JP4167107B2 - ポリ乳酸系二軸延伸積層フィルム - Google Patents

ポリ乳酸系二軸延伸積層フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系二軸延伸積層フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、高ヘイズ、低光沢度で、マット調を有する(艶消し)ポリ乳酸系二軸延伸積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械的強度、耐熱性、寸法安定性に優れた材料としてポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルやポリプロピレンが知られており、これらを用いたフィルムが包装用途等、産業界で幅広く使用されている。これらの用途には、それぞれ要求性能が異なり、それに適したフィルムが開発されてきた。例えば、艶消しの外観を有するマット調フィルムには、テカテカ感やピカピカ感がなくしっとりした優美な外観が要求され、さらに印刷紙と貼り合わせる場合には印刷がよく見えることが要求される。そのためには、光沢が少なく、かつ適度な透明性が必要である。光沢を低下させるには表面を粗面化する方法があり、具体的方法としては、フィルム表面を硬い粒状砂、酸、アルカリ、溶媒等で浸食する方法、フィルム表面に無機粒子などを含有した樹脂をコートする方法、フィルム樹脂中に無機粒子や有機合成樹脂などを含有させる方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、さらに延伸することにより空洞を含有させる方法(例えば、特許文献3参照)等がある。
【0003】
しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、その使用後に廃棄処理される際に、焼却処理を行うと、焼却時の発熱量が高いためその処理中に焼却炉を傷める恐れがあり、埋め立てによる廃棄処理を行うと、これらのプラスチック類は、化学的、生物学的安定性のためにほとんど分解せずに残留する。そのため、近年の環境保全に対する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解可能な生分解性を有し、コンポストでの堆肥化処理が可能な生分解性を有する樹脂からなるフィルムが要求されている。生分解性樹脂の中でもポリ乳酸は、各種でんぷんや糖類などを発酵して得られる乳酸を重合した植物由来の原料で、最終的には再び炭酸ガスと水となって地球的規模で環境リサイクルされる理想的なポリマー原料として各種用途に利用され始めている。
【0004】
例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂と、ポリ乳酸および/または乳酸類とその他のヒドロキシカルボン酸類との共重合体からなる真珠光沢を有する樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)、脂肪族ポリエステルを主成分とするポリマーからなり、光線透過率が50%以下である白色脂肪族ポリエステル系フィルム(例えば、特許文献5参照)が開示されている。しかし、前者では非生分解性樹脂を含んでいるため完全生分解性ではなく、後者では隠蔽性が高く、光線透過率の低いものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−206291号公報
【特許文献2】
特開平10−158445号公報
【特許文献3】
特開平5―279505号公報
【特許文献4】
特開平7―109413号公報
【特許文献5】
特開2001―49003号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決し、使用後に廃棄処理を行っても自然環境に悪影響を及ぼさない、高ヘイズ、低光沢度で、マット調を有する(艶消し)ポリ乳酸系二軸延伸積層フィルムを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリ乳酸系ポリマーからなる層と、ポリ乳酸系ポリマーならびに脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族共重合ポリエステル、及びポリエステルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上のポリマーとの混合物からなる層とを含んだ二軸延伸積層フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
ポリ乳酸系ポリマー(A)からなるA層と、生分解性樹脂(B)からなるB層を含有する積層フィルムであって、積層フィルムの外層のうち少なくとも一方がB層であり、前記生分解性樹脂(B)がポリ乳酸系ポリマー(C)60〜90質量%と生分解性ポリエステル(D)10〜40質量%とから構成され、前記生分解性ポリエステル(D)が脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族共重合ポリエステル、及びポリエステルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上のポリマーからなり、積層フィルムのヘイズが50%以上、かつ光沢度が10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系二軸延伸積層フィルム。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、A層にポリ乳酸系ポリマー(A)が、またB層にポリ乳酸系ポリマー(C)が用いられる。ポリ乳酸系ポリマー(A)と(C)としては、主成分が乳酸成分であればよく、ポリ乳酸、乳酸またはラクチドと少量の他のグリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエ−テルポリオール、ビス−ヒドロキシメチルベンゼン、トルエンジオール等の芳香族ジオール、カプロラクトン、ブチロラクトン、グリコリド等の環状ラクトンとの共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸が挙げられ、これらの単独の重合体、共重合体を用いることができる。
【0009】
本発明におけるポリ乳酸系ポリマーには、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合などを導入することができる。また、ポリ乳酸系ポリマーの数平均分子量は、5万〜30万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは8万〜15万である。数平均分子量が5万未満であると、得られるフィルムは機械的強度に劣るものとなり、延伸工程や巻き取り工程での切断も頻繁に起こり、操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を超えると、加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0010】
本発明において、A層を構成するポリ乳酸系ポリマー(A)としては、L−乳酸とD−乳酸との割合が、(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜94/6(モル%)であるポリ乳酸を主体とするポリ乳酸系ポリマーにて構成されることが好ましい。ポリ乳酸に占めるD−乳酸の含有量が6モル%を超えると、ポリ乳酸系ポリマー(A)は融点が低下し、また、結晶性に乏しいものとなる。その結果、延伸時の厚み精度が著しく悪化し、なおかつ延伸後の熱セットによる配向結晶化が進行しなくなるため機械的強度の不足や熱収縮率のコントロールが困難になるという問題が生じる。また、L−乳酸を単独で使用してもよいが、D−乳酸が少量配合されているほうが、結晶性が緩和され、製膜性の良いものが得られる。従って、本発明においては、L−乳酸とD−乳酸とが、(L−乳酸)/(D−乳酸)=99/1〜96/4(モル%)の範囲で配合されていることが、より好ましい。なお、L−乳酸とD−乳酸とは、上記の割合で配合されていれば、共重合体であってもブレンド体であってもよい。
【0011】
本発明の積層フィルムにおいて、B層を構成する生分解性樹脂(B)は、ポリ乳酸系ポリマー(C)と生分解性ポリエステル(D)とからなり、ポリ乳酸系ポリマー(C)は60〜90質量%、また生分解性ポリエステル(D)は10〜40質量%の割合で含有されることが必要である。生分解性ポリエステル(D)の含有量が10質量%未満であると、高ヘイズ、低光沢度のフィルムが得られず、また、40質量%を超えると、溶融ムラが生じ、製膜・延伸が困難となる。
【0012】
ポリ乳酸系ポリマー(C)としては、L−乳酸とD−乳酸とが、(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜70/30(モル%)であるポリ乳酸を主体とすることが好ましい。また、生分解性ポリエステル(D)としては、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族共重合ポリエステル、及びポリエステルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上のポリマーであることが必要である。一般に、非相溶または相溶性が低く、屈折率の異なる他のポリマーが混合される場合、フィルム中にボイドを含有する場合、またフィルム中に大きな結晶が存在する場合に、フィルムの透明性は低下する。特に、脂肪族ポリエステル等の結晶性の高いポリマーを混合する場合は、混合量が多くなるほど透明性が低下する。また、相溶性の低いポリマーを混合する場合においても、混合量が多くなるほど透明性が低下する。
【0013】
本発明において、生分解性ポリエステル(D)として用いることができるポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンスベレート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレンデカンジカルボキシレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケートやこれらの共重合体が挙げられる。中でも、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートが好適に用いられる。また、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(その一部エステル交換生成物、少量の鎖延長剤残基を含んだ生成物も含む)を使用することもできる。このブロック共重合体は、任意の方法で調整することができる。
【0014】
また、脂肪族芳香族共重合ポリエステルとしては、脂肪族成分及び芳香族成分を有するものであればよく、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカプロン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類、エチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス−ヒドロキシメチルベンゼン、トルエンジオール等のジオール類、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸類、環状酸無水物類、オキシラン類を成分とし、脂肪族成分と芳香族成分を有する共重合体等が挙げられる。中でも、脂肪族成分として1,4−ブタンジオールとアジピン酸、芳香族成分としてテレフタル酸を有する共重合ポリエステルが好ましい。また、生分解に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合等を導入することもできる。
【0015】
さらに、ポリエステルカーボネートとしては、ジヒドロキシ化合物とジカルボン酸又はそのアルキルエステル、あるいはジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応させることにより得られるものを用いることができる。ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、トルエンジオール、ビス−ヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールを成分の1種として用いることが好ましい。ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を適宜併用することができる。中でも、コハク酸、アジピン酸を成分の1種として用いることが好ましい。なお、ジヒドロキシ化合物及びジカルボン酸は、これらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。また、ジヒドロキシ化合物及びジカルボン酸は、それぞれ単独あるいは混合物として用いることができ、所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。また、炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートなどを挙げることができ、中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0016】
ポリ乳酸系ポリマー(C)と生分解性ポリエステル(D)とを混合して生分解性樹脂(B)を調製する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用できる。例えば、ポリ乳酸系ポリマー(C)と生分解性ポリエステル(D)とを二軸押出機中で混練する方法、押出時にブレンドする方法が挙げられる。溶融混練する際に、高い溶融温度下もしくは高剪断下で長時間混合した場合は、エステル交換反応や分解反応が進行して、混合物の特性が変化することがある。
【0017】
本発明の積層フィルムは、ポリ乳酸系ポリマー(A)からなるA層に、少なくとも一方の外層として、生分解性樹脂(B)からなるB層が積層されたものである。積層フィルムの構成としては、2層構成(A/B)あるいは3層構成(B/A/B)が挙げられる。
【0018】
本発明の積層フィルムのヘイズは50%以上であることが必要であり、好ましくは60%〜90%以下である。50%未満であると、マット調の外観が得られない。また、ヘイズがあまりに高すぎると印刷が見えにくくなる。
また、光沢度は10%以下であることが必要であり、好ましくは6%以下である。10%を超えると、マット調の外観が得られない。
【0019】
本発明における積層フィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、用途や要求性能や価格などによって適宜設定すればよいが、10〜100μm程度の厚さであるのが適当である。ポリ乳酸系ポリマー(A)からなるA層の厚みとしては、5〜99μmの範囲が、また生分解性樹脂(B)からなるB層の厚みとしては、1〜50μmの範囲が、積層フィルムの物性や外観等の点から適当である。また、B層の厚みは、全厚みの半分未満であることが好ましい。半分以上であると、透明性が低下しすぎることがある。
【0020】
本発明の積層フィルムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、フィルムの物性や加工性を調整する目的で、可塑剤、滑剤、無機フィラー、紫外線吸収剤等の添加剤、改質剤、架橋剤あるいは他の高分子材料等を添加することも可能である。
【0021】
可塑剤としては、特に限定されないが、本発明で使用する樹脂との相溶性に優れたものが好ましく、具体的には脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシ酸エステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体等が挙げられる。
【0022】
滑剤としては、特に限定されないが、脂肪族カルボン酸アミドが好ましく、具体的にはステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等が挙げられる。
【0023】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、カオリナイト、タルク、スメクタイト、マイカ、バーミキュライト、ハロイサイト等の層状珪酸塩化合物、シリカ、二酸化チタン、アルミナ等の安定な金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム等の安定な金属塩が挙げられる。
【0024】
本発明の積層フィルムには、例えばガスバリアー性を付与するためにポリビニルアルコール、金属酸化物蒸着層を設けてもよい。また、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理を行ってもよい。フィルムの表面処理は、印刷性や接着性の向上についても有効な手段である。
【0025】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸積層フィルムを製造する方法は、複数の押出機を用いてA層とB層をダイス内で重ね合わせて押し出す、いわゆる共押出法が好ましい。
例えば、Tダイ法により製造する場合には、A層を構成するポリ乳酸系ポリマー(A)ならびに、B層を構成する生分解性樹脂(B)を、シリンダー温度180〜260℃、Tダイ温度200〜250℃の押出機により加熱して溶融混練し、共押出し、A層がキャストロール面に接触するようにして溶融製膜を行い、厚さ100〜500μmの未延伸シートを得る。
【0026】
この際、キャストロールの温度は、30〜60℃に制御されていることが好ましい。30℃未満のキャストロールで製膜を行うと、本発明の高ヘイズで低光沢度のフィルムが得られないことがある。この理由として定かではないが、特に、生分解性ポリエステル(D)の含有量が少ない場合は、キャストロ−ルで急冷されることにより結晶核(微結晶)の生成が少なくなり、後の延伸及び熱セット工程での結晶化が促進されず、結果として、高ヘイズ及び低光沢度のフィルムが得られなくなると考えられる。また、最外層となる生分解性樹脂(B)からなるB層がキャストロール面に接触するように製膜された場合も急冷されるために結晶核の生成が少なくなり本発明のフィルムが得られないことがある。一方、キャストロールの温度が60℃を超えると、冷却が不充分であるため剥離不良となり、製膜が困難になるので好ましくない。
【0027】
未延伸シートの二軸延伸方法としては、テンター方式による同軸二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもかまわないが、特に、逐次二軸延伸法が好ましい。この理由として定かではないが、逐次二軸延伸法を用いる場合、まず、縦方向に大きく延伸されるため、フィルムを構成するポリマーの分子鎖は縦方向に引きそろえられ、結晶化または非常に結晶化しやすい状態となる。引き続いて行う横延伸に先立ちフィルムが再加熱されるとさらに安定な結晶状態へと進み、横延伸を行うとさらに結晶化し、高ヘイズのフィルムを容易に得ることができると考えられる。
例えば、未延伸フィルムを逐次二軸延伸法によって製造する場合には、未延伸シートを駆動ロールの回転速度比によってロール表面温度50〜80℃で縦方向に延伸し、引き続き連続して延伸温度60〜100℃で横方向に延伸する。延伸倍率は、特に限定されるものではないが、機械的特性などを考慮すると、その延伸倍率を、縦延伸倍率と横延伸倍率とがそれぞれ2.0倍以上であり、かつ面倍率が4.0倍以上となるように二軸延伸することが好ましい。縦延伸倍率および横延伸倍率が2.0倍未満であると、十分な機械的強力が得られず、実用性に劣るものとなる。また、縦延伸倍率および横延伸倍率の上限は特に限定されるものではないが、8.0倍を超えるとフィルム破れが発生しやすくなるため、縦延伸倍率および横延伸倍率は2.0〜8.0倍とすることが好ましく、縦延伸倍率が2.0倍〜5.0倍であることがより好ましい。
上記の延伸処理が行われた後、温度100〜150℃で熱処理が施され、リラックス率2〜8%の条件下で熱弛緩処理が行われる。
【0028】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、必ずしもこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明における評価方法は以下の通りである。
【0029】
(1)ヘイズ(%):
日本電色社製ヘーズメーター(NDH 2000)を用い、JIS K 7105に準じて、全光線透過率(Tt)、拡散透過率(Td)、平行光線透過率(Tp:Tt−Td)の測定を行い、下記式に基づいてヘ−ズを計算した。
ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100
【0030】
(2)光沢度(%):
村上色彩技術研究所社製(GROSS METER GM−26 PRO)を用い、JIS K 7105に準じて、入射角20°で、積層フィルムの最外層のうち、キャストロール非接触面について測定を行った。
【0031】
(3)引張強伸度(MPa、%):
島津製作社製オートグラフ(AG−100E)を用い、JIS C 2318に準じて測定を行った。長さ100mm、幅10mmの試料で測定した。
【0032】
(4)マット調:
見かけ上、フィルムが優れたマット調を示していると感じた人が、5人のパネラーのうち4人以上であれば○、3人以下であれば×とした。
【0033】
実施例1
ポリ乳酸系ポリマー(A)として、融点が165℃で、L−乳酸/D−乳酸=99/1(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)に、平均粒径が1.4μmの不定形シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア310P)0.1質量%を含有させたポリマーを用いた。
また、ポリ乳酸系ポリマー(C)として、融点が130℃でL−乳酸/D−乳酸=92/8(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)85質量部を用い、また生分解性ポリエステル(D)として、融点が97℃の脂肪族ポリエステル(昭和高分子社製、ビオノーレ#3001)15質量部とを用いて、これらをチップブレンドした。
そして、A層の片面にB層が形成されるように、それぞれのポリマーを溶融してTダイ温度220℃で共押出し、表面温度が40℃に温度制御されたキャストロールに、A層面を密着急冷させて、厚み240μmの未延伸シートを作製した。ポリマーの押出し量は、後述の延伸倍率を考慮して、フィルム厚みが最終的にA層/B層=15/5(μm)となるように調整した。
得られた未延伸シートを逐次2軸延伸機に供給して、予熱ロール60℃、延伸ロール75℃の条件下で縦方向に3.0倍に延伸し、引き続いて延伸温度80℃のテンター内で横方向に4.0倍に延伸した後、横方向の弛緩率を4%として125℃で熱処理を施し、一方の面にコロナ処理を施して、厚み20μmの二軸延伸積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの物性を表1に示す。
【0034】
実施例2〜4、比較例1〜2
表1に記載の組成、キャストロール温度、および延伸倍率に変更した以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
なお、実施例1に示した原料ポリマー以外に、ポリ乳酸系ポリマー(A)として、融点が155℃でL−乳酸/D−乳酸=96/4(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)、ポリ乳酸ポリマー(C)として、融点が165℃でL−乳酸/D−乳酸=99/1(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)、また生分解性ポリエステル(D)として、融点が105℃の脂肪族芳香族共重合ポリエステル(BASF社製、エコフレックスF)を使用した。
【0035】
実施例5
ポリ乳酸系ポリマー(C)として、融点が155℃で、L−乳酸/D−乳酸=96/4(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)を用い、また生分解性ポリエステル(D)として、融点が110℃の脂肪族ポリエステル(昭和高分子社製、ビオノーレ#1001)を用いて、表1に記載の組成で、Tダイ温度220℃で共押出し、表面温度が40℃に温度制御されたキャストロールに、A層面を密着急冷させて厚み180μmの未延伸シートを作製した。得られた未延伸シートを同時2軸延伸機に供給して、予熱温度70℃、延伸温度80℃のテンター内で縦方向に、3.0倍、横方向に3.0倍に同時二軸延伸した後、横方向の弛緩率を4%として125℃で熱処理を施し、一方の面にコロナ処理を施して、厚み20μmの二軸延伸積層フィルムを得た。
【0036】
比較例3
表1に記載の組成に変更した以外は実施例5と同様にして、フィルムを得た。
【0037】
実施例6
ポリ乳酸系ポリマー(A)として、融点が165℃で、L−乳酸/D−乳酸=99/1(モル%)であるポリ乳酸を用いた。また、ポリ乳酸系ポリマー(C)として、融点が130℃でL−乳酸/D−乳酸=92/8(モル%)であるポリ乳酸85質量部と、生分解性ポリエステル(D)として、融点が97℃の脂肪族ポリエステルカーボネート(三菱ガス化学社製:IUPEC 550)15質量部とを用い、これに、平均粒径が1.4μmの不定形シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア310P)0.1質量%を含有させた生分解性樹脂(B)を用いた。
そして、A層の両面にB層が形成されるように、それぞれのポリマーを溶融してTダイ温度220℃で共押出し、表面温度が40℃に温度制御されたキャストロールに密着急冷させて、厚み300μmの未延伸シートを作製した。ポリマーの押出し量は、後述の延伸倍率を考慮して、フィルム厚みが最終的にB層/A層/B層=5/15/5(μm)となるように調整した。
得られた未延伸シートを逐次2軸延伸機に供給して、予熱ロール60℃、延伸ロール75℃の条件下で縦方向に3.0倍に延伸し、引き続いて延伸温度80℃のテンター内で横方向に4.0倍に延伸した後、横方向の弛緩率を4%として125℃で熱処理を施し、一方の面にコロナ処理を施して、厚み25μmの二軸延伸積層フィルムを得た。
【0038】
比較例4
表1に記載の組成とキャストロール温度と厚み組成に変更した以外は実施例6と同様にして、積層フィルムを得た。
【0039】
【表1】
Figure 0004167107
【0040】
実施例1〜6では、高ヘイズ、低光沢度で、マット調を有するポリ乳酸系二軸延伸積層フィルムが得られた。
一方、比較例1では、生分解性樹脂(B)中における生分解性ポリエステル(D)の含有量が範囲より少ないためヘイズが低く、光沢度の高いフィルムとなり、比較例2では、生分解性樹脂(B)中における生分解性ポリエステル(D)の含有量が範囲より多いため、溶融ムラにより製膜、延伸が困難となった。
比較例3では、B層が直接キャストロールで急冷されたため、結晶核の生成が少なくなり、ヘイズが低く、光沢度の高いフィルムとなった。
比較例4では、キャストロールの温度が低いために急冷され、ヘイズが低く、光沢度の高いフィルムとなった。
【0041】
【発明の効果】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸積層フィルムは、菓子袋等の食品包装材料、医薬品などの包装材料、磁気ディスク等の個包装あるいは集積包装に適したオーバーラッピング用途の包装材料、その他にも紙とのラミネートフィルム等として好適に使用できる。

Claims (1)

  1. ポリ乳酸系ポリマー(A)からなるA層と、生分解性樹脂(B)からなるB層を含有する積層フィルムであって、積層フィルムの外層のうち少なくとも一方がB層であり、前記生分解性樹脂(B)がポリ乳酸系ポリマー(C)60〜90質量%と生分解性ポリエステル(D)10〜40質量%とから構成され、前記生分解性ポリエステル(D)が脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族共重合ポリエステル、及びポリエステルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上のポリマーからなり、積層フィルムのヘイズが50%以上、かつ光沢度が10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系二軸延伸積層フィルム。
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