JP2004136448A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】二軸延伸ポリエステルフィルムの優れた、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を損なうことなく、引裂開封性を向上し、意匠性も高めることもでき、かつ低コストで生産できる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)とポリエステル層(B層)とからなる積層フィルムであり、A層の融点が240℃以下であり、かつB層の融点が245℃以上であり、積層フィルムの引張破断強度が40〜220MPaであることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)とポリエステル層(B層)とからなる積層フィルムであり、A層の融点が240℃以下であり、かつB層の融点が245℃以上であり、積層フィルムの引張破断強度が40〜220MPaであることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、引裂性に優れ、かつ、優れた機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を有し、菓子、スープ、漬物、レトルトパウチなどの食品をはじめ、医薬品、日用品等の包装材料や各種工業用として有用なポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、電気的特性、耐薬品性、寸法安定性等の点から、情報記録材料、コンデンサー用、包装用、製版用、電絶用、写真フィルム用等、多くの分野で基材として用いられている。
近年、かかるポリエステルフィルムの有する優れた特性を生かし各種包装用フィルムとして用いられており、また環境問題の重要性に関する認識が高まる中、特にポリエステルフィルムはその廃棄処理時に環境汚染を抑制できることから今後さらにその利用範囲は広がろうとしている。
食品、医薬品、雑貨の包装には、各種のプラスチックフィルムを用いた包装袋が多く使用されており、例えばレトルト用パウチ等に、ヒートシール性を有するフィルムが使用されている。しかし、二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた包装材料はその優れた機械的特性が災いして、引裂開封性が悪いという問題点を有している。
【0003】
開封する際の引裂開封性が悪いことから、手で容易に開封することができなかったり、場合によっては、内容物が飛散し衣類を汚したりする等のトラブルがある。
また、粉体の包装用として、帯電防止性能を備えたプラスチックフィルムを用いた包装袋が多く用いられているが、手切れ性が悪いことから、内容物が飛散しトラブルとなるケースがある。
これらのトラブルを改良するための手段が提案されているものの、不十分であるのが現状である(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−68312号公報
【特許文献2】
特開2001−315283号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、二軸延伸ポリエステルフィルムの優れた、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を損なうことなく、引裂開封性を向上し、意匠性も高めることもでき、かつ低コストで生産できる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)とポリエステル層(B層)とからなる積層フィルムであり、A層の融点が240℃以下であり、かつB層の融点が245℃以上であり、積層フィルムの引張破断強度が40〜220MPaであることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)と、ポリエステル層(B層)とから構成される。
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボンと酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0009】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンー2、6ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
共重合ポリエチレンテレフタレートは、酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸、グリコール成分がエチレングリコールからなるポリエステルで代表され、公知の製法、すなわちテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールからのエステル交換法、テレフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合して得られるものであるが、他の共重合成分を共重合することができる。
【0010】
他の共重合成分として酸成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸等を例示することができる。またアルコール成分としてはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を例示することができる。これらは単独あるいは2種以上を使用することができる。
【0011】
さらに共重合成分の割合は、ポリエステルフィルムにしたときA層の融点が240℃以下、好ましくは215〜235℃の範囲となる割合で、例えばポリエステルフィルムのA層における全ジカルボン成分中のイソフタル酸成分の割合を1〜20モル%、さらには5〜15モル%の範囲にするのがよい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、平均粒径3.0μm以下の微粒子を含有することが、フィルムの巻上げ工程および印刷加工工程での作業性を向上させる上で望ましい。この微粒子は有機系、無機系の如何を問わず、例として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン、および架橋高分子微粉体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
この際、配合する微粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。2成分以上用いる場合は、それらの全体の平均粒径および含有量が上記した範囲内であればよい。原料ポリエステルに対する前記各粒子の配合方法は、特に限定されないが、例えばポリエステルの重合工程に各粒子を添加する方法または原料ポリエステルと各粒子を溶融混練する方法などが好適である。
【0013】
本発明におけるポリエステルフィルムは上記した共重合ポリエチレンテレフタレートを含有するポリエステル原料と、ポリエステル原料とを別々のエクストルーダーに代表される周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いでスリット状のダイより溶融ポリマーを押出しながら積層し、回転冷却ドラム状でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してフィルム化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。本発明においては、包装材料として十分な寸法安定性、腰を得るため延伸倍率を面積倍率として15倍以上とし、熱固定温度は200℃以上であることが好ましい。熱固定温度が低すぎると製品フィルムの熱収縮率が大きくなり、ラミネート等の包装加工時に寸法変化が大きくなってしまい包装材料として適さない。フィルムの熱収縮率は150℃30分間における値で10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムは引張破断強度が40〜220MPaである。引張破断強度が220MPaを超えるとフィルムの引裂性が損なわれ、引張破断強度が小さすぎると加工時に破断したりして包装材料として適さない。
本発明のポリエステルフィルムのフィルムヘーズ値は、通常10%以下、好ましくは7%以下である。ヘーズ値が10%を超えるとフィルムの透明性が損なわれることがあり、包装材料として適さないものとなるおそれがある。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは通常6〜38μm、好ましくは9〜25μmであり、A層の厚みは全体の厚みに対し50〜80%にすることが好ましい。厚みが薄いと腰が弱くなって加工時にシワになったり、破断したりして包装材料として適さない。また、A層の厚みを厚くしすぎると引裂強度が大きくなり、包装材料として適さないことがある。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0016】
(1)フィルム厚み
フィルムを10枚重ねてマイクロメータ法にて厚さを測定し10で除して平均値を求めフィルム厚みとした。
【0017】
(2)融点
融点(Tm)の測定はパーキンエルマー性示差走査カロリーメーターDSC7型を用いて測定した。DSC測定条件は以下のとおりである。すなわち、試料フィルム6mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融保持した後、液体窒素にて急冷した。急冷試料を0℃より10℃/分の速度で昇温し、融点を検知した。
【0018】
(3)引張破断強度
(株)インテスコ製引張り試験機モデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において長さ(チャック間)50mm、幅15mmの試料フィルムを200mm/分の歪み速度で引張り、フィルム破断時の荷重を測定し、下記式により引張破断強度を求めた。
引張破断強度(MPa)=切断時の荷重(N)/試料フィルムの断面積(mm2)
【0019】
(4)収縮率
フィルムを長さ方向および幅方向に35mm幅×1000mm長の短冊状にサンプルを切り出し無張力状態にて150℃に設定されたオーブン(タバイエスペック(株)製:熱風循環炉)中に30分間熱処理を行い、熱処理前後の長さを直尺により測定し、下記式にて熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=[(a−b)/a] × 100
(上記式中、aは熱処理前のサンプルの長さ(mm)、bは熱処理後のサンプルの長さ(mm)を表す)
【0020】
(5)ヘーズ
JIS K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムのヘーズを測定した。
【0021】
(6)引裂性
フィルムに切れ込みを入れずに、スムーズに手で引き裂けるかどうか下記基準で評価した。評価は長手方向(MD)および幅方向(TD)に対して、それぞれ行った。
評価A:容易に手で引き裂くことができるもの
評価B:比較的容易には手で引き裂くことができるもの
評価C:容易には手で引き裂くことができないもの
【0022】
実施例1
(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPAco−PET)の製造)
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の重縮合で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は15モル%であった。融点(Tm)=220℃、ガラス転移温度(Tg)=74.2℃、固有粘度([η])=0.69であった。
(ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の重縮合で製造した。融点(Tm)=254℃、ガラス転移温度(Tg)=75.2℃、固有粘度([η])=0.70であった。
(ポリブチレンテレフタレート(PBT)の製造)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオールをそれぞれ使用し、常法の重縮合で製造した。融点(Tm)=225℃、ガラス転移温度(Tg)=37.2℃、固有粘度([η])=1.05であった。
【0023】
(積層フィルムの製造)
IPAco−PETのペレットとPETのペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用いPET(B層)/IPAco−PET(A層)/PET(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。
次いで、80℃にて縦方向に3.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て90℃で4.0倍、横延伸、230℃で10秒間の熱処理を行い、厚さ12μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0024】
実施例2
A層中のジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分のモル比を6%になるように変更した以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0025】
実施例3
A層中のジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分のモル比を3%とし、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を30重量%含有させた以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0026】
実施例4
テンター内の熱処理温度を210℃にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0027】
実施例5
ポリエステルフィルムの厚みを20μmにした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0028】
比較例1
A層中のジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分のモル比を3%にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0029】
比較例2
テンター内の熱処理温度を190℃にした以外は実施例と同じような操作を繰り返した。得られたフォルムの特性を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を損なうことなく、引裂開封性を向上し、意匠性も高めることもでき、かつ低コストで生産できる積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、引裂性に優れ、かつ、優れた機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を有し、菓子、スープ、漬物、レトルトパウチなどの食品をはじめ、医薬品、日用品等の包装材料や各種工業用として有用なポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、電気的特性、耐薬品性、寸法安定性等の点から、情報記録材料、コンデンサー用、包装用、製版用、電絶用、写真フィルム用等、多くの分野で基材として用いられている。
近年、かかるポリエステルフィルムの有する優れた特性を生かし各種包装用フィルムとして用いられており、また環境問題の重要性に関する認識が高まる中、特にポリエステルフィルムはその廃棄処理時に環境汚染を抑制できることから今後さらにその利用範囲は広がろうとしている。
食品、医薬品、雑貨の包装には、各種のプラスチックフィルムを用いた包装袋が多く使用されており、例えばレトルト用パウチ等に、ヒートシール性を有するフィルムが使用されている。しかし、二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた包装材料はその優れた機械的特性が災いして、引裂開封性が悪いという問題点を有している。
【0003】
開封する際の引裂開封性が悪いことから、手で容易に開封することができなかったり、場合によっては、内容物が飛散し衣類を汚したりする等のトラブルがある。
また、粉体の包装用として、帯電防止性能を備えたプラスチックフィルムを用いた包装袋が多く用いられているが、手切れ性が悪いことから、内容物が飛散しトラブルとなるケースがある。
これらのトラブルを改良するための手段が提案されているものの、不十分であるのが現状である(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−68312号公報
【特許文献2】
特開2001−315283号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、二軸延伸ポリエステルフィルムの優れた、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を損なうことなく、引裂開封性を向上し、意匠性も高めることもでき、かつ低コストで生産できる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)とポリエステル層(B層)とからなる積層フィルムであり、A層の融点が240℃以下であり、かつB層の融点が245℃以上であり、積層フィルムの引張破断強度が40〜220MPaであることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)と、ポリエステル層(B層)とから構成される。
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボンと酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0009】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンー2、6ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
共重合ポリエチレンテレフタレートは、酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸、グリコール成分がエチレングリコールからなるポリエステルで代表され、公知の製法、すなわちテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールからのエステル交換法、テレフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合して得られるものであるが、他の共重合成分を共重合することができる。
【0010】
他の共重合成分として酸成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸等を例示することができる。またアルコール成分としてはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を例示することができる。これらは単独あるいは2種以上を使用することができる。
【0011】
さらに共重合成分の割合は、ポリエステルフィルムにしたときA層の融点が240℃以下、好ましくは215〜235℃の範囲となる割合で、例えばポリエステルフィルムのA層における全ジカルボン成分中のイソフタル酸成分の割合を1〜20モル%、さらには5〜15モル%の範囲にするのがよい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、平均粒径3.0μm以下の微粒子を含有することが、フィルムの巻上げ工程および印刷加工工程での作業性を向上させる上で望ましい。この微粒子は有機系、無機系の如何を問わず、例として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン、および架橋高分子微粉体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
この際、配合する微粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。2成分以上用いる場合は、それらの全体の平均粒径および含有量が上記した範囲内であればよい。原料ポリエステルに対する前記各粒子の配合方法は、特に限定されないが、例えばポリエステルの重合工程に各粒子を添加する方法または原料ポリエステルと各粒子を溶融混練する方法などが好適である。
【0013】
本発明におけるポリエステルフィルムは上記した共重合ポリエチレンテレフタレートを含有するポリエステル原料と、ポリエステル原料とを別々のエクストルーダーに代表される周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いでスリット状のダイより溶融ポリマーを押出しながら積層し、回転冷却ドラム状でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してフィルム化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。本発明においては、包装材料として十分な寸法安定性、腰を得るため延伸倍率を面積倍率として15倍以上とし、熱固定温度は200℃以上であることが好ましい。熱固定温度が低すぎると製品フィルムの熱収縮率が大きくなり、ラミネート等の包装加工時に寸法変化が大きくなってしまい包装材料として適さない。フィルムの熱収縮率は150℃30分間における値で10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムは引張破断強度が40〜220MPaである。引張破断強度が220MPaを超えるとフィルムの引裂性が損なわれ、引張破断強度が小さすぎると加工時に破断したりして包装材料として適さない。
本発明のポリエステルフィルムのフィルムヘーズ値は、通常10%以下、好ましくは7%以下である。ヘーズ値が10%を超えるとフィルムの透明性が損なわれることがあり、包装材料として適さないものとなるおそれがある。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは通常6〜38μm、好ましくは9〜25μmであり、A層の厚みは全体の厚みに対し50〜80%にすることが好ましい。厚みが薄いと腰が弱くなって加工時にシワになったり、破断したりして包装材料として適さない。また、A層の厚みを厚くしすぎると引裂強度が大きくなり、包装材料として適さないことがある。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0016】
(1)フィルム厚み
フィルムを10枚重ねてマイクロメータ法にて厚さを測定し10で除して平均値を求めフィルム厚みとした。
【0017】
(2)融点
融点(Tm)の測定はパーキンエルマー性示差走査カロリーメーターDSC7型を用いて測定した。DSC測定条件は以下のとおりである。すなわち、試料フィルム6mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融保持した後、液体窒素にて急冷した。急冷試料を0℃より10℃/分の速度で昇温し、融点を検知した。
【0018】
(3)引張破断強度
(株)インテスコ製引張り試験機モデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において長さ(チャック間)50mm、幅15mmの試料フィルムを200mm/分の歪み速度で引張り、フィルム破断時の荷重を測定し、下記式により引張破断強度を求めた。
引張破断強度(MPa)=切断時の荷重(N)/試料フィルムの断面積(mm2)
【0019】
(4)収縮率
フィルムを長さ方向および幅方向に35mm幅×1000mm長の短冊状にサンプルを切り出し無張力状態にて150℃に設定されたオーブン(タバイエスペック(株)製:熱風循環炉)中に30分間熱処理を行い、熱処理前後の長さを直尺により測定し、下記式にて熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=[(a−b)/a] × 100
(上記式中、aは熱処理前のサンプルの長さ(mm)、bは熱処理後のサンプルの長さ(mm)を表す)
【0020】
(5)ヘーズ
JIS K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムのヘーズを測定した。
【0021】
(6)引裂性
フィルムに切れ込みを入れずに、スムーズに手で引き裂けるかどうか下記基準で評価した。評価は長手方向(MD)および幅方向(TD)に対して、それぞれ行った。
評価A:容易に手で引き裂くことができるもの
評価B:比較的容易には手で引き裂くことができるもの
評価C:容易には手で引き裂くことができないもの
【0022】
実施例1
(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPAco−PET)の製造)
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の重縮合で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は15モル%であった。融点(Tm)=220℃、ガラス転移温度(Tg)=74.2℃、固有粘度([η])=0.69であった。
(ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の重縮合で製造した。融点(Tm)=254℃、ガラス転移温度(Tg)=75.2℃、固有粘度([η])=0.70であった。
(ポリブチレンテレフタレート(PBT)の製造)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分として1,4−ブタンジオールをそれぞれ使用し、常法の重縮合で製造した。融点(Tm)=225℃、ガラス転移温度(Tg)=37.2℃、固有粘度([η])=1.05であった。
【0023】
(積層フィルムの製造)
IPAco−PETのペレットとPETのペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用いPET(B層)/IPAco−PET(A層)/PET(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。
次いで、80℃にて縦方向に3.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て90℃で4.0倍、横延伸、230℃で10秒間の熱処理を行い、厚さ12μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
【0024】
実施例2
A層中のジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分のモル比を6%になるように変更した以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0025】
実施例3
A層中のジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分のモル比を3%とし、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を30重量%含有させた以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0026】
実施例4
テンター内の熱処理温度を210℃にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0027】
実施例5
ポリエステルフィルムの厚みを20μmにした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0028】
比較例1
A層中のジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分のモル比を3%にした以外は実施例1と同じような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0029】
比較例2
テンター内の熱処理温度を190℃にした以外は実施例と同じような操作を繰り返した。得られたフォルムの特性を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度、透明性、耐熱性、寸法安定性、ガスバリアー性、耐油性、耐溶剤性を損なうことなく、引裂開封性を向上し、意匠性も高めることもでき、かつ低コストで生産できる積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
Claims (2)
- 共重合ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル原料からなる層(A層)とポリエステル層(B層)とからなる積層フィルムであり、A層の融点が240℃以下であり、かつB層の融点が245℃以上であり、積層フィルムの引張破断強度が40〜220MPaであることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
- 150℃で30分間熱処理したときの熱収縮率が10%以下であり、ヘーズが10%以下であることを特徴とする請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
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JP2002300429A JP2004136448A (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 積層ポリエステルフィルム |
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JP2002300429A JP2004136448A (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 積層ポリエステルフィルム |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
WO2006016569A1 (ja) * | 2004-08-11 | 2006-02-16 | Mitsubishi Polyester Film Corporation | 二軸延伸ポリエステルフィルム |
JP2007160577A (ja) * | 2005-12-11 | 2007-06-28 | Mitsubishi Polyester Film Copp | 二軸延伸ポリエステルフィルム |
-
2002
- 2002-10-15 JP JP2002300429A patent/JP2004136448A/ja active Pending
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