JP4243926B2 - 生分解性熱収縮性フィルム及びそれを用いたシュリンク包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる生分解性を有する熱収縮性フィルムの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、熱収縮性、易カット性、耐衝撃性と透明性に優れた、生分解性を有する熱収縮性フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シュリンク包装体は、包装フィルムが被包装物に密着してかさばらないこと、種々の形状の異なる被包装物をシワ無く美麗に包装出来ること等の利点から、例えば弁当容器や惣菜容器の蓋付容器や精肉や生鮮野菜等の蓋なしトレー、カップラーメンなどの食品包装、および玩具、日用雑貨など、幅広い分野の包装体として利用されている。
【0003】
また、このシュリンク包装体に使用される包装フィルムとしてはポリオレフィン系樹脂フィルムが一般的である。そして、これらのシュリンク包装用フィルムおよびそれを用いたシュリンク包装体に関しては、特開平9−216956号公報などに開示されている。しかしながら従来用いられているこれらのポリオレフィン系樹脂フィルムは生分解性を有しないフィルムである。
合成高分子化合物はその優れた特性からプラスチックとして広範囲に使用されるようになったが、その使用量の増加と共に廃棄物量も増大しており、この廃棄プラスチックをどの様に処理するかが大きな社会問題になっている。焼却すると、発熱量が大きいため焼却炉を傷めやすい、有害物質を生成するおそれがある等の問題点があり、埋め立てても腐らないためいつまでも環境中に残留するという問題点がある。更に、リサイクルは分別・回収、再生のコストを考えると早急な普及は困難である。
【0004】
この様な環境問題の高まりの中で、環境への負荷を低減して、社会を持続可能なものにするために、廃棄後に自然環境下で分解する生分解性プラスチックが求められるようになっている。
これまでに知られている生分解性プラスチックとしては、澱粉系ポリマー、微生物によって生産された脂肪族ポリエステル系樹脂、化学合成による脂肪族ポリエステル系樹脂、及びそれらの化学構造を一部変性したタイプの樹脂、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂などが知られている。
【0005】
これらの生分解性プラスチックの中で、ポリ乳酸系樹脂は他の生分解性プラスチックに比べて、透明性、剛性に優れているが、特にその延伸フィルムは、腰が強く、透明性に優れ、各種包装用フィルムとして適しているが、熱収縮によって被包装物に密着して緊張されたシュリンク包装用に適したフィルムは未だに得られていない。特に、種々の形状の異なる被包装物をシワもなく美麗に包装できるためには、フィルムの長手方向(以後MD方向と略す)と幅方向(以後TD方向と略す)の両方に十分な熱収縮性がないとフィルムが十分に被包装物の形状に追随して収縮できずに残り美麗な包装が出来ない。
【0006】
生分解性を有する熱収縮性フィルムに関しては、特開平5−212790号公報でポリ乳酸系樹脂組成物からなるフィルムが開示されているが、これはラベル用収縮フィルムであり、一軸方向に38%〜83%収縮し、それに直角方向には収縮率が13%以下であり、本発明で目的とするシュリンク包装用には適しない。
また、特開平7−256753号公報では特定の面配向度で、結晶融解熱量と結晶化熱量の差が20J/g未満である熱収縮性ポリ乳酸系フィルムが開示されているが、MD方向、TD方向の両方に高い収縮率でフィルムが十分に被包装物の形状に追随して収縮し、包装時には外部からの衝撃に対して強く破れず、開封時には容易に開けられる易カット性を有し、且つ被包装物が良く見える透明性を有するような美麗な包装が出来るフィルムは未だ得られていない。
【0007】
加えて上記の公報の実施例で開示されているのは、フラット法による二軸延伸フィルムからなる熱収縮フィルムであり、チューブラー法によるポリ乳酸系樹脂熱収縮フィルムは開示されていない。
また、フラット法による製膜技術は、チューブラー法に比べてフィルムの厚み斑が少なく、また単位時間あたりの生産量を大きくできる点およびフィルムの厚みが厚い場合にはフラット法でないと製膜できない点でチューブラー法に比べて有利であるが、設備建設費はチューブラー法の設備に比べて数倍以上となり、また、少品種大量生産には向くが、フィルムの市場規模が比較的小さく、多品種少量生産の必要な場合、および厚みが薄くなりチューブラー法が適用できるようになるとチューブラー法が経済的に有利になってくる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる生分解性を有する熱収縮性フィルムの製造方法を提供することを目的とするものであり、更に詳しくは、熱収縮性、易カット性、耐衝撃性と透明性に優れた、生分解性を有する熱収縮性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)円筒ダイより押出した、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる溶融樹脂で、第一MD方向速度比1.5以上、第一ブローアップ比1.1以上で第一バブルを形成し、ポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度Tg+20℃以下の温度まで樹脂を冷却し、その後、再度樹脂をポリ乳酸系樹脂(A)のTg以上融点Tm以下の温度まで加熱して、第二MD方向速度比が2.0以上で且つ第二ブローアップ比が2.0以上の第二のバブルを形成するチューブラー延伸を行うことを特徴とする生分解性熱収縮性フィルムの製造方法。
【0013】
(2)ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)との重量比率(A):(B)が95:5〜55:45の範囲内で混合されていることを特徴とする(1)記載の生分解性熱収縮性フィルムの製造方法。
【0014】
本発明について、以下に具体的に説明する。本発明の製造方法により製造したフィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる。該ポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を50重量%以上含有する共重合体であって、ポリ乳酸単独重合体および乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類からなる群より選ばれる化合物との共重合体である。乳酸単量体単位の含有量が50重量%未満の場合、フィルムの耐熱性および透明性が低下する傾向にある。好ましくは乳酸単量体単位を80重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物であり、さらに好ましくは、乳酸単量体単位を90重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物である。
【0017】
次に本発明の製造方法により製造したフィルムについて述べる。本発明の製造方法により製造したフィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる。該ポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸単独重合体および乳酸単量体単位を50重量%以上含有する共重合体であって、ポリ乳酸単独重合体および乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類からなる群より選ばれる化合物との共重合体である。乳酸単量体単位の含有量が50重量%未満の場合、フィルムの耐熱性および透明性が低下する傾向にある。好ましくは乳酸単量体単位を80重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物であり、さらに好ましくは、乳酸単量体単位を90重量%以上含む共重合体又はそれら共重合体の混合物である。
【0018】
乳酸には光学異性体として、L−乳酸とD−乳酸が存在し、それらが重合してできるポリ乳酸には、D−乳酸単位が約10%以下でL−乳酸単位が約90%以上、又はL−乳酸単位が約10%以下でD−乳酸単位が約90%以上であるポリ乳酸で、光学純度が約80%以上の結晶性ポリ乳酸と、D−乳酸単位が10%〜90%でL−乳酸単位が90%〜10%であるポリ乳酸で、光学純度が約80%以下の非晶性ポリ乳酸とがあることが知られている。本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(A)は特に好ましくは、光学純度が85%以上の結晶性ポリ乳酸単独、又は光学純度が85%以上の結晶性ポリ乳酸と光学純度が80%以下の非晶性ポリ乳酸とからなる混合物である。
【0019】
乳酸との共重合成分として用いられる単量体として、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。また、脂肪族環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンおよびこれらにメチル基などの種々の基が置換したラクトン類が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等、多価アルコールとしてはビスフェノール/エチレンオキサイド付加反応物などの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコール等が挙げられる。
【0020】
ポリ乳酸系樹脂(A)の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知の方法を採用できる。また、ポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化物などの結合剤を使用して分子量を増大する方法を用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000未満では機械的物性の劣るフィルムしか得られず、1000000を超えると溶融粘度が高くなり、通常の加工機械では物性の安定したフィルムが得られなくなる。
【0021】
本発明で用いられるガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルから少なくとも1種選ばれた、示差走査熱量測定(JIS−K7121)でのガラス転移温度Tgが0℃以下、より好ましくは、−20℃以下のポリ乳酸系樹脂(A)とは実質的に相溶性の無い樹脂またはそれらからなる樹脂組成物である。Tgが0℃を超えると耐衝撃性向上の効果を発現しない場合が多い。脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸(生分解性を妨げない範囲で、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸を含んでも良い)と、エチレングリコール、1,3−プロピオングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂肪族ジオールの中からそれぞれ1種以上選んだ重縮合が例として挙げられる。環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状モノマーの中から1種以上選んだ開環重合体が例として挙げられる。合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状酸無水物とオキシラン類の共重合体が例として挙げられる。
【0022】
本発明で用いられるガラス転移温度Tgが0℃以下の生分解性脂肪族ポリエステル(B)として特に好ましく用いられるものは、上記の内で比較的透明性の良いとされる脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルであり、その具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどが挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリエステル(B)の重合方法としては、直接法、間接法などの公知の方法を採用できる。直接法では、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分として上記ジカルボン酸化合物その酸無水物又は誘導体を選択し、脂肪族ジオール成分として上記ジオール化合物又はその誘導体を選択して重縮合を行う方法で、重縮合に際して発生する水分を除去しながら高分子量物を得ることができる。間接法では、直接法により重縮合されたオリゴマーに少量の鎖延長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を添加して高分子量化して得ることができる。脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、2万〜50万の範囲が好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量5万〜25万の範囲である。分子量が2万より小さいとポリ乳酸系樹脂(A)とブレンドされ延伸して得られたフィルムにおいて機械的強度、衝撃強度等の実用物性の向上が十分に得られず、分子量が50万を越えると成形加工性に劣る問題がある。
【0024】
本発明のポリ乳酸系樹脂(A)とガラス転移温度Tgが0℃以下の(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)の混合物の重量割合(合計100%)は、好ましくは(A):(B)=95:5〜55:45の範囲内である。生分解性脂肪族ポリエステル(B)が5%未満であると耐衝撃性の改善が不充分であり、第二のバブルを形成してチューブラー延伸する際にバブルの破裂が多発して延伸フィルムが安定して得られない。また、45%を超えると溶融張力の低下やダイスエル現象などによる原因により製膜性が困難となる場合があり、更には、生分解性脂肪族ポリエステル(B)の板状相の厚みも大きくなって透明性も悪化する。更に好ましい重量割合は(A):(B)=90:10〜60:40で、特に好ましくは(A):(B)=90:10〜70:30の範囲である。
【0025】
又、本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムにおけるポリ乳酸系樹脂(A)と生分解性脂肪族ポリエステル(B)は、フィルムの切断面を観察した際(A)相マトリックス中に分散して存在する(B)相ドメインの90%以上が板状の形態でミクロ相分離していることが好ましく、且つ該板状相の平均厚さが5nm以上、100nm以下である様にミクロ相分離しているものが好ましく、更に好ましくは該板状相の平均厚さが5nm〜80nmの範囲内で存在し、特に好ましくは10〜60nmの範囲内でミクロ相分離構造を取るものである。ここで、板状相とは平面板状のみでなく曲面状の板状相、3次元的にねじれた曲面板状相およびこれらの板状相が部分的に折れ曲がった形の板状相も含むものである。後述の方法で切断面を電子顕微鏡写真で観察した場合、例えば図2のように線状に見える部分が板状相であり、これをとりまいた白い部分が(A)相マトリックスである。
【0026】
このようなミクロ相分離構造をとることで、(A)相マトリックス中の薄い板状の(B)相ドメインがフィルムの衝撃強度を効果的に向上させて且つ透明性を阻害しない厚さとなっているので、耐衝撃性と透明性の優れるフィルムとなる。フィルムの切断面における板状相の平均厚さが100nmを超えると、例えば、透過性を阻害する要因としての脂肪族ポリエステルの結晶サイズが可視光波長(約400〜800nm)より大きくなるなどして、透明性が劣る。また、板状相の平均厚みが5nm未満では衝撃強度などの物性改良効果が少なくなる。フィルムのMD方向又はTD方向の何れか一方向の切断面における板状相の長さは、好ましくは約1μm以上、より好ましくは約5μm以上である。
【0027】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムは、140℃、30分加熱時の熱収縮率がフィルムのMD方向およびTD方向共に50%以上であることが必要である。熱収縮率はASTMD−2732に準拠して測定する。140℃、30分加熱時の熱収縮率が50%以上のフィルムを得るためには第二MD方向速度比および第二ブローアップ比を2.0以上にすることが好ましい。熱収縮率が50%未満では熱収縮フィルムとして使用した場合に、被包装物に密着した緊張されたシュリンク包装体を得られ難くなる。好ましくはMD方向、TD方向共に熱収縮率が60%以上であり、更に好ましくは65%以上であり、特に好ましくは70%以上である。
【0028】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムは、JIS K 7128(B法)で測定した引裂強度がフィルムの長手方向(MD方向)、幅方向(TD方向)共に10〜200mNの範囲内であることが必要である。好ましくは引裂強度は10〜130mNの範囲内であり、更に好ましくは10〜80mNの範囲内であり、特に好ましくは10〜50mNの範囲内である。引裂強度が10mN未満ではフィルムのスリット作業時などにフィルム切れが多発するようになる。また、引裂強度が200mNを超えるフィルムでは被包装物を開封する際のカット性が劣る。引裂強度がフィルムの長手方向(MD方向)、幅方向(TD方向)共に10〜200mNの範囲内であるフィルムを得るためには、第二MD方向速度比および第二ブローアップ比を2.0以上にし、且つ(第二ブローアップ比)÷(第二MD方向速度比)の値は0.6〜2.0の範囲内にすることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムはASTM D 1709−91(A法)に準拠して測定した衝撃強度が単位厚み当たり20mJ/μm以上であることが必要である。使用に際して必要となる衝撃強度は用途よって異なるが、衝撃強度が単位厚み当たり20mJ/μm未満では、一般的に使用される10μm程度のポリエチレン系シュリンクフィルム、塩ビ系シュリンクフィルム並みの2J程度の衝撃強度を得るために必要なフィルム厚みが100μmを超えることになり、耐衝撃性は得られても透明性が劣り、またフィルムコストも高くなってしまう。好ましくは、単位厚み当たりの衝撃強度が40mJ/μm以上であり、更に好ましくは50mJ/μm以上であり、特に好ましくは70mJ/μm以上である。衝撃強度が単位厚み当たり20mJ/μm以上のフィルムを得るためには、第二MD方向速度比および第二ブローアップ比を2.0以上にすることが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムは、濁度計(ASTM D 1003−95)で測定した曇り度(Haze)が15%未満であることが必要である。好ましくは曇り度(Haze)が10%未満であり、更に好ましくは8%未満であり、特に好ましくは5%未満である。15%以上になると透明性が劣り、被包装物がフィルムを通して鮮明に見えなくなり、美観を損ねて商品価値を低下させる。曇り度(Haze)が15%未満であるフィルムを得るためには、本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)との重量比率において(A)の比率が55%以上(B)の比率が45%以下の範囲内で混合されていることが好ましい。また、ポリ乳酸系樹脂(A)相マトリックス中に、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)相の90%以上が板状の形態でミクロ相分離して存在し、該板状相の平均厚さが5nm以上、100nm以下であることが好ましい。
【0031】
延伸後のフィルム厚さは、好ましくは5〜80μmであり、より好ましくは6〜50μmで、さらに好ましくは7〜30μmであるが、本発明では特に限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸系樹脂を主体とする生分解性熱収縮フィルムは、用途によっては帯電防止剤、滑り剤およびブロッキング防止剤などのコーティングを行って使用されることが好ましい。この場合、ポリ乳酸系樹脂フィルムは、ポリオレフィン系樹脂フィルムやポリスチレン系樹脂フィルムに比べて親水性であるが、帯電防止剤、滑り剤およびブロッキング防止剤などを、本発明の生分解性熱収縮フィルム表面に均一に塗布するためには、塗布面となるフィルム表面をコロナ処理によりさらに親水化処理することが好ましい。この親水化処理によって、塗膜の均一性が向上し、帯電防止性や滑り性が効率的に発揮される。その際の表面張力としては、400μN/cm〜600μN/cmの範囲が好ましい。
【0032】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなるため生分解性を有し、熱収縮性、易カット性、耐衝撃性と透明性に優れたフィルムであるのでシュリンク包装用フィルムとして優れたフィルムである。また、このフィルムを用いて3方シールして被包装物を覆い、熱収縮によって被包装物に密着して緊張されたシュリンク包装体は、美麗なシュリンク包装体となる。
【0033】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮性フィルムには、上記の樹脂の他に、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤、防曇剤、帯電防止剤、防錆剤などの公知の添加剤を、本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合することが可能である。特に収縮包装後にシュリンク包装体の角、端部に収縮フィルムが突起を生じる場合などには、その突起部分で取扱者が手などに切り傷を負うことがあるのでフィルムに柔軟性が必要となるので、必要に応じて可塑剤などを添加してフィルムに柔軟性を付与することが好ましい。
【0034】
また、本発明の製造方法により製造したフィルムは単層フィルムでも多層フィルムでも良い。特にフィルム本体の物性を維持しながらフィルムの表面特性のみを改良する場合には、必要最小限の厚みにコントロールした表層のみに機能を発現する添加剤を加えて、中間層はフィルム物性を維持する組成からなる多層フィルムとすることで、フィルム本体の物性の変化を最小限にしながら目的とする表面特性を付与できるので好ましい。特に好ましくは表層に有機物および、または無機物の滑り剤、帯電防止剤、防曇剤などを含む層を有する多層フィルムである。また、表層にブロッキング防止剤を含む層を持つ層構成にすることで、加工時の延伸前の樹脂及び延伸後のフィルムのブロッキング、シワを防止でき、加工性が向上するので好ましい。
【0035】
次に、本発明のフィルムの製造方法について述べる。
本発明の生分解性熱収縮性フィルムは、形態別分類としてチューブラー法、フラット法、及び方式別分類として逐次延伸法、同時延伸法のどの方法を用いても製膜できるが、チューブラー延伸法で同時二軸延伸することが好ましい。チューブラー延伸法とは例えば株式会社産業調査会 事典出版センターの1997年3月24日発行の「実用プラスチック成型加工事典」のページ374ページから377ページに記載されている様な方法である。具体的には単軸又は二軸押出機に原料樹脂を供給して溶融混合し、そのまま円筒ダイよりチューブ状に押出された溶融樹脂で第一バブルを形成し、水冷または空冷でガラス転移温度(Tg)+20℃以下の温度まで樹脂を急冷し、ピンチロールでピンチして、チューブ状樹脂をフラットにして引き取り、その後、赤外線ヒーター加熱、または熱風加熱などの方法で再度、樹脂をTg以上Tm以下の温度まで加熱した後に空気等の気体、または水等の液体を用いて第二のバブルを形成することでMD方向とTD方向を同時に延伸し、その後Tg以下の温度まで冷却し、ピンチロールでピンチしてチューブ状延伸フィルムをフラット状にして引き取り、その後巻き取ることによって二軸延伸フィルムを得るものである。このチューブラー延伸法のフラット延伸法と比べた場合のメリットは、設備費が比較的安価で操作が容易である事、適用樹脂の範囲が広い事、大量生産には向かないが、中規模の生産、多品種な生産に適す事、成形条件をコントロールする事でフィルムの長手方向(MD方向)および横方向(TD方向)のバランスの取れたフィルムが得られる事、フラット法に比べて耳ロスが少ない事、チューブ状で得られるので包装用の袋には、シームレスの袋が得られ、底シールのみでよく便利である事、一端を切り開いて広幅のフィルムにもでき、また両端を切って2枚のフィルムにする事もできる事、空気の吹き込み量の調整でフィルム幅を広範囲に変えられる事などである。
【0036】
本発明の生分解性熱収縮フィルムの製膜条件として、第一のバブルを本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)+20℃以下に冷却することが好ましく、更に好ましくはポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)+10℃以下に冷却することである。また、第二のバブル延伸開始時の樹脂の温度は、本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(A)のTg以上Tm以下の温度が好ましく、更に好ましくはTg+5℃以上、Tg+50℃以下の範囲の温度が好ましい。その後に、空気等の気体、または水等の液体を用いて第二のバブルを形成することでMD方向とTD方向を同時に延伸し、その後、本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(A)のTg以下の温度まで冷却することによって二軸延伸フィルムを得るものである。
【0037】
第一のバブルを形成する際の第一MD方向速度比は1.5以上が好ましく、第一ブローアップ比は1.1以上が好ましい。更に好ましくは第一MD方向速度比が2.5以上、第一ブローアップ比が1.2以上であり、特に好ましくは、第一MD方向速度比は4.0以上であり、且つ第一ブローアップ比が1.4以上である。これらの値は次式で求められる。
第一MD方向速度比=(第一バブルを形成し冷却後のチューブ状樹脂をピンチロールで引き取る速度)÷(押出量とダイリップ開口部面積から計算で求めたダイ出口で溶融樹脂の流れ出るMD方向の速度)
第一ブローアップ比=(第一バブルを形成し冷却後のチューブ状樹脂を切り開きフラット状にした時の樹脂チューブの全幅)÷(外側ダイリップ周長と内側ダイリップ周長との平均値)
【0038】
第二のバブルを形成する際の第二MD方向速度比、第二ブローアップ比は最終的に得られる本発明の生分解性熱収縮性フィルムの熱収縮率、引裂強度、衝撃強度、曇り度に大きく影響する。好ましくは第二MD方向速度比が2.0以上で且つ第二ブローアップ比が2.0以上の場合であり、更に好ましくは第二MD方向速度比は2.2以上で且つ第二ブローアップ比は2.5以上であり、特に好ましくは第二MD方向速度比が2.5〜5.0の範囲であり且つ第二ブローアップ比は3.0〜5.0の範囲である。また、(第二ブローアップ比)÷(第二MD方向速度比)の値は0.6〜2.0の範囲が好ましく、特に好ましくは0.8〜1.4の範囲内である。ここで用いる第二MD方向速度比、第二ブローアップ比は以下の式で求められる値である。
第二MD方向速度比=(第二バブルでの延伸後のMD方向ライン速度)÷(第二バブルでの延伸前のMD方向ライン速度)
第二ブローアップ比=(第二バブルでの延伸、冷却後のフィルムのTD方向の折り幅)÷(第二バブルでの延伸前の樹脂チューブのTD方向の折り幅)
【0039】
【発明の実施の形態】
実施例および比較例によって本発明を説明する。
実施例および比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)ポリ乳酸重合体のD、L乳酸組成、光学純度
ポリ乳酸重合体の光学純度は、前述の通りポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸及び/又はD−乳酸単量体単位の構成比率から下記式により計算される。
光学純度(%)=|[L]−[D]| ,但し、[L]+[D]=100
(|[L]−[D]|は[L]−[D]の絶対値を表す。)
【0040】
ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸及び/又はD−乳酸単量体単位の構成比率は、試料を1N−NaOHでアルカリ分解後に1N−HClで中和して蒸留水で濃度調整した加水分解試料(液)について、光学異性体分離カラムを装着した島津製作所製の高速液体クロマトグラフィー(HPLC:LC−10A−VP)にて、紫外線UV254nmでのL−乳酸とD−乳酸の検出ピーク面積比(垂線法による面積測定)から、ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の重量比率[L](単位%)、ポリ乳酸重合体を構成するD−乳酸の重量比率[D](単位%)を求め、1重合体当り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。
【0041】
(2)ポリ乳酸重合体の重量平均分子量Mw
東ソー製のゲルパーミエイションクロマトグラフィー装置(GPC:データ処理部GPC−8020、検出器RI−8020)を用いて、以下の測定条件で、標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算して重量平均分子量Mwを求め、1重合体当り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。
カラム:昭和電工製Shodex K−805とK−801の連結カラム[7.8mm経×60cm長]
溶離液:クロロホルム
試料溶液濃度:0.2wt/vol%
試料溶液注入量:200μL
溶媒流速:1ml/分
カラム・検出器温度:40℃
【0042】
(3)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
JIS−K7121及びJIS−K7122に準拠して、示差走査熱量計(DSC)で−100℃から200℃まで昇温して、Tg、Tmを測定した。すなわち、標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したサンプルから約10mgを切り出した後、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(熱流速型DSC)、DSC−7型を用いて、窒素ガス流量25ml/分、10℃/分で−100℃から200℃まで昇温し、描かれるDSC曲線の昇温時の融解(吸熱)ピーク頂点から融点Tm(℃)、昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をTg(単位℃)として測定し、1製品当り4点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。
【0043】
(4)フィルム厚さ(μm)
フィルムの厚さは、JIS K 7130に従い、マイクロメータを用いて測定した。
(5)ミクロ相分離した生分解性脂肪族ポリエステル(B)の板状相の平均厚さ測定(nm)
標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したフィルムから試験片として10mm角のフィルムに切り出した後、四酸化オスミウム及び四酸化ルテニウムの二重染色を施し、エポキシ系樹脂に包埋した後、ウルトラミクロトーム、LKB2088を用いて超薄切り片を、該フィルムの平面に垂直に切り出し、検鏡試料とした。該検鏡試料について、日立製作所製の透過型電子顕微鏡(TEM)、H7100型を用いて(MD及びTD方向の断面が観察面)、4万倍の倍率の測定写真を得た。得られた測定写真から染色された生分解性脂肪族ポリエステル(B)相のドメインのうち、10%未満の球状(楕円状)のゲル状異物を除いた主要な(90%以上の)形態として存在する板状相について以下の通り厚さ測定を実施した。即ち、該測定写真を縦、横にそれぞれ5分割して得られる合計25の各分割区分中において、染色界面の比較的明確で板状相の重なりの無い部分を1点を選んで板状相の厚さを測定し、これら25分割から得られる25点の板状相の厚さの平均値をフィルムの板状相の平均厚さ(nm)とした。
【0044】
(6)熱収縮率
140℃、30分加熱時の熱収縮率はASTM D−2732に準拠して測定した。
(7)衝撃強度(mJ)
標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したポリ乳酸系樹脂フィルムから試験片として25μm厚み×225mm×250mm角の四角形状フィルムを1種フィルム当り30枚切り出した後、ASTM−D1709−91(A法)に準拠して、東洋精機製のダート衝撃試験装置を用いて、50%破壊エネルギー(Dart強度:単位mJ)を標準状態下で測定した(有効数字2桁)。また、単位厚み当りの衝撃強度(mJ/μm)は(7)で求めた衝撃強度(mJ)を(4)で求めたフィルム厚さ(μm)で割って求めた。
【0045】
(8)引張破断強度(MPa)、引張破断伸び(%)
フィルムの引張破断強度、引張破断伸びはASTM D882に従って測定した。
(9)引裂強度(mN)
フィルムの引裂強度(mN)はJIS K7128(B法)に従って測定した。
(10)曇り度(Haze、%)
標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したフィルムサンプルから試験片として25μm厚み×50mm角の正方形状フィルムに切り出した後、ASTM D1003−95に準拠して、日本電色工業製の濁度計(ヘーズメーター)、NDH−1001DP型を用いて、曇り度(Haze:単位%)を標準状態下で測定し、1種フィルム当たり6点の算術平均値(有効数字2桁)をもって測定値とした。
【0046】
(11)溶断シール強度
溶断シール強度は、1辺がMD方向に平行になる様に200ミリ角のフィルムサンプルを切り出して、K&U Systems,Co.,LtdのL TypeSealer Model MS4141を用いて、シール時間を0.3秒に設定して、MD方向のシール強度はシール線がTD方向に平行となる様にシールを行い、シール線に垂直に25.4ミリ幅の短冊状にシールサンプルを切り出し、ASTM D882に従ってシール強度を測定した。同様にTD方向のシール強度はシール線がMD方向に平行となる様にシールして測定を行なった。
【0047】
(12)易カット性(ノッチなし)
MD方向に平行に300ミリ角のフィルム片を切り出し、フィルム片の中央部を手で引き裂いた。その結果から次のように評価した。
◎:容易に手で引き裂けた。
○:引き裂く際に少し抵抗があるが、手で引き裂けた。
×:引き裂く際に大きな抵抗があり、手では引き裂き難い。
【0048】
(13)包装評価
以下の基準でシュリンク包装体の仕上がりを評価した。
▲1▼シワ
○:シワなく被包装物に包装フィルムが密着して緊張しているもの
△:被包装物にシワはないが周囲に小シワが残るもの
×:被包装物の上面および周囲にシワが残るもの
▲2▼空気抜き穴およびシール部破れ
○:空気抜き穴およびシール部共に破れがないもの
△:空気抜き穴またはシール部の破れが一部あるもの
×:空気抜き穴およびシール部の両方に破れが発生しているもの
▲3▼シュリンク包装体から取り出したフィルムの透明性
◎:曇り度が4%未満のもの
○:曇り度が4〜15%のもの
×:曇り度が15%を越えるもの
【0049】
以下の実施例および比較例に用いたポリ乳酸系樹脂は、特開平9−31171号公報、特表平4−504731号公報および特表平6−504799号公報に記載された方法に従い重合して得られたものであり、表1に示した重量平均分子量、光学純度をもつ結晶性ポリ乳酸(a)、(b)および非晶性ポリ乳酸(c)である。また、ガラス転移温度Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとしては昭和高分子社製ビオノーレ#3001を用いた。ただし、本発明におけるポリ乳酸系樹脂の組成、ガラス転移温度Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルがこれに限定されるものではない。
【0050】
【実施例1〜12】
実施例1〜12においては、表1の結晶性ポリ乳酸(a)、(b)および非晶性ポリ乳酸(c)およびビオノーレ#3001のペレットを表2の組成にドライブレンドした後、同方向2軸押出機を用いて溶融ブレンドし、樹脂温度190℃で溶融樹脂を押し出した。その際、外側ダイリップ直径を110ミリで固定し、内側ダイリップ直径を106ミリから109ミリの範囲で製膜条件に合わせて変更し、最終フィルム厚みが実施例1、2では30μm、実施例3〜12では20μmとなる様に選択して、リップクリアランス約0.5〜2ミリの円筒ダイより押出し、チューブ状に押出された溶融樹脂に冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内へエアーを注入して第一バブルを形成し、得られたバブルを空冷しながらピンチロールへ導きチューブ状の樹脂をフラット状のシートとして巻き取りロールで巻き取った。次に、バブルが安定してから、樹脂押出速度、バブル中へのエアー注入量、ピンチロールにおけるシート引取速度を微調整した後にピンチロールで巻き取り、厚さ約100〜330μmの第二バブル延伸前シートを得た。次にこうして得られた第二バブル延伸前シートを表2に示した温度まで加熱し、注入するエアー注入量、バブル前後のピンチロールの引取速度を調整して、表2に示した第二MD方向速度比、第二ブローアップ比になる様に第二バブルを形成し、表2に示した最終厚みのフィルムを得た。実施例1〜12で得られたフィルムの物性評価結果を表2に示した。また、実施例6のフィルムのTD断面写真を図2に、MD断面写真を図3に示した。
【0051】
得られたフィルムを用い市販の横型ピローシュリンク包装機によりシュリンク包装体を作成した。被包装物としては発泡ポリスチレン製トレーに延伸ポリスチレン透明シートの蓋の付いた弁当容器を用い、弁当容器の周りにフィルムを筒状に送り、被包装物の底部のフィルムの合わせ目をヒートシールし、引き続き、筒状になったフィルムの両端を溶断シールする。この時の余裕率は縦および横方向共に30%でシールを行った。空気抜きの小孔は被包装物の底部に針状の突起により生じさせた。引き続き加熱トンネルに搬送し、トンネル滞留時間は5秒で収縮を行い、シュリンク包装体を得た。加熱トンネルの温度を80℃から160℃まで変化させて包装を行い、その結果を表3に示した。
【0052】
【比較例1、2】
比較例1、2においては、表1のポリ乳酸(a)、(b)のみを用いて、樹脂温度200℃で実施例1と同様にして押し出し、第一バブルを形成し、厚さ約140μmの第二バブル延伸前シートを得た。次にこれを実施例1と同様にして第二バブルを形成すべくエアー注入したが、エアーを注入する段階で樹脂チューブが破裂してしまい、安定して第二バブル形成して延伸することはできなかった。
【0053】
【比較例3、4】
比較例3、4では、表1に示したポリ乳酸(b)およびビオノーレ#3001を使用して、表2の組成にドライブレンドした後、同方向2軸押出機を用いて溶融ブレンドし、樹脂温度190℃で溶融樹脂を外側ダイリップ直径110ミリ、内側ダイリップ直径109.6ミリ、リップクリアランス0.2ミリの円筒ダイより押出し、チューブ状に押出された溶融樹脂に冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内へエアーを注入してバブルを形成し、得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルムとして巻き取りロールで巻き取った。次に、バブルが安定してから、樹脂押出速度、バブル中へのエアー注入量、ピンチロールにおけるフィルム巻き取り速度を微調整した後にピンチロールで巻き取り、最終厚みが20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表2に示した。
また、得られたフィルムを用い実施例1〜12と同様にして市販の横型ピローシュリンク包装機によりシュリンク包装体を作成した。その結果を表3に示した。
【0054】
【比較例5】
比較例5では、表1に示したポリ乳酸(a)を使用して、上記の二軸押出機を用いて円筒ダイの代わりにTダイを用いて、樹脂温度200℃で押出し、35℃に温調したキャスティングロールにて急冷し、実質的に非晶質のシートを得た。続いて、得られたシートを80℃に加熱してMD方向に2.5倍にロール延伸し、次いでテンターで延伸温度85℃にてTD方向に2.5倍延伸した。その後フィルムを室温まで冷却することで、厚さ20μmのテンター法によるポリ乳酸系樹脂の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表2に示した。
また、得られたフィルムを用い実施例1〜12と同様にして市販の横型ピローシュリンク包装機によりシュリンク包装体を作成した。その結果を表3に示した。
【0055】
表2より、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる本実施例の生分解性熱収縮性フィルムは、140℃、30分加熱時の熱収縮率が、フィルムの長手方向(MD方向)、幅方向(TD方向)共に50%以上であり、JIS K 7128(B法)で測定した引裂強度がフィルムの長手方向(MD方向)、幅方向(TD方向)共に10〜200mNの範囲内であり、ASTM D 1709−91(A法)に準拠して測定した衝撃強度が単位厚み当たり20mJ/μm以上であり、且つ濁度計(ASTM D 1003−95)で測定した曇り度(Haze)が15%未満であり、熱収縮性、易カット性、耐衝撃性と透明性に優れた熱収縮性フィルムであることが分かる。また、表3より、本実施例のフィルムによるシュリンク包装体は広い温度範囲で仕上がりが良く、空気抜き穴やシール部での破れも少なく、透明性に優れていることが分かる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【発明の効果】
本発明の製造方法により製造した生分解性熱収縮フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなるため生分解性を有し、熱収縮性、易カット性、耐衝撃性と透明性に優れるので、生分解性熱収縮性フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルム断面写真の撮影位置を説明した図
【図2】実施例6のフィルムのTD断面写真
【図3】実施例6のフィルムのMD断面写真
Claims (2)
- 円筒ダイより押出した、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)とからなる溶融樹脂で、第一MD方向速度比1.5以上、第一ブローアップ比1.1以上で第一バブルを形成し、ポリ乳酸系樹脂(A)のガラス転移温度Tg+20℃以下の温度まで樹脂を冷却し、その後、再度樹脂をポリ乳酸系樹脂(A)のTg以上融点Tm以下の温度まで加熱して、第二MD方向速度比が2.0以上で且つ第二ブローアップ比が2.0以上の第二のバブルを形成するチューブラー延伸を行うことを特徴とする生分解性熱収縮性フィルムの製造方法。
- ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度Tgが0℃以下である(A)以外の生分解性脂肪族ポリエステル(B)との重量比率(A):(B)が95:5〜55:45の範囲内で混合されていることを特徴とする請求項1記載の生分解性熱収縮性フィルムの製造方法。
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