JP6341439B2 - βフェランドレン重合体、その製造方法及び成形品 - Google Patents
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Description
[3] オレフィン性炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素化されていることを特徴とする[1]又は[2]に記載のβフェランドレン重合体。
[4] ガラス転移温度Tgが80℃以上であることを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載のβフェランドレン重合体。
[5] 前記一般式(I)及び(II)で表されるβフェランドレンを、ルイス酸を触媒としてカチオン重合せしめて得られたことを特徴とする[1]〜[4]の何れか一項に記載のβフェランドレン重合体。
[6] 反応液中に含まれる重合性化合物の総重量に対して下記一般式(I)及び(II)で表されるβフェランドレンの含有量が90〜100重量%の反応液を用い、ルイス酸を触媒としてカチオン重合せしめて、数平均分子量が100,000以上であるβフェランドレン重合体を得ることを特徴とするβフェランドレン重合体の製造方法。
[8] 前記カチオン重合の反応温度が−90〜100℃であることを特徴とする[6]又は[7]に記載のβフェランドレン重合体の製造方法。
[9] 前記カチオン重合の後、得られた重合体中のオレフィン性炭素−炭素二重結合を水素化することを特徴とする[6]〜[8]の何れか一項に記載のβフェランドレン重合体の製造方法。
[11] 全光線透過率が90%以上であることを特徴とする[10]に記載の成形品。
βフェランドレン重合体を構成するモノマーであるβフェランドレンは、生物から抽出及び精製されていてもよいし、石油由来の化合物から化学合成されていてもよい。例えば植物の種子や根から水蒸気蒸留によって得られたエッセンシャルオイルに含まれるβフェランドレンを用いてもよいし、既存の化学物質を原料として、公知の化学合成法によって得られたβフェランドレンを用いてもよい。
特に好ましくは、例えば、ディールスアルダー反応試薬等のシス型の共役二重結合と反応する物質を添加し、βフェランドレン以外のシス型の共役二重結合物質を不溶性の物質として除去し、純分を高くすることがよく、精密蒸留と組み合わせることにより純分をあげるのが好ましい。
例えば、βフェランドレン反応用液を1重量%となるようにクロロホルム溶液(和光純薬社製高速液体クロマトグラフ用、純度99.7%)に希釈し、ガスクロマトグラフ分析装置(HEWLETT PACKARD社製 HP6890 Series GC System)を用いて測定することができる。この時、成分分離用のカラムとしてはDB−5(アジレント・テクノロジー社製キャピラリーカラム、30m×0.25mmID×0.25μ)、を用い、カラム温度:開始50℃、最終300℃、昇温速度 15℃/分、インジェクション温度:300℃で測定することが好ましい。βフェランドレンのピークはβフェランドレン標準液またはMSスペクトルより同定することができる。βフェランドレンの純分はGC分析において観測された面積値1000以上のピークの全面積の合計を100としたときのβフェランドレンの面積比率で算出することが好ましい。
前記有機溶媒として、1種の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶媒を併用してもよい。
βフェランドレン重合体の重合度を一層高めて、高靭性の重合体を得るためには、非極性溶媒を用いる方が特に好ましい。ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素等の塩素系溶媒(塩素原子有する化合物からなる溶媒)は使用可能である。しかし、廃棄溶剤の処理、重合製品の脱塩処理および昨今のVOC規制の観点から使用不可能な塩素系溶剤もあるため、環境問題の観点からは好ましいとは限らない。
前記ルイス酸として、1種のルイス酸を単独で用いてもよいし、2種以上のルイス酸を併用してもよい。
ただし、2官能性のビニル化合物を添加する場合は、βフェランドレン単量体よりも十分少ない量にて添加される。重合体を製造する際に、2官能性ビニル化合物は一般的に分岐剤または架橋剤として使用されるが、十分少ない量とすることで、長鎖分岐構造を有し、溶剤可溶性の良好な重合体を得ることができる。
上記のようにして得られたβフェランドレン重合体の数平均分子量Mnは、重合溶液の粘度や溶融粘度、成形性、成形品の強度、耐熱性の観点から、1万〜100万が好ましい。本発明にかかるβフェランドレン重合体の数平均分子量Mnは、2万〜50万に調製することもできるし、3万〜40万に調製することもできるし、4万〜30万に調製することもできるし、5万〜25万に調製することもできるし、6万〜20万に調製することもできるし、7万〜15万に調製することもできるし、8万〜12万に調製することもできる。重合体の分子量が大き過ぎると、重合溶液の粘度が高くなって重合体の生産性が悪くなり、又は、重合体の溶融粘度が高くなって成形性が悪くなる恐れがある。一方、分子量が小さ過ぎると、重合体を用いて得られる成形品の強度が低下すると共に、ガラス転移温度が80℃未満となり、十分な耐熱性を発揮し得ない恐れがある。
本発明の第一態様のβフェランドレン重合体の材料として用いるβフェランドレンは、下記一般式(I)及び(II)で表される互いに光学異性体(エナンチオマー)である化合物の混合物又はラセミ体であってもよいし、何れか一方の光学異性体のみであってもよい。化学合成されたβフェランドレンは、通常、前記混合物である。何れか一方の光学異性体のみからなるβフェランドレンの材料を用いる場合、例えばキラルカラムを用いたクロマトグラフィー、光学分割剤を用いたジアステレオマ法等の手法を用いることにより、光学異性分離をして得られた材料を用いてもよい。
本発明の第一態様のβフェランドレン重合体が有するオレフィン性炭素−炭素二重結合に対して水素添加を行うことができる。水素添加を行うことによって、耐熱性が一層向上した重合体を得ることができる。
前記触媒を1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶媒を1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(比(A/B(水添前))−比(A/B(水添後))×100÷比(A/B(水添前))
本発明にかかるβフェランドレン重合体及びその水素添加された重合体は熱可塑性を有するため、プレス成形、押し出し成形、射出成形などの成形加工が可能である。
本発明にかかる成形品には、成形の際に、安定剤、滑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤、光安定剤、帯電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維;タルク、マイカ、モンモリロナイト、シリカ、木粉等の充填剤;各種カップリング剤等の成分を必要に応じて所定量を配合することができる。
乾燥させた300mlガラス製フラスコに、トルエン(関東化学株式会社製)78.6
mlを入れ、0℃に冷却した。つぎにルイス酸触媒のEtAlCl2(エチルアルミニウムジクロリド)(17%ヘキサン溶液、約1mol/L、東京化成工業株式会社製)を、モノマーであるβフェランドレン100重量部に対して7.3重量部に相当する量(0.035ml)を投入し、よく分散させたのち、βフェランドレン(純度83.3%)6.0ml(5.1g)をゆっくりと滴下投入した。1分後に、メタノール10mlを加えて反応を停止した。反応溶液を分液ロートに移した後に1%水酸化ナトリウム溶液20mlを加えて、よく撹拌した後、水溶液の相を分離除去した。次に、有機溶媒相をエバポレータによりゆっくりと蒸発させ、反応溶液を濃縮させた。濃縮した反応溶液約40mlをメタノール300mlにゆっくり滴下し、重合物を再沈させた。得られた沈殿物を溶液よりろ過分離し、十分乾燥させ、βフェランドレン重合体を得た。反応時のモノマーの反応率は100%であった。
十分窒素置換を行った圧力容器に、脱水したヘキサン90mlおよび得られたβフェランドレン重合体4gを投入し十分溶解させた。ついで、パラジウム・アルミナ触媒(和光純薬製、Pd:5%)10gを添加し、8MPaの水素雰囲気下にて、120℃で10時間、水素添加反応を行った。テフロン(登録商標)からなる孔径1μmのフィルターを用いて反応液をろ過し、触媒を除去した後、メタノールにて再沈させ、沈殿を十分に乾燥させて、βフェランドレン重合体の水素添加物4.5gを得た。
実施例1において反応温度を−40℃、反応時間を5分に設定した以外は同一条件で実施し、βフェランドレン重合体を得た。反応時のモノマーの反応率は100%であり、得られ重合体の数平均分子量は40,000であり、ガラス転移温度は82℃であった。
さらに、実施例1と同様に水素添加して得た重合体の水素添加率は99.9%、重合体の数平均分子量は39,500、ガラス転移温度は125℃、全光線透過率は93%であった。
実施例1において反応時間を10秒とした以外は同一条件で実施し、βフェランドレン重合体を得た。反応時のモノマーの反応率は88%であり、得られた重合体の数平均分子量は33,800であり、ガラス転移温度は82℃であった。
さらに、実施例1と同様に水素添加して得た重合体の水素添加率は99.9%、重合体の数平均分子量は33,500、ガラス転移温度は125℃、全光線透過率は93%であった。
実施例1において、モノマーであるβフェランドレンを、植物から精製した材料に変更し、更に、重合反応に使用する溶媒をヘキサンにした以外は同一条件で実施した。上記材料におけるβフェランドレンの純度(純分)は99.3%であった。上記材料は、トドマツ(植物体)から水蒸気蒸留の方法により得られた精油を精密蒸留し、得られた濃縮液にディールスアルダー反応試薬を添加し、更にトランス共役二重結合物質を除去することによって得た。
反応時のモノマーの反応率は100%であり、得られた重合体の分子量は80,200であり、ガラス転移温度は84℃であった。
さらに、水素添加した重合体の水素添加率は99.7%であり、重合体の数平均分子量は80,000であり、ガラス転移温度は131℃であり、全光線透過率は93%であった。
実施例4において反応温度を−78℃とした以外は同一条件で実施した。
反応時のモノマーの反応率は100%であり、得られた重合体の数平均分子量は139,400であり、ガラス転移温度は88℃であった。
さらに、水素添加した重合体の水素添加率は99.6%であり、重合体の数平均分子量は138,500であり、ガラス転移温度は139℃であり、全光線透過率は92%であった。
実施例4において反応温度を20℃とした以外は同一条件で実施した。
反応時のモノマーの反応率は100%であり、得られた重合体の数平均分子量は57,700であり、ガラス転移温度は 81℃であった。
さらに、水素添加した重合体の水素添加率は99.9%であり、重合体の数平均分子量は57,300であり、ガラス転移温度は125℃であり、全光線透過率は93%であった。
実施例4において、反応液中にモノマーであるβフェランドレンを投入した後、さらに電子供与剤である2,6−ジ−t−ブチルピリジン(東京化成工業株式会社製)0.072 g(βフェランドレンの100重量部にたいして1.4重量部)を添加した以外は同一条件で実施した。
反応時のモノマーの反応は42%であり、得られたβフェランドレン重合体の数平均分子量は75,300であり、ガラス転移温度は87℃であった。
さらに、水素添加した重合体の水素添加率は99.8%であり、重合体の数平均分子量は74,500であり、ガラス転移温度は133℃であり、全光線透過率は92%であった。
実施例4において、重合反応時の溶媒をメチルシクロヘキサンにした以外は同一条件で実施し、βフェランドレン重合体を得た。反応時のモノマーの反応率は100%、得られた重合体の数平均分子量は82,200であり、ガラス転移温度は84℃であった。
さらに、水素添加した重合体の水素添加率は99.7%であり、重合体の数平均分子量は82,000であり、ガラス転移温度は133℃であり、可視光線透過率は93%であった。
実施例8において、重合反応時の温度を80℃とした以外は同一条件で実施し、βフェランドレン重合体を得た。反応時のモノマーの反応率は80%、得られた重合体の数平均分子量は20,200であり、ガラス転移温度は81℃であった。
さらに、水素添加した重合体の水素添加率は99.7%であり、重合体の数平均分子量は20,000であり、ガラス転移温度は120℃であり、可視光線透過率は93%であった。
実施例4において、βフェランドレンに代えて、市販の試薬であるβピネン(和光純薬社製、純度95%)をモノマーとして使用した以外は同一条件で行った。得られた重合体の分子量は3,200であった。また、反応時のモノマーの反応率は3%であった。
実施例4において、植物由来のβフェランドレンの純度(純分)を80%として、反応時間を24時間とした以外は同一条件で行った。
得られた重合体の分子量は5,000であった。
o-ジクロロベンゼンを内部標準とする方法により、β-フェランドレンモノマーの共役二重結合に由来するシグナル5.5〜6.5ppmのシグナルの面積の減少率により算出した。
標準ポリスチレン換算で測定した。装置として、島津製作所社製、LC-20AD送液ユニット、RID-10示差屈折率検出器を用いた。カラムは、昭和電工株式会社製のShodex KF803を2本用いた。溶媒は、THF(40℃)を用いた。
溶媒は重水素化クロロホルムを用いた。TMSで0ppm補正を行った。日本電子株式会社製のNMR装置、JNM-ECX400(400MHz)を使用して、H-NMRスペクトルを測定した。
測定は室温で行った。
水素添加前のスペクトルの不飽和結合に起因する5.0〜6.0ppmのピークの減少率を求めた。この時、5.0〜6.0ppmのオレフィン性二重結合のプロトンに由来するシグナルの積分値Aと、0.5〜2.5ppmの飽和炭化水素のプロトンに由来するシグナルの積分値Bとの比 A/Bを用いた。水素添加率(%)は(A/B(After)−A/B(Before))x100/A/B(Before)で算出した。
JIS-K-7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」により、示差熱測定装置を用いて測定した。装置は、島津製作所社製のDSC-60を用いた。
JIS-K-7361 : 1997 (ISO13468-1:1996)に準拠して測定した。測定装置として、東京電色社製のヘーズメーターTC-H3DPKを用いた。
調製したβフェランドレン重合体又はそのβフェランドレン重合体を水素添加して得た重合体からなる厚み100μmのフィルムを、溶剤キャスティング法によって作製し、測定試料として用いた。
Claims (7)
- ガラス転移温度Tgが80℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のβフェランドレン重合体。
- 前記一般式(I)及び(II)で表されるβフェランドレンを、ルイス酸を触媒としてカチオン重合せしめて得られたことを特徴とする請求項1又は2に記載のβフェランドレン重合体。
- 前記カチオン重合の反応温度が−90〜100℃であることを特徴とする請求項3又は4に記載のβフェランドレン重合体の製造方法。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載のβフェランドレン重合体、又は請求項4又は5に記載の製造方法によって得られたβフェランドレン重合体からなることを特徴とする成形品。
- 全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項6に記載の成形品。
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