明 細 書
β 一ピネン重合体及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、 0 ピネン重合体及びその製造方法に係り、特に、高い透明性を有す ると共に、従来のものと比較して優れた耐熱性を発揮する /3—ピネン重合体に関す るものである。
背景技術
[0002] 分子内に脂環式骨格を有する炭化水素系重合体 (脂環式炭化水素系重合体)は、 比誘電率、透明性、耐熱寸法安定性、耐溶剤性、平坦性に優れていることから、様 々な工業部品材料として用いられている。そのような脂環式炭化水素系重合体は、 従来より、石油由来の単量体を重合又は共重合せしめることにより、或いは、それに よって得られた重合体に対して水素を添加することにより、製造されている。例えば、 特許文献 1 (国際公開第 00/73366号パンフレット)においては、環状ォレフィンを 開環メタセシス重合し、次いで水素添加を行なうことによる、環状ォレフィンの開環重 合体水素化物の製造方法が提案されている。また、特許文献 2 (特表 2001— 5062 93号公報)及び特許文献 3 (特表 2001— 506689号公報)には、所定の触媒の存 在下におレ、て、環状ォレフィンと鎖状ォレフィンとを共重合することによって得られる 、脂環式炭化水素系重合体たるシクロォレフィンコポリマーが明らかにされている。
[0003] また、脂環式炭化水素系重合体は、非晶性であり、透明性が高いことから、特にレ ンズや、フィルム状、シート状の各種光学材料として、従来より広く用いられている。 具体的には、特許文献 4 (国際公開 03/81299号パンフレット)において、脂環式構 造含有重合体にて構成された光学用フィルムが明示されている。
[0004] しかしながら、上述した脂環式炭化水素系重合体は、従来のメタクリル樹脂やカー ボネート樹脂と比較して、比重が小さぐ軽量なものではあるものの、近年、各種樹脂 成形品に対して軽量化が求められている状況下においては、脂環式炭化水素系重 合体やその他の重合体であってより軽量なものが、求められている。
[0005] 一方、近年、循環型社会の形成や地球温暖化の防止等を目的として、カーボン二
ユートラルの観点から、植物由来のバイオマスの有効利用が注目されている。例えば 、 自然界に豊富に存在する天然バイオマスの一つとして、松脂や柑橘類の皮等に多 く含まれているテルペン類があり、力、かるテルペン類は、医薬品や香料の原料等とし て、広く用いられている。
[0006] ここで、テルペン類の中には、脂環式ビュルモノマー構造を有するものがあり、古く 力も重合性があることが知られているところ、非特許文献 1には、そのようなテルペン 類の一種である /3—ピネンのカチオン重合について記載されている。し力もながら、 非特許文献 1に記載の手法に従って得られる脂環式炭化水素系重合体は、分子量 力小さぐ耐熱性や強度が十分なものではな力、つた。このため、かかる非特許文献 1 に示されている重合体を用いても、安定な成形品等を得ることは出来ず、成形品材 料として用いることが困難なものであったため、工業的には樹脂添加剤や粘着付与 樹脂等として用いられるに過ぎないものであった。
[0007] また、非特許文献 2には、 β ピネンをカチオン重合せしめる際に 2, 6 ジー t— プチルー 4 メチルピリジンを加えることにより、比較的大きな分子量を有する重合体 が得られたとの記載がなされて!/、る力 そこにお!/、て得られた重合体のガラス転移温 度は 65°Cであり、実用的に十分なものではな力、つた。
[0008] 特許文献 1:国際公開第 00/73366号パンフレット
特許文献 2:特表 2001— 506293号公報
特許文献 3:特表 2001— 506689号公報
特許文献 4 :国際公開 03/81299号パンフレット
非特許文献 1: William J. Roberts and Allan R. Day,「A Study of the Polymerization of a - and β - Pinene with Friedeト Crafts Type CatalystsJ、 Journal of the American Chemical Society,米国、 1950年、第 72巻、 ρ· 1226- 1230
非特許文献 2 : Β· Keszler, J. P. Kennedy,「Synthesis of High Moleculer Weight Poly ( β _Pinene)」、 Advances in Polymer Science,独国、 1992年、第 100巻、 .1-9 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] ここにおいて、本発明は、力、かる事情を背景にしてなされたものであって、その解決
すべき課題とするところは、比重が小さぐまた透明性に優れているという本来的に有 する特性を損なうことなぐ従来のものと比較して、熱可塑性を有しつつも耐熱性にお いて優れ、更には優れた強度をも有する /3—ピネン重合体を提供することにある。 課題を解決するための手段
[0010] そして、本発明者等は、そのような課題を解決すベぐ鋭意検討を重ねたところ、所 定の方法に従って得られる /3—ピネン重合体にあっては、上記課題を有利に解決し 得るものであることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
[0011] すなわち、本発明は、その第一の態様とするところは、重量平均分子量が 9万〜 10
0万であり、且つガラス転移温度が 80°C以上である /3—ピネン重合体にある。
[0012] また、そのような本発明に従う /3 ピネン重合体における第二の態様においては、 β ピネンを、 2官能性ビュル化合物の存在下において重合せしめて得られたもの である。
[0013] さらに、本発明の第三の態様においては、 β ピネンを、開始剤とルイス酸との組 合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合せしめて得られたも のである。
[0014] 加えて、本発明の第四の態様においては、 /3 ピネンと、カチオン重合性単量体、 ラジカル重合性単量体又は配位重合性単量体のうちの何れか一種とからなる単量体 群を、 2官能性ビュル化合物の存在下にお!/、て共重合せしめて得られたものである。
[0015] また、本発明の第五の態様においては、 β ピネンとカチオン重合性単量体とから なる単量体群を、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を 用いて、カチオン共重合せしめて得られたものである。
[0016] さらに、本発明の第六の態様においては、上述した第五の態様及び第六の態様に おける単量体群が、 β ピネンを 50重量%以上の割合において含有するものである
[0017] 更にまた、本発明の第七の態様においては、上述した各態様の /3 ピネン重合体 であって、力、かる重合体中のォレフィン性炭素 炭素二重結合の少なくとも一部が水 素化せしめられたものである。
[0018] 加えて、本発明に従う 13 ピネン重合体の第八の態様においては、重水素化クロ
口ホルムを溶媒として用いて測定され、テトラメチルシランのプロトンを Oppmとする 1
H— NMRスペクトルにおいて、 δ =4. 0〜6· Oppmにて検出されるシグナルの積分 値: Aと、 δ =0. 5〜2· 5ppmにて検出されるシグナルの積分値: Βとの比: [Α/Β] ヽ 0以上 0. 003以下である。
[0019] また、本発明に係る /3—ピネン重合体の第九の態様においては、比重が 1. 0未満 であり、且つ 10%重量減少温度が 400°C以上である。
[0020] 一方、本発明の第十の態様とするところは、上述した各態様の ( ピネン重合体か らなり、全光線透過率が 90%以上であり、且つ 10%重量減少温度が 400°C以上で ある成形品にある。
[0021] また、本発明の第 の態様とするところは、 β—ビネン、又は /3—ピネンとカチォ ン重合性単量体とからなる単量体群を、 2官能性ビュル化合物の存在下、ルイス酸 触媒を用いて、カチオン重合又はカチオン共重合させることを特徴とする /3—ピネン 重合体の製造方法にある。
[0022] さらに、本発明の第十二の態様とするところは、 β—ビネン、又は /3—ピネンとカチ オン重合性単量体とからなる単量体群を、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビン グカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合又はカチオン共重合させることを特徴と する 0 ピネン重合体の製造方法にある。
[0023] 加えて、本発明の第十三の態様においては、上述した第 の態様及び第十二 の態様におけるカチオン重合又はカチオン共重合の後、得られた重合体中のォレフ イン性炭素 炭素二重結合を水素化するものである。
発明の効果
[0024] このように、本発明に従う /3 ピネン重合体にあっては、従来のものと比較して、重 量平均分子量が大きいものであるところから、 β ピネン重合体が本来的に有する 特性(比重が小さぐ且つ透明性に優れていること)を維持しつつ、耐熱性及び強度 にお!/、て優れたものとなって!/、るのである。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、本発明の実施形態の一例について説明する。なお、以下の説明において、 特定の機能を発現する化合物として幾つかの具体例を示している力 本発明が、そ
れら化合物に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。また、例示し た化合物は、特に説明がない限り、単独で用い得ることは勿論のこと、二種以上を併 用することも可能である。更に、本明細書及び請求の範囲における /3—ピネン重合 体とは、 /3—ピネンを単独で重合せしめて得られる /3—ピネン単独重合体のみなら ず、 β ピネンと他の一種以上のモノマーとを共重合せしめて得られる /3—ピネン共 重合体をも含むものである。
[0026] 本発明に従う 13 ピネン重合体を製造するに際しては、先ず、 13 ピネンが準備さ れることとなる力 かかる /3—ピネンとしては、従来より公知のものが何れも使用可能 である。例えば、植物から採取されたものを精製した後、直接、用い得ることは勿論の こと、植物から採取された α ピネン等のテルペン類や石油由来の化合物を用いて 、従来より公知の手法 (例えば、米国特許第 3278623号明細書に開示の手法)に従 つて製造された /3—ピネン等も、用いることが可能である。
[0027] また、本発明の /3—ピネン重合体は、上述した /3—ピネンを単独重合せしめること によって得られることは勿論のこと、かかる /3—ピネンと、カチオン重合性単量体、ラ ジカル重合性単量体又は配位重合性単量体とからなる単量体群を共重合せしめる ことによつても、有利に得ること力 S出来る。ここで、そのような単量体群としては、 /3 - ピネンを 50重量%以上の割合にて含有するもの、好ましくは 70重量%以上の割合 にて含有するものが、本発明の /3—ピネン重合体を製造するに際して有利に用いら れる。 β ピネン重合体の割合を 50重量%未満とすると、必然的に石油由来の単量 体の含有量が多くなり、低公害性、低環境負荷を有利に達成し得ない恐れがある。
[0028] なお、本発明の ( ピネン重合体を製造するに際して用いられる、カチオン重合性 単量体、ラジカル重合性単量体及び配位重合性単量体としては、従来より一般的に 用いられているものを使用することが可能である。また、植物由来のテルペン類も、力 チオン重合法、ラジカル重合法又は配位重合法の何れかの重合法において、重合 性単量体として用いることが可能である。具体的には、カチオン重合性単量体として は、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、 α—メチルスチレン、 ρ メチノレ スチレン、 ρ メトキシスチレン、 p— t ブトキシスチレン、インデン、アルキルビュルェ 一テル、ノルボルネン等を、また、ラジカル重合性単量体としては、メチル (メタ)アタリ
レート、ェチル(メタ)アタリレート、 n ブチル(メタ)アタリレート、 2—ェチルへキシル( メタ)アタリレート、 2—ヒドロキシェチル (メタ)アタリレート、 2—ヒドロキシプロピル (メタ )アタリレート、グリシジル (メタ)アタリレート等の(メタ)アタリレート類;アクリロニトリル、 メタタリロニトリル等の二トリル基含有ビュルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等 のアミド基含有ビュルモノマー;酢酸ビュル、ビバリン酸ビュル、安息香酸ビュル等の ビュルエステル類;塩化ビュル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマ ル酸、フマル酸エステル、マレイミド等を挙げることが出来る。また、配位重合性単量 体としては、エチレン、プロピレン、 1—へキセン、シクロペンテン、ノルボルネン等を 例示することが出来、更に、植物由来のテルペン類としては、ミルセン、ァロオシメン、 オメシン、 α ピネン、ジペンテン、リモネン、 α—フエランドレン、 α—テノレピネン、 γ—テルビネン、 2 力レン、 3 力レン等を、例示することが出来る。これらの中から 、 β ピネンの使用量等に応じて、一種又は二種以上のものが適宜に選択されて用 いられることとなる。本発明においては、カチオン重合法によって目的とする重合体 が有利に得られることから、カチオン重合性単量体が有利に用いられる。
上述した β ピネンを重合せしめることにより、又は、かかる β ピネンと、カチオン 重合性単量体、ラジカル重合性単量体、配位重合性単量体又は植物由来のテルぺ ン類とからなる単量体群を共重合せしめることにより、本発明に従う /3—ピネン重合 体が得られる。ここで、 /3—ピネンを重合、若しくは /3—ピネンを含む単量体群を共 重合せしめる際の一の方法においては、 /3—ピネン又は単量体群よりも十分に少な い量にて、 2官能性ビュル化合物が添加される。 2官能性ビュル化合物は、重合体を 製造する際に、分岐剤若しくは架橋剤として一般的に用いられているが、その使用量 を少量とすることにより、所謂、長鎖分岐構造を有し、有機溶媒への不溶部が生じな い程度の分子量を有する本発明の /3—ピネン重合体が、有利に得られるのである。 従って、力、かる 2官能性ビュル化合物は、得られる重合体が、有機溶媒への不溶部 が生じない程度の分子量を有するように適宜に決定されることとなる力 S、一般には、 単量体の総量 100重量部に対して、 0. ;!〜 5. 0重量部、好ましくは 1. 0〜4. 0重量 部となるような量的割合において、添加される。 2官能性ビュル化合物の添加量が少 なすぎると、その添加効果は認められず、一方、多すぎると、架橋反応が必要以上に
進行し、得られる 13 ピネン重合体がゲル状となって熱可塑性を失い、本発明の目 的を達成し得なレ、恐れがあるからである。
[0030] 本発明においては、そのような 2官能性ビュル化合物として、分子内に 2つのビュル 基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、 m ジイソ プロぺニノレベンゼン、 p ジイソプロぺニノレベンゼン、 m—ジビニノレベンゼン、 p ジ ビニノレベンゼン、 1 , 4ーシクロへキサンジメタノーノレジビニノレエーテノレ、エチレングリ コールジビュルエーテル等が挙げられ、特に、経済性や反応性等の観点から、 m— ジイソプロぺニルベンゼンが有利に用いられる。
[0031] 本発明の /3 ピネン重合体を製造するに際して、 β ピネンを単独で用いる場合 、その重合は、カチオン重合、ラジカル重合及び配位重合の何れによっても進行す るが、 /3—ピネンと他の単量体とからなる単量体群を用いる場合、かかる単量体群の 共重合は、単量体の種類に応じて、カチオン共重合、ラジカル共重合又は配位重合 の何れかによつて、進行することとなる。本発明においては、 β—ビネンをカチオン重 合、或いは、 /3—ピネンとカチオン性重合性単量体とからなる単量体群をカチオン共 重合せしめることにより、 目的とする重合体を有利に得ることが出来る。以下、カチォ ン重合乃至はカチオン共重合による本発明の /3—ピネン重合体の製造について、 詳述する。
[0032] 本発明に従う ( ピネン重合体を製造するにあたり、 β ピネンをカチオン重合、 或いは /3—ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群をカチオン共重合せ しめる際の形態としては、バルタ重合法、溶液重合法、分散重合法等の、従来より公 知の各種重合法の何れをも採用することが出来る。
[0033] また、カチオン重合又はカチオン共重合の際に使用されるルイス酸触媒にあっても 、従来より公知のものを制限なく使用することが出来る。ノレイス酸触媒としては、 BF
3
、 BBr 、 BBr 、 A1F 、 A1C1 AlBr 、 TiCl 、 TiBr 、 Til 、 FeCl 、 FeCl 、 Sn
3 3 3 3 3 4 4 4 3 2
CI 、 SnCl 、 WC1 、 MoCl 、 SbCl 、 TeCl 、 ZnCl 等の金属ノ、ロゲンィ匕物; Et
2 4 6 5 5 2 2 3
Al 、 Et A1C1 、 EtAlCl 、 Et Al CI 、(i— Bu) Al 、(i— Bu) A1C1 、 (i-Bu) AlC
2 2 3 2 3 3 2
1 、 Me Sn 、 Et Sn 、 Bu Sn 、 Bu SnCl等の金属ァノレキノレイ匕合物; A1 (〇R) C1
2 4 4 4 3 3 や Ti (〇R) CI [Rはアルキル基若しくはァリール基を表わし、 Xは 1又は 2、 yは 1〜
3の整数をそれぞれ表す]等の金属アルコシキ化合物を、挙げること力 S出来る。特に、 A1C1 、 Et A1C1、 EtAlCl 、 Et Al CI 、 BC1 、 SnCl 、 TiCl 、 Ti (OR) CI
3 2 2 3 2 3 3 4 4 4-y y
、反応活性が高ぐ選択性が良好である点から有利に用いられる。
[0034] なお、ルイス酸触媒は、単量体 100重量部に対して、 0. 001〜; 100重量部、好まし くは 0. 005〜50重量部、より好ましくは 0. 01〜; 10重量部となるような量的割合にお いて、使用される。かかるルイス酸触媒の使用量が少なすぎると、反応が重合の完了 前に停止してしまう恐れがあり、逆に多すぎると不経済である。
[0035] 上述したように、本発明に係る /3 ピネン重合体を製造する一の方法においては、 β ピネンを重合、若しくは /3—ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群 とを共重合せしめるにあたり、 2官能性ビュル化合物が添加される力 S、他の一の方法 においては、、力、かる 2官能性ビュル化合物を用いず、開始剤とルイス酸との組合せ よりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合せしめることによつても、本 発明に従う 0 ピネン重合体を有利に得ることが出来る。そのようなリビングカチオン 重合触媒を用いて /3—ピネン等を重合乃至は共重合せしめた場合、連鎖移動反応 やプロトン開始反応等の副反応を有利に抑制することが可能である。なお、リビング カチオン重合の手法としては、例えば、 J.P.Kennedyらの著書(CarbocationicPolymer ization, John Wiley & Sons, 1982 ) - .Matyjaszewskiらの著 (Cationic Polymeri zations, Marcel Dekker, 1996 )等に記載されている手法等が採用される。
[0036] ここで、リビングカチオン重合触媒におけるルイス酸としては、上述した従来より公 知のものを制限なく使用できる。また、かかるルイス酸と組み合わされて用いられる開 始剤とは、ルイス酸と反応して炭素カチオンを発生するものであり、そのような特質を 有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、アルキルビュルェ 一テル一塩化水素付加体、 α クロ口ェチルベンゼン、 α クロ口イソプロピルベン ゼン [以下、タミルクロライドともいう]、 1 , 4 ビス(α—クロ口イソプロピル)ベンゼン [ 以下、 p— DCC又は ρ ジクミルク口ライドともいう]、 1 , 3—ビス(α クロ口イソプロピ ル)ベンゼン [以下、 m— DCC又は m ジクミルク口ライドともいう]、 1 , 3—ビス(α— クロ口イソプロピル)一 5— t ブチルベンゼン、 1 , 3, 5—トリス(α クロ口イソプロピ ノレ)ベンゼン、 t ブチルクロライド、 2 クロロー 2, 4, 4 トリメチルペンタン等の塩
素系開始剤;アルキルビュルエーテル 酢酸付加体、 α—ァセトキシェチルベンゼ ベンゼン、 1 , 3—ビス(α ァセトキシイソプロピル)ベンゼン等のエステル系開始剤 ; a—ヒドロキシェチルベンゼン、 α—ヒドロキシイソプロピルベンゼン、 1 , 4—ビス( ゼン等のアルコール系開始剤等力 挙げられる。これらを単独、或いは混合物として 使用することが出来る。特に、タミルクロライド、 p— DCC、 m— DCC等の塩素系開始 剤が反応性が高ぐ選択性が良好である点から有利に用いられる。
[0037] また、上述の開始剤は、 /3 ピネン又は単量体群との仕込み比に応じて、所望の 重合体の分子量を設定出来ることから、用いる /3—ピネン又は単量体群の 100重量 咅 Wこ対して、 0. 001 - 1. 0重量き、好ましくは 0. 01 -0. 5重量きとなるような量白勺 割合において、使用される。力、かる開始剤の使用量が少ないと、開始剤の効果が十 分に発揮されず、逆に多すぎると分子量の低下を生じるからである。
[0038] さらに、良好な /3 ピネン重合体を得るためには、有利には、リビングカチオン重合 触媒と共に電子供与剤が用いられる。電子供与剤を用いることにより、副反応の発生 をより抑制することが可能である。そのような電子供与剤としては、従来より公知のも のを限定なく使用することが出来る。具体的には、ジェチルエーテル (Et O )、メチ ノレ t ブチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;酢酸ェチル(EtOAc) 、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸ェチル、イソ 酪酸プロピル等のエステル類;ピリジン、 2 メチルピリジン、 2, 6 ジメチルビリジン、 2, 6 ジー t ブチルピリジン、 2, 6 ジメフエ二ルビリジン、 2, 6 ジー t ブチル 4 メチルピリジン等のピリジン類;トリメチルァミン、トリエチルァミン、トリブチルアミ ン等のアミン類;ジメチルァセトアミド、ジェチルァセトアミド等のアミド類;ジメチルスル ホキシド等のスルホキシド類等を、挙げること力 S出来る。特に、ジェチルエーテルや酢 酸ェチル等が、経済性及び反応後の除去が容易であることから、好適に使用される
〇
[0039] /3 ピネン、或いは、 /3 ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、 溶液重合法に従ってカチオン重合乃至はカチオン共重合せしめるに際しては、 β
ピネン又は単量体群の濃度は、重合系全量に対して;!〜 90重量%、好ましくは 10〜 80重量%、更に好ましくは 10〜50重量%となるように、調製される。かかる濃度が 1 重量%未満では、生産性が低くなり、一方、 90重量%を超えると、重合熱の除去が 困難となるからである。
[0040] また、溶液重合法によりカチオン重合又はカチオン共重合を行なう際の溶媒として は、 β ピネン又は /3—ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群が溶解 し、連鎖移動の少ない溶媒であれば、特に限定されるものではない。ポリマーの重合 条件下での溶解性や反応性等の観点より、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、 及び脂肪族炭化水素等から任意に選択され、単独溶媒又は二種以上を混合してな る混合溶媒を用いることが可能である。具体的には、塩化メチレン、クロ口ホルム、 1, 1ージクロルェタン、 1, 2—ジクロルェタン、 η—プロピルクロライド、 1 クロロー η— ブタン、 2—クロロー η ブタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、 キシレン、ァニソール等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、へキサン、ヘプタン、ォ クタン、シクロペンタン、シクロへキサン、メチノレシクロへキサン、ェチノレシクロへキサン 、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒等から選択された単独溶媒、又は二種以上を 混合してなる混合溶媒が有利に用いられる。
[0041] さらに、溶液重合法に従ってカチオン重合乃至はカチオン共重合せしめる際の反 応温度は、通常、 120°C〜; 100°C、好ましくは— 100°C〜50°C、更に好ましくは— 80°C〜0°Cとなるように設定される。反応温度が高すぎると、反応の制御が困難とな つて再現性が得られ難くなる恐れがあり、低すぎると経済性が悪くなる。
[0042] また、上述してきたカチオン重合及びカチオン共重合のみならず、ラジカル重合や ラジカル共重合、更には、配位重合や配位共重合を行う際の反応時間は、特に限定 されるものではなぐ重合の種類、重合触媒の種類や量、反応温度、反応設備等の 条件に応じて、所望とする特性を有する /3—ピネン重合体が得られるように、適宜に 決定されることとなる。通常は 1秒〜 100時間程度、好ましくは 30秒〜 20時間程度、 更に好ましくは 1分〜 5時間程度である。
[0043] そして、上述してきた溶液重合法に従い、 /3 ピネンを重合、乃至は /3 ピネンと カチオン重合性単量体とからなる単量体群を共重合せしめた後は、例えば、再沈澱
、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(コアギユレ ーシヨン)、押出し機での脱気溶媒除去等の、重合体を溶液から単離する際の通常 の操作によって、反応混合物から分離、取得すること力 Sできる。
[0044] そのようにして得られた 0 ピネン重合体の分子量は、重合溶液の粘度や溶融粘 度、成形性、成形品の強度、耐熱性の点から、重量平均分子量で 9万〜 100万が好 ましぐより好ましくは 9万〜 50万、さらに好ましくは 9万〜 25万以下である。重合体の 分子量が大きすぎると、重合溶液の粘度が高くなつて重合体の生産性が悪くなつたり 、また、重合体の溶融粘度が高くなつて成形性が悪化する恐れがあるからである。一 方、分子量が小さすぎると、重合体を用いて得られる成形品の強度が低下すると共 に、ガラス転移温度が 80°C未満となり、十分な耐熱性を発揮し得ないからである。
[0045] また、 β ピネン重合体のガラス転移温度は、耐熱性、成形性、成形品の強度、耐 熱性の点から、 80°C以上 350°C以下が好ましぐより好ましくは 85°C以上 250°C以 下、さらに好ましくは 90°C以上 200°C以下である。ガラス転移温度が高すぎると、重 合体の溶融粘度が高くなり、成形性が悪くなる。その一方、ガラス転移温度が低すぎ ると、成形品の耐熱使用温度が低くなるために、実用的ではない。
[0046] ここで、本明細書及び請求の範囲において、 β ピネン重合体の重量平均分子量 は、 JIS— K— 0124— 2002「高速液体クロマトグラフィー通貝 IJ」にて規定されている サイズ^ ^除クロマトグラフィーの手法に従って求められるものであって、ゲノレパーミエ ーシヨンクロマトグラフィー (GPC)によって測定される示差屈折検出器の値と、標準 ポリスチレンの校正曲線とから求められるものである。また、ガラス転移温度について は、 JIS— K— 7121— 1987「プラスチックの転移温度測定方法」にて規定されてい る手法に従って測定されたものであって、そこにおける中間点ガラス転移温度 (T ) mg 力 s、本明細書及び請求の範囲におけるガラス転移温度を意味する。
[0047] ところで、得られた /3—ビネン重合体に対しては、水素化、即ち、重合体内部に存 在するォレフイン性炭素 炭素二重結合に対して水素添加を行なうことが効果的で ある。また、 β ピネンと、芳香環を含むカチオン重合性単量体、ラジカル重合性単 量体又は配位重合性単量体とを共重合せしめて得られた重合体に対しては、その内 部に存在する芳香族性二重結合に対して水素添加を行なうことも効果的である。この
ような水素化によって、より優れた耐熱性等を発揮する /3—ピネン重合体が得られる のである。
[0048] ここで、本発明の /3 —ピネン重合体に対する水素添加は、従来より公知の各種手 法に従って実施することが可能である。また、水素添加の際に用いられる触媒 (水素 添加触媒)も、一般にォレフィン類や芳香族化合物の水素化反応に使用されるもの であれば、如何なるものであっても使用可能であり、例えば、(1)パラジウム、白金、 エッケノレ、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属をカーボン、ァノレミナ、シリカ、ケイソゥ 土などの担体に担持してなる担持型金属触媒や、(2)チタン、コバルト、ニッケル等 の有機遷移金属化合物とリチウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ等の有機金属化 合物からなる均一系触媒、更には、(3)ロジウム、ルテニウム等の金属錯体触媒等を 、挙げること力 Sでさる。
[0049] 具体的には、上記(1)の担持型金属触媒としては、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケ
/ケイソゥ土、パラジウム/アルミナ、白金/シリカ、白金/アルミナ、ロジウム/シリ 力、ロジウム/アルミナ、ルテニウム/シリカ、ルテニウム/アルミナ等の触媒を挙げ ること力 S出来る。また、上記(2)の均一系触媒としては、酢酸コバルト/トリェチルアル ミニゥム、トリオクチル酸ニッケル/トリイソブチルアルミニウム、ニッケルァセチルァセ トナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド /n—ブチルリチウム、ジル コノセンジクロリド/ sec—ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネ シゥム等の組み合わせを挙げることが出来る。更に、上記(3)の金属錯体触媒として は、クロロトリス(トリフエニルホスフィン)ロジウム、ジヒドリドテトラ(トリフエニルホスフィン )ルテニウム、ヒドリド(ァセトニトリル)トリス(トリフエニルホスフィン)ルテニウム、カルボ ユルクロロヒドリドトリス(トリフエニルホスフィン)ルテニウム、カノレポニノレジヒドリドトリス( トリフエニルホスフィン)ルテニウム等を、挙げることが出来る。これらの水素添加触媒 の中でも(1)の担持型金属触媒は、水素化反応後に、水添触媒をろ過で分離回収 する際に重合触媒も合わせて分離回収できるという利点を有することから、特に有利 に用いられる。
[0050] また、水素添加する際の反応温度は、通常は— 20〜250°C、好ましくは— 10〜22
0°C、より好ましくは 0〜200°Cの範囲内において設定され、水素圧力は、通常は 0. l ~ 100kg/cm2、好ましくは 0. 5〜70kg/cm2、より好ましくは;!〜 50kg/cm2 にて、水素添加が実施される。水素圧力が低すぎると、水素化速度が遅くなり、高す ぎると高耐圧反応装置が必要となる。更に、反応温度は、重合体が熱分解しない程 度の温度とされ、通常は 300°C以下、好ましくは 250°C以下にて行なわれる力 反応 温度が低すぎると反応速度が遅くなり、反応が完了しない恐れがある。
[0051] さらに、水素添加を行なう際の溶媒としては、重合体が溶解し、触媒不活性な有機 溶媒であれば特に限定されな!/、が、重合体の水素添加物の溶解性や反応性から、 脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及び芳香族炭化水素等から任意に選ばれ る単独又は混合溶媒を用いることが可能である。具体的には、ベンゼン、トルエン等 の芳香族炭化水素系溶媒; n ペンタン、 n へキサン、 n ヘプタン、 n オクタン、 シクロペンタン、シクロへキサン、メチノレシクロへキサン、ェチノレシクロへキサン、デカ リン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエー テル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロ口ホルム、 1 , 1ージクロルェタン、 1 , 2
—ジクロノレエタン、 n プロピノレクロライド、 1—クロ口一 n ブタン、 2—クロ口一 n ブ タン等のハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上 が有利に用いられる。これらの中でも、溶解性や反応性の点から、特に炭化水素系 溶媒が好ましい。なお、有機溶媒は、重合反応の際に用いた溶媒と同じであってもよ ぐ重合反応液にそのまま水素添加触媒を添加して反応(水素添加)させることも可 能である。
[0052] また、水素添加に要する反応時間は、通常は 0. ;!〜 10時間であり、水素添加前の 重合体における不飽和二重結合 (炭素 炭素二重結合)の 70%以上が飽和される まで、水素が添加されることが望ましぐより好ましくは 90%以上、さらに好ましくは 95 %以上が飽和されるまで、水素添加を継続することが望ましい。これにより、耐候性に 優れた脂環式炭化水素系重合体が有利に得られる。なお、水素添加された重合体 における不飽和二重結合 (炭素 炭素二重結合)の水素添加率は、一般には、ヨウ 素価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル NMRスペクトル )測定等の分析手段を用いて、算出することが可能である。
[0053] 本明細書及び請求の範囲において、 /3 —ピネン重合体のォレフィン性二重結合に 対する水素添加率は、重水素化クロ口ホルムを溶媒として用いた核磁気共鳴スぺタト ノレ( ifi— NMRスペクトル)測定によって算出されたものを用いて、評価している。具 体的には、重水素化クロ口ホルムを溶媒として用いて、テトラメチルシランのプロトンを Oppmとする ^H— NMRスペクトルにおいて、 δ =4. 0〜6· Oppmにて検出された シグナルの積分値、即ちォレフィン性二重結合のプロトンに由来するシグナルの積分 値たる数値: Aと、 δ =0. 5〜2· 5ppmにて検出されたシグナルの積分値、即ち飽和 炭化水素のプロトンに由来するシグナルの積分値たる数値: Bとを算出し、それらの 比: [A/B]にて評価しているのである。力、かる比: [A/B]は、水素添加率が高くな るにつれて小さくなるものであり、本発明の /3—ピネン重合体にあっては、その比が 0 以上 0. 003以下であるもの、より好ましくは 0以上 0. 0003以下であるものが好まし い。
[0054] また、上述した方法に従うことにより、比重が 1. 0未満であり、且つ 10%重量減少 温度が 400°C以上である /3—ピネン重合体を製造することが可能である。本明細書 及び請求の範囲において、比重とは、 JIS— K— 7112— 1999における A法に従つ て測定されたものである。また、 10%重量減少温度とは、 JIS—K— 7120— 1987「 プラスチックの熱重量測定方法」に規定されている質量減少率が 10%に達した温度 であり、具体的には、十分に乾燥させて、溶媒を除去したサンプル( /3—ピネン重合 体)を、 lOOmL/分の窒素気流下において、昇温速度: 10°C/分にて、 25°C力、ら 5 00°Cまで昇温すると共に、その昇温の際の熱重量減少を測定し、初期重量から 10 %、重量が減少した温度を意味するものである。
[0055] ところで、本発明に係る /3—ピネン重合体にあっては、 2官能性ビュル化合物を使 用しない場合には分岐構造を有さず、また、 2官能性ビュル化合物を用いた場合で も、その使用量が少ないことから、複雑に架橋した網目状構造を有するものではなく 、所謂、長鎖分岐構造を有するものであり、熱可塑性を有する。従って、プレス成形、 押し出し成形、射出成形などの成形加工が可能である。なお、本発明の脂環式炭化 水素系重合体を用いて成形品とする場合には、成形の際に、安定剤、滑剤、顔料、 耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸
収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブ ロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル 繊維等の各種繊維;タルク、マイ力、モンモリロナイト、シリカ、木粉等の充填剤;各種 カップリング剤等の成分を、必要に応じて配合することができる。
[0056] 本発明の /3—ピネン重合体を成形することにより、透明性及び耐熱性に優れた成 形品、具体的には、全光線透過率が 90%以上であり、且つ 10%重量減少温度が 4 00°C以上である成形品を、得ることが可能である。本明細書及び請求の範囲におけ る全光線透過率は、 JIS -K- 7361 - 1 - 1997「プラスチック一透明材料の全光線 透過率の試験方法 第 1部:シングルビーム法」に従って測定される値である。
[0057] そして、本発明に従う 0 ピネン重合体や、力、かる重合体を用いて得られた成形品 にあっては、その用途は特に制限されるものではなぐ従来の透明樹脂と同様に種 々の用途に使用することが出来る。例えば、光学シート、光ディスク、光学レンズ、液 晶表示装置用の位相差板、導光板、拡散板、偏光板保護膜、ディスプレイ前面版、 自動車用ライトカバー、レンズカバー、計器カバーなどに用いることが可能である。 実施例
[0058] 以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることと する力 本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるもので ないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、 更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当 業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、 理解されるべきである。
[0059] なお、以下の例において、 /3—ピネンの反応率、得られた重合体の重量平均分子 量及び数平均分子量、水素添加率、全光線透過率、ガラス転移温度、 10%重量減 少温度、屈折率 (nD)、比重、曲げ弾性率、アッベ数、光弾性係数、吸水率及び線 膨張係数は、各々、下記のようにして求めた。
[0060] 一重量平均分子量及び数平均分子量
JIS— K— 0124— 2002「高速液体クロマトグラフィー通貝 IJ」にて規定されているサ ィズ排除クロマトグラフィーの手法に従レ、、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(G
PC)によって測定された示差屈折検出器の値と、標準ポリスチレンの校正曲線とから 求めた。 GPC装置として、 日本分光株式会社製: PU-980ポンプ(品番)及び同社製: 930-RI示差屈折計(品番)、カラムとして、昭和電工株式会社製: Shodex (商品名、品 番: GPC K-805L)の 2本を、直列に繋いだものを用いた。測定に際しては、テトラヒド 口フランを溶媒として用い、 40°Cの条件にて測定を行った。
[0061] 一水素添加率
重水素化クロ口ホルムを溶媒とし、テトラメチルシラン(TMS)を Oppmとして、 Varian 製、 Gemini 2000 (品番) 400MHzを用いて、 ifi— NMRスペクトルを得た。測定は 室温で行なった。水素添加率は、水素添加前のスペクトルにある不飽和結合に起因 する 4· 0〜6. Oppmのピークの減少によって決定した。このとき、 ifi— NMRスぺク トルにおける δ =4. 0〜6· Oppmにて検出されるシグナル(ォレフイン性二重結合の プロトンに由来するシグナル)の積分値: Aと、 δ =0. 5〜2· 5ppmにて検出されるシ グナル (飽和炭化水素のプロトンに由来するシグナル)の積分値: Bとの比: [A/B] を、ォレフィン比(Q)とした。
[0062] ガラス転移温度
JIS— K— 7121— 1987「プラスチックの転移温度測定方法」にて規定されている 手法に従って測定し、そこにおける中間点ガラス転移温度 (Tmg)をガラス転移温度と した。なお、測定装置として、セイコーインスツルメンッ株式会社 (現セイコーインスッ ノレ株式会社)製の SSC-5200 (品番)を用いた。
[0063] 10%重量減少温度
JIS— K— 7120— 1987「プラスチックの熱重量測定方法」に準じて測定した。測定 装置として、セイコーインスツルメンッ株式会社(現セイコーインスツル株式会社)製の SSC-5200 (品番)を用いた。
[0064] 全光線透過率
JIS— K 7361— 1 - 1997「プラスチック一透明材料の全光線透過率の試験方法 —第 1部:シングルビーム法」に従って測定した。測定装置としては、村上色彩研究 所製のヘイズメーター HR-100 (品番)を用いた。
[0065] 屈折率(nD)—
ATAGO社製の RX-2000 (品番)を用いて、 25°Cの条件にて測定した。
[0066] 比重
JIS— K— 7112— 1999の A法に準じて測定した。
[0067] 曲げ弾性率及び曲げ強度
各重合体の試験片を準備し、力、かる試験片を用いて、 JIS— K 7171に準じて、ォ ートグラフ (株式会社島津製作所製)を使用して、 23°Cにおける曲げ弾性率を測定し た。また、最大点応力を曲げ強度とした。
[0068] アッベ数
ATAGO社製のアッベ屈折計 DR-M2 (品番)を用いて、 25°Cの条件にて測定した
〇
[0069] 一光弾性係数
各重合体よりなる厚さ: 200 mのフィルムを、 [重合体の Tg— 20]°Cの温度にて一 晚、ァニールした後、 [Tg + 20]°Cの温度にてフィルムの長軸方向に引っ張り応力を かけ、その際のレターデーシヨンを、エリプソメーター M220 (日本分光株式会社製)で 測定し、応力に対するレターデーシヨンの変化量力 光弾性係数を算出した。
[0070] 吸水率
JIS— K— 7209— 2000の A法に準じて測定した。
[0071] 一線膨張係数
各重合体の試験片を準備し、力、かる試験片を用いて、 JIS— K 7197に準じて線 膨張係数を測定した。なお、測定装置としては、ブルカー ·エイエックスエス株式会社 製の TMA4000SA (品番)を使用した。
[0072] 一重合体 1の製造及び評価
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコ内に、脱水したへキサン(和光純薬工業株 式会社製): 11 · 6ml、脱水したジクロロメタン(同社製): 13· Oml、 β—ビネン(同社 製): 2. 3ml、及び、 m ジイソプロぺニルベンゼン (東京化成工業株式会社製) : 0. 05ml ( /3—ピネンの 100重量部に対して 3. 48重量部)を、窒素気流下で加え、撹 拌して均一に溶解し、 78°Cに冷却した後、ルイス酸たる EtAlCl のへキサン溶液( 関東化学株式会社製、濃度: 1. Omol/l) : l . 18mlを加えて、重合を開始した。
[0073] 反応は、反応液内においてゲル化することなく進行し、 1時間反応せしめた後、反 応液にメタノールを 10ml加え、反応を停止した。反応液をメタノールにて再沈後、沈 殿物を十分乾燥することにより、テトラヒドロフランに全て可溶な /3—ピネン重合体(重 合体 1) : 2. lgを得た。なお、収率は 100%であった。得られた重合体 1の重量平均 分子量は、 204, 300であり、ガラス転移温度は 90°Cであった。
[0074] 一重合体 2の製造及び評価
重合体 1を製造した際の条件のうち、 m—ジイソプロぺニルベンゼンの使用量を 0. 033ml ( /3 ピネンの 100重量部に対して 2. 32重量部)に変更した以外は、重合体 1の場合と同様にして反応を行なった。反応はゲル化することなく進行し、 1時間反応 せしめた後、重合体 1の場合と同様の操作を行ない、 β ピネン重合体(重合体 2): 2. 0gを得た。なお、収率は 100%であった。得られた重合体 2の重量平均分子量は 、 90, 600であり、ガラス転移温度は 88。Cであった。
[0075] 一重合体 3の製造及び評価
β ピネン及びルイス酸の添加順序を変えて重合を行なった以外は、重合体 2を 製造した際と同様に、合成を行なった。即ち、十分乾燥させたガラス製コック付フラス コ内に、脱水したへキサン: 11. 6ml,脱水したジクロロメタン: 13. 0ml、及び、ルイ ス酸たる EtAlCl のへキサン溶液(濃度: 1. Omol/1) : 1. 18mlを、窒素気流下で 加え、撹拌して均一に溶解し、 78°Cに冷却した後、 β—ビネン: 2. 3ml及び m— ジイソプロぺニルベンゼン: 0. 033ml ( /3 ピネンの 100重量部に対して 2. 32重量 部)の混合物をフラスコ内に滴下し、重合を開始した。反応はゲル化することなく進行 し、 1時間反応せしめた後、重合体 2の場合と同様の操作を行ない、 β ピネン重合 体(重合体 3) : 2. lgを得た。なお、収率は 100%であった。得られた重合体 3の重量 平均分子量は 114, 000であり、ガラス転移温度は 89°Cであった。
[0076] 一重合体 4 ·成形品 1の製造及び評価
撹拌装置付き耐圧容器を準備し、その内部について十分に窒素置換を行なった後 、十分に脱水したへキサン、及び重合体 1 : 2. 0gを投入し、十分に溶解させた。次い で、パラジウム/アルミナ担持型触媒 (和光純薬工業株式会社製、 Pd : 5%) : 500m gを添加し、 10kg/cm2の水素雰囲気下において、 90°Cで 7時間、水素添加反応
を行なった。かかる反応の後、反応液を遠心分離して、濾過を行ない、触媒を除去し た後、メタノールにて再沈させ、沈殿物を十分に乾燥することにより、 β ピネン重合 体(重合体 1)の水素添加物(重合体 4) : 2. Ogを得た。得られた重合体 4の水素添加 率を ^ NMRスペクトル測定により算出したところ、 99. 95%であり、またォレフィ ン比(Q)は 0. 00003であった。更に、重合体 4の重量平均分子量は 198, 000であ り、ガラス転移温度は 130°Cであった。
[0077] さらに、得られた重合体 4を、プレス温度: 200°C、プレス圧: 100kg/cm2の条件 にてプレス成形を行ない、厚さ: lmmのシート状成形品(成形品 1)を得た。得られた 成形品 1の全光線透過率は 91. 5%、 10%重量減少温度は 460°Cであった。成形 品 1につ!/、ての全光線透過率等の測定結果を、下記表 1に示す。
[0078] 一重合体 5の製造及び評価
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水した n へ キサン: 44. 1ml、脱水したジクロロメタン: 46. 1mlを加え、 78°Cに冷却した。さら に— 78°Cで撹拌しながら、蒸留精製した /3 ピネン : 0. 15ml,及び開始剤たる m— ジクミルク口ライドのへキサン溶液(濃度: 0. 96mol/L) : 0. 052mLをカロえた。更に — 78°Cに保持した状態で、ノレイス酸たる Et A1C1のへキサン溶液(濃度: 1 · Omol/ L) : 1. 89mlを加えたところ、反応液は徐々に燈色に変化した。直ちに /3—ビネン: 7 . 04mlを 3. 5時間かけて添加したところ、反応液は次第に濃黄色になり、溶液の粘 度が上昇した。
[0079] β ピネンの添加終了後、 1時間反応せしめた後、反応液にメタノール: 4mlを加え 、反応を終了させた。蒸留水 100mlにクェン酸: 5gを添加した水溶液を添加し、 5分 間、撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ 化合物を除去した。得られた有機層をメタノール: 1000mlにて再沈後、沈殿物を十 分乾燥することにより、 β ピネン重合体(重合体 5) : 6. 8gを得た。なお、収率は 10 0%であった。得られた重合体 5の重量平均分子量は 97, 000、数平均分子量は 40 , 000、ガラス転移温度は 93°Cであった。
[0080] 一重合体 6の製造及び評価
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水した n へ
キサン: 237ml、脱水したジクロロメタン: 159ml、電子供与剤たる脱水したジェチル エーテル: 0. 7mlを加え、 78°Cに冷却した。次いで、 78°Cで撹拌しながら、ルイ ス酸たる EtAlCl のへキサン溶液(濃度: 1 · Omol/L) : 9. 3mlを加えた。更に— 7 8°Cに保持した状態で、開始剤たる p ジクミルク口ライドのへキサン溶液 (濃度: 0. 1 mol/L) : 3. 7mlを加えたところ、反応液が赤燈色に変化した。直ちに、蒸留精製し た /3 ピネン:70mlを 1時間かけて反応液に添加したところ、反応液は次第に濃燈 色になり、溶液の粘度が上昇した。
[0081] β ピネンの添加終了後、 1時間反応せしめた後、反応液にメタノール: 30mlをカロ え、反応を終了させた。蒸留水: 100mlにクェン酸: 5gを添加した水溶液を添加し、 5 分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ 化合物を除去した。得られた有機層を、メタノールとアセトンの混合溶媒 (メタノール /アセトン = 50/50 [vol%] ) : 5000mlを用いて再沈させた後、沈殿物を十分乾燥 することにより、 β ピネン重合体(重合体 6) : 61. 3gを得た。なお、収率は 100%で あった。得られた重合体 6の重量平均分子量は 116, 000、数平均分子量は 51 , 00 0、ガラス転移温度は 95°Cであった。
[0082] 一重合体 7 ·成形品 2の製造及び評価
重合体 4を製造した際の条件のうち、重合体 1に代えて重合体 5を 6. 0g用いた以 外は重合体 4の場合と同様にして、重合体 5に対する水素添加反応を行い、重合体 5の水素添加物(重合体 7) : 6. 0gを得た。得られた重合体 7の水素添加率を Ν MRスペクトル測定により算出したところ、 99· 98%であり、ォレフィン比(Q)は、 0. 0 0001であった。また、重合体 7の重量平均分子量は 95, 000、ガラス転移温度は 13 0°Cであった。
[0083] さらに、得られた重合体 7を、プレス温度: 200°C、プレス圧: 100kg/cm2の条件 にてプレス成形を行!/、、厚さ: 1mmのシート状成形品(成形品 2)を得た。得られた成 形品 2の全光線透過率は 92%、 10%重量減少温度は 460°C、比重は 0. 93、曲げ 強度は 65MPa、曲げ弾性率は 2500MPa、吸水率は 0· 1 %以下であった。成形品 2の全光線透過率等の測定結果を、下記表 1に示す。
[0084] 一重合体 8 ·成形品 3の製造及び評価
撹拌装置付き耐圧容器を準備し、その内部について十分に窒素置換を行った後、 十分に脱水したシクロへキサン: 90ml、及び、前述した重合体 6を 30g投入し、十分 に溶解させた。次いで、パラジウム/アルミナ担持型触媒(Pd : 5%、 N.E.Chemcat社 製):30gを添カロし、 40kgf/cm2の水素雰囲気下において、 100°Cで 6時間、水素 添加反応を行った。かかる反応の後、反応液にシクロへキサン: 200ml加えて希釈し た後、反応液を 0. δ πιテフロン (登録商標)フィルタ一により濾過して、触媒を分離 除去した後、メタノールとアセトンの混合溶媒 (メタノール/アセトン = 50/50 [Vol% ] )にて再沈させ、沈殿物を十分に乾燥することにより、 13 ピネン重合体 (重合体 6) の水素添加物(重合体 8) : 29gを得た。得られた重合体 8の水素添加率を NM Rスペクトル測定により算出したところ、 99· 9%であり、ォレフィン比(Q)は、 0. 0000 6であった。また、重合体 8の重量平均分子量は 112, 000、数平均分子量は 50, 8 00、ガラス転移温度は 130°Cであった。
[0085] さらに、得られた重合体 8を、プレス温度: 200°C、プレス圧: 100kg/cm2の条件 にてプレス成形を行!/、、厚さ: 1mmのシート状成形品(成形品 3)を得た。得られた成 形品 3にあっては、全光線透過率は 92%、 10%重量減少温度は 437°C、屈折率 (n D)は 1 · 505、比重は 0· 93、曲げ強度は 72MPa、曲げ弾性率は 2600MPa、アツ ベ数は 61、光弾性係数は 6. 90 X 10— Ucm2/dyn、吸水率は 0. 1 %以下、線膨張 係数は 6. 5 X 10— 5 (1/K)であった。成形品 3についての全光線透過率等の測定結 果を、下記表 1及び表 2に示す。
[0086] 一重合体 9の製造及び評価
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したメチル シクロへキサン: 45. 0ml、脱水したジクロロメタン: 45. 0ml、電子供与剤たる脱水し たジェチルエーテル: 0· 16mlを加え、 78°Cに冷却した。次いで、 78°Cで撹拌 しながら、ルイス酸たる EtAlCl のへキサン溶液(濃度: 1. 04mol/L) : 1. 92mlを 加えた。更に一 78°Cに保持した状態で、開始剤たる m ジクミルク口ライドのメチルシ クロへキサン溶液(濃度:0. 96mol/L) : 0. 05mlを加えたところ、反応液が赤燈色 に変化した。直ちに、反応液に、蒸留精製した /3 ピネン:6. 28ml, a—メチルス チレン: 0. 67ml,及び 2官能性ビュル化合物たる m ジイソプロぺニルベンゼン: 0
. 14g ( / ピネンと α—メチルスチレンからなる単量体群の 100重量部に対して、 2 . 30重量部)を混合したモノマー溶液を、 2時間かけて添加したところ、反応液は次 第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。
[0087] モノマー溶液の添加終了後、 1時間反応せしめた後、重合溶液にメタノールを 4ml 加え、反応を終了させた。蒸留水: 100mlにクェン酸: 5gを添加した水溶液を添加し 、 5分間、撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、 アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール: 1500mlにて再沈後、沈殿 物を十分乾燥することにより、 β ピネン重合体( —ピネンと《—メチルスチレンと の共重合体)である重合体 9を 7. 28g得た。得られた重合体 9を NMRスぺタト ル測定により組成比を算出したところ、 a—メチルスチレンが 10· 9重量0 /0、 /3—ビネ ンが 89. 1重量%からなる共重合体であり、重量平均分子量は 109, 400、数平均分 子量は 35, 300、ガラス転移温度は 98°Cであった。
[0088] [表 1]
[0089] [表 2]
[0090] 力かる表 1に記載の結果力らも明らかなように、本発明に従う 13 ピネン重合体を 用いた成形品にあっては、透明性、耐熱性及び強度において優れたものであり、且 つ軽量なものであること力 認められたのである。
[0091] 以上、本発明の実施例について詳細に述べてきた力 本発明の効果をより明らか
にすベぐ以下に、幾つかの比較例を示す。
[0092] 一重合体 10の製造及び評価
m—ジイソプロぺニルベンゼンを用いないこと以外は重合体 1と同様にして、重合を 行なった。反応はゲル化することなく進行し、 1時間反応後、反応液をメタノールにて 再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、 13 ピネン重合体 (重合体 10 )を 2. Ogを得た。なお、収率は 100%であった。得られた重合体 10の重量平均分子 量は、 31 , 700と/ J、さいものであった。
[0093] 一重合体 11の製造及び評価
重合体 1を製造した際の条件のうち、 m—ジイソプロぺニルベンゼンの使用量を 0. 083ml ( /3—ピネン 100重量部に対して 5. 81重量部)に変更した以外は、重合体 1 の場合と同様にして反応を行なった。反応液はゲル化し、固化した。 1時間反応後、 重合溶液をメタノールに再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、 β ピネン重合体 (重合体 11)を得たが、得られた重合体 11は、有機溶媒に不溶であつ た。
[0094] 一重合体 12の製造及び評価
非特許文献 2に記載の方法により、 2, 6 ジー t プチルー 4 メチルピリジンを加 えて、 β ピネンをカチオン重合によって重合せしめた。具体的には、 β ピネンの 使用量を 0. 58mlとし、 m ジイソプロぺニルベンゼンを用いずに、 2, 6 ジー tーブ チル— 4 メチルピリジン : 0. 10gを添加した以外は重合体 1の場合と同様にして、 重合を行ない、脂環式炭化水素系重合体 (重合体 12)を得た。非特許文献 2には、 数平均分子量が 39, 900で、重量平均分子量が 84, 600の重合体(/3—ピネン重 合体)が得られるとの記載がなされている力 S、分子量の測定に用いるポリスチレン換 算で求める GPC測定は、用いる測定溶媒やカラムの種類により、相対分子量が異な ることが知られており、本発明者等が、得られた重合体 12の数平均分子量及び重量 平均分子量を測定したところ、数平均分子量は 25, 100、重量平均分子量は 54, 7 00であった。
[0095] 重合体 13 ·成形品 4の製造及び評価
重合体 4を製造した際の条件のうち、重合体 1に代えて重合体 12を 2. Og用いた以
外は重合体 4の場合と同様にして、重合体 4に対する水素添加反応を行い、重合体 4の水素添加物(重合体 13) : 1. 95gを得た。得られた重合体 13の水素添加率を 1 H— NMRスペクトル測定により算出したところ、 99. 95%であり、ォレフィン比(Q)は 、 0. 00003であった。また、重合体 13の重量平均分子量は 47, 400、ガラス転移温 度は 128°Cであった。
[0096] さらに、得られた重合体 13を、プレス温度: 200°C、プレス圧: 100kg/cm2の条件 にてプレス成形を行!/、、厚さ: 1mmのシート状成形品(成形品 4)を得た。し力、し、成 形体 4は脆ぐ曲げ強度を測定しようと治具にはめると破砕した。
[0097] 一重合体 14の製造及び評価
ルイス酸として BF (エーテル錯体、 Aldrich)を用いたこと以外は、重合体 10と同 様にして重合を行なった。反応はゲル化することなく進行し、 1時間反応後、重合溶 液をメタノールにて再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、 β ピネン 重合体(重合体 14) : 0. 32gを得た。なお、収率は 16%であった。得られた重合体 1 4の重量平均分子量は、 5, 800と非常に小さいものであった。
[0098] 一重合体 15の製造及び評価
重合体 14を用いたこと以外は重合体 4の場合と同様の条件に従って、重合体 14に 対する水素添加反応を行い、重合体 14の水素化添加物(重合体 15)の 0. 32gを得 た。得られた重合体 15の水素添加率を ^ NMRスペクトル測定により算出したとこ ろ、 99. 95%であった。また、重合体 15のガラス転移温度度は 90°Cであった。更に 、得られた重合体 15を用いて、プレス温度: 180°C、プレス圧: 100kg/cm2の条件 にてプレス成形を試みたが、成形体を金型より剥離する際に破砕してしまい、安定な 成形品は得られなかった。
[0099] 一重合体 16の製造及び評価
開始剤たる m—ジクミルク口ライドを用いないこと以外は、重合体 5の場合と同様に して、重合を行った。 β—ビネンの添加終了後、 1時間反応せしめた後でも、溶液の 粘度は上昇しな力、つた。重合体 5の場合と同様にして、反応をメタノールにより停止さ せ、反応液を洗浄し、有機層をメタノール: 1000mlにて再沈させた後、沈殿物を十 分乾燥することにより、 β—ビネン重合体(重合体 16)を 1. 3g得た。なお、収率は 19
%であった。得られた重合体 16の重量平均分子量は 13, 600、数平均分子量は 7, 600であった n