明 細 書
ポリ乳酸系耐熱シート
技術分野
[0001] 本発明はポリ乳酸系耐熱シートに関し、特に成型力卩ェに適したポリ乳酸系耐熱シ ートに関する。
背景技術
[0002] 近年、環境保全に関する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解される 生分解性ポリマーが注目されている。生分解性ポリマーの具体例としては、ポリプチ レンサクシネート、ポリ力プロラタトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルや、テレフタ ル酸 /1 , 4ブタンジオール/アジピン酸の共重合体などの脂肪族一芳香族共重合 ポリエステル等のように、溶融成形可能なポリエステルが挙げられる。これらの脂肪族 ポリエステルの中でも、自然界に広く分布し、動植物や人畜に対して無害なポリ乳酸 は、融点が 140〜175°Cであって十分な耐熱性を有するとともに、比較的安価な、熱 可塑性の生分解性樹脂として期待されてレ、る。
[0003] しかし、ポリ乳酸は、一般的に結晶化速度が遅い。この為、シートに押出成形する 際の流動化のための加熱で結晶を完全に融解させてしまった後、通常のロール冷却 をしてシートを製造し、このシートを用いて容器などに熱成型しても、工程中にポリ乳 酸の結晶化が十分に進まない。その結果、得られた成型品は耐熱性に劣る。
[0004] そこで、ポリ乳酸からなる成型品に耐熱性を付与する為に、熱処理することまたは /および延伸配向させることで結晶化させる方法が多数報告されている。
[0005] 例えば、熱処理により結晶化する方法としては、ポリ乳酸に結晶核剤としてタルクな どを添加して結晶化速度の速いシートを製造し、このシートを用いて加熱された金型 により短時間に成型させる製造方法が、たとえば JP2003— 253009Aにおいて提案 されている。また、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール 、脂肪族カルボン酸エステルなどの所謂透明核剤を添加する方法が、たとえば JP9 278991Aにおレ、て提案されてレ、る。
[0006] しかし、 JP2003— 253009Aに記載された方法では、成型前のシートでも透明性
が低い。し力も、成型を行う場合に、樹脂成分がポリ乳酸単独であればカ卩ェ性が良 好であるが、耐衝撃性を向上させるために他の柔軟な生分解性樹脂をブレンドする と、成型サイクルが数倍必要になり実用的な加工性が得られない。 JP9— 278991A の方法で得られるシートは、成型前のシートの透明性は高いものの、結晶化により透 明性が低下し、しかも結晶化に必要な熱処理時間が長ぐ実用性に劣る。
[0007] 延伸配向により結晶化する方法としては、成型前に一定の延伸を施す方法 (JP20 01— 162676A)や、上記透明核斉と延伸酉己向とを併用する方法 (JP2003— 3451 50A)が提案されている。し力、し、 JP2001— 162676Aのシートは、未延伸シートに 比べ成型しにくぐ特に深絞り成型が困難である。し力も、成型品の残留歪みが大き くなるため、ガラス転移点以上の温度で変形する問題がある。 JP2004- 345150A の技術は、結晶核剤と、成型時の延伸による配向との併用により、結晶化速度を向 上させて、結晶化後の透明性を維持させようとするものである。しかし、一般に成型品 の延伸倍率はその部位によって大きく異なるため、特に低倍率の加工成型品におい て成型品全体の耐熱性を上げることが困難である。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、前記問題点を解決して、透明性、耐熱性に優れ、特に成型加工の用途 に適した、ポリ乳酸系耐熱シートを提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に至ったも のである。すなわち、本発明のポリ乳酸系耐熱シートは、ポリ乳酸 50〜95質量%と、 乳酸成分を 30〜70モル%含有したポリ乳酸系共重合ポリマー 5〜50質量%とを含 み、示差走查型熱量計にて 20°CZminで昇温した際の、結晶化ピーク温度が 60〜 120°C、結晶化熱量が 10〜25j/g、融点が 160°C以上、結晶融解熱量が 15〜40J /gである。
発明の効果
[0010] 本発明によれば、成形加工に適したポリ乳酸系耐熱シートであって、シートを延伸
することなぐ実用性のある成型サイクル時間での加熱により結晶化可能で、結晶化 後の透明性や耐熱性に優れた、ポリ乳酸系耐熱シートを提供することができる。 発明を実施するための最良の形態
[0011] 以下、本発明について詳細に説明する。
[0012] 本発明のポリ乳酸系耐熱シートは、ポリ乳酸 50〜95質量%と、ポリ乳酸系共重合 ポリマー 5〜50質量%とを含有したものである。
[0013] 上記したポリ乳酸としては、ポリ L 乳酸、 L 乳酸と D 乳酸の共重合体であるポ リ DL 乳酸、またはこれらの混合体が使用できる。混合体の場合は、シートの融点 力 S160°C以上であることが好ましい。融点が 160°C未満であると、耐熱性に劣る場合 力 sある。
[0014] ポリ乳酸の融点は、 L 乳酸と D 乳酸の共重合比によって異なり、 D 乳酸の含 有率が増加すると、ポリ乳酸自体の結晶性が低下して融点が低下する。混合体の融 点を 160°C以上にするには、 D 乳酸の含有率が 2モル%以下であるポリ乳酸を主 体とする必要がある。 D 乳酸の含有率が 2モル%以下のポリ乳酸に、 D 乳酸の含 有率が 10%以上で実質的に非晶性であるポリ乳酸を一部混合することにより、 160 °C以上の融点を有しつつ、結晶化度や結晶化速度を制御することができる。よって、 この手法は、所望の結晶性を得る手法として有効である。
[0015] ポリ乳酸に存在する残留ラクチドは、その量が多すぎるとポリ乳酸の加水分解を促 進することが知られている。しかし、低分子量のラクチドは、高分子量のポリ乳酸よりも 結晶化しやすぐこのラクチドが結晶化開始剤となってポリ乳酸の結晶化を促進する 。したがって、本発明においては、ポリ乳酸中の残留ラクチド量は特に限定しないが 、結晶化の促進と成形体への耐熱性の付与の点から、 0.:!〜 0. 6質量%の範囲に あることが好ましい。残留ラクチド量が 0. 1質量%未満であると、ポリ乳酸の結晶化を 促進する結晶化開始剤としての働きが十分に得られない。一方、残留ラクチド量が 0 . 6質量%を超えると、結晶化は促進されるものの、加水分解を促進する作用が強ま つて生分解してしまう。
[0016] ポリ乳酸の重量平均分子量は、 15万〜 30万の範囲にあることが好ましぐより好ま しくは 16万〜 20万である。ポリ乳酸の重量平均分子量が 15万未満であると、溶融粘
度が低くすぎて、得られたシートは機械的特性に劣るものになりなすい。重量平均分 子量が 30万を超えると、溶融粘度が高くなりすぎて溶融押出が困難となりやすい。
[0017] 本発明のポリ乳酸系耐熱シートを構成するポリ乳酸系共重合ポリマーは、乳酸成分 を 30〜70モル%含有することが必要である。乳酸成分が 30モル%未満であると、ポ リ乳酸との相溶性が悪ぐ透明なシートを得ることが難しい。その一方で、 70モル%を 超えると、ポリ乳酸の結晶化速度を速める効果が小さぐ結晶化に必要な熱処理時 間が長くなつて実用性に劣り、しかも結晶化した際の透明性も劣る。
[0018] 乳酸成分以外の共重合成分は、ジカルボン酸とジオールからなるポリエステル、も しくはポリエーテルであることが好ましい。
[0019] ジカルボン酸成分としては、特に限定するものではなレ、が、シユウ酸、コハク酸、ァ ジピン酸、セバシン酸、ァゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、テレフタル酸、イソ フタル酸、フタノレ酸、 2, 6 ナフタレンジカルボン酸、 5 ナトリウムスルホイソフタノレ 酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、ィタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、 シクロへキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、 4ーヒドロキシ安息香酸、 ε —力プロ ラタトンなどが挙げられる。ポリ乳酸との相溶性の面から、炭素数が 10以下のジカル ボン酸が好ましい。
[0020] ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、 1, 2-プロピレ ングリコール、 1, 3—プロパンジオール、 1, 4 ブタンジオール、 1 , 5—ペンタンジ オール、ネオペンチルグリコール、 1 , 6—へキサンジオール、シクロへキサンジメタノ ール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ テトラメチレングリコール、ビスフエノール Αやビスフエノール Sのエチレンォキシド付 加体等が挙げられる。
[0021] ポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ テトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエーテルの重量平均分子量は 200〜 5000であることが好ましレ、。特定の重量平均分子量のポリエーテル成分を共重合す ることにより、ポリ乳酸との相溶性を低下させずに、ポリ乳酸に柔軟性を付与するがで きる。
[0022] ポリ乳酸系共重合ポリマーは、さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメ
チロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の 3官能化合物等を少量だけ 含有していてよい。これらの共重合成分は、 2種以上併用しても良い。
[0023] ポリ乳酸系共重合ポリマーは、結晶性であり、かつその融点が 130°C以上であり、 特に 140°C以上であることが好ましい。融点が 130°C未満であると、ポリ乳酸の結晶 化温度範囲とポリ乳酸系共重合ポリマーの結晶化温度範囲とのズレが大きくなり、昇 温時の結晶化速度の向上効果が小さくなる。また、結晶化後の耐熱性が劣る場合が ある。
[0024] 好ましい市販のポリ乳酸系共重合ポリマーとしては、大日本インキ社製の、商品名「 プラメート PD150、 PD350」などが挙げられる。
[0025] 本発明のポリ乳酸系耐熱シートは、ポリ乳酸 50〜95質量%と、ポリ乳酸系共重合 ポリマー 5〜50質量%とからなる必要がある。ポリ乳酸成分が 50質量%未満では、ガ ラス転移温度や融点が低下して、非晶状態のシートの取り扱い性に劣ったり、結晶化 しても耐熱性が低下したりする。ポリ乳酸成分が 95質量%を超えると、結晶化速度の 向上効果が小さぐ成型加工の実用性に劣る。この観点から、ポリ乳酸が 50〜85質 量%、ポリ乳酸系共重合ポリマーが 15〜50質量%であることが好ましぐポリ乳酸が 60〜85質量%、ポリ乳酸系共重合ポリマーが 15〜40質量%であることがさらに好ま しい。
[0026] 本発明のポリ乳酸系耐熱シートを構成する樹脂組成物中には、この樹脂組成物の 結晶化ピーク温度、結晶化熱量、最短半結晶化時間を制御する目的で、結晶核剤 を含有させても良い。その量は、樹脂組成物の全体を 100質量%として、 0. 1〜: 15 質量%の範囲であることが好ましい。添加量が 0. 1質量%未満であると結晶核剤とし ての効果を十分発揮できなくなる。添加量が 15質量%を超えると、結晶核剤の含有 量が多くなりすぎて、透明性が低下したり、成形品が脆くなつたりするなど、物性に悪 影響を与えてしまう。
[0027] 結晶核剤は、その種類が特に限定されるものではないが、少なくとも 1つの水酸基 を有するアミド系の結晶核剤であることが好ましい。またアミド系結晶核剤としては、ポ リ乳酸及びポリ乳酸系共重合ポリマーとの相溶性が良好であるものが好ましぐかつ ポリ乳酸及びポリ乳酸共重合ポリマーの結晶化速度を高め、しかも、ポリ乳酸及びポ
リ乳酸共重合ポリマーが結晶化した時の透明性を維持するものが好ましい。
[0028] このようなアミド系結晶核剤としては、具体的に以下のような化合物が挙げられる。
すなわち、リシノレイン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、 N—ヒドロキシェチルー リシノレイン酸アミド、 N—ヒドロキシェチル一 12—ヒドロキシステアリン酸アミド、 N, N '—エチレン一ビス一リシノレイン酸アミド、 N, Ν'—エチレン一ビス一 12—ヒドロキシ ステアリルアミド、 Ν, Ν' _エチレン一ビス一ステアリン酸アミド、 N, N'—へキサメチレ ン一ビス一リシノレイン酸アミド、 Ν, Ν'—へキサメチレン一ビス一 12—ヒドロキシステ アリン酸アミド、 Ν, Ν'—キシリレン一ビス一 12—ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙 げられる。この中でも特に、 Ν, Ν,一エチレンビス一ステアリン酸アミド、 Ν, Ν,一へキ サメチレンビス一リシノレイン酸アミド、 Ν, Ν'—へキサメチレンビス一 12—ヒドロキシ ステアリン酸アミド、 Ν, Ν,一キシリレンビス一 12—ヒドロキシステアリン酸アミドを、好 適に用いることができる。これらのアミド系結晶核剤は、単独で使用してもよいし複数 組み合わせて使用してもよい。
[0029] 好ましく用いられるアミド系結晶核剤の原料となるリシノレイン酸や 12—ヒドロキシス テアリン酸は、ヒマシ油をケン化分解して得られる脂肪酸で、植物由来であり、これら を用いることは、ポリ乳酸系共重合ポリマーを用いることとともに、石油原料の使用量 削減に貢献する。
[0030] 本発明のポリ乳酸系耐熱シートの結晶性を高めるためには、アミド系結晶核剤の化 学構造が対称構造であることが好ましい。また、ポリ乳酸およびポリ乳酸系共重合ポリ マーとの相溶性を高めるために、アミド系結晶核剤中の炭素数力 ¾〜60であることが 好ましい。
[0031] アミド系結晶核剤の添カ卩量は、 0.:!〜 5質量%であることが好ましぐ 0. :!〜 2質量 %であることがさらに好ましぐ 0. 1〜:!質量%であることがいっそう好ましい。 0. 1質 量%未満では結晶化を促進する効果に乏しぐ 5質量%を超える場合は、透明性が 損なわれやすくなつたり加工性が低下しやすくなつたりする。
[0032] ポリ乳酸との相溶性に優れる、前記したアミド系結晶核剤以外の有機物質の結晶 核剤として、エル力酸アミド、ステアリン酸アミド、ォレイン酸アミド、エチレンビスステア リン酸アミド、エチレンビスォレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどの脂肪
酸アミドが挙げられる。
[0033] 結晶核剤としては、上記以外に、タルク、スメクタイト、バーミキユライト、膨潤性フッ 素雲母などに代表される層状珪酸塩などの、無機物質が挙げられる。その中で、タル クは、ポリ乳酸に対して最も結晶化効率が高ぐ非常に安価で、しかも自然界に存在 する無機物質であるため、工業的にも有利で地球環境にも負荷を与えない。
[0034] 無機の結晶核剤の平均粒径は、 0. 1〜: 10 μ mの範囲にあることが好ましい。平均 粒径が 0. l x m未満であると、分散不良や二次凝集を生じて、結晶核剤としての効 果が十分に得られに《なる。平均粒径が 10 x mを超えると、耐熱シートの物性に悪 影響を与え、結果的にこの耐熱シートから得られる成形体の物性に悪影響を及ぼし やすくなる。
[0035] 上述した少なくとも 1つの水酸基を有するアミド系の結晶核剤と、その他の有機の結 晶核剤と、無機の結晶核剤とは、それぞれ単独で使用してもよいし、複数組み合わ せて使用してもよい。
[0036] ポリ乳酸樹脂の結晶化速度をより促進するために、必要に応じて、有機過酸化物な どの架橋剤や架橋助剤を併用して、樹脂組成物に軽度の架橋を施すことも可能であ る。
[0037] その架橋剤としては、 η—ブチルー 4, 4 ビス t ブチルパーォキシバリレート、 ジクミルパーオキサイド、ジー t ブチルパーオキサイド、ジー t一へキシルパーォキ サイド、 2, 5 ジメチルー 2, 5 ジ(t ブチルパーォキシ)へキサン、 2, 5 ジメチ ノレ 2, 5— t ブチルパーォキシへキシン 3などの有機過酸化物や;無水フタル 酸、無水マレイン酸、トリメチルアジピン酸、無水トリメリット酸、 1, 2, 3, 4 ブタンテト ラカルボン酸などの多価カルボン酸や;蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン 酸カリウム、マグネシウムエトキシドなどの金属錯体ゃ;ビスフエノール A型ジグリシジ ノレエーテル、 1, 6—へキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン トリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルなどのエポキシ化合物や ;ジイソシァネート、トリイソシァネート、へキサメチレンジイソシァネート、 2, 4_トリレ ンジイソシァネート、 2, 6 _トリレンジイソシァネート、キシリレンジイソシァネート、ジフ ヱニルメタンジイソシァネートなどのイソシァネートイ匕合物などが挙げられる。
[0038] 架橋助剤としては、トリメタタリレート、グリシジルメタタリレート、 n—ブチルメタクリレ ート、ヒドロキシプロピルモノメタタリレート、ポリエチレングリコールモノメタタリレートな どが挙げられる。
[0039] 本発明においては、シートを形成する樹脂組成物中に、必要に応じて、耐衝撃性 改良剤、可塑剤、紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、難燃剤 、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、離型剤、防湿剤、酸素バリア剤などを、 樹脂組成物の特性を損なわない範囲で添加してもよい。あるいは、これらをシートの 表面にコートしてもよい。
[0040] 上記のように構成された樹脂組成物は、シート状に押し出されてシート化される。シ ートの厚みは、特に限定されるものではなぐ用途や要求性能等によって適宜設定 すればよレ、。ただし、 150〜500 x m程度の厚みであるのが適当である。
[0041] 本発明のポリ乳酸耐熱シートの製造方法は、特に限定されるものではなぐ例えば 、 Tダイ法、インフレーション法、カレンダ一法等が挙げられる。なかでも、 Tダイを用 レ、て材料を溶融混練して押出す Tダイ法が好ましレ、。
[0042] Tダイ法により本発明のポリ乳酸耐熱シート製造する場合には、ポリ乳酸とポリ乳酸 系共重合ポリマーとを適量配合したポリ乳酸系樹脂組成物を、 1軸押出機あるいは 2 軸押出機の押出機ホッパーに供給し、押出機を、例えば、シリンダー温度 180〜23 0°C、 Tダイ温度 200〜230°Cに加熱し、樹脂組成物を溶融混練して押出し、 30〜5 0°Cの温度範囲に設定されたキャストロールにて冷却することで、厚み 150〜500 μ m程度のシートを得ることができる。
[0043] 本発明のシートは、 20°C/minの昇温条件で示差走査型熱量計にて測定した際 の、結晶化ピーク温度が 60〜120°C、結晶化熱量が 10〜25jZg、融点が 160°C以 上、結晶融解熱量が 15〜40jZgであることが必要である。
[0044] これらの特性を発揮させるためには、具体的には、ポリ乳酸における結晶性ポリ乳 酸と非晶性ポリ乳酸の配合比や、ポリ乳酸系共重合ポリマーの種類や、ポリ乳酸とポ リ乳酸系共重合ポリマーとの混合比などを調整したり、必要に応じて結晶化核剤を添 加したりすることが肝要である。シートに加熱や延伸を行うことによつても、これらの特 性を発揮させることができる。
[0045] 結晶化ピーク温度が 60°C未満であると、シートを軟ィ匕するための加熱の際に結晶 化して、成型性に劣る場合がある。反対に 120°Cを越えると、結晶化に時間がかかり すぎて成型力卩ェの実用性に劣るばかりか、結晶化後に白化しやすい。このため、結 晶化ピーク温度は、 60°C〜: 100°Cであることが好ましい。
[0046] 結晶化ピーク温度は、ポリ乳酸とポリ乳酸系共重合ポリマーとの相溶性や、両者の 配合割合や、ポリ乳酸系共重合ポリマーの分子量、ガラス転移温度、結晶性や、さら には、結晶核剤の種類、添加量などに依存する物性である。
[0047] ポリ乳酸単体の結晶化ピーク温度は、本発明で規定する測定条件であるところの、 示差走查型熱量計にて 20°CZminで昇温したときには、観測されなレ、。ポリ乳酸に ポリ乳酸系共重合ポリマーを添加すると、結晶化ピークが比較的高い値で観測され るようになる。この結晶化ピーク温度は、次のような手法により下げることができ、これ を 60〜: 120°Cの範囲に制御することができる。詳しくは、ポリ乳酸系共重合ポリマー の配合量を増やすことにより、結晶化ピーク温度は低下する。また、ポリ乳酸系共重 合ポリマーとして、ポリ乳酸との相溶性がより高ぐより結晶性の高レ、ものを使用しても 、結晶化ピーク温度は低下する。結晶核剤を使用すると、その添加量に応じて結晶 化ピーク温度は低下する。結晶化ピーク温度を上記範囲とするためには、これらの手 法を適宜組み合わせて調整すればょレ、。
[0048] 結晶化熱量が 10j/g未満であると、シートの状態で結晶化が進行している力、結 晶性が低レ、ことを意味する。ここで、結晶化が進んでレ、る場合には深絞り成型性に劣 り、結晶化速度が遅い場合には上記と同様に結晶化に時間力 Sかかりすぎて成型カロ ェの実用性に劣る。よって、結晶化熱量は、 15〜25j/gであることが好ましい。
[0049] 結晶化熱量は、上記した結晶化ピーク温度の場合と同様の手法で調整できる。そ の他として、成型前のシートに後述するような加熱や延伸などの処理をおこなって、 組成物の一部を結晶化させることにより、結晶化熱量を低下させることができる。
[0050] 融点は、 160°C以上であることが必要で、 160°C未満であると耐熱性に劣る。
[0051] 結晶融解熱量が 15jZg未満であると、結晶化度が低ぐ結晶化しても耐熱性に劣 る。反対に結晶融解熱量力 OjZgを超えると、成型品が脆ィ匕したり、結晶化後に白 化性したりする。よって、結晶融解熱量は、 20〜35j/gであることが好ましい。
[0052] 融点と結晶融解熱量とは、ポリ乳酸とポリ乳酸系共重合ポリマーのそれぞれの融点 や、両者の配合比などによって、調整される。特に主成分であるポリ乳酸についての 選定が重要であり、先述のように D 乳酸成分と L 乳酸成分の混合比や共重合比 により融点や結晶融解熱量が調整される。
[0053] 本発明のポリ乳酸系耐熱性シートは、示差走査型熱量計にて等温結晶化測定した 際の最短半結晶化時間が lOOsec未満であることが好ましぐ 50sec未満であること が特に好ましい。 lOOsec以上であると、最短の温度域で結晶化処理を施しても白化 しゃすい。示差走査型熱量計にて等温結晶化測定した際の最短半結晶化時間の調 整は、ポリ乳酸とポリ乳酸系共重合ポリマーとの相溶性や、両者の配合割合や、ポリ 乳酸系共重合ポリマーの分子量、ガラス転移温度、結晶性などを調整することで、お こなうことができる。また、結晶核剤の種類や添加量の効果が大きぐ特に、少なくとも 1つの水酸基を有するアミド系の結晶核剤は、少量で結晶化速度を速めることができ るので、これを用いることで最短半結晶化時間を lOOsec以下としゃすくなる。
[0054] 本発明のポリ乳酸系耐熱性シートは、半結晶化時間が lOOsec未満の温度域が 30 °C以上、特に 40°C以上で存在することが好ましい。すなわち、樹脂組成物の融点か らより低い温度域での結晶化速度を高めることが、結晶化後の白化抑制に有効であ る。
[0055] 本発明のポリ乳酸系耐熱性シートは、成型前に予備結晶化させたり予備延伸させ たりしておくことで、その結晶化特性を調整することができる。
[0056] 予備結晶化させることにより、成型時に必要な結晶化に力かる時間を削減すること ができる。具体的には、押出成形されたシートを、成型工程前に、 50〜80°C、 5〜3 0秒の条件で予備結晶化させることが好ましい。なお、予備結晶化により昇温時の結 晶化熱量が低下するが、結晶化熱量は、成型加工前の状態で lOjZg以上としてお くことが必要である。
[0057] 予備延伸の条件は、 50〜80°Cで、 1. 05〜2. 0倍とすることが好ましレ、。シートを 予備延伸することによりシートの結晶化速度が速くなり、条件によっては結晶化が進 むが、成型前の状態での結晶化熱量を 10j/g以上としておくことが必要である。結 晶化熱量が lOjZg未満であると、成形性が低下する傾向にある。上記の予備延伸
条件を用いれば、シートの結晶化熱量を 10〜25j/gの範囲に調整しやすくなる。
[0058] 次に、本発明のシートの成型加工について述べる。
[0059] 本発明のシートを成型加工する方法は、特に限定されるものではないが、真空成型 、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型のうちのいずれかの成型カ卩ェ方法が好適で ある。成型加工に先立って、熱板もしくは熱風により加熱しておくことが必要である。 その場合の加熱方法として、シートと直接接触する熱板方式では、熱板の表面状態 がシートに転写して成型品の透明性を損なう場合があるため、間接的な熱風加熱を 行うことがより好ましい。
[0060] 具体的には、まずシートを熱板もしくは熱風で樹脂組成物のガラス転移温度 + 20 °C〜ガラス転移温度 + 60°Cの範囲で 10〜60sec加熱し、シートを軟化および一部 結晶化させた後、真空もしくは圧空等の方法で賦型する。このときの加熱温度が低す ぎると、軟ィ匕が不十分で賦型できない。反対に加熱温度が高すぎたり加熱時間が長 すぎたりすると、シートの結晶化が進行し過ぎて賦型性が低下する。成型の際の金型 温度は、これを樹脂組成物のガラス転移温度以下に設定して賦型後速やかに離型 しても良いが、金型温度を実質的にポリ乳酸組成物が最も結晶化し易い温度である 80〜130°Cの範囲として金型内で結晶化させるようにすることが好ましい。このときの 更に好ましい温度範囲は、 90〜: 120°Cである。金型温度が 80°C未満であると、ポリ 乳酸組成物の結晶化が進行しなくなる。反対に熱処理温度が 130°Cを超えると、ポリ 乳酸の結晶化速度が極端に遅くなるとともに、ポリ乳酸の融点に近づくため結晶が融 解してしまうおそれがあり、結果的に結晶化による硬化が遅れ離型に必要な剛性を 得るのに時間がかかってしまう。
[0061] 本発明のポリ乳酸系耐熱シートを用いて得られる成型品は、結晶化指標が 20〜35 j/gであることが好ましい。前記のような成型方法を採ることで成型品の結晶化指標 をこの範囲とすることができる。結晶化指標がこの範囲にあることで、適度な耐熱性と 透明性を付与することができる。
[0062] 本発明にもとづくポリ乳酸系成型品について、一例を挙げて説明すると、以下の通 りである。例えば、従来耐熱性が不足するため使用が難しかった各種容器ゃトレイ等 に使用でき、さらに透明性が必要とされる容器蓋、ブリスターパック、クリアケース等に
好適に使用できる。
実施例
[0063] 次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
[0064] 下記の実施例及び比較例における、シートの原料と、シートの特性値の測定法とは
、次の通りである。
[0065] [シートの原料]
(A.ポリ乳酸)
PLA- 1 : (ネイチヤーワークス社製、品番: 4032D) D体含有量 1 · 2モル0 /0、残 留ラクチド量 0. 2質量%、重量平均分子量 20万。
[0066] PLA— 2 : (ネイチヤーワークス社製、品番: 4060D) D体含有量 10· 5モル0 /0、 残留ラクチド量 0. 2質量%、重量平均分子量 20万。
[0067] (B.ポリ乳酸系共重合ポリマー)
CPLA— 1: (大日本インキ社製、品番:プラメート PD150) 乳酸成分 50モル0 /0、 融点 165°C、ガラス転移温度 52°C。
[0068] CPLA— 2 : (大日本インキ社製、品番:プラメート PD350) 乳酸成分 50モル%、 融点 157°C、ガラス転移温度 18°C。
[0069] (C.結晶核剤)
EA—1 :エチレンビスラウリル酸アミド(日本化成社製、品番:スリパックス L)。
[0070] EA— 2 :エチレンビス一 12—ヒドロキシステアリン酸アミド (伊藤製油社製、品番:
A- S -A T- 530SF) o
[0071] [シートの特性値の測定法]
(A.結晶化特性)
示差走查型熱量計(Perkin Elmer社製、型番: Pyris l DSC)を用レ、、シート 10 mgを昇温速度 20°CZminで昇温し、その昇温時のガラス転移温度 (Tg)、結晶化ピ ーク温度 (Tc)、結晶化熱量 (AHc)、融点 (Tm)、結晶融解熱量(AHm)を測定し た。
[0072] (B.結晶化指標)
上記 A.結晶化特性の測定結果より、下記式(1 )により算出した。
[0073] 結晶化指標 = | AHm | | ΔΗο | (j/g) 式(1) (C.最短半結晶化時間)
示差走査型熱量計(Perkin Elmer社製、型番: Pyrisl DSC)を用い、シート 10 mgを昇温速度 500°CZminで所定の温度まで昇温し、その温度において等温で保 持した際の結晶化時間を測定した。測定は 80°C〜140°Cの範囲にて 5°C間隔で行 レ、、結晶化が最速となる温度でのピークまでの時間を最短半結晶化時間とした。
[0074] (D.耐熱性)
[シートの耐熱性]
12cm X 12cmのステンレス製の枠にシートを固定し、熱風乾燥機内で表 1に示す 条件で加熱結晶化処理を施した。得られた結晶化シートの中央部に 7cmの十字の 切込みを入れ、熱風乾燥機内でシートを水平方向の姿勢で 2時間保管した。そのと きに、次の基準にしたがって耐熱性を評価した。
[0075] ◎ 90°Cで変形が認められなかった。
[0076] 〇: 80°Cで変形が認められな力 た力 90°Cでは切込みを入れた部分に変形が 認められた。
[0077] Δ: 70°Cで変形が認められな力 た力 80°Cでは切込みを入れた部分に変形が 認められた。
[0078] X: 70°Cで、切込みを入れた部分に変形が認められた。
[0079] [成型品の耐熱性]
シートを後述の金型を用いて成型することにより得られた成型品を、その底部を上 にして熱風乾燥機内で 2時間保管して、次の基準により耐熱性を評価した。
[0080] ◎: 90°Cで変形が認められなかった。
[0081] 〇:80°Cで変形が認められなかった力 90°Cでは変形が認められた。
[0082] A : 70°Cで変形が認められなかった力 80°Cでは変形が認められた。
[0083] X : 70°Cで変形が認められた。
[0084] (E.ヘイズ)
ヘイズメーター(日本電色工業社製、型番: NDH2000)により、上記 D.と同様に 加熱結晶化処理を施したシート、および実施例 6〜8では成型品の底中央部につい
て、それぞれヘイズ値(%)を測定し、次の基準にしたがって評価した。
[0085] ◎ (良好) :15%未満
〇(普通) :15%以上〜 25%未満
△ (やや劣る): 25%以上〜 35%未満
X (劣る) :35%以上
(F.成型加工性)
熱板圧空成型機とアルミニウム製の金型 (HMR— 3B)とを用いて、表 2に示す加熱 条件で、縦 230mm、横 200mm、深さ 24mmの容器を成型し、次の基準にしたがつ て成形加工性を評価した。
[0086] 〇:成型品に金型の形状が明確に転写されており、かつ、離型時の変形なし。
[0087] △:成型品に金型の形状が明確に転写されているが、離型時の変形あり。
[0088] X:成型品に金型の形状が明確に転写されていない。
[0089] (実施例 1)
上述の PLA— 1を 80質量%と、上述の CPLA— 2を 20質量%とを、スクリュー径 90 mmの単軸押出機を用いて押出温度 225°Cにて溶融押出し、 20°Cに設定されたキ ヤストロールに密着させて、厚み 300 μ ΐηの未延伸シートを得た。得られたシートおよ びその特性値の詳細を表 1に示す。
[0090] (実施例 2〜7、比較例:!〜 6)
実施例 1に比べて、原料樹脂および結晶核剤を表 1に示すように変更した。それ以 外は実施例 1と同様にして、各種シートを得た。結晶核剤は、マスターチップの形で 添加した。このマスターチップは、ポリ乳酸 90質量%と結晶核剤 10質量%とをドライ ブレンドし、スクリュー径 30mm φの二軸押出機を用いて、押出温度 190°C、スクリュ 一回転数 150rpm、吐出量 lOOgZminの条件で溶融混練することで、製造した。得 られたシートおよびその特性値の詳細を表 1に示す。
[0091] なお、表 1では、各シートにシート番号 S _ 1〜S _ 14を付した。
[0092] (比較例 7)
実施例 1と同組成で厚み 600 x mの未延伸シートを得た。このシートについて、バッ チ式延伸機内において 80°Cで lmin加熱後、 1軸方向に 2倍延伸処理を施して、厚
み 300 β mの延伸シートを得た。延伸後のシートおよびその特性値の詳細を表 1に 示す。
[0093] (実施例 8〜: 16、比較例 8〜: 14)
実施例 1〜7および比較例 1〜7で得られたシート S_ 1〜S _ 14を、上述の金型を 用いて表 2の加熱条件で成型した。その結果は、表 2に示すとおりであった。
[0094] [表 1]
TS0l90/.00Zdf/X3d L V 90Ϊひ動 OAV
実施例 1〜7のシートは、 95°C〜120°C、 20〜30secの熱処理で結晶化させること ができ、得られたシートは、比較的透明で、 80°C以上の耐熱性を有していた。
[0096] 実施例 8〜: 10は、実施例 1のシートを使用し、加工条件を変えて成型品を得たもの であった。このうち、成型品の結晶化指標の高い実施例 6の成型品は、透明性が若 干低下していたが、耐熱性に優れたものであった。一方、結晶化指標の低い実施例 8の成型品は、耐熱性が若干劣っていたが、透明性に優れるものであった。実施例 7 の成型品は、耐熱性が若干低下していたが、透明性に優れるものであった。
[0097] 実施例 11〜: 14は、実施例 2〜5のシートをそれぞれ使用して成型品を得たもので あつたが、透明'性、耐熱 '性ともに優れていた。
[0098] 実施例 15、 16は、実施例 6、 7のシートをそれぞれ使用して成型品を得たものであ つた。このうち、実施例 15は、結晶核剤を併用しない実施例 8〜: 10に比べて成型サ イタルが短かった。実施例 16は、実施例 8〜: 16の中で最も成型サイクルが短かった 。これら実施例 15、 16は、いずれも成型品の透明性と耐熱性がともに良好であった。 なお、成型サイクルとは、熱板加熱時間と金型保持時間の和をいう。
[0099] 比較例 1のシートは、ポリ乳酸系共重合ポリマーの添カ卩量が少なかったため、樹脂 組成物の結晶化ピーク温度が高ぐ結晶化速度が遅かった。その結果、 130°Cで 30 secの熱処理を施しても耐熱性が得られず、ヘイズも劣ってレ、た。
[0100] 比較例 2のシートは、樹脂組成物の結晶化ピーク温度が高かったため、 120°Cで 3 Osecの熱処理を施しても結晶化指標が低ぐ耐熱性に劣っていた。
[0101] 比較例 3のシートは、非晶性のポリ乳酸である PLA— 2の含有量が多ぐ樹脂組成 物の結晶化融解熱量が少なかったため、熱処理による結晶化後も耐熱性に劣って いた。
[0102] 比較例 4のシートは、ポリ乳酸系共重合ポリマーを含有していなかつたため、結晶 化速度が著しく遅ぐ実用的な成型サイクルである 30secでは殆ど結晶化が認められ ず、従って、透明性には優れるが耐熱性に劣っていた。
[0103] 比較例 5のシートは、比較例 4と同様のシートに 130°Cで 180secの熱処理を施して 結晶化させたものであったため、耐熱性は有していたが透明性は著しく劣っていた。 し力、も、 180secの成型サイクルでは実用性に劣るものであった。
[0104] 比較例 6のシートは、結晶核剤としてエチレンビスラウリル酸アミド(EA— 1)を添カロ したものであつたが、 120°Cで 30secの熱処理による結晶化後の耐熱性、透明性共 に劣っていた。
[0105] 比較例 7のシートは、その結晶化熱量が低かったため、 100°Cで 30secの熱処理を 施したことによる耐熱性と透明性は優れていた。しかし、成型前のシートの結晶化指 標が高かったため、比較例 14において再度軟化し成型した際の加工性に劣ってい た。換言すると、比較例 14では、所定の深さの成型品が得られなかった。このため、 耐熱性、透明性の評価は行わなかった。
[0106] 比較例 8、 9では、金型内で成型品を結晶化させるベぐ金型内に成型品を保持し たまま 120°Cで 120secまでの熱処理を施した。しかし、得られた成型品は、結晶化 指標が低ぐ耐熱性に劣っていた。また金型からの離型時に成型品に変形が認めら れ、かつ比較例 9では成型品の透明性も劣っていた。
[0107] 比較例 10では、金型内に成型品を保持したまま、成型品を金型から離型可能な最 高温度の 100°Cで 120secの熱処理を施した。しかし、得られた成型品の結晶化指 標が低ぐ耐熱性に劣っていた。また、熱処理温度が 100°Cであったにもかかわらず 、金型からの離型時に成型品に若干の変形が認められた。
[0108] 比較例 11、 12では、金型内で結晶化させる方法を用いたときには、離型可能な温 度を見つけることができな力 た。そこで、金型温度を 40°Cまで低下させて離型した 。しかし、得られた成型品は、結晶化指標が低ぐ耐熱性に劣っていた。
[0109] 比較例 13では、金型内で結晶化させるために、 120°Cで 60secの熱処理を施した 。その結果、結晶化指標が高く耐熱性の向上が見られた。しかし、熱処理温度が高 すぎたため、成型品の透明性は劣ってレ、た。