JP2005048060A - 環状オレフィン系共重合体、その製造方法、その架橋性組成物および架橋体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 環構造のみを有する環状オレフィン系化合物に由来する構造単位と、加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系化合物に由来する構造単位とを有してなり、特定の触媒系を用いて付加重合することによって得られる実質的に組成分布がない環状オレフィン系共重合体、当該環状オレフィン系共重合体へ酸発生剤を配合してなる架橋性組成物、および該架橋性組成物を架橋してなり、残留する溶媒が1.0重量%未満であり、線膨張係数が45ppm/℃以下である架橋体。
【選択図】なし
Description
透明樹脂を光学材料の用途に用いるにあたっては、最近の微細加工技術などの進歩に伴い、透明性以外にも耐熱性、低吸水性、破壊強度、寸法安定性、耐溶剤・薬品性などの面において非常に高い性能が求められるようになっている。例えば、表示素子基板の製造においては、金属あるいは金属酸化物薄膜を積層させる際などに非常に高い耐熱性が求められるのみでなく、線膨張や吸湿による寸法変化に起因する基板のそりや、薄膜のはがれ、クラックの発生、微細加工時の寸法変化などが大きな問題となるため、係る特性についても高いレベルでの要求がなされている。
しかしながら、これらの環状オレフィン系開環(共)重合体もしくはその水素添加物であってもガラス転移温度は200℃以下であり、耐熱性に限界があった。また、環状オレフィン系開環(共)重合体は、水素添加後であってもなお分子鎖中に二重結合が微量に残留し、高温にて着色するなどの問題を生じることが多い。
このような重合触媒による溶解性の差異を説明するため、重合体の立体規則性や結合様式などのミクロ構造の差異が提案されている。すなわち、パラジウム触媒系を用いて重合して得られる付加重合体が高い立体規則性を有し、ノルボルナン骨格の2,3−位で結合した構造単位で構成されるのに対し、ニッケル触媒系を用いて重合して得られる付加重合体には、2,3−位で結合した構造単位に加えて、2,7−位で結合した構造単位が含まれることが示唆されている(例えば、特許文献11および特許文献12)。
しかしながら、上記先行技術には、触媒の選択によるミクロ構造の差異が溶解挙動以外の物性に及ぼす影響につい記載も示唆もされていない。また、パラジウム触媒系を用いると組成分布が生じる可能性があり、共重合体の溶解挙動や架橋体の寸法安定性などの物性が生じた組成分布によって大きく影響を受ける可能性があること、係る組成分布を解消すると寸法安定性に優れた共重合体を製造できる可能性があること、についても上記先行技術には記載も示唆もされていない。
パラジウム化合物を含む触媒系にて付加重合された、比較的改良された溶解性をもつ環状オレフィン系共重合体として、長鎖アルキル基やエステル基、アルコキシシリル基などの置換基を有する環状オレフィン系化合物を付加共重合したものが報告されている。例えば、パラジウム触媒系にて付加重合されたノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンの共重合体においては、トリエトキシシリルノルボルネンの割合が高いほど環状オレフィン共重合体の溶解性が向上すると記載されている(特許文献12)。
しかしながら、当該公報の実施例においてはノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとを92:8の割合で付加重合して得られる共重合体が、シクロヘキサンおよび加熱したクロロベンゼンに不溶であることが記載されている。また、アルコキシシリル基などの極性置換基を有する単量体の割合が高くなると、溶解性や金属、金属酸化物薄膜もしくはガラスなどとの接着性は向上するものの、一方では吸水率が増大することで寸法安定性が損なわれることが多いため望ましくない。さらに、特許文献15には高活性な第10族金属触媒系によるポリシクロオレフィンの製造方法が規定されており、実施例においては主に炭素数4〜10のアルキル置換基を有するノルボルネン系化合物を単量体とし、パラジウム化合物を含む触媒系を用いて得られる共重合体が記載されているが、このような炭素数の多いアルキル基を有する構造単位の導入は線膨張係数の増大を招くこととなる。
しかしながら、優れた透明性を有しながら、45ppm/℃を下回る線膨張係数を示す環状オレフィン系共重合体やその架橋体はこれまで報告されていない。さらには、これらの先行技術においても、触媒種の選択の差異や共重合体中に存在する組成分布が共重合体の溶解挙動や物性、特に線膨張係数に対して及ぼす影響についてはなんら記載されていない。
環状オレフィン系共重合体へ導入された加水分解性シリル基は、共重合体の溶解性向上に重要な役割を示すと同時に架橋部位でもあり、共重合体中に均一に導入することが求められる。しかしながら、パラジウム触媒系を用いて得られる加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系共重合体において、このような組成分布が生じる可能性に言及し、あるいは、その組成分布が共重合体の溶解性や物性に影響を及ぼすことを示唆し、解決手段を提示した先行技術はない。
本発明の環状オレフィン系共重合体は、下記式(1)で表された構造単位(A)を主たる構造単位として有する。
これらの中でも、特には、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチルジメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチルジエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−[1’−メチル−2’,5’−ジオキサ−1’−シラシクロペンチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−[1’−メチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
構造単位(B)を適宜含むことにより、該環状オレフィン系共重合体の分子間での架橋を可能とするとともに、トルエンやシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒に対する溶解度を向上することができる。
本発明の環状オレフィン系共重合体において、加水分解性シリル基を有する構造単位(B)の割合は、全構造単位に対し好ましくは1〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、最も好ましくは2〜10モル%の範囲である。この範囲より少ない場合、係る環状オレフィン系共重合体は溶媒への溶解度が低下し、キャスト法による成形が困難となる場合がある。また、架橋体とした際に、架橋が充分に進行せずに線膨張係数の増大を招くと共に、本発明の材料の耐溶剤性、耐薬品性、機械強度が不足し、接着性にも劣る場合がある。一方、該構造単位がこの範囲を超えて含まれる場合、吸水性が増加して吸水変形の原因となることがあり望ましくない。
この触媒の選択により生ずる線膨張係数の差異には、環状オレフィン系共重合体のミクロ構造が大きく影響しているものと考えられる。すなわち、パラジウム触媒系により重合した環状オレフィン系共重合体は、ニッケル触媒系によるものと比較して重合鎖の結合様式(2,3−結合/2,7−結合)および/または立体規則性(アタクティック/erythro−ジシンジオタクティック/erythro−ジアイソタクティックなど)がよく制御され、その結果分子鎖がより剛直となり、パッキング性が良好となるなどの効果が生じているものと推定される。
パラジウム化合物の具体例としては、パラジウムビスアセチルアセトネートなどのβ−ジケトネート化合物、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、ナフテン酸パラジウム、ネオデカン酸パラジウムなどのカルボン酸塩、およびこれらのテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸などの強ブロンステッド酸変性化合物が挙げられる。また、さらには、[テトラキス(アセトニトリル)パラジウム]テトラフルオロボレート、[テトラキス(ベンゾニトリル)パラジウム]テトラフルオロボレート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウムジクロライド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウムメチルクロライド、ジ−μ−クロロビス(η3−アリルパラジウム)、(η3−アリル)(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロライド、(1,5−シクロオクタジエン)パラジウムジクロライド、(メチル)(1,5−シクロオクタジエン)パラジウムクロライド、[(η3−アリル)(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム]ヘキサフルオロホスフェート、[(η3−クロチル)(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム]ヘキサフルオロホスフェート、ジ−μ−クロロビス(6−メトキシノルボルネン−2−イル−5−パラジウム)、[6−メトキシノルボルネン−2−イル−5−パラジウム(シクロオクタジエン)]ヘキサフルオロホスフェートなどのη3−アリル、ジエン、トリエン錯体化合物やパラジウム−炭素結合をもつ化合物が挙げられる。
[ここで、[L]+はルイス酸、アンモニウム類、ホスホニウム類、あるいは金属原子のカチオンを表し、[CA]-はBF4 -、PF6 -、SbF6 -、B(C6F5)4 -、B[C6H3(CF3)2]4 -から選ばれる、非配位性あるいは弱配位性のアニオンを表す。]
具体例としては、テトラフェニルホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニルホウ酸メチルピリジニウム、テトラフェニルホウ酸トリフェニルメチル、テトラフェニルホウ酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルジブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルメチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラキス[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラキス[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸トリフェニルメチル、テトラキス[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸リチウム、テトラキス[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロリン酸タリウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明者らの検討の結果、これらの欠点は環状オレフィン系共重合体の組成分布に起因することが明らかとなった。すなわち、パラジウム化合物を成分として含む触媒により重合した場合、加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系化合物(特定単量体B)とその他の単量体とで重合反応性が異なるため、重合の初/中/後期で著しく異なる組成を有する共重合体が生成しており、その結果共重合体の溶解度を悪化させ、架橋体の物性を損なっていた。
例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンと5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンとを共重合した場合には、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの方が高い反応性を示し、重合の初/中期でその大半が消費されるため、重合の後期にはその構造単位の割合の著しく低い成分が生成する。そして、その成分は溶解度が極端に低いか不溶となるため、溶液キャスト法による成形が困難なものとなる。さらには、初/中/後期の各段階で生成する共重合体成分の間に組成分布があると相溶性が損なわれることが多く、溶液あるいは成形体が著しく白濁したものとなる。また、組成が均一でないため得られる環状オレフィン系共重合体の架橋体の架橋密度にばらつきが生じ、結果として寸法安定性などの物性に劣るものとなることがある。
しかしながら、重合の初期段階で停止する方法の場合、過半の単量体が未反応のままであるため生産性が低く、分離にかかる負荷などの面から経済的に好ましくなく、また共重合体中に残留して悪影響を及ぼすことがあるため物性上も好ましくない。
本発明の架橋体に用いる環状オレフィン系共重合体としては、重合に供する全単量体と全特定単量体(B)の割合(モル基準)をXとしたとき、任意の時間にサンプリングされた共重合体中の全構造単位と構造単位(B)の割合(モル基準)が、Xに対して±30%以内である重合反応により得られた共重合体であることが好ましく、±20%以内である重合反応により得られた共重合体であることがさらに好ましく、±15%以内である重合反応により得られた共重合体であることが特に好ましい。
構造単位(B)の割合がこの範囲を超えて変化すると、得られる環状オレフィン系共重合体が溶媒に不溶となったり、該共重合体や架橋体が白濁したりすることがある他、架橋体の線膨張係数が高くなったり寸法安定性が劣る場合が生じる。
環状オレフィン系共重合体の分子量は、α−オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、環状非共役ポリエン、水素などの分子量調節剤の添加による制御方法や、重合触媒の量の調節、重合温度の調節、共重合体への転化率の調節などによる制御方法、あるいはこれらの組み合わせによる制御方法から、適当な方法を適宜選択し、行うことができる。
ここで、バッチ式にて重合反応を実施するにあたっては、共重合体が組成分布を実質的に持たないものとするために、前述の通り重合系中の単量体の組成が重合工程を通して大きく変動することのないよう制御する必要がある。一方、連続式で重合反応を実施するにあたっては、全ての単量体、溶媒、重合触媒、および必要に応じて分子量調節剤を一定速度にて反応容器へと導入することで、重合系中の組成を一定に保持することができ、得られる共重合体が組成分布を実質的に持たないようにすることができる。
本発明においては、架橋触媒として酸発生剤を用いて架橋性組成物とし、該架橋性組成物を架橋することによって架橋体を製造する方法が好適に実施される。ここで、酸発生剤とは、加熱、光、水分などにより脱離反応や加水分解反応などを起こし、その結果酸として作用する化合物をいう。
係る酸発生剤の具体例としては、
a)トリアルキル亜リン酸エステル、トリアリール亜リン酸エステル、ジアルキル亜リン酸エステル、モノアルキル亜リン酸エステル、次亜リン酸エステル、カルボン酸の第2級または第3級アルコールのエステル、カルボン酸のヘミアセタールエステル、カルボン酸のトリアルキルシリルエステルなどの水または水蒸気の存在下で加熱することにより酸としての作用する化合物、
b)BF4、PF6、AsF6、SbF6、B(C6F5)4などから選ばれた対アニオンを有する芳香族スルホニウム塩、芳香族アンモニウム塩、芳香族ピリジニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、ヒドラジニウム塩、フェロセニウム塩など、加熱することにより酸として作用する熱酸発生剤、
c)g線、h線、i線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線などの光線の照射により、ブレンステッド酸、あるいはルイス酸を生成するジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アルセニウム塩、オキソニウム塩などのオニウム塩、ハロゲン含有オキサジアゾール化合物、ハロゲン含有トリアジン化合物、ハロゲン含有アセトフェノン化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン化合物などのハロゲン化有機化合物、キノンジアジド化合物、α,α−ビス(スルホニル)ジアゾメタン化合物、α−カルボニル−α−スルホニル−ジアゾメタン化合物、スルホニル化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物などの光酸発生剤、
などを挙げることができる。これらは1種のみ、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、亜リン酸エステルは、入手性が高く有機溶媒への溶解性が良好で、架橋反応における効果も高いことから好ましく用いられる。当該組成物において、酸発生剤は、その種類にもよるが本発明の環状オレフィン系共重合体100重量部当たり0.0001〜10.0重量部の範囲で、好ましくは0.001〜5.0重量部の範囲で用いられる。0.0001重量部より少ない場合、架橋反応が充分に進行しないため、要求される耐薬品性、耐溶剤性、寸法安定性が得られず、一方、10.0重量部を超えると得られる架橋体の機械的強度、電気特性、透明性などが低下することがある。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系、ヒドロキノン系酸化防止剤、さらにトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤を挙げることができ、本発明の環状オレフィン系共重合体100重量部あたり、好ましくは0.05〜5.0重量部の範囲で添加される。
その方法としては、適切な溶媒に溶解させ、金属ベルト、金属ドラム、キャリアーフィルム、シリコンウェハー、ガラス板などの上に塗布、吹き付け、スクリーン印刷、スピンコート、ディッピングなどの方法で流延した後に乾燥工程を経る溶液キャスト法や、溶媒に架橋性組成物を膨潤させた後に押し出し機で溶媒を蒸発させながら成形する方法、射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形などが用いられる。中でも、成形体の表面の品質や複屈折低減の面から溶液キャスト法による成形が望ましい。
溶液キャスト法において用いる溶媒としては、クロロベンゼン、o−シクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒は人体や環境への悪影響が懸念されるため望ましくない。本発明の環状オレフィン系共重合体は、炭化水素溶媒に対し良好な溶解性を示すことから、炭化水素溶媒、特にはトルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒や、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素溶媒、およびこれらから選ばれる2種以上からなる混合溶媒が好ましく用いられる。
これらのうち、酸を発生する工程および架橋する工程は、架橋性組成物の成形体を加熱する方法、水あるいは熱水により処理する方法、100〜280℃の加圧水蒸気あるいは過熱水蒸気により処理する方法、100〜250℃の含水液体組成物に接触させる方法、光酸発生剤との組成物にあっては所定の光線の照射する方法、あるいはこれらのうち2種以上を組み合わせた方法が実施される。
ここで、含水液体組成物としては、0.1MPaの圧力下での沸点が100℃以上であり、処理温度において水と均一液相を形成でき、かつ環状オレフィン系共重合体を溶解することのない化合物と水との組成物が、具体的には、ポリオール化合物および/またはエーテル結合を含むモノまたはジオール化合物と水との組成物が好ましく使用される。該含水液体組成物中の水分含量は、500ppm〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。
残留溶媒を除去する工程としては、常圧あるいは減圧下にて加熱する方法、水や有機溶媒、それらの蒸気により処理する方法、あるいはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。ここで、残留溶媒の除去に用いられる有機溶媒としては、環状オレフィン系共重合体をほとんど、あるいは全く溶解せず、かつ上記の組成物を成形する際に用いた溶媒とは均一に混合する溶媒が好適に用いられ、具体例としてはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。残留する溶媒は、100〜280℃の過熱水蒸気により処理することや、上に挙げた有機溶媒の雰囲気下に架橋体を曝すことによって求められる程度にまで低減できる。
ここで用いる過熱水蒸気は、過熱水蒸気を含むガス組成物として用いてもよく、通常、0.01〜0.5MPa、好ましくは0.05〜0.2MPaの範囲で加温される。この温度が100℃未満では残留する溶媒の除去の効率が悪化し、一方、280℃を超えると、架橋体が熱劣化する場合があり好ましくない。また、過熱水蒸気あるいは過熱水蒸気を含むガス組成物の圧力が上記の範囲を下回るかあるいは超える場合、処理設備が高額となり好ましくない。ここで、このガス組成物中の過熱水蒸気の割合は、10モル%以上、好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上である。また、当該ガス組成物中における過熱水蒸気以外の成分としては、特には限定されないが、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、あるいはジクロロメタンなど上で残溶媒の除去に用いられる有機溶媒が好ましい。
線膨張係数を低減するには、架橋密度の増加や残留溶媒の低減が効果的であり、例えば、本発明の環状オレフィン系共重合体に導入される加水分解性シリル基を加水分解に対する反応性の高いものを選択したり、架橋性組成物に配合される酸発生剤の選択や量を調節したり、架橋工程における温度や時間や過熱水蒸気の圧力を調節したりすることが挙げられる。
(1)未反応単量体(溶液中組成)
重合反応溶液の一部を採取し、標準物質としてテトラリンを添加、過剰のイソプロピルアルコールにて凝固した。島津製作所製GC−14Bガスクロマトグラフ装置を使用し、カラムとしてGLサイエンス社製TC−1キャピラリーカラム(膜厚1.0μm、内径0.25mm、長さ60m、カラム温度200℃)を用い、凝固後の上澄みに残存する未反応の各単量体を定量した。
(2)共重合体組成
特に記載のない場合は、以下の方法によって測定した。
重合反応溶液の一部を採取し、過剰のイソプロピルアルコールにて共重合体を凝固した。得られた共重合体を100℃の減圧乾燥機中で8時間乾燥し、次いで重水素化ベンゼン(ベンゼン−d6)もしくは重水素化ベンゼン(ベンゼン−d6)と重水素化o−ジクロロベンゼン(o−ジクロロベンゼン−d4)との混合物(体積比2/1〜1/2)を用いて溶解し、必要に応じて80℃に加温して、270MHz 1H−NMR(日本電子株式会社製 EX−270)で測定してプロトンの吸収比から求めた。
(3)重量平均分子量、数平均分子量:
ウォーターズ(WATERS)社製150C型ゲル・パーミエションクロマトフィー(GPC)装置で東ソ−(株)製Hタイプカラムを用い、o−ジクロロベンゼンを溶媒として、120℃で測定した。得られた分子量は標準ポリスチレン換算値である。
(4)ガラス転移温度:
レオバイブロンDDV−01FP(オリエンテック製)を用い、測定周波数が10Hz、昇温速度が4℃/分、加振モードが単一波形、加振振幅が2.5μmのものを用いて測定される、貯蔵弾性率(E')と損失弾性率(E")から導かれるTanδ(=E"/E'のピーク温度で重合体のガラス転移温度を測定した。
(5)全光線透過率:
ASTM−D1003に準拠し、厚さが100μmのフィルムにおける全光線透過率を測定した。
(6)線膨張係数:
TMA(Themal mechanical Analysis)SS6100(セイコーインスツルメント社製)を用い、試料形状を膜厚100μm、縦10mm、横10mmにしたフィルム片を直立、固定し、プローブにより、1g重の荷重をかけた。フィルムの熱履歴を除去するため、室温から200℃まで5℃/分で一旦昇温した後、再度、室温から5℃/分の速度で昇温し、50℃〜230℃間のフィルム片の伸びの傾きから線膨張係数を求めた。
(7)残留溶媒量
細かく裁断した1グラムの架橋体フィルムをトルエンもしくはシクロヘキサンに溶解あるいは膨潤させてフィルム中の残留溶媒を抽出し、HP−5890ガスクロマトグラフ装置(ヒューレット・パッカード社製)にカラムとしてPoraplotQ(ヒューレット・パッカード社製)を取り付けて分析し、フィルム中の残留溶媒量を定量した。
(8)共重合体の溶解性テスト
100ミリリットルガラス製バイアル瓶中にて、共重合体5gと溶媒50ミリリットルとを混合し、50℃で2時間撹拌した。その後1時間かけて25℃まで冷却し、瓶中のポリマー溶液の様子を観察した。
(9)破断強度および破断伸び
JIS K7113に準じて、試験片を引っ張り速度3mm/min.で測定した。
充分に乾燥し、窒素で置換したステンレス製1リットル耐圧容器へ 7.66モル/リットルの濃度としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの乾燥トルエン溶液を124ミリリットル(950ミリモル)、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを7.7ミリリットル(30ミリモル)、乾燥トルエンを330ミリリットル、乾燥シクロヘキサンを390ミリリットル、0.01モル/リットルに調製したトリシクロヘキシルホスフィンのトルエン溶液を1.0ミリリットル仕込んだ。0.08MPaとなるまでエチレンで加圧し、攪拌しながら系の温度を80℃に調節した。続いて0.01モル/リットルに調製した2−エチルヘキサン酸パラジウムのトルエン溶液を1.0ミリリットル、トルエンと少量の塩化メチレンとに溶解して0.01モル/リットルとしたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルメチルを1.2ミリリットル、0.091モル/リットルに調製したトリエチルアルミニウムのトルエン溶液を0.55ミリリットル加え、重合を開始した。5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを重合開始後15分、30分、45分において1.31ミリリットル(5ミリモル)ずつ、60分および90分において0.65ミリリットル(2.5ミリモル)ずつをそれぞれ追加し、合計2時間反応を行った。その後、シクロヘキサン約500ミリリットルで希釈し、約600ミリリットルの精製水にて洗浄した。約3リットルのイソプロピルアルコールで凝固し、100℃の減圧乾燥機中で24時間乾燥して、94グラム(収率92%)の環状オレフィン系共重合体Aを得た。
重合の途中および終了後に溶液の一部を抜き出した。サンプリングした溶液はいずれも透明であった。
サンプリングした溶液について、未反応単量体の組成比と共重合体中の構造単位の組成比を分析した。
なお、共重合体組成は、エトキシシリル基のメチレン基の水素に由来する吸収(δ=3.8〜4.0ppm)と、その他の全水素に由来する吸収(δ=0.7〜3.3ppm)との比から求めた。結果は表1のとおりであった。
共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は116,000、Mw/Mnは2.9、ガラス転移温度は380℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Aは、トルエンおよびシクロヘキサンに均一に溶解した。
充分に乾燥し、窒素で置換したステンレス製1リットル耐圧容器へ 7.66モル/リットルの濃度としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの乾燥トルエン溶液を124ミリリットル(950ミリモル)、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを13.6ミリリットル(50ミリモル)、乾燥トルエンを330ミリリットル、乾燥シクロヘキサンを390ミリリットル、0.01モル/リットルに調製したトリシクロヘキシルホスフィンのトルエン溶液1.0ミリリットルを仕込んだ。0.08MPaとなるまでエチレンで加圧し、攪拌しながら系の温度を80℃に調節し、実施例1と同様にして重合を開始した。重合反応中に追加の5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを加えなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、92グラム(収率90%)の環状オレフィン系共重合体Bを得た。
重合の途中および終了後に溶液の一部を抜き出し、実施例1と同様にして溶液中の未反応単量体の組成比と共重合体中の構造単位の組成比を分析した。結果は表1のとおりであり、重合の前半において5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンはほとんど消費され、後期には5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの含量が極端に低い共重合体が生成していることが明らかであった。また、90分以上経過した時の重合溶液は白濁していた。
共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は124,000、Mw/Mnは3.1であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Bは、シクロヘキサンに対しては著しく白濁し、トルエンに対しては膨潤して一部溶解したが均一には溶解しなかった。なお、80℃以上に加熱したクロロベンゼンあるいはo−ジクロロベンゼンには均一に溶解した。
*2:全構造単位に対する5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合
共重合体A100部をシクロヘキサン450部とヘプタン50部からなる混合溶媒に溶解させ、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.6部添加し、さらに亜リン酸トリブチルを3.5部添加した。この溶液を孔径10μmのメンブランフィルターで濾過し、平滑なポリエチレンテレフタレートフィルム上、25℃でキャストし、50℃まで徐々に温度を上昇させながら溶剤を蒸発させ、架橋性組成物のフィルムA−1を得た。ステンレス製密閉容器にこのフィルムA−1を入れ窒素で置換し、200℃、大気圧の過熱水蒸気を用いて内温を200℃に120分間保ち、厚さ100μmの架橋体フィルムA−2を得た。フィルムA−2は、表5に示した評価結果のとおり、線膨張係数が低く、破断強度に優れたものであった。
フィルムA−1を150℃、0.48MPaの加圧水蒸気に6時間曝し架橋した。さらに25℃で塩化メチレンの蒸気雰囲気下に30分間曝して残留するシクロヘキサンおよびヘプタンを除去後、真空下100℃で30分間乾燥し、厚さ100μmの架橋体フィルムA−3を得た。表5に示した評価結果のとおり、フィルムA−3は線膨張係数が低く、破断強度に優れたものであった。
架橋性組成物のフィルムA−1を用い、過熱水蒸気による処理操作を行わずに、真空下100℃で加熱乾燥を1時間実施して得られたフィルムA−4について評価を行った。フィルムA−4はシクロヘキサンに可溶なことから架橋が進行しておらず、表5に示した結果から明らかなとおり、架橋体フィルムA−2およびA−3と比較して残留溶媒量が多く、寸法安定性に劣るものであった。
共重合体Aを用い、亜リン酸トリブチルを加えなかった以外は、実施例2と同様にキャストフィルムを作成し、さらに、200℃、大気圧の過熱水蒸気を用いて内温を200℃に120分間保ち、厚さ100μmの架橋体フィルムA−5を得た。フィルムA−5は、残留溶媒が低減されているものの架橋が充分に進行しておらず、シクロヘキサンに一部可溶であった。また、表5に示した結果から明らかなとおり、フィルムA−2およびA−3と比較して寸法安定性に劣るものであった。
過熱水蒸気による処理に替えて、窒素下にて280℃で60分間加熱した以外は、実施例2と同様の操作を行い、厚さ100μmの架橋体フィルムA−6を得た。フィルムA−6は、いかなる溶媒にも不溶であり架橋が進行していることが示唆されたが、残留溶媒は充分に低減されておらず、寸法安定性に劣るうえ、若干黄変していることから熱分解が起こっていることが示唆された。
共重合体Bを100部とり、クロロベンゼン500部に加熱溶解させ、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.6部添加し、さらに亜リン酸トリブチルを3.5部添加した。この重合体溶液を孔径10μmのメンブランフィルターで濾過し、平滑なポリエチレンテレフタレートフィルム上、25℃でキャストし、100℃まで徐々に温度を上昇させながら溶剤を蒸発させ、架橋性組成物のフィルムB−1を得た。ステンレス製密閉容器にこのフィルムB−1を入れ窒素で置換し、200℃、大気圧の過熱水蒸気を用いて内温を200℃に120分間保ち、厚さ100μmの架橋体フィルムB−2を得た。フィルムB−2は、白濁しており、表5に示した評価結果のとおり、強度および寸法安定性に劣るものであった。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの仕込みを121ミリリットル(927ミリモル)とし、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンにかえて、5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを45ミリモル仕込み、エチレンの圧力を0.07MPaとした以外は実施例1と同様の手順にて重合を開始した。5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを重合開始後30分、60分、90分でそれぞれ12ミリモル、8ミリモル、5ミリモル加えた。また、それぞれの時点で重合溶液の一部を抜き出したところ溶液はいずれも透明であり、共重合体の組成の分析の結果、5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの含量はいずれも6.6〜7.5モル%の範囲内であった。なお、共重合体組成は、−Si−O−CH2−部位のメチレンの水素に由来する吸収(δ=3.5〜3.7ppm)と、その他の全水素に由来する吸収(δ=0.7〜3.3ppm)との比から求めた。
重合開始後3時間反応を行った後、実施例1と同様の手順にて、83グラム(収率80%)の環状オレフィン系共重合体Cを得た。重合終了時における共重合体中の5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの含有率は7.0モル%であった。
共重合体Cの重量平均分子量(Mw)は132,000、Mw/Mnは2.5、ガラス転移温度は378℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Cはトルエンおよびシクロヘキサンに均一に溶解した。
重合開始前に加える5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの量を70ミリモルとしたことと、重合反応中には追加しなかったこと以外は実施例4と同様にして重合を行った。重合開始後120分経過した時点から濁りはじめ、3時間後に終了した際には溶液全体が白濁していたことから不溶な成分が生成していることが示唆された。
重合中および終了後に溶液の一部を抜き出し、溶液中における未反応単量体の組成比を分析した結果を表2に示すが、5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの割合は重合の進行とともに大きく減少していた。
それに伴い共重合体の組成比も変化し、特に重合後半には、5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来する構造単位の割合が極端に低い共重合体が生成していた。なお、共重合体組成は、−Si−O−CH2−部位のメチレンの水素に由来する吸収(δ=3.5〜3.7ppm)と、その他の全水素に由来する吸収(δ=0.7〜3.3ppm)との比から求めた。
重合終了後、実施例1と同様の手順にて88グラム(収率85%)の環状オレフィン系共重合体Dを得た。共重合体Dの重量平均分子量は145,000、Mw/Mnは3.2、ガラス転移温度は383℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Dはトルエンおよびシクロヘキサンに対して膨潤して一部溶解したが均一には溶解しなかった。なお、80℃以上に加熱したクロロベンゼンあるいはo−ジクロロベンゼンには均一に溶解した。
*2:全構造単位に対する5−[1’,4’,4’−トリメチル−2’,6’−ジオキサ−1’−シラシクロヘキシル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合
共重合体Cを用いた他は、実施例2と同様の操作にて架橋性組成物のフィルムC−1および架橋体フィルムC−2を得た。フィルムC−2は、表5に示した評価結果のとおり、透明性が高く、強度および寸法安定性に優れたものであった。
架橋性組成物のフィルムC−1を150℃、0.48MPaの加圧水蒸気に6時間曝し架橋した。さらに、25℃で塩化メチレンの蒸気雰囲気下に30分間曝し、残留するシクロヘキサンおよびヘプタンを除去後、真空下100℃で30分間乾燥し、厚さ100μmの架橋体フィルムC−3を得た。フィルムC−3は、表5に示した評価結果のとおり、強度に優れ線膨張係数の低いものであった。
共重合体Cの架橋性組成物のフィルムC−1を用い、水蒸気による処理操作をなんら行わずに真空下100℃で60分間加熱乾燥し、フィルムC−4を得た。表5に示した評価結果から明らかなとおり、残留溶媒が多く、寸法安定性に劣るものであった。
共重合体Cを用い、亜リン酸トリブチルを加えなかった以外は、実施例2と同様にキャストフィルムを作成し、さらに、200℃、大気圧の過熱水蒸気を用いて内温を200℃に60分間保ち、厚さ100μmのフィルムC−5を得た。フィルムC−5は、残留溶媒が低減されているものの、架橋が充分に進行しておらず、シクロヘキサンに一部溶解した。表5に示した結果から明らかなとおり、寸法安定性に劣るものであった。
架橋性組成物のフィルムC−1を用い、過熱水蒸気による処理に変えて、窒素下にて280℃で30分間加熱した以外は、実施例2と同様の操作を行い、厚さ100μmのフィルムC−6を得た。フィルムC−6はシクロヘキサン、トルエン、クロロベンゼンのいずれにも不溶であり架橋が進行していることが示唆された。しかしながら、残留溶媒は充分に低減されておらず、寸法安定性に劣る上、若干黄変していることから熱分解が起こっていることが示唆された。
共重合体Dを100部とり、クロロベンゼン500部からなる混合溶媒に溶解させ、比較例5と同様の操作にて架橋性組成物のフィルムD−1、および架橋体フィルムD−2を得た。フィルムD−2は、白濁しており、寸法安定性および機械強度に劣るものであった。
充分に乾燥し、窒素で置換したガラス製200ミリリットル耐圧容器に、乾燥シクロヘキサンに溶解して4.0モル/リットルの濃度としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを24.3ミリリットル(97ミリモル)、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを0.52ミリリットル(2.0ミリモル)、乾燥シクロヘキサンを45ミリリットル、乾燥塩化メチレンを9ミリリットル仕込んだ。さらに、0.01モル/リットルに調製したトリシクロヘキシルホスフィンのトルエン溶液を0.25ミリリットル加え、容器をセプタムシールにて密封し、さらにエチレンを120ミリリットル/分で0.4分間吹き込み、系の温度を50℃に調節した。続いて、0.01モル/リットルに調製したパラジウムビスアセチルアセトネートのトルエン溶液を0.25ミリリットル、少量の塩化メチレンとトルエンとに溶解して0.01モル/リットルとしたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルメチルを0.30ミリリットル、0.05モル/リットルに調製したトリエチルアルミニウムのトルエン溶液を0.25ミリリットル加え、重合を開始した。
5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを重合開始後30分および60分でそれぞれ0.13ミリリットルずつ加えた。重合反応中の溶液は終始透明であり、また、重合開始直後、開始後30分、60分、90分、120分経過した時点で溶液の一部を抜き出し、実施例1と同様にして共重合体組成を分析したところ、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの含量はいずれも3.1〜3.4モル%の範囲内であった。
重合開始後2.5時間反応を行った後、亜リン酸トリブチル約0.1ミリリットルを添加し、シクロヘキサン約50ミリリットルで希釈した。約800ミリリットルのアセトンで凝固、90℃の減圧乾燥機中で24時間乾燥し、9.0グラム(収率91%)の環状オレフィン系共重合体Eを得た。
重合終了時における共重合体E中の5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の含有率は、3.2モル%であった。共重合体Eの重量平均分子量(Mw)は172,000、Mw/Mnは2.3、ガラス転移温度は383℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Eはトルエンおよびシクロヘキサンに均一に溶解した。
重合開始前に加える5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの量を3.0ミリモルとし、重合反応中に追加の5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを加えなかった以外は、実施例7と同様にして重合を行った。重合開始後60分経過した時点から濁りはじめ、2.5時間後に終了した際には溶液全体が白濁していたことから不溶な成分が生成していることが示唆された。また、重合中および終了後に溶液の一部を抜き出し、溶液中における未反応単量体の組成比および共重合体の構造単位の組成比を分析した結果を表3に示すが、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンは重合反応の前半でほとんど消費され、重合反応後半では5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の含量が極端に低い成分が生成していた。なお、均一に溶解する適当な溶媒がなく1H−NMRによる測定ができなかったため、共重合体組成については未反応単量体の量から計算により求めた。
実施例7と同様の手順にて9.3グラム(収率94%)で環状オレフィン系共重合体Fを得た。溶解性テストの結果、共重合体Fはトルエンおよびシクロヘキサンに対して膨潤して一部溶解したが均一には溶解しなかった。また、80℃以上に加熱したクロロベンゼンおよびはo−ジクロロベンゼンに対しても、膨潤して一部溶解したが均一には溶解しなかった。
*2:全構造単位に対する5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合
共重合体E100部をシクロヘキサン450部とヘプタン50部からなる混合溶媒に溶解させ、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.6部添加し、さらに亜リン酸トリブチルを0.7部添加した。この重合体溶液を実施例2と同様の操作にてキャストし、架橋性組成物のフィルムE−1を得た。さらに、ステンレス製密閉容器にこのフィルムを入れ窒素で置換し、180℃、大気圧の過熱水蒸気を用いて内温を180℃に120分間保ち、厚さ100μmの架橋体フィルムE−2を得た。フィルムE−2は、表5に示した評価結果のとおり、残留溶媒量が低く、透明性と寸法安定性に優れるものであった。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに代えて、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを97ミリモル用い、重合開始前に加える5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの量を3.0ミリモルとし、重合反応中に追加の5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを加えなかった以外は、実施例7と同様にして重合を行い、75%の収率で環状オレフィン系共重合体Gを得た。重合溶液は終始透明であったが、表4に示した重合溶液中における未反応単量体組成および共重合体の組成の分析の結果より明らかに、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの共重合反応性が高く、著しい組成分布が存在することが示唆された。
共重合体Gの重量平均分子量は277,000、Mw/Mnは2.2、ガラス転移温度は305℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Gはトルエンおよびシクロヘキサンに均一に溶解した。
次いで、実施例2と同様の操作により、共重合体Gより架橋性組成物のフィルムG−1、および架橋体フィルムG−2を得た。鎖状置換基を有する共重合体Gは溶解度が大きく向上し、柔軟な架橋体を与えるが、表5に示したG−2の評価結果から明らかなとおり、架橋体の寸法安定性は著しく劣るものであった。
*2:全構造単位に対する5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合
(触媒成分の調製)
充分に乾燥し、窒素置換したポリテトラフルオロエチレン(米国デュポン社製、テフロン、以下同じ)製容器に、シクロヘキサンとn−ヘプタンの混合溶媒(混合比9:1)8.2ミリリットルに溶解した2−エチルヘキサン酸ニッケル10ミリモルを入れ、氷浴にて冷却した。ポリテトラフルオロエチレン製マグネット式撹拌棒で撹拌しながら、ヘキサフルオロアンチモン酸3.0グラム(12.7ミリモル)を滴下、室温まで徐々に昇温した。20ミリリットルとなるまでトルエンを加え、不溶成分をグラスフィルターでろ別し、ニッケル触媒成分の溶液を得た。原子吸光光度法による分析により、この溶液中のニッケル原子の濃度は0.035モル/リットルと求められた。
充分に乾燥し、窒素で置換したガラス製200ミリリットル耐圧容器に、乾燥トルエンに溶解して5.2モル/リットルの濃度としたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを18.3ミリリットル(97ミリモル)、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを0.78ミリリットル(3ミリモル)、乾燥トルエンを50ミリリットル、および1−ヘキセンを2ミリモル仕込み、系の温度を30℃に調節した。容器をセプタムシールにて密封し、さらに、0.91モル/リットルの濃度のトリエチルアルミニウムのトルエン溶液を0.22ミリリットル、1.0モル/リットルに調製した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体のトルエン溶液を0.18ミリリットル加え、さらに上記で調製したニッケル触媒成分の溶液をニッケル原子に換算して0.02ミリモル加えて重合を開始した。1時間反応を行った後、少量のイソプロピルアルコールを添加して停止させた。重合開始後15分、30分、45分、および重合終了時において重合溶液の一部を抜き出し、共重合体中における構造単位の組成および溶液中における未反応単量体の組成を分析した結果、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの割合はいずれも2.9モル%から3.1モル%の範囲内であり、組成分布がほとんどないことがわかった。また、溶液はいずれも透明であった。トルエン約50ミリリットルで希釈し、乳酸0.5グラムを加え、精製水で2回洗浄後に約1リットルのアセトンで凝固した。真空下90℃で24時間乾燥し、9.1グラム(収率92%)の環状オレフィン共重合体Hを得た。
共重合体Hの重量平均分子量(Mw)は177,000、Mw/Mnは2.1、ガラス転移温度は367℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Hはトルエンおよびシクロヘキサンに均一に溶解した。
撹拌翼およびジャケットを装備した内容積20リットルのステンレス製槽型反応容器へ、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを毎時0.99キログラムで、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを毎時0.14キログラムで、トルエンを毎時5.6キログラムで、それぞれ連続的に供給し、容器内温度を80℃に、容器内圧をエチレンで0.019MPaに保持した。0.001モル/リットルに調整した酢酸パラジウムのトルエン溶液を容器内のパラジウム濃度が6.8マイクロモル/リットルとなるように毎時73ミリリットルで供給し、さらに、トリシクロヘキシルホスフィン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルメチル、トリエチルアルミニウムをそれぞれモル比でP/Pd=1.0、B/Pd=1.1、Al/Pd=4.0となる速度で供給し、共重合を行った。重合溶液を反応容器上部より連続的に抜き出し、それぞれトルエン溶液とした亜リン酸トリブチルおよびペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を重合溶液100部に対して、固形分重量に換算して0.1部を添加し、300部のアセトンと強撹拌下で接触させて環状オレフィン共重合体を凝固させた。濾過で採取した共重合体はさらにアセトンで充分に洗浄し、窒素流通下、100℃で20時間乾燥し、環状オレフィン共重合体Iを得た。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンおよび5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの転化率はそれぞれ93%、98%であり、得られた共重合体における5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来する構造単位の割合は常に5.2〜5.4モル%の範囲内で一定していた。共重合体Iの重量平均分子量は131,000、分子量分布は2.1、ガラス転移温度は376℃であった。また、溶解性テストの結果、共重合体Iは、トルエンおよびシクロヘキサンに均一に溶解した。
共重合体I 100部を、シクロヘキサン450部とヘプタン50部からなる混合溶媒に溶解させ、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.6部添加し、さらに亜リン酸トリブチルを3.5部添加した。この重合体溶液を孔径10μmのメンブランフィルターで濾過し、平滑なポリエチレンテレフタレートフィルム上、25℃でキャストし、50℃まで徐々に温度を上昇させながら溶剤を蒸発させ、架橋性組成物のフィルムI−1を得た。ステンレス製密閉容器にフィルムI−1を入れ窒素で置換し、180℃、大気圧の過熱水蒸気を用いて内温を180度に120分間保ち、厚さ100μmの架橋体フィルムI−2を得た。フィルムI−2は、表5に示した評価結果のとおり、線膨張係数が低く破断強度に優れるものであった。
Claims (10)
- 下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される加水分解性シリル基を有する構造単位(B)とを有してなり、パラジウム化合物を成分として含む触媒系を用いて付加重合することにより得られるものであり、上記構造単位(B)がランダムに分布していることを特徴とする環状オレフィン系共重合体。
- 全構造単位に対し、上記構造単位(A)の割合が80〜99モル%であり、上記構造単位(B)の割合が20〜1モル%である請求項1に記載の環状オレフィン系共重合体。
- パラジウム化合物を成分として含む触媒系が、パラジウム化合物に加えて、(i)ホスフィン化合物および/またはホスホニウム化合物、(ii)パラジウム化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物、ならびに任意に(iii)有機アルミニウム化合物あるいは有機リチウム化合物からなるものである請求項1または2に記載の環状オレフィン系共重合体。
- (ii)パラジウム化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物として、
[L]+[CA]-
で表されるイオン性化合物を用いる請求項3に記載の環状オレフィン系共重合体。
[ここで、[L]+はルイス酸類、アンモニウム類、ホスホニウム類、あるいは金属原子のカチオンを表し、[CA]-はBF4 -、PF6 -、SbF6 -、B(C6F5)4 -、B[C6H3(CF3)2]4 -から選ばれる、非配位性あるいは弱配位性のアニオンを表す。] - 重合に供する上記構成単位(B)を形成するための加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系化合物のうちの10〜80モル%を反応容器へと導入して重合を開始する工程と、残余の加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系化合物を重合反応中に2回以上に分割して、あるいは連続的に反応器に導入する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法。
- 重合工程が連続重合法によるものであり、上記構成単位(A)を形成するための環状オレフィン系化合物と上記構成単位(B)を形成するための加水分解性シリル基を有する環状オレフィン系化合物とを連続して重合に供することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
- 請求項1〜4いずれかに記載の環状オレフィン系共重合体と酸発生剤とを含む架橋性組成物。
- 酸発生剤が亜リン酸エステル化合物である請求項7に記載の架橋性組成物。
- 請求項7あるいは8に記載の架橋性組成物を架橋してなり、残留溶媒が1.0重量%未満であり、線膨張係数が45ppm/℃以下である架橋体。
- 溶液キャスト法によって成形し、さらに過熱水蒸気に接触させることを特徴とする、請求項9に記載の架橋体の製造方法。
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