JPWO2009125828A1 - β−ピネン系重合体及びそれからなる成形体 - Google Patents

β−ピネン系重合体及びそれからなる成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性及び耐光性に優れ、吸水性が低く、高い透明性有するβ−ピネン系重合体及びその成形体を提供すること。【解決手段】β−ピネン単位を60質量%以上含有した重合体であって、β−ピネン由来の6員環のうち1モル%以上10モル%以下が芳香族性6員環であるか、またはp−フェニレン基が0.55質量%以上5.5質量%以下であり、好ましくはオレフィン性二重結合が90モル%以上水素化されているか、またはシクロヘキセン−1,4−ジイル基が5.6質量%以下であるβ−ピネン系重合体、および該β−ピネン系重合体からなる成形体。

Description

本発明は、高い屈折率と低い複屈折を両立させたβ−ピネン系重合体及びそれからなる成形体及びそれの製造法に関する。
近年、光学用樹脂への要求はますます高度になり、耐熱性及び耐光性に優れ、吸水性が低く、かつ高い透明性を有する樹脂が求められている。しかし、従来の光学用樹脂においてはこれらの要求性能が高い次元でバランスよく備わっておらず、光学用樹脂として種々の欠点を有する。
例えば、透明性の高い光学用樹脂としては、従来ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等が使用されてきた。ポリメタクリル酸メチルは透明性が高く、複屈折率が小さい等、光学的な性質は優れているが、吸水性が大きいため寸法が変化し易く、また耐熱性も低いという欠点を有する。一方、ポリカーボネートはガラス転移温度(Tg)が高く耐熱性は優れているが、吸水性がやや大きく、アルカリによる加水分解を起こしやすいという欠点を有する。
耐熱性が高く、吸水性が小さく、かつ透明性に優れた光学用樹脂としてはノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物やノルボルネン系モノマーとエチレンとの付加型共重合体が知られている(特許文献1〜4)。しかしながら、ノルボルネン系モノマーとして使用しているテトラシクロドデセン類の多環モノマーは、その製造が必ずしも容易ではなく、重合触媒にモリブデン、タングステンの塩化物等のレアメタルを使用する必要がある。
上記の課題を改善した光学用樹脂としてβ−ピネン系重合体が提案されている(特許文献5、非特許文献1〜2)。β−ピネン系重合体は耐熱性が高く、吸水性が低い材料である。また、近年問題となっている二酸化炭素の排出を抑える、カーボンニュートラル材料としても注目されている(非特許文献1)。しかしながら、比重が小さいため屈折率が小さいという欠点を有していた。屈折率を向上させるため、芳香族系ビニル単量体と共重合する方法が検討されている(特許文献5)。特許文献5に記載のβ−ピネンとインデンの共重合体(実施例7〜12)は、耐熱性は高いもののβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合やインデン由来の芳香族性二重結合が残っており、酸化劣化し易いため、光や熱で着色し易いという問題点を有していた。また、インデンのような側鎖に芳香環を有する単量体を共重合すると複屈折が大きくなる問題があった。
特開昭64−24826号公報 特開昭60−168708号公報 特開昭61−115912号公報 特開昭61−120816号公報 特開2002−121231号公報
Satoh他、「Biomass-derived heat-resistant alicyclic hydrocarbon polymers:poly(terpenes) and their hydrogenated derivatives」、Green Chemistry、2006年、第8巻、878〜882頁 Keszler他、「Synthesis of High Moleculer Weight Poly(β−Pinene)」、Advances in Polymer Science、1992年、第100巻、1〜9頁
従って本発明の目的は、本来有する高耐熱性及び高耐光性、低吸水性、高い透明性を保持しつつ高い屈折率を有するβ−ピネン系重合体及びその成形体を提供することにある。
すなわち本発明は、
β−ピネン単位を60質量%以上含有した重合体であって、β−ピネン由来の6員環のうち1モル%以上10モル%以下が芳香族性6員環であるβ−ピネン系重合体、および該β−ピネン系重合体からなる成形体である。
また本発明は、
β−ピネン単位を60質量%以上含有した重合体であって、p−フェニレン基が0.55質量%以上5.5質量%以下であるβ−ピネン系重合体、および該β−ピネン系重合体からなる成形体である。
さらに本発明は、
β−ピネン単位を60質量%以上含有する重合体を、不均一触媒存在下、水素圧0.1MPa〜25MPaにてオレフィン性二重結合を水素化する、上記のβ−ピネン系重合体の製造方法である。
本発明のβ−ピネン系重合体は、耐熱性及び耐光性に優れ、吸水性が低く、屈折率が高く、複屈折が小さく、高い透明性を有するため、特に光学用途に好適である。
実施例3で得られたβ−ピネン系重合体(H3)のH−NMRスペクトルを示す図である。重溶媒として重水素化テトラヒドロフランを使用した。 比較例3で得られたβ−ピネン系重合体(B3)のH−NMRスペクトルを示す図である。重溶媒として重水素化テトラヒドロフランを使用した。
[I]β−ピネン系重合体
本発明のβ−ピネン系重合体は、β−ピネン単位を含有する重合体を、水素化してなる重合体である。
・β−ピネン
本発明に用いるβ−ピネン単量体としては公知のものが利用可能である。すなわち、松等の植物から採取されたものや、α−ピネン等、他の原料から合成したβ−ピネン等も利用可能である。
・他の共重合単量体
本発明の重合体は、β−ピネンと共重合可能な他の単量体単位を構成単位として含有していてもよい。共重合可能な単量体は特に制限はなく、具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン、インデン等の芳香族ビニル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、ノルボルネン等のオレフィン類;リモネン、α−ピネン、ミルセン、カンフェン、カレン等のβ−ピネン以外のテレピン油由来の二重結合含有化合物;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;極性基を有するスチレン誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、アリルアルコール等が挙げられる。また、2官能性の単量体、例えばp−ジビニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル等を含有することも可能である。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記共重合可能な単量体をβ−ピネンと共重合する場合、その共重合量は重合体の全単量体単位あたり0.001〜50モル%が好ましく、0.01〜20モル%がより好ましく、0.01〜10モル%が最も好ましい。共重合量が多すぎると、重合が困難になる可能性があり、また耐熱性も低下する場合が多い。また芳香族を側鎖に有する単量体は複屈折が増大するため少ない方が好ましく、その共重合量は重合体の全単量体単位あたり0.001〜10モル%が好ましく、0.01〜5モル%が最も好ましい。
共重合体の構造は特に制限されず、例えばランダム、ブロックおよびテーパードのいずれの共重合体でもよい。共重合体はランダム共重合体が特に好ましい。
・数平均分子量
β−ピネン系重合体の数平均分子量は特に限定されないが、力学的物性や加工性の観点から、600〜100万g/モルが好ましく、1万〜50万g/モルがより好ましく、3万〜20万がさらに好ましく、4万〜20万が最も好ましい。数平均分子量が小さすぎると重合体とは呼べず、大きすぎると成形が困難になる。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量を意味する。
・水素化物
本発明の重合体はβ−ピネン単位に由来する6員環であるシクロヘキセン環のオレフィン性二重結合を水素化[水素添加(水添)]することで得られるが、通常の水素化反応では、水素化反応と同時にシクロヘキセン環の脱水素反応も極少量であるが進行する。本発明のβ−ピネン系重合体は、オレフィン性二重結合を水素化しつつも、シクロヘキセン環に由来する芳香族性6員環の含有量が多い重合体である。ここで生成する芳香族環はβ−ピネン由来の6員環(p−フェニレン基)であるため、主鎖に対して対称であり、複屈折を小さくすることが可能である。
本発明のβ−ピネン系重合体は、空気中の酸素による劣化防止、成形体の着色を抑制するため、β−ピネン由来のオレフィン性二重結合が、重合体中の芳香族環生成単位を除いたβ−ピネン単位に対し、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下にまで水素化されている。本発明のβ−ピネン系重合体は、そのH−NMRスペクトル[テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする]における4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する比率(4.5〜6ppmのプロトンの積分値/全プロトンの積分値)が、好ましくは1.1×10−2以下(β−ピネン単独重合体の場合、水添率80モル%以上に相当)であり、より好ましくは8.5×10−3以下(同、水添率85モル%以上に相当)であり、さらに好ましくは5.6×10−3以下(同、水添率90モル%以上に相当)である。またシクロヘキセン−1,4−ジイル基(−C−)が、好ましくは10.7質量%以下(同、水添率80モル%以上に相当)、より好ましくは8.4質量%以下(同、水添率85モル%以上に相当)、さらに好ましくは5.6質量%以下(同、水添率90モル%以上に相当)である。上記比率が大きいと、オレフィン性二重結合の量が多くなり劣化しやすい可能性がある。
本発明のβ−ピネン系重合体は、水添時にβ−ピネン由来のシクロヘキセン環から生成する芳香族性6員環が、重合体中のβ−ピネン単位に対し1モル%以上10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以上10モル%以下である。本発明のβ−ピネン系重合体は、そのH−NMRスペクトル[テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする]における6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する比率(6〜8ppmのプロトンの積分値/全プロトンの積分値)が、好ましくは2.2×10−3以上(β−ピネン単独重合体の場合、芳香族環1モル%以上に相当)2.3×10−2以下(同、芳香族環10モル%以下に相当)であり、好ましくは1.1×10−2以上(同、芳香族環5モル%以上に相当)2.3×10−2以下(同、芳香族環10モル%以下に相当)である。また、p−フェニレン基(−C−)が0.55質量%以上5.5質量%以下であり、好ましくは2.7質量%以上5.5質量%以下である。上記比率が小さいと、芳香族環の量が少なくなり屈折率が小さくなり、逆に大きいとガラス転移温度が小さくなり、さらに耐光性も低下してしまう。
なお、水素化率の高い重合体のH−NMRスペクトルは非常に小さいスペクトルを積分するため、高いSN比と解像度が要求される。通常270MHz以上のマグネットを有する核磁気共鳴装置を用い、積算回数を8000回以上することが好ましい。SN比が悪かったり、解像度が低いと積分値を小さく見積もってしまい、正しい値が得られない。
また、β−ピネン系重合体を溶解させる重溶媒としてはβ−ピネン系重合体が溶解する重溶媒であれば特に限定しないが、重溶媒中の重水素化されていない溶媒のスペクトルがβ−ピネン系重合体のスペクトルと重ならないもしくは重なっても影響の少ない0〜4ppmにスペクトルを持つ重溶媒を選択することが好ましい。そのような重溶媒として重テトラヒドロフランや重ヘキサンを挙げることができる。
・ガラス転移温度(Tg)
本発明のβ−ピネン系重合体のTgは、共重合する単量体の種類や割合、芳香族環量により一概に規定できないが、70℃〜250℃がより好ましく、100℃〜230℃がさらに好ましい。Tgが低いと耐熱性が不足し、高過ぎるとβ−ピネン系重合体が脆くなる。なお示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。
・全光線透過率
本発明のβ−ピネン系重合体は、特に光学材料に使用する場合は全光線透過率が高い方が好ましい。β−ピネン系重合体の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。全光線透過率はJIS−K−7361−1−1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:ジングルビーム法」に準じて測定される。
・屈折率
本発明のβ−ピネン系重合体は、特に光学材料に使用する場合は屈折率が高い方が好ましい。β−ピネン系重合体の屈折率は1.505以上が好ましく、1.507以上がより好ましい。屈折率の測定はJIS K7142(A法)「プラスチックの屈折率測定方法」に準じて、D線にて測定される。
・耐光性
本発明のβ−ピネン系重合体は、耐光性および耐候性が高い方が好ましい。例えばASTM−G53に準じて、UVB光100時間の促進暴露試験を行い、JIS−K−7373に準じ測定したYI(イエロー・インデックス)の試験前と試験後における黄変度(ΔYI)が10以下が好ましく、5以下がより好ましく、2以下が最も好ましい。
・耐熱性
本発明によれば5%質量減少温度が高い重合体を得ることが可能である。本発明のβ−ピネン系重合体の5%質量減少温度は300℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましい。5%質量減少温度はJIS−K−7120−1987「プラスチックの熱重量測定法」に準じて熱天秤(TGA)で測定される、質量が5%減少した温度を意味する。
[II]β−ピネン系重合体の製造方法
・重合反応
本発明のβ−ピネン系重合体は、カチオン重合、ラジカル重合法、配位重合法等の公知の方法により得ることができる。工業的に容易に実施でき、高分子量体が得られるという観点から、特にカチオン重合法が好ましい。
・カチオン重合
カチオン重合は、溶媒、重合触媒の種類・量、重合開始剤、電子供与性化合物、反応温度、反応圧力、反応時間等により制御ることが可能である。
・カチオン重合溶媒
カチオン重合は、非特許文献1、非特許文献2等に記載の公知の方法により行うことができる。具体的には、例えば不活性有機溶媒中において、重合触媒を添加または接触させることにより行う。不活性有機溶媒は、β−ピネンおよび芳香族系単量体が溶解し、かつ重合触媒に不活性な有機溶媒であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロパン、塩化ブタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を用いることができる。反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等が好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
カチオン重合において不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は特に限定されないが、β−ピネンを含む単量体100質量部に対して通常100〜10000質量部、好ましくは150〜5000質量部、より好ましくは200〜3000質量部である。不活性溶媒量が少ないと重合体が生成した場合の粘度が高くなり撹拌が困難となるため反応が不均一となり、均一な重合体が得られなかったり、反応の制御が困難になる。不活性溶媒量が多いと生産性が低下してしまう。
・重合触媒
カチオン重合の重合触媒として酸性化合物を用いることができる。酸性化合物は特に限定されず、例えばルイス酸またはブレンステッド酸が挙げられる。具体的にはBF、BFOEt、BBr、BBrOEt、AlCl、AlBr、AlI、TiCl、TiBr、TiI、FeCl、FeCl、SnCl、SnCl、WCl、MoCl、SbCl、TeCl、EtMgBr、EtAl、EtAlCl、EtAlCl、EtAlCl、BuSnCl等の周期律表IIIA族からVIII族までの金属ハロゲン化合物;HF、HCl、HBr等の水素酸;HSO、HBO、HClO、CHCOOH、CHClCOOH、CHClCOOH、CClCOOH、CFCOOH、パラトルエンスルホン酸、CFSOH、HPO、P等のオキソ酸、およびこれらの基を有するイオン交換樹脂等の高分子化合物;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;SiO、Al、SiO−Al、MgO−SiO、B−Al、WO−Al、Zr−SiO、硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、Hまたは希土類元素と交換したゼオライト、活性白土、酸性白土、γ−Al、Pをケイソウ土と担持させた固体燐酸等の固体酸等が挙げられる。これらの酸性化合物は組み合わせて用いても良く、また他の化合物等を添加しても良い。他の化合物等は、例えばそれを添加することにより酸性化合物の活性を向上させることができる化合物等である。金属ハロゲン化合物の酸性化合物としての活性を向上させる化合物の例としては、MeLi、EtLi、BuLi、EtMg、(i−Bu)Al、EtAl(OEt)、MeSn、EtSn、BuSn等の金属アルキル化合物が例示される。
カチオン重合で使用する重合触媒の使用量は、重合触媒の種類により触媒能が異なるため、一概に使用量を規定することは難しいが、均一系触媒の場合、その使用量は、β−ピネンおよび芳香族系単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が最も好ましい。重合触媒に固体酸やイオン交換樹脂等の不均一触媒を使用する場合、その使用量はβ−ピネンおよび芳香族系単量体100質量部に対し、0.1〜10000質量部が好ましく、1〜1000質量部がより好ましい。触媒量が少ないとカチオン重合の進行が遅く、多いと不経済である。
カチオン重合を行う場合の重合開始剤としては、重合触媒によりカチオンを発生させる化合物であれば特に限定されないが、下式に示す官能基を少なくとも1つ有する有機化合物が好適に使用される。例えば、t−ブチルクロライド、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエステル、t−ブタノール、2,5−ジクロロ−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアセテート、クミルクロライド、クミルメトキシド、クミルアルコールアセテート、クミルアルコール、p−ジクミルクロライド、m−ジクミルクロライド、p−ジクミルメトキシド、p−ジクミルアルコールジアセテート、p−ジクミルアルコール、1,3,5−トリクミルクロライド、1,3,5−トリクミルメトキシド等を挙げることができる。
−C(−R)(−R)−X
(式中のRは水素、アルキル基、アリール基を、Rは水素、アルキル基、アリール基を、Xはハロゲン、アルコキシ基、アシロキシ基、水酸基を示す。)
カチオン重合で使用する重合開始剤の使用量は、目的とする重合体の分子量により異なるため、一概に使用量を規定することは難しいがβ−ピネンおよび芳香族系単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましく、0.001〜5質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が最も好ましい。重合開始剤が少ないと、重合反応速度が遅くなったり、不純物から重合が開始して安定して生産が困難となる。重合開始剤が多いと得られる重合体の分子量が小さくなり、重合体が脆くなってしまう。
カチオン重合を行う場合、電子供与性化合物を添加することで重合反応をより制御することが可能である。このような電子供与性化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル化合物、炭素数2〜10の環状エーテル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール化合物、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の窒素含有化合物、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等のアンモニウム塩等が挙げられる。
電子供与性化合物は、反応系中に、重合触媒100質量部に対し0.01〜500質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましい。電子供与性化合物の量が少なすぎると副反応が多くなる傾向があり、低分子量体が多く生成し得られる重合体の強度が低下してしまう。逆に電子供与剤が多すぎると重合反応速度が著しく抑制され、カチオン重合反応に長時間を要することとなり、生産性が低下する。したがって、更に好ましい電子供与性化合物の量は、重合触媒に対し0.1〜100質量部である。
カチオン重合を行う場合の反応温度は通常−120℃〜60℃が好ましく、−80℃〜0℃がより好ましく、−40℃〜0℃が最も好ましい。反応温度が低すぎると不経済であり、高すぎると反応の制御が困難である。
カチオン重合を行うための反応圧力は特に限定されないが、0.5〜50気圧が好ましく、0.7〜10気圧がより好ましい。通常1気圧前後でカチオン重合を行う。
カチオン重合を行う反応時間は、特に限定されず、用いる芳香族系単量体の種類、その量、重合触媒の種類や量、反応温度、反応圧力等の条件に応じて、反応時間を適宜決めればよい。通常は0.01時間〜24時間、好ましくは0.1時間〜10時間である。
カチオン重合後の重合体は、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することができる。
[III]水素化
水素化反応は公知の任意の方法をとることができる。本発明はβ−ピネン重合体に対し、そのβ−ピネン単位のシクロヘキセン環の一部を脱水素することにより芳香環を形成させる。この場合、反応温度として高温が有利である場合があり、熱安定性の高い不均一系触媒を用いることが多い。よって、不均一系触媒(固体触媒)を用いた場合について説明する。
・水素化触媒
本発明において用いる不均一系触媒は特に限定されないが、具体例を挙げると、スポンジニッケル、スポンジコバルト、スポンジ銅などのスポンジメタル触媒;ニッケルシリカ、ニッケルアルミナ、ニッケルゼオライト、ニッケル珪藻土、パラジウムシリカ、パラジウムアルミナ、パラジウムゼオライト、パラジウム珪藻土、パラジウムカーボン、パラジウムグラファイト、パラジウム炭酸カルシウム、白金シリカ、白金アルミナ、白金ゼオライト、白金珪藻土、白金カーボン、白金グラファイト、白金炭酸カルシウム、ルテニウムシリカ、ルテニウムアルミナ、ルテニウムゼオライト、ルテニウム珪藻土、ルテニウムカーボン、ルテニウムグラファイト、ルテニウム炭酸カルシウム、イリジウムシリカ、イリジウムアルミナ、イリジウムゼオライト、イリジウム珪藻土、イリジウムカーボン、イリジウムグラファイト、イリジウム炭酸カルシウム、コバルトシリカ、コバルトアルミナ、コバルトゼオライト、コバルト珪藻土、コバルトカーボン、コバルトグラファイト、コバルト炭酸カルシウムなどの担持金属触媒が挙げられる。
これらの触媒は、活性向上、選択性向上、安定性を目的に、鉄、モリブデン、マグネシウムなどで変性されていても良い。また、これらの触媒は単独で使用しても良いし、複数を混合して用いても構わない。
水素化反応は、水素化活性、入手性、取り扱いの容易さの面から、水素化活性をもつ金属としてニッケルもしくはパラジウムを用いることが好ましい。また、水素化の最中に進行する望ましくない副反応をさらに抑制するために、炭酸カルシウム、カーボン担体を用いることが好ましい。
・溶媒
水素化反応は、通常、有機溶媒中で行われる。用いることのできる溶媒は、特に限定されるものではないが、β−ピネン系重合体を容易に溶解させるものが好ましい。共重合の種類によりその溶媒が異なるため、限定することは困難であるが、具体例を挙げるならば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、トリシクロデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロパン、塩化ブタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒などを用いることができる。
水素化反応は、重合工程で用いた溶媒をそのまま用いることもできるし、一部の溶媒を蒸留などの方法により除去して用いることもできる。また、重合工程終了後、一旦重合物を前述の方法で取り出した後に用いても構わない。未水添重合物をこれらの方法で水素化工程に導入する場合、重合工程の溶媒をそのままもしくは除去したのち、別途溶媒で希釈して用いることもできる。
水素化反応の有機溶媒の使用量は、重合体100質量部に対して50質量部以上10000質量部以下、好ましくは100質量部以上3000質量部以下、より好ましくは150質量部以上1000質量部以下ある。10000質量部以上で行うと、生産性が著しく低下するし、100質量部未満の場合溶液粘度が著しく高まり、水素化反応効率が低下してしまう。
高温でβ−ピネン単位を含む重合体を水素化する場合、主鎖断裂が進行し、望む重合度の水素化体が得られなくなる場合がある。その場合には、以下、I〜IVに該当する物質の共存下に水素化を実施しても構わない。これらの物質の共存下に水素化を実施することで、担体に起因する高温反応時の主鎖切断を大幅に抑制することが可能となる。
I. M(OR)
II. M(OC(=O)R’)
III.(R”)
IV. ピリジン類
I.に示されるMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属を表し、特に限定されないが、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。nは、Mがアルカリ金属の場合1を、アルカリ土類金属の場合2を示す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜10のアリール基;2−メチルフェニル基、炭素数7〜11のアラルキル基が挙げられる。
II.に示されるM,nは上記のI.と同等である。R’は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1〜8のアルキル基を表す。
III.に示されるR”は、3つが互いに同一であっても異なっていても良く、任意の2つ以上が結合することにより環構造を有していても良く、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜12のアルキレン置換アルキレン基をあらわし、かつ、R”について水素原子以外の場合、ほかの置換基により置換されていても良く、かつ、置換基の一部が酸素原子、窒素原子などにより置き換えられていても良い。
IV.に示されるピリジン類は、ピリジン骨格を分子内に有する任意の化合物を使用することができる。
これらI.〜IV.に挙げる化合物は、1種類のみ単独で用いてもよいし、複数種類を同時に用いても良い。これらの化合物は、トータルの使用量として、水素化反応液100質量部あたり、0.005質量部以上10質量部以下、このましくは0.01質量部以上5質量部以下である。使用量が少ないと望ましくない反応を抑制する効果が得られず、多すぎても望ましくない反応を抑制する能力が向上するわけではない。
・水素添加反応の反応温度
本発明における水素化反応の温度は使用する触媒により適切な値がことなることがあり、必ずしも規定できないが、通常、60℃〜300℃、好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは150℃〜220℃である。例えば、150℃以上の高温条件下で、脱水素反応が有意に進行し、所望の水素化重合体を得やすい。本発明では、160℃以上、場合により180℃以上の水素化反応温度を設定することができる。
・反応時間
水素化反応時間は、使用する触媒種、触媒量、反応温度により異なるため、必ずしも限定できないが、通常、5分〜20時間、好ましくは10分〜15時間である。反応時間が短すぎる場合、所望する水素化率を得ることができない。また、反応時間が長すぎる場合、望まない副反応の進行が顕著になり、所望する物性の水素化重合物が得られない場合がある。
・水素圧
本発明における水素化反応は、β−ピネン重合体に含まれるシクロヘキセン環の炭素炭素不飽和結合を水素化させることを目的の1つとするが、その一方、シクロヘキセン環の一部を脱水素することにより芳香族環を形成させる。そのため、水素化反応における水素圧力には制限がある。水素化反応の圧力は、使用する触媒により適切な値を異にすることがあるが、水素圧として0.1MPa〜5MPaである。一般に水素ガス分圧が高いほど、水素化に有利となり、この範囲以上の場合、脱水素による芳香族化がごくわずか進行するのみである。
水素化反応は、水素ガスが存在する条件下で実施するが、水素ガスのほかに、水素化反応に不活性であるならば、任意のガスと混合して実施しても構わない。不活性ガスの具体例として、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などが挙げられる。また、反応条件によっては、反応に使用する溶媒がガス成分として有意な量の分圧を有することになるが差し支えない。これらの水素化反応に不活性なガスが存在する場合、分圧として0.01MPa以上、5MPa未満がこのましい。5MPa以上の場合、反応装置が大型化してしまい、設備費を多く必要となってしまう。
・水素化反応の実施形態
本発明における水素化反応の実施形態は公知の任意の方法をとることができる。使用する触媒の形状により適切な反応形態がある場合があるが、例えば、バッチ反応、セミ連続反応、連続反応方式をとることができる。連続反応形式において、プラグフロー形式(PFR)、連続流通撹拌形式(CSTR)を取ることができる。また、固定床反応槽を用いることができる。積極的に混合して反応を行う場合、撹拌により混合する方法、ループ形式にて水素化反応液を循環させて混合する方法などをとることができる。
水素化反応を行ったあとの抜き取り液は一部分割し、水素化反応に再び用いることができる。再び用いることで、水素化にともなう発熱の局所化の回避や、水素化反応率が向上する場合がある。
これらの任意の反応形式において、同一、もしくは異なる2つ以上の反応形式を連結して水素化反応を行うことができる。より高い水素化反応率を目指す場合、固定床を用い、プラグフロー形式で反応させる工程を含むことが望ましい場合がある。
水素化触媒の使用量は、使用する水素化触媒の種類、重合体濃度、反応形式などにより、触媒の使用量は異なるため限定することが困難であるが、懸濁床で実施する場合、水素化反応液100質量部あたりの触媒使用量は、通常、0.01〜20質量部、好ましくは、0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。使用量が少ない場合、水素化反応に長時間必要となり、また、使用量が多い場合、不均一触媒を混合する動力が多く必要になる。また、固定床を用いる場合、反応溶液あたりの触媒使用量を規定することが困難であり、任意の量を使用することができる。
固定床で水素化反応を行う場合、公知の手法をとることができる。多管式などの縦型の塔型反応器に触媒を充填し、そこにβ−ピネン系重合体溶液と水素を供給して水素化するものであり、このとき、重合体溶液と水素はともに上部から供給する方法、ともに下部から供給する方法、重合対溶液を上部から水素を下部から供給する方法などが挙げられる。
使用した水素化触媒は、水素化反応終了後に必要に応じ重合体と分離することができる。分離は公知である任意の方法をとることができるが、不均一系触媒を使用した場合、連続もしくはバッチ式濾過、遠心分離、静置による沈降・デカンテーションにより分離できる。これらの分離手法を用い触媒を分離したとしても、微量の金属成分が重合体に残留していることがある。この場合、得られるβ−ピネン系重合体の水素化物の性能(耐候性など)が低下することがある。溶存している金属成分を除去するため、凝集沈澱法、吸着法、洗浄法および水相抽出法などを用いることにより残留する金属を分離することができる。分離により回収された触媒は、一部除去、一部新規触媒を追加するなどの手段を必要によりとった後に、再び水素化反応に使用することができる。
水素化後のβ−ピネン系重合体は、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することができる。
本発明のβ−ピネン系重合体は、単独で使用することもできるし、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン系ブロック共重合体等の他の重合体と配合した組成物として使用することもできる。組成物として使用する場合、安定剤、滑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維;タルク、マイカ、モンモリロナイト、スメクタイト、シリカ、木粉等の充填剤;各種カップリング剤等の任意成分を必要に応じて配合することができる。
[IV]成形体
本発明のβ−ピネン系重合体の成形体は、常法に従って得ることが可能である。成形方法としては、射出成形法、熱プレス成形法、押出成形法、切削加工法、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いる方法等の公知の手法が、適宜に採用される。その中でも、生産性の観点から、射出成形法、熱プレス成形法、押出成形法が、好ましく用いられる。
・光学材料
本発明のβ−ピネン系重合体は、対称性良く主鎖中に芳香族が多く存在するため、高い屈折率と低い複屈折とを両立させられることから種々の光学材料に使用可能であり、その範囲は特に限定されないが、耐熱性に優れ、低吸水性および高透明性が要求される光学材料に好適である。光学材料としては、例えばレンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ、銀塩カメラ用レンズ、デジタル電子カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、プロジェクター用レンズ、複写機用レンズ、携帯電話用カメラレンズ、メガネ用レンズ、青色発光ダイオードを使用するデジタル光ディスク装置用非球面ピックアップレンズ、ロッドレンズ、ロッドレンズアレー、マイクロレンズ、マイクロレンズアレー、各種レンズアレー、ステップインデックス型、グラジエントインデックス型、シングルモード型、マルチコア型、偏波面保存型、側面発光型等の光ファイバー、光ファイバーコネクタ、光ファイバー用接着剤、デジタル光ディスク(コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルディスク、ビデオディスク、コンピュータディスク、導光体、光拡散性成形体、液晶用ガラス基板代替フィルム、位相差フィルム、帯電防止層、反射防止層、ハードコート層、透明導電層、アンチグレア層等の機能性を有する機能性薄膜、フラットパネルディスプレー用反射防止フィルム、タッチパネル用基板、透明導電性フィルム、反射防止フィルム、防げんフィルム、電子ペーパー用基板、有機エレクトロルミネッセンス用基板、プラズマディスプレー用前面保護板、プラズマディスプレー用電磁波防止板、フィールドエミッションディスプレー用前面保護板、圧電素子を使用し特定部位の光を前面拡散させる導光板、偏光子、検光子等を構成するプリズム、回折格子、内視鏡、高エネルギーレーザーを導波する内視鏡、ダハミラーに代表されるカメラ用ミラーもしくはハーフミラー、(自動車用ヘッドライトレンズ、自動車用ヘッドライト用リフレクター等の)車両用灯具に使用される透明材、太陽電池用前面保護板、住宅用窓ガラス、移動体(自動車、電車、船舶、航空機、宇宙船、宇宙基地、人工衛星等)用窓ガラス、窓ガラス用反射防止フィルム、半導体露光時の防塵フィルム、電子写真感光材用保護フィルム、紫外光により書き込みもしくは書き換え可能な半導体(EPROM等)封止材、発光ダイオード封止材、紫外光発光ダイオード封止材、白色発光ダイオード封止材、SAWフィルター、光学的バンドパスフィルター、第二次高調波発生体、カー効果発生体、光スイッチ、光インターコネクション、光アイソレーター、光導波路、有機エレクトロルミネッセンスを使用した面発光体部材、半導体微粒子を分散させた面発光体部材、蛍光物質を溶解または分散させた蛍光体等が挙げられる。
・導光体
導光体は、公知の各種の形状において形成され得るものであって、例えば板状、ブロック状、ロッド状、屈曲形状、湾曲形状等の各種の形態とされ、また少なくとも片面にスクリーン印刷でドットを付けたものや、例えばV溝のような線状パターン、半球レンズ状の凹凸、シボパターンを導光体の表面に賦型したものも、その対象とされる。
・光拡散性成形体
光拡散性成形体は、上記したβ−ピネン系重合体に対して、従来と同様な光拡散剤が更に配合されて含有せしめられ、そしてその得られた光拡散性組成物を用いて、板状、ブロック状等の所定の形状の成形体が成形されることとなる。
・機能性薄膜
β−ピネン系重合体を用いた基板の少なくとも片面に、コーティングによって形成される機能性薄膜は、特に限定されるものではないが、好ましくは帯電防止層、反射防止層、ハードコート層、透明導電層、アンチグレア層等の機能性を有する薄膜である。
・光学フィルム
β−ピネン系重合体を用いた光学用フィルムは、特に偏光板保護フィルムに好適となる。そのような光学用フィルムを成形する方法は、特に制限されるものではなく、例えば、溶液流延法や溶融押出法等の、従来から公知の各種の方法を採用することが出来る。その中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、地球環境上や作業環境上、或いは製造コストの観点から、好ましく採用される。また、位相差等の光学性能を特に向上させるためには、溶液流延法も、有利に用いられる。
・レンズシート
レンズシートとは、シート主面の少なくとも一方に形成された1つ又は複数のレンズ形状によって構成されるレンズ群からなるレンズ部にて、シートに照射された光線の方向を変化させ、集光、屈折、反射、分散等の機能を有するものを指している。そして、そのようなレンズシートとしては、一般に、プリズムシート、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズアレイシート等と称すものが、含まれることとなる。
・プラスチックレンズ
プラスチックレンズとは、レンズ機能を有するプラスチック成形体を意味し、特に限定されるものではないが、眼鏡レンズ、カメラレンズ、双眼鏡レンズ、顕微鏡レンズ、プロジェクターレンズ、fθレンズ又はピックアップレンズ等の各種レンズが、該当する。
・車両用灯具
車両用灯具の「灯具」とは、光源とランプカバーとを少なくとも有するものとして、用いられており、また「車両」とは、二輪自動車、三輪自動車、四輪自動車、その他の自動車、鉄道車両、フォークリフトその他の産業用車両等々、広義の車両を意味するものとして、用いられている。そして、「車両灯具」とは、こうした各種車両に装着された照明用若しくは識別用、標識用の灯具を意味し、特に限定はされないが、前照灯(ヘッドランプ)、尾灯(テールランプ)、制動灯(ストップランプ)、方向指示灯(所謂ウインカー)、車幅灯、後退灯等が該当する。
・医療機材
医療用器材としては、例えば、注射用の液体薬品容器、アンプル、プレフィルドシリンジ、輸液用バッグ、固形薬品容器、点眼薬容器、点滴薬容器等の、液体又は粉体、固体の薬品容器;血液検査用のサンプリング用試験管、採血管、検体容器等のサンプル容器;メスやカンシ(鉗子)、ガーゼ、コンタクトレンズ等の医療材料等の滅菌容器;注射器等の医療器具;ビーカー、シャーレ、フラスコ等の医療用実験器具;医療検査用プラスチックレンズ等の光学部品;医療用輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブ等の配管材料;義歯床、人工心臓、人造歯根等の人工臓器やその部品等が、例示される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体例に限定されるものではない。また、例示した物質等は、特に説明がない限り、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限
定されるものではない。
参考例1
充分乾燥させたガラス製コック付フラスコを充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサンの1100質量部と、脱水した塩化メチレンの1100質量部と、蒸留精製したβ−ピネンの40質量部と、脱水したトリエチルアミンの4.5質量部とを加え、−78℃の温度に冷却した。更に、−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液の70質量部を加え、重合を開始した。10分間重合した後、メタノールの10質量部を添加して、重合を終了させた。その後、室温にて減圧して塩化メチレンを除いた後、蒸留水の800質量部にクエン酸の20質量部を添加した水溶液を添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。かくして得られたメチルシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(60/30vol%)の混合溶媒の10000質量部に再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン重合体(A1)の39質量部を得た。この得られたβ−ピネン重合体(A1)の重量平均分子量は53,000、数平均分子量は32,000であった。
参考例2
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したN−ヘキサン184質量部、脱水した塩化メチレン210質量部、脱水したジエチルエーテル0.5質量部を加え、−78℃に冷却した。さらに−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液7.2質量部を加えた。さらに−78℃に保持した状態でp−ジクミルクロライドの0.1mol/Lヘキサン溶液3.0質量部を加えたところ赤燈色に変化した。ただちに蒸留精製したβ−ピネン60質量部を1時間かけて添加したところ次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。β−ピネンの添加終了後、メタノール30質量部を添加して、反応を終了した。蒸留水100質量部にクエン酸5質量部を添加した水溶液を添加し、5分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒5000質量部に再沈後、十分に乾燥してβ−ピネン重合体(A2)60質量部を得た。得られたβ−ピネン重合体(A2)の重量平均分子量は116,000、数平均分子量は51,000、ガラス転移温度は95℃であった。
実施例1
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器内に、シクロヘキサンの27質量部およびイソプロパノール1質量部と、上記で得られたβ−ピネン重合体(A1)の12質量部を収容し、撹拌することにより、β−ピネン重合体(A1)を完全に溶解した。その後、水素添加触媒として、36.6%ニッケル担持アルミナ(品番:N163A 日揮化学株式会社製)の7質量部を加え、撹拌して、充分に分散させた後、かかる耐圧容器内を充分に水素で置換し、撹拌しながら、150℃、水素圧力3MPa で、30分反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液を0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して、触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒の3000質量部に再沈殿せしめ、その後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体(H1)の11質量部を得た。かくして得られたβ−ピネン系重合体(H1)のH−NMRを測定したところ、残存するオレフィン性二重結合は6.5モル%、残存する芳香族環は6.3モル%であった。ガラス転移温度は124℃であった。またH−NMRにおいて6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は1.4×10−2、また4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は3.7×10−3であった。この得られたβ−ピネン系重合体(H1)の重量平均分子量は52,000、数平均分子量は31,200であった。β−ピネン系重合体(H1)評価結果を表1に示す。
実施例2
実施例1の水素化反応において、反応時間を30分から3時間30分に変更した以外は実施例1と同様にしてβ−ピネン系重合体(H2)を得た。β−ピネン系重合体(H2)評価結果を表1に示す。
実施例3
β−ピネン重合体(A1)に変えて、参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A2)を用いる以外は実施例1と同様にして、β−ピネン系重合体(H3)を得た。β−ピネン系重合体(H3)のH−NMRを測定したところ、残存するオレフィン性二重結合は6.5モル%、残存する芳香族環は6.3モル%であった。ガラス転移温度は125℃であった。またH−NMRにおいて6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は1.4×10−2、また4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は3.7×10−3であった。この得られたβ−ピネン系重合体(H3)の重量平均分子量は114,000、数平均分子量は49,300であった。β−ピネン系重合体(H3)評価結果を表1に示す。
実施例4
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器内に、シクロヘキサンの103質量部と、参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A2)の45質量部を収容し、撹拌することにより、β−ピネン重合体(A2)を完全に溶解した。その後、水素添加触媒として、5質量%パラジウム担持カーボン(品番:E106O/W エボニック デグサ ジャパン株式会社製)の0.5質量部を加え、撹拌して、充分に分散させた後、かかる耐圧容器内を充分に水素で置換し、撹拌しながら、200℃、水素圧力:3MPaで、9時間反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液を0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して、触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒の3000質量部に再沈殿せしめ、その後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体(A3)の42質量部を得た。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器内に、シクロヘキサンの27質量部およびイソプロパノール1質量部と、得られたβ−ピネン重合体(A3)の3.0質量部を収容し、撹拌することにより、β−ピネン重合体(A3)を完全に溶解した。その後、水素添加触媒として、36.6質量%ニッケル担持アルミナ(品番:N163A 日揮化学株式会社製)の1.8質量部を加え、撹拌して、充分に分散させた後、かかる耐圧容器内を充分に水素で置換し、撹拌しながら、200℃、水素圧力:3MPa で、6時間反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液を0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して、触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒の300質量部に再沈殿せしめ、その後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体(H4)の2.7質量部を得た。かくして得られたβ−ピネン系重合体(H4)のH−NMRを測定したところ、残存するオレフィン性二重結合は0.5モル%、残存する芳香族環は3.4モル%であった。ガラス転移温度は129℃であった。またH−NMRにおいて6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は7.7×10−3、また4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は2.7×10−4であった。この得られたβ−ピネン系重合体(H4)の重量平均分子量は100,000、数平均分子量は43,700であった。β−ピネン系重合体(H4)評価結果を表1に示す。
比較例1
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器内に、シクロヘキサンの127質量部と、上記で得られたβ−ピネン重合体(A1)の25質量部を収容し、撹拌することにより、β−ピネン重合体(A1)を完全に溶解した。その後、水素添加触媒として、5%パラジウム担持アルミナ粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)の7.5質量部を加え、撹拌して、充分に分散させた後、かかる耐圧容器内を充分に水素で置換し、撹拌しながら、160℃、水素圧力:6MPa で、25時間反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液を0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して、触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒の3000質量部に再沈殿せしめ、その後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体(B1)の24質量部を得た。かくして得られたβ−ピネン系重合体(B1)のH−NMRを測定したところ、残存するオレフィン性二重結合は1.7モル%、残存する芳香族環は0.4モル%であった。ガラス転移温度は129℃であった。またH−NMRにおいて6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は9.1×10−4、また4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は9.7×10−4であった。この得られたβ−ピネン系重合体(B1)の重量平均分子量は51,900、数平均分子量は31,600であった。β−ピネン系重合体(B1)評価結果を表1に示す。
比較例2
特開2002−121231の実施例12と同様にしてインデン/β−ピネン(質量比60/40)共重合体(B2)を得た。得られたインデン/β−ピネン共重合体(B2)の重量平均分子量は64,000、数平均分子量は24,300であった。インデン/β−ピネン共重合体(B2)の評価結果を表1に示す。
比較例3
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器内に、シクロヘキサンの127質量部と、参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A2)の25質量部を収容し、撹拌することにより、β−ピネン重合体(A2)を完全に溶解した。その後、水素添加触媒として、5%パラジウム担持カーボン(品番:E1002NN/W エボニック デグサ ジャパン株式会社製)の7.5質量部を加え、撹拌して、充分に分散させた後、かかる耐圧容器内を充分に水素で置換し、撹拌しながら、130℃、水素圧力:15MPa で、25時間反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液を0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して、触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒の3000質量部に再沈殿せしめ、その後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体(B3)の24質量部を得た。かくして得られたβ−ピネン系重合体(B3)のH−NMRを測定したところ、残存するオレフィン性二重結合は0.023モル%、残存する芳香族環は0.0027モル%であった。ガラス転移温度は132℃であった。またH−NMRにおいて6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は5.9×10−6、また4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は1.3×10−5であった。この得られたβ−ピネン系重合体(B3)の重量平均分子量は103,400、数平均分子量は45,400であった。β−ピネン系重合体(B3)評価結果を表1に示す。β−ピネン系重合体(B3)評価結果を表1に示す。
参考例3[水素添加触媒の調製]
トリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)をあらかじめシクロ
ヘキサンに20%の濃度で溶解しておいた溶液を、窒素置換したガラス製ナスフラスコに
窒素気流下で29.2ml添加し、0℃に冷却した。そこに、2−エチルヘキサン酸ニッ
ケル(キシダ化学株式会社製)のトルエン溶液(ニッケル6%)を窒素気流下で7.4m
l添加し、均一系水素添加触媒を調製した。
比較例4
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器内に、シクロヘキサンの470質量部と、参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A2)の30質量部を収容し、撹拌することにより、β−ピネン重合体(A2)を完全に溶解した。耐圧容器内を十分に水素で置換し、室温下、1000rpmで撹拌しながら、参考例4で調製した水素添加触媒を7質量部添加した。ただちに、水素で1MPaまで加圧し、50℃まで昇温した。50℃に昇温後、さらに水素添加触媒を7質量部添加し、120℃まで昇温した。120℃で9時間反応させた後、常圧・室温に戻した。蒸留水100質量部にクエン酸8.1質量部と30%過酸化水素水溶液4.8質量部を添加した水溶液を耐圧容器に添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。得られたシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒の6000質量部に再沈殿せしめ、その後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体(B4)の29質量部を得た。かくして得られたβ−ピネン系重合体(B4)のH−NMRを測定したところ、残存するオレフィン性二重結合は50.0モル%、残存する芳香族環は0.4モル%であった。ガラス転移温度は115℃であった。またH−NMRにおいて6〜8ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は9.4×10−4、また4.5〜6ppmのプロトンの積分値の全プロトンの積分値に対する割合は2.9×10−2であった。この得られたβ−ピネン系重合体(B4)の重量平均分子量は113,000、数平均分子量は50,800であった。β−ピネン系重合体(B4)評価結果を表1に示す。
なお、上記した各工程で得られる材料について、また下記の工程で製造される材料について、その物性測定は、以下の如くして行った。
○成形
得られたβ−ピネン系重合体は、プレス成形もしくは射出成形にて試験片を作製した。プレス成形は180℃にて50mm×50mm×3mmtサイズの成形体を得た。射出成形は、シリンダ温度240℃、金型温度60℃、金型は50mm×50mm×3mmtを用いて実施した。
○分子量
数平均分子量及び重量平均分子量は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求められたものである。ここでは、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel・GMH−Mの2本とG2000Hの1本とを直列に繋いだものを用いた。
○残存二重結合率
JEOL製 400MHzマグネットの核磁気共鳴装置を用いて室温にて1000回積算にて測定した。得られたH−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)。4.5〜6ppmの積分値をβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合(1H)とし、6〜8ppmの積分値を芳香族環(4H)とし、残存二重結合率および芳香族環生成率を算出した。芳香族環生成率を全単量体単位数に対するモル%で算出した。二重結合水素添加率は芳香族環生成単位を除いた全単量体単位数に対するモル%で算出した。
○ガラス転移温度(Tg)
充分に乾燥して、溶媒を除去したサンプルを用いて、示差走査熱量測定法(DSC)により測定した。ここでは、測定装置としては、メトラー・トレド株式会社製のDSC30(品番)を用いた。
○全光線透過率
株式会社村上色彩研究所製のHR−100(品番)を用いて、JIS−K−7361−1に準拠して、測定した。
○屈折率(n
株式会社アタゴ製のDR−M2(品番)を用いて、JIS−K−7142に準拠して、25℃で測定した。
○光弾性係数
プレス成形により作成した200μmのフィルムを、Tgよりも20℃低い温度で、一晩アニールした後、Tgよりも20℃高い温度で、長軸方向に引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションを、エリプソメーターM220(日本分光株式会社製)で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から、光弾性係数Kを算出した。
○:K ≦ 2.0×10−10 cm/dyn 良好
×:2.0×10−10 cm/dyn < K 不良
○耐光性試験
ASTM−G53に準じて、100時間の促進暴露試験を行い、YI(イエロー・インデックス)の試験前と試験後における黄変度(ΔYI)を測定した。ここでは、紫外線曝露試験機(株式会社東洋精機製作所製ATLAS−UVCON)を用いた。YIの測定は、JIS−K−7373に準じて行った。そして、以下の判定基準に従って、評価した。
ΔYI=(紫外線暴露100時間後のYI)−(紫外線暴露前のYI)
○:ΔYI ≦ 10 長期の耐光性が良好
×:10 < ΔYI 長期の耐光性が不良
Figure 2009125828
実施例の結果からいずれもβ−ピネン単位を60質量%以上含有した重合体であって、β−ピネン由来の6員環のうち1モル%以上が芳香族性6員環であるβ−ピネン系重合体であるため、屈折率が高く、全光線透過率および光弾性係数および耐光性のバランスが良いことがわかる。
実施例および比較例1、比較例3から、芳香族環が少ないと屈折率が低くなることがわかる。屈折率が低いとレンズに用いた場合レンズが厚くなり、β−ピネン系重合体の使用量が多くなるだけでなく、レンズを組み込んだ製品自体が大きくなってしまう。
比較例2から共重合性単量体との共重合によりβ−ピネン由来以外の芳香族環が多いと耐熱性や屈折率は良好であるものの、全光線透過率および光弾性係数が悪く、光学性能が劣ることがわかる。また、オレフィン性二重結合の水素添加率が低いと耐光性が低いことがわかる。
実施例および比較例5からオレフィン性二重結合が90モル%以上水素化し、かつβ−ピネン由来の6員環のうち1モル%以上を芳香族性6員環にするためには水素化触媒として担持金属触媒(不均一触媒)が好ましいことがわかる。

Claims (7)

  1. β−ピネン単位を60質量%以上含有した重合体であって、β−ピネン由来の6員環のうち1モル%以上10モル%以下が芳香族性6員環であるβ−ピネン系重合体。
  2. オレフィン性二重結合が90モル%以上水素化されている請求項1に記載のβ−ピネン系重合体。
  3. β−ピネン単位を60質量%以上含有した重合体であって、p−フェニレン基が0.55質量%以上5.5質量%以下であるβ−ピネン系重合体。
  4. シクロヘキセン−1,4−ジイル基が5.6質量%以下である請求項3に記載のβ−ピネン系重合体。
  5. β−ピネン単位の含有量が90質量%以上である請求項1または3に記載のβ−ピネン系重合体。
  6. 請求項1または3に記載のβ−ピネン系重合体からなる成形体。
  7. β−ピネン単位を60質量%以上含有する重合体を、不均一触媒存在下、水素圧0.1MPa〜5MPaにてオレフィン性二重結合を水素化する、請求項1または3に記載のβ−ピネン系重合体の製造方法。
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