JP5356084B2 - 重合体の連続水素化方法および水素化反応により得られる水素化重合体 - Google Patents
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Description
β−ピネン単位を30質量%以上含有する重合体の主鎖および/または側鎖にある不飽和結合を水素化反応により飽和結合に変換し、β−ピネン系重合体を得る反応において、水素化反応に供給する重合体溶液を反応工程に供給する前に1MPa以上の加圧条件下において水素ガスで処理した後、水素化反応を、金属を含む不均一系水素化触媒を含む水素化反応条件下に該重合体を連続的に供給する連続反応方式で反応させる水素化方法である。
上記の方法により得られ、1H−NMRスペクトルにおける4.5〜6ppmのプロトンの積分値Aの全プロトン積分値Bに対する比率(A/B)が0.0056以下であるβ−ピネン系重合体である。
・水素化方法に供する重合体
本発明の水素化方法に供する重合体は、β−ピネンを構造単位として30質量%以上含有する重合体または共重合体である。共重合体は、β−ピネンおよびその他の重合可能な単量体を共重合して得られる。
単量体として用いるβ−ピネンは公知のものが利用可能である。すなわち、松等の植物から採取されたものや、α−ピネン等、他の原料から合成したβ−ピネン等も利用可能である。
本発明にて共重合体を用いる場合、β−ピネンと共重合可能な他の単量体を構成単位として含有していてもよい。共重合可能な単量体は特に制限はなく、具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン、インデン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、ノルボルネン等のオレフィン類;リモネン、α−ピネン、ミルセン、カンフェン、カレン等のβ−ピネン以外のテレピン油由来の二重結合含有化合物;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、トリメチルシリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;極性基を有するスチレン誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、アリルアルコール等;ブタジエン、イソプレン、リモネンなどの共役ジオレフィン化合物;α−ピネン、メチレンシクロプロパンなどの歪んだ環構造を持つ化合物などが挙げられる。また、2官能性の単量体、例えばp−ジビニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル等を含有することも可能である。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用するβ−ピネン系重合体の数平均分子量は特に限定されないが、水素化後に得られる重合体の力学的物性や加工性の観点から、約1万〜100万g/モルが好ましい。数平均分子量が小さすぎると機械的強度が不足し、大きすぎると成形が困難になる。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量を意味する。
・重合反応
β−ピネン単独の重合体もしくはβ−ピネンと他の単量体を構造単位として含有する共重合体は、カチオン重合、ラジカル重合法、配位重合法等の公知の方法により得ることができる。工業的に容易に実施でき、高分子量体が得られるという観点から、特にカチオン重合法が好ましい。
カチオン重合は、非特許文献1、非特許文献2等に記載の公知の方法により行うことができる。具体的には、例えば不活性有機溶媒中において、重合触媒を添加または接触させることにより行う。
カチオン重合は、溶媒、重合触媒の種類・量、重合開始剤、電子供与性化合物、反応温度、反応圧力、反応時間等により制御することが可能である。
本発明において、カチオン重合を行う場合の重合開始剤としては、重合触媒によりカチオンを発生させる化合物であれば特に限定されないが、下式に示す官能基を少なくとも1つ有する有機化合物が好適に使用される。例えば、t−ブチルクロライド、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエステル、t−ブタノール、2,5−ジクロロ−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアセテート、クミルクロライド、クミルメトキシド、クミルアルコールアセテート、クミルアルコール、p−ジクミルクロライド、m−ジクミルクロライド、p−ジクミルメトキシド、p−ジクミルアルコールジアセテート、p−ジクミルアルコール、1,3,5−トリクミルクロライド、1,3,5−トリクミルメトキシド等を挙げることができる。
(式中のR1は水素、アルキル基、アリール基を、R2は水素、アルキル基、アリール基を、Xはハロゲン、アルコキシ基、アシロキシ基、水酸基を示す。)
カチオン重合の重合触媒として酸性化合物を用いることができる。酸性化合物は特に限定されず、例えばルイス酸またはブレンステッド酸が挙げられる。具体的にはBF3、BF3OEt2、BBr3、BBr3OEt2、AlCl3、AlBr3、AlI3、TiCl4、TiBr4、TiI4、FeCl3、FeCl2、SnCl2、SnCl4、WCl6、MoCl5、SbCl5、TeCl2、EtMgBr、Et3Al、Et2AlCl、EtAlCl2、Et3Al2Cl3、Bu3SnCl等の周期律表IIIA族からVIII族までの金属ハロゲン化合物;HF、HCl、HBr等の水素酸;H2SO4、H3BO3、HClO4、CH3COOH、CH2ClCOOH、CHCl2COOH、CCl3COOH、CF3COOH、パラトルエンスルホン酸、CF3SO3H、H3PO4、P2O5等のオキソ酸、およびこれらの基を有するイオン交換樹脂等の高分子化合物;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;SiO2、Al2O3、SiO2−Al2O3、MgO−SiO2、B2O3−Al2O3、WO3−Al2O3、Zr2O3−SiO2、硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、H+または希土類元素と交換したゼオライト、活性白土、酸性白土、γ−Al2O3、P2O5をケイソウ土と担持させた固体燐酸等の固体酸等が挙げられる。これらの酸性化合物は組み合わせて用いてもよく、また他の化合物等を添加してもよい。他の化合物等は、例えばそれを添加することにより酸性化合物の活性を向上させることができる化合物等である。金属ハロゲン化合物の酸性化合物としての活性を向上させる化合物の例としては、MeLi、EtLi、BuLi、Et2Mg、(i−Bu)3Al、Et2Al(OEt)、Me4Sn、Et4Sn、Bu4Sn等の金属アルキル化合物が例示される。
カチオン重合を行う場合、電子供与性化合物を添加することで重合反応をより制御することが可能である。このような電子供与性化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル化合物、炭素数2〜10の環状エーテル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール化合物、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の窒素含有化合物、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等のアンモニウム塩等が挙げられる。
カチオン重合は、不活性有機溶媒中において行うことができる。不活性有機溶媒は、β−ピネンおよび用いるその他の単量体が溶解し、かつ重合触媒に不活性な有機溶媒であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロパン、塩化ブタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を用いることができる。反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等が好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
・水素化反応の実施形態
本発明における水素化反応の実施形態は、水素化反応に供給する重合体溶液を反応工程に供給する前に1MPa以上の加圧条件下において水素ガスで処理した後、反応原料となる重合体の反応系への供給および抜き出しを連続的にする連続反応形式、または重合体の反応系への供給を連続的にするセミ連続反応形式をとる。ここでいう「処理する」とは1MPa以上の圧力下に重合体溶液と水素ガスとを少なくとも共存させることを指す。このときガス中の水素分圧が高いことが好ましく、水素ガスの分圧が1MPa以上であることが好ましい。また、重合体溶液を攪拌するなどの重合体溶液と水素との接触を促進する操作を行なうことが好ましい。上記反応形式の具体例として、固定床反応槽を用いるプラグフロー形式(PFR)、水素化反応原料を連続的に供給し、オーバーフローする水素化反応液を抜き取る連続流通撹拌形式(CSTR)、反応装置内に触媒などの一部の反応成分をあらかじめ導入しておき、水素化反応条件下、水素化反応原料などを一定時間かけて供給し、最終的に反応を追い込むセミ連続反応形式などを挙げることができる。
分離により回収された触媒は、一部除去、一部新規触媒を追加するなどの手段を必要によりとった後に、再び水素化反応に使用することができる。
本発明において、β−ピネン系重合体を水素化する場合、金属を含む不均一系水素化触媒を用いる。
本発明において用いる不均一系水素化触媒は特に限定されない。水素化触媒に含まれる金属としては、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、イリジウム、白金などが例示でき、これらの中で水素化活性の観点からニッケル、パラジウムが好ましく用いられる。また、不均一系水素化触媒としては、微粒子や多孔体などの金属触媒、担体に金属を担持した水素化触媒などが用いられるが、操作性などの観点からは担体に金属を担持した担持金属触媒が好ましい。金属を担持させる担体としては、活性炭などのカーボン、グラファイト、シリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、炭酸カルシウムなどが例示でき、これらの中で本発明の効果が大きいものとしてシリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土が挙げられる。このような金属を含む不均一系水素化触媒の具体例を挙げると、スポンジニッケル、スポンジコバルト、スポンジ銅などのスポンジメタル触媒;ニッケルシリカ、ニッケルアルミナ、ニッケルゼオライト、ニッケル珪藻土、パラジウムシリカ、パラジウムアルミナ、パラジウムゼオライト、パラジウム珪藻土、パラジウムカーボン、パラジウムグラファイト、パラジウム炭酸カルシウム、白金シリカ、白金アルミナ、白金ゼオライト、白金珪藻土、白金カーボン、白金グラファイト、白金炭酸カルシウム、ルテニウムシリカ、ルテニウムアルミナ、ルテニウムゼオライト、ルテニウム珪藻土、ルテニウムカーボン、ルテニウムグラファイト、ルテニウム炭酸カルシウム、イリジウムシリカ、イリジウムアルミナ、イリジウムゼオライト、イリジウム珪藻土、イリジウムカーボン、イリジウムグラファイト、イリジウム炭酸カルシウム、コバルトシリカ、コバルトアルミナ、コバルトゼオライト、コバルト珪藻土、コバルトカーボン、コバルトグラファイト、コバルト炭酸カルシウムなどの担持金属触媒が挙げられる。
これらの触媒は、活性向上、選択性向上、安定性を目的に、鉄、モリブデン、マグネシウムなどで変性されていても良い。また、これらの触媒は単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても構わない。
本発明における水素化反応は、通常、有機溶媒中で行われる。用いることのできる溶媒は、特に限定されるものではないが、β−ピネン系重合体を容易に溶解させるものが好ましい。共重合の種類によりその溶媒が異なるため、限定することは困難であるが、具体例を挙げるならば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、トリシクロデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロパン、塩化ブタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒などを用いることができる。
I. M(OR)n
II. M(OC(=O)R’)n
III. (R”)3N
IV. ピリジン類
II.に示されるM,nは上記のI.と同等である。R’は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1〜8のアルキル基を表す。
III.に示されるR”は、3つが互いに同一であっても異なっていても良く、任意の2つ以上が結合することにより環構造を有していても良く、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜12のアルキレン置換アルキレン基をあらわし、かつ、R”について水素原子以外の場合、他の置換基により置換されていても良く、かつ、置換基の一部が酸素原子、窒素原子などにより置き換えられていても良い。
IV.に示されるピリジン類は、ピリジン骨格を分子内に有する任意の化合物を使用することができる。
本発明における水素化反応の圧力は使用する触媒により適切な値をことなることがあり、必ずしも規定できないが、通常、水素化反応の全圧として0.1MPa〜30MPa、好ましくは0.5MPa〜20MPa、より好ましくは1MPa〜15MPaである。一般に水素ガス分圧が高いほど、水素化に有利となるが、30MPa以上の場合、昇圧のための設備、耐圧構造を有する設備のためのコストが大きくなり、望ましくない。
本発明における水素化反応の温度は使用する触媒により適切な値がことなることがあり、必ずしも規定できないが、通常、60℃〜300℃、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは120℃〜220℃である。高温であるほど反応速度が高まり、水素化に必要な反応時間が短縮され有利となる。本発明では、160℃以上、場合により180℃以上の水素化反応温度を設定することができる。
水素化反応時間は、使用する触媒種、触媒量、反応温度、反応形態により異なるため、必ずしも限定できないが、通常、5分〜20時間、好ましくは10分〜15時間である。反応時間が短すぎる場合、所望する水素化率を得ることができない。また、反応時間が長すぎる場合、望まない副反応の進行が顕著になり、所望する物性の水素化重合物が得られない場合がある。
本発明の水素化方法は、β−ピネン単位に由来するシクロヘキセン環のオレフィン性二重結合を水素化するものであるが、共重合に芳香族環を有する単量体を用いた場合、芳香族環の水素化をも包含してよい。
本発明の水素化物は、空気中の酸素による劣化防止のため、好ましくはβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合が、重合体中のβ−ピネン単位に対し10モル%以下である。本発明のβ−ピネン系重合体は、その1H−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)における4.5〜6ppmのプロトンの積分値Aと全プロトンの積分値Bとの比率(A/B)が、5.6×10−3以下(β−ピネン単独重合体の場合、水添率モル90%以上に相当)である。上記比率が大きいと、オレフィン性二重結合の量が多くなり劣化しやすい可能性がある。
本発明において、芳香族系単量体との共重合体を用いた場合、その水素化物は、耐熱性向上、透過率向上のため、芳香族系単量体由来の芳香族環も水素化に供することが望ましい。芳香族系単量体由来の芳香族環が共重合体中の芳香族系単量体単位に対し50モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。
本発明のβ−ピネン系重合体のTgは、示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。Tgは用いる芳香族系単量体の種類および含有量、オレフィン性二重結合の水添率、芳香族環の水添率により一概に規定できないが、90℃〜250℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。Tgが低いと耐熱性が不足し、高過ぎるとβ−ピネン系重合体が脆くなる。
本発明のβ−ピネン系重合体は、特に光学材料に使用する場合は全光線透過率が高い方が好ましい。β−ピネン系重合体の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。全光線透過率はJIS−K−7361−1−1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:ジングルビーム法」に準じて測定される。
本発明のβ−ピネン系重合体は、耐光性および耐候性が高い方が好ましい。例えばASTM−G53に準じて、UVB光100時間の促進暴露試験を行い、JIS−K−7373に準じ測定したYI(イエロー・インデックス)の試験前と試験後における黄変度(ΔYI)が10以下が好ましく、5以下がより好ましく、2以下が最も好ましい。
本発明によれば5%質量減少温度が高い重合体を得ることが可能である。本発明のβ−ピネン系重合体の5%質量減少温度は300℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましい。5%質量減少温度はJIS−K−7120−1987「プラスチックの熱重量測定法」に準じて熱天秤(TGA)で測定される、質量が5%減少した温度を意味する。
本発明により得られるβ−ピネン系重合体は、単独で使用することもできるし、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン系ブロック共重合体等の他の重合体と配合した組成物として使用することもできる。組成物として使用する場合、安定剤、滑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維;タルク、マイカ、モンモリロナイト、スメクタイト、シリカ、木粉等の充填剤;各種カップリング剤等の任意成分を必要に応じて配合することができる。
○数平均分子量及び重量平均分子量
何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求めた。ここでは、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel・GMH−Mの2本とG2000Hの1本とを直列に繋いだものを用いた。数平均分子量(Mn)保持率(%)は以下により求めた。
Mn保持率=水素化反応後のMn/水素化反応前の原料のMn×100
○モノマー転化率
重合停止時の溶液をガスクロマトグラフィー分析することにより求めた。ここでは、ガスクロマト本体としてGC14−B(島津製作所)、カラムとして、DB−1MSを用いた。
○水素化率
JEOL製 400MHzマグネットの核磁気共鳴装置を用いて室温にて10〜1000回積算にて測定した。得られた1H−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)。4.5〜6.0ppmの積分値をβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合とし、残存二重結合率を算出した。
充分乾燥させたガラス製コック付フラスコを充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサンの1100質量部と、脱水した塩化メチレンの1100質量部と、蒸留精製したβ−ピネンの40質量部と、脱水したトリエチルアミンの4.5質量部とを加え、−78℃の温度に冷却した。更に、−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液の70質量部を加え、重合を開始した。10分間重合した後、メタノールの10質量部を添加して、重合を終了させた。その後、室温にて減圧して塩化メチレンを除いた後、蒸留水の800質量部にクエン酸の20質量部を添加した水溶液を添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。かくして得られたメチルシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(60/30vol%)の混合溶媒の10000質量部に再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン重合体(A1)の39質量部を得た。この得られたβ−ピネン重合体(A1)の重量平均分子量は53,000、数平均分子量は32,000であった。
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器を充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサンの1100質量部と、脱水した塩化メチレンの1100質量部と、蒸留精製したβ−ピネンの32質量部およびイソブチレン8質量部と、脱水したトリエチルアミンの4.5質量部とを加え、−78℃の温度に冷却した。更に、−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液の70質量部を加え、重合を開始した。10分間重合した後、メタノールの10質量部を添加して、重合を終了させた。その後、室温にて減圧して塩化メチレンを除いた後、蒸留水の800質量部にクエン酸の20質量部を添加した水溶液を添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。かくして得られたメチルシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(60/30vol%)の混合溶媒の10000質量部に再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン/イソブチレン共重合体(A2)の39質量部を得た。β−ピネン/イソブチレン共重合体(A2)の1H−NMRを測定したところ、β−ピネンの含量は81質量%、イソブチレンは19質量%であった。この得られたβ−ピネン/イソブチレン共重合体(A2)の重量平均分子量は45,000、数平均分子量は28,100であった。
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したN−ヘキサン184質量部、脱水した塩化メチレン210質量部、脱水したジエチルエーテル0.5質量部を加え、−78℃に冷却した。さらに−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液7.2質量部を加えた。さらに−78℃に保持した状態でp−ジクミルクロライドの0.1mol/Lヘキサン溶液3.0質量部を加えたところ赤燈色に変化した。ただちに蒸留精製したβ−ピネン60質量部を1時間かけて添加したところ次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。β−ピネンの添加終了後、メタノール30質量部を添加して、反応を終了した。蒸留水100質量部にクエン酸5質量部を添加した水溶液を添加し、5分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒5000質量部に再沈後、十分に乾燥してβ−ピネン重合体(A3)60質量部を得た。モノマー転化率は100%であった。得られたβ−ピネン重合体(A3)の重量平均分子量は116,000、数平均分子量は51,000、ガラス転移温度は95℃であった。
1−1
電磁攪拌機、圧力ゲージを備えたSUS316製オートクレーブに、シクロヘキサン120質量部、参考例1で得られたβ−ピネン重合体(A1)30質量部を入れ、外気温条件下(18℃)にて、2.0MPaの水素で加圧し、撹拌・混合することにより、水素ガス処理した水素化反応原料を調整した(反応原料B1)。
1−2
電磁攪拌機、ニードルバルブ、圧力ゲージ、ガス及び原料導入管を備えた別のSUS316製オートクレーブの内部に、反応液が40部を超えると反応液がオートクレーブ外部へオーバーフローするように位置を調整した抜き取り管を付けた。抜き取り管の先端には焼結フィルター(1μmメッシュ)を取り付け、触媒を含む反応液から反応液のみを抜き取り、触媒を反応器に残留させることができるようにした。このオートクレーブに5%パラジウム/カーボン触媒(エボニックデグサジャパン製、E1002NN/W)0.9質量部及びシクロヘキサン24質量部、ポリβ−ピネン6質量部を入れ、1.0MPaの水素でオートクレーブ内を3回置換した。次に、水素5MPaで加圧し、オートクレーブを160℃に昇温した後、水素でオートクレーブ内の全圧を8MPaとなるように圧力を調整した。このオートクレーブ内に、反応原料B1を定量ポンプを用いて20質量部/時間でフィード、水素ガスを常時供給し、連続反応を行った。抜き取り管からオーバーフローしてきた反応液を気液分離管へと導いて水素ガスを分離し、この回収液を1時間毎に採取して1H−NMR分析を行い水素化反応率を算出した。反応開始から5時間、10時間、20時間後の反応成績を表1に示す。
実施例1−1と同様の手法を用い、水素雰囲気であったのを、窒素加圧2.0MPa雰囲気に変更して反応原料(C1)を調整した。反応原料C1を用い、実施例1−2と同様にして水素化反応を行った反応結果を表1に示す。
実施例1−1と同様の手法を用い、A1の代わりに参考例2で得られたβ−ピネン重合体(A2)に変更し、かつ、ピリジンを0.6質量部用いて反応原料(B2)を調整した。反応原料B2を用い、実施例1−2と同様の手法を用い、反応温度を180℃、用いる触媒をニッケル/シリカ触媒(日揮化学株式会社製、N102F)0.9質量部に変更して水素化反応を行った反応結果を表2に示す。
実施例2と同様の手法を用い、水素雰囲気であったのを、窒素加圧2.0MPa雰囲気に変更して反応原料(C2)を調整した。反応原料C2を用い、実施例2と同様にして水素化反応を行った反応結果を表2に示す。
実施例1−1と同様の手法を用い、A1の代わりに参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A3)に変更し、かつ、トリエチルアミンを0.02質量部用いて反応原料(B3)を調整した。
反応原料B3を用い、実施例1−2と同様の手法を用い、反応温度を160℃、用いる触媒を5%/アルミナ触媒(NEケムキャット社製)0.9質量部に変更して水素化反応を行った反応結果を表3に示す。
実施例3と同様の手法を用い、水素雰囲気であったのを、窒素加圧2.0MPa雰囲気に変更して反応原料(C3)を調整した。反応原料C3を用い、実施例3と同様にして水素化反応を行った反応結果を表3に示す。
実施例3と同様の手法を用い、反応温度を100℃に変更して水素化反応を行った反応結果を表3に示す。
Claims (4)
- β−ピネン単位を30質量%以上含有する重合体の主鎖および/または側鎖にある不飽和結合を水素化反応により飽和結合に変換し、β−ピネン系重合体を得る反応において、水素化反応に供給する重合体溶液を反応工程に供給する前に1MPa以上の加圧条件下において水素ガスで処理した後、水素化反応を、金属を含む不均一系水素化触媒を含む水素化反応条件下に該重合体を連続的に供給する連続反応方式で反応させる水素化方法。
- 水素化反応を、固定床、もしくは懸濁床で実施する請求項1に記載の方法。
- 水素化反応を、160℃以上で実施する請求項1または2に記載の方法。
- 水素化反応を、180℃以上で実施する請求項1または2に記載の方法。
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