JP4386386B2 - 易引裂性積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムに関し、易引裂性を有し、かつ優れた機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を有し、菓子、スープ、漬物、レトルトパウチなどの食品をはじめ、医薬品、日用品等の包装材料や各種工業用として有用なポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムの用途は広く、食品用を始め、各種電気・電子部品、機械、設備機器、建材、薬品等、実に様々な産業分野で必要とされているが、ポリエステルフィルムを用いたその優れた機械的特性が災いして、引裂性が悪いという問題点を有している。そのため包装材料や粘着テープ等に代表される切断を有する用途には、セロハンが重用されてきた。
一方、セロハンは吸湿性を有するため、特性が季節により変動し、一定の品質のものを常に供給することが困難であった。さらにセロハンは非常に高価であるという問題がある。
【0003】
上記欠点を解決する方法としては、一軸方向に配向させたポリエステルフィルム(特許文献1)やジエチレングリコール成分などを共重合させたもの(特許文献2)や低分子量のポリエステル樹脂を用いるもの(特許文献3)などが提案されてきた。
しかしながら、上記従来技術において一軸方向に配向させる方法は、配向方向へは直線的に容易に切れるが配向方向以外には切れにくく、またジエチレングリコール成分などを多量に共重合させる方法は、共重合により本来の特性が失われるという欠点を有している。さらに、低分子量のポリエステル樹脂を用いる方法は、延伸工程でのフィルム破断のトラブルが発生しやすく実用的ではなかった。また、融点の低い共重合ポリエステル層と融点の高いポリエステル層を積層し、共重合ポリエステル層の融点より高い温度で熱処理する方法(特許文献4)も提案されているが、テンターのクリップにフィルムが融着したり、熱処理後の冷却工程で厚み斑が大きくなったりする問題が発生する。
【0004】
【特許文献1】
特公昭55−8851号公報
【特許文献2】
特公昭56−50692号公報
【特許文献3】
特公昭55−20514号公報
【特許文献4】
特開平5−104618号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、セロハンの優れた特性である易引裂性を備えかつ、ポリエステルフィルムの優れた、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性も兼備し、製膜安定性も優れたポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステル樹脂(A)を10〜48重量%とポリエステル樹脂(A)の融点より20℃以上低いイソフタル酸共重合ポリエステル樹脂(B)を90〜52重量%を含む混合原料からなるポリエステル層(1)と、その両面にポリエステル層(1)の融点より10℃以上高い融点を有するポリエステル層(2)を積層したフィルムであり、ポリエステル層(1)の融点と融解開始温度の差が10℃以上であり、2軸延伸後にポリエステル層(1)の融解開始温度以上でかつ融点よりも5〜15℃低い熱処理温度で処理されたフィルムであることを特徴とする易引裂性積層ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル層(2)に用いられるポリエステルは特に限定されるものではなく、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボンと酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0009】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリブチレンテレフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよいし、これらのポリエステルを2種類以上ブレンドしたものでもよい。
【0010】
ポリエステル層(1)に用いられるポリエステル樹脂(A)は特に限定されるものではなく、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボンと酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0011】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリブチレンテレフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(A)の融点よりも20℃以上、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃低い融点を有する共重合ポリエチレンテレフタレートである。共重合ポリエステルは酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸、グリコール成分がエチレングリコールからなるポリエステルで代表され、公知の製法ですなわちテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールからのエステル交換法、テレフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合して得られるものであるが、他の共重合成分を共重合することができる。
【0012】
他の共重合成分として酸成分としてはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸等を例示することができる。またアルコール成分としてはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を例示することができる。これらは単独あるいは2種以上を使用することができる。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、平均粒径3.0μm以下の微粒子を1.0重量%以下で含有することが、フィルムの巻上げ工程および印刷加工工程での作業性を向上させる上で望ましい。この微粒子は有機系、無機系の如何を問わず、その例として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン、および架橋高分子微粉体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。この際、配合する微粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。2成分以上用いる場合は、それらの全体の平均粒径および含有量が上記した範囲内であればよい。原料ポリエステルに対する前記各粒子の配合方法は、特に限定されないが、例えばポリエステルの重合工程に各粒子を添加する方法または原料ポリエステルと各粒子を溶融混練する方法などが好適である。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルムは、例えば、上記したポリエステル層(1)、ポリエステル層(2)に該当するポリエステル原料をそれぞれエクストルーダ゛ーに代表される周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いでスリット状のダイより3層((2)/(1)/(2))になるように溶融ポリマーを押出し、回転冷却ドラム状でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してフィルム化し、熱処理を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
【0015】
本発明においては、包装材料として十分な寸法安定性、腰を得るため延伸倍率を面積倍率として10倍以上とし、熱処理温度はポリエステル層(1)の融点未満でかつポリエステル層(1)の融解開始温度より5℃以上高い温度にすることが好ましい。熱処理温度がポリエステル層(1)の融点以上の場合はテンターのクリップにフィルムが融着したり、熱処理後の冷却工程で厚み斑が大きくなったりして製膜に適さないことがある。また、熱処理温度が融解開始温度より5℃以上高くないと、目的とする引裂性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明のフィルムのポリエステル層(1)の融解開始温度は、ポリエステル層(1)の融点より10℃以下、好ましくは15℃以下でないと、目的とする引裂性が低下する。本発明のフィルムの収縮率(150℃−30分間)は、通常10%以下、好ましくは5%以下である。収縮率が10%を超えると、使用する用途によって適さないものとなる場合がある。本発明のフィルムの引張破断強度は、通常40〜180MPa、好ましくは40〜140MPa、さらに好ましくは50〜120MPaである。引張破断強度が180MPaを超えると、フィルムの引裂性が損なわれることがあり、引張破断強度が小さすぎると、加工時に破断したりして包装材料として適さなくなるおそれがある。
【0017】
本発明のフィルムのヘーズ値は、通常10%以下、好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。ヘーズ値が10%を超えると、フィルムの透明性が損なわれ、包装材料として適さないことがある。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、通常6〜50μm、好ましくは9〜38μmで、さらに好ましくは12〜25μmであり、A層の厚みは全体の厚みに対し50〜90%にすることが好ましい。厚みが薄いと腰が弱くなって加工時にシワになったり、破断したりして包装材料として適さないことがある。また厚くしすぎると引裂性が損なわれ、包装材料として適さないおそれがある。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0019】
(1)フィルム厚み
フィルムを10枚重ねてマイクロメータ法にて厚さを測定し10で除して平均値を求めフィルム厚みとした。
【0020】
(2)融点、融解開始温度
融点(Tm)および融解開始温度(Tim)の測定はパーキンエルマー性示差走査カロリーメーターDSC7型を用いて測定した。DSC測定条件は以下のとおりである。すなわち、試料6mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融保持した後、液体窒素にて急冷した。急冷試料を0℃より10℃/分の速度で昇温し、JIS K7121に準じて融点、融解開始温度を検知した。
【0021】
(3)引張破断強度
(株)インテスコ製引張り試験機モデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において長さ(チャック間)50mm、幅15mmの試料フィルムを200mm/分の歪み速度で引張り、フィルム破断時の荷重を測定し、下記式により引張破断強度を求めた。
引張破断強度(MPa)=切断時の荷重(N)/試料フィルムの断面積(mm2)
【0022】
(5)収縮率
フィルムを長さ方向および幅方向に35mm幅×1000mm長の短冊状にサンプルを切り出し無張力状態にて150℃に設定されたオーブン(タバイエスペック(株)製:熱風循環炉)中に30分間熱処理を行い、熱処理前後の長さを直尺により測定し、下記式にて熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100
(上記式中、aは熱処理前のサンプルの長さ(mm)、bは熱処理後のサンプルの長さ(mm)を表す)
【0023】
(6)ヘーズ
JIS K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムのヘーズを測定した。
【0024】
(7)引裂性
フィルムに切れ込みを入れずに、スムーズに手で引き裂けるかどうか下記基準で評価した。評価は長手方向(MD)および幅方向(TD)に対して、それぞれ行った。
評価A:容易に手で引き裂くことができるもの
評価B:比較的容易には手で引き裂くことができるもの
評価C:容易には手で引き裂くことができないもの
【0025】
実施例および比較例において使用した原料は以下のとおりである。
(1)イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPAcoPET)
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸とを使用し、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の重縮合で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は22モル%であった。融点(Tm)=200℃、ガラス転移温度(Tg)=74.2℃、固有粘度([η])=0.69であった。
【0026】
(2)ポリエチレンテレフタレート(PET)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の重縮合で製造した。融点(Tm)=254℃、ガラス転移温度(Tg)=75.2℃、固有粘度([η])=0.70であった。
【0027】
(3)イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(IPAcoPBT)
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸を使用し、多価アルコール成分として1.4ブタンジオールを使用し、定法の重縮合で製造した。融点(Tm)=218℃、ガラス転移温度(Tg)=36.5℃、固有粘度([η])=0.80であった。
【0028】
実施例1
ポリエステル樹脂(B)としてIPAcoPET 65重量部とポリエステル樹脂(A)としてPET 35重量部の混合ペレットとPETのペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用いPET(層(1))/IPAco-PET+PET(層(1))/PET(層(2))の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約250μmの未延伸フィルムを得た。次いで、80℃にて縦方向に3.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て90℃で4.1倍、横延伸、225℃で10秒間の熱処理を行った。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0029】
実施例2
ポリエステル樹脂(B)としてIPAcoPBTを使用したことおよびテンター内の熱処理温度を230℃にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0030】
実施例3
ポリエステル樹脂(B)としてIPAcoPET 52重量部とポリエステル樹脂(A)としてPET 48重量部の混合ペレットを(層(1))の原料に使用した以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。実施例4
(層(2))/(層(1))/(層(2))の厚み構成を2/21/2(μm)にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0031】
実施例5
テンター内の熱処理温度を215℃にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0032】
比較例1
ポリエステル樹脂(B)としてIPAcoPET 8重量部とポリエステル樹脂(A)としてPET 92重量部の混合ペレットを(層▲1▼)の原料に使用した以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0033】
比較例2
ポリエステル樹脂(B)として融点220℃のIPAcoPET 35重量部とポリエステル樹脂(A)として融点235℃のIPAcoPET 48重量部の混合ペレットを(層▲1▼)の原料に使用した以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を損なうことなく、かつ低コストで製膜性に優れた易引裂性ポリエステルフィルムを提供する。
Claims (2)
- ポリエステル樹脂(A)を10〜48重量%とポリエステル樹脂(A)の融点より20℃以上低いイソフタル酸共重合ポリエステル樹脂(B)を90〜52重量%を含む混合原料からなるポリエステル層(1)と、その両面にポリエステル層(1)の融点より10℃以上高い融点を有するポリエステル層(2)を積層したフィルムであり、ポリエステル層(1)の融点と融解開始温度の差が10℃以上であり、2軸延伸後にポリエステル層(1)の融解開始温度以上でかつ融点よりも5〜15℃低い熱処理温度で処理されたフィルムであることを特徴とする易引裂性積層ポリエステルフィルム。
- 引張破断強度が40〜180MPaであり、150℃で30分熱処理したときの収縮率が10%以下であり、ヘーズが10%以下であることを特徴とする請求項1記載の易引裂性積層ポリエステルフィルム。
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