JP5097541B2 - 透明耐熱性樹脂およびその製造方法、並びに透明耐熱性樹脂を含有する光学材料 - Google Patents
透明耐熱性樹脂およびその製造方法、並びに透明耐熱性樹脂を含有する光学材料 Download PDFInfo
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Description
MXnRm−n [VIII]
(一般式[VIII]中、MはAl、Ti、BまたはFeを示し、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシル基またはフェノキシ基を示し、mはMの原子価と等しい数を示し、0≦n≦mである)で表されるルイス酸である、前記重合体環化物の製造方法に関する。
2・・・温度(温度軸)
3・・・ガラス転移温度(Tg)
4・・・中央接線
5・・・転移前ベースライン
6・・・転移後ベースライン
7・・・中央接線と転移前ベースラインの交点を通る平行線
8・・・中央接線と転移後ベースラインの交点を通る平行線
9・・・平行線7と平行線8を2等分する平行線
本発明の重合体環化物は、スチレン誘導体および共役ジエン誘導体を構造単位として含有する共重合体(A)が、環化されてなる重合体環化物である。共重合体(A)は、スチレン誘導体および共役ジエン誘導体を含むモノマーを共重合して得られる。
本発明の重合体環化物は、スチレン誘導体および共役ジエン誘導体と共重合可能な他のモノマーを構成成分として含有していてもよい。共重合可能なモノマーはビニルモノマーであれば特に制限はなく、具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、ノルボルネン等のオレフィン類;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;極性基を有するスチレン誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用するスチレン誘導体および共役ジエン誘導体を含有する重合体の数平均分子量は特に限定されないが、得られる重合体環化物の力学的物性や加工性の観点から、約1万〜100万g/モルが好ましい。数平均分子量が小さすぎると機械的強度が不足し、大きすぎると成形が困難になる。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量を意味する。
本発明の重合体環化物の環化率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。環化率が低いと得られる重合体環化物の耐熱性が低下する。
(a) オレフィン性二重結合への水素添加
本発明の重合体環化物は、空気中の酸素による劣化防止のため、好ましくは芳香族以外のオレフィン性二重結合が共重合体(A)中の共役ジエン誘導体単位に対し10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。本発明の重合体環化物は、その1H−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)における4〜6ppmのプロトンの積分値と全プロトンの積分値との比率(4〜6ppmのプロトンの積分値/全プロトンの積分値)が好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.01以下である。上記比率が大きいと、オレフィン二重結合の量が多くなり劣化しやすい傾向がある。
本発明の重合体環化物は、上記のオレフィン性二重結合だけでなく、スチレン誘導体由来の芳香環にも水素添加されていてよい。芳香環が水素添加されることにより、ガラス転移温度がさらに上昇し耐熱性が向上する。芳香環の水素添加率は、1H−NMRスペクトルにおける水素添加前の芳香族プロトンの積分値を100%としたときの芳香族プロトンの減少率に基づき、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、50%以上が最も好ましい。スチレン誘導体由来の芳香環が水素添加されているかは、1H−NMRおよび赤外分光分析測定により調べることができる。
芳香環水素添加率(%)=[(B−A)/B]×100・・・(1)
A=水素添加後の6〜8ppmのプロトンの積分値/内部標準物質のプロトンの積分値
B=水素添加前の6〜8ppmのプロトンの積分値/内部標準物質のプロトンの積分値
本発明の重合体環化物は、環化反応前に比べTgが著しく上昇する。Tgの上昇は共重合体(A)中の隣接する共役ジエン誘導体ユニット同士の環化反応だけでなく、隣接するスチレン誘導体ユニットと共役ジエン誘導体ユニットの環化反応が起きていること、さらには芳香環が水素添加、好ましくは10%以上水素添加されていることによる。
本発明の重合体環化物は、特に光学材料に使用する場合は全光線透過率が高い方が好ましい。重合体環化物の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
本発明の重合体環化物は、寸法安定性の観点から吸水率が低い方が好ましい。重合体環化物の吸水率は、60℃、90%RH雰囲気下に置いたときの飽和吸水率として0.3重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましく、0.05重量%以下が最も好ましい。
本発明の重合体環化物は、比重が大きいと光学材料等の材料に適用する場合に重量が嵩み、その適用範囲が狭くなる。したがって、重合体環化物の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下がより好ましい。
本発明の重合体環化物の屈折率は、光学材料として使用する場合、1.50以上であるのが好ましく、1.52以上であるのがより好ましい。屈折率が大きいとレンズ等の用途に用いた場合に成形体を薄くすることができる。
本発明の重合体環化物は、スチレン誘導体の含量を制御することにより、Tg以上の温度における光弾性係数を制御できる。Tg以上の温度における光弾性係数が大きいほど、得られる成形品の光学歪みが大きくなることが知られている。また、スチレン誘導体の含量を適切に制御することにより、ポリメタクリル酸メチルと同程度の小さい光弾性係数にすることも可能である。さらに、位相差フィルム用途では、Tg以上の温度における光弾性係数を制御した重合体環化物を用いることにより、生産性のよいフィルムの厚さや延伸倍率を設定することができる。好ましいTg以上の温度、たとえばTg+20℃における光弾性係数は、用途により一概に規定できないが、−2.0×10−10〜3.0×10−10cm2/dynであることが好ましく、−6.0×10−11〜5.0×10−11cm2/dynがより好ましい。
(1)重合反応
スチレン誘導体および共役ジエン誘導体を構造単位として含有する共重合体(A)は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等の公知の方法により得ることができる。工業的に容易に実施できるという観点から、特にラジカル重合法またはアニオン重合法が好ましい。
環化反応は、触媒の種類、触媒量、反応温度、反応圧力、反応時間等により制御することが可能である。本発明の重合体環化物は、好ましくはスチレン誘導体および共役ジエン誘導体の種類、それらの構成比率等により、予め触媒の種類、触媒量、反応温度、反応圧力、反応時間等を適宜選択し、重合体のTgが105℃〜200℃となる条件で行う。
本発明に用いる環化反応は、特許第3170937号等に記載の公知の方法により行うことができる。具体的には、例えば不活性有機溶媒中または共重合体(樹脂)の溶融状態において、環化触媒を添加または接触させることにより行う。不活性有機溶媒は、樹脂が溶解し、かつ環化触媒に不活性な有機溶媒であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を用いることができる。反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等が好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の製造方法は、環化触媒として酸性化合物を用いることができる。好ましい酸性化合物としてはハメットの酸度関数(H0)が−11以下のブレンステッド酸、もしくは下記一般式[VIII]:
MXnRm−n [VIII]
(一般式[VIII]中、MはB、Al、TiまたはFeを示し、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシル基またはフェノキシ基を示し、mはMの原子価と等しい数を示し、0≦n<mである。)
で表されるルイス酸が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。ハメットの酸度関数(H0)が−11以下のブレンステッド酸の具体例としては、硫酸(H0=−11.93)、ClSO3H(H0=−13.8)、CF3SO3H(H0=−14.1)、FSO3H(H0=−15.07)等の液体状化合物、ナフィオン(H0=−12)、硫酸化ジルコニア(H0=−16.1)等の固体状化合物等が挙げられる。なお、Canadian Journal Chemistry, Vol.61, 2225-2243, 1983には多種の酸のハメットの酸度関数(H0)の参考文献の一覧が記載されており、それらの参考文献に記載の酸を本発明に用いる酸性化合物として挙げることができる。
本発明の重合体環化物は、耐熱性の向上、空気中の酸素による劣化防止等の目的のために水素添加されていてもよい。水素添加は、オレフィン性二重結合の90%以上、またはスチレン誘導体由来の芳香環の10%以上が水素添加されているのが好ましく、オレフィン性二重結合の90%以上が水素添加され、かつ芳香族プロトンの減少率に基づき、スチレン誘導体由来の芳香環の10%以上が水素添加されているのがより好ましく、芳香環の30%以上が水素添加されているのが特に好ましい。
本発明の重合体環化物は、種々の光学材料に使用可能であり、その範囲は特に限定されないが、耐熱性に優れ、低吸水性および高透明性が要求される光学材料に好適である。光学材料としては、例えばレンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ、銀塩カメラ用レンズ、デジタル電子カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、プロジェクター用レンズ、複写機用レンズ、携帯電話用カメラレンズ、メガネ用レンズ、コンタクトレンズ、青色発光ダイオードを使用するデジタル光ディスク装置用非球面ピックアップレンズ、ロッドレンズ、ロッドレンズアレー、マイクロレンズ、マイクロレンズアレー、比較的高温の熱環境下で使用する上記の各種レンズ、各種レンズアレー、ステップインデックス型、グラジエントインデックス型、シングルモード型、マルチコア型、偏波面保存型、側面発光型等の光ファイバー、光ファイバーコネクタ、光ファイバー用接着剤、デジタル光ディスク(コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルディスク、ビデオディスク、コンピュータディスク、青色発光ダイオード等)等の各種ディスク基板、液晶用偏光フィルム、バックライト用またはフロントライト用液晶用導光板、液晶用光拡散板、異なる屈折率を有する微粒子を分散させた液晶用光拡散板、液晶用ガラス基板代替フィルム、位相差フィルム、液晶用位相差板、携帯電話の液晶用導板、有機エレクトロルミネッセンス用位相差板、液晶用カラーフィルター、フラットパネルディスプレー用反射防止フィルム、タッチパネル用基板、透明導電性フィルム、反射防止フィルム、防げんフィルム、電子ペーパー用基板、有機エレクトロルミネッセンス用基板、プラズマディスプレー用前面保護板、プラズマディスプレー用電磁波防止板、フィールドエミッションディスプレー用前面保護板、圧電素子を使用し特定部位の光を前面拡散させる導光板、偏光子、検光子等を構成するプリズム、回折格子、内視鏡、高エネルギーレーザーを導波する内視鏡、ダハミラーに代表されるカメラ用ミラーもしくはハーフミラー、自動車用ヘッドライトレンズ、自動車用ヘッドライト用リフレクター、太陽電池用前面保護板、住宅用窓ガラス、移動体(自動車、電車、船舶、航空機、宇宙船、宇宙基地、人工衛星等)用窓ガラス、窓ガラス用反射防止フィルム、半導体露光時の防塵フィルム、電子写真感光材用保護フィルム、紫外光により書き込みもしくは書き換え可能な半導体(EPROM等)封止材、発光ダイオード封止材、紫外光発光ダイオード封止材、白色発光ダイオード封止材、SAWフィルター、光学的バンドパスフィルター、第二次高調波発生体、カー効果発生体、光スイッチ、光インターコネクション、光アイソレーター、光導波路、有機エレクトロルミネッセンスを使用した面発光体、半導体微粒子を分散させた面発光体、蛍光物質を溶解または分散させた蛍光体等が挙げられる。
スチレン−イソプレン共重合体(a1)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.17mlを添加し40℃に加温した。そこにスチレン36.8gとイソプレン123.2gからなる混合モノマー溶液を2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してスチレン−イソプレン共重合体(a1)153gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、126000であり、1H−NMRから求めたスチレン含有量は16モル%(23重量%)、ビニル化度は25%であった。
ビニル化度=((イ)/2)×100/[((イ)/2)+(ロ)]
スチレン−イソプレン共重合体(a2)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、およびsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.22mlを添加し40℃に加温した。そこにスチレン60.8gとイソプレン99.2gからなる混合モノマー溶液を2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してスチレン−イソプレン共重合体(a2)150gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、121000であり、1H−NMRから求めたスチレン含有量は29モル%(38重量%)、ビニル化度は27%であった。
スチレン−イソプレン共重合体(a3)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、およびsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.26mlを添加し、40℃に加温した。そこにスチレン75.2gとイソプレン84.8gからなる混合モノマー溶液を2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してスチレン−イソプレン共重合体(a3)152gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、117000であり、1H−NMRから求めたスチレン含有量は39モル%(47重量%)、ビニル化度は28%であった。
スチレン−イソプレン共重合体(a4)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、およびsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.20mlを添加し、40℃に加温した。そこにスチレン92.8gとイソプレン67.2gからなる混合モノマー溶液を2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してスチレン−イソプレン共重合体(a4)148gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、127000であり、1H−NMRから求めたスチレン含有量は48モル%(58重量%)、ビニル化度は28%であった。また、スチレン−イソプレン共重合体(a4)の1H−NMRスペクトルを図2に示す。
スチレン−イソプレン共重合体(a5)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、およびsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.20mlを添加し、40℃に加温した。そこにスチレン104gとイソプレン56.0gからなる混合モノマー溶液を2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してスチレン−イソプレン共重合体(a5)151gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、129000であり、1H−NMRから求めたスチレン含有量は55モル%(65重量%)、ビニル化度は28%であった。
スチレン−イソプレン共重合体(a6)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、およびsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.10mlを添加し、40℃に加温した。そこにスチレン120gとイソプレン40.0gからなる混合モノマー溶液を2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してスチレン−イソプレン共重合体(a6)154gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は、139000であり、1H−NMRから求めたスチレン含有量は66モル%(75重量%)、ビニル化度は30%であった。
イソプレン重合体(b1)
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン640g、テトラヒドロフラン0.48g、およびsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)1.5mlを添加し、40℃に加温した。そこにイソプレン160gを2.0ml/分の速度で逐次添加し、添加終了後さらに40℃で60分反応後、メタノール1mlを添加して重合を終了させた。得られた重合溶液をメタノール/アセトン(50/50vol)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥してイソプレン重合体(b1)150gを得た。数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は90000、ビニル化度は27%であった。
水素添加触媒の調製
トリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)をあらかじめシクロヘキサンに20重量%の濃度で溶解しておいた溶液を、窒素置換したガラス製ナスフラスコに窒素気流下で29.2ml添加し、0℃に冷却した。そこに、2−エチルヘキサン酸ニッケル(キシダ化学株式会社製)のトルエン溶液(ニッケル6%)を窒素気流下で7.4ml添加し、水素添加触媒を調製した。
水素添加触媒の調製
温度計、還流管および攪拌機を装着した300ml容三つ口フラスコを十分窒素置換した後、シクロヘキサン45.8mlを窒素気流下で加え、60℃に昇温した。さらに60℃で撹拌しながら、2−エチルヘキサン酸ニッケル(キシダ化学(株)製)のシクロヘキサン溶液(ニッケル6%)17.2mlおよび蒸留水0.51mlを添加した。そこにトリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム(株)製)をあらかじめシクロヘキサンに20重量%の濃度で溶解した溶液52.0mlを窒素気流下で15分かけてゆっくり滴下したところ、溶液の色が鮮やかな緑から黒へと変化した。得られた溶液を室温で1時間撹拌して、水素添加触媒を調製した。
一般式[I]〜[IV]で表される、スチレン誘導体と共役ジエン誘導体とによる環化構造が形成されていることを確認するため、構造の同定が容易な下記構造式を有するモデル化合物[M1](スチレン1分子とイソプレン1分子が結合した化合物)を用いて環化反応を行った。
J.Am.Chem.Soc.,Vol.119,No45,1997,p.10947−)に記載の方法に基づきモデル化合物[M1]を合成した。モデル化合物[M1]の1H−NMRスペクトルを図5に示す。
後述する実施例1のスチレン−イソプレン共重合体として、上記(1)で得られたスチレン−イソプレンモデル化合物[M1]を用いた以外、実施例1と同様にして下記構造式を有するモデル環化物[M2]を得た。モデル環化物[M2]の1H−NMRスペクトルを図6に示す。1H−NMRスペクトルおよびHH−COSY法による二次元NMRスペクトルからモデル環化物[M2]の構造が下記構造式で表されることを確認した。
分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めた数平均分子量ある。ここでは、GPC装置として東ソー株式会社製、HLC−8020(品番)、カラムとして東ソー株式会社製、TSKgel GMH−Mを2本とG2000H1本を直列に繋いだものを用いた。
1H−NMRスペクトルからスチレン−イソプレン共重合体のオレフィン性二重結合プロトンの積分値/全プロトンの積分値の割合を基準としたときの、重合体環化物の1H−NMRスペクトルから求めたオレフィン性二重結合プロトンの積分値/全プロトンの積分値の割合の減少率(%)を環化率とした。
ここでは重水素化クロロホルムを溶媒とし、テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとして、日本電子株式会社製、JNM−LA−400(品番)を用いて1H−NMRスペクトルを得た。測定は室温で実施した。
十分に乾燥し、溶媒を除去したサンプルを用いて示差走査熱量測定法(DSC)により測定した。サンプルを窒素100ml/分の気流下、25℃から10℃/分で200℃まで昇温し、DSCカーブを得る。次に、図1に示すDSCカーブの中央接線4と転移前のベースライン5の交点を通り温度軸2に対して平行な平行線7と、中央接線4と転移後のベースライン6の交点を通り温度軸2に対して平行な平行線8を引く。本明細書では、この2本の平行線7、8を2等分する平行線9とDSCカーブの交点における温度3をTgとした。ここでは、測定装置としてメトラートレド社製、DSC30(品番)を用いた。
村上色彩研究所製、HR−100(品番)を用いて測定した。
吸水率
プレス成形した長さ140mm、幅60mm、厚さ0.8mmの板を60℃、90%RH雰囲気下に10日間置き、初期重量からの増加した重量の割合を吸水率とした。
吸水率(%)=重量増加分×100/初期重量
ATAGO社製、RX−2000(品番)により25℃で測定した。
0〜3ppm/6〜8ppm、0〜1ppm/6〜8ppmの積分値の比
1H−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)の0〜3ppmのプロトンの積分値と6〜8ppmのプロトンの積分値の比(0〜3ppmのプロトンの積分値/6〜8ppmのプロトンの積分値)および0〜1ppmのプロトンの積分値と6〜8ppmのプロトンの積分値の比(0〜1ppmのプロトンの積分値/6〜8ppmのプロトンの積分値)から求めた。
厚さ200μmのプレスフィルムをTg−20℃で一晩アニールした後、Tg+20℃で長軸方向に引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーターM220(日本分光(株)製)で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
1H−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)の0〜1ppmのプロトンの積分値と0〜10ppmのプロトンの積分値の比(0〜1ppmのプロトンの積分値/0〜10ppmのプロトンの積分値)および4〜6ppmのプロトンの積分値と0〜10ppmのプロトンの積分値の比(4〜6ppmのプロトンの積分値/0〜10ppmのプロトンの積分値)から求めた。
日本電子(株)製、JIR−5500(品番)を用い、実施例でプレス成形により作製した重合体環化物の板を、ダイヤモンドのプリズムを使用して入射角45度のATR法、1回反射により測定し、吸収を縦軸としてスペクトルを得た。得られたIR吸収スペクトルの1450cm−1と1375cm−1の強度比(1375cm−1の強度/1450cm−1の強度)および、1450cm−1と890cm−1の強度比(890cm−1の強度/1450cm−1の強度)を算出した。強度は、それぞれの吸収ピークの低波数側および高波数側の谷部を結んでベースラインとし、吸収スペクトルの最大点からベースラインを2等分するように線を引き、ベースラインまでの高さを強度とした。ここで、890cm−1、1375cm−1および1450cm−1のそれぞれの吸収スペクトルは、±2cm−1程度の範囲で、ピークに最も近いスペクトルの最大点を吸収強度として採用した。
参考例1で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a1)50gをガラス製コック付フラスコに入れ、十分窒素置換した後、脱水したシクロヘキサン1000gを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した。さらに25℃で撹拌しながら、触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)を窒素気流下で0.5g添加し、30分撹拌した。次いで、撹拌しながら炭酸ナトリウム水溶液(1重量%)100gを添加し、反応を終了した。炭酸ナトリウム水溶液層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(A1)48gを得た。得られた重合体環化物(A1)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A1)の評価結果を表1に示す。
実施例1のスチレン−イソプレン共重合体として参考例2で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a2)を用いた以外、実施例1と同様にして重合体環化物(A2)を47g得た。得られた重合体環化物(A2)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A2)の評価結果を表1に示す。
実施例1のスチレン−イソプレン共重合体として参考例3で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a3)を用いた以外、実施例1と同様にして重合体環化物(A3)を49g得た。得られた重合体環化物(A3)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A3)の評価結果を表1に示す。
実施例3の反応温度を25℃から70℃に変更した以外、実施例3と同様にして重合体環化物(A4)を48g得た。得られた重合体環化物(A4)を230℃でプレス成形し、厚さ1mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A4)の評価結果を表1に示す。
実施例1のスチレン−イソプレン共重合体として参考例4で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a4)を用いた以外、実施例1と同様にして重合体環化物(A5)を49g得た。得られた重合体環化物(A5)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A5)の評価結果を表1に示す。また、重合体環化物(A5)の1H−NMRスペクトルを図3に示す。
実施例1のスチレン−イソプレン共重合体として参考例5で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a5)を用いた以外、実施例1と同様にして重合体環化物(A6)を49g得た。得られた重合体環化物(A6)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A6)の評価結果を表1に示す。
実施例1のスチレン−イソプレン共重合体として参考例6で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a6)を用いた以外、実施例1と同様にして重合体環化物(A7)を49g得た。得られた重合体環化物(A7)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A7)の評価結果を表1に示す。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン270g、実施例1で得られた重合体環化物(A1)30gを加え撹拌することにより、重合体環化物(A1)を完全に溶解した。耐圧容器内を十分に水素で置換し、室温下、1000rpmで撹拌しながら、参考例9で調製した水素添加触媒を7.9ml添加した。ただちに、水素で10kgf/cm2まで加圧し、50℃まで昇温した。50℃に昇温後、さらに水素添加触媒を7.9ml添加し、70℃まで昇温した。70℃で5時間反応させた後、常圧に戻した。蒸留水100gにクエン酸8.1gと30%過酸化水素水溶液4.8gを添加した水溶液を耐圧容器に添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒5Lに再沈後、十分に乾燥して水素添加物した重合体環化物(H1)28gを得た。水素添加物した重合体環化物(H1)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H1)の評価結果を表1に示す。
表1における実施例の水素添加率は、1H−NMRスペクトルから原料樹脂であるスチレン−イソプレン共重合体のオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppm)の積分値/ベンゼン環プロトン(6〜8ppm)の積分値の割合を基準としたときの、水素添加物した重合体環化物の1H−NMRスペクトルから求めたオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppm)の積分値/ベンゼン環プロトン(6〜8ppm)の積分値の割合の減少率(%)により水素添加率を求めた。
実施例8の重合体環化物の替わりに実施例5で得られた重合体環化物(A5)を用いた以外、実施例8と同様にして水素添加物した重合体環化物(H2)を27g得た。水素添加物した重合体環化物(H2)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H2)の評価結果を表1に示す。また、重合体環化物(H2)の1H−NMRスペクトルを図4に示す。
実施例8の重合体環化物の替わりに実施例7で得られた重合体環化物(A7)を用いた以外、実施例8と同様にして水素添加物した重合体環化物(H3)を27g得た。水素添加物した重合体環化物の水素添加物(H3)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H3)の評価結果を表1に示す。
実施例1のスチレン−イソプレン共重合体の替わりに、参考例7で得られたイソプレン重合体(b1)を用いた以外、実施例1と同様にして重合体環化物(B1)を47g得た。得られた重合体環化物(B1)を200℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本比較例により得られた重合体環化物(B1)の評価結果を表1に示す。
参考例3で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a3)を本比較例とした。スチレン−イソプレン共重合体(a3)はTgが室温以下でゴム状であるため、形状を保持したプレス成形品ができなかった。
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMAと表記する)としてパラペットGH−S(株式会社クラレ製)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本比較例により得られたPMMAの評価結果を表1に示す。
ポリスチレン(以下PStと表記する)としてトーヨースチロールG−32(東洋スチレン株式会社製)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本比較例により得られたPStの評価結果を表1に示す。
(1) 実施例1〜10から、いずれの重合体環化物もTgが105℃以上であって、吸水率および比重が低く、全光線透過率が高いことがわかる。
(2) 実施例1〜10と比較例1からスチレン−イソプレン共重合体の方がイソプレン重合体よりも、Tgが向上していることがわかる。
(3) 実施例3および4から、反応温度を変えることによりTgをコントロールできることがわかる。
(4) 実施例1〜3および実施例5〜7から、同じ反応条件で環化した場合、スチレン含有量によってTgが変化することがわかる。上記実施例の範囲では特にスチレン含量29〜66モル%で最もTgが高くなり易いことがわかる。
(5) 実施例6、9および10と比較例1、3および4から本発明の重合体環化物はスチレン誘導体の含量を適切に制御することにより、光弾性係数を制御することが可能であることがわかる。特に実施例6からポリメタクリル酸メチルレベルの小さい光弾性係数の重合体環化物を得ることが可能であることがわかる。
参考例4で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a4)50gをガラス製コック付フラスコに入れ、十分窒素置換した後、脱水したトルエン1000gを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した。さらに65℃で撹拌しながら、触媒としてBF3・酢酸錯体(和光純薬工業(株)製)を窒素気流下で0.5g添加し、30分撹拌した。次いで、撹拌しながら炭酸ナトリウム水溶液(1重量%)100gを添加し、反応を終了した。炭酸ナトリウム水溶液層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたトルエン層をメタノールの混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(A8)48gを得た。得られた重合体環化物(A8)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A8)の評価結果を表2に示す。
参考例4で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a4)50gをガラス製コック付フラスコに入れ、十分窒素置換した後、脱水したトルエン1000gを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した。さらに65℃で撹拌しながら、助触媒としてベンジルクロライド(和光純薬工業(株)製)を0.5g、さらに触媒としてトルエンで2Mに調整したAl2Cl3Et3(東ソー・ファインケム株式会社製)を窒素気流下で5ml添加し、30分撹拌した。次いで、撹拌しながら炭酸ナトリウム水溶液(1重量%)100gを添加し、反応を終了した。炭酸ナトリウム水溶液層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたトルエン層をメタノールの混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(A9)46gを得た。得られた重合体環化物(A9)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A9)の評価結果を表2に示す。
実施例8の重合体環化物の替わりに実施例11で得られた重合体環化物(A8)を用いた以外、実施例8と同様にして水素添加した重合体環化物(H4)28gを得た。水素添加した重合体環化物の水素添加物(H4)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H4)の評価結果を表2に示す。
実施例8の重合体環化物の替わりに実施例12で得られた重合体環化物(A9)を用いた以外、実施例8と同様にして水素添加した重合体環化物(H5)を28g得た。水素添加した重合体環化物(H5)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H5)の評価結果を表2に示す。
参考例4で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a4)50gをガラス製コック付フラスコに入れ、十分窒素置換した後、脱水したシクロヘキサン1000gを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した。さらに60℃で撹拌しながら、触媒としてTiCl4(和光純薬工業(株)製)を窒素気流下で0.5g添加し、30分撹拌した。次いで、撹拌しながら炭酸ナトリウム水溶液(1重量%)100gを添加し、反応を終了した。炭酸ナトリウム水溶液層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたトルエン層をメタノールの混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(A10)48gを得た。得られた重合体環化物(A10)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A10)の評価結果を表2に示す。
参考例4で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a4)50gをガラス製コック付フラスコに入れ、十分窒素置換した後、脱水したトルエン1000gを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した。さらに60℃で撹拌しながら、触媒としてFeCl3(アルドリッチ社製)を窒素気流下で0.5g添加し、30分撹拌した。次いで、撹拌しながら炭酸ナトリウム水溶液(1重量%)100gを添加し、反応を終了した。炭酸ナトリウム水溶液層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたトルエン層をメタノールの混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(A11)47gを得た。得られた重合体環化物(A11)を220℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(A11)の評価結果を表2に示す。
参考例4で得られたスチレン−イソプレン共重合体(a4)50gをガラス製コック付フラスコに入れ、十分窒素置換した後、脱水したキシレン(和光純薬工業(株)製)450gを窒素気流下で加え、撹拌して均一に溶解した。さらに65℃で撹拌しながら、触媒としてp−トルエンスルホン酸一水和物(H0<11:濃度100%の値は明記されていないが、Journal of the American Chemical Society, 88, 1177-1183, 1066の記載から明らかである)(和光純薬工業(株)製)を窒素気流下で2.0g添加し、240分撹拌した。次いで、撹拌しながら炭酸ナトリウム水溶液(1重量%)100gを添加し、反応を終了した。炭酸ナトリウム水溶液層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたキシレン層をメタノール10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(B2)48gを得た。得られた重合体環化物(B2)はTgが低く、良好なプレス成形体が得られなかった。比較例により得られた重合体環化物(B2)の評価結果を表2に示す。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン320g、実施例5で得られた水素未添加の環化物(A5)20gを加え撹拌することにより、環化物(A5)を完全に溶解した後、耐圧容器内を十分に水素で置換し、100℃まで昇温した。撹拌しながら、参考例9で調製した水素添加触媒90mlを添加し、直ちに水素で10kgf/cm2まで加圧した。100℃で5時間反応させた後、常圧に戻し、水素を窒素で置換した。蒸留水150gにクエン酸37gと30%過酸化水素水溶液21gを添加した水溶液を耐圧容器に添加し、50℃で2時間撹拌した。室温で30分静置し、シクロヘキサン層と水層を分離し、水層のみを除去し、さらに水層が中性になるまでシクロヘキサン層を蒸留水で分液洗浄し、触媒を除去した。得られたシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒5Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(H6)19gを得た。得られた重合体環化物(H6)を180℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H6)の評価結果を表3に示す。
表3における実施例の芳香環水素添加率は、1H−NMRスペクトルから水素添加反応前の6〜8ppmの積分値/テトラメチルシランの積分値を基準としたときの、重合体環化物の1H−NMRスペクトルから求めた6〜8ppmの積分値/テトラメチルシランの積分値の減少率(%)を芳香環水添率とした。ここではテトラメチルシランを0.5重量%含有した重水素化クロロホルムを溶媒とし、サンプルが5重量%になるように溶解した。テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとして、日本電子(株)製、JNM−LA−400(品番)を用いて1H−NMRスペクトルを得た。測定は室温で実施した。
表3における実施例のオレフィン性二重結合の残存率は、1H−NMRスペクトルから求めたスチレン−イソプレン共重合体のオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppmのプロトンの積分値)/全プロトンの積分値の割合を基準としたときの、重合体環化物の1H−NMRスペクトルから求めたオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppmのプロトンの積分値)/全プロトンの積分値の割合の比率(モル%)をオレフィン性二重結合の残存率とした。
オレフィン性二重結合の残存率(モル%)=(A/B)×100
A:重合体環化物のオレフィン性二重結合のプロトン(4〜6ppmのプロトンの積分値)/全プロトンの積分値
B:スチレン/イソプレン共重合体(a1)のオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppmのプロトンの積分値)/全プロトンの積分値
ここでは重水素化クロロホルムを溶媒とし、テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとして、日本電子(株)製、JNM―LA―400(品番)を用いて1H−NMRスペクトルを得た。測定は室温で実施した。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン320g、実施例5で得られた水素未添加の環化物(A5)20gを加え撹拌することにより、環化物(A5)を完全に溶解した後、耐圧容器内を十分に水素で置換し、100℃まで昇温した。撹拌しながら、参考例9で調製した水素添加触媒90mlを添加し、直ちに水素で10kgf/cm2まで加圧した。100℃で5時間反応させた後、さらに水素添加触媒90mlを添加し、直ちに水素で10kgf/cm2まで加圧し10時間反応させた。その後、常圧に戻し、水素を窒素で置換した。蒸留水150gにクエン酸74gと30%過酸化水素水溶液42gを添加した水溶液を耐圧容器に添加し、50℃で2時間撹拌した。室温で30分静置し、シクロヘキサン層と水層を分離し、水層のみを抜き取り、さらに水層が中性になるまでシクロヘキサン層を蒸留水で分液洗浄し、触媒を除去した。得られたシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(H7)19gを得た。得られた重合体環化物(H7)を180℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H7)の評価結果を表3に示す。また、重合体環化物(H7)の1H−NMRスペクトルを図7に、IRスペクトルを図8に示す。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器にシクロヘキサン320g、実施例5で得られた水素未添加の環化物(A5)20gを加え撹拌することにより、環化物(A5)を完全に溶解した後、ジトリフェニルホスフィンルテニウムジクロリド0.02gを添加した。耐圧容器内を十分に水素で置換し、水素圧を10kgf/cm2まで加圧し、140℃まで昇温した。直ちに水素で20kgf/cm2まで加圧した。140℃で6時間反応させた後、常温に戻し、水素を窒素で置換した。得られた反応液をメタノール50mlで2回洗浄し、得られたシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒10Lに再沈後、十分に乾燥して重合体環化物(H8)18gを得た。得られた重合体環化物(H8)を180℃でプレス成形し、厚さ0.8mmの板を作製した。本実施例により得られた重合体環化物(H8)の評価結果を表3に示す。
Claims (17)
- スチレン誘導体単位および共役ジエン誘導体単位を含有する共重合体(A)が環化されてなり、前記スチレン誘導体単位および共役ジエン誘導体単位の少なくとも一部が水素添加されていてもよい重合体環化物であって、ガラス転移温度が105℃〜200℃である、前記重合体環化物。
- スチレン誘導体に由来する芳香環が、1H−NMRスペクトルにおける水素添加前の芳香族プロトンの積分値を100%としたときの芳香族プロトンの減少率に基づき、10%以上水素添加されている、請求項1に記載の重合体環化物。
- 環化する前の共重合体(A)中のスチレン誘導体と共役ジエン誘導体のモル含有量比(スチレン誘導体/共役ジエン誘導体)が30/70〜80/20である、請求項1または2に記載の重合体環化物。
- 環化率が70%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の重合体環化物。
- スチレン誘導体がスチレン、α−メチルスチレンおよび4−メチルスチレンの少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の重合体環化物。
- 共役ジエン誘導体がブタジエンおよびイソプレンの少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の重合体環化物。
- 数平均分子量が1万〜100万g/モルである、請求項1〜6のいずれかに記載の重合体環化物。
- 環化率が80%以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の重合体環化物。
- オレフィン性二重結合が共重合体(A)中の共役ジエン誘導体に対し10モル%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の重合体環化物。
- スチレン誘導体と共役ジエン誘導体とにより形成される環化構造を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の重合体環化物。
- 1H−NMRスペクトルの0〜3ppmのプロトンの積分値と6〜8ppmのプロトンの積分値の比(0〜3ppmのプロトンの積分値/6〜8ppmのプロトンの積分値)が0.7〜20である、請求項1〜11のいずれかに記載の重合体環化物。
- 1H−NMRスペクトルの0〜1ppmのプロトンの積分値と6〜8ppmのプロトンの積分値の比(0〜1ppmのプロトンの積分値/6〜8ppmのプロトンの積分値)が0.1〜5.0である、請求項1〜12のいずれかに記載の重合体環化物。
- 1H−NMRスペクトルの0〜1ppmのプロトンの積分値と全プロトンの積分値の比(0〜1ppmのプロトンの積分値/全プロトンの積分値)が0.05〜0.5である、請求項1〜14のいずれかに記載の重合体環化物。
- 赤外分光分析測定で得られる赤外吸収スペクトルの1450cm−1と1375cm−1の強度比(1375cm−1の強度/1450cm−1の強度)が0.2〜0.8であって、かつ1450cm−1と890cm−1の強度比(890cm−1の強度/1450cm−1の強度)が0.6以下である、請求項1〜15のいずれかに記載の重合体環化物。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の重合体環化物を構成成分とする光学材料。
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