JP2007076139A - 密封袋用生分解性フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】シール性と手切れ性に優れた生分解性樹脂密封袋用フィルムの提供
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなる手切れ付与層と、融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなるシール層を含むフィルムであって、溶融インフレーション法により製膜され、フィルムの縦方向・横方向いずれか一方向の引張破断伸びが100%より小さく、少なくとも一方向に手切れ開封されることを特徴とする密封袋用フィルム。
【選択図】選択図なし
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなる手切れ付与層と、融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなるシール層を含むフィルムであって、溶融インフレーション法により製膜され、フィルムの縦方向・横方向いずれか一方向の引張破断伸びが100%より小さく、少なくとも一方向に手切れ開封されることを特徴とする密封袋用フィルム。
【選択図】選択図なし
Description
本発明は、シール性に優れた生分解性フィルムに関し、特に少なくとも一方向に手切れ開封される密封袋用に好適なフィルムに関する。
環境問題への関心が近年高まる中で、環境への負荷を低減して、自然環境を保護するために、廃棄後に自然環境下で分解する生分解性プラスチックが求められるようになっている。
この内、手切れ性に優れたフィルムは今までにいくつか開示されている。例えば、特許文献1には易引裂性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムとしてポリ乳酸系樹脂(A)と融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)のブレンド組成物(C)からなるフィルムが開示されている。特許文献2には特定の引張強伸度を持つ、ポリ乳酸系重合体を主成分とする少なくとも2層以上からなる積層フィルムが開示されている。特許文献3には60〜95重量%のポリ乳酸系重合体と5〜40重量%の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含む二軸延伸フィルムが開示されている。これら特許文献1〜3についてはシール層が明記されておらず、シール性に優れたものとはいえない。特許文献4にはシール層を持つ透明なポリ乳酸系フィルムが開示されており、シール層としてその実施例にはポリエチレンのみが例示されているが、詳細な説明にはポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、澱粉由来の変性重合樹脂、シェラック樹脂等の生分解性樹脂も例示されており、これらシール層を配置する方法としてラミネーション法・コーティング法が例示されている。しかし、ここにはどのような生分解性樹脂がヒートシール層として優れたものであるかの記載が無く、シール層を配置する方法のラミネーション法やコーティング法は工程が煩雑でコストアップの原因にもなる。
この内、手切れ性に優れたフィルムは今までにいくつか開示されている。例えば、特許文献1には易引裂性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムとしてポリ乳酸系樹脂(A)と融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)のブレンド組成物(C)からなるフィルムが開示されている。特許文献2には特定の引張強伸度を持つ、ポリ乳酸系重合体を主成分とする少なくとも2層以上からなる積層フィルムが開示されている。特許文献3には60〜95重量%のポリ乳酸系重合体と5〜40重量%の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含む二軸延伸フィルムが開示されている。これら特許文献1〜3についてはシール層が明記されておらず、シール性に優れたものとはいえない。特許文献4にはシール層を持つ透明なポリ乳酸系フィルムが開示されており、シール層としてその実施例にはポリエチレンのみが例示されているが、詳細な説明にはポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、澱粉由来の変性重合樹脂、シェラック樹脂等の生分解性樹脂も例示されており、これらシール層を配置する方法としてラミネーション法・コーティング法が例示されている。しかし、ここにはどのような生分解性樹脂がヒートシール層として優れたものであるかの記載が無く、シール層を配置する方法のラミネーション法やコーティング法は工程が煩雑でコストアップの原因にもなる。
一方、ヒートシール性を兼ね備えた、積層生分解性フィルムとして、特許文献5には基材層としてポリ乳酸系重合体からなる二軸延伸フィルムであり、ヒートシール層が脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有し、さらに、場合によってはポリ乳酸系重合体も含有するフィルムを開示している。しかし手切れ性については何ら記載が無い。さらにヒートシール性を兼ね備えた、積層生分解性フィルムとして、特許文献6には基材層としてポリ乳酸系樹脂とガラス転移点が10℃以下であるポリ乳酸系以外の生分解性ポリエステルの混合物からなり、シール層が熱可塑性生分解性樹脂からなり、引裂強度が6mN/μm以上で衝撃強度が3mJ/μm以上である溶融インフレーション法により得られたフィルムを開示している。このものはノッチ無しのフィルムの手切れによる耐引裂性が良好(手切れ性が悪い)としている。
フィルムの生産性、密封袋作成時のシール性、袋にしたときの手切れ性の全てに優れた生分解性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
(1)ポリ乳酸系樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなる手切れ付与層と、融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなるシール層を含むフィルムであって、溶融インフレーション法により製膜され、フィルムの縦方向・横方向いずれか一方向の引張破断伸びが100%より小さく、少なくとも一方向に手切れ開封されることを特徴とする密封袋用フィルム。
(2)手切れ付与層に生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂が混合されていることを特徴とする(1)記載の密封袋用フィルム。
(3)シール層にポリ乳酸系樹脂が混合されていることを特徴とする(1)〜(2)記載の密封袋用フィルム。
(4)100℃における熱収縮率が、フィルムの縦方向・横方向ともに10%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
(5)無機フィラーを0.1〜50重量%含有する層を少なくとも1層含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
(6)シール層厚みが15μmより薄いことを特徴とする(1)〜(5)記載の密封袋用フィルム。
(7)無機化合物からなる蒸着層を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の密封袋用フィルムをヒートシールすることにより得られる密封袋。
(9)密封袋の端部に傷痕および/またはノコギリ刃状が形成されていること特徴とする(8)記載の密封袋。
(1)ポリ乳酸系樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなる手切れ付与層と、融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなるシール層を含むフィルムであって、溶融インフレーション法により製膜され、フィルムの縦方向・横方向いずれか一方向の引張破断伸びが100%より小さく、少なくとも一方向に手切れ開封されることを特徴とする密封袋用フィルム。
(2)手切れ付与層に生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂が混合されていることを特徴とする(1)記載の密封袋用フィルム。
(3)シール層にポリ乳酸系樹脂が混合されていることを特徴とする(1)〜(2)記載の密封袋用フィルム。
(4)100℃における熱収縮率が、フィルムの縦方向・横方向ともに10%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
(5)無機フィラーを0.1〜50重量%含有する層を少なくとも1層含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
(6)シール層厚みが15μmより薄いことを特徴とする(1)〜(5)記載の密封袋用フィルム。
(7)無機化合物からなる蒸着層を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の密封袋用フィルムをヒートシールすることにより得られる密封袋。
(9)密封袋の端部に傷痕および/またはノコギリ刃状が形成されていること特徴とする(8)記載の密封袋。
フィルムの生産性、密封袋作成時のシール性、袋にしたときの手切れ性の全てに優れた生分解性フィルムを提供することができる。
本発明のフィルムを得るためには、手切れ付与層を設けることが必要である。
手切れ付与層は、本発明のフィルムに手切れ性を付与する層であり、シール層の反対表層に位置する場合は、ヒートシール時の溶融切れを防ぐシール耐熱層の役目も持つ。本発明でいう手切れ性とは、ノッチの無いフィルムであっても手によるせん断を与えたとき引き裂き開始部が大きな伸びを生じることなく、一回目のトライでノッチを入れることができ、その後フィルムの対端まで引き裂くことができるフィルムの特性をいう。手切れ付与層を主に構成する樹脂はポリ乳酸系樹脂(A)である。ポリ乳酸系樹脂(A)としてはポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を50重量%以上含有する共重合体であって、ポリ乳酸単独重合体および乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類からなる群より選ばれる化合物との共重合体である。乳酸単量体単位の含有量が50重量%未満の場合、フィルムの耐熱性および透明性が低下する傾向にある。好ましくはポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を80重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物であり、さらに好ましくは、ポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を90重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物である。
手切れ付与層は、本発明のフィルムに手切れ性を付与する層であり、シール層の反対表層に位置する場合は、ヒートシール時の溶融切れを防ぐシール耐熱層の役目も持つ。本発明でいう手切れ性とは、ノッチの無いフィルムであっても手によるせん断を与えたとき引き裂き開始部が大きな伸びを生じることなく、一回目のトライでノッチを入れることができ、その後フィルムの対端まで引き裂くことができるフィルムの特性をいう。手切れ付与層を主に構成する樹脂はポリ乳酸系樹脂(A)である。ポリ乳酸系樹脂(A)としてはポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を50重量%以上含有する共重合体であって、ポリ乳酸単独重合体および乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類からなる群より選ばれる化合物との共重合体である。乳酸単量体単位の含有量が50重量%未満の場合、フィルムの耐熱性および透明性が低下する傾向にある。好ましくはポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を80重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物であり、さらに好ましくは、ポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を90重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物である。
乳酸には光学異性体として、L−乳酸とD−乳酸が存在し、それらが重合してできるポリ乳酸には、D−乳酸単位が約10重量%以下でL−乳酸単位が約90重量%以上、又はL−乳酸単位が約10重量%以下でD−乳酸単位が約90重量%以上であるポリ乳酸で、光学純度が約80%以上の結晶性ポリ乳酸と、D−乳酸単位が10重量%〜90重量%でL−乳酸単位が90重量%〜10重量%であるポリ乳酸で、光学純度が約80%以下の非晶性ポリ乳酸とがあることが知られている。本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(A)は特に好ましくは、光学純度が85%以上の結晶性ポリ乳酸単独、又は光学純度が85%以上の結晶性ポリ乳酸と光学純度が80%以下の非晶性ポリ乳酸とからなる混合物であり、シール耐熱性の観点より該ポリ乳酸系樹脂の融点は、シール層の主成分である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の融点よりも高いことが好ましい。この時の融点差は10℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは30℃以上であり、最も好ましくは40℃以上である。
乳酸との共重合成分として用いられる単量体として、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。また、脂肪族環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンおよびこれらにメチル基などの種々の基が置換したラクトン類が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等、多価アルコールとしては、ビスフェノール/エチレンオキサイド付加反応物などの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂(A)の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知の方法を採用できる。また、ポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化物などの結合剤を使用して分子量を増大する方法を用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000以上ではフィルムの機械的物性が優れる傾向にあり、1000000以下であると溶融粘度が通常の加工機械で物性の安定したフィルムが得られやすい範囲となる。
本発明のフィルムを得るためには、ヒートシール等のシールをして製袋した際のシール強度を十分に付与するシール層を設けることが必要である。
ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000以上ではフィルムの機械的物性が優れる傾向にあり、1000000以下であると溶融粘度が通常の加工機械で物性の安定したフィルムが得られやすい範囲となる。
本発明のフィルムを得るためには、ヒートシール等のシールをして製袋した際のシール強度を十分に付与するシール層を設けることが必要である。
本発明のシール層を主に構成する樹脂は、融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)である。本発明における生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)とは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)などの脂肪族ポリエステル、およびこれらの生分解性ポリエステルの一部が生分解性を失わない範囲で芳香族化合物に置換された構造を持つ脂肪族芳香族ポリエステルから選ばれた少なくとも1種であり、示差走査熱量測定(JIS−K−7121)での融解ピークTmが140℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、最も好ましくは100℃以下の生分解性ポリエステル1種または2種以上からなるポリマー組成物である。生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)のTmが140℃を超えるとヒートシール温度を高くする必要があり、製袋生産性が低下する場合がある。
脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸(生分解性を妨げない範囲で、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸を含んでも良い)と、エチレングリコール、1,3−プロピオングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールの中からそれぞれ1種以上選んだ重縮合が例として挙げられる。環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状モノマーの中から1種以上選んだ開環重合体が例として挙げられる。合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状酸無水物とオキシラン類の共重合体が例として挙げられる。
また、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)としては、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシ吉草酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシヘキサン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシプロピオン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−4−ヒドロキシ酪酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシオクタン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシデカン酸)共重合体等が例として挙げられる。また、脂肪族芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレンコハク酸テレフタル酸共重合体、ポリエチレンコハク酸テレフタル酸共重合体、ポリブチレンアジピン酸テレフタル酸共重合体、ポリエチレンアジピン酸テレフタル酸共重合体、ポリエチレングルタル酸テレフタル酸共重合体、ポリブチレングルタル酸テレフタル酸共重合体、ポリブチレンコハク酸アジピン酸テレフタル酸共重合体などが例として挙げられる。これらの一例としてBASF社のエコフレックス(商品名)として上市されている。
本発明で用いられる生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)として特に好ましく用いられるものは、上記の内で比較的透明性の良いとされる炭素数2個から10個の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2個から10個の脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルであり、その具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレングルタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられる。これらは例えば昭和高分子(株)社製のビオノーレ(商品名)、日本触媒(株)社製のルナーレ(商品名)として上市されている。
生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の重合方法としては、直接法、間接法などの公知の方法を採用できる。直接法では、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分として上記ジカルボン酸化合物その酸無水物又は誘導体を選択し、脂肪族ジオール成分として上記ジオール化合物又はその誘導体を選択して重縮合を行う方法で、重縮合に際して発生する水分を除去しながら高分子量物を得ることができる。間接法では、直接法により重縮合されたオリゴマーに少量の鎖延長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を添加して高分子量化して得ることができる。生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量は、2万〜500万の範囲が好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量5万〜50万の範囲である。分子量が2万以上では得られたフィルムにおいて機械的強度、衝撃強度等の実用物性が優れる傾向にあり、分子量が500万以下では成形加工性に優れる傾向にある。
本発明の生分解性多層フィルムにおいて、袋として十分な実用性を発現するために十分なシール強度を得るためにはシール層における融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量は好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%である。一方、シール方法や袋の取り扱いによってはシール層の結晶化速度を速めホットタック強度を向上させるため、あるいは手切れ付与層との層間接着性を向上させるためにポリ乳酸系樹脂(A)をシール強度を大きく阻害しない範囲で積極的に使用することもある。シール層に用いるポリ乳酸系樹脂の結晶化度は小さい方がシール強度は阻害しにくい傾向にある。その場合のシール層内のポリ乳酸系樹脂(A)の含有量は1〜45重量%であり、より好ましくは3〜40重量%であり、更に好ましくは5〜30重量%であり、最も好ましくは10〜20重量%である。
一方、手切れ付与層のポリ乳酸系樹脂(A)の手切れ付与層における含有量はヒートシール時にシール部が過溶融してシール部厚みが薄くなりシール強度が弱くなる等のヒートシール耐熱性の問題を解決し、手切れ袋として十分な実用性を発現するための手切れ性付与のために好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%である。一方、シール方法や袋の取り扱いによっては手切れ付与層の結晶化速度を速めホットタック強度を向上させるため、あるいはシール層との層間接着性を向上させるために生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)をヒートシール耐熱性や手切れ性を大きく阻害しない範囲で積極的に使用することもある。その場合の手切れ付与層内の生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量は1〜45重量%であり、より好ましくは3〜40重量%であり、更に好ましくは5〜30重量%であり、最も好ましくは10〜20重量%である。
本発明のフィルムは溶融インフレーション成形により得られる。本発明でいう溶融インフレーション成形とは、例えば、株式会社プラスチックエージにより発行されている「押出成形(第7版改定)」ページ217−218に記載されている溶融押し出しの後にバブルを形成して薄肉フィルムを得るインフレーション成形の内、溶融押し出しの後のバブルを形成する直前に積極的に冷却固化をせずに主として空冷をしながら空気によりバブルを膨らますことによりフィルムを得る成形方法をいう。すなわち、本発明でいう溶融インフレーション成形は、溶融押し出しの後のバブルを形成する直前に水冷等により一度積極的に樹脂を冷却固化した上で、再加熱して延伸することにより高度の配向をなす、いわゆるチューブラー成形あるいはダブルバブル成形法は含まない。本発明においては両者を除外し、溶融インフレーション成形とは区別する。溶融インフレーション成形により、本発明の好適な手切れ性が付与される。一方、チューブラー成形やテンター成形等により積極的に高度な配向をフィルムに付与した場合には、フィルムが強靭となることにより手切れ性が十分でなくなることがある。
溶融インフレーションにおいては、MD(machine direction:製膜ラインの流れ方向)速度比およびブローアップ比をコントロールし、フィルムの配向度を調節する事が好ましい。MD速度比、ブローアップ比は、MD速度比=(バブル形成し冷却後のフィルムをピンチロールで巻き取る速度)÷(押出量とダイリップ開口部面積から計算で求めたダイ出口で溶融樹脂の流れ出るMDの速度)、ブローアップ比=(最終的に得られたチューブ状フィルムを切り開きフラット状にした時のフィルムの全幅)÷(外側ダイリップ周長と内側ダイリップ周長との平均値)から求めた。MD速度比については10以上が好ましく、更に好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上であり、最も好ましくは40以上である。同様にブローアップ比については1.2以上が好ましく、更に好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、最も好ましくは2.5以上である。すなわち溶融インフレーション成形の範囲において配向を積極的に付与した場合、上記チューブラー法やテンター法のような配向度のレベルには及ばないが、その適度の配向度が特定構成のフィルムの手切れ性に良好な結果を与えることが見出された。
手切れ性の観点より、このように溶融インフレーションにおいて配向度を調整して得られたフィルムの縦方向・横方向いずれか一方向の引張破断伸び(ASTM D−882に準拠し、チャック間距離を100mm、引張速度は200mm/minとする。)は100%より小さいことが必要である。引張破断伸びが100%以上の場合、その方向に対して垂直方向への手切性が困難になる場合がある。好ましい引張破断伸びは80%より小さく、より好ましくは50%より小さく、更に好ましくは30%より小さく、最も好ましくは10%より小さいものである。引張破断伸びは、各層内のポリ乳酸系樹脂の含有率が支配的であり、ポリ乳酸系樹脂の含有率が大きくなると、フィルムの引張破断伸びは小さくなる傾向にある。積層の場合、最も破断伸びの小さい層の物性が支配的であるため、手切れ付与層のポリ乳酸系樹脂の含有率が結果として支配的となる。手切れ付与層のポリ乳酸系樹脂の含有率が大きくなると、フィルム全体の破断伸びが小さくなる傾向にある。
また、ヒートシール性の観点より、得られたフィルムの熱収縮率は100℃において縦方向・横方向ともに熱収縮率が10%以下であることが好ましい。熱収縮率が10%より大きい場合にはシール方式によってはシール時にシール線およびその近傍が収縮してしまい、十分なシール性が得られなくなったり、袋が変形してしまうことが起きてしまうことがある。
また、ヒートシール性の観点より、得られたフィルムの熱収縮率は100℃において縦方向・横方向ともに熱収縮率が10%以下であることが好ましい。熱収縮率が10%より大きい場合にはシール方式によってはシール時にシール線およびその近傍が収縮してしまい、十分なシール性が得られなくなったり、袋が変形してしまうことが起きてしまうことがある。
熱収縮率を10%以下にするために、溶融インフレーションした後に、(ポリ乳酸系樹脂のガラス転移点+10℃)〜(ポリ乳酸系樹脂の融点)の間の温度で熱処理する工程を設けることが好ましい。その方法としては、製膜後に内部に気体を密封して圧力を保持してフィルムを緊張状態にして外部より熱風等で加熱、熱処理する方法、または一旦フラットフィルムに切り出した後にクリップで両端を把持した状態で熱処理ゾーンを通過させる方法、または熱ロールに接触させて熱処理する方法がある。好ましい熱処理条件としては、ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度以上で融点以下の温度範囲、特に好ましくは65℃以上、融点以下の温度範囲とフィルム温度がなるように熱処理する方法である。熱処理時間は媒体により熱効率が異なるが、温風の場合1秒以上が好ましく、更に好ましくは2秒以上である。熱収縮率を更に下げる目的で、TD(transvers direction:MDに対して垂直方向)、及び/又はMDに張力を緩和させて熱処理することも有効である。
手切れ性を更に向上させるため、各層に無機フィラーを好ましく添加することができる。無機フィラーとしてはタルク、炭酸カルシウム、二酸化珪素、二酸化チタン、雲母、クレー、カーボンブラックなどが使用され、これによりフィルムの弾性率やバリア性向上も合わせて達成できる。このもののフィルムを構成する層に対する添加量としては0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは1.5〜30重量%、最も好ましくは2〜20重量%である。無機フィラー添加量を増やすと引張破断伸びは小さくなる傾向にあり、手切れ性は良くなる傾向にある。
ポリ乳酸系樹脂や生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂と無機フィラーの分散性を更に向上させるために、ポリ乳酸系樹脂や生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂と無機フィラーの双方と親和性があり、沸点が250℃以上、かつ数平均分子量が200〜50000であるポリアルキレンオキシド、脂肪族ポリエステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を相溶化剤として添加することができる。
ポリ乳酸系樹脂や生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂と無機フィラーの分散性を更に向上させるために、ポリ乳酸系樹脂や生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂と無機フィラーの双方と親和性があり、沸点が250℃以上、かつ数平均分子量が200〜50000であるポリアルキレンオキシド、脂肪族ポリエステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を相溶化剤として添加することができる。
本発明の目的を逸脱しない範囲でフィルムを構成する各層に光学特性や触感や透湿性などのバリア性の調節のために熱可塑性の澱粉系ポリマー(例えばノバモント社製のマタービー(商品名))、及びその化学構造を一部変性したタイプの樹脂(例えば日本コーンスターチ(株)社製のコーンポール(商品名))を使用することができる。また、耐熱性や耐衝撃性などの改質剤として少量の非生分解性樹脂を使用することができ、例えばポリ乳酸系樹脂の改質剤として、ポリメチルメタクリレートを使用することができる。このポリ乳酸系樹脂とポリメチルメタクリレートのブレンド品は例えばトヨタ自動車(株)製のTOYOTA Hybrit−PLAを挙げることができる。
本発明のフィルムには、上記の樹脂の他に、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤、防曇剤、帯電防止剤、防錆剤などの公知の添加剤を、本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合することが可能である。特にフィルムに柔軟性が必要となる用途の場合には、必要に応じて可塑剤などを添加してフィルムに柔軟性を付与することが好ましい。可塑剤としては、当業界で一般に用いられているものから選択使用でき、樹脂組成物に10重量%程度添加してもブリードアウトしないものが好ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪酸多価アルコールエステル、オキシ酸エステル、エポキシ系可塑剤等が含まれる。具体例としては、トリアセチン(TA)、トリブチリン(TB)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、ジオクチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコールジアセテート、グリセリンエステル類、オレイン酸ブチル(BO)、アジピン酸エーテル・エステル、エポキシ化大豆油(ESO)、等が挙げられる。尚、本発明のフィルムに使用する原料樹脂としては、上記したバージン原料以外に該樹脂製膜時に発生するトリム屑等を再度加工してペレット化、又は微粉化したリサイクル原料を単独で、又は該バージン原料に混入して使用することができる。
このようにして得られたフィルムは本発明の目的を逸脱しない範囲で必要に応じさらに別の層を積層することもでき、例えば、バリア性を向上させるためにバリア層を共押出しもしくはラミネート処理により設けることができる。生分解性樹脂の中でバリア性を特異的に向上させることができるポリ乳酸系樹脂とポリエチレンサクシネート系樹脂のブレンド組成物からなる層が本発明に好適に使用できる。この層においても手切れ性やシール耐熱性の観点よりポリ乳酸系樹脂の比率がポリエチレンサクシネート系樹脂の比率よりも多い方が好ましく、その場合はこの層も手切れ付与層と見なすこともできる。
さらに手切れ性を悪化させることなくバリア性を高める方法として無機化合物からなる蒸着層を好ましく設けることができる。蒸着物の密着性を高めるために公知のアンカーコート剤を基材フィルムの表面にコートしても良い。この場合、フィルムの表面に均一に塗布するためには、塗布面となる基材フィルム表面をコロナ放電処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、により親水化処理することが好ましい。この親水化処理によって、アンカーコート剤膜の、アンカーコートしない場合は蒸着膜の密着性が向上する。その際の表面張力としては、400μN/cm〜600μN/cmの範囲が好ましい。さらに他の表面処理として薬品処理、溶剤処理、火炎処理、粗面化処理等がなされうる。
さらに手切れ性を悪化させることなくバリア性を高める方法として無機化合物からなる蒸着層を好ましく設けることができる。蒸着物の密着性を高めるために公知のアンカーコート剤を基材フィルムの表面にコートしても良い。この場合、フィルムの表面に均一に塗布するためには、塗布面となる基材フィルム表面をコロナ放電処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、により親水化処理することが好ましい。この親水化処理によって、アンカーコート剤膜の、アンカーコートしない場合は蒸着膜の密着性が向上する。その際の表面張力としては、400μN/cm〜600μN/cmの範囲が好ましい。さらに他の表面処理として薬品処理、溶剤処理、火炎処理、粗面化処理等がなされうる。
アンカーコート処理する場合のアンカーコートの厚みは好ましくは0.01〜5μm、更に好ましくは0.1〜2μmである。アンカーコート剤は公知のものが使用されるが基材の生分解後の環境問題に配慮して、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂から選ばれた1種以上で有ることが好ましい。
上記コート用樹脂の溶剤は公知のものが使用されるが、本発明のフィルムとの密着性からメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルより選ばれた1種以上を使用するのが好ましい。また基材が有機溶剤に侵されやすい場合には水系アンカーコート剤、例えばスチレン−マレイン酸系水溶液(大日本インキ化学工業(株)社製MET−W−164N)などが用いられる。
上記コート用樹脂の溶剤は公知のものが使用されるが、本発明のフィルムとの密着性からメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルより選ばれた1種以上を使用するのが好ましい。また基材が有機溶剤に侵されやすい場合には水系アンカーコート剤、例えばスチレン−マレイン酸系水溶液(大日本インキ化学工業(株)社製MET−W−164N)などが用いられる。
蒸着フィルムとする場合、蒸着層の形成には真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法の物理蒸着法あるいはプラズマ気相成長法(CVD)等の化学蒸着法等が適宜用いられる。このとき採用される加熱法としては、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等が挙げられる。反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いる反応性蒸着法を採用しても良い。またフィルムにバイアスを印加したり、蒸着法に応じて蒸着時のフィルムを加熱及び冷却などの蒸着条件を変更することも可能である。
蒸着無機物としてはアルミニウム、銀、インジウム、銅、クロム、ニッケル、チタン、酸化アルミニウム、硫化亜鉛、酸化ケイ素、およびそれらの合金等が挙げられる。好ましくは金属蒸着としてのアルミニウムや透明蒸着としてしられる無機酸化物、すなわち、Al,AlO,Al2O3等から構成される酸化アルミニウム、Si,SiO,SiO2等か構成される珪素酸化物およびそれらの混合物が好ましく使用される。
蒸着無機物としてはアルミニウム、銀、インジウム、銅、クロム、ニッケル、チタン、酸化アルミニウム、硫化亜鉛、酸化ケイ素、およびそれらの合金等が挙げられる。好ましくは金属蒸着としてのアルミニウムや透明蒸着としてしられる無機酸化物、すなわち、Al,AlO,Al2O3等から構成される酸化アルミニウム、Si,SiO,SiO2等か構成される珪素酸化物およびそれらの混合物が好ましく使用される。
蒸着層の厚みは10〜5000Åより選択することができるが、膜厚が薄すぎる場合には十分なバリア性が得られにくく、必要以上に厚い場合は耐屈曲性・耐酷使性が低下しやすく、また製造コストが上がり、かつ遮断性の向上効果が飽和するため実用的でない。このうちより好ましい蒸着層の厚みは30〜700Åであり、より好ましくは50〜650Åであり、さらに好ましくは100〜600Åであり、最も好ましくは200〜550Åである。
また、フィルムは必要に応じ、印刷処理等がなされ、またドライラミネート、押出ラミネート等により印刷フィルム、シーラントフィルム等がラミネートされる。
また、フィルムは必要に応じ、印刷処理等がなされ、またドライラミネート、押出ラミネート等により印刷フィルム、シーラントフィルム等がラミネートされる。
次に、本発明のフィルムの製造方法について述べる。
本発明のフィルムの製膜方法としては、先に述べたように溶融インフレーション法により製膜される。詳しくは、シール層および手切れ付与層を別の押出機にて溶融混練し積層サーキュラーダイにより通常100〜250℃の温度範囲で共押出されたチューブ状の樹脂を溶融状態からインフレーション法により溶融ドローして製膜し、その後にフィルム熱収縮性の抑制の為にフィルムを把持した状態で通常70〜160℃の温度範囲で熱処理を行ってフィルムを得る方法等によって得られる。なお、押出温度は好ましくは130〜200℃、更に好ましくは140〜180℃であり、押出温度を低くすることによって適度な配向を付与し手切れ性を向上することができる。
本発明のフィルムの製膜方法としては、先に述べたように溶融インフレーション法により製膜される。詳しくは、シール層および手切れ付与層を別の押出機にて溶融混練し積層サーキュラーダイにより通常100〜250℃の温度範囲で共押出されたチューブ状の樹脂を溶融状態からインフレーション法により溶融ドローして製膜し、その後にフィルム熱収縮性の抑制の為にフィルムを把持した状態で通常70〜160℃の温度範囲で熱処理を行ってフィルムを得る方法等によって得られる。なお、押出温度は好ましくは130〜200℃、更に好ましくは140〜180℃であり、押出温度を低くすることによって適度な配向を付与し手切れ性を向上することができる。
本発明のフィルムの製膜後の最終的な厚みは、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは10〜100μmであり、特に好ましくは20〜50μmである。フィルム厚みが5μm以上だと、フィルムの強度・腰が好ましいものとなり、フィルム厚みが200μm以下だと、手切れ性や材料コストの点で経済的に有利になる傾向にある。
またシール層の厚みは手切れ性の観点より、シール性が保持できる範囲で薄い方が好ましく、15μmより薄いことが好ましい。更に好ましくは10μm以下であり、最も好ましくは5μm以下である。15μm以上ではシール性の向上効果が飽和する場合があり、また手切性を悪化させる場合もある。
またシール層の厚みは手切れ性の観点より、シール性が保持できる範囲で薄い方が好ましく、15μmより薄いことが好ましい。更に好ましくは10μm以下であり、最も好ましくは5μm以下である。15μm以上ではシール性の向上効果が飽和する場合があり、また手切性を悪化させる場合もある。
本発明のフィルムは、用途によっては埃付着防止や粉末状内容物の付着防止のための帯電防止剤、製袋機械適性向上のための滑り剤およびブロッキング防止剤などを樹脂への練り込みやコーティングされることが好ましい。この場合、ポリ乳酸系樹脂フィルムは、ポリオレフィン系樹脂フィルムに比べて親水性であるが、帯電防止剤、滑り剤およびブロッキング防止剤などを、本発明のフィルム表面に均一に塗布する場合、塗布面となるフィルム表面をコロナ処理によりさらに親水化処理することが好ましい。この親水化処理によって、塗膜の均一性が向上し、帯電防止性や滑り性が効率的に発揮される。その際の表面張力としては、400μN/cm〜600μN/cmの範囲が好ましい。
本発明のフィルムはヒートシール等の任意のシール法により手切性に優れた密封袋が得られる。製袋方法は任意の方法でなされ、例えば3方シール製袋機やセンターシール製袋機で製袋される。なお本発明における密封袋の意味はシールにより各辺が閉じられていることを意味し、必ずしも気密性を意味するわけではなく、フィルムの一部に微孔が設けれられていても良い。
得られた袋をさらに手切れ性を向上させるために製袋前あるいは製袋後に密封袋の端部に傷痕を付与および/またはノコギリ刃状が形成され得る。
本発明により得られた密封袋は薬包袋、コーヒーパウダースティックやスナック菓子用袋などの食品用袋あるいは食品用蒸着袋等に好ましく使用できる。
得られた袋をさらに手切れ性を向上させるために製袋前あるいは製袋後に密封袋の端部に傷痕を付与および/またはノコギリ刃状が形成され得る。
本発明により得られた密封袋は薬包袋、コーヒーパウダースティックやスナック菓子用袋などの食品用袋あるいは食品用蒸着袋等に好ましく使用できる。
以下、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例における測定方法および評価方法は次の通りである。
(1)融点およびガラス転移点
JIS−K−7121及びJIS−K−7122に準拠して、示差走査熱量計(DSC)で−40℃から200℃まで昇温して、Tg、Tmを測定した。すなわち、標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したサンプルから約10mgを切り出した後、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(DSC)、PYLIS Diamond DSC(商品名)を用いて、窒素ガス流量25ml/分、10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、描かれるDSC曲線の昇温時の融解(吸熱)ピーク頂点から融点Tm(℃)、昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をTg(単位℃)として測定した。
(1)融点およびガラス転移点
JIS−K−7121及びJIS−K−7122に準拠して、示差走査熱量計(DSC)で−40℃から200℃まで昇温して、Tg、Tmを測定した。すなわち、標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したサンプルから約10mgを切り出した後、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(DSC)、PYLIS Diamond DSC(商品名)を用いて、窒素ガス流量25ml/分、10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、描かれるDSC曲線の昇温時の融解(吸熱)ピーク頂点から融点Tm(℃)、昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をTg(単位℃)として測定した。
(2)引張破断伸び
ASTM D−882に準拠し、試験片幅10mm、チャック間距離を100mm、引張速度は200mm/minとし、縦・横方向の伸び率を%で表した。
(3)熱収縮率
融着防止のためにタルクをフィルム表面にまぶして、縦・横方向に10cmの距離で印をつけ、予め100℃に調整してある送風定温乾燥機(ADVANTEC社製FC−610)に試料を一角をクランプで掴み、金網よりぶら下げた状態で入れ30分後に試料を取り出す。自然冷却後、印の距離を測定して10cmからの減少値の10cmに対する割合を%で表した。
(4)フィルムの全層厚み、各層厚み(μm)
フィルムの全層厚みは、JIS K−7130に従い、マイクロメータを用いて測定、各層厚みは顕微鏡で多層フィルムの断面を観察して測定した。
ASTM D−882に準拠し、試験片幅10mm、チャック間距離を100mm、引張速度は200mm/minとし、縦・横方向の伸び率を%で表した。
(3)熱収縮率
融着防止のためにタルクをフィルム表面にまぶして、縦・横方向に10cmの距離で印をつけ、予め100℃に調整してある送風定温乾燥機(ADVANTEC社製FC−610)に試料を一角をクランプで掴み、金網よりぶら下げた状態で入れ30分後に試料を取り出す。自然冷却後、印の距離を測定して10cmからの減少値の10cmに対する割合を%で表した。
(4)フィルムの全層厚み、各層厚み(μm)
フィルムの全層厚みは、JIS K−7130に従い、マイクロメータを用いて測定、各層厚みは顕微鏡で多層フィルムの断面を観察して測定した。
(5)MD方向速度比、ブローアップ比
MD速度比、ブローアップ比は、以下の式で求めた。
MD速度比=(バブル形成し冷却後のフィルムをピンチロールで巻き取る速度)÷(押出量とダイリップ開口部面積から計算で求めたダイ出口で溶融樹脂の流れ出るMDの速度)
ブローアップ比=(最終的に得られたチューブ状フィルムを切り開きフラット状にした時のフィルムの全幅)÷(外側ダイリップ周長と内側ダイリップ周長との平均値)
(6)ヒートシール性
ヒートシール強度はJIS Z−1707に従い、シール層同士をシール圧力を0.5MPa、シール時間を0.2秒として、80℃からフィルムが溶断するまでの温度範囲で10℃ごとにシール強度を測定し、その最大値をそのフィルムのシール強度とした。シールバーは1/2インチ(約12.7ミリ)幅の物を用いた。また、シール強度は縦方向と横方向の両方の値を測定した。
◎:優 :シール強度が20N/15mm以上のフィルム
○:良 :シール強度が10N/15mm以上のフィルム
×:不可:シール強度が10N/15mm未満のフィルム
MD速度比、ブローアップ比は、以下の式で求めた。
MD速度比=(バブル形成し冷却後のフィルムをピンチロールで巻き取る速度)÷(押出量とダイリップ開口部面積から計算で求めたダイ出口で溶融樹脂の流れ出るMDの速度)
ブローアップ比=(最終的に得られたチューブ状フィルムを切り開きフラット状にした時のフィルムの全幅)÷(外側ダイリップ周長と内側ダイリップ周長との平均値)
(6)ヒートシール性
ヒートシール強度はJIS Z−1707に従い、シール層同士をシール圧力を0.5MPa、シール時間を0.2秒として、80℃からフィルムが溶断するまでの温度範囲で10℃ごとにシール強度を測定し、その最大値をそのフィルムのシール強度とした。シールバーは1/2インチ(約12.7ミリ)幅の物を用いた。また、シール強度は縦方向と横方向の両方の値を測定した。
◎:優 :シール強度が20N/15mm以上のフィルム
○:良 :シール強度が10N/15mm以上のフィルム
×:不可:シール強度が10N/15mm未満のフィルム
(7)手切れ性
成人男性10人のモニターにより、両手でノッチを入れていない5cm角のフィルムの横方向に切り裂くことを20回ずつ行った。結果を以下の基準で評価した。○以上が合格レベルである。なお、「容易に引き裂く」とは手によるせん断を与えたとき引き裂き開始部が大きな伸びを生じることなく、一回目のトライでノッチを入れることができ、その後フィルムの対端まで引き裂くことができる状態をいう。
◎:全てのモニターが14回以上容易に引裂くことができる。
○:14回以上容易に引裂くことができるモニターは9人以下、且つ残りのモニターは10回以上容易に引裂くことができる。
△:5人以上のモニターは10回以上容易に引裂くことができるが、9回以下しか容易に引裂くことができないモニターが1人以上いる。
×:10回以上容易に引裂くことができたモニターが4人以下である。
使用した樹脂あるいは原材料を表1に示す。
成人男性10人のモニターにより、両手でノッチを入れていない5cm角のフィルムの横方向に切り裂くことを20回ずつ行った。結果を以下の基準で評価した。○以上が合格レベルである。なお、「容易に引き裂く」とは手によるせん断を与えたとき引き裂き開始部が大きな伸びを生じることなく、一回目のトライでノッチを入れることができ、その後フィルムの対端まで引き裂くことができる状態をいう。
◎:全てのモニターが14回以上容易に引裂くことができる。
○:14回以上容易に引裂くことができるモニターは9人以下、且つ残りのモニターは10回以上容易に引裂くことができる。
△:5人以上のモニターは10回以上容易に引裂くことができるが、9回以下しか容易に引裂くことができないモニターが1人以上いる。
×:10回以上容易に引裂くことができたモニターが4人以下である。
使用した樹脂あるいは原材料を表1に示す。
[実施例1]
表2の層構成になるように多層サーキュラーダイ(リップクリアランス1.6mm)を用いて溶融樹脂をチューブ状に押出し、冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内にエアーを注入して表2記載の条件でバブルを形成し得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルムとし、両方向を拘束した状態でフィルム温度90℃で2秒間熱処理を行った後、巻き取りロールで巻き取った。得られた物性を表2に示した。
表2の層構成になるように多層サーキュラーダイ(リップクリアランス1.6mm)を用いて溶融樹脂をチューブ状に押出し、冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内にエアーを注入して表2記載の条件でバブルを形成し得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルムとし、両方向を拘束した状態でフィルム温度90℃で2秒間熱処理を行った後、巻き取りロールで巻き取った。得られた物性を表2に示した。
[実施例2]
表2の各層を構成する組成物を一度、同方向二軸押出機を用いて溶融ブレンドし、ペレタイズして各組成物毎のペレットを得た後は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られた物性を表2に示した。
表2の各層を構成する組成物を一度、同方向二軸押出機を用いて溶融ブレンドし、ペレタイズして各組成物毎のペレットを得た後は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られた物性を表2に示した。
[実施例3]
表2の各層を構成する組成物を一度、同方向二軸押出機を用いて溶融ブレンドし、ペレタイズして各組成物毎のペレットを得た後は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られた物性を表2に示した。
表2の各層を構成する組成物を一度、同方向二軸押出機を用いて溶融ブレンドし、ペレタイズして各組成物毎のペレットを得た後は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られた物性を表2に示した。
[実施例4]
実施例2で得られたフィルムのバリア層側表面に、片面プラズマ処理(グロー放電ガス:酸素、DC放電電力60W・分/m2、グロー放電圧力:2.0*10−2mbar)を行い、プラズマ化学気相成長装置により厚み300Åの酸化ケイ素蒸着を行った。得られたフィルムのヒートシール性、手切性は実施例2と同等であった。
実施例2で得られたフィルムのバリア層側表面に、片面プラズマ処理(グロー放電ガス:酸素、DC放電電力60W・分/m2、グロー放電圧力:2.0*10−2mbar)を行い、プラズマ化学気相成長装置により厚み300Åの酸化ケイ素蒸着を行った。得られたフィルムのヒートシール性、手切性は実施例2と同等であった。
[比較例1]
表2の層構成になるように多層Tダイ(リップクリアランス0.8mm)を用いて溶融樹脂を押出し、25℃のキャストロールに密着させて、未延伸シートを得、次いで、70℃の延伸ロールで縦方向に3倍延伸し、次いで80℃のテンター内で横方向に3倍延伸し、両方向を拘束した状態でフィルム温度100℃で2秒間熱処理を行った後、巻き取りロールで巻き取った。得られた物性を表2に示した。
表2の層構成になるように多層Tダイ(リップクリアランス0.8mm)を用いて溶融樹脂を押出し、25℃のキャストロールに密着させて、未延伸シートを得、次いで、70℃の延伸ロールで縦方向に3倍延伸し、次いで80℃のテンター内で横方向に3倍延伸し、両方向を拘束した状態でフィルム温度100℃で2秒間熱処理を行った後、巻き取りロールで巻き取った。得られた物性を表2に示した。
[比較例2]
表2の層構成になるようにしてリップクリアランスを0.8mmにした以外は実施例1と同様にして得られたフィルムの物性を表2に示した。
表2の層構成になるようにしてリップクリアランスを0.8mmにした以外は実施例1と同様にして得られたフィルムの物性を表2に示した。
本発明のシール性と手切れ性に優れた生分解性樹脂フィルムは好ましく製袋され密封袋とすることができ、密封袋は薬包袋、コーヒーパウダースティックやスナック菓子用袋などの食品用袋あるいは食品用蒸着袋等に好ましく使用される。
Claims (9)
- ポリ乳酸系樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなる手切れ付与層と、融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする生分解性樹脂からなるシール層を含むフィルムであって、溶融インフレーション法により製膜され、フィルムの縦方向・横方向いずれか一方向の引張破断伸びが100%より小さく、少なくとも一方向に手切れ性を有することを特徴とする密封袋用フィルム。
- 手切れ付与層に融点が140℃以下である生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂が混合されていることを特徴とする請求項1記載の密封袋用フィルム。
- シール層にポリ乳酸系樹脂が混合されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
- 100℃における熱収縮率が、フィルムの縦方向・横方向ともに10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
- 無機フィラーを0.1〜50重量%含有する層を少なくとも1層含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
- シール層厚みが15μmより薄いことを特徴とする請求項1〜5記載の密封袋用フィルム。
- 無機化合物からなる蒸着層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の密封袋用フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の密封袋用フィルムをヒートシールすることにより得られる密封袋。
- 密封袋の端部に傷痕および/またはノコギリ刃状が形成されていること特徴とする請求項8記載の密封袋。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012076822A (ja) * | 2010-10-06 | 2012-04-19 | Kyodo Printing Co Ltd | カッター、収納箱及びカートンブランクと、カッター及び収納箱の製造方法 |
WO2017203378A1 (en) * | 2016-05-23 | 2017-11-30 | Creative Plastics | A biodegradable and compostable multilayer film |
-
2005
- 2005-09-14 JP JP2005266450A patent/JP2007076139A/ja active Pending
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WO2017203378A1 (en) * | 2016-05-23 | 2017-11-30 | Creative Plastics | A biodegradable and compostable multilayer film |
US11260625B2 (en) | 2016-05-23 | 2022-03-01 | Creative Plastics. | Biodegradable and compostable multilayer film |
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