JPWO2008044640A1 - β−ピネン重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
比重が小さく、また透明性に優れているという本来的に有する特性を損なうことなく、熱可塑性を有しつつも耐熱性において優れ、更には優れた強度をも発揮するβ−ピネン重合体を提供すること。β−ピネンを、2官能性ビニル化合物の存在下において重合せしめることにより、重量平均分子量が9万〜100万であり、且つガラス転移温度が80℃以上である、目的とするβ−ピネン重合体を得た。
Description
本発明は、β−ピネン重合体及びその製造方法に係り、特に、高い透明性を有すると共に、従来のものと比較して優れた耐熱性を発揮するβ−ピネン重合体に関するものである。
分子内に脂環式骨格を有する炭化水素系重合体(脂環式炭化水素系重合体)は、比誘電率、透明性、耐熱寸法安定性、耐溶剤性、平坦性に優れていることから、様々な工業部品材料として用いられている。そのような脂環式炭化水素系重合体は、従来より、石油由来の単量体を重合又は共重合せしめることにより、或いは、それによって得られた重合体に対して水素を添加することにより、製造されている。例えば、特許文献1(国際公開第00/73366号パンフレット)においては、環状オレフィンを開環メタセシス重合し、次いで水素添加を行なうことによる、環状オレフィンの開環重合体水素化物の製造方法が提案されている。また、特許文献2(特表2001−506293号公報)及び特許文献3(特表2001−506689号公報)には、所定の触媒の存在下において、環状オレフィンと鎖状オレフィンとを共重合することによって得られる、脂環式炭化水素系重合体たるシクロオレフィンコポリマーが明らかにされている。
また、脂環式炭化水素系重合体は、非晶性であり、透明性が高いことから、特にレンズや、フィルム状、シート状の各種光学材料として、従来より広く用いられている。具体的には、特許文献4(国際公開03/81299号パンフレット)において、脂環式構造含有重合体にて構成された光学用フィルムが明示されている。
しかしながら、上述した脂環式炭化水素系重合体は、従来のメタクリル樹脂やカーボネート樹脂と比較して、比重が小さく、軽量なものではあるものの、近年、各種樹脂成形品に対して軽量化が求められている状況下においては、脂環式炭化水素系重合体やその他の重合体であってより軽量なものが、求められている。
一方、近年、循環型社会の形成や地球温暖化の防止等を目的として、カーボンニュートラルの観点から、植物由来のバイオマスの有効利用が注目されている。例えば、自然界に豊富に存在する天然バイオマスの一つとして、松脂や柑橘類の皮等に多く含まれているテルペン類があり、かかるテルペン類は、医薬品や香料の原料等として、広く用いられている。
ここで、テルペン類の中には、脂環式ビニルモノマー構造を有するものがあり、古くから重合性があることが知られているところ、非特許文献1には、そのようなテルペン類の一種であるβ−ピネンのカチオン重合について記載されている。しかしながら、非特許文献1に記載の手法に従って得られる脂環式炭化水素系重合体は、分子量が小さく、耐熱性や強度が十分なものではなかった。このため、かかる非特許文献1に示されている重合体を用いても、安定な成形品等を得ることは出来ず、成形品材料として用いることが困難なものであったため、工業的には樹脂添加剤や粘着付与樹脂等として用いられるに過ぎないものであった。
また、非特許文献2には、β−ピネンをカチオン重合せしめる際に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジンを加えることにより、比較的大きな分子量を有する重合体が得られたとの記載がなされているが、そこにおいて得られた重合体のガラス転移温度は65℃であり、実用的に十分なものではなかった。
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にしてなされたものであって、その解決すべき課題とするところは、比重が小さく、また透明性に優れているという本来的に有する特性を損なうことなく、従来のものと比較して、熱可塑性を有しつつも耐熱性において優れ、更には優れた強度をも有するβ−ピネン重合体を提供することにある。
そして、本発明者等は、そのような課題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、所定の方法に従って得られるβ−ピネン重合体にあっては、上記課題を有利に解決し得るものであることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、その第一の態様とするところは、重量平均分子量が9万〜100万であり、且つガラス転移温度が80℃以上であるβ−ピネン重合体にある。
また、そのような本発明に従うβ−ピネン重合体における第二の態様においては、β−ピネンを、2官能性ビニル化合物の存在下において重合せしめて得られたものである。
さらに、本発明の第三の態様においては、β−ピネンを、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合せしめて得られたものである。
加えて、本発明の第四の態様においては、β−ピネンと、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体又は配位重合性単量体のうちの何れか一種とからなる単量体群を、2官能性ビニル化合物の存在下において共重合せしめて得られたものである。
また、本発明の第五の態様においては、β−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン共重合せしめて得られたものである。
さらに、本発明の第六の態様においては、上述した第五の態様及び第六の態様における単量体群が、β−ピネンを50重量%以上の割合において含有するものである。
更にまた、本発明の第七の態様においては、上述した各態様のβ−ピネン重合体であって、かかる重合体中のオレフィン性炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素化せしめられたものである。
加えて、本発明に従うβ−ピネン重合体の第八の態様においては、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて測定され、テトラメチルシランのプロトンを0ppmとする 1H−NMRスペクトルにおいて、δ=4.0〜6.0ppmにて検出されるシグナルの積分値:Aと、δ=0.5〜2.5ppmにて検出されるシグナルの積分値:Bとの比:[A/B]が、0以上0.003以下である。
また、本発明に係るβ−ピネン重合体の第九の態様においては、比重が1.0未満であり、且つ10%重量減少温度が400℃以上である。
一方、本発明の第十の態様とするところは、上述した各態様のβ−ピネン重合体からなり、全光線透過率が90%以上であり、且つ10%重量減少温度が400℃以上である成形品にある。
また、本発明の第十一の態様とするところは、β−ピネン、又はβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、2官能性ビニル化合物の存在下、ルイス酸触媒を用いて、カチオン重合又はカチオン共重合させることを特徴とするβ−ピネン重合体の製造方法にある。
さらに、本発明の第十二の態様とするところは、β−ピネン、又はβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合又はカチオン共重合させることを特徴とするβ−ピネン重合体の製造方法にある。
加えて、本発明の第十三の態様においては、上述した第十一の態様及び第十二の態様におけるカチオン重合又はカチオン共重合の後、得られた重合体中のオレフィン性炭素−炭素二重結合を水素化するものである。
このように、本発明に従うβ−ピネン重合体にあっては、従来のものと比較して、重量平均分子量が大きいものであるところから、β−ピネン重合体が本来的に有する特性(比重が小さく、且つ透明性に優れていること)を維持しつつ、耐熱性及び強度において優れたものとなっているのである。
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。なお、以下の説明において、特定の機能を発現する化合物として幾つかの具体例を示しているが、本発明が、それら化合物に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。また、例示した化合物は、特に説明がない限り、単独で用い得ることは勿論のこと、二種以上を併用することも可能である。更に、本明細書及び請求の範囲におけるβ−ピネン重合体とは、β−ピネンを単独で重合せしめて得られるβ−ピネン単独重合体のみならず、β−ピネンと他の一種以上のモノマーとを共重合せしめて得られるβ−ピネン共重合体をも含むものである。
本発明に従うβ−ピネン重合体を製造するに際しては、先ず、β−ピネンが準備されることとなるが、かかるβ−ピネンとしては、従来より公知のものが何れも使用可能である。例えば、植物から採取されたものを精製した後、直接、用い得ることは勿論のこと、植物から採取されたα−ピネン等のテルペン類や石油由来の化合物を用いて、従来より公知の手法(例えば、米国特許第3278623号明細書に開示の手法)に従って製造されたβ−ピネン等も、用いることが可能である。
また、本発明のβ−ピネン重合体は、上述したβ−ピネンを単独重合せしめることによって得られることは勿論のこと、かかるβ−ピネンと、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体又は配位重合性単量体とからなる単量体群を共重合せしめることによっても、有利に得ることが出来る。ここで、そのような単量体群としては、β−ピネンを50重量%以上の割合にて含有するもの、好ましくは70重量%以上の割合にて含有するものが、本発明のβ−ピネン重合体を製造するに際して有利に用いられる。β−ピネン重合体の割合を50重量%未満とすると、必然的に石油由来の単量体の含有量が多くなり、低公害性、低環境負荷を有利に達成し得ない恐れがある。
なお、本発明のβ−ピネン重合体を製造するに際して用いられる、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体及び配位重合性単量体としては、従来より一般的に用いられているものを使用することが可能である。また、植物由来のテルペン類も、カチオン重合法、ラジカル重合法又は配位重合法の何れかの重合法において、重合性単量体として用いることが可能である。具体的には、カチオン重合性単量体としては、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、インデン、アルキルビニルエーテル、ノルボルネン等を、また、ラジカル重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フマル酸エステル、マレイミド等を挙げることが出来る。また、配位重合性単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン等を例示することが出来、更に、植物由来のテルペン類としては、ミルセン、アロオシメン、オメシン、α−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、2−カレン、3−カレン等を、例示することが出来る。これらの中から、β−ピネンの使用量等に応じて、一種又は二種以上のものが適宜に選択されて用いられることとなる。本発明においては、カチオン重合法によって目的とする重合体が有利に得られることから、カチオン重合性単量体が有利に用いられる。
上述したβ−ピネンを重合せしめることにより、又は、かかるβ−ピネンと、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体、配位重合性単量体又は植物由来のテルペン類とからなる単量体群を共重合せしめることにより、本発明に従うβ−ピネン重合体が得られる。ここで、β−ピネンを重合、若しくはβ−ピネンを含む単量体群を共重合せしめる際の一の方法においては、β−ピネン又は単量体群よりも十分に少ない量にて、2官能性ビニル化合物が添加される。2官能性ビニル化合物は、重合体を製造する際に、分岐剤若しくは架橋剤として一般的に用いられているが、その使用量を少量とすることにより、所謂、長鎖分岐構造を有し、有機溶媒への不溶部が生じない程度の分子量を有する本発明のβ−ピネン重合体が、有利に得られるのである。従って、かかる2官能性ビニル化合物は、得られる重合体が、有機溶媒への不溶部が生じない程度の分子量を有するように適宜に決定されることとなるが、一般には、単量体の総量100重量部に対して、0.1〜5.0重量部、好ましくは1.0〜4.0重量部となるような量的割合において、添加される。2官能性ビニル化合物の添加量が少なすぎると、その添加効果は認められず、一方、多すぎると、架橋反応が必要以上に進行し、得られるβ−ピネン重合体がゲル状となって熱可塑性を失い、本発明の目的を達成し得ない恐れがあるからである。
本発明においては、そのような2官能性ビニル化合物として、分子内に2つのビニル基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられ、特に、経済性や反応性等の観点から、m−ジイソプロペニルベンゼンが有利に用いられる。
本発明のβ−ピネン重合体を製造するに際して、β−ピネンを単独で用いる場合、その重合は、カチオン重合、ラジカル重合及び配位重合の何れによっても進行するが、β−ピネンと他の単量体とからなる単量体群を用いる場合、かかる単量体群の共重合は、単量体の種類に応じて、カチオン共重合、ラジカル共重合又は配位重合の何れかによって、進行することとなる。本発明においては、β−ピネンをカチオン重合、或いは、β−ピネンとカチオン性重合性単量体とからなる単量体群をカチオン共重合せしめることにより、目的とする重合体を有利に得ることが出来る。以下、カチオン重合乃至はカチオン共重合による本発明のβ−ピネン重合体の製造について、詳述する。
本発明に従うβ−ピネン重合体を製造するにあたり、β−ピネンをカチオン重合、或いはβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群をカチオン共重合せしめる際の形態としては、バルク重合法、溶液重合法、分散重合法等の、従来より公知の各種重合法の何れをも採用することが出来る。
また、カチオン重合又はカチオン共重合の際に使用されるルイス酸触媒にあっても、従来より公知のものを制限なく使用することが出来る。ルイス酸触媒としては、BF3 、BBr3 、BBr3 、AlF3 、AlCl3 、AlBr3 、TiCl4 、TiBr4 、TiI4 、FeCl3 、FeCl2 、SnCl2 、SnCl4 、WCl6 、MoCl5 、SbCl5 、TeCl2 、ZnCl2 等の金属ハロゲン化物;Et3Al 、Et2AlCl 、EtAlCl2 、Et3Al2Cl3 、(i−Bu)3Al 、(i−Bu)2AlCl 、(i−Bu)AlCl2 、Me4Sn 、Et4Sn 、Bu4Sn 、Bu3SnCl 等の金属アルキル化合物;Al(OR)3-xClxやTi(OR)4-yCly[Rはアルキル基若しくはアリール基を表わし、xは1又は2、yは1〜3の整数をそれぞれ表す]等の金属アルコシキ化合物を、挙げることが出来る。特に、AlCl3 、Et2AlCl 、EtAlCl2 、Et3Al2Cl3 、BCl3 、SnCl4 、TiCl4 、Ti(OR)4-yClyが、反応活性が高く、選択性が良好である点から有利に用いられる。
なお、ルイス酸触媒は、単量体100重量部に対して、0.001〜100重量部、好ましくは0.005〜50重量部、より好ましくは0.01〜10重量部となるような量的割合において、使用される。かかるルイス酸触媒の使用量が少なすぎると、反応が重合の完了前に停止してしまう恐れがあり、逆に多すぎると不経済である。
上述したように、本発明に係るβ−ピネン重合体を製造する一の方法においては、β−ピネンを重合、若しくはβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群とを共重合せしめるにあたり、2官能性ビニル化合物が添加されるが、他の一の方法においては、、かかる2官能性ビニル化合物を用いず、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合せしめることによっても、本発明に従うβ−ピネン重合体を有利に得ることが出来る。そのようなリビングカチオン重合触媒を用いてβ−ピネン等を重合乃至は共重合せしめた場合、連鎖移動反応やプロトン開始反応等の副反応を有利に抑制することが可能である。なお、リビングカチオン重合の手法としては、例えば、J.P.Kennedy らの著書(CarbocationicPolymerization, John Wiley & Sons, 1982 )や、K.Matyjaszewski らの著書(Cationic Polymerizations, Marcel Dekker, 1996 )等に記載されている手法等が採用される。
ここで、リビングカチオン重合触媒におけるルイス酸としては、上述した従来より公知のものを制限なく使用できる。また、かかるルイス酸と組み合わされて用いられる開始剤とは、ルイス酸と反応して炭素カチオンを発生するものであり、そのような特質を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、アルキルビニルエーテル−塩化水素付加体、α−クロロエチルベンゼン、α−クロロイソプロピルベンゼン[以下、クミルクロライドともいう]、1,4−ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン[以下、p−DCC又はp−ジクミルクロライドともいう]、1,3−ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン[以下、m−DCC又はm−ジクミルクロライドともいう]、1,3−ビス(α−クロロイソプロピル)−5−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクロライド、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン等の塩素系開始剤;アルキルビニルエーテル−酢酸付加体、α−アセトキシエチルベンゼン、α−アセトキシイソプロピルベンゼン、1,4−ビス(α−アセトキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(α−アセトキシイソプロピル)ベンゼン等のエステル系開始剤;α−ヒドロキシエチルベンゼン、α−ヒドロキシイソプロピルベンゼン、1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等のアルコール系開始剤等が、挙げられる。これらを単独、或いは混合物として使用することが出来る。特に、クミルクロライド、p−DCC、m−DCC等の塩素系開始剤が反応性が高く、選択性が良好である点から有利に用いられる。
また、上述の開始剤は、β−ピネン又は単量体群との仕込み比に応じて、所望の重合体の分子量を設定出来ることから、用いるβ−ピネン又は単量体群の100重量部に対して、0.001〜1.0重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部となるような量的割合において、使用される。かかる開始剤の使用量が少ないと、開始剤の効果が十分に発揮されず、逆に多すぎると分子量の低下を生じるからである。
さらに、良好なβ−ピネン重合体を得るためには、有利には、リビングカチオン重合触媒と共に電子供与剤が用いられる。電子供与剤を用いることにより、副反応の発生をより抑制することが可能である。そのような電子供与剤としては、従来より公知のものを限定なく使用することが出来る。具体的には、ジエチルエーテル(Et2O )、メチル−t−ブチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル(EtOAc)、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル等のエステル類;ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ジメフェニルピリジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジン等のピリジン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類;ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を、挙げることが出来る。特に、ジエチルエーテルや酢酸エチル等が、経済性及び反応後の除去が容易であることから、好適に使用される。
β−ピネン、或いは、β−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、溶液重合法に従ってカチオン重合乃至はカチオン共重合せしめるに際しては、β−ピネン又は単量体群の濃度は、重合系全量に対して1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%となるように、調製される。かかる濃度が1重量%未満では、生産性が低くなり、一方、90重量%を超えると、重合熱の除去が困難となるからである。
また、溶液重合法によりカチオン重合又はカチオン共重合を行なう際の溶媒としては、β−ピネン又はβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群が溶解し、連鎖移動の少ない溶媒であれば、特に限定されるものではない。ポリマーの重合条件下での溶解性や反応性等の観点より、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂肪族炭化水素等から任意に選択され、単独溶媒又は二種以上を混合してなる混合溶媒を用いることが可能である。具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエタン、n−プロピルクロライド、1−クロロ−n−ブタン、2−クロロ−n−ブタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒等から選択された単独溶媒、又は二種以上を混合してなる混合溶媒が有利に用いられる。
さらに、溶液重合法に従ってカチオン重合乃至はカチオン共重合せしめる際の反応温度は、通常、−120℃〜100℃、好ましくは−100℃〜50℃、更に好ましくは−80℃〜0℃となるように設定される。反応温度が高すぎると、反応の制御が困難となって再現性が得られ難くなる恐れがあり、低すぎると経済性が悪くなる。
また、上述してきたカチオン重合及びカチオン共重合のみならず、ラジカル重合やラジカル共重合、更には、配位重合や配位共重合を行う際の反応時間は、特に限定されるものではなく、重合の種類、重合触媒の種類や量、反応温度、反応設備等の条件に応じて、所望とする特性を有するβ−ピネン重合体が得られるように、適宜に決定されることとなる。通常は1秒〜100時間程度、好ましくは30秒〜20時間程度、更に好ましくは1分〜5時間程度である。
そして、上述してきた溶液重合法に従い、β−ピネンを重合、乃至はβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を共重合せしめた後は、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(コアギュレーション)、押出し機での脱気溶媒除去等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することができる。
そのようにして得られたβ−ピネン重合体の分子量は、重合溶液の粘度や溶融粘度、成形性、成形品の強度、耐熱性の点から、重量平均分子量で9万〜100万が好ましく、より好ましくは9万〜50万、さらに好ましくは9万〜25万以下である。重合体の分子量が大きすぎると、重合溶液の粘度が高くなって重合体の生産性が悪くなったり、また、重合体の溶融粘度が高くなって成形性が悪化する恐れがあるからである。一方、分子量が小さすぎると、重合体を用いて得られる成形品の強度が低下すると共に、ガラス転移温度が80℃未満となり、十分な耐熱性を発揮し得ないからである。
また、β−ピネン重合体のガラス転移温度は、耐熱性、成形性、成形品の強度、耐熱性の点から、80℃以上350℃以下が好ましく、より好ましくは85℃以上250℃以下、さらに好ましくは90℃以上200℃以下である。ガラス転移温度が高すぎると、重合体の溶融粘度が高くなり、成形性が悪くなる。その一方、ガラス転移温度が低すぎると、成形品の耐熱使用温度が低くなるために、実用的ではない。
ここで、本明細書及び請求の範囲において、β−ピネン重合体の重量平均分子量は、JIS−K−0124−2002「高速液体クロマトグラフィー通則」にて規定されているサイズ排除クロマトグラフィーの手法に従って求められるものであって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される示差屈折検出器の値と、標準ポリスチレンの校正曲線とから求められるものである。また、ガラス転移温度については、JIS−K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」にて規定されている手法に従って測定されたものであって、そこにおける中間点ガラス転移温度(Tmg)が、本明細書及び請求の範囲におけるガラス転移温度を意味する。
ところで、得られたβ−ピネン重合体に対しては、水素化、即ち、重合体内部に存在するオレフィン性炭素−炭素二重結合に対して水素添加を行なうことが効果的である。また、β−ピネンと、芳香環を含むカチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体又は配位重合性単量体とを共重合せしめて得られた重合体に対しては、その内部に存在する芳香族性二重結合に対して水素添加を行なうことも効果的である。このような水素化によって、より優れた耐熱性等を発揮するβ−ピネン重合体が得られるのである。
ここで、本発明のβ−ピネン重合体に対する水素添加は、従来より公知の各種手法に従って実施することが可能である。また、水素添加の際に用いられる触媒(水素添加触媒)も、一般にオレフィン類や芳香族化合物の水素化反応に使用されるものであれば、如何なるものであっても使用可能であり、例えば、(1)パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等の遷移金属をカーボン、アルミナ、シリカ、ケイソウ土などの担体に担持してなる担持型金属触媒や、(2)チタン、コバルト、ニッケル等の有機遷移金属化合物とリチウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ等の有機金属化合物からなる均一系触媒、更には、(3)ロジウム、ルテニウム等の金属錯体触媒等を、挙げることができる。
具体的には、上記(1)の担持型金属触媒としては、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ、白金/シリカ、白金/アルミナ、ロジウム/シリカ、ロジウム/アルミナ、ルテニウム/シリカ、ルテニウム/アルミナ等の触媒を挙げることが出来る。また、上記(2)の均一系触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、トリオクチル酸ニッケル/トリイソブチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせを挙げることが出来る。更に、上記(3)の金属錯体触媒としては、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジヒドリドテトラ(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ヒドリド(アセトニトリル)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、カルボニルジヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等を、挙げることが出来る。これらの水素添加触媒の中でも(1)の担持型金属触媒は、水素化反応後に、水添触媒をろ過で分離回収する際に重合触媒も合わせて分離回収できるという利点を有することから、特に有利に用いられる。
また、水素添加する際の反応温度は、通常は−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃の範囲内において設定され、水素圧力は、通常は0.1〜100kg/cm2 、好ましくは0.5〜70kg/cm2 、より好ましくは1〜50kg/cm2 にて、水素添加が実施される。水素圧力が低すぎると、水素化速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる。更に、反応温度は、重合体が熱分解しない程度の温度とされ、通常は300℃以下、好ましくは250℃以下にて行なわれるが、反応温度が低すぎると反応速度が遅くなり、反応が完了しない恐れがある。
さらに、水素添加を行なう際の溶媒としては、重合体が溶解し、触媒不活性な有機溶媒であれば特に限定されないが、重合体の水素添加物の溶解性や反応性から、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及び芳香族炭化水素等から任意に選ばれる単独又は混合溶媒を用いることが可能である。具体的には、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエタン、n−プロピルクロライド、1−クロロ−n−ブタン、2−クロロ−n−ブタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が有利に用いられる。これらの中でも、溶解性や反応性の点から、特に炭化水素系溶媒が好ましい。なお、有機溶媒は、重合反応の際に用いた溶媒と同じであってもよく、重合反応液にそのまま水素添加触媒を添加して反応(水素添加)させることも可能である。
また、水素添加に要する反応時間は、通常は0.1〜10時間であり、水素添加前の重合体における不飽和二重結合(炭素−炭素二重結合)の70%以上が飽和されるまで、水素が添加されることが望ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上が飽和されるまで、水素添加を継続することが望ましい。これにより、耐候性に優れた脂環式炭化水素系重合体が有利に得られる。なお、水素添加された重合体における不飽和二重結合(炭素−炭素二重結合)の水素添加率は、一般には、ヨウ素価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて、算出することが可能である。
本明細書及び請求の範囲において、β−ピネン重合体のオレフィン性二重結合に対する水素添加率は、重水素化クロロホルムを溶媒として用いた核磁気共鳴スペクトル( 1H−NMRスペクトル)測定によって算出されたものを用いて、評価している。具体的には、重水素化クロロホルムを溶媒として用いて、テトラメチルシランのプロトンを0ppmとする 1H−NMRスペクトルにおいて、δ=4.0〜6.0ppmにて検出されたシグナルの積分値、即ちオレフィン性二重結合のプロトンに由来するシグナルの積分値たる数値:Aと、δ=0.5〜2.5ppmにて検出されたシグナルの積分値、即ち飽和炭化水素のプロトンに由来するシグナルの積分値たる数値:Bとを算出し、それらの比:[A/B]にて評価しているのである。かかる比:[A/B]は、水素添加率が高くなるにつれて小さくなるものであり、本発明のβ−ピネン重合体にあっては、その比が0以上0.003以下であるもの、より好ましくは0以上0.0003以下であるものが好ましい。
また、上述した方法に従うことにより、比重が1.0未満であり、且つ10%重量減少温度が400℃以上であるβ−ピネン重合体を製造することが可能である。本明細書及び請求の範囲において、比重とは、JIS−K−7112−1999におけるA法に従って測定されたものである。また、10%重量減少温度とは、JIS−K−7120−1987「プラスチックの熱重量測定方法」に規定されている質量減少率が10%に達した温度であり、具体的には、十分に乾燥させて、溶媒を除去したサンプル(β−ピネン重合体)を、100mL/分の窒素気流下において、昇温速度:10℃/分にて、25℃から500℃まで昇温すると共に、その昇温の際の熱重量減少を測定し、初期重量から10%、重量が減少した温度を意味するものである。
ところで、本発明に係るβ−ピネン重合体にあっては、2官能性ビニル化合物を使用しない場合には分岐構造を有さず、また、2官能性ビニル化合物を用いた場合でも、その使用量が少ないことから、複雑に架橋した網目状構造を有するものではなく、所謂、長鎖分岐構造を有するものであり、熱可塑性を有する。従って、プレス成形、押し出し成形、射出成形などの成形加工が可能である。なお、本発明の脂環式炭化水素系重合体を用いて成形品とする場合には、成形の際に、安定剤、滑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維;タルク、マイカ、モンモリロナイト、シリカ、木粉等の充填剤;各種カップリング剤等の成分を、必要に応じて配合することができる。
本発明のβ−ピネン重合体を成形することにより、透明性及び耐熱性に優れた成形品、具体的には、全光線透過率が90%以上であり、且つ10%重量減少温度が400℃以上である成形品を、得ることが可能である。本明細書及び請求の範囲における全光線透過率は、JIS−K−7361−1−1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に従って測定される値である。
そして、本発明に従うβ−ピネン重合体や、かかる重合体を用いて得られた成形品にあっては、その用途は特に制限されるものではなく、従来の透明樹脂と同様に種々の用途に使用することが出来る。例えば、光学シート、光ディスク、光学レンズ、液晶表示装置用の位相差板、導光板、拡散板、偏光板保護膜、ディスプレイ前面版、自動車用ライトカバー、レンズカバー、計器カバーなどに用いることが可能である。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
なお、以下の例において、β−ピネンの反応率、得られた重合体の重量平均分子量及び数平均分子量、水素添加率、全光線透過率、ガラス転移温度、10%重量減少温度、屈折率(nD)、比重、曲げ弾性率、アッベ数、光弾性係数、吸水率及び線膨張係数は、各々、下記のようにして求めた。
−重量平均分子量及び数平均分子量−
JIS−K−0124−2002「高速液体クロマトグラフィー通則」にて規定されているサイズ排除クロマトグラフィーの手法に従い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された示差屈折検出器の値と、標準ポリスチレンの校正曲線とから求めた。GPC装置として、日本分光株式会社製:PU-980ポンプ(品番)及び同社製:930-RI示差屈折計(品番)、カラムとして、昭和電工株式会社製:Shodex(商品名、品番:GPC K-805L)の2本を、直列に繋いだものを用いた。測定に際しては、テトラヒドロフランを溶媒として用い、40℃の条件にて測定を行った。
JIS−K−0124−2002「高速液体クロマトグラフィー通則」にて規定されているサイズ排除クロマトグラフィーの手法に従い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された示差屈折検出器の値と、標準ポリスチレンの校正曲線とから求めた。GPC装置として、日本分光株式会社製:PU-980ポンプ(品番)及び同社製:930-RI示差屈折計(品番)、カラムとして、昭和電工株式会社製:Shodex(商品名、品番:GPC K-805L)の2本を、直列に繋いだものを用いた。測定に際しては、テトラヒドロフランを溶媒として用い、40℃の条件にて測定を行った。
−水素添加率−
重水素化クロロホルムを溶媒とし、テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとして、Varian 製、Gemini 2000(品番)400MHzを用いて、 1H−NMRスペクトルを得た。測定は室温で行なった。水素添加率は、水素添加前のスペクトルにある不飽和結合に起因する4.0〜6.0ppmのピークの減少によって決定した。このとき、 1H−NMRスペクトルにおけるδ=4.0〜6.0ppmにて検出されるシグナル(オレフィン性二重結合のプロトンに由来するシグナル)の積分値:Aと、δ=0.5〜2.5ppmにて検出されるシグナル(飽和炭化水素のプロトンに由来するシグナル)の積分値:Bとの比:[A/B]を、オレフィン比(Q)とした。
重水素化クロロホルムを溶媒とし、テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとして、Varian 製、Gemini 2000(品番)400MHzを用いて、 1H−NMRスペクトルを得た。測定は室温で行なった。水素添加率は、水素添加前のスペクトルにある不飽和結合に起因する4.0〜6.0ppmのピークの減少によって決定した。このとき、 1H−NMRスペクトルにおけるδ=4.0〜6.0ppmにて検出されるシグナル(オレフィン性二重結合のプロトンに由来するシグナル)の積分値:Aと、δ=0.5〜2.5ppmにて検出されるシグナル(飽和炭化水素のプロトンに由来するシグナル)の積分値:Bとの比:[A/B]を、オレフィン比(Q)とした。
−ガラス転移温度−
JIS−K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」にて規定されている手法に従って測定し、そこにおける中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度とした。なお、測定装置として、セイコーインスツルメンツ株式会社(現セイコーインスツル株式会社)製のSSC-5200(品番)を用いた。
JIS−K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」にて規定されている手法に従って測定し、そこにおける中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度とした。なお、測定装置として、セイコーインスツルメンツ株式会社(現セイコーインスツル株式会社)製のSSC-5200(品番)を用いた。
−10%重量減少温度−
JIS−K−7120−1987「プラスチックの熱重量測定方法」に準じて測定した。測定装置として、セイコーインスツルメンツ株式会社(現セイコーインスツル株式会社)製のSSC-5200(品番)を用いた。
JIS−K−7120−1987「プラスチックの熱重量測定方法」に準じて測定した。測定装置として、セイコーインスツルメンツ株式会社(現セイコーインスツル株式会社)製のSSC-5200(品番)を用いた。
−全光線透過率−
JIS−K−7361−1−1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に従って測定した。測定装置としては、村上色彩研究所製のヘイズメーターHR-100(品番)を用いた。
JIS−K−7361−1−1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:シングルビーム法」に従って測定した。測定装置としては、村上色彩研究所製のヘイズメーターHR-100(品番)を用いた。
−屈折率(nD)−
ATAGO社製のRX-2000 (品番)を用いて、25℃の条件にて測定した。
ATAGO社製のRX-2000 (品番)を用いて、25℃の条件にて測定した。
−比重−
JIS−K−7112−1999のA法に準じて測定した。
JIS−K−7112−1999のA法に準じて測定した。
−曲げ弾性率及び曲げ強度−
各重合体の試験片を準備し、かかる試験片を用いて、JIS−K−7171に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、23℃における曲げ弾性率を測定した。また、最大点応力を曲げ強度とした。
各重合体の試験片を準備し、かかる試験片を用いて、JIS−K−7171に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、23℃における曲げ弾性率を測定した。また、最大点応力を曲げ強度とした。
−アッベ数−
ATAGO社製のアッベ屈折計DR-M2 (品番)を用いて、25℃の条件にて測定した。
ATAGO社製のアッベ屈折計DR-M2 (品番)を用いて、25℃の条件にて測定した。
−光弾性係数−
各重合体よりなる厚さ:200μmのフィルムを、[重合体のTg−20]℃の温度にて一晩、アニールした後、[Tg+20]℃の温度にてフィルムの長軸方向に引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションを、エリプソメーターM220(日本分光株式会社製)で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
各重合体よりなる厚さ:200μmのフィルムを、[重合体のTg−20]℃の温度にて一晩、アニールした後、[Tg+20]℃の温度にてフィルムの長軸方向に引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションを、エリプソメーターM220(日本分光株式会社製)で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
−吸水率−
JIS−K−7209−2000のA法に準じて測定した。
JIS−K−7209−2000のA法に準じて測定した。
−線膨張係数−
各重合体の試験片を準備し、かかる試験片を用いて、JIS−K−7197に準じて線膨張係数を測定した。なお、測定装置としては、ブルカー・エイエックスエス株式会社製のTMA4000SA (品番)を使用した。
各重合体の試験片を準備し、かかる試験片を用いて、JIS−K−7197に準じて線膨張係数を測定した。なお、測定装置としては、ブルカー・エイエックスエス株式会社製のTMA4000SA (品番)を使用した。
−重合体1の製造及び評価−
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコ内に、脱水したヘキサン(和光純薬工業株式会社製):11.6ml、脱水したジクロロメタン(同社製):13.0ml、β−ピネン(同社製):2.3ml、及び、m−ジイソプロペニルベンゼン(東京化成工業株式会社製):0.05ml(β−ピネンの100重量部に対して3.48重量部)を、窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解し、−78℃に冷却した後、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(関東化学株式会社製、濃度:1.0mol/l):1.18mlを加えて、重合を開始した。
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコ内に、脱水したヘキサン(和光純薬工業株式会社製):11.6ml、脱水したジクロロメタン(同社製):13.0ml、β−ピネン(同社製):2.3ml、及び、m−ジイソプロペニルベンゼン(東京化成工業株式会社製):0.05ml(β−ピネンの100重量部に対して3.48重量部)を、窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解し、−78℃に冷却した後、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(関東化学株式会社製、濃度:1.0mol/l):1.18mlを加えて、重合を開始した。
反応は、反応液内においてゲル化することなく進行し、1時間反応せしめた後、反応液にメタノールを10ml加え、反応を停止した。反応液をメタノールにて再沈後、沈殿物を十分乾燥することにより、テトラヒドロフランに全て可溶なβ−ピネン重合体(重合体1):2.1gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体1の重量平均分子量は、204,300であり、ガラス転移温度は90℃であった。
−重合体2の製造及び評価−
重合体1を製造した際の条件のうち、m−ジイソプロペニルベンゼンの使用量を0.033ml(β−ピネンの100重量部に対して2.32重量部)に変更した以外は、重合体1の場合と同様にして反応を行なった。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応せしめた後、重合体1の場合と同様の操作を行ない、β−ピネン重合体(重合体2):2.0gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体2の重量平均分子量は、90,600であり、ガラス転移温度は88℃であった。
重合体1を製造した際の条件のうち、m−ジイソプロペニルベンゼンの使用量を0.033ml(β−ピネンの100重量部に対して2.32重量部)に変更した以外は、重合体1の場合と同様にして反応を行なった。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応せしめた後、重合体1の場合と同様の操作を行ない、β−ピネン重合体(重合体2):2.0gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体2の重量平均分子量は、90,600であり、ガラス転移温度は88℃であった。
−重合体3の製造及び評価−
β−ピネン及びルイス酸の添加順序を変えて重合を行なった以外は、重合体2を製造した際と同様に、合成を行なった。即ち、十分乾燥させたガラス製コック付フラスコ内に、脱水したヘキサン:11.6ml、脱水したジクロロメタン:13.0ml、及び、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(濃度:1.0mol/l):1.18mlを、窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解し、−78℃に冷却した後、β−ピネン:2.3ml及びm−ジイソプロペニルベンゼン:0.033ml(β−ピネンの100重量部に対して2.32重量部)の混合物をフラスコ内に滴下し、重合を開始した。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応せしめた後、重合体2の場合と同様の操作を行ない、β−ピネン重合体(重合体3):2.1gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体3の重量平均分子量は114,000であり、ガラス転移温度は89℃であった。
β−ピネン及びルイス酸の添加順序を変えて重合を行なった以外は、重合体2を製造した際と同様に、合成を行なった。即ち、十分乾燥させたガラス製コック付フラスコ内に、脱水したヘキサン:11.6ml、脱水したジクロロメタン:13.0ml、及び、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(濃度:1.0mol/l):1.18mlを、窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解し、−78℃に冷却した後、β−ピネン:2.3ml及びm−ジイソプロペニルベンゼン:0.033ml(β−ピネンの100重量部に対して2.32重量部)の混合物をフラスコ内に滴下し、重合を開始した。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応せしめた後、重合体2の場合と同様の操作を行ない、β−ピネン重合体(重合体3):2.1gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体3の重量平均分子量は114,000であり、ガラス転移温度は89℃であった。
−重合体4・成形品1の製造及び評価−
撹拌装置付き耐圧容器を準備し、その内部について十分に窒素置換を行なった後、十分に脱水したヘキサン、及び重合体1:2.0gを投入し、十分に溶解させた。次いで、パラジウム/アルミナ担持型触媒(和光純薬工業株式会社製、Pd:5%):500mgを添加し、10kg/cm2 の水素雰囲気下において、90℃で7時間、水素添加反応を行なった。かかる反応の後、反応液を遠心分離して、濾過を行ない、触媒を除去した後、メタノールにて再沈させ、沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体1)の水素添加物(重合体4):2.0gを得た。得られた重合体4の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.95%であり、またオレフィン比(Q)は0.00003であった。更に、重合体4の重量平均分子量は198,000であり、ガラス転移温度は130℃であった。
撹拌装置付き耐圧容器を準備し、その内部について十分に窒素置換を行なった後、十分に脱水したヘキサン、及び重合体1:2.0gを投入し、十分に溶解させた。次いで、パラジウム/アルミナ担持型触媒(和光純薬工業株式会社製、Pd:5%):500mgを添加し、10kg/cm2 の水素雰囲気下において、90℃で7時間、水素添加反応を行なった。かかる反応の後、反応液を遠心分離して、濾過を行ない、触媒を除去した後、メタノールにて再沈させ、沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体1)の水素添加物(重合体4):2.0gを得た。得られた重合体4の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.95%であり、またオレフィン比(Q)は0.00003であった。更に、重合体4の重量平均分子量は198,000であり、ガラス転移温度は130℃であった。
さらに、得られた重合体4を、プレス温度:200℃、プレス圧:100kg/cm2 の条件にてプレス成形を行ない、厚さ:1mmのシート状成形品(成形品1)を得た。得られた成形品1の全光線透過率は91.5%、10%重量減少温度は460℃であった。成形品1についての全光線透過率等の測定結果を、下記表1に示す。
−重合体5の製造及び評価−
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したn−ヘキサン:44.1ml、脱水したジクロロメタン:46.1mlを加え、−78℃に冷却した。さらに−78℃で撹拌しながら、蒸留精製したβ−ピネン:0.15ml、及び開始剤たるm−ジクミルクロライドのヘキサン溶液(濃度:0.96mol/L):0.052mLを加えた。更に−78℃に保持した状態で、ルイス酸たるEt2AlCl のヘキサン溶液(濃度:1.0mol/L):1.89mlを加えたところ、反応液は徐々に燈色に変化した。直ちにβ−ピネン:7.04mlを3.5時間かけて添加したところ、反応液は次第に濃黄色になり、溶液の粘度が上昇した。
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したn−ヘキサン:44.1ml、脱水したジクロロメタン:46.1mlを加え、−78℃に冷却した。さらに−78℃で撹拌しながら、蒸留精製したβ−ピネン:0.15ml、及び開始剤たるm−ジクミルクロライドのヘキサン溶液(濃度:0.96mol/L):0.052mLを加えた。更に−78℃に保持した状態で、ルイス酸たるEt2AlCl のヘキサン溶液(濃度:1.0mol/L):1.89mlを加えたところ、反応液は徐々に燈色に変化した。直ちにβ−ピネン:7.04mlを3.5時間かけて添加したところ、反応液は次第に濃黄色になり、溶液の粘度が上昇した。
β−ピネンの添加終了後、1時間反応せしめた後、反応液にメタノール:4mlを加え、反応を終了させた。蒸留水100mlにクエン酸:5gを添加した水溶液を添加し、5分間、撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール:1000mlにて再沈後、沈殿物を十分乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体5):6.8gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体5の重量平均分子量は97,000、数平均分子量は40,000、ガラス転移温度は93℃であった。
−重合体6の製造及び評価−
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したn−ヘキサン:237ml、脱水したジクロロメタン:159ml、電子供与剤たる脱水したジエチルエーテル:0.7mlを加え、−78℃に冷却した。次いで、−78℃で撹拌しながら、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(濃度:1.0mol/L):9.3mlを加えた。更に−78℃に保持した状態で、開始剤たるp−ジクミルクロライドのヘキサン溶液(濃度:0.1mol/L):3.7mlを加えたところ、反応液が赤燈色に変化した。直ちに、蒸留精製したβ−ピネン:70mlを1時間かけて反応液に添加したところ、反応液は次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したn−ヘキサン:237ml、脱水したジクロロメタン:159ml、電子供与剤たる脱水したジエチルエーテル:0.7mlを加え、−78℃に冷却した。次いで、−78℃で撹拌しながら、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(濃度:1.0mol/L):9.3mlを加えた。更に−78℃に保持した状態で、開始剤たるp−ジクミルクロライドのヘキサン溶液(濃度:0.1mol/L):3.7mlを加えたところ、反応液が赤燈色に変化した。直ちに、蒸留精製したβ−ピネン:70mlを1時間かけて反応液に添加したところ、反応液は次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。
β−ピネンの添加終了後、1時間反応せしめた後、反応液にメタノール:30mlを加え、反応を終了させた。蒸留水:100mlにクエン酸:5gを添加した水溶液を添加し、5分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層を、メタノールとアセトンの混合溶媒(メタノール/アセトン=50/50[vol%]):5000mlを用いて再沈させた後、沈殿物を十分乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体6):61.3gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体6の重量平均分子量は116,000、数平均分子量は51,000、ガラス転移温度は95℃であった。
−重合体7・成形品2の製造及び評価−
重合体4を製造した際の条件のうち、重合体1に代えて重合体5を6.0g用いた以外は重合体4の場合と同様にして、重合体5に対する水素添加反応を行い、重合体5の水素添加物(重合体7):6.0gを得た。得られた重合体7の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.98%であり、オレフィン比(Q)は、0.00001であった。また、重合体7の重量平均分子量は95,000、ガラス転移温度は130℃であった。
重合体4を製造した際の条件のうち、重合体1に代えて重合体5を6.0g用いた以外は重合体4の場合と同様にして、重合体5に対する水素添加反応を行い、重合体5の水素添加物(重合体7):6.0gを得た。得られた重合体7の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.98%であり、オレフィン比(Q)は、0.00001であった。また、重合体7の重量平均分子量は95,000、ガラス転移温度は130℃であった。
さらに、得られた重合体7を、プレス温度:200℃、プレス圧:100kg/cm2 の条件にてプレス成形を行い、厚さ:1mmのシート状成形品(成形品2)を得た。得られた成形品2の全光線透過率は92%、10%重量減少温度は460℃、比重は0.93、曲げ強度は65MPa、曲げ弾性率は2500MPa、吸水率は0.1%以下であった。成形品2の全光線透過率等の測定結果を、下記表1に示す。
−重合体8・成形品3の製造及び評価−
撹拌装置付き耐圧容器を準備し、その内部について十分に窒素置換を行った後、十分に脱水したシクロヘキサン:90ml、及び、前述した重合体6を30g投入し、十分に溶解させた。次いで、パラジウム/アルミナ担持型触媒(Pd:5%、N.E.Chemcat社製 ):30gを添加し、40kgf/cm2 の水素雰囲気下において、100℃で6時間、水素添加反応を行った。かかる反応の後、反応液にシクロヘキサン:200ml加えて希釈した後、反応液を0.5μmテフロン(登録商標)フィルターにより濾過して、触媒を分離除去した後、メタノールとアセトンの混合溶媒(メタノール/アセトン=50/50[vol%])にて再沈させ、沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体6)の水素添加物(重合体8):29gを得た。得られた重合体8の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.9%であり、オレフィン比(Q)は、0.00006であった。また、重合体8の重量平均分子量は112,000、数平均分子量は50,800、ガラス転移温度は130℃であった。
撹拌装置付き耐圧容器を準備し、その内部について十分に窒素置換を行った後、十分に脱水したシクロヘキサン:90ml、及び、前述した重合体6を30g投入し、十分に溶解させた。次いで、パラジウム/アルミナ担持型触媒(Pd:5%、N.E.Chemcat社製 ):30gを添加し、40kgf/cm2 の水素雰囲気下において、100℃で6時間、水素添加反応を行った。かかる反応の後、反応液にシクロヘキサン:200ml加えて希釈した後、反応液を0.5μmテフロン(登録商標)フィルターにより濾過して、触媒を分離除去した後、メタノールとアセトンの混合溶媒(メタノール/アセトン=50/50[vol%])にて再沈させ、沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体6)の水素添加物(重合体8):29gを得た。得られた重合体8の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.9%であり、オレフィン比(Q)は、0.00006であった。また、重合体8の重量平均分子量は112,000、数平均分子量は50,800、ガラス転移温度は130℃であった。
さらに、得られた重合体8を、プレス温度:200℃、プレス圧:100kg/cm2の条件にてプレス成形を行い、厚さ:1mmのシート状成形品(成形品3)を得た。得られた成形品3にあっては、全光線透過率は92%、10%重量減少温度は437℃、屈折率(nD)は1.505、比重は0.93、曲げ強度は72MPa、曲げ弾性率は2600MPa、アッベ数は61、光弾性係数は6.90×10-11cm2/dyn、吸水率は0.1%以下、線膨張係数は6.5×10-5(1/K)であった。成形品3についての全光線透過率等の測定結果を、下記表1及び表2に示す。
−重合体9の製造及び評価−
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したメチルシクロヘキサン:45.0ml、脱水したジクロロメタン:45.0ml、電子供与剤たる脱水したジエチルエーテル:0.16mlを加え、−78℃に冷却した。次いで、−78℃で撹拌しながら、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(濃度:1.04mol/L):1.92mlを加えた。更に−78℃に保持した状態で、開始剤たるm−ジクミルクロライドのメチルシクロヘキサン溶液(濃度:0.96mol/L):0.05mlを加えたところ、反応液が赤燈色に変化した。直ちに、反応液に、蒸留精製したβ−ピネン:6.28ml、α−メチルスチレン:0.67ml、及び2官能性ビニル化合物たるm−ジイソプロペニルベンゼン:0.14g(β−ピネンとα−メチルスチレンからなる単量体群の100重量部に対して、2.30重量部)を混合したモノマー溶液を、2時間かけて添加したところ、反応液は次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したメチルシクロヘキサン:45.0ml、脱水したジクロロメタン:45.0ml、電子供与剤たる脱水したジエチルエーテル:0.16mlを加え、−78℃に冷却した。次いで、−78℃で撹拌しながら、ルイス酸たるEtAlCl2 のヘキサン溶液(濃度:1.04mol/L):1.92mlを加えた。更に−78℃に保持した状態で、開始剤たるm−ジクミルクロライドのメチルシクロヘキサン溶液(濃度:0.96mol/L):0.05mlを加えたところ、反応液が赤燈色に変化した。直ちに、反応液に、蒸留精製したβ−ピネン:6.28ml、α−メチルスチレン:0.67ml、及び2官能性ビニル化合物たるm−ジイソプロペニルベンゼン:0.14g(β−ピネンとα−メチルスチレンからなる単量体群の100重量部に対して、2.30重量部)を混合したモノマー溶液を、2時間かけて添加したところ、反応液は次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。
モノマー溶液の添加終了後、1時間反応せしめた後、重合溶液にメタノールを4ml加え、反応を終了させた。蒸留水:100mlにクエン酸:5gを添加した水溶液を添加し、5分間、撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール:1500mlにて再沈後、沈殿物を十分乾燥することにより、β−ピネン重合体(β−ピネンとα−メチルスチレンとの共重合体)である重合体9を7.28g得た。得られた重合体9を 1H−NMRスペクトル測定により組成比を算出したところ、α−メチルスチレンが10.9重量%、β−ピネンが89.1重量%からなる共重合体であり、重量平均分子量は109,400、数平均分子量は35,300、ガラス転移温度は98℃であった。
かかる表1に記載の結果からも明らかなように、本発明に従うβ−ピネン重合体を用いた成形品にあっては、透明性、耐熱性及び強度において優れたものであり、且つ軽量なものであることが、認められたのである。
以上、本発明の実施例について詳細に述べてきたが、本発明の効果をより明らかにすべく、以下に、幾つかの比較例を示す。
−重合体10の製造及び評価−
m−ジイソプロペニルベンゼンを用いないこと以外は重合体1と同様にして、重合を行なった。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応後、反応液をメタノールにて再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体10)を2.0gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体10の重量平均分子量は、31,700と小さいものであった。
m−ジイソプロペニルベンゼンを用いないこと以外は重合体1と同様にして、重合を行なった。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応後、反応液をメタノールにて再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体10)を2.0gを得た。なお、収率は100%であった。得られた重合体10の重量平均分子量は、31,700と小さいものであった。
−重合体11の製造及び評価−
重合体1を製造した際の条件のうち、m−ジイソプロペニルベンゼンの使用量を0.083ml(β−ピネン100重量部に対して5.81重量部)に変更した以外は、重合体1の場合と同様にして反応を行なった。反応液はゲル化し、固化した。1時間反応後、重合溶液をメタノールに再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体11)を得たが、得られた重合体11は、有機溶媒に不溶であった。
重合体1を製造した際の条件のうち、m−ジイソプロペニルベンゼンの使用量を0.083ml(β−ピネン100重量部に対して5.81重量部)に変更した以外は、重合体1の場合と同様にして反応を行なった。反応液はゲル化し、固化した。1時間反応後、重合溶液をメタノールに再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体11)を得たが、得られた重合体11は、有機溶媒に不溶であった。
−重合体12の製造及び評価−
非特許文献2に記載の方法により、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジンを加えて、β−ピネンをカチオン重合によって重合せしめた。具体的には、β−ピネンの使用量を0.58mlとし、m−ジイソプロペニルベンゼンを用いずに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジン:0.10gを添加した以外は重合体1の場合と同様にして、重合を行ない、脂環式炭化水素系重合体(重合体12)を得た。非特許文献2には、数平均分子量が39,900で、重量平均分子量が84,600の重合体(β−ピネン重合体)が得られるとの記載がなされているが、分子量の測定に用いるポリスチレン換算で求めるGPC測定は、用いる測定溶媒やカラムの種類により、相対分子量が異なることが知られており、本発明者等が、得られた重合体12の数平均分子量及び重量平均分子量を測定したところ、数平均分子量は25,100、重量平均分子量は54,700であった。
非特許文献2に記載の方法により、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジンを加えて、β−ピネンをカチオン重合によって重合せしめた。具体的には、β−ピネンの使用量を0.58mlとし、m−ジイソプロペニルベンゼンを用いずに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジン:0.10gを添加した以外は重合体1の場合と同様にして、重合を行ない、脂環式炭化水素系重合体(重合体12)を得た。非特許文献2には、数平均分子量が39,900で、重量平均分子量が84,600の重合体(β−ピネン重合体)が得られるとの記載がなされているが、分子量の測定に用いるポリスチレン換算で求めるGPC測定は、用いる測定溶媒やカラムの種類により、相対分子量が異なることが知られており、本発明者等が、得られた重合体12の数平均分子量及び重量平均分子量を測定したところ、数平均分子量は25,100、重量平均分子量は54,700であった。
−重合体13・成形品4の製造及び評価−
重合体4を製造した際の条件のうち、重合体1に代えて重合体12を2.0g用いた以外は重合体4の場合と同様にして、重合体4に対する水素添加反応を行い、重合体4の水素添加物(重合体13):1.95gを得た。得られた重合体13の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.95%であり、オレフィン比(Q)は、0.00003であった。また、重合体13の重量平均分子量は47,400、ガラス転移温度は128℃であった。
重合体4を製造した際の条件のうち、重合体1に代えて重合体12を2.0g用いた以外は重合体4の場合と同様にして、重合体4に対する水素添加反応を行い、重合体4の水素添加物(重合体13):1.95gを得た。得られた重合体13の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.95%であり、オレフィン比(Q)は、0.00003であった。また、重合体13の重量平均分子量は47,400、ガラス転移温度は128℃であった。
さらに、得られた重合体13を、プレス温度:200℃、プレス圧:100kg/cm2 の条件にてプレス成形を行い、厚さ:1mmのシート状成形品(成形品4)を得た。しかし、成形体4は脆く、曲げ強度を測定しようと治具にはめると破砕した。
−重合体14の製造及び評価−
ルイス酸としてBF3 (エーテル錯体、Aldrich)を用いたこと以外は、重合体10と同様にして重合を行なった。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応後、重合溶液をメタノールにて再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体14):0.32gを得た。なお、収率は16%であった。得られた重合体14の重量平均分子量は、5,800と非常に小さいものであった。
ルイス酸としてBF3 (エーテル錯体、Aldrich)を用いたこと以外は、重合体10と同様にして重合を行なった。反応はゲル化することなく進行し、1時間反応後、重合溶液をメタノールにて再沈し、得られた沈殿物を十分に乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体14):0.32gを得た。なお、収率は16%であった。得られた重合体14の重量平均分子量は、5,800と非常に小さいものであった。
−重合体15の製造及び評価−
重合体14を用いたこと以外は重合体4の場合と同様の条件に従って、重合体14に対する水素添加反応を行い、重合体14の水素化添加物(重合体15)の0.32gを得た。得られた重合体15の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.95%であった。また、重合体15のガラス転移温度度は90℃であった。更に、得られた重合体15を用いて、プレス温度:180℃、プレス圧:100kg/cm2 の条件にてプレス成形を試みたが、成形体を金型より剥離する際に破砕してしまい、安定な成形品は得られなかった。
重合体14を用いたこと以外は重合体4の場合と同様の条件に従って、重合体14に対する水素添加反応を行い、重合体14の水素化添加物(重合体15)の0.32gを得た。得られた重合体15の水素添加率を 1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.95%であった。また、重合体15のガラス転移温度度は90℃であった。更に、得られた重合体15を用いて、プレス温度:180℃、プレス圧:100kg/cm2 の条件にてプレス成形を試みたが、成形体を金型より剥離する際に破砕してしまい、安定な成形品は得られなかった。
−重合体16の製造及び評価−
開始剤たるm−ジクミルクロライドを用いないこと以外は、重合体5の場合と同様にして、重合を行った。β−ピネンの添加終了後、1時間反応せしめた後でも、溶液の粘度は上昇しなかった。重合体5の場合と同様にして、反応をメタノールにより停止させ、反応液を洗浄し、有機層をメタノール:1000mlにて再沈させた後、沈殿物を十分乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体16)を1.3g得た。なお、収率は19%であった。得られた重合体16の重量平均分子量は13,600、数平均分子量は7,600であった。
開始剤たるm−ジクミルクロライドを用いないこと以外は、重合体5の場合と同様にして、重合を行った。β−ピネンの添加終了後、1時間反応せしめた後でも、溶液の粘度は上昇しなかった。重合体5の場合と同様にして、反応をメタノールにより停止させ、反応液を洗浄し、有機層をメタノール:1000mlにて再沈させた後、沈殿物を十分乾燥することにより、β−ピネン重合体(重合体16)を1.3g得た。なお、収率は19%であった。得られた重合体16の重量平均分子量は13,600、数平均分子量は7,600であった。
Claims (13)
- 重量平均分子量が9万〜100万であり、且つガラス転移温度が80℃以上であるβ−ピネン重合体。
- β−ピネンを、2官能性ビニル化合物の存在下において重合せしめて得られた請求項1に記載のβ−ピネン重合体。
- β−ピネンを、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合せしめて得られた請求項1に記載のβ−ピネン重合体。
- β−ピネンと、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体又は配位重合性単量体のうちの何れか一種とからなる単量体群を、2官能性ビニル化合物の存在下において共重合せしめて得られた請求項1に記載のβ−ピネン重合体。
- β−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン共重合せしめて得られた請求項1に記載のβ−ピネン重合体。
- 前記単量体群が、β−ピネンを50重量%以上の割合において含有する請求項4又は請求項5に記載のβ−ピネン重合体。
- オレフィン性炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素化せしめられた請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のβ−ピネン重合体。
- 重水素化クロロホルムを溶媒として用いて測定され、テトラメチルシランのプロトンを0ppmとする 1H−NMRスペクトルにおいて、δ=4.0〜6.0ppmにて検出されるシグナルの積分値:Aと、δ=0.5〜2.5ppmにて検出されるシグナルの積分値:Bとの比:[A/B]が、0以上0.003以下である請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のβ−ピネン重合体。
- 比重が1.0未満であり、且つ10%重量減少温度が400℃以上である請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のβ−ピネン重合体。
- 請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のβ−ピネン重合体からなり、全光線透過率が90%以上であり、且つ10%重量減少温度が400℃以上である成形品。
- β−ピネン、又はβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、2官能性ビニル化合物の存在下、ルイス酸触媒を用いて、カチオン重合又はカチオン共重合させることを特徴とするβ−ピネン重合体の製造方法。
- β−ピネン、又はβ−ピネンとカチオン重合性単量体とからなる単量体群を、開始剤とルイス酸との組合せよりなるリビングカチオン重合触媒を用いて、カチオン重合又はカチオン共重合させることを特徴とするβ−ピネン重合体の製造方法。
- 前記カチオン重合又はカチオン共重合の後、得られた重合体中のオレフィン性炭素−炭素二重結合を水素化することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のβ−ピネン重合体の製造方法。
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