JP4959077B2 - 熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法およびその方法により得られる熱収縮性ポリ乳酸系フィルム - Google Patents
熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法およびその方法により得られる熱収縮性ポリ乳酸系フィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法およびその方法により得られる熱収縮性フィルムに関し、特に、熱収縮性およびヒートシール性に優れ、収縮包装材料として好適に用いられる熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法およびその方法により得られる熱収縮性ポリ乳酸系フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
収縮性包装材料に要求される諸特性である機械的強度、耐熱性、寸法安定性に優れたフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックからなるフィルムが知られており、幅広く使用されている。
【0003】
しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、自然環境中に廃棄されると、その科学的安定性のため分解せず、ゴミとして蓄積する一方である。将来的にはゴミ処分場、埋立地の確保がますます困難になり、また自然環境や野性動物に悪影響を及ぼすなどの問題が懸念されている。これらのプラスチックフィルムに代わり、土壌中において加水分解し、次いで微生物分解により無害な分解物となり得るものに、ポリ乳酸フィルムがある。
【0004】
ポリ乳酸の無延伸フィルムあるいはシートは、強度および伸度が低く、耐衝撃性に劣る材料で、そのままでは成形体として実用性が不足する。しかし、これを一軸あるいは二軸延伸して配向させることによって脆性を向上させることができ、延伸したポリ乳酸フィルムは、情報記録材料(磁気カード)、工業用パッケージ、農業用マルチフィルムなどに用途展開され、一部は実用化に至っているものもある。
【0005】
しかしながら、これらのポリ乳酸系延伸フィルムにおいては、ヒートシール性と熱収縮性とを併せ持つ包装用フィルムとして実用化された例は、ほとんど見られない。すなわち、このようなフィルムとして、たとえば特開2000−43143号公報には、脂肪族ポリエステル樹脂からなるヒートシール可能な生分解性熱収縮フィルムが記載されている。また、特開2001−88261号公報には、ポリ乳酸と脂肪族多価アルコール/脂肪族ジカルボン酸共重合体とを主体とする組成により構成された、ヒートシール可能な生分解性熱収縮多層フィルムが開示されている。しかし、これらのフィルムは、低温におけるヒートシール性は満足できるものではなく、さらなる改良が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決して、良好な熱収縮性を示し、しかも低温におけるヒートシール性に優れた熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリ乳酸系フィルムについて、樹脂組成、延伸温度、延伸倍率、熱処理温度、リラックス率等を調整することにより、十分な熱収縮性を有するフィルムが得られることを見い出し、かつ基材層を有するフィルムの最外面に独特なヒートシール材の層を形成することで低温でのヒートシール性を発揮できることを見い出して、本発明を完成したものである。
【0008】
すなわち本発明は、積層構造の熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを製造するに際し、
D体1〜4%のポリ乳酸系重合体と、
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体とを溶融させて共押出しすることで未延伸シートを形成し、
この未延伸シートを、MD方向の延伸倍率を3〜3.5倍とするとともにTD方向の延伸倍率を3〜4倍とするようにMD方向およびTD方向に二軸延伸し、
その後100℃〜110℃で熱処理して、
前記ポリ乳酸系重合体にて基材層を形成するとともに、前記脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体にてヒートシール層を形成し、
その結果、前記基材層とヒートシール層とが積層された構造のポリ乳酸系フィルムのMD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であるようにすることを特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法を要旨とするものである。
また本発明は、積層構造の熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを製造するに際し、
D体1〜4%のポリ乳酸系重合体にて未延伸シートを形成し、
この未延伸シートを、MD方向の延伸倍率を3〜3.5倍とするとともにTD方向の延伸倍率を3〜4倍とするようにMD方向およびTD方向に二軸延伸し、
その後100℃〜110℃で熱処理して基材層を形成し、
次に、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体にて、前記基材層に積層されるヒートシール層を形成し、
その結果、前記積層構造のポリ乳酸系フィルムのMD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であるようにすることを特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法を要旨とするものである。
さらに本発明は、上記の方法のいずれかによって製造された熱収縮性ポリ乳酸系フィルムであって、
ポリ乳酸系フィルムによって形成された基材層と、
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体によって形成されたヒートシール層とを有するとともに、
MD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であることを特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを要旨とするものである。
【0009】
これにより、十分な熱収縮性を有し、しかも脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有するヒートシール層によって低温でのヒートシール性を有することになるため、各種の用途に適した熱収縮性フィルムを提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルムは、熱収縮を利用した用途に供するために、MD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であることが必要である。本発明では、特定のポリマーを用い、かつ樹脂特性に合わせて延伸温度、延伸倍率、熱処理温度、リラックス率などのフィルム製造条件を適宜に設定することにより、熱収縮率を上記の範囲内にコントロールすることができる。
【0011】
MD方向すなわち機械方向とTD方向すなわち機械方向と直行する方向とのいずれも熱収縮率が10%未満であると、十分な熱収縮性が得られず、包装用途などに適さなくなる。
【0012】
基材層のフィルムを形成するポリ乳酸としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、乳酸またはラクチドと他のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、環状ラクトンとの共重合体、またはこれらの混合体などが挙げられる。これらには、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合などを導入することができる。ポリ乳酸の数平均分子量は、5万〜30万の範囲であることが好ましく、8万〜15万であることがより好ましい。数平均分子量が5万未満の場合は、得られるフィルムの機械的強度が不十分となり、また延伸や巻き取りの工程中での切断も頻繁に起こり、操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を超えると、加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0013】
基材層のフィルムを形成するポリ乳酸には、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤を添加したり、他の生分解性ポリマー、たとえば脂肪族−芳香族共重合ポリエステルや生分解性脂肪族ポリエステルなどを配合したりすることもできる。また、基材層を形成するポリ乳酸系フィルムには、用途に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、顔料などを添加できる。
【0014】
次に、ヒートシール層に用いられる脂肪族−芳香族共重合ポリエステルについて説明する。この脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとしては、脂肪族成分および芳香族成分を有するものであればよく、たとえば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリドなどの環状ラクトン類、エチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス−ヒドロキシメチルベンゼン、トルエンジオールなどのジオール類、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸類、環状酸無水物類、オキシラン類等を成分とし、脂肪族成分と芳香族成分を有する共重合体が挙げられる。脂肪族成分としてコハク酸やアジピン酸、エチレングレコールや1、4−ブタンジオールを、芳香族成分としてテレフタル酸やイソフタル酸を有する共重合ポリエステルが好ましい。これらにも、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合などを導入することができる。
【0015】
上記脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、結晶性を有することが好ましい。結晶性を有するとは、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが融点および結晶融解ピークを有することをいう。脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが結晶性を有していると、ヒートシール層のブロッキングなどが発生せず、操業性の点から好ましい。
【0016】
上記脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの結晶融解熱量は、40J/g以下であることが好ましい。結晶融解熱量が40J/g以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを用いると、これから得られるフィルムは、優れたヒートシール性、特に低温でのヒートシール性を有しており、好ましい結果が得られる。このため、結晶融解熱量が30J/g以下であることがさらに好ましい。
【0017】
上記のようにヒートシール層には脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有するが、一般にポリエステルに他成分を共重合させると、結晶性が低下するため柔軟性が増加し、このためフィルムの柔軟性改良には適しているが、逆にブロッキングが生じやすくなって操業性が低下したり、融点やガラス転移点なども低下するために耐熱性に劣るという問題を生じたりすることがある。これに対し、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、芳香族成分を有しており、一般に芳香族共重合ポリエステルは脂肪族ポリエステルに比べて融点が高いため、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、共重合により融点が低下しても、脂肪族共重合ポリエステルに比べ、より高い耐熱性を有することができる。したがって、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、脂肪族共重合ポリエステルに比べて、共重合比率を高くすることが可能であり、耐熱性とすぐれた柔軟性を有し、また、結晶融解熱も低いため、低温でのすぐれたヒートシール性を有することになる。
【0018】
ヒートシール層の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、ポリ乳酸系重合体と混合されてヒートシール層を形成することが好ましく、その混合比率は、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが10質量%以上であるのが、ヒートシール層の耐衝撃性が顕著に発現されるために好ましい。なお、20質量%以上であるのがより好ましく、さらには、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが100質量%すなわち脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのみによって、ヒートシール層を形成してもよい。ポリ乳酸系重合体と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとの混合方法は、特に限定されないが、ブレンドした原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法などが挙げられる。溶融混合条件として、高い溶融温度下もしくは高剪断条件下で長時間混合した場合には、エステル交換反応や分解反応が進行して、混合物の特性が変化することがある。
【0019】
このような、ヒートシール層としての、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有するフィルムは、特に優れたヒートシール性を得るためには、未延伸フィルムであることが好ましい。また、この脂肪族−芳香族共重合ポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲でヒートシール層の物性や加工性を調整する目的で、可塑剤、、無機フィラー、紫外線吸収剤などの添加剤、改質剤、架橋剤、あるいは他の高分子材料などを添加することができる。
【0020】
フィルムのヒートシール層どうしをを重ね合わせて貼り合わせたときのヒートシール強度が7N/cm以上であると、実用上において十分なヒートシール性能を達成することができる。なお、10N/cm以上であるとより好ましい。
【0021】
本発明のフィルムは、基材層の片面に接着剤層を介してヒートシール層を接着した構成とすることができる。あるいは、基材層の両面にヒートシール層を形成することもできる。さらに、基材層とヒートシール層との間に通気性を阻止するためのバリア層を介在させることもできる。
【0022】
基材層の両面にヒートシール層を形成する場合は、たとえばフィルムを円筒袋状に丸めてその両端部どうしを表側と裏側とで重ね合わせ、この重ね合わせ部をヒートシールするような場合に適用することができる。
【0023】
基材層とヒートシール層とを接着させるための接着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ゴム系、ウレタン系などのものが好ましい。生分解性の観点にたてば、でんぷん、アミロース、アミロペクチンなどの多糖類や、膠、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、コラーゲンなどのタンパク質類やポリペプチド類、未加硫天然ゴムなどの天然材料、脂肪族系ポリエステル、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル、脂肪族系ポリエステルウレタン、脂肪族系ポリエステル変性ポリビニルアルコール酢酸ビニル共重合体などが好ましい。
【0024】
基材層とヒートシール層とを接着剤を用いないで積層する場合には、それぞれのポリマーを複数の押出機で溶融、混練した後、ダイ内あるいはそれ以前のフィードブロック内などで積層して共押し出しする方法や、巻き出したフィルム上にコーティングする方法や、複数のフィルムをロールやプレス機などで熱圧着する方法などが挙げられる。
【0025】
なお、ガスバリア性などの他の機能性を付与するために、上記以上の多層構造としてもよい。たとえば、ガスバリア性を付与する方法としては、PVA層や、金属または金属酸化物蒸着層を積層する方法などが挙げられる。
【0026】
本発明のフィルムの厚みは、特に制限なく、用途、要求性能、価格などによって適宜設定すれば良いが、一般的には、10〜200μm程度の厚さとするのが適当である。
【0027】
本発明において、ポリ乳酸を得るための重合法としては、縮合重合法および開環重合法のいずれの方法を採用することも可能である。また、分子料増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物などを使用してもよい。
【0028】
本発明の熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法としては、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法などを例示できるが、Tダイを用いてポリマーを溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。
【0029】
たとえば基材層をTダイ法により製造する場合には、ポリ乳酸系重合体に必要に応じて可塑剤や滑剤を適量配合した樹脂組成物を押し出し機ホッパーに供給し、押出機をたとえばシリンダー温度180〜260℃、Tダイ温度200〜250℃に加熱し、溶融混練して押し出し、20〜40℃に制御された冷却ロールで冷却し、厚さ100〜500μmの未延伸シートを得る。
【0030】
得られた未延伸シートは原則として二軸延伸処理を行うが、その方法としては、テンター方式による同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法などを採用することができる。たとえば逐次二軸延伸法によってフィルムを延伸処理する場合には、まず、未延伸シートをロールの回転速度比によって縦方向に延伸する。このとき、ロール表面温度は50〜80℃、延伸倍率は1.5〜5.0倍にそれぞれ設定するのが好適である。そして、引き続き連続して横方向に、延伸温度70〜100℃、延伸倍率2.0〜8.0倍で延伸する。その後、90〜150℃で熱処理し、リラックス率2〜8%の条件で熱弛緩処理するのが好ましい。このような条件で製造することにより、得られたフィルムは、100℃での熱収縮率をMD方向およびTD方向とも10%以上とすることができる。
【0031】
ヒートシール層も、同様の製膜処理を施すことによって得ることができる。ただし、前述のように未延伸フィルムであることが好ましい。そして、得られた基材層およびヒートシール層をたとえば前述のように接着剤を介して接着することにより、両者を積層して一体化したフィルムを得ることができる。
【0032】
このように本発明によれば、基材層は十分な熱収縮性を有し、しかも脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有するヒートシール層によって低温でのヒートシール性を有することになるため、各種の用途に適した熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを提供することができる。
【0033】
【実施例】
次に、実施例にもとづいて本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例、比較例における各物性の評価方法は以下の通りとした。
【0034】
(1)熱収縮性
10mm×150mmの長さに切り出したフィルムサンプルを、熱風乾燥機において100℃で5分間熱処理した。熱処理前のサンプル長を100%とし、熱処理前後のサンプル長の差から、次式によって熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(熱処理前長さ−熱処理後長さ)×100/熱処理前長さ
【0035】
(2)ヒートシール性
フィルムをMD方向に沿って幅15mm、長さ100mmの短冊状に切り出し、この短冊状のサンプルをヒートシール層どうしが内側になるように2枚重ね合わせ、20mm幅のヒートシールバーを有するヒートシーラーに直交するようにセットした後、所定の温度で片側より加熱し、0.2MPaの圧力で2秒間ヒートシールした。そして、このようにヒートシールしたサンプルを、島津製作所社製のオートグラフを用いて、JIS K−6854に準じて、剥離速度300mm/分で剥離するまで、または、接着成分が残り1mmになるまでT型剥離試験を行った。その結果のピーク値をヒートシール強度とし、5N/cm未満のものを不良として×と評価し、5N/cm以上かつ7N/cm未満のものをやや劣るとして△と評価し、7N/cm以上かつ10N/cm未満のものを良として○で評価し、10N/cm以上のものを優良として◎で評価した。
【0036】
(3)結晶融解熱量
Perkin Elmer 社製のDSCを用い、試料を乾燥した後、7mg秤量し、200℃で3分間溶融させた後、300℃/分の冷却速度で−40℃まで急冷し、次いで20℃/分の昇温速度で試料を加熱して、結晶融解熱量を測定した。
【0037】
(テスト用フィルムの製造)
フィルムA(基材層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)を用い、Tダイから230℃で溶融押出し、25℃のキャストロールに密着急冷させて、厚さ280μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを予熱ロールにより60℃で予熱した後、延伸ロール温度85℃で3.5倍に縦方向に延伸し、引き続いて90℃のテンター内で横方向に4倍延伸した後、横方向のリラックス率を5%とし、110℃で熱処理を施して、厚さ20μmの二軸延伸フィルムAを得た。
【0038】
フィルムB(基材層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)を用い、Tダイから230℃で溶融押出し、25℃のキャストロールに密着急冷させて、厚さ240μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを予熱ロールにより60℃で予熱した後、延伸ロール温度80℃で3倍に縦方向に延伸し、引き続いて90℃のテンター内で縦方向に4倍延伸した後、横方向のリラックス率を5%とし、110℃で熱処理を施して、厚さ20μmの二軸延伸フィルムBを得た。
【0039】
フィルムC(基材層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体1%)を用い、Tダイから230℃で溶融押出し、25℃のキャストロールに密着急冷させて、厚さ180μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを80℃のテンター内で縦方向3倍、横方向3倍に同軸二軸延伸した後、100℃で熱処理を施して、厚さ20μmの二軸延伸フィルムCを得た。
【0040】
フィルムD(基材層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体1%)を用い、Tダイから230℃で溶融押出し、25℃のキャストロールに密着急冷させて、厚さ180μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを80℃のテンター内で縦方向3倍、横方向3倍に同軸二軸延伸した後、125℃で熱処理を施して、厚さ20μmの二軸延伸フィルムDを得た。
【0041】
フィルムE(ヒートシール層)
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(BASF社製:Ecoflex F、結晶融解熱量:19.5J/g)を用い、180℃で溶融し、ダイ口径100mmのインフレーション製膜機より押出を行い、引取速度20m/minの条件で、折り径350mm、厚み20μmのフィルムEを得た。
【0042】
フィルムF(ヒートシール層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)20質量%と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(Eastman Chemical Company社製:EASTER BIO GP Copolyester、結晶融解熱量:18.5J/g)80質量%とを用い、フィルムEと同様にしてフィルムFを得た。
【0043】
フィルムG(ヒートシール層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体1%)50質量%と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(BASF社製:Ecoflex F、結晶融解熱量:19.5J/g)50質量%とを用い、Tダイから210℃で溶融押出し、25℃のキャストロールに密着急冷させて、厚み20μmのフィルムGを得た。
【0044】
フィルムH(ヒートシール層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)70質量%と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(Eastman Chemical Company社製:EASTER BIO GP Copolyester、結晶融解熱量:18.5J/g)30質量%とを用い、フィルムGと同様にしてフィルムHを得た。
【0045】
フィルムI(ヒートシール層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)を用い、フィルムGと同様にしてフィルムIを得た。
【0046】
フィルムJ(ヒートシール層)
ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)80質量%と、脂肪族ポリエステル(昭和高分子社製:ビオノーレ#3001、結晶融解熱量:45.6J/g)20質量%とを用い、フィルムGと同様にしてフィルムJを得た。
【0047】
フィルムK(ヒートシール層)
脂肪族ポリエステル(昭和高分子社製:ビオノーレ#3001、結晶融解熱量:45.6J/g)を用い、フィルムEと同様にしてフィルムKを得た。
【0048】
(実施例、比較例)
実施例1
基材層としてポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)を用い、ヒートシール層として、ポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製:D体4%)80質量%と脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(BASF社製:Ecoflex F、結晶融解熱量:19.5J/g)20質量%とを用い、Tダイから230℃で溶融、共押出し、25℃のキャストロールに密着急冷させて、厚さ480μm(基材層:ヒートシール層=1:1)の未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを予熱ロールにより60℃で予熱した後、延伸ロール温度80℃で、縦方向に3倍延伸し、引き続いて90℃のテンター内で横方向に4倍延伸した後、リラックス率を5%とし、100℃で熱処理を施して、厚み40μmのフィルムを得た。
【0049】
実施例2〜5、比較例1〜4
フィルムA〜Dを基材層とし、この基材層に脂肪族ポリエステル系接着剤を1μmの厚さで塗布し、80℃で乾燥させた後、ヒートシール層としてフィルムE〜Kを90℃の加熱ロールで圧着し、さらに、40℃で3日間エージングして積層フィルムを得た。ただし、比較例1は、ヒートシール層を形成しなかった。
【0050】
実施例1〜5、比較例1〜4の詳細を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなように、実施例1〜5のフィルムは、生分解性を有するポリマーにて形成され、所定のヒートシール層を有していたためヒートシール性にすぐれ、また所要の熱収縮性を有するものであった。
【0053】
比較例1のフィルムは、ヒートシール層を形成しなかったため、所要のヒートシール性を得ることができなかった。
比較例2のフィルムは、ヒートシール層が基材層と同じポリ乳酸のみによって形成されたものであり、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有しなかったため、所要のヒートシール性を得ることができなかった。
【0054】
比較例3のフィルムは、ヒートシール層が脂肪族ポリエステルのみによって形成されたものであり、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有しなかったため、低温でのヒートシール性に劣るものであった。
【0055】
比較例4のフィルムは、ヒートシール層がポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブレンド体によって形成されたものであり、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有しなかったため、低温でのヒートシール性に劣るものであり、しかも熱収縮性にも劣っていた。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明によると、ポリ乳酸系フィルムによって形成された基材層と、最外層として形成されかつ脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有するヒートシール層とを有するとともに、MD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であるため、十分な熱収縮性を有し、しかも脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを含有するヒートシール層によって低温でのヒートシール性を有することになるため、各種の用途に適した熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを提供することができる。
Claims (5)
- 積層構造の熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを製造するに際し、
D体1〜4%のポリ乳酸系重合体と、
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体とを溶融させて共押出しすることで未延伸シートを形成し、
この未延伸シートを、MD方向の延伸倍率を3〜3.5倍とするとともにTD方向の延伸倍率を3〜4倍とするようにMD方向およびTD方向に二軸延伸し、
その後100℃〜110℃で熱処理して、
前記ポリ乳酸系重合体にて基材層を形成するとともに、前記脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体にてヒートシール層を形成し、
その結果、前記基材層とヒートシール層とが積層された構造のポリ乳酸系フィルムのMD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であるようにすることを特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法。 - 積層構造の熱収縮性ポリ乳酸系フィルムを製造するに際し、
D体1〜4%のポリ乳酸系重合体にて未延伸シートを形成し、
この未延伸シートを、MD方向の延伸倍率を3〜3.5倍とするとともにTD方向の延伸倍率を3〜4倍とするようにMD方向およびTD方向に二軸延伸し、
その後100℃〜110℃で熱処理して基材層を形成し、
次に、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体にて、前記基材層に積層されるヒートシール層を形成し、
その結果、前記積層構造のポリ乳酸系フィルムのMD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であるようにすることを特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系フィルムの製造方法。 - 請求項1または2に記載の方法によって製造された熱収縮性ポリ乳酸系フィルムであって、
ポリ乳酸系フィルムによって形成された基材層と、
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル含有体によって形成されたヒートシール層とを有するとともに、
MD方向とTD方向との少なくともいずれか一方についての100℃での熱収縮率が10%以上であることを特徴とする熱収縮性ポリ乳酸系フィルム。 - ヒートシール層は、基材層を形成するものと同じポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとのブレンド体、または脂肪族−芳香族共重合ポリエステル単体のいずれかによって形成されており、そのブレンド比が、質量比で、(ポリ乳酸)/(脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)=90/10〜0/100であることを特徴とする請求項3記載の熱収縮性ポリ乳酸系フィルム。
- 脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの結晶融解熱量が40J/g以下であることを特徴とする請求項3または4記載の熱収縮性ポリ乳酸系フィルム。
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