WO2008029714A1 - Roulement à rouleaux, structure de support d'arbre à cames, et moteur à combustion interne - Google Patents

Description

明 細 書

ころ軸受、カムシャフト支持構造および内燃機関

技術分野

[0001] この発明は、自動車エンジン用のカムシャフト、クランクシャフト、およびロッカーシャ フト等を支持するころ軸受、ころ軸受を採用したカムシャフト支持構造および内燃機 関に関するものである。

背景技術

[0002] 従来の自動車および自動二輪車用内燃機関に採用されるカムシャフト支持構造が 、例えば、特開 2005— 90696号公報に記載されている。図 44を参照して、同公報 に記載されているカムシャフト支持構造は、カムローブ 201a、ころ軸受 202により支 持される円筒状のジャーナル部 201b、および端部大径部 201cを有するカムシャフト 201と、シリンダヘッド 208およびキャップ 209で構成されるハウジングと、複数のころ 203、略半円筒状の保持体 204, 205、および略半円筒状のレース板 206, 207とを 有し、カムシャフト 201をハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受 202とを備 X·る。

[0003] ここで、ジャーナル部 201bの外径寸法は、カムローブ 201aの外径の最大寸法お よび端部大径部 201cの外径寸法より小さくなつている。そのため、ジャーナル部 201 bに配置されて、カムシャフト 201を回転自在に支持するころ軸受 202は、カムシャフ ト 201の軸方向から揷入することができない。

[0004] そこで、ころ軸受 202は、複数のころ 203と、周方向に二分された略半円筒状の保 持体 204, 205と、シリンダヘッド 208およびキャップ 209の間に酉己置される周方向に 二分された略半円筒状のレース板 206, 207とを有している。また、図 45を参照して 、レース板 207は円周方向両端部それぞれに径方向外側に突出する 2つの突起 20 7aを有し、キャップ 209は突起 207aに対応するくぼみ 209aを有する。

[0005] そして、この突起 207aとくぼみ 209aとを係合させることによって、ころ軸受 202の回 転時に、レース板 207とキャップ 209との間での周方向および軸方向の相対移動を 禁止することができると記載されている。なお、レース板 206とシリンダヘッド 208との 間も同様の構成である。

[0006] 上記構成のレース板 206, 207は、冷間圧延鋼板（SPC)等の鋼板をプレス加工し て製造されるのが一般的である。また、所定の形状に形成後、硬度等の所定の機械 的性質を得るために、熱処理が施される。

[0007] 上記公報に記載されているころ軸受 202において、突起 207aは、レース板 207の 内径面に径方向外側への力を加えて外径面を押し出すことによって形成される。そ の結果、ころ 203の軌道面となるレース板 207の内径面には、くぼみが形成されるこ ととなる。これは、ころ 203がくぼみ上を通過する際に振動が発生したり、ころ 203の 表面が早期に剥離する等、ころ 203のスムーズな回転を阻害する原因となる。

[0008] さらに、ころ軸受 202には、レース板 206, 207に設けられた油穴（図示せず）、また はカムシャフト 201に設けられた油穴（図示せず）から潤滑油が流入する力 軸受内 部の潤滑油の流れが保持器 204, 205に遮られて、軸受全域に均等に供給すること ができないという問題がある。

[0009] なお、この問題は、カムシャフトを支持するころ軸受のみならず、クランクシャフトや ロッカーシャフトを支持する軸受にも同様に起こりうる。

[0010] また、上記に示したようなカムシャフト 201周辺の潤滑構造力 例えば、特開 2000 - 110533号公報に記載されて!/、る。同公報に記載されて!/、る潤滑構造を図 44を 参照して説明すると、カムシャフト 201には、内部に軸方向に伸びるオイル通路（図 示省略）と、オイル通路からジャーナル部 201bの表面に向かって延びる複数の油孔 (図示省略）とが設けられている。一方、ハウジングには、ジャーナル部 201bに対面 する位置に外部から潤滑油を供給する複数の給油路（図示省略）およびオイル溝 ( 図示省略）が形成されている。そして、ハウジングに設けられた給油路から供給される 潤滑油が、オイル溝、カムシャフト 201の油孔、オイル通路を流れて各部に分配され

[0011] 特開 2000— 110533号公報に記載されている潤滑構造において、ハウジングに 設けられるオイル溝を切削加工によって形成する場合、内燃機関の製造工数および 製造コストが増大する。この問題は、特に気筒数の多いエンジンにおいて顕著である 。また、ハウジングを铸造によって製造する場合、熱による型の変形 (だれ)が問題と なる。これは、オイル溝の位置や形状に誤差を生じる原因となる。

[0012] また、上記構成のカムシャフト支持構造において、カムシャフト 201とレース板 206, 207の軸方向端部との間には隙間が形成されているので、ハウジングの給油路から ころ軸受 202の内部に供給された潤滑油の一部がこの隙間から軸受外部に流出し、 カムシャフト 201の油孔に達する潤滑油量が減少する。その結果、オイル通路を流れ て各部に分配される潤滑油量も減少するので、全体としての潤滑性も低下する。

[0013] また、カムシャフト 201には、回転時に所定の方向に偏った荷重が作用するので、 その円周方向において、相対的に大きな荷重が負荷される領域 (以下、「負荷領域」 という）と、相対的に小さな荷重しか負荷されない領域 (以下、「非負荷領域」という）と に区分される。したがって、ハウジングの給油路から供給される潤滑油は、負荷領域 に多く供給されるのが望ましレ、。

発明の開示

[0014] そこで、この発明の目的は、製造工数および製造コストを抑えると共に、潤滑性に 優れたころ軸受を提供することである。また、このようなころ軸受を採用したカムシャフ ト支持構造および内燃機関を提供することを目的とする。

[0015] また、この発明の他の目的は、自動車用エンジンのカムシャフト等を支持する軸受 であって、潤滑油の保持性を向上させたころ軸受を提供することである。このようなこ ろ軸受をカムシャフトを支持する軸受として採用することにより、潤滑性に優れ、信頼 性の高!/、カムシャフト支持構造および内燃機関を提供することを目的とする。

[0016] また、この発明の他の目的は、ころ軸受の潤滑油の保持性を向上させることにより、 潤滑性に優れたころ軸受を提供することである。また、上記のようなころ軸受を採用す ることにより、潤滑性に優れ、信頼性の高いカムシャフト支持構造および内燃機関を 提供することを目的とする。

[0017] また、この発明の他の目的は、ころ軸受の潤滑油の保持性を向上させると共に、潤 滑油を負荷領域に重点的に供給可能なカムシャフト支持構造を提供することである。 また、このようなカムシャフト支持構造を採用した内燃機関を提供することを目的とす

[0018] さらに、この発明の他の目的は、自動車用エンジンのカムシャフト等を支持する軸 受であって、潤滑性に優れたころ軸受を提供することである。

[0019] この発明に係るころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成さ れる外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪 部材の外径面には、円周方向に延びる油溝が形成されている。

[0020] 上記構成のころ軸受を採用することにより、ハウジングの内径面に油溝を形成する 必要がなくなる。その結果、ハウジングの製造工数および製造コストを抑制することが 可能となる。

[0021] 好ましくは、隣接する外輪部材の突合部に形成される円周方向隙間は、油溝を含 む領域で相対的に大きぐその他の領域で相対的に小さい。これにより、油溝を流れ る潤滑油力 隣接する外輪部材の間の円周方向隙間を通って軸方向に流出するの を才卬制すること力 Sでさる。

[0022] 好ましくは、外輪部材は、軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部と、鍔部の先 端から軸方向内側に延びる屈曲部とを有する。そして、屈曲部の内径面は、軸受内 部からの潤滑油の流出を防止するシール面として機能する。外輪部材の軸方向端部 に径方向内側に突出する鍔部と、鍔部の先端を軸方向内側に折り曲げて形成される 屈曲部とを設けたことにより、軸受内部の潤滑油が軸方向の隙間から流出するのを 防止すること力 Sできる。これにより、潤滑性に優れたころ軸受を得ることができる。

[0023] 好ましくは、屈曲部の内径面と前記複数のころに内接する仮想円との間の隙間 δ は、 5 ^ 111≤ δ≤50 111を満たす。軸受内部から軸方向端部の隙間を通って流出す る潤滑油量を減少させるには、ころ軸受の軸方向の隙間を上記の範囲内とすること が望ましい。なお、 δ〉50 mとすると、潤滑油の流出を防ぐシール面としての機能 は低い。一方、 δ < 5 111とすると、軸受回転時に屈曲部と回転軸とが接触してスム ーズな回転を阻害するおそれがある。

[0024] さらに好ましくは、ころ軸受は、屈曲部の内径面に接する位置に軸受内部からの潤 滑油の流出を防止する円環状部材をさらに備える。これにより、さらに効果的に潤滑 油の流出を防止することができる。

[0025] 一実施形態として、ころは端面から突出する突出部を有しており、屈曲部の外径面 は、突出部を案内するころ案内部として機能し、ころは隣接するころ軸受が相互に接 触するように配置された総ころ形式の軸受である。上記構成のころ軸受は、屈曲部に よってころの回転を案内することができる。したがって、この発明は総ころ形式のころ 軸受に特に適している。また、総ころ形式とすることにより、ころ軸受の負荷容量が増 大する。

[0026] 好ましくは、外輪部材は、その軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部を有し、 少なくとも鍔部の円周方向端部には、相対的に剛性の低い剛性低下部が設けられて いる。

[0027] 一実施形態として、剛性低下部における鍔部の突出高さは、その他の領域におけ る鍔部の突出高さより低くなつている。

[0028] 好ましくは、隣接するころの間隔を保持する保持器とを備える。そして、保持器は径 方向に貫通する油路を有する。保持器に径方向に貫通する油路を設けることにより、 ころ軸受に流入する潤滑油が軸受全体に均等に供給されるので、潤滑性に優れたこ ろ車由受を得ること力できる。

[0029] 一実施形態として、保持器は、一対のリング部と、一対のリング部の間に配置される 複数の柱部と、隣接する柱部の間にころを収容するポケットとを有し、油路は柱部に 設けられる。さらに好ましくは、柱部は隣接するポケットを周方向に連通する油溝をさ らに有する。

[0030] 他の実施形態として、保持器は、ころを収容する複数の独立したポケット部と、複の ポケット部を円周方向に連結する連結部とを有し、油路は隣接するポケット部の間に 設けられる。さらに他の実施形態として、保持器はころを収容する複数のポケットを軸 方向に 2列有しており、油路は 2つのポケット列の間に設けられる。

[0031] この発明に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフトと、カムシャフトを収容するハ ウジングと、カムシャフトをハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備え る。ハウジングのカムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開口が設 けられている。ころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成され る外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪部 材の外径面には、油路の開口に対面する位置を含んで円周方向に延びる油溝が形 成されている。 [0032] 上記構成のカムシャフト支持構造において、油溝を外輪部材の外径面に形成する ことにより、ハウジングの製造工数および製造コストを削減することができる。一方、外 輪部材は順送プレス等によって製造可能であるので、容易に油溝の形成工程を追 加しても大きなコストアップとはならない。

[0033] また、上記構成のころ軸受は、製造誤差や熱膨張等を考慮して隣接する外輪部材 の突合部分にある程度の隙間が設けられてレ、る。ハウジングの油路から供給される 潤滑油は、この隙間からも軸受内部に流入することができるので、一体型の外輪を採 用した軸受と比較して、より潤滑性に優れたカムシャフト支持構造を得ることができる

[0034] 一実施形態として、油溝はコイニング加工によって形成されている。油溝の形成に コイニング加工を採用することにより、高精度の加工が可能となる。

[0035] 好ましくは、外輪部材は、内径面に前記ころと接触する軌道面が形成されている中 央領域と、中央領域に隣接する端部領域とに区分され、油溝は端部領域に配置され る。このように、軌道面となる部分から外れた位置に油溝を形成することにより、ころの スムーズな回転を阻害することがなレ、。

[0036] この発明に係る内燃機関は、ハウジングと、ハウジング内に設けられたシリンダと、 シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、弁の開閉のタイミングを制 御するカムシャフトと、カムシャフトを回転自在に支持するころ軸受とを備える。ハウジ ングのカムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開口が設けられてい る。ころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、 外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪部材の外径面 には、油路の開口に対面する位置を含んで円周方向に延びる油溝が形成されてい

[0037] 上記構成のカムシャフト支持構造を採用することにより、潤滑性に優れ、信頼性の 高い内燃機関を得ることができる。

[0038] この発明によれば、製造工数および製造コストを抑えると共に、潤滑性に優れたこ ろ軸受、およびこのようなころ軸受を採用した信頼性の高いカムシャフト支持構造お よび内燃機関を得ることができる。 [0039] この発明に係るころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成さ れる外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。外輪部材は、 軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部と、鍔部の先端力 軸方向内側に延び る屈曲部とを有する。そして、屈曲部の内径面は、軸受内部からの潤滑油の流出を 防止するシール面として機能する。

[0040] 上記構成のように、外輪を複数の外輪部材に分割することにより、カムシャフトのよう に軸受を軸方向から揷入することのできな!/、場所にも適用することが可能となる。ま た、外輪部材の軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部と、鍔部の先端を軸方向 内側に折り曲げて形成される屈曲部とを設けたことにより、軸受内部の潤滑油が軸方 向の隙間から流出するのを防止することができる。これにより、潤滑性に優れたころ軸 受を得ること力 Sでさる。

[0041] 好ましくは、屈曲部の内径面と前記複数のころに内接する仮想円との間の隙間 δ は、 5 ^ 111≤ 6≤ 50 mを満たす。軸受内部から軸方向端部の隙間を通って流出す る潤滑油量を減少させるには、ころ軸受の軸方向の隙間を上記の範囲内とすること が望ましい。なお、 δ〉50 mとすると、潤滑油の流出を防ぐシール面としての機能 は低い。一方、 δ < 5 111とすると、軸受回転時に屈曲部と回転軸とが接触してスム ーズな回転を阻害するおそれがある。

[0042] さらに好ましくは、ころ軸受は、屈曲部の内径面に接する位置に軸受内部からの潤 滑油の流出を防止する円環状部材をさらに備える。これにより、さらに効果的に潤滑 油の流出を防止することができる。

[0043] 一実施形態として、ころは端面から突出する突出部を有しており、屈曲部の外径面 は、突出部を案内するころ案内部として機能し、ころは隣接するころ軸受が相互に接 触するように配置された総ころ形式の軸受である。上記構成のころ軸受は、屈曲部に よってころの回転を案内することができる。したがって、この発明は総ころ形式のころ 軸受に特に適している。また、総ころ形式とすることにより、ころ軸受の負荷容量が増 大する。

[0044] この発明に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフトと、カムシャフトを収容するハ ウジングと、カムシャフトをハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備え る。ころ軸受に注目すると、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成され る外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。外輪部材は、軸 方向端部から径方向内側に突出する鍔部と、鍔部の先端を軸方向内側に折り曲げ て形成される屈曲部とを有する。そして、屈曲部の内径面は、軸受内部からの潤滑油 の流出を防止するシール面として機能する。

[0045] 上記構成のカムシャフト支持構造は、ころ軸受の軸方向の隙間からの潤滑油の流 出量が少ないので、ハウジングの油路から供給される潤滑油の大部分がカムシャフト の油孔に到達する。その結果、潤滑性に優れたカムシャフト支持構造を得ることがで きる。

[0046] この発明に係る内燃機関は、ハウジングと、ハウジング内に設けられたシリンダと、 シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、弁の開閉のタイミングを制 御するカムシャフトと、カムシャフトを回転自在に支持するころ軸受とを備える。ころ軸 受に注目すると、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、 外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。外輪部材は、軸方向端部 力、ら径方向内側に突出する鍔部と、鍔部の先端を軸方向内側に折り曲げて形成され る屈曲部とを有する。そして、屈曲部の内径面は、軸受内部からの潤滑油の流出を 防止するシール面として機能する。

[0047] この発明に係るころ軸受およびカムシャフト支持構造を採用することにより、潤滑性 に優れ、信頼性の高い内燃機関を得ることができる。

[0048] この発明によれば、ころ軸受の軸方向の隙間からの潤滑油の流出を防止することに より、ころ軸受の潤滑油の保持性が向上する。また、このようなころ軸受をカムシャフト を支持する軸受として採用することにより、耐久性に優れ、信頼性の高いカムシャフト 支持構造および内燃機関を得ることができる。

[0049] この発明に係るころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成さ れる外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪 部材は、その軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部を有し、少なくとも鍔部の円 周方向端部には、相対的に剛性の低い剛性低下部が設けられている。

[0050] 一実施形態として、剛性低下部における鍔部の突出高さは、その他の領域におけ る鍔部の突出高さより低くなつている。

[0051] 上記構成のころ軸受は、外輪部材の軸方向端部に鍔部を設けることにより、外輪部 材とカムシャフトとの間の隙間が小さくなる。その結果、潤滑油の保持性が向上し、潤 滑性に優れたころ軸受を得ることができる。また、隣接するころの間隔を保持する保 持器を有するころ軸受においては、鍔部によって保持器の軸方向の移動を規制する こと力 Sでさる。

[0052] ここで、外輪部材の軸方向端部を折り曲げて鍔部を形成したことにより、外輪部材 の剛性が向上する。その結果、外輪部材の円周方向端部がハウジングの内周面を 攻撃して、ハウジングに圧痕（磨耗）が生じるおそれがある。この磨耗粉がころ軸受の 内部に侵入すると、潤滑油が早期に劣化したり、外輪部材の軌道面やころの転動面 を傷つけたりしてころ軸受の潤滑性を著しく低下させる。そこで、例えば外輪部材の 円周方向端部における鍔部の突出高さを他の部分より相対的に低く設定して、円周 方向端部の剛性を低下させることにより、このような問題を回避することができる。

[0053] この発明に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフトと、カムシャフトを収容するハ ウジングと、カムシャフトをハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備え る。ころ軸受に注目すると、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成され る外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪部 材は、その軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部を有し、少なくとも鍔部の円周 方向端部には、相対的に剛性の低い剛性低下部が設けられている。

[0054] この発明に係る内燃機関は、ハウジングと、ハウジング内に設けられたシリンダと、 シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、弁の開閉のタイミングを制 御するカムシャフトと、カムシャフトを回転自在に支持するころ軸受とを備える。ころ軸 受に注目すると、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、 外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備える。そして、外輪部材は、その 軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部を有し、少なくとも鍔部の円周方向端部に は、相対的に剛性の低!/、剛性低下部が設けられて!/、る。

[0055] 上記構成のようなころ軸受を採用することにより、潤滑性に優れ、信頼性の高いカム シャフト支持構造および内燃機関を得ることができる。 [0056] この発明によれば、外輪部材に鍔部を設けることによりころ軸受の潤滑油保持性が 向上する。また、円周方向端部に剛性低下部を設けることにより外輪部材の円周方 向端部がハウジングを傷つけるのを防止することができる。

[0057] さらに、このようなころ軸受をカムシャフトを支持する軸受として採用することにより、 耐久性に優れ、信頼性の高いカムシャフト支持構造および内燃機関を得ることができ

[0058] この発明に係るカムシャフト支持構造は、カムシャフトと、カムシャフトを収容するハ ウジングと、カムシャフトをハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備え る。ハウジングのカムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開口が設 けられている。ころ軸受は、油路の開口に対面する位置に外径側から内径側に貫通 する油穴、および軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部を有する円弧形状の 外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、外輪の内径面に沿って配置 される複数のころとを備える。そして、カムシャフトは、その円周方向上に軸受使用時 に大きな荷重が作用する負荷領域と、軸受使用時に相対的に小さな荷重が作用す る非負荷領域とを有し、外輪部材をカムシャフトに組みこんだ時に負荷領域に位置 する鍔部には、軸方向に貫通する開口部が設けられている。

[0059] 上記構成のころ軸受は、外輪部材の軸方向端部に鍔部を設けることにより、保持器 の軸方向への移動を規制することができると共に、外輪部材とカムシャフトとの間の隙 間が小さくなるので潤滑油の保持性が向上する。また、負荷領域に位置する鍔部に 開口部を設けることにより軸受内部の潤滑油は主にここから流出するので、負荷領域 に重点的に潤滑油を供給することが可能となる。その結果、このようなころ軸受を採 用することにより、潤滑性に優れ、信頼性の高いカムシャフト支持構造を得ることがで きる。

[0060] 好ましくは、開口部は、カムシャフトからころ軸受に負荷される最大荷重の方向に延 びる仮想線から外れた位置に配置される。ころ軸受の剛性は開口部を設けた領域で ある程度低下する。そこで、最大荷重が負荷される位置を避けて開口部を設けること により、剛性低下の影響を小さくすることができる。

[0061] この発明に係る内燃機関は、ハウジングと、ハウジング内に設けられたシリンダと、 シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、弁の開閉のタイミングを制 御するカムシャフトと、カムシャフトを回転自在に支持するころ軸受とを備える。ハウジ ングのカムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開口が設けられてい る。ころ軸受は、油路の開口に対面する位置に外径側から内径側に貫通する油穴、 および軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部を有する円弧形状の外輪部材を 円周方向に複数連ねて形成される外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数の ころとを備える。そして、カムシャフトは、その円周方向上に軸受使用時に大きな荷重 が作用する負荷領域と、軸受使用時に相対的に小さな荷重が作用する非負荷領域 とを有し、外輪部材をカムシャフトに組みこんだ時に負荷領域に位置する鍔部には、 軸方向に貫通する開口部が設けられている。

[0062] 上記構成のカムシャフト支持構造を採用することにより、潤滑性に優れ、信頼性の 高い内燃機関を得ることができる。

[0063] この発明によれば、外輪部材に鍔部を設けることによりころ軸受の潤滑油保持性が 向上する。また、負荷領域に位置する鍔部に開口部を設けることにより負荷領域に重 点的に潤滑油を供給することが可能となる。その結果、ころ軸受の潤滑性および冷却 性が向上する。また、このようなころ軸受をカムシャフトを支持する軸受として採用す ることにより、耐久性に優れ、信頼性の高いカムシャフト支持構造および内燃機関を 得ること力 Sでさる。

[0064] この発明に係るころ軸受は、円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成さ れる外輪と、外輪の内径面に沿って配置される複数のころと、隣接するころの間隔を 保持する保持器とを備える。そして、保持器は径方向に貫通する油路を有する。

[0065] 上記構成のように、外輪を複数の外輪部材に分割することにより、カムシャフトのよう に、軸受を軸方向から揷入することのできない場所にも適用することが可能となる。ま た、保持器に径方向に貫通する油路を設けることにより、ころ軸受に流入する潤滑油 が軸受全体に均等に供給されるので、潤滑性に優れたころ軸受を得ることができる。

[0066] 一実施形態として、保持器は、一対のリング部と、一対のリング部の間に配置される 複数の柱部と、隣接する柱部の間にころを収容するポケットとを有し、油路は柱部に 設けられる。さらに好ましくは、柱部は隣接するポケットを周方向に連通する油溝をさ らに有する。

[0067] 他の実施形態として、保持器は、ころを収容する複数の独立したポケット部と、複の ポケット部を円周方向に連結する連結部とを有し、油路は隣接するポケット部の間に 設けられる。さらに他の実施形態として、保持器はころを収容する複数のポケットを軸 方向に 2列有しており、油路は 2つのポケット列の間に設けられる。

[0068] 好ましくは、外輪部材は、円周方向端部にハウジングと係合するように径方向外側 に折り曲げられた係合爪を有する。これにより、軸受回転時に外輪がハウジング内で 回転するのを防止することができる。

[0069] この発明によれば、外輪部材のハウジング内での確実な位置決めが可能で、かつ 、潤滑性に優れたころ軸受を得ることができる。

図面の簡単な説明

[0070] [図 1]この発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前の状態を示す 図である。

[図 2]この発明の一実施形態に係るころ軸受の外輪部材を示す図である。

[図 3]図 2の III方向から見た図である。

[図 4]図 2の IV方向から見た図である。

[図 5]隣接する外輪部材の突合部分の拡大図である。

[図 6]この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器の側面図を示す図である。

[図 7]図 6の保持器の分割部分を含む部分断面図である。

[図 8]図 2の外輪部材を突合させたときの突合部分の拡大図である。

[図 9]図 1のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を軸方向から見た断面図である

[図 10]図 1のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を径方向から見た断面図であ [図 11]この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器を径方向外側から見た図であ つて、径方向に貫通する油路の一例を示す図である。

[図 12]この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器を径方向外側から見た図であ つて、リング部の外径面に油溝を設けた例を示す図である。 園 13]この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器を径方向外側から見た図であ つて、径方向に貫通する油路の他の例を示す図である。

園 14]この発明の一実施形態に係るころ軸受の保持器を径方向外側から見た図であ つて、径方向に貫通する油路の他の例を示す図である。

園 15]この発明の一実施形態に係る複列ころ軸受の保持器を径方向外側から見た 図であって、径方向に貫通する油路の他の例を示す図である。

[図 16]この発明の一実施形態に係る外輪部材の製造工程の一部を示す図であって

、上段は平面図、下段は断面図である。

園 17]図 1の他の実施形態に係るころ軸受を示す図である。

園 18]図 17の部分拡大図である。

園 19]図 1の他の実施形態に係るころ軸受を示す図である。

園 20]図 1のさらに他の実施形態に係るころ軸受を示す図である。

園 21]この発明の他の実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前の状態を示 す図である。

園 22]図 21のころ軸受の外輪部材を示す図である。

[図 23]図 22の XXIII— XXIIIにおける断面図である。

[図 24]図 22の XXIV方向力も見た図である。

[図 25]図 22の XXV方向力も見た図である。

[図 26]図 21のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を軸方向から見た断面図であ

[図 27]図 21のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を径方向から見た断面図であ 園 28]図 22の外輪部材の製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段 は断面図である。

園 29]この発明の他の実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前の状態を示 す図である。

園 30]図 29のころ軸受の外輪部材を示す図である。

[図 31]図 29のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を軸方向から見た断面図であ [図 32]図 29のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を径方向から見た断面図であ

[図 33]図 30の外輪部材の製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段 は断面図である。

[図 34]図 30の他の実施形態に係るころ軸受に採用される外輪部材を示す図である。

[図 35]この発明の他の実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前の状態を示 す図である。

[図 36]図 35のころ軸受の外輪部材を示す図である。

[図 37]図 35のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を軸方向から見た断面図であ

[図 38]図 35のカムシャフト支持構造の組込み後の状態を径方向から見た断面図であ

[図 39]図 36の他の実施形態に係る外輪部材を示す図である。

[図 40]図 36の外輪部材の製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段 は断面図である。

[図 41]この発明の一実施形態に係る内燃機関のシリンダ 1つを示す断面図である。

[図 42]図 41の内燃機関に採用されるクランクシャフトを示す図である。

[図 43]図 41の内燃機関に採用されるカムシャフトを示す図である。

[図 44]従来のカムシャフト支持構造を示す図である。

[図 45]図 44のころ軸受のレース板とキャップとの拡大図である。

発明を実施するための最良の形態

[0071] 図 41〜図 43を参照して、この発明の一実施形態に係る内燃機関 11を説明する。

なお、図 41はこの発明の一実施形態に係る内燃機関 11のシリンダの 1つを示す断 面図、図 42は内燃機関 11に使用されるクランクシャフト 15を示す図、図 43は内燃機 関 11に使用されるカムシャフト 19を示す図である。

[0072] まず、図 41を参照して、内燃機関 11は、ハウジングとしてのシリンダブロック 12およ びシリンダヘッド 13と、往復運動を回転運動に変換する運動変換機構と、混合気の 吸気および燃焼ガスの排気を行う給排気機構と、点火装置としてのスパークプラグ 2

[0073] 運動変換機構は、シリンダブロック 12に収容され、シリンダブロック 12内に設けられ たシリンダ 12aの内部を往復運動するピストン 14と、フライホイール（図示省略)やクラ ツチ（図示省略)を介してトランスミッション（図示省略）に接続されるクランクシャフト 15 と、一端がピストン 14に接続され他端がクランクシャフト 15に接続されて、ピストン 14 の往復運動をクランクシャフト 15の回転運動に変換するコンロッド 16とを備える。

[0074] 給排気機構は、シリンダヘッド 13に形成され、シリンダ 12aに連通する吸気路 13a および排気路 13bと、シリンダ 12aおよび吸気路 13aの間に配置される弁としての吸 気バルブ 17と、シリンダ 12aおよび排気路 13bの間に配置される弁としての排気バル ブ 18と、吸気バルブ 17および排気バルブ 18の開閉のタイミングを制御するカムシャ フト 19とを備える。

[0075] 吸気バルブ 17は、ノ ノレブステム 17aと、バルブステム 17aの一方側端部に設けられ たバルブヘッド 17bと、吸気バルブ 17を吸気路 13aを閉鎖する方向に付勢するバル ブスプリング 17cとを含み、バルブステム 17aの他方側端部には、カムシャフト 19が接 続される。なお、排気バルブ 18は、吸気バルブ 17と同様の構成であるので、説明を 省略する。

[0076] 図 42を参照して、内燃機関 11に使用されるクランクシャフト 15は、軸部 15aと、クラ ンクアーム 15bと、隣接するクランクアーム 15bの間にコンロッド 16を配置するための クランクピン 15cとを有する。このクランクシャフト 15は、軸部 15aが後述するこの発明 の一実施形態に係る針状ころ軸受 21によって回転自在に支持されている。また、クラ ンクピン 15cは内燃機関 11のシリンダ数と同数設けられて!/、る。

[0077] 図 43を参照して、内燃機関 11に使用されるカムシャフト 19は、軸部 19aと、複数の カム 19bとを含む。軸部 19aは、後述するこの発明の一実施形態に係る針状ころ軸 受 21によって回転自在に支持される。このカムシャフト 19は、クランクシャフト 15とタ イミングベルト（図示省略）によって連結されて、クランクシャフト 15の回転に伴って回 転する。

[0078] カム 19bは、吸気バルブ 17または排気バルブ 18それぞれと接続されているので、 バルブ 17, 18と同数設けられる。また、カム 19bは、図 41に示すように、相対的に径 の大きい長径部 19cと相対的に径の小さい短径部 19dとを含み、複数のカム 19bは、 図 43に示すように、長径部 19cの位置を円周方向にずらして配置される。これにより 、複数のカム 19bそれぞれに接続されるバルブ 17, 18をタイミングをずらして開閉す ること力 S可倉 となる。

[0079] なお、内燃機関 11は、カムシャフト 19が、シリンダヘッド 13の上側に配置され、力、 つ、吸気バルブ 17側と排気バルブ 18側とにそれぞれ設けられる DOHC (Double Over Head Camshaft)方式のエンジンである。

[0080] 次に、この内燃機関の作動原理を説明する。

[0081] まず、この内燃機関 11は、ピストン 14がシリンダ 12a内で最も上昇した位置（上死 点）と最も降下した位置（下死点）との間を移動する工程を 1工程とすると、吸気工程、 圧縮工程、燃焼工程、および排気工程の 4工程からなる 4サイクルエンジンである。

[0082] 吸気工程では、吸気バルブ 17が開いた状態、かつ、排気バルブ 18が閉じた状態 で、ピストン 14が上死点から下死点まで移動する。これにより、シリンダ 12a内部（ビス トン 14の上側の空間を指す、以下同じ）の容積が増加して内部の圧力が低下するの で、混合気が吸気路 13aからシリンダ 12a内部に流入する。なお、混合気とは、空気（ 酸素）と霧状にしたガソリンの混合物を指す。

[0083] 圧縮工程では、吸気バルブ 17および排気バルブ 18が閉じた状態で、ピストン 14が 下死点から上死点まで移動する。これにより、シリンダ 12a内部の容積が減少して内 部の圧力が上昇する。

[0084] 燃焼工程では、吸気バルブ 17および排気バルブ 18が閉じた状態で、スパークプラ グ 20を点火する。これにより、圧縮状態の混合気が燃焼することによって急激に膨張 してピストン 14を上死点から下死点まで押し下げる。この力をコンロッド 16を介してク ランクシャフト 15に回転運動として伝達することによって、駆動力が発生する。

[0085] 排気工程では、吸気バルブ 17が閉じた状態、かつ、排気バルブ 18が開いた状態 で、ピストン 14が下死点から上死点まで移動する。これにより、シリンダ 12a内部の容 積が減少して、燃焼ガスが排気路 13bに流出する。なお、この工程でピストン 14が上 死点に達した後は、吸気工程に戻る。 [0086] なお、上記の各工程において、「吸気バルブ 17が開いた状態」とは、カム 19bの長 径部 19cが吸気バルブ 17に当接して、吸気バルブ 17がバルブスプリング 17cに逆ら つて下方に押し下げられた状態を指し、「吸気バルブ 17が閉じた状態」とは、カム 19 bの短径部 19dが吸気バルブ 17に当接して、吸気バルブ 17がバルブスプリング 17c の復元力によって上方に押し上げられた状態を指す。また、排気バルブ 18について も同様であるので、説明は省略する。

[0087] 上記の各工程において、駆動力が発生するのは燃焼工程のみであり、その他のェ 程では、他のシリンダで発生した駆動力によってピストン 14が往復運動する。そのた め、クランクシャフト 15の円滑な回転を維持する観点からは、複数のシリンダで燃焼 行程のタイミングをずらすことが望まし!/、。

[0088] 図 1〜図 10を参照して、この発明の一実施形態に係るころ軸受としての針状ころ軸 受 21と、この針状ころ軸受 21を使用したカムシャフト支持構造を説明する。なお、図 1、図 8〜図 10はこの発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造の組込み前後 の状態を示す図、図 2〜図 7はこの発明の一実施形態に係る針状ころ軸受 21の各構 成要素を示す図である。

[0089] まず、図 1を参照して、この発明の一実施形態に係るカムシャフト支持構造は、カム シャフト 19と、カムシャフト 19を収容するハウジングとしてのシリンダヘッド 13および ベアリングキャップ 13cと、カムシャフト 19をハウジングに対して回転自在に支持する 針状ころ軸受 21とを備える。

[0090] 針状ころ軸受 21は、円弧形状の外輪部材 22a, 22bを円周方向に複数連ねて形 成される外輪 22と、外輪 22の内径面に沿って配置される複数のころとしての針状こ ろ 23と、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有し、複数の針状ころ 23の間隔を保持する保持器 24とを備える。

[0091] なお、カムシャフト 19を支持する軸受としては、針状ころ軸受 21が採用されるのが 一般的である。針状ころ軸受 21は、針状ころ 23と軌道面とが線接触するので、軸受 投影面積が小さい割に高負荷容量と高剛性が得られる利点を有している。したがつ て、負荷容量を維持しつつ、支持部分の径方向の厚み寸法を削減することができる 点で好適である。 [0092] 図 2〜図 5を参照して、外輪部材 22aを説明する。なお、図 2は外輪部材 22aの側 面図、図 3は図 2を III方向から見た図、図 4は図 2を IV方向から見た図、図 5は隣接 する外輪部材 22a, 22bの突合部分の拡大図である。また、外輪部材 22bは外輪部 材 22aと同一の形状であるので、説明は省略する。

[0093] まず、図 2を参照して、外輪部材 22aは、中心角 180° の半円形状であって、円周 方向の一方側端部に径方向外側に折り曲げられた係合爪 22cと、軸方向の両端部 から径方向内側に突出する鍔部 22dとを有する。係合爪 22cは、シリンダヘッド 13と 係合して外輪部材 22aがハウジングに対して回転するのを防止する。鍔部 22dは、保 持器 24の軸方向への移動を規制すると共に、軸受の潤滑油保持性を向上させる。 そして、この 2つの外輪部材 22a, 22bを円周方向に連ねて円環形状の外輪 22を形 成する。また、外輪 22の内径面の軸方向中央部は、針状ころ 23の軌道面として機能 する。

[0094] また、図 3を参照して、外輪部材 22aの円周方向一方側端部には、軸方向の両端 部に係合爪 22cが 2つ設けられており、 2つの係合爪 22cの間には円周方向に凹ん だ略 V字型の凹部 22eが形成されている。なお、 2つの係合爪 22cは、外輪部材 22a の軌道面となる軸方向中央部を避けて両端部に、かつ、針状ころ軸受 21の回転軸 線と平行な直線上に配置される。すなわち、 2つの係合爪 22cの間の長さ Lは、針状 ころ 23の有効長さはり長く設定されている。なお、本明細書中「ころの有効長さ」とは 、ころ長さから両端の面取り部の長さを除!/、た長さを指すものとする。

[0095] また、図 4を参照して、外輪部材 22aの円周方向他方側端部には、軸方向両端部 に係合爪 22cの軸方向幅と同一幅の 2つの平坦部 22fと、 2つの平坦部 22fの間に 先端が円弧形状で円周方向に突出した略 V字型の凸部 22gとが設けられている。な お、凹部 22eは、外輪部材 22a, 22bを円周方向に連ねたときに隣接する外輪部材 の凸部 22gを受け入れる。このように、突合部分の形状を略 V字型とすることにより、 針状ころ 23がスムーズに回転可能となる。なお、外輪部材 22a, 22bの突合部分の 形状は、略 V字型に限らず、針状ころ 23がスムーズに回転可能な任意の形状、例え ば、略 W型であってもよい。

[0096] また、図 3および図 4を参照して、外輪部材 22aの外径面には、軸方向中央部を円 周方向に延びる油溝 22iと、油溝 22iの底壁に外径側から内径側に貫通する油穴 22 hが設けられている。この油溝 22iは、ハウジング（図示省略）に設けられた油路の開 口部に対面する位置を含むように設けられており、開口部から供給される潤滑油が 油溝 22iを通って油穴 22hや隣接する外輪部材 22a, 22bの突合部分から軸受内部 に流入する。

[0097] さらに、図 5を参照して、隣接する外輪部材 22a, 22bの突合部には、外輪部材 22 a, 22bの熱膨張や製造誤差を考慮して円周方向に隙間が設けられる。そして、この 円周方向隙間は、油溝 22iを含む領域で相対的に大きぐその他の領域で相対的に 小さく設定する。この実施形態においては、軸方向中央部の円周方向隙間が大きく 、軸方向両端部の円周方向隙間が小さい。

[0098] 油溝 22iを含む領域で円周方向隙間を大きくすることにより、軸受内部に流れ込む 潤滑油量が増加する。その結果、針状ころ軸受 21の潤滑性が向上する。一方、油溝 22iが形成されていない領域での円周方向隙間を小さくすることにより、潤滑油がこ の隙間を通って軸方向に流出するのを抑制することができる。

[0099] なお、油溝 22iを含む領域、およびその他の領域における円周方向隙間量は一定 である必要はなぐ場所によって異なっていてもよい。この実施形態においては、軸 方向中央部の円周方向隙間が最も大きぐ軸方向両端部に向かって徐々に小さくな り、油溝 22iより外側では同じ大きさとなっている。

[0100] 次に、図 6および図 7を参照して、保持器 24を説明する。なお、図 6は保持器 24の 側面図、図 7は保持器 24の分割部分を含む部分断面図である。図 6および図 7を参 照して、保持器 24は、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有する 略 C型形状であって、針状ころ 23を収容するポケット 24cが円周方向の等間隔に設 けられている。また、この保持器 24は、樹脂材料を射出成型して形成される。

[0101] また、分割部分の円周方向一方側の切断端面 24aには凹部 24dが、他方側の切 断端面 24bには凹部 24dに対応する凸部 24eが設けられており、凹部 24dおよび凸 部 24eが係合することにより、円環形状の保持器 24を得ることができる。なお、この実 施形態においては、凸部 24eの先端部分の幅が根元部分より大きぐ凹部 24dは開 口部分の幅が最奥部より小さく設定されている。これにより、凹部 24dと凸部 24eの係 合を確実なものとしている。

[0102] 次に、図 1、図 8〜図 10を参照して、針状ころ軸受 21をカムシャフト 19に組み込む 手順を説明する。

[0103] まず、保持器 24のポケット 24cそれぞれに針状ころ 23を組み込む。次に、保持器 2 4の弾性を利用して分割部分を広げ、カムシャフト 19に組み込む。さらに、凹部 24d と凸部 24eとを係合させて、保持器 24が外れないようにする。

[0104] 次に、シリンダヘッド 13の上に、一方側の外輪部材 22a、保持器 24を巻きつけて固 定したカムシャフト 19、他方側の外輪部材 22b、およびベアリングキャップ 13cの順に 組込み、シリンダヘッド 13とベアリングキャップ 13cとをボルト等で固定する。このとき 、外輪部材 22aの凹部 22eと外輪部材 22bの凸部 22g、外輪部材 22aの凸部 22gと 外輪部材 22bの凹部 22eとがそれぞれ突合するように配置する。

[0105] また、外輪部材 22aの係合爪 22cは、シリンダヘッド 13のベアリングキャップ 13cと の突合面に設けられた係合溝 13dと係合するように配置し、外輪部材 22bの係合爪 2 2cは、ベアリングキャップ 13cのシリンダヘッド 13との突合面に設けられた係合溝 13 dと係合するように配置する。これにより、外輪部材 22a, 22bが、軸受回転中にハウ ジング内部で回転するのを防止することができる。

[0106] ここで、一般的にシリンダヘッド 13とベアリングキャップ 13cとの突合面は、カムシャ フト 19の軸線方向、すなわち軸受の回転軸線と平行な面となる。そこで、外輪部材 2 2a, 22bの円周方向端部に設けた 2つ係合爪 22cを針状ころ軸受 21の回転軸線と 平行な直線状に配置することにより、係合爪 22cをシリンダヘッド 13とベアリングキヤ ップ 13cとの間に係合させることができる。

[0107] なお、図 8を参照して、針状ころ軸受 21は、カムシャフト 19の回転方向、すなわち 針状ころ 23の公転方向と、外輪部材 22a, 22bの凸部 22gの突出方向とがー致する ように配置される。これにより、針状ころ 23がスムーズに回転可能となる。

[0108] 針状ころ 23の公転方向が外輪部材 22a, 22bの凸部 22gの突出方向と逆向きの場 合、軸受回転時に針状ころ 23が外輪部材 22a, 22bの凸部 22gの先端に衝突して 振動が発生したり、針状ころ 23が破損したりする恐れがあるからである。

[0109] さらに、ハウジングとしてのシリンダヘッド 13およびベアリングキャップ 13cには、力 ムシャフト 19を収容する領域に潤滑油を供給する油路の開口 13eが設けられている 。また、カムシャフト 19には、内部に軸方向に伸びるオイル通路 19eと、オイル通路 1 9eから軸部 19aに向かって延びる油孔 19fとが形成されている。そこで、針状ころ軸 受 21を組み込む際には、外輪部材 22a, 22bの外径面に形成された油溝 22iが、開 口 13eに対面するように配置する。

[0110] 上記の組み込み手順とすることにより、カムシャフト 19と、外輪 22と、保持器 24と、 ノ、ウジングとが同心円状に配置され、針状ころ 23が安定して回転可能な針状ころ軸 受 21を得ること力 Sできる。また、上記構成の針状ころ軸受 21は、外輪 22を 2つの外 輪部材 22a, 22bに分割し、保持器 24を円周方向の一箇所で分割したことにより、支 持部分の径方向力も組み込むことが可能となるので、カムシャフト 19を支持する軸受 として採用すること力 Sでさる。

[0111] また、外輪部材 22a, 22bの外径面に油溝 22iを設けることにより、開口 13eから供 給された潤滑油力 油溝 22iを経由して油穴 22hや隣接する外輪部材 22a, 22bの 突合部分から軸受内部に流入し、さらに、カムシャフト 19の油孔 19fとオイル通路 19 eとを通って各部へ分配される。また、潤滑油の他の流路としては、上記と反対にカム シャフト 19の油孔 19fから供給された潤滑油力 S、針状ころ軸受 21の油穴 22hや隣接 する外輪部材 22a, 22bの突合部分、および油溝 22iを通って開口 13eからハウジン グの油路に流出する経路、さらには、開口 13eから油溝 22iを通って他の位置に設け られた開口 13eからハウジングの油路に戻る経路等が考えられる。

[0112] このように、外輪部材 22a, 22bの外径面に油溝 22iを形成してハウジングと針状こ ろ軸受 21との間に潤滑油が流れる隙間を設けることにより、潤滑性に優れた力ムシャ フト支持構造、およびこのようなカムシャフト支持構造を採用した信頼性の高い内燃 機関を得ること力できる。また、油溝 22iの中に油穴 22hを設けたことにより、ハウジン グの開口 13eと油孔 22hとの位置を合わせる必要がなくなるので、組込み性が向上 すると共に、軸受の汎用性が高まる。この発明は、突合部分に隙間を生じる分割型 外輪 22に採用することにより、より高い効果が期待できる。

[0113] 上記構成の針状ころ軸受 21において、外輪部材 22a, 22bに設けられた油穴 22h 力、ら流入した潤滑油は、針状ころ軸受 21の内部を通ってカムシャフト 19に設けられ た油孔 19fから排出される。しかし、潤滑油が軸受内部をスムーズに通過できない場 合、軸受内部に滞留した潤滑油が外輪部材 22a, 22bとカムシャフト 19との間から外 部に流出してしまい、針状ころ軸受 21の潤滑に寄与しない。

[0114] そこで、図 11〜図 15に示すような保持器を採用することができる。なお、図 11〜図

15に示す保持器の基本構成は、図 6および図 7に示す保持器 24と共通するので、 共通点の説明は省略し、相違点を中心に説明する。

[0115] まず、図 11を参照して、保持器 114は、一対のリング部 115a, 115bと、一対のリン グ咅 115a, 115bの間に複数の柱き とを有し、柱き I 16カ左右のリングき I 15a , 115bを連結して、一体型の保持器 114を形成している。また、切断部 114a, 114b は、リングき 115a, 115bの一箇所に設けられており、 114cは、隣接する柱き の 間に形成されている。

[0116] さらに、柱部 116には、隣接する 114cを周方向に連通する油溝 117と、柱部 116 を径方向に貫通する油路 118とが設けられている。なお、油溝 117は、柱部の軸方 向中央部に外径面を凹ませて形成されており、油路 118は、油溝 117の底壁から内 径側に貫通している。

[0117] このように、保持器 1 14に油溝 117ゃ油路 118を設けて、軸受内部を通過する潤滑 油量を増加することにより、潤滑性に優れた針状ころ軸受 21を得ることができる。

[0118] なお、図 11に示す保持器 1 14は、油溝 117および油路 118を柱部 1 16の軸方向 中央部に形成した例を示した力 これに限ることなぐ任意の位置に形成することが 可能である。また、油路 118を円形断面とした例を示した力 これに限ることなぐ矩 形断面等の任意の形状を採用することが可能である。

[0119] 次に、図 12を参照、して、保持器 124は、一対のリングき 125a, 125bと、一対のリン グ部 125a, 125bの間に配置される複数の柱部 126とを有し、隣接する柱部 126の 間に針状ころ 23を収容するポケット 124cが形成されている。そして、一対のリング部 125a, 125bの外径面に円周方向に延びる油溝 127と、柱部 126の軸方向中央部 に径方向に貫通する油路 128とが設けられている。

[0120] 上記構成の保持器 124は、図 11に示す保持器 114の変形例であって、油溝 127と 油路 128とを別の位置に設けた例である。なお、図 12では油溝 127を左右のリング 部 125a, 125bそれぞれに設けた例を示した力 これに限ることなく、どちらか一方に のみ設けてもよい。また、図 12では油溝 127をリング部 125a, 125bの外径面に設け た例を示したが、これに限ることなく、内径面であってもよいし、軸方向外側の端面で あってもよい。

[0121] 次に、図 13を参照して、保持器 134は、一対のリング部 135a, 135bと、一対のリン グ部 135a, 135bの間に配置される複数の柱部 136とを有し、隣接する柱部 136の 間に針状ころ 23を収容するポケット 134cが形成されている。そして、柱部 136は軸 方向中央部で分割されており、分割部分には潤滑油が保持器 134の径方向および 周方向に移動可能な油路 137が設けられている。

[0122] 上記構成の保持器 134は、図 11に示した保持器 114と比較して油路 137を大きく すること力 Sできるので、軸受内部を通過する潤滑油量をさらに増加することができる。 ただし、柱部 136は、左右のリング部 135a, 135bを接続する役割を担っているので 、全ての柱部 136に油路 137を形成することはできない。図 13に示す実施形態では 、油路 137を設けた柱部 136と、油路 137を設けない柱部 136とを交互に配置してい

[0123] 次に、図 14を参照して、保持器 144は、針状ころ 23を収容する複数の独立したポ ケット部 145と、複数のポケット部 145を円周方向に連結する連結部 146とを有し、隣 接するポケット部 145の間に油路 147が形成されている。この保持器 144は、隣接す る針状ころ 23の間隔を保持するために最低限必要な構成のみを有しており、図 11 および図 13に示したような保持器 114, 134と比較すると、油路 147の位置および大 きさの自由度が非常に高レ、とレ、う利点を有してレ、る。

[0124] 次に、図 15を参照して、保持器 154は、軸方向両端部に一対の第 1および第 2外 側リング部 155a, 155bと、軸方向中央部に一対の第 1および第 2内側リング部 156a , 156bと、 4つのリングき 155a, 155b, 156a, 156bを連結する複数の柱咅 I 57と を有し、針状ころ 23を収容する複数のポケット 158が軸方向に 2列、すなわち、第 1 外側リング部 155aと第 2内側リング部 156aとの間（右側ポケット列 158a)、および第 2外側リング部 155bと第 2内側リング部 156bとの間（左側ポケット列 158b)に形成さ れている。そして、保持器 154を径方向に貫通する油路 159は、 2列のポケット列 15 8a, 158bの間、すなわち、第 1および第 2内側リング部 156a, 156bの間に形成され ている。

[0125] 図 11〜図 15のいずれの形態であっても、軸受内部を通過する潤滑油量が増加す るので、潤滑性に優れた針状ころ軸受 21を得ることができる。なお、上記の実施形態 では、外輪部材 22a, 22bの油穴 22h力もカムシャフト 19の油孔 19fに向力、つて潤滑 油が流れる例を説明した力 これに限ることなぐカムシャフト 19の油孔 19fから外輪 部材 22a, 22bの油穴 22hに向力 て潤滑油が流れる場合も同様に考えることがで きる。

[0126] また、図 11〜図 15 ίこ示す保持器 114, 124, 134, 144, 154 (ま、後述する他の実 施形態を含めたあらゆる転がり軸受に適用することができる。

[0127] 上記の実施形態においては、カムシャフト 19を支持する軸受として針状ころ軸受 2 1を採用した例を示した力 S、この発明は、他のころ軸受、例えば、円筒ころ軸受ゃ棒 状ころ軸受にも適用すること力 Sできる。後述する他の実施形態についても同様である

[0128] また、上記の実施形態における針状ころ軸受 21は、外輪 22と、針状ころ 23と、保 持器 24とを含む例を示した力 S、これに限ることなく、保持器 24を省略した総ころ形式 のころ軸受であってもよい。後述する他の実施形態についても同様である。

[0129] また、上記の実施形態における外輪 22は、円周方向の二箇所で外輪部材 22a, 2 2bに分割した例を示したが、これに限ることなぐ任意の個数に分割することが可能 である。例えば、中心角 120° の外輪部材を円周方向に 3つ連ねて外輪を形成して もよい。さらには、互いに中心角の異なる複数の外輪部材を組み合わせて円環形状 の外輪を形成してもよい。同様に、保持器 24についても任意の形態のものを採用す ること力 Sできる。後述する他の実施形態についても同様である。

[0130] また、上記の実施形態における保持器 24は、生産効率が高ぐかつ、弾性変形能 の高い樹脂製保持器の例を示したが、これに限ることなぐ切削加工による削り出し 保持器でもよぐまたは、鋼板をプレス加工したプレス保持器であってもよい。後述す る他の実施形態についても同様である。

[0131] また、上記の実施形態における針状ころ軸受 21は、カムシャフト 19を支持する軸受 としてだけではなぐ図 42に示したようなクランクシャフト 15の軸部 15aやロッカーシャ フト等を支持する軸受としても広く使用することが可能である。後述する他の実施形 態についても同様である。

[0132] さらに、この発明は、単気筒の内燃機関にも適用可能である力 図 42に示すような 多気筒エンジンに採用されるクランクシャフト 15の軸部 15aや、図 43に示すような力 ムシャフト 19の軸部 19bのように、軸方向から針状ころ軸受 21を揷入できない箇所を 支持する軸受として好適である。後述する他の実施形態についても同様である。

[0133] 次に、図 16を参照して、この発明の一実施形態に係る外輪部材 22aの製造方法を 説明する。なお、図 16は、外輪部材 22aの製造工程の一部を示す図であって、上段 は平面図、下段は断面図を示す。また、外輪部材 22bの製造方法は、外輪部材 22a と同様であるので、説明は省略する。

[0134] まず、出発材料としては、炭素含有量が 0. 15wt%以上、 1. lwt%以下の炭素鋼 を使用する。具体的には、炭素含有量が 0. 15wt%以上、 0. 5wt%以下の SCM4 15や S50C等、または、炭素含有量が 0. 5wt%以上、 1. lwt%以下の SAE1070 や SK5等が考えられる。

[0135] なお、炭素含有量が 0. 15wt%未満の炭素鋼は、焼入処理によって浸炭硬化層が 形成されにくぐ外輪部材 22aに必要な硬度を得るためには、浸炭窒化処理を行う必 要がある。浸炭窒化処理は、後述する各焼入処理と比較して設備費用が高額になる ので、結果として、針状ころ軸受 21の製造コストが上昇する。また、炭素含有量が 0. 15wt%未満の炭素鋼では浸炭窒化処理によっても十分な浸炭硬化層が得られな い場合があり、軌道面に表面起点型の剥離が早期に発生する恐れがある。一方、炭 素含有量が 1. lwt%を超える炭素鋼はで加工性が著しく低下するので、加工精度 が低下したり、加工工数の増加による製造コストの上昇が問題となる。

[0136] 図 16を参照して、第 1の工程としては、鋼板を打ち抜き加工して外輪部材 22aの外 形を形成する（a工程)。また、長手方向の一方側端部に凹部 22eおよび係合爪 22c となる部分を形成し、他方側端部に平坦部 22fおよび凸部 22gを形成する。

[0137] このとき、外輪部材 22aの長手方向の長さは、カムシャフト 19の直径に基づいて決 定し、短手方向の長さは、使用する針状ころ 23のころ長さに基づいて決定する。ただ し、短手方向には鍔部 22dとなる部分が含まれているので、この工程での短手方向 の長さは、外輪部材 22aの完成品の軸方向幅寸法より長くなる。

[0138] この工程は、一度の打ち抜き加工で全ての部分を打ち抜!/、てもよ!/、し、打ち抜き加 ェを複数回繰り返して所定の形状を得てもよい。なお、順送プレスを用いる場合には 、各加工工程の加工位置を決めるためのパイロット穴 25を形成すると共に、隣接する 外輪部材との間に連結部 26を設けるとよい。

[0139] 第 2の工程としては、コイニング加工 (圧印加工）によって、外輪部材 22aの外径面 となる面に油溝 22iを形成する（b工程)。具体的には、油溝 22iと同一形状の凸部を 浮き彫りした外型を外輪部材 22aの外径面となる面に、表面が平坦な内型を外輪部 材 22aの内径面となる面にそれぞれ押し当てて加圧することにより、内径面は平坦な 状態のまま外径面に油溝 22iが形成される。このとき、油溝 22iの底壁の任意の位置 に打ち抜き加工によって油穴 22hを形成してもよい。

[0140] 第 3の工程としては、曲げ加工により外輪部材 22aの円周方向端部を径方向外側 に折り曲げて、係合爪 22cを形成する（c工程)。係合爪 22cの曲げ角度は、ハウジン グの係合溝 13cに沿う角度とする。なお、この実施形態では、係合爪 22cが、外輪部 材 22aに対して 90° の角度となるように折り曲げて!/、る。

[0141] 第 4の工程としては、曲げ加工により外輪部材 22aの外形を所定の曲率に曲げるェ 程と、外輪部材 22aの軸方向両端部から径方向内側に突出する鍔部 22dを形成す る工程とを含む（d工程〜 h工程)。具体的には、連結部 26を含む中央部分を残して 、長手方向の両端部側から順に曲げていく（d工程、 e工程)。次に、曲げ加工を施し た長手方向両端部について、短手方向の両端部に曲げ加工を施して鍔部 22dを形 成する（f工程)。次に、外輪部材 22aの外形が所定の曲率となるように、長手方向中 央部についても曲げ加工を行う（g工程)。最後に、連結部 26を除去して、長手方向 中央部に鍔部 22dを形成する（h工程)。

[0142] 上記のプレス加工工程終了後、外輪部材 22aに必要とされる硬度等の所定の機械 的性質を得るために、熱処理を行う。なお、軌道輪として機能する外輪部材 22aの内 径面の表面硬さ Hvは、 635以上が必要となる。

[0143] 外輪部材 22aが十分な深さの硬化層を得るためには、出発材料の炭素含有量によ つて適切な熱処理方法を選択する必要がある。具体的には、炭素含有量が 0. 15wt %以上、 0. 5wt%以下の材料の場合には浸炭焼入処理を、炭素含有量が 0. 5wt %以上、 1. lwt%以下の材料の場合には光輝焼入処理または高周波焼入処理を 施す。

[0144] 浸炭焼入処理は、高温の鋼に炭素が固溶する現象を利用した熱処理方法であつ て、鋼内部は炭素量が低いまま、炭素量の多い表面層（浸炭硬化層）を得ることがで きる。これにより、表面は硬ぐ内部は軟ら力べ靭性の高い性質が得られる。また、浸 炭窒化処理設備と比較して設備費用が安価である。

[0145] 光輝焼入処理は、保護雰囲気や真空中で加熱することによって、鋼表面の酸化を 防止しながら行う焼入処理を指す。また、浸炭窒化処理設備や浸炭焼入処理設備と 比較して設備費用が安価である。

[0146] 高周波焼入処理は、誘導加熱の原理を利用して、鋼表面を急速に加熱、急冷して 焼入硬化層を作る方法である。他の焼入処理設備と比較して設備費用が大幅に安 価であると共に、熱処理工程でガスを使用しな!/、ので環境に優しレヽとレ、うメリットがあ る。また、部分的な焼入処理が可能となる点でも有利である。

[0147] さらに、焼入によって生じた残留応力や内部ひずみを低減し、靭性の向上や寸法 を安定化させるために、上記の焼入処理の後に焼戻を行うのが望ましい。

[0148] なお、この実施形態においては、外輪部材 22aの外形の曲率を形成する工程と、 鍔部 22dを形成する工程とを平行して行う例を示した力 S、これに限ることなく、外形の 曲率を形成する工程と、鍔部 22dを形成する工程とを独立して行ってもよい。後述す る他の実施形態についても同様である。

[0149] また、外輪部材 22aの外径面に油溝 22iを形成する方法として、コイニング加工の 例を示したが、これに限ることなく、プレス加工等の他の冷間加工を採用してもよい。 後述する他の実施形態についても同様である。

[0150] また、上記の第 1の工程から第 4の工程は、この発明に係る外輪部材の製造方法の 一例であって、各工程をさらに細分化してもよいし、必要な工程をさらに追加すること もできる。また、加工工程の順番も任意に入れ替えることができるものとする。後述す る他の実施形態についても同様である。 [0151] さらに、上記の各工程（a工程〜 h工程）は、それぞれ別々の工程として単能プレス で行ってもよいが、順送プレス、または、トランスファプレスによって行うこととしてもよ い。これにより、各工程を連続的に行うことができる。また、上記の各工程 (a工程〜 h 工程）の全部または一部に相当する加工部を有する外輪部材 22aの製造装置を使 用することにより、生産性を高めることができ、結果として針状ころ軸受 21の製品価格 を抑えること力 Sできる。後述する他の実施形態についても同様である。

[0152] なお、本明細書中で「順送プレス」とは、プレス内に複数の加工工程を持ち、材料を プレス入口のフィーダにより各工程を移動させることによって、材料を連続的に加工 する方法を指すものとする。また、本明細書中で「トランスファプレス」とは、複数の加 ェ工程を必要とする場合に、各工程を行うステージを必要数分設け、搬送装置によ つて工程品を移動させながら、各ステージで加工を行う方法を指すものとする。後述 する他の実施形態についても同様である。

[0153] なお、上記の実施形態における外輪部材 22a, 22bは、ころ 22と接触する軌道面 が内径面に形成されている中央領域に油溝 22iを配置した例を示した力 S、これに限る ことなく、任意の位置に配置することができる。図 17〜図 20を参照して、この発明の 他の実施形態に係る針状ころ軸受 31 , 41 , 51を説明する。なお、図 17は針状ころ 軸受 31の断面図、図 18は図 17の部分拡大図、図 19は針状ころ軸受 41の断面図、 図 20は針状ころ軸受 51の外輪部材 52aの外径面の拡大図である。また、針状ころ 軸受 31 , 41 , 51の基本構成は針状ころ軸受 21と共通するので、共通点の説明は省 略し、相違点を中心に説明する。

[0154] まず、図 17および図 18を参照して、針状ころ軸受 31に採用される外輪部材 32aは 、内径面に針状ころ 33と接触する軌道面が形成されている中央領域 3¾ (図 17中の 破線 1で囲まれた領域を指す）と、中央領域 3¾に隣接する端部領域 32k (図 17中の 破線 1と破線 1とで囲まれた領域を指す）とに区分される。そして、油溝 32iは端部領

1 2

域 32kに配置される。

[0155] 具体的には、図 18に示すように、針状ころ 33および保持器 34が軸方向一方側に 最大限偏った状態での針状ころ 33の転動面の端に対応する位置 (破線 1で示す位 置）より軸方向外側であって、かつ外輪部材 32の内径面の屈曲開始点に対応する 位置 (鍔部 32dの折り曲げの基点、破線 1で示す位置)より軸方向内側（図 18中両矢

2

印で示す範囲、端部領域 32k)に油溝 32iを形成するのが望ましい。

[0156] 上記構成とすることにより、軌道面が形成される中央領域 3¾の板厚を減じる必要 がなくなるので、針状ころ 33のスムーズな回転を妨げることがない。この場合、油溝は 、左右の端部領域 32kのどちらか一方にのみ設けてもよいし、両方に設けてもよい。

[0157] 次に、図 19を参照して、針状ころ軸受 41に採用される外輪部材 42aには、その外 径面に 3つの油溝 42iが設けられている。具体的には、軸方向中央部に一箇所と軸 方向両端部にそれぞれ一箇所ずつ設けられている。このように、油溝 42iを複数箇所 に設けることによって各油溝 42iの幅および深さを小さくすることができるので、外輪 部材 42aの局部的な剛性低下を防止することができる。

[0158] さらに、図 20を参照して、針状ころ軸受 51に採用される外輪部材 52aには、その外 径面に略 Y字形状の油溝 52iが設けられている。すなわち、油溝 52iは、軸方向中央 部を円周方向に延びる第 1の部分 5¾と、第 1の部分 5¾から左右に分岐して軸方向 両端部を円周方向に延びる第 2の部分 52kとを有する。そして、第 1の部分 5¾と第 2 の部分 52kとの分岐部分は、軸受回転軸線に対して所定の角度傾斜している。

[0159] 上記構成のように油溝 52iを分岐させることにより、任意の位置への潤滑油の分配 が可能となる。また、第 1の部分 5¾と第 2の部分 52kとの分岐部分を斜めにすること で円周方向における外輪部材 52aの剛性を平準化することができるので、針状ころ 5 3の回転がスムーズになる。

[0160] なお、上記実施形態における油溝 52iの形状は、略 Y字形状に限られず、任意の 形状を採用することが可能である。また、上記の実施形態においては、外輪部材 52a の剛性の観点、および潤滑油量の観点から第 1の部分 5¾の溝幅を第 2の部分 52k の溝幅より大きくしている。

[0161] 次に、図 21〜図 27を参照して、この発明の他の実施形態に係るころ軸受としての 針状ころ軸受 61と、この針状ころ軸受 61を使用したカムシャフト支持構造を説明する 。なお、針状ころ軸受 61の基本構成は針状ころ軸受 21と共通するので、共通点の説 明は省略し、相違点を中心に説明する。また、図 21、図 26、および図 27はカムシャ フト支持構造の組込み前後の状態を示す図、図 22〜図 25は外輪部材 62aを示す図 である。

[0162] まず、図 21を参照して、カムシャフト支持構造は、カムシャフト 19と、カムシャフト 19 を収容するハウジングとしてのシリンダヘッド 13およびベアリングキャップ 13cと、カム シャフト 19をハウジングに対して回転自在に支持する針状ころ軸受 61とを備える。

[0163] 針状ころ軸受 61は、円弧形状の外輪部材 62a, 62bを円周方向に複数連ねて形 成される外輪 62と、外輪 62の内径面に沿って配置される複数のころとしての針状こ ろ 63とを備える。なお、この実施形態に係る針状ころ軸受 61は、隣接する針状ころ 6 3が相互に接触しており、針状ころ 63を保持する保持器を有していない総ころ形式の ころ軸受である。

[0164] 図 22〜図 25を参照して、外輪部材 62aを説明する。なお、図 22は外輪部材 62aの 側面図、図 23は図 22の XXIII— XXIIIにおける断面図、図 24は図 22を XXIV方向 から見た図、図 25は図 22を XXV方向から見た図である。また、外輪部材 62bは外輪 部材 62 aと同一の形状であるので、説明は省略する。

[0165] まず、図 22を参照して、外輪部材 62aは、中心角 180° の半円形状であって、円 周方向の一方側端部に径方向外側に折り曲げられた係合爪 62cと、軸方向の両端 部から径方向内側に突出する鍔部 62dとを有する。係合爪 62cは、シリンダヘッド 13 と係合して外輪部材 62aがハウジングに対して回転するのを防止する。鍔部 62dは、 保持器 24の軸方向への移動を規制すると共に、軸受の潤滑油保持性を向上させる 。そして、この 2つの外輪部材 62a, 62bを円周方向に連ねて円環形状の外輪 62を 形成する。また、外輪 62の内径面の軸方向中央部は、針状ころ 63の軌道面として機 能する。

[0166] また、図 23を参照して、鍔部 62dの径方向内側の先端には、軸方向内側に 90° 折り曲げて形成した屈曲部 62iが設けられている。一方、針状ころ 63の両端面には、 長手方向に突出する突出部 63aが設けられている。この突出部 63aは、外輪部材 62 aの内径面と、鍔部 62dの内側の壁面と、屈曲部 62iの外径面とで囲まれた領域に配 置され、屈曲部 62iの外径面に案内されながら転動する。さらに、屈曲部 62iの内径 面と複数の針状ころ 63に内接する仮想円との間の隙間 δは、 5 111≤ δ≤50 m の範囲内に設定する。 [0167] また、図 23を参照して、外輪部材 62aの円周方向一方側端部には、軸方向の両端 部に係合爪 62cが 2つ設けられており、 2つの係合爪 62cの間には円周方向に凹ん だ略 V字型の凹部 62eが形成されている。なお、 2つの係合爪 62cは、外輪部材 62a の軌道面となる軸方向中央部を避けて両端部に、かつ、針状ころ軸受 61の回転軸 線と平行な直線上に配置される。すなわち、 2つの係合爪 62cの間の長さ Lは、針状 ころ 63の有効長さはり長く設定されている。なお、本明細書中「ころの有効長さ」とは 、ころ長さから両端の面取り部の長さを除!/、た長さを指すものとする。

[0168] また、図 25を参照して、外輪部材 62aの円周方向他方側端部には、軸方向両端部 に係合爪 62cの軸方向幅と同一幅の 2つの平坦部 62fと、 2つの平坦部 62fの間に 先端が円弧形状で円周方向に突出した略 V字型の凸部 62gとが設けられている。

[0169] なお、凹部 62eは、外輪部材 62a, 62bを円周方向に連ねたときに隣接する外輪部 材の凸部 62gを受け入れる。このように、突合部分の形状を略 V字型とすることにより 、針状ころ 63がスムーズに回転可能となる。なお、外輪部材 62a, 62bの突合部分の 形状は、略 V字型に限らず、針状ころ 63がスムーズに回転可能な任意の形状、例え ば、略 W型であってもよい。

[0170] さらに、図 24および図 25を参照して、外輪部材 62aには、外径側から内径側に貫 通する油穴 62hが設けられている。この油穴 62hは、ハウジングに設けられた油路（ 図示省略）に対面する位置に設けられて、潤滑油を針状ころ軸受 61内部に供給する 。なお、油穴 62hの大きさ、位置、個数は、ハウジングに設けられた油路の大きさ、位 置、個数に依存する。

[0171] 上記構成の針状ころ軸受 61は、屈曲部 62iの外径面が針状ころ 63の突出部 63a を案内するころ案内部として機能することにより、針状ころ 63の脱落ゃスキューを有 効に防止することができる。さらに、針状ころ軸受 61の軸方向端部の隙間 δが上記 範囲内となるように屈曲部 62iを設けることにより、屈曲部 62iの内径面が軸受内部か らの潤滑油の流出を防止するシール面として機能する。その結果、軸受内部から軸 方向端部の隙間を通って流出する潤滑油量が減少する。

[0172] 次に、図 21、図 26、および図 27を参照して、針状ころ軸受 61をカムシャフト 19に 組み込む手順を説明する。 [0173] まず、各外輪部材 62a, 62bに針状ころ 63を組み込む。具体的には、外輪部材 62 a, 62bの円周方向の端部から内径面に沿って針状ころ 63を揷入することにより、容 易に組み込むことが可能である。

[0174] 次に、シリンダヘッド 13の上に、一方側の外輪部材 62a、カムシャフト 19、他方側の 外輪部材 62b、およびベアリングキャップ 13cの順に組込み、シリンダヘッド 13とベア リングキャップ 13cとをボルト等で固定する。このとき、外輪部材 62aの凹部 62eと外 輪部材 62bの凸部 62g、外輪部材 62aの凸部 62gと外輪部材 62bの凹部 62eとがそ れぞれ突合するように配置する。

[0175] また、外輪部材 62aの係合爪 62cは、シリンダヘッド 13のベアリングキャップ 13cと の突合面に設けられた係合溝 13dと係合するように配置し、外輪部材 62bの係合爪 6 2cは、ベアリングキャップ 13cのシリンダヘッド 13との突合面に設けられた係合溝 13 dと係合するように配置する。これにより、外輪部材 62a, 62bが、軸受回転中にハウ ジング内部で回転するのを防止することができる。

[0176] ここで、ハウジングとしてのシリンダヘッド 13、および/またはベアリングキャップ 13 cには、カムシャフト 19を収容する領域に潤滑油を供給する油路の開口 13eが設けら れている。また、カムシャフト 19には、内部に軸方向に延びるオイル通路 19eと、オイ ル通路 19eから軸部 19aに向かって延びる油孔 19fとが形成されている。そこで、外 輪部材 62a, 62bに形成された油穴 62hとハウジングに形成された開口 13eとが一致 するように針状ころ軸受 61を配置する。

[0177] 上記の組み込み手順とすることにより、カムシャフト 19と、外輪 62と、ハウジングとが 同心円状に配置され、針状ころ 63が安定して回転可能な針状ころ軸受 61を得ること 力 Sできる。また、上記構成の針状ころ軸受 61は、外輪 62を 2つの外輪部材 62a, 62b に分割したことにより、支持部分の径方向から組み込むことが可能となるので、力ムシ ャフト 19を支持する軸受として採用することができる。

[0178] また、外輪部材 62a, 62bの軸方向両端部に鍔部 62dと屈曲部 62iとを設けることに より、針状ころ軸受 61の内部の潤滑油が軸方向の隙間から流出するのを防止するこ とができる。その結果、ハウジングの開口 13eから外輪部材 62a, 62bの油穴 62hを 通ってカムシャフト 19の油孔 19fに供給される潤滑油量が増加する。これにより、潤 滑性に優れたカムシャフト支持構造および内燃機関を得ることができる。

[0179] なお、上記構成のカムシャフト支持構造の変形例として、図 27に示すように、屈曲 部 62iとカムシャフト 19との間の屈曲部 62iの内径面に接する位置に、円環状部材と してのシール部材 67を設けてもよい。このシール部材 67は、カムシャフト 19の軸方 向端部から揷入されて、カム 19bを乗り越えながら軸部 19aに組み込まれるので、弹 性変形能の高い樹脂材料等で形成するのが望ましい。なお、シール部材 67の移動 を防止する観点からは、カムシャフト 19の表面にシール部材 67を受け入れる溝を設 けておくのが望ましい。

[0180] 屈曲部 62iの内径面とカムシャフト 19との間の隙間 δを 5 μ τη≤ δ ≤50〃111とする ためには、高精度の加工が必要となる力 シール部材 67を配置することにより、屈曲 部 62iの内径面とカムシャフト 19との間の隙間 δを δ〉 50 mとしても、潤滑油の流 出を防止することができる。

[0181] 上記の実施形態においては、隣接する針状ころ 63が相互に接触する総ころ形式の 針状ころ軸受 61の例を説明したが、これに限ることなぐ例えば隣接する針状ころ 63 の間隔を保持する保持器をさらに有するものであってもよい。保持器の形状は特に 限定されないが、例えば、図 6および図 7に示す保持器 24、または図 1 1〜図 15に示 す保持器 1 14, 124, 134, 144, 155を使用すること力 Sできる。

[0182] 次に、図 28を参照して、図 22に示す外輪部材 62aの製造方法を説明する。なお、 図 28は、外輪部材 62aの製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段 は断面図を示す。また、外輪部材 22aの製造方法との共通点の説明は省略し、相違 点を中心に説明する。具体的には、出発材料の組成、および熱処理工程は共通す るので説明は省略する。さらに、外輪部材 62bの製造方法は、外輪部材 62aと同様 であるので、説明は省略する。

[0183] 図 28を参照して、第 1の工程としては、鋼板を打ち抜き加工して外輪部材 62aの外 形を形成する（a工程)。また、長手方向の一方側端部に凹部 62eおよび係合爪 62c となる部分を形成し、他方側端部に平坦部 62fおよび凸部 62gを形成する。

[0184] このとき、外輪部材 62aの長手方向の長さは、カムシャフト 19の直径に基づいて決 定し、短手方向の長さは、使用する針状ころ 63のころ長さに基づいて決定する。ただ し、短手方向には鍔部 62dおよび屈曲部 62iとなる部分が含まれているので、このェ 程での短手方向の長さは、外輪部材 62aの完成品の軸方向幅寸法より長くなる。

[0185] この工程は、一度の打ち抜き加工で全ての部分を打ち抜!/、てもよ!/、し、打ち抜き加 ェを複数回繰り返して所定の形状を得てもよい。なお、順送プレスを用いる場合には 、各加工工程の加工位置を決めるためのパイロット穴 65を形成すると共に、隣接する 外輪部材との間に連結部 66を設けるとよい。また、外形の形成と同時に油穴 62hを 加工してもよい。

[0186] 第 2の工程としては、曲げ加工により外輪部材 62aの円周方向端部を径方向外側 に折り曲げて、係合爪 62cを形成する (b工程)。係合爪 62cの曲げ角度は、ハウジン グの係合溝 13cに沿う角度とする。なお、この実施形態では、係合爪 62cが、外輪部 材 62aに対して 90° の角度となるように折り曲げて!/、る。

[0187] 第 3の工程としては、曲げ加工により外輪部材 62aの外形を所定の曲率に曲げるェ 程と、外輪部材 62aの軸方向両端部から径方向内側に突出する鍔部 62dおよび屈 曲部 62iを形成する工程とを含む（c工程〜 g工程)。具体的には、連結部 66を含む 中央部分を残して、長手方向の両端部側から順に曲げていく（c工程、 d工程)。次に 、曲げ加工を施した長手方向両端部について、短手方向の両端部に曲げ加工を施 して鍔部 62dを形成する（e工程)。次に、外輪部材 62aの外形が所定の曲率となるよ うに長手方向中央部についても曲げ加工を行うと共に、鍔部 62dの先端を軸方向内 側に屈曲させて屈曲部 62iを形成する（f工程)。最後に、連結部 66を除去して、長手 方向中央部に鍔部 62dおよび屈曲部 62iを形成する（g工程)。

[0188] なお、この実施形態においては、外輪部材 62aの外形の曲率を形成する工程と、 鍔部 62dおよび屈曲部 62iを形成する工程とを平行して行う例を示した力 S、これに限 ることなぐ外形の曲率を形成する工程と、鍔部 62dおよび屈曲部 62iを形成するェ 程とを独立して行ってもょレ、。

[0189] 図 29〜図 32を参照して、この発明の他の実施形態に係るころ軸受としての針状こ ろ軸受 71と、この針状ころ軸受 71を使用したカムシャフト支持構造を説明する。なお 、針状ころ軸受 71の基本構成は針状ころ軸受 21と共通するので、共通点の説明は 省略し、相違点を中心に説明する。また、図 29、図 31、および図 32はカムシャフト支 持構造の組込み前後の状態を示す図、図 30は外輪部材 72aを示す図である。

[0190] まず、図 29を参照して、カムシャフト支持構造は、カムシャフト 19と、カムシャフト 19 を収容するハウジングとしてのシリンダヘッド 13およびベアリングキャップ 13cと、カム シャフト 19をハウジングに対して回転自在に支持する針状ころ軸受 71とを備える。

[0191] 針状ころ軸受 71は、円弧形状の外輪部材 72a, 72bを円周方向に複数連ねて形 成される外輪 72と、外輪 72の内径面に沿って配置される複数のころとしての針状こ ろ 73と、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有し、複数の針状ころ 73の間隔を保持する保持器 74とを備える。

[0192] 図 30を参照して、外輪部材 72aを説明する。なお、図 30は外輪部材 72aの側面図 である。また、図 30の矢印 XXIVから見た矢視図、および図 30の矢印 XXVから見た 矢視図は、それぞれ図 24および図 25と共通するので、説明は省略する。さらに、外 輪部材 72bは外輪部材 72aと同一の形状であるので、説明は省略する。

[0193] まず、図 30を参照して、外輪部材 72aは、中心角 180° の半円形状であって、円 周方向の一方側端部に径方向外側に折り曲げられた係合爪 72cと、軸方向の両端 部の全域に径方向内側に突出する鍔部 72dとを有する。係合爪 72cは、シリンダへッ ド 13と係合して外輪部材 72aがハウジングに対して回転するのを防止する。鍔部 72 dは、保持器 74の軸方向への移動を規制すると共に、軸受の潤滑油保持性を向上さ せる。そして、この 2つの外輪部材 72a, 72bを円周方向に連ねて円環形状の外輪 7 2を形成する。また、外輪 72の内径面の軸方向中央部は、針状ころ 73の軌道面とし て機能する。

[0194] なお、この鍔部 72dの円周方向端部には、相対的に剛性の低い剛性低下部が設 けられている。具体的には、外輪部材 72aの円周方向中央部において突出高さが一 定の部分と、円周方向両端部において端部方向に向かってなだらかに突出高さが 低くなる傾斜部 72iとに区分され、突出高さが一定の部分と傾斜部 72iとの境界は滑 らかに形成されている。その結果、外輪部材 72aの円周方向端部における鍔部 72d ( 傾斜部 72iの部分を指す）の突出高さは、円周方向中央部 (最厚部）における鍔部 7 2dの突出高さより低く設定されている。

[0195] なお、保持器 74の構成は、図 6および図 7に示す保持器 24と共通するので、説明 は省略する。

[0196] 次に、図 29、図 31、および図 32を参照して、針状ころ軸受 71をカムシャフト 19に 組み込む手順を説明する。

[0197] まず、保持器 74のポケット 74cそれぞれに針状ころ 73を組み込む。次に、保持器 7 4の弾性を利用して分割部分を広げ、カムシャフト 19に組み込む。さらに、凹部 74d と凸部 74eとを係合させて、保持器 74が外れないようにする。

[0198] 次に、シリンダヘッド 13の上に、一方側の外輪部材 72a、保持器 74を巻きつけて固 定したカムシャフト 19、他方側の外輪部材 72b、およびベアリングキャップ 13cの順に 組込み、シリンダヘッド 13とベアリングキャップ 13cとをボルト等で固定する。このとき 、外輪部材 72aの凹部 72eと外輪部材 72bの凸部 72g、外輪部材 72aの凸部 72gと 外輪部材 72bの凹部 72eとがそれぞれ突合するように配置する。

[0199] なお、外輪部材 72aの係合爪 72cは、シリンダヘッド 13のベアリングキャップ 13cと の突合面に設けられた係合溝 13dと係合するように配置し、外輪部材 72bの係合爪 7 2cは、ベアリングキャップ 13cのシリンダヘッド 13との突合面に設けられた係合溝 13 dと係合するように配置する。これにより、外輪部材 72a, 72bが、軸受回転中にハウ ジング内部で回転するのを防止することができる。

[0200] また、組込み前の外輪部材 72a, 72bの曲率は、ハウジングの内周面の曲率より僅 かに大きく設定しておく。そして、曲率を小さくする方向に弾性変形させながらハウジ ングに組み込む。このとき、外輪部材 72a, 72bには元に戻ろう（曲率が大きくなる方 向）とする力が働くので、結果として、ハウジングの内周面に沿うように組み込むことが できる。

[0201] 上記の組み込み手順とすることにより、カムシャフト 19と、外輪 72と、保持器 74と、 ノ、ウジングとが同心円状に配置され、針状ころ 73が安定して回転可能な針状ころ軸 受 71を得ること力 Sできる。また、上記構成の針状ころ軸受 71は、外輪 72を 2つの外 輪部材 72a, 72bに分割し、保持器 74を円周方向の一箇所で分割したことにより、支 持部分の径方向力も組み込むことが可能となるので、カムシャフト 19を支持する軸受 として採用すること力 Sでさる。

[0202] ここで、組込み前の外輪部材 72a, 72bの曲率をハウジングの内周面より大きく設 定したことにより、外輪部材 72a, 72bの円周方向端部には、常に外側に広がろうと する力が働く。また、外輪部材 72a, 72bの軸方向端部を折り曲げて鍔部 72dを形成 したことにより、鍔部を有していない外輪部材と比較して剛性が向上している。その結 果、外輪部材 72a, 72bの円周方向端部がハウジングの内周面を攻撃して、ハウジン グに圧痕（磨耗）が生じるおそれがある。この磨耗粉が針状ころ軸受 71の内部に侵入 すると、潤滑油が早期に劣化したり、外輪部材 72a, 72bの軌道面や針状ころ 73の 転動面を傷つけたりして、針状ころ軸受 71の潤滑性を著しく低下させる。そこで、外 輪部材 72a, 72bの円周方向端部における鍔部 72dの突出高さを他の部分より相対 的に低く設定して、円周方向端部の剛性を低下させることにより、このような問題を回 避すること力 Sでさる。

[0203] なお、上記の実施形態においては、鍔部 72dの円周方向端部に傾斜部 72iを設け た例を示したが、これに限ることなぐ例えば、互いに突出高さの異なる円周方向中 央部の鍔部 72dと円周方向端部の鍔部 72dとの間に段差を設けてもよい。また、この 発明の範囲には、円周方向端部の鍔部 72dの突出高さが Omm、すなわち、円周方 向端部に鍔部 72dが形成されて!/、な!/、ものも含むものとする。

[0204] また、この発明は外輪部材 72a, 72bの円周方向端部の剛性を低下させるために、 ある程度の範囲の鍔部 72dの突出高さを低くしたものであって、隣接する外輪部材 7 2a, 72bを組み合わせたときに隣接する外輪部材 72a, 72bの鍔部 72dが互いに重 なり合わないために、鍔部 72dの端部を切り落としたものや、鍔部 72dの端部に施す 面取り等とは区別されるべきである。

[0205] また、上記の実施形態においては、鍔部 72dの円周方向端部にのみ剛性低下部 を設けた例を示したが、円周方向端部に加えて円周方向中央部にも剛性低下部を 設けることを妨げるあのではなレ、。

[0206] 次に、図 33を参照して、図 30に示す外輪部材 72aの製造方法を説明する。なお、 図 33は、外輪部材 72aの製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段 は断面図を示す。また、外輪部材 22aの製造方法との共通点の説明は省略し、相違 点を中心に説明する。具体的には、出発材料の組成、および熱処理工程は共通す るので説明は省略する。さらに、外輪部材 72bの製造方法は、外輪部材 72aと同様 であるので、説明は省略する。

[0207] 図 33を参照して、第 1の工程としては、鋼板を打ち抜き加工して外輪部材 72aの外 形を形成する（a工程)。また、長手方向の一方側端部に凹部 72eおよび係合爪 72c となる部分を形成し、他方側端部に平坦部 72fおよび凸部 72gを形成する。

[0208] このとき、外輪部材 72aの長手方向の長さは、カムシャフト 19の直径に基づいて決 定し、短手方向の長さは、使用する針状ころ 73のころ長さに基づいて決定する。ただ し、短手方向には鍔部 72dとなる部分が含まれているので、この工程での短手方向 の長さは、外輪部材 72aの完成品の軸方向幅寸法より長くなる。また、円周方向端部 における鍔部 72dの突出高さが他の部分より低くなるように、この工程で形状を調整 しておく。

[0209] この工程は、一度の打ち抜き加工で全ての部分を打ち抜!/、てもよ!/、し、打ち抜き加 ェを複数回繰り返して所定の形状を得てもよい。なお、順送プレスを用いる場合には 、各加工工程の加工位置を決めるためのパイロット穴 75を形成すると共に、隣接する 外輪部材との間に連結部 76を設けるとよい。

[0210] 第 2の工程としては、曲げ加工により外輪部材 72aの円周方向端部を径方向外側 に折り曲げて、係合爪 72cを形成する (b工程)。係合爪 72cの曲げ角度は、ハウジン グの係合溝 13cに沿う角度とする。なお、この実施形態では、係合爪 72cが外輪部材 72aに対して 90° の角度となるように折り曲げて!/、る。

[0211] 第 3の工程としては、曲げ加工により外輪部材 72aの外形を所定の曲率に曲げるェ 程と、外輪部材 72aの軸方向両端部から径方向内側に突出する鍔部 72dおよび傾 斜部 72iを形成する工程とを含む（c工程〜 g工程)。具体的には、連結部 76を含む 中央部分を残して長手方向の両端部側から順に曲げていく（c工程、 d工程)。次に、 曲げ加工を施した長手方向両端部について、短手方向の両端部に曲げ加工を施し て鍔部 72dを形成する（e工程)。次に、外輪部材 72aの外形が所定の曲率となるよう に、長手方向中央部についても曲げ加工を行う（f工程)。最後に、連結部 76を除去 して、長手方向中央部に鍔部 72dを形成する（g工程)。なお、第 1の工程 (a工程）に お!/、て鍔部 72dとなる部分の寸法を調整して!/、るので、傾斜部 72iを形成する特別な 工程を設ける必要はない。 [0212] なお、上記の実施形態における鍔部 72dは、円周方向端部に向かって突出高さが 徐々に低くなる傾斜部 72iを設けた例を示した力 S、これに限ることなぐ外輪部材 72a , 72bの円周方向端部の剛性を低下させるあらゆる構成を採用することができる。例 えば、図 34を参照して、図 30の他の実施形態に係る外輪部材 82aを説明する。なお 、外輪部材 82aの基本構成は外輪部材 72aと共通するので、共通点の説明は省略し 、相違点を中心に説明する。

[0213] 図 34を参照して、外輪部材 82aは、中心角 180° の半円形状であって、円周方向 の一方側端部に径方向外側に折り曲げられた係合爪 82cと、軸方向の両端部の全 域に径方向内側に突出する鍔部 82dとを有する。そして、鍔部 82dの円周方向端部 には、剛性低下部としての穴 82iが設けられている。このように、鍔部 82dを軸方向に 貫通する穴 82iを設けることによつても、鍔部 82dの円周方向端部の剛性を低下させ ること力 Sでさる。

[0214] 図 35〜図 38を参照して、この発明の他の実施形態に係るころ軸受としての針状こ ろ軸受 91と、この針状ころ軸受 91を使用したカムシャフト支持構造を説明する。なお 、図 35、図 37、および図 38はカムシャフト支持構造の組込み前後の状態を示す図、 図 36は外輪部材 92aを示す図である。

[0215] まず、図 35を参照して、カムシャフト支持構造は、カムシャフト 19と、カムシャフト 19 を収容するハウジングとしてのシリンダヘッド 13およびベアリングキャップ 13cと、カム シャフト 19をハウジングに対して回転自在に支持する針状ころ軸受 91とを備える。

[0216] 針状ころ軸受 91は、円弧形状の外輪部材 92a, 92bを円周方向に複数連ねて形 成される外輪 92と、外輪 92の内径面に沿って配置される複数のころとしての針状こ ろ 93と、円周上の一箇所に軸受の軸線方向に延びる分割線を有し、複数の針状ころ 93の間隔を保持する保持器 94とを備える。

[0217] 図 36を参照して、外輪部材 92aを説明する。なお、図 36は外輪部材 92aの側面図 である。また、図 36の矢印 XXIVから見た矢視図、および図 36の矢印 XXVから見た 矢視図は、それぞれ図 24および図 25と共通するので、説明は省略する。さらに、外 輪部材 92bは外輪部材 92aと同一の形状であるので、説明は省略する。

[0218] 図 36を参照して、外輪部材 92aは、中心角 180° の半円形状であって、円周方向 の一方側端部に径方向外側に折り曲げられた係合爪 92cと、軸方向の両端部から径 方向内側に突出する鍔部 92dとを有する。係合爪 92cは、シリンダヘッド 13と係合し て外輪部材 92aがハウジングに対して回転するのを防止する。鍔部 92dは、保持器 9 4の軸方向への移動を規制すると共に、軸受の潤滑油保持性を向上させる。また、鍔 部 92dの一部には、軸方向に貫通する開口部としての切欠き部 92iが設けられてい る。なお、この実施形態では、切欠き部 92iは、所定の曲率を有する円弧形状である

[0219] そして、この 2つの外輪部材 92a, 92bを円周方向に連ねて円環形状の外輪 92を 形成する。また、外輪 92の内径面の軸方向中央部は、針状ころ 93の軌道面として機 能する。

[0220] 上記構成のように鍔部 92dを設けることにより、保持器 94の軸方向の移動を規制す ることができると共に、軸方向端部の隙間が減少して針状ころ軸受 91の潤滑油保持 性が向上する。また、鍔部 92dの一部に切欠き部 92iを設けることにより、軸受内部の 潤滑油は主にこの切欠き部 92iから流出する。したがって、この切欠き部 92iを力ムシ ャフト 19の負荷領域に配置することにより、負荷領域に潤滑油を重点的に供給するこ とが可能となる。

[0221] なお、保持器 94の構成は、図 6および図 7に示す保持器 24と共通するので、説明 は省略する。

[0222] 次に、図 35、図 37、および図 38を参照して、針状ころ軸受 91をカムシャフト 19に 組み込む手順を説明する。

[0223] まず、保持器 94のポケット 94cそれぞれに針状ころ 93を組み込む。次に、保持器 9 4の弾性を利用して分割部分を広げ、カムシャフト 19に組み込む。さらに、凹部 94d と凸部 94eとを係合させて、保持器 94が外れないようにする。

[0224] 次に、シリンダヘッド 13の上に、一方側の外輪部材 92b、保持器 94を巻きつけて固 定したカムシャフト 19、他方側の外輪部材 92a、およびベアリングキャップ 13cの順に 組込み、シリンダヘッド 13とベアリングキャップ 13cとをボルト等で固定する。このとき 、外輪部材 92aの凹部 92eと外輪部材 92bの凸部 92g、外輪部材 92aの凸部 92gと 外輪部材 92bの凹部 92eとがそれぞれ突合するように配置する。 [0225] また、外輪部材 92aの係合爪 92cは、シリンダヘッド 13のベアリングキャップ 13cと の突合面に設けられた係合溝 13dと係合するように配置し、外輪部材 92bの係合爪 9 2cは、ベアリングキャップ 13cのシリンダヘッド 13との突合面に設けられた係合溝 13 dと係合するように配置する。これにより、外輪部材 92a, 92bが、軸受回転中にハウ ジング内部で回転するのを防止することができる。

[0226] ここで、ハウジングとしてのシリンダヘッド 13およびベアリングキャップ 13cには、力 ムシャフト 19を収容する領域に潤滑油を供給する油路の開口 13eが設けられている 。また、カムシャフト 19には、内部に軸方向に伸びるオイル通路 19eと、オイル通路 1 9eから軸部 19aに向かって延びる油孔 19fとが形成されている。そこで、針状ころ軸 受 91を組み込む際には、外輪部材 92a, 92bの油孔 92hとハウジングの開口 13eと がー致するように配置する。また、鍔部 92dに形成された切欠き部 92iがカムシャフト 19の負荷領域に位置するように配置する。

[0227] 上記の組み込み手順とすることにより、カムシャフト 19と、外輪 92と、保持器 94と、 ノ、ウジングとが同心円状に配置され、針状ころ 93が安定して回転可能な針状ころ軸 受 91を得ること力 Sできる。また、上記構成の針状ころ軸受 91は、外輪 92を 2つの外 輪部材 92a, 92bに分割し、保持器 94を円周方向の一箇所で分割したことにより、支 持部分の径方向力も組み込むことが可能となるので、カムシャフト 19を支持する軸受 として採用すること力 Sでさる。

[0228] また、外輪部材 92a, 92bの鍔部 92dに切欠き部 92iを設けることにより、軸受内部 の潤滑油の大部分は、切欠き部 92iから流出する。そこで、この切欠き部 92iを負荷 領域に配置することにより、潤滑油を負荷領域に重点的に供給することができる。そ の結果、潤滑性に優れ、信頼性の高いカムシャフト支持構造、および内燃機関 11を 得ること力 Sでさる。

[0229] ただし、切欠き部 92iは、カムシャフト 19から針状ころ軸受 91に負荷される最大荷 重の方向に延びる仮想線 1力 外れた位置に配置される。具体的には、切欠き部 92

3

iを外輪部材 92aの円周方向中央部から外れた位置に配置する。一方、仮想線 1

3 外輪部材 92aの円周方向中央部を通るように外輪部材 92aを組み込む。針状ころ軸 受 91の剛性は切欠き部 92iを設けた領域である程度低下するので、最大荷重点（仮 想線 1と外輪部材 92aとの交点を指す）を避けて切欠き部 92iを設けることにより、岡 IJ

3

性低下の影響を小さくすることができる。

[0230] さらに、切欠き部 92iは、仮想線 1を基準としてカムシャフト 19の回転方向（図 37中

3

の矢印 Aの方向）と反対側に設けるのが望ましい。これにより、最大荷重点には針状 ころ軸受 91の内側および外側から潤滑油が供給されるので、最大荷重点の冷却効 果が向上する。

[0231] なお、「負荷領域」とは、カムシャフト 19から針状ころ軸受 91に負荷される最大荷重 の方向（図 37中の仮想線 1で示す方向）を中心として左右 90° の領域（図 37中の円

3

弧 αで示す 180° の領域)を指す。一方、「非負荷領域」とは、最大荷重の方向と反 対側の 180° の領域（図 37中の円弧 βで示す領域）であって、負荷領域と比較して 相対的に小さな荷重しか作用しな!/、領域である（荷重が 0の場合を含む）。

[0232] また、図 41に示す内燃機関 11において、カムシャフト 19から針状ころ軸受 91に負 荷される最大荷重は、バルブ 17, 18をノ ノレブスプリング 17c, 18cに逆らって下方に 押し下げる力の反作用であり、その方向は、カムシャフト 19がバルブ 17, 18を押す 方向と反対の方向（図 41中の矢印の方向）である。

[0233] 上記の実施形態において、円弧形状の切欠き部 92iを 1箇所に設けた例を示した 1S これに限ることなく、任意の形状、数および位置であってよい。例えば、矩形等の 任意の形状であってよいし、円周方向中央部に設けてもよい。ただし、隣接する外輪 部材 92a, 92bの突合部分は非負荷領域に配置されることが望ましいので、最大荷 重点が外輪部材 92aの円周方向中央部に位置する図 36の状態が望ましい。さらに は、一方側の鍔部 92dにのみ設けてもよいし、両側の鍔部 92dに設けてもよい。

[0234] また、上記の実施形態において、軸方向に貫通する開口部として切欠き部 92iを設 けた例を示したが、これに限ることなく、任意の形態とすることができる。さらに、開口 部は鍔部の任意の位置に設けることができる。例えば、図 39を参照して、図 36の他 の実施形態に係る外輪部材 102aを説明する。ただし、基本構成は、図 36に示す外 輪部材 92aと同様であるので、共通点は省略し、相違点を中心に説明する。

[0235] 図 39を参照して、外輪部材 102aは、円弧形状であって、円周方向の一方側端部 に係合爪 102cと、軸方向両端部に鍔部 102dと、鍔部 102dの円周方向中央部に開 口部としての穴 102iとを有する。なお、この実施形態では、穴 102iは、鍔部 102dの 曲率に沿う長穴である。

[0236] このように、開口部を穴 102iとすることにより、鍔部 102dの突出高さが円周方向で 一定となる。これにより、保持器 94の軸方向の移動する機能が向上する。なお、穴 1 02iは、小径の穴を複数個設ける等してもよい。なお、この外輪部材 102aは、力ムシ ャフト 19に組み込んだときに、最大荷重の方向に延びる仮想線 1が穴 102iから外れ

4

た位置を通るように、傾けて組み込む。

[0237] 次に、図 40を参照して、図 36に示す外輪部材 92aの製造方法を説明する。なお、 図 40は、外輪部材 92aの製造工程の一部を示す図であって、上段は平面図、下段 は断面図を示す。また、外輪部材 22aの製造方法との共通点の説明は省略し、相違 点を中心に説明する。具体的には、出発材料の組成、および熱処理工程は共通す るので説明は省略する。さらに、外輪部材 92bの製造方法は、外輪部材 92aと同様 であるので、説明は省略する。

[0238] 図 40を参照して、第 1の工程としては、鋼板を打ち抜き加工して外輪部材 92aの外 形を形成する（a工程)。また、長手方向の一方側端部に凹部 92eおよび係合爪 92c となる部分を形成し、他方側端部に平坦部 92fおよび凸部 92gを形成する。さらに、 短手方向の両端部の中央部に切欠き部 92iとなる部分を形成する。

[0239] このとき、外輪部材 92aの長手方向の長さは、カムシャフト 19の直径に基づいて決 定し、短手方向の長さは、使用する針状ころ 93のころ長さに基づいて決定する。ただ し、短手方向には鍔部 92dとなる部分が含まれているので、この工程での短手方向 の長さは、外輪部材 92aの完成品の軸方向幅寸法より長くなる。

[0240] この工程は、一度の打ち抜き加工で全ての部分を打ち抜!/、てもよ!/、し、打ち抜き加 ェを複数回繰り返して所定の形状を得てもよい。なお、順送プレスを用いる場合には 、各加工工程の加工位置を決めるためのパイロット穴 95を形成すると共に、隣接する 外輪部材との間に連結部 96を設けるとよい。なお、連結部 96は、切欠き部 92iを形 成する位置から外れた位置に設ける。

[0241] 第 2の工程としては、曲げ加工により外輪部材 92aの円周方向端部を径方向外側 に折り曲げて、係合爪 92cを形成する (b工程)。係合爪 92cの曲げ角度は、ハウジン グの係合溝 13cに沿う角度とする。なお、この実施形態では、係合爪 92cが外輪部材 92aに対して 90° の角度となるように折り曲げて!/、る。

[0242] 第 3の工程としては、曲げ加工により外輪部材 92aの外形を所定の曲率に曲げるェ 程と、外輪部材 92aの軸方向両端部から径方向内側に突出する鍔部 92dを形成す る工程とを含む（c工程〜 g工程)。具体的には、連結部 26を含む中央部分を残して 長手方向の両端部側から順に曲げていく（c工程、 d工程)。次に、曲げ加工を施した 長手方向両端部について、短手方向の両端部に曲げ加工を施して鍔部 92dを形成 する（e工程)。次に、外輪部材 92aの外形が所定の曲率となるように、長手方向中央 部についても曲げ加工を行う（f工程)。最後に、連結部 96を除去して長手方向中央 部に鍔部 92dを形成する（g工程)。

[0243] 上記の各実施形態は、任意の組み合わせが可能である。これにより、組合せによる 相乗効果が期待できる。

[0244] 以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実 施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲 内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可 能である。

産業上の利用可能性

[0245] この発明は、自動車用や自動二輪車用エンジンのカムシャフトを支持するころ軸受 、カムシャフト支持構造、内燃機関に有利に利用される。

Claims

請求の範囲

[1] 円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、

前記外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備え、

前記外輪部材の外径面には、円周方向に延びる油溝が形成されている、ころ軸受

[2] 隣接する前記外輪部材の突合部に形成される円周方向隙間は、

前記油溝を含む領域で相対的に大きぐその他の領域で相対的に小さい、請求項 1に記載のころ軸受。

[3] 前記外輪部材は、

軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部と、

前記鍔部の先端を軸方向内側に折り曲げて形成される屈曲部とを有し、 前記屈曲部の内径面は、軸受内部からの潤滑油の流出を防止するシール面として 機能する、請求項 1に記載のころ軸受。

[4] 前記屈曲部の内径面と前記複数のころに内接する仮想円との間の隙間 δは、

5 μ m≤ o ^≥50 ii m

を満たす、請求項 3に記載のころ軸受。

[5] 前記ころ軸受は、前記屈曲部の内径面に接する位置に、軸受内部からの潤滑油の 流出を防止する円環状部材をさらに備える、請求項 3に記載のころ軸受。

[6] 前記ころは、端面から突出する突出部を有しており、

前記屈曲部の外径面は、前記突出部を案内するころ案内部として機能し、 前記ころ軸受は、隣接する前記ころが相互に接触するように配置された総ころ形式 の軸受である、請求項 3に記載のころ軸受。

[7] 前記外輪部材は、その軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部を有し、

少なくとも前記鍔部の円周方向端部には、相対的に剛性の低い剛性低下部が設け られている、請求項 1に記載のころ軸受。

[8] 前記剛性低下部における鍔部の突出高さは、その他の領域における前記鍔部の 突出高さより低くなつている、請求項 7に記載のころ軸受。

[9] 前記ころ軸受は、隣接する前記ころの間隔を保持する保持器をさらに備え、 前記保持器は、径方向に貫通する油路を有する、請求項 1に記載のころ軸受。

[10] 前記保持器は、一対のリング部と、前記一対のリング部の間に配置される複数の柱 部と、隣接する前記柱部の間に前記ころを収容するポケットとを有し、

前記油路は、前記柱部に設けられる、請求項 9に記載のころ軸受。

[11] 前記柱部は、隣接する前記ポケットを周方向に連通する油溝をさらに有する、請求 項 10に記載のころ軸受。

[12] 前記保持器は、前記ころを収容する複数の独立したポケット部と、前記複数のボケ ット部を円周方向に連結する連結部とを有し、

前記油路は、隣接するポケット部の間に設けられる、請求項 9に記載のころ軸受。

[13] 前記保持器は、前記ころを収容する複数のポケットを軸方向に 2列有しており、 前記油路は、前記 2つのポケット列の間に設けられる、請求項 9に記載のころ軸受。

[14] 円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、

前記外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備え、

前記外輪部材は、

軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部と、

前記鍔部の先端を軸方向内側に折り曲げて形成される屈曲部とを有し、 前記屈曲部の内径面は、軸受内部からの潤滑油の流出を防止するシール面として 機能する、ころ軸受。

[15] 円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、

前記外輪の内径面に沿って配置される複数のころとを備え、

前記外輪部材は、その軸方向端部に径方向内側に突出する鍔部を有し、 少なくとも前記鍔部の円周方向端部には、相対的に剛性の低い剛性低下部が設け られている、ころ軸受。

[16] 円弧形状の外輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、

前記外輪の内径面に沿って配置される複数のころと、

隣接する前記ころの間隔を保持する保持器とを備え、

前記保持器は、径方向に貫通する油路を有する、ころ軸受。

[17] カムシャフトと、 前記カムシャフトを収容するハウジングと、

前記カムシャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持する請求項 1に記載の ころ軸受とを備えるカムシャフト支持構造であって、

前記ハウジングの前記カムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開 口が設けられており、

前記油溝は、前記油路の開口に対面する位置を含んで円周方向に延びている、力 ムシャフト支持構造。

[18] 前記油溝は、コイニング加工によって形成されている、請求項 17に記載のカムシャ フト支持構造。

[19] 前記外輪部材は、内径面に前記ころと接触する軌道面が形成されている中央領域 と、前記中央領域に隣接する端部領域とに区分され、

前記油溝は、前記端部領域に配置される、請求項 17に記載のカムシャフト支持構

Λ &。

[20] 前記外輪部材は、前記油路の開口に対面する位置に外径側から内径側に貫通す る油穴と、軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部とを有し、

前記カムシャフトは、その円周方向上に軸受使用時に大きな荷重が作用する負荷 領域と、軸受使用時に相対的に小さな荷重が作用する非負荷領域とを有し、前記外 輪部材を前記カムシャフトに組み込んだ時に負荷領域に位置する前記鍔部には、軸 方向に貫通する開口部が設けられている、請求項 17に記載のカムシャフト支持構造

〇

[21] 前記開口部は、前記カムシャフトから前記ころ軸受に負荷される最大荷重の方向に 延びる仮想線から外れた位置に配置される、請求項 20に記載のカムシャフト支持構

[22] カムシャフトと、

前記カムシャフトを収容するハウジングと、

前記カムシャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持するころ軸受とを備え るカムシャフト支持構造であって、

前記ハウジングの前記カムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開 口が設けられており、

前記ころ軸受は、前記油路の開口に対面する位置に外径側から内径側に貫通す る油穴、および軸方向端部から径方向内側に突出する鍔部を有する円弧形状の外 輪部材を円周方向に複数連ねて形成される外輪と、前記外輪の内径面に沿って配 置される複数のころとを備え、

前記カムシャフトは、その円周方向上に軸受使用時に大きな荷重が作用する負荷 領域と、軸受使用時に相対的に小さな荷重が作用する非負荷領域とを有し、前記外 輪部材を前記カムシャフトに組み込んだ時に負荷領域に位置する前記鍔部には、軸 方向に貫通する開口部が設けられている、カムシャフト支持構造。 前記ハウジング内に設けられたシリンダと、

前記シリンダに連通する吸気路および排気路を開閉する弁と、

前記弁の開閉のタイミングを制御するカムシャフトと、

前記カムシャフトを回転自在に支持する請求項 1に記載のころ軸受とを備える内燃 機関であって、

前記ハウジングの前記カムシャフトを収容する領域には、潤滑油が流れる油路の開 口が設けられており、

前記油溝は、前記油路の開口に対面する位置を含んで円周方向に延びている、 内燃機関。