JP2021080353A - 複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー - Google Patents

複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー Download PDF

Info

Publication number
JP2021080353A
JP2021080353A JP2019208353A JP2019208353A JP2021080353A JP 2021080353 A JP2021080353 A JP 2021080353A JP 2019208353 A JP2019208353 A JP 2019208353A JP 2019208353 A JP2019208353 A JP 2019208353A JP 2021080353 A JP2021080353 A JP 2021080353A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
chain
bottle brush
group
complex
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019208353A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7374466B2 (ja
Inventor
祥弘 山内
Yoshihiro Yamauchi
祥弘 山内
貞樹 佐光
Sadaki Sako
貞樹 佐光
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute for Materials Science
Original Assignee
National Institute for Materials Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute for Materials Science filed Critical National Institute for Materials Science
Priority to JP2019208353A priority Critical patent/JP7374466B2/ja
Publication of JP2021080353A publication Critical patent/JP2021080353A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7374466B2 publication Critical patent/JP7374466B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)

Abstract

【課題】優れた靭性を有する複合体を提供する。【解決手段】(メタ)アクリルポリマーである第1のポリマーを含む母材と、上記母材に分散されたボトルブラシポリマーとを含み、上記ボトルブラシポリマーは、主鎖と、上記主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、上記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下の第2のポリマーに基づくポリマー鎖である、複合体。【選択図】図8

Description

本発明は、複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマーに関する。
樹脂部材の靭性を向上させるため、樹脂中に、ゴム相(例えばゴム粒子)を分散させた部材が知られている。
このような部材として、特許文献1には、「透明熱可塑性樹脂中に、ガラス転移温度が0℃以下のゴム相を有するコア−シェル型多層構造粒子が分散された透明熱可塑性樹脂組成物であって、それぞれ単独で測定したときの23℃におけるゴム相の屈折率(nR23)と樹脂相の屈折率(nP23)が下記の式(I)の関係にあり、かつそれぞれ単独で測定したときの23〜70℃におけるゴム相の屈折率の温度変化量(dnR/dT)と樹脂相の屈折率の温度変化量(dnP/dT)とが下記の式(II)の関係を有することを特徴とする透明熱可塑性樹脂組成物。
0.01>nR23−nP23>0(I)
0.00025>|dnR/dT−dnP/dT|(II)」が記載されている。
特開平9−48922号公報
本発明者らは、特許文献1のような部材の靭性には改善の余地があることを知見している。そこで、本発明は優れた靭性を有する複合体を提供することを課題とする。
また、本発明は、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマーを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] (メタ)アクリルポリマーである第1のポリマーを含む母材と、上記母材に分散されたボトルブラシポリマーとを含み、上記ボトルブラシポリマーは、主鎖と、上記主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、上記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下の第2のポリマーに基づくポリマー鎖である、複合体。
[2] 上記第2のポリマーが(メタ)アクリルポリマーである、[1]に記載の複合体。
[3] 上記第1のポリマーと、上記第2のポリマーとの屈折率の差が、0.10以下である、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]
上記主鎖が、後述する式1で表される繰り返し単位を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の複合体。
[5] 上記P、及び、Pが上記ポリマー鎖である、[3]に記載の複合体。
[6] 上記第1のポリマーの含有量と上記ボトルブラシポリマーの含有量の合計に対する、上記ボトルブラシポリマーの含有量の含有質量比が0.05〜0.20である、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体。
[7] 上記ポリマー鎖が、後述する式2で表される繰り返し単位を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の複合体。
[8] 上記ポリマー鎖が、後述する式3で表される、[1]〜[7]のいずれかに記載の複合体。
[9] 上記ボトルブラシポリマーの長さが、10〜500nmである、[1]〜[8]のいずれかに記載の複合体。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の複合体を含む成形体。
[11] [1]〜[9]のいずれかに記載の複合体を含む車両用部材。
[12] 主鎖と、上記主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、上記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下のポリマーに基づくポリマー鎖であり、上記主鎖が、後述する式1で表される繰り返し単位を有する、ボトルブラシポリマー。
[13] 上記ポリマー鎖が、後述する式2で表される繰り返し単位を有する、[12]に記載のボトルブラシポリマー。
[14] 上記ポリマー鎖が、後述する式3で表される、[12]又は[13]に記載のボトルブラシポリマー。
[15] 長さが、10〜500nmである、[12]〜[14]のいずれかに記載のボトルブラシポリマー。
本発明によれば、優れた靭性を有する複合体を提供できる。
また、本発明は、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマーも提供できる。
ボトルブラシポリマー1のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定結果である。 ボトルブラシポリマー2のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定結果である。 ボトルブラシポリマー3のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定結果である。 ボトルブラシポリマー3の原子間力顕微鏡(AFM)の測定結果である。 合成した3種類のボトルブラシポリマーをt−butyl methacrylateに分散させ、それぞれのボトルブラシポリマーの分散性(溶解性)を動的光散乱法(DLS)で評価した結果である。 複合体1−1のAFMによる表面観察結果である。 比較例の複合体の衝突試験の結果である。 複合体1−1の衝突試験の結果である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリル、及び/又は、アクリルを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル、及び/又は、メタクリロイルを意味する。
本明細書において「ボトルブラシポリマー」とは、ポリマーからなる主鎖と、上記主鎖に一方の末端が結合し、他方の末端が主鎖から放射状に伸張されたポリマー鎖(側鎖)を有するポリマーを意味する。なかでも、表面グラフト重合(表面開始リビングラジカル重合)によって得られるグラフトポリマーが好ましい。
本明細書においてガラス転移温度とは、示差走査熱量測定により求められるガラス転移温度を意味し、具体的には、JIS K 7121:2012に準拠した方法により測定されるガラス転移温度を意味する。
また、「ガラス転移温度が20℃以下のポリマー」とは、そのホモポリマーについて、上記方法で測定した場合、ガラス転移温度が20℃以下となるポリマーを意味する。
[複合体]
本発明に係る複合体は、(メタ)アクリルポリマーである第1のポリマー(以下、「第1ポリマー」ともいう。)を含有する母材と、上記母材に分散されたボトルブラシポリマーとを含み、上記ボトルブラシポリマーは、主鎖と、上記主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、上記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下の第2のポリマー(以下、「第2ポリマー」ともいう。)に基づくポリマー鎖である。
上記複合体により本発明の解決しようとする課題が解決される機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測している。なお、以下の機序は推測であり、以下の機序以外の機序により本発明の課題が解決される場合であっても本発明の範囲に含まれる。
一般に、樹脂中にゴム相を分散させようとする場合、ゴム相同士が凝集して粗大化してしまう場合が多く、微細なゴム相を均一に分散させるのは難しかった。
樹脂中にゴム相を分散させた複合体の靭性を向上させるためには、分散されるゴム相が微小で均一であることが好ましいものの、樹脂とゴム相との微小な相分離構造を実現するのは困難だった。
例えば、ゴム粒子は一般的に乳化重合にて合成されることが多いが、このような方法で合成される粒子は、その凝集作用によって乾燥過程で容易に接着・融合してしまう。このため、粗大化しやすく、微細な粒子(例えば1個の分子レベルの粒子)を得るのは難しかった。また、乳化重合で合成される粒子は略球状であることが多く、分散性の向上の観点からは、必ずしも好ましいものではなかった。
このような粗大なゴム粒子を樹脂中に配合すると、粒子の形状、及び、大きさ等に起因して、複合体の靭性が不十分になる場合があった。
一方、本発明の実施形態に係る複合体は、主鎖と主鎖に結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖はガラス転移温度が20℃以下のポリマーに基づくポリマー鎖であるボトルブラシポリマーを含む。
後述するように、本複合体においては、ボトルブラシポリマーは母材中にて極めて優れた分散性(例えば、ボトルブラシポリマー1分子単位での分散性)を有し、かつ、室温でゴム状であるポリマー鎖を有するため、優れた靭性が得られたものと考えられる。
以下、本複合体における各成分について詳述する。
<ボトルブラシポリマー>
本複合体は、後述する所定のボトルブラシポリマーを含む。複合体中におけるボトルブラシポリマー(以下、「BBポリマー」ともいう。)の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、一般に、複合体中における、後述する第1ポリマーの含有量とBBポリマーの含有量の合計に対するBBポリマーの含有量の含有質量比(BBポリマー/(第1ポリマー+BBポリマー))が0.01〜0.50が好ましく、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、0.04〜0.20がより好ましく、0.05〜0.20が更に好ましい。
なお、複合体は、BBポリマーの1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。複合体が、2種以上のBBポリマーを含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
上記BBポリマーは、主鎖(主鎖はポリマーにより構成されている)と、主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、上記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下のポリマー(「第2ポリマー」)に基づくポリマー鎖である。第2ポリマーとしては特に制限さないが、(メタ)アクリルポリマー、ポリオルガノシロキサン、及び、ポリジエン等が挙げられる。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、ガラス転移温度が20℃以下のポリマーとしては、(メタ)アクリルポリマーが好ましい。
(メタ)アクリルポリマーとしては、特に制限されないが、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル(ホモポリマーのTg=−70℃)、アクリル酸n−ブチル(ホモポリマーのTg=−55℃)、アクリル酸エチル(ホモポリマーのTg=−24℃)、及び、アクリル酸メチル(ホモポリマーのTg=10℃)等が挙げられる。なお、「Tg」はガラス転移温度を意味する。
第2ポリマーの分子量としては特に制限されないが、一般に、数平均分子量(Mn)として100〜50000が好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)としては特に制限されないが、1.0〜3.0が好ましい。なお、Mwは重量平均分子量を意味する。
ポリマー鎖は、第2ポリマーの一方の末端が主鎖に結合して形成された部分構造であり、第2ポリマーは、以下の式2で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2021080353
式2中、Rは水素原子、又は、1価の基を表し、1価の基としては特に制限されないが、炭素数が1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Rとしてはより優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、水素原子、又は、メチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
は炭素数が1〜20個のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。ヘテロ原子としては特に制限されないが、酸素原子、窒素原子、及び、硫黄原子等が挙げられ、なかでも、酸素原子が好ましい。
の炭素数としては特に制限されないが、1〜10個がより好ましく、1〜8個が更に好ましい。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、Rとしては、炭素数が1〜20個のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜10個のアルキル基がより好ましく、炭素数が1〜8個のアルキル基が更に好ましい。
(ポリマー鎖の好適形態)
より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、ポリマー鎖としては、以下の式3で表されるポリマー鎖が好ましい。
Figure 2021080353
式3中、Rは水素原子、又は、1価の基を表す。1価の基としては、式2中におけるRの1価の基と同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。
式3中、Rとしては、水素原子、又は、メチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式3中、Rは炭素数が1〜20個のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は、式2中のRの炭化水素基と同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、Rとしては、炭素数1〜20個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8個のアルキル基が更に好ましい。
式3中、Lは単結合、又は、2価の基を表す。2価の基としては特に制限されないが、ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基が挙げられる。
ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(炭素数1〜10個が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数3〜10個が好ましい)、アルケニレン基(炭素数2〜10個が好ましい)、及び、これらの組み合わせ、並びに、上記と−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−O−、−S−、及び、−NR2−(R2は水素原子又は1価の有機基を表す)との組み合わせ等が挙げられる。
なかでも、Lとしては、より簡便にBBポリマーが得られる点で、以下の式で表される基が好ましい。
Figure 2021080353
上記式中、*は、式3における*と同義であり、主鎖に対する結合位置を表し、波線は、他方の結合位置を表す。
式3中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては特に制限されないが、塩素原子、又は、臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
また、式3中、nは2以上の整数を表し、特に制限されないが、5〜500が好ましい。
(主鎖)
BBポリマーの主鎖は、それ自体がポリマー(以下、「主鎖ポリマー」ともいう。)であり、一般的なグラフトポリマーの主鎖として使用されている公知のポリマーを広く使用できる。例えば、ポリマー鎖との反応性基を有する主鎖ポリマー等が挙げられる。
BBポリマーの主鎖は、単一の単量体からなる単一重合体(ホモポリマー)であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。主鎖に用いるポリマーの原料となる単量体には、ポリマー鎖との反応性基を有していない単量体が含まれていてもよい。
ポリマー鎖との反応性基は、ポリマー鎖の種類等に応じて、適宜、公知の反応性基を用いることができる。例えば、ポリマー鎖を原子移動ラジカル重合(ATRP)によって形成する場合、ブロモ基等のハロゲン基をポリマー鎖との反応性基として用いることができる。
主鎖ポリマーとしては、特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、反応性基を有するシクロオレフィンポリマーが好ましい。
シクロオレフィンポリマーとしては、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、及び、テトラシクロドデセン等の環状オレフィンを開環メタセシス重合や付加重合し、適宜水素化したものが挙げられる。また、シクロオレフィンコポリマーとしては、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、及び、テトラシクロドデセン等の環状オレフィンにエチレン、プロピレン、及び、ブテン等のオレフィンを付加共重合したものが挙げられる。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、主鎖は、以下の式1で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2021080353
式1中、P、及び、Pはそれぞれ独立に、上記ポリマー鎖、又は、上記ポリマー鎖とは異なる1価の基を表し、P、及び、Pからなる群より選択される少なくとも一方は上記ポリマー鎖である。
、及び、Pの1価の基としては特に制限されないが、*−L−Xで表される基が好ましい。なお、L、及び、Xは、式3中におけるL、及び、Xと同義であり、好適形態も同様である。
式1で表される繰り返し単位は、P、及び、Pのいずれもポリマー鎖であってもよい。すなわち、BBポリマーは、P、又は、Pのいずれか一方がポリマー鎖である繰り返し単位と、P、及び、Pのいずれもポリマー鎖である繰り返し単位の一方を有していてもよいし、両方を有していてもよい。
BBポリマー中におけるポリマー鎖の含有量としては、特に制限されないが、ボトルブラシポリマー中における、Pで表される基、及び、Pで表される基の合計モル数に対する、ポリマー鎖のモル数の含有モル比が0.5以上であることが好ましく、0.99以下であることが好ましく、0.90以下であることがより好ましい。
<母材>
本複合体は(メタ)アクリルポリマーである第1ポリマーを含む。母材中における第1ポリマーの含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する複合体が得られる点で、一般に母材の全質量に対して、1〜100質量%が好ましい。なお、母材は、第1ポリマーの1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。母材が、2種以上の第1ポリマーを含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
第1ポリマーの(メタ)アクリルポリマーとしては、特に制限されず、公知の(メタ)アクリルポリマーが使用できるが、得られる複合体が優れた透明性(可視光透過性)を有する点で、すでに説明した第2ポリマーとの屈折率の差が0.10以下であることが好ましく、0.05以下であることが好ましい。下限としては特に制限されず、0以上であればよい。
第1ポリマーとしては、例えば、以下の式4で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 2021080353
上記式4中、Rは、水素原子、又は、1価の基を表し、1価の基としては、式2におけるRと同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。上記式中、Rは、式2におけるRと同様の基が挙げられ、好適形態も同様である。
なかでも、より優れた透明性(可視光透過性)を有する点で、ポリマー鎖が式2で表される繰り返し単位を有する場合、Rの炭素数と、Rの炭素数とが同数であることが好ましい。
また、第1ポリマーは、上記以外にも、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、エポキシ基、及び、イソシアネート基等の硬化性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。第1ポリマーが硬化性基を有する場合、複合体中における第1ポリマーは分子間、及び/又は、分子内が架橋構造を形成していてもよい。
第1ポリマーのガラス転移温度としては、より優れた力学強度を有する複合体が得られる点で、20℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。
第1ポリマーの重合度としては特に制限されないが、一般に、10〜1,000が好ましい。また、第1ポリマーの分子量としては特に制限されないが、数平均分子量として1,000〜100,000が好ましい。
<複合体の製造方法≫
本複合体の製造方法としては特に制限されないが、より簡便に複合体が得られる点で、BBポリマーと、第1ポリマーを合成するための(メタ)アクリレートモノマーと、重合開始剤とを含有する組成物を調製すること(組成物調製工程)と、上記組成物にエネルギーを付与して(メタ)アクリレートモノマーを重合させ、BBポリマーと、第1ポリマーとを含む複合体を得る(重合工程)ことと、を含む製造方法が好ましい。
以下では、上記製造方法について、工程ごとに詳述する。
・組成物調製工程
組成物調製工程は、BBポリマーと、(メタ)アクリレートモノマーと、重合開始剤とを含有する組成物を調製する工程である。
調整の方法としては特に制限されず、例えば、(メタ)アクリレートモノマー中に、BBポリマーと、重合開始剤と、必要に応じて他の成分とを加えて、公知の方法を用いて攪拌する方法が挙げられる。
BBポリマーは購入して準備してもよいし、合成して準備してもよい。BBポリマーを合成する場合、その方法としては、特に制限されず、グラフトポリマーの製造方法として公知の方法が適用できる。なかでも、ポリマー鎖の導入量、及び、ポリマー鎖の重合度をより容易に制御できる観点で、主鎖を形成するポリマーに設けられた反応性基を開始点として、第2ポリマーの重合を行う方法(グラフトフロム法)が好ましい。
このような方法としては、主鎖ポリマーが有する反応性基の種類によって、適切な方法を用いることができる。主鎖を構成するポリマーが有する反応性基がハロゲン原子(ブロモ基等)である場合、原子移動ラジカル重合(ATRP)等のリビングラジカル重合により、ポリマー鎖を形成することが好ましい。
リビングラジカル重合により、ポリマー鎖を形成すると、より効率的にポリマー鎖の重合反応を開始することができ、ポリマー鎖の重合度の制御もより容易である。
リビングラジカル重合の方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、主鎖ポリマーとポリマー鎖を形成する単量体とを銅触媒の存在下で重合させることにより、ポリマー鎖を形成することができる。
主鎖ポリマーの重合方法としては、特に制限されず、公知の重合方法を用いることができる。主鎖を構成するポリマーがシクロオレフィンポリマーである場合、シクロオレフィンモノマーの開環によって重合される開環オレフィンメタセス重合(ROMP)を用いることが好ましい。上記方法によれば、主ポリマーの重合度等をより簡便に制御することができる。
ROMPに使用する触媒としては特に制限されず、第一世代Grubbs触媒、第二世代Grubbs触媒、第三世代Grubbs触媒、Hoveyda−Grubbs触媒、Schrock触媒、及び、Schrock−Hoveyda触媒等が使用できる。このような触媒としては、特開2016−5832号公報の0059−0061段落に記載の触媒等が挙げられる。
例えば、BBポリマーは以下の式で示した手順に従って合成することもできる。
Figure 2021080353
上記式中、L、X、R、及び、Rは式3中の対応する記号と同義であり、好適形態も同様である。また、m、n、及び、nはそれぞれ独立に2以上の整数を表す。上記式においては、主鎖の繰り返し単位1つが、反応性基であるハロゲン基2つ有し、その2つのハロゲン基を開始点とし、(メタ)アクリレートモノマーに基づき、ATRP重合によりポリマー鎖が重合されている。
なお、BBポリマーの製造方法は上記に制限されず、主鎖の繰り返し単位の1つが、2つのハロゲン基を有していても、いずれか一方のハロゲン基のみが開始点となってもよいし、いずれのハロゲン基も開始点とならなくてもよい。
すなわち、BBポリマーは、主鎖に対して所定のポリマー鎖が少なくとも1つ結合した繰り返し単位を有していればよく、反応性基を有してはいるが、ポリマー鎖を有しない繰り返し単位、及び/又は、反応性基を複数有していて、その一部のみがポリマー鎖の形成に寄与した繰り返し単位(すなわち、ポリマー鎖と、重合反応に寄与しなかった反応性基とを両方とも有する繰り返し単位)とを有していてもよい。
(メタ)アクリレートモノマーは、重合して第1ポリマーを構成するモノマーであり、(言い換えれば第1ポリマーは(メタ)アクリレートモノマーに基づくポリマーであり、)特に制限されないが、以下の式5で表されるモノマーが好ましい。
Figure 2021080353
式5中、R、及び、Rで表される基は、それぞれすでに説明した式4中におけるR、及び、Rで表される基と同義であり、好適形態も同様である。
重合開始剤は、上記(メタ)アクリレートモノマーを重合させる機能を有し、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては特に制限されないが、熱重合開始剤、及び、光重合開始剤が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤としては特に制限されないが、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、及び、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、及び、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらは一種、又は、二種以上を混合して用いることができる。
光ラジカル重合開始剤としては、光照射を受けることによってラジカル重合を開始させることが可能となる化合物であれば特に制限されず、公知の化合物が使用できる。
このような化合物としては、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及び、チオキサントン系化合物等のケトン系化合物;アシルホスフィンオキサイド系化合物;オキシム系化合物:等が挙げられる。
ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、及び、アニシル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、及び、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、及び、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(2−メチルプロプ−1−イル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
組成物は上記以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、溶媒、紫外線吸収剤、着色剤、及び、酸化防止剤等が挙げられ、いずれも公知のものを用いることができる。
・重合工程
重合工程は、組成物にエネルギーを付与して(メタ)アクリレートモノマーを重合させ、BBポリマーと、第1ポリマーとを含む複合体を得る工程である。
組成物に付与するエネルギーは、重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、熱重合開始剤を用いる場合には、組成物を加熱すればよいし、光重合開始剤を用いる場合には活性エネルギー線(紫外線、及び、電子線等)を照射すればよい。
なお、加熱及び活性エネルギー線照射の条件は特に制限されず、(メタ)アクリレートモノマーの重合方法として公知の方法を用いることができる。
本工程によって、第1ポリマーを含む母材にBBポリマーが分散された複合体を得ることができる。
本発明に係る成形体は、上記の複合体を含む。
本成形体の成形方法としては特に制限されず、公知の成形方法によって製造できる。公知の成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、ブロー(中空)成形、真空成形、圧縮成形、カレンダー成形、及び、インフレーション成形等が挙げられる。
本成形体は、優れた靭性を有するため、建築用部材、車両用部材、電気電子用部材、及び、照明用部材等に用いることができる。本成形体の用途は、具体的には、建造物、自動車、列車、及び、バスに使用される屋根材、照明、看板、メーターに使用される保護材、車両灯具用部材、船舶の灯具用部材、及び、電池用保護カバー等が挙げられる。
更に、母材が含む(メタ)アクリルポリマーと、側鎖ポリマーとの屈折率の差が、0.10以下である場合、本成形体はより優れた透明性を有するため、車両用部材、特に、窓材等に用いることもできる。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[合成例1:BBポリマー1(長さ300nm)の合成]
(主鎖の合成)
グローブボックス内で、第三世代Grubbs触媒([1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(3−ブロモピリジン)ルテニウム(II))(4.5mg、2.2×10−3mmol)をマルエムスクリュー管瓶(No.2、6mL、口内径φ13mm、胴径φ18mm、全長40mm)に入れ、そこにジクロロメタン溶液(1.8ml)を加えて溶かし、溶液1を得た。次に、別のスクリュー管に、2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネン(1.38g、3.05mmol)のジクロロメタン溶液(3.0ml)を用意した(溶液2)。
次に、グローブボックス内で、溶液2を溶液1に加え、室温15分撹拌しながら重合反応させた後、エチルビニルエーテルを加えて重合反応を停止させた(クエンチした)。この溶液をメタノールに加え、得られた沈殿を、減圧下で乾燥し、ポリノルボルネン600量体を得た(収量1.24g、収率90%)。この時、コンバージョンは99%以上であった。
(ポリマー鎖の導入によるBBポリマーの合成)
得られたポリノルボルネン(46mg)をアニソール(6ml)に溶かして溶液を得た。この溶液を2口ナスフラスコに入れた。この溶液にアルゴンバブリングを1時間した後、CuBr(2.2mg)、CuBr(28.7mg)、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン(46μL)を加え、アルゴン雰囲気下密閉系で70℃、16時間反応させた。その後、開栓して、反応を空気酸化でクエンチした後、その溶液をメタノール500mlに加えて、ボトルブラシポリマーを含む沈殿物を析出させた。この沈殿物をジクロロメタンへ溶解させ、メタノールによる再沈殿を3回繰り返し、BBポリマー1を精製し、1.3gを得た。
得られたBBポリマー1は、HPLC−GPC 8320(TOSOH製)、分析カラム2連結したsupermicropore HZ−M(TOSOH製)、溶出液THF、溶出速度0.35ml/minで分析した。
GPCの測定結果を図1に示した。図1では、BBポリマー1の測定結果を実線で、主鎖ポリマーの測定結果を破線で示している。また、図2には、AFMの測定結果を示した。なお、縦軸は、RI(示差屈折)検出器のレスポンスを表しており、任意単位(a.u.)である。また、縦軸はリテンションタイム(分)を表している。
GPCの測定結果から計算によって求めたBBポリマー1の長さは300nm、太さは20nm、分子量分布は1.21だった。
なお、BBポリマー1の長さは以下の方法により求めた。
上記条件下では、2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネンと第三世代Grubbs触媒の反応のコンバージョンが99%以上だっただめ、2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネンと第三世代Grubbs触媒のモル比がポリマーの繰り返し数に相当する。
このとき、ポリ(2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネン)の繰り返しユニット長は、およそ0.5 nmであるので、2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネンの繰り返し数が600の時、長さは0.5nm×600=300nmと求められる。
[合成例2:BBポリマー2(長さ25nm)の合成]
主鎖を合成する際、溶液2中の2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネンの含有量を255.6mgとし、溶液1中の第三世代Grubbs触媒の含有量を10mgとし、ジクロロメタンの合計量を1.6ml(溶液1=1.0ml、溶液2=0.6ml)としたことを除いては、合成例1と同様にして、長さ25nmのBBポリマー2を合成した。
BBポリマー2の長さは25nm、太さは20nm、分子量分布は1.20だった。図3には、BBポリマー2のGPC測定結果を示した。BBポリマー2の測定結果は実線で、主鎖ポリマーの測定結果は破線で示されている。
[合成例3:BBポリマー3(長さ100nm)の合成]
主鎖を合成する際、溶液2中の2−endo,3−endo−ビス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)−5−ノルボルネンの含有量を409.0mgとし、溶液1中の第三世代Grubbs触媒の含有量を4.0mgとし、ジクロロメタンの合計量を2.4ml(溶液1=1.6ml、溶液2=0.8ml)としたことを除いては、合成例1と同様にして、長さ100nmのBBポリマー3を合成した。
BBポリマー3の長さは100nm、太さは20nm、分子量分布は1.27だった。図4には、BBポリマー3のGPC測定結果を示した。BBポリマー3の測定結果は実線で、主鎖ポリマーの測定結果は破線で示されている。
また、図4には、原子間力顕微鏡(AFM)による観察結果を示した。
[実施例1−1:複合体1−1の合成]
BBポリマー1(113mg)をラボランサンプル缶瓶(No.2、5mL、口内径φ13mm、胴径φ18mm、全長40mm)に入れた。そこに、光ラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(0.010mL)のメタクリル酸t−ブチル(0.99g)溶液を加え、12時間攪拌した後、ウシオ電機製OPM2−502H(SAレンズタイプ)のキセノンランプで1時間光照射し、硬化させ、複合体1−1を合成した。この後、サンプル缶瓶にアンプルカッターで傷を入れ、サンプル缶瓶を万力で挟み込んでゆっくりと力をかけて割り、中の複合体1−1を取り出した。複合体は透明だった。
[実施例1−2〜実施例1−7]
複合体中におけるBBポリマーの含有量を0.1、1、2、4、6、及び、8質量%となるよう調製したことを除いては、実施例1−1と同様の方法により、複合体1−2〜複合体1−7を得た。
[実施例2−1〜実施例2−7]
BBポリマー1に代えて、BBポリマー2を用いて、複合体中におけるBBポリマー2の含有量を10、0.1、1、2、4、6、及び、8質量%となるよう調製したことを除いては、実施例1−1と同様の方法により、複合体2−1〜複合体2−7を得た。
[実施例3−1〜実施例3−7]
BBポリマー1に代えて、BBポリマー3を用いて、複合体中におけるBBポリマー3の含有量を10、0.1、1、2、4、6、及び、8質量%となるよう調製したことを除いては、実施例1−1と同様の方法により、複合体3−1〜複合体3−7を得た。
各試料の組成を表1にまとめて示した。
Figure 2021080353
[評価方法]
複合体について、以下の方法で評価した。
(ビッカーズ硬度)
ビッカース硬度Hv(GPa)は、ビッカース硬度測定機(AKASHI社製、商品名:AVK−A)を用いて押し込み試験法にて評価した。具体的には、室温、大気雰囲気にて、平滑な試料表面に押し込み加重1kgf(9.8N)、押し込み時間15秒にてビッカース圧子を押し込み,圧子押し込みによって発生した圧痕の寸法から下式によりビッカース硬度を求めた。1サンプルにつき3回以上測定を行い、その平均より、ビッカース硬度を求めた。
ビッカース硬度Hv(MPa)=(1.854P/d2)×9.8
ここで、Pは押し込み加重(kg)、dは圧痕の対角線長(mm)である。
(破壊靭性)
破壊靱性Kc(MPa・mm1/2)は、ビッカース硬度測定機(AKASHI社製、商品名:AVK−A)を用いて、押し込み加重Pを1.0kgとしてクラックを発生させた後、圧痕の対角線の長さ2a(m)、及び、除荷後30s以上経過後のクラックの長さ2c(m)を測定し、微小硬さ試験機(島津製作所社製、商品名:DUH−W201S)を用いて求めた圧縮弾性率E(Pa)を用い次式により算出した。測定は、室温、大気雰囲気にて行った。1サンプルにつき3回以上測定を行い、その平均より、破壊靱性を求めた。
Figure 2021080353
ここで、Pは押し込み加重(kg)、Hはビッカース硬度(Pa)、cはクラック長さの半分(m)である。なお、KcはKICと表記されることがある。
(分散性)
また、BBポリマーの分散性は、動的光散乱法に基づく平均粒子径(DLS径)の測定によって評価した。すなわち、濃厚系粒径アナライザー(マルバーン会社製、Zetasizer Nano ZSP、He−Neレーザー光の波長633nm)で測定した粒子径をDLS径とした。
[結果]
合成した3種類のBBポリマー(1〜3)をt−butyl methacrylateに分散させ、それぞれのBBポリマーの分散性(溶解性)をDLSで評価した(図5)。その結果、BBポリマーの含有量(質量%)が同等の時は、長いボトルブラシポリマーの方がよりモノマー中に分散しやすいことがわかった。これは、ボトルブラシポリマーが短くなるにつれて、表面積が大きくなるため、粒子間の相互作用が強まるためだと考えられる。
なお、図5中、(a)〜(c)の横軸「Time(μs)」は時間を表し、縦軸の「correlation coefficient」は、散乱光信号の揺らぎを自己相関関数に変換した値を表す。また、図5中(d)〜(f)の横軸の「Concentration of BP(wt%)」は、t−ブチルメタクリレート中に含まれるボトルブラシポリマーの質量%濃度:ボトルブラシポリマーの質量/(t−ブチルメタクリレートの質量+ボトルブラシポリマーの質量)×100を表し、縦軸の「relative size of BP−aggregates」は単独のボトルブラシポリマーの値を1とした集合体の相対的な大きさを表す。
図6には、複合体1−1のAFMによる表面観察結果を示した。その結果、表面は均一な相を有し、BBポリマーが均一に分散していることが明らかになった。AFMの高さイメージ(図中「Height」と示した)で見られるボイドは、母材よりも粘着性の高いBBポリマーの集合体が複合体表面の研磨過程において削ぎ落とされたためだと推察される。
BBポリマーが埋め込まれた各複合体の力学試験を行う前に、BBポリマーの存在が母材の(メタ)アクリレートポリマーの重合度に影響を与えないかを調べた。
複合体3−1、3−4、及び、3−5をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、GPCによって母材の(メタ)アクリレートポリマーの分子量を調べたところ、BBポリマーの有無によらず、マトリックスポリマーの分子量は同程度であることを確かめた。
具体的には、母材の(メタ)アクリレートのみ(比較例)では、Mn=3.8×10、Mw/Mn=2.65であり、実施例3−4では、Mn=4.1×10、Mw/Mn=2.86であり、実施例3−5では、Mn=3.5×10、Mw/Mn=2.61であり、実施例3−1では、Mn=3.5×10、Mw/Mn=2.58であった。
従って、複合体の力学特性の向上は、BBポリマーの存在によるものだといえる。
各複合体の靭性測定結果を表2、及び、表3に示した。
なお、下記表2、及び、表3において、比較例は、母材の(メタ)アクリレートポリマーのみ、参考例は、複合体1−1の調製において、BBポリマーに代えて、直鎖状のポリ(n−ブチルアクリレート)(ポリn−BA、Mn=2.0×10、Mw/Mn=3.0)を用いた複合体である。
Figure 2021080353
表2に示した結果から、実施例1−1、2−1、及び、3−1の複合体は、いずれも比較例の複合体よりも優れた靭性を有していることが分かった。また、直鎖状のポリマーを含有する参考例の複合体と比較してもより優れた靭性を有していることが分かった。
Figure 2021080353
表3に示した結果から、複合体中における(メタ)アクリレートポリマーの含有量と、BBポリマーの含有量との合計含有量に対する、BBポリマーの含有量の含有質量比が0.05〜0.20である、実施例1−1の複合体は、実施例1−5の複合体と比較して、より優れた靭性を有していることがわかった。
マイクロメートルスケールの押し込み試験で得られた結果がマクロスケールでも対応するか調べるために、衝突試験を行った。直径2cm、重さ63.1gの鉄球を15cmの高さから落とし、複合体が破壊されか否かを検証した。
ここで、衝突エネルギーは93.6mJであった。その結果、比較例の複合体(図7)、参考例の複合体は粉々になったのに対し、複合体1−1(図8)は壊れなかった。
本成形体は、優れた靭性を有するため、建築用部材、車両用部材、電気電子用部材、及び、照明用部材等に用いることができる。本成形体の用途は、具体的には、建造物、自動車、列車、及び、バスに使用される屋根材、照明、看板、メーターに使用される保護材、車両灯具用部材、船舶の灯具用部材、及び、電池用保護カバー等が挙げられる。
更に、母材が含む(メタ)アクリルポリマーと、側鎖ポリマーとの屈折率の差が、0.10以下である場合、本成形体はより優れた透明性を有するため、車両用部材、特に、窓材等に用いることもできる。

Claims (15)

  1. (メタ)アクリルポリマーである第1のポリマーを含む母材と、前記母材に分散されたボトルブラシポリマーとを含み、
    前記ボトルブラシポリマーは、主鎖と、前記主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、前記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下の第2のポリマーに基づくポリマー鎖である、複合体。
  2. 前記第2のポリマーが(メタ)アクリルポリマーである、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記第1のポリマーと、前記第2のポリマーとの屈折率の差が、0.10以下である、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 前記主鎖が、以下の式1で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
    Figure 2021080353

    (式1中、P、及び、Pはそれぞれ独立に、前記ポリマー鎖、又は、前記ポリマー鎖とは異なる1価の基を表し、P、及び、Pからなる群より選択される少なくとも一方は前記ポリマー鎖である。)
  5. 前記P、及び、Pが前記ポリマー鎖である、請求項3に記載の複合体。
  6. 前記第1のポリマーの含有量と前記ボトルブラシポリマーの含有量の合計に対する、前記ボトルブラシポリマーの含有量の含有質量比が0.05〜0.20である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。
  7. 前記ポリマー鎖が、以下の式2で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体。
    Figure 2021080353

    (式2中、Rは水素原子、又は、1価の基を表し、Rは炭素数が1〜20個のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。)
  8. 前記ポリマー鎖が、以下の式3で表される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合体。
    Figure 2021080353

    (式3中、Rは水素原子、又は、1価の基を表し、Rは炭素数が1〜20個のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、Lは単結合、又は、2価の基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは2以上の整数を表す。)
  9. 前記ボトルブラシポリマーの長さが、10〜500nmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合体を含む成形体。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合体を含む車両用部材。
  12. 主鎖と、前記主鎖に結合したポリマー鎖とを有し、前記ポリマー鎖は、ガラス転移温度が20℃以下のポリマーに基づくポリマー鎖であり、
    前記主鎖が、以下の式1で表される繰り返し単位を有する、ボトルブラシポリマー。
    Figure 2021080353

    (式1中、P、及び、Pはそれぞれ独立に、前記ポリマー鎖、又は、前記ポリマー鎖とは異なる1価の基を表し、P、及び、Pからなる群より選択される少なくとも一方は前記ポリマー鎖である。)
  13. 前記ポリマー鎖が、以下の式2で表される繰り返し単位を有する、請求項12に記載のボトルブラシポリマー。
    Figure 2021080353

    (式2中、Rは水素原子、又は、1価の基を表し、Rは炭素数が1〜20個のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。)
  14. 前記ポリマー鎖が、以下の式3で表される、請求項12又は13に記載のボトルブラシポリマー。
    Figure 2021080353

    (式3中、Rは水素原子、又は、1価の基を表し、Rは炭素数が1〜20個の他ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、Lは単結合、又は、2価の基を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは2以上の整数を表す。)
  15. 長さが、10〜500nmである、請求項12〜14のいずれか1項に記載のボトルブラシポリマー。

JP2019208353A 2019-11-19 2019-11-19 複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー Active JP7374466B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019208353A JP7374466B2 (ja) 2019-11-19 2019-11-19 複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019208353A JP7374466B2 (ja) 2019-11-19 2019-11-19 複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021080353A true JP2021080353A (ja) 2021-05-27
JP7374466B2 JP7374466B2 (ja) 2023-11-07

Family

ID=75964204

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019208353A Active JP7374466B2 (ja) 2019-11-19 2019-11-19 複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7374466B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1072513A (ja) * 1997-09-22 1998-03-17 Mitsubishi Rayon Co Ltd アクリル系くし形共重合体および耐衝撃性樹脂組成物
JP2010511065A (ja) * 2006-11-27 2010-04-08 ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ ブラシ状コポリマー
JP2016192540A (ja) * 2015-02-26 2016-11-10 ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシーRohm and Haas Electronic Materials LLC 誘導自己組織化のためのコポリマー配合物、その製造方法、及びそれを含む物品
JP2016210956A (ja) * 2015-05-11 2016-12-15 国立研究開発法人物質・材料研究機構 生体適合性材料、及び生体適合性コーティング剤
JP2018028621A (ja) * 2016-08-18 2018-02-22 エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド 液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法
JP2019065284A (ja) * 2017-09-29 2019-04-25 独立行政法人国立高等専門学校機構 Srt材料、複合体およびその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1072513A (ja) * 1997-09-22 1998-03-17 Mitsubishi Rayon Co Ltd アクリル系くし形共重合体および耐衝撃性樹脂組成物
JP2010511065A (ja) * 2006-11-27 2010-04-08 ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ ブラシ状コポリマー
JP2016192540A (ja) * 2015-02-26 2016-11-10 ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシーRohm and Haas Electronic Materials LLC 誘導自己組織化のためのコポリマー配合物、その製造方法、及びそれを含む物品
JP2016210956A (ja) * 2015-05-11 2016-12-15 国立研究開発法人物質・材料研究機構 生体適合性材料、及び生体適合性コーティング剤
JP2018028621A (ja) * 2016-08-18 2018-02-22 エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド 液晶表示素子及び液晶表示素子の製造方法
JP2019065284A (ja) * 2017-09-29 2019-04-25 独立行政法人国立高等専門学校機構 Srt材料、複合体およびその製造方法

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
NIKOVIA, CHRISTIANA ET AL.: "Macromolecular Brushes Based on Poly(L-Lactide) and Poly(ε-Caprolactone) Single and Double Macromon", POLYMERS, vol. 11, JPN6023023167, 1 October 2019 (2019-10-01), pages 1606 - 1, ISSN: 0005076224 *
SARAPAS, JOEL M. ET AL.: "Compressing and Swelling To Study the Structure of Extremely Soft Bottlebrush Networks Prepared by R", MACROMOLECULES, vol. 51, JPN6023023168, 14 March 2018 (2018-03-14), pages 2359 - 2366, ISSN: 0005076223 *
SONG, DONG-PO ET AL.: "Structural Diversity and Phase Behavior of Brush Block Copolymer Nanocomposites", MACROMOLECULES, vol. 49, JPN6023023164, 1 September 2016 (2016-09-01), pages 6480 - 6488, ISSN: 0005076226 *
SUN, HUILOU ET AL.: "Configurationally Constrained Crystallization of Brush Polymers with Poly(ethylene oxide) Side Chain", MACROMOLECULES, vol. 52, JPN6023023165, 11 January 2019 (2019-01-11), pages 592 - 600, ISSN: 0005076225 *
XIE, MEIRAN ET AL.: "Well-Defined Brush Copolymers with High Grafting Density of Amphiphilic Side Chains by Combination o", MACROMOLECULES, vol. 41, JPN6023023169, 2008, pages 9004 - 9010, ISSN: 0005076222 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP7374466B2 (ja) 2023-11-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7960479B2 (en) Brush copolymers
Hajiali et al. Thermally reprocessable bio-based polymethacrylate vitrimers and nanocomposites
WO2008044640A1 (fr) POLYMÈRE DE β-PINÈNE ET SON PROCÉDÉ DE PRODUCTION
JP2008505998A (ja) イミダゾリドン基を有するポリマー鎖を含むポリマー材料
US20100234549A1 (en) Radical polymerizable macrocyclic resin compositions with low polymerization stress
JP2008247978A (ja) 可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法
JP2015227407A (ja) アクリル樹脂
Li et al. Synthesis and characterization of brush-like multigraft copolymers PnBA-g-PMMA by a combination of emulsion AGET ATRP and emulsion polymerization
US20210363377A1 (en) Curable resin composition
US11319395B2 (en) Rubbery polymer, graft copolymer, and thermoplastic resin composition
Wang et al. Breaking the paradox between grafting-through and depolymerization to access recyclable graft polymers
WO2016088777A1 (ja) 硬化性組成物及び膜
Kim et al. Preparation of anthracene‐labelled poly (methyl methacrylate) via atom transfer radical polymerization
JP7374466B2 (ja) 複合体、成形体、車両用部材、及び、ボトルブラシポリマー
WO2017199562A1 (ja) マクロモノマー共重合体およびその製造方法
JPH1095821A (ja) 液晶性ブロック共重合体及びその製造方法
TW201723064A (zh) 熱可塑性樹脂組成物及其所形成的成型品
Li et al. Synthesis and characterization of graft copolymers P n BA-g-PS by miniemulsion polymerization
JP4918720B2 (ja) 耐熱性に優れる重合体
JPH02296833A (ja) 合成樹脂用改質剤
WO2023190605A1 (ja) 複合材料及びその製造方法並びに架橋剤
JP2001226429A (ja) メタクリル樹脂成形材料及びその成形品
Devrim et al. Synthesis of Poly (isobutyl vinyl ether)-graft-Poly (ethylene oxide) Co-polymer with Pendant Methacrylate Functionality and Its Photo-curing Behavior
JP2011207968A (ja) アルコール性水酸基を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びその製造方法
KR100557836B1 (ko) 아크릴화 디시클로펜타디엔 모노머, 이의 제조방법 및이를 이용한 경화물

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220727

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230510

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230606

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230724

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231010

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231018

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7374466

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150