し配列されている。
[0053] ドレイン電極 23は、それらの上端部が共通のドレイン電極配線 23— 1に接続されて いる。各ゲート電極 22は、それらの下端部が共通のゲート電極用配線 22— 1に接続 されている。このゲート電極用配線 22— 1は、電極配列の下方において横方向に配 歹 IJされた複数個のゲート電極パッド 22— 2に接続されている。各ソース電極 21は、電 極配列の下方において横方向にゲート電極パッド 22— 2と交互に配列された複数個 のソース電極パッド 21— 1にブリッジ配線 21—2を介して接続されて!/、る。
[0054] シート抵抗である抵抗体 26は、それぞれのソース電極 21の上端部とそれぞれの配 線部材 27との間を接続するように配置される。
[0055] 抵抗体 26のシート抵抗値ないしは表面抵抗値は、フィールドプレート電極 25とゲ
ート電極 22との間の寄生容量の使用高周波信号に対するインピーダンスに比べて 十分高い値をもつように決められる。シート抵抗値は、金属抵抗に比べて高いため、 抵抗体 26の半導体素子上における占有面積が小さい。上述した半導体層 12上に 絶縁層を介して形成された半導体抵抗のシート抵抗値は、例えば 500 ( Ω /sq)であ
[0056] 従って、本発明の第 6の実施形態に係る半導体装置においては、半導体抵抗のシ ート抵抗を用いるため、大電力用 FETの素子面積を小さくしている。これにより、大電 力用 FETを簡便に作成するようにしている。
[0057] また、シート抵抗 26と配線部材 27とがともに電極配列のドレイン電極パッド 23— 1 側に配置されることにより、ゲート電極 25からゲート電極パッド 22— 2に至るゲート電 極配線との交叉配線を回避することにより、寄生容量の発生を減少させ、高周波数 領域における FETの動作特性は劣化しない。
[0058] [第 7の実施の形態]
図 10は、本発明の第 7の実施形態に係るマルチフィンガー型の半導体装置の電極 構造の一部を示す模式的平面パターン構成図を示す。
[0059] 図 9に示した本発明の第 6の実施形態に係る半導体装置においては、シート抵抗
1S ドレイン電極パッド 23— 1側に配置されていた力 S、本発明の第 7の実施形態に係 る半導体装置においては、シート抵抗は、ソース電極パッド 21—1及びゲート電極パ ッド 22— 2側に配置されている。
[0060] すなわち、抵抗体 26は、それぞれ、ソース電極 21の下端部と配線部材 27との間を 接続するように配置される。抵抗体 26の構造およびその他の電極パターンは、それ ぞれ図 8に示した抵抗体および図 9に示した電極パターンと同様であるので、詳細な 説明は省略する。
[0061] また、本発明の第 7の実施形態に係る半導体装置も、化合物半導体層上において シート抵抗が用いられるため、大電力用 FETの素子面積を小さくすることができる。
[0062] また、本発明の第 6の実施形態及び第 7の実施形態に係る半導体装置によれば、 シート抵抗の位置が上か下かにかかわらず、大電力用 FETを簡便に作成することが でさるようになる。
[0063] このようにして、本実施形態に係る半導体装置によれば、抵抗体は、半導体のシー ト抵抗を利用することにより占有面積が小さくなる結果、大電力用マルチフィンガー型 の FETに対して素子面積を拡大することなぐ適用することができる。
[0064] [その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第 1乃至第 7の実施の形態によって記載した力 この開示 の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当 業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
[0065] 尚、本発明は上記の実施の形態そのままに限定されるものではなぐ実施段階では その要旨を逸脱しな!/、範囲で構成要素を変形して具体化できる。
[0066] また、上記の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせ により、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つ かの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組 み合わせてもよい。
[0067] 尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなぐ実施段階ではその 要旨を逸脱しな!、範囲で構成要素を変形して具体化できる。
[0068] 例えば、上記の実施形態においては、本発明は MESFETに適用した力 本発明 の半導体装置は、これに限らず、炭化シリコン(SiC)基板上に GaN/AlGaNからな る半導体層を形成してなる高電子移動度トランジスタ(HEMT)、あるいは半絶縁性 GaAs基板上に AlGaAs/GaAs系 HEMTを形成したもの等、広!/、意味での化合物 半導体を用いた電界効果形半導体装置に適用することができる。
[0069] このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは 勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の 範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
[0070] 本発明によれば、フィールドプレート電極とソース電極との間を接続する線路に、フ ィールドプレートとゲート電極との間の高周波インピーダンスに比較して大きな抵抗値 をもつ抵抗を揷入することにより、高周波信号に対してはソース電極の電位から隔離 され、ゲート電極と同期した電位が得られるため、フィールドプレート電極とゲート電 極間の寄生容量が抑制され、利得の低下を防止することができる。直流信号に対し
ては揷入された抵抗には電流が流れないため抵抗における電圧低下は生じず、フィ 一ルドプレート電極の電位はソース電極と同じ電位に維持されるため、ゲート電極の エッジにおける電界集中が緩和される。
本発明によれば、金属の抵抗体よりも抵抗率の高いシート抵抗を利用して抵抗が 形成されるため、素子上における電極の占有面積を小さくすることができ、マルチフィ ンガー型の電力増幅装置に適応できる。また、 FETと抵抗体とがほぼ同時に形成さ れることができるため、工程を簡素化することができる。