JP2006016605A - 乳酸系軟質フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】乳酸系樹脂を原料とし、生分解性、透明性、柔軟性、経時的安定性が高く、家庭用ラップフィルムとして好適な生分解性フィルムを提供する。
【解決手段】乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、分子量2,000以下の可塑剤(C)とからなり、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(A)の割合が50〜80質量%、成分(B)の割合が50〜20質量%であり、かつ、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し成分(C)が5〜15質量部配合されてなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、乳酸系樹脂組成物のTgは単一である。さらに、20℃における貯蔵弾性率の値を1〜4GPa、100℃における貯蔵弾性率を10〜100MPa、20℃における損失正接を0.1〜0.8とすれば、家庭用ラップフィルムとして特に好適となる。
【選択図】 なし
【解決手段】乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、分子量2,000以下の可塑剤(C)とからなり、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(A)の割合が50〜80質量%、成分(B)の割合が50〜20質量%であり、かつ、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し成分(C)が5〜15質量部配合されてなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、乳酸系樹脂組成物のTgは単一である。さらに、20℃における貯蔵弾性率の値を1〜4GPa、100℃における貯蔵弾性率を10〜100MPa、20℃における損失正接を0.1〜0.8とすれば、家庭用ラップフィルムとして特に好適となる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、乳酸系樹脂を原料とする乳酸系軟質フィルムであって、生分解性、透明性、柔軟性に優れ、経時的にも安定で、食品包装用途、特に家庭で使用される小巻ラップフィルムとして好適に用いることができる乳酸系軟質フィルムに関する。
プラスチックは今や生活と産業のあらゆる分野に浸透し、全世界の年間生産量は約1億トンにも達している。しかしその一方で、生産量に比例して使用済みプラスチックの処理の問題が大きくなってきている。
従来、使用済みプラスチックの大半は埋め立て等により廃棄処理されてきたが、プラスチックは一般に自然界において長期に渡って安定であり、しかも嵩比重が小さいため、埋立地の短命化を促進し、自然の景観や野生植物の生活環境を損なうなどの問題が生じている。
このようなプラスチック自体が抱える課題に加えて、近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、自然環境に悪影響を及ぼさない生分解性樹脂、即ち、土壌中や水中で加水分解などにより崩壊・分解が進行し、最終的には微生物の作用によって無害な分解物となる生分解性樹脂が注目されている。
このようなプラスチック自体が抱える課題に加えて、近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、自然環境に悪影響を及ぼさない生分解性樹脂、即ち、土壌中や水中で加水分解などにより崩壊・分解が進行し、最終的には微生物の作用によって無害な分解物となる生分解性樹脂が注目されている。
現在実用化されている生分解性樹脂としては、乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル、変性ポリビニルアルコール、セルロースエステル化合物、デンプン変性体やこれらのブレンド体を挙げることができる。
他方、家庭で使用される小巻ラップフィルム(以下、家庭用ラップフィルムともいう)は、カッター刃を具備した紙箱の中に入った形で使用されるのが一般的である。包装する際にラップフィルムを紙箱から引き出し、紙箱に具備されたカッター刃にフィルムを押し当て、カッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、幅方向に引き裂きを伝播させてカットし、カットしたフィルムを容器に盛った食品をオーバーラップするようにして使用する。このカット工程においてフィルムが柔らか過ぎると、フィルムが幅方向にうまく裂けずに伸びてしまったり、或いは斜め方向に引き裂けたりすることがある。また、家庭用ラップフィルムは、主として冷蔵庫や冷凍庫での食品の保存や、電子レンジで加熱する時に使用されることが多い。特に電子レンジでの加熱時にはフィルムの温度が100℃以上高くなることがあり、100℃程度の加熱に十分耐え得る耐熱性を備えていないと、電子レンジでの加熱時にフィルム自体が大きく変形し容器や容器内の食品に密着し過ぎてしまったり、加熱中にフィルムが溶けて孔が空いてしまったりするなどの不具合が生じる可能性がある。
このため、家庭用ラップフィルムには、透明性は勿論であるが、紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装・保存・加熱時における適度の弾性、さらには、電子レンジでの加熱中にも溶融穿孔が生じたり、大きな変形や容器への密着、それ自身の変質等が生じない耐熱性等の特殊な物性が求められる。
このため、家庭用ラップフィルムには、透明性は勿論であるが、紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装・保存・加熱時における適度の弾性、さらには、電子レンジでの加熱中にも溶融穿孔が生じたり、大きな変形や容器への密着、それ自身の変質等が生じない耐熱性等の特殊な物性が求められる。
現在市販されている家庭用ラップフィルムには、延伸したポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするフィルムのほか、押出しキャストしたポリエチレン系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂等を主成分とするフィルムなどが知られている。これらは生分解性を備えたものではないが、最近では、生分解性樹脂材料を用いた軟質フィルムの提案も為されている。例えば、透明で硬質材料である乳酸系樹脂に可塑剤を添加し、フィルムを軟質化する提案などが開示されている(特許文献1〜特許文献4等)。しかし、これらのフィルムは、可塑剤のブリードや脆化等の経時的な変化を生じるため、実用特性を十分に備えていとは言い難かった。
また、特許文献5には、柔軟性を与える可塑剤が安定的に生分解性樹脂の中に留まり、高温時などの過酷な条件でも柔軟性を維持する生分解性フィルムを提供すべく、可塑剤を含有する生分解性樹脂のフィルムの両面に可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層を形成することを特徴とする柔軟化生分解性延伸フィルムが提案されている。このフィルムは、両面に可塑剤の飛散、滲出を抑制する薄膜層が形成されるため、経時的なブリードは抑えられるが、アクリル系ポリマーからなる薄膜層を備えているため生分解性には劣るものであった。
さらにまた、ポリ乳酸と柔軟な性質を有するポリマーとのブレンド或いは共重合化による軟質化の提案も為されている。例えば非特許文献1には、ポリ乳酸と、ジカルボン酪酸と、カプロラクトンとのブレンド体について記載されている。しかし、このブレンド体は、分子的スケールで非相容性であるため、ポリカプロラクトンのブレンド比率を高めるに伴って、柔軟性は改善されるものの耐熱性が損なわれ、柔軟性と耐熱性が共に満足されるものではなかった。
また、特許文献6及び特許文献7には、ポリ乳酸とジカルボン成分からなるポリエステルとのブレンド或いは共重合化に関する提案がなされている。
そのうちの特許文献6には、ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートのブレンド或いはエステル交換触媒による共重合化について記載されているが、ポリエチレンテレフタレートは融点が高く、ポリ乳酸との溶融ブレンド或いは共重合化を高温で行う必要があるため、ポリ乳酸の一部が分解され、そのブレンド物或いは共重合体は、着色が強く悪臭があり、不透明で、しかも分子量が低いために柔軟性が不十分で機械的性質が低く、生分解性にも劣るという課題を抱えていた。
他方の特許文献7には、ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とからなるポリエステルブレンド物について記載されているが、そのポリエステルは分子量が低いため、家庭用ラップフィルムに求められる柔軟性、機械的性質、耐熱性及び良好な成形加工性が得られないという課題を抱えていた。
そのうちの特許文献6には、ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートのブレンド或いはエステル交換触媒による共重合化について記載されているが、ポリエチレンテレフタレートは融点が高く、ポリ乳酸との溶融ブレンド或いは共重合化を高温で行う必要があるため、ポリ乳酸の一部が分解され、そのブレンド物或いは共重合体は、着色が強く悪臭があり、不透明で、しかも分子量が低いために柔軟性が不十分で機械的性質が低く、生分解性にも劣るという課題を抱えていた。
他方の特許文献7には、ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とからなるポリエステルブレンド物について記載されているが、そのポリエステルは分子量が低いため、家庭用ラップフィルムに求められる柔軟性、機械的性質、耐熱性及び良好な成形加工性が得られないという課題を抱えていた。
さらに特許文献8には、ポリ乳酸とポリカプロラクトンとの共重合体についての提案がなされている。ポリ乳酸とポリカプロラクトンとの共重合体は、柔軟性については比較的良好であるが、耐熱性が低く不透明であり、使用上かなりの制約を受けるという課題を抱えていた。
本発明の目的は、ブリード等の経時的な問題を起こすことがなく、生分解性、柔軟性、透明性に優れ、特に家庭用ラップフィルムとして好適に用いることができる乳酸系軟質フィルムを提供することにある。
本発明は、乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、分子量2,000以下の可塑剤(C)とを含み、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(A)の割合が50〜80質量%であり、成分(B)の割合が50〜20質量%であり、かつ、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し成分(C)が5〜15質量部配合されてなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、当該乳酸系樹脂組成物は、示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる乳酸系樹脂組成物であることを特徴とする乳酸系軟質フィルムを提案する。
ここで、「示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる」は、「歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する」と表現することができる。
ここで、「示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる」は、「歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する」と表現することができる。
本発明の乳酸系軟質フィルムは、乳酸系樹脂(A)と乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)とをポリマーブレンドすることによってフィルムを軟質化すると共に、可塑剤(C)の添加によってさらにフィルムを軟質化するものであるため、透明性及び生分解性を損なうことなく軟質化が可能である。しかも、乳酸系樹脂(A)と共重合体(B)との完全相溶ポリマーブレンド系に可塑剤(C)を添加するため、ブリードアウトが生じ易い低分子量の可塑剤であっても、ブリードアウト等の経時的な問題を生じないという特質を備えている。
本発明の乳酸系軟質フィルムにおいては、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて動的粘弾性測定法により測定した20℃における貯蔵弾性率の値が1GPa〜4GPaであり、100℃における貯蔵弾性率の値が10MPa〜100MPaであり、20℃における損失正接の値が0.1〜0.8であるものがより好ましい。かかる物性要件は、家庭用ラップフィルムとして好ましい物性であり、かかる物性要件を備えた乳酸系軟質フィルムは、家庭用ラップフィルムとして特に優れている。
なお、本発明において「主成分」と表現した場合、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものであり、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分が主成分である場合には、その合計量)は組成物中の50質量%、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるのが普通である。
また、本明細書において「○〜△」と表現した場合には、特にことわらない限り、○以上△以下の意を示す。
さらにまた、本発明における数値範囲の上限値及び下限値に関しては、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含する。
また、本明細書において「○〜△」と表現した場合には、特にことわらない限り、○以上△以下の意を示す。
さらにまた、本発明における数値範囲の上限値及び下限値に関しては、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含する。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明が提案する乳酸系軟質フィルムの主成分は、上述のように、乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、分子量2,000以下の可塑剤(C)とからなる乳酸系樹脂組成物である。
本発明に用いる乳酸系樹脂(A)と乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)とは、完全相溶ポリマーブレンドをなす組合わせである特徴を有する。すなわち、成分(A)と成分(B)とを混合してなるポリマーブレンド組成物は、示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる組合わせのものである。
(成分A)
乳酸系樹脂(成分(A))としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいから、ポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低いポリ乳酸、例えばポリ(D−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を使用するのが好ましい。
但し、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものである。
乳酸系樹脂(成分(A))としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいから、ポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低いポリ乳酸、例えばポリ(D−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を使用するのが好ましい。
但し、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものである。
上記混合体としての乳酸系樹脂は、D乳酸(D体)とL乳酸(L体)との構成比が、L体:D体=100:0〜90:10、もしくは、L体:D体=0:100〜10:90であることが好ましい。D体とL体との構成比が、この範囲内であれば、得られる成形品の耐熱性が高く、用途が制限されることがない。中でも好ましくは、L体:D体=99.5:0.5〜94:6、もしくは、L体:D体=0.5:99.5〜6:94である。
この場合も、可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいから、好ましくはL体:D体=50:50〜94:6である。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数の乳酸系樹脂のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにすればよい。L体とD体のホモポリマーと、共重合体をブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
この場合も、可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいから、好ましくはL体:D体=50:50〜94:6である。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数の乳酸系樹脂のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにすればよい。L体とD体のホモポリマーと、共重合体をブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法、その他公知の重合方法を採用することができる。例えば縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、任意の結晶性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
本発明に用いられる乳酸系樹脂は、重量平均分子量が5万〜40万の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10万〜25万の範囲である。乳酸系樹脂の重量平均分子量が5万以上であれば機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎて成形加工性が劣るようになることがない。
(成分B)
次に、成分(B)である乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体について説明する。
次に、成分(B)である乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体について説明する。
成分(B)を構成する乳酸系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれかであればよいが、成分(A)の主成分をなす乳酸系樹脂の構造単位と同じ構造のものが特に好ましい。
他方、ジオール・ジカルボン酸におけるジオール成分としては、特に限定するものではないが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖状ジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の分岐鎖状ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールを挙げることができ、中でもポリプロピレングリコールが好ましい。
また、ジオール・ジカルボン酸におけるジカルボン酸成分としては、特に限定するものではないが、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の直鎖状ジカルボン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、エチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、2−エチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−エチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、2−エチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−エチルアジピン酸、メチルグルタル酸等の分岐状ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、ビスフェノールA、ビフェノール等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、中でもコハク酸が好ましい。
よって、成分(B)を構成する乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体としては、乳酸系樹脂と(ポリ)プロピレングリコールとコハク酸との共重合体が最も好ましい一例である。
よって、成分(B)を構成する乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体としては、乳酸系樹脂と(ポリ)プロピレングリコールとコハク酸との共重合体が最も好ましい一例である。
また、上記に挙げた種類の成分(B)の中でも、乳酸系樹脂(A)を軟質化する効果の点から、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する共重合体であるのが、好ましい(図1−図6参照)。以下、この点について詳述する。
ここで、損失正接の極大値が2つ存在する共重合体を「Aタイプ」と称し、損失正接の極大値が1つ存在する共重合体を「Bタイプ」と称することとする。
図1−図6の測定試験において、Aタイプの共重合体として、大日本インキ化学工業(株)製商品名“プラメートPD−150”(乳酸系樹脂/セバシン酸−ポリプロピレングリコール共重合体=51/49wt%、重量平均分子量=9.81×104、分子量分布=1.91)を用い、Bタイプの共重合体として、大日本インキ化学工業(株)製商品名“プラメートPD−350”(乳酸系樹脂/コハク酸−ポリプロピレングリコール共重合体=52/48wt%、重量平均分子量=5.98×104、分子量分布=1.82)を用いた。
なお、乳酸系樹脂については、図1−6の測定試験のうち、図3についてはNatureWorks 4060(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D−乳酸=87:13)を用い、他の図については、NatureWorks 4032D(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D−乳酸=98.6:1.4)を用いたが、図3についてNatureWorks 4032Dを用いても同様の結果となる。
図1−図6の測定試験において、Aタイプの共重合体として、大日本インキ化学工業(株)製商品名“プラメートPD−150”(乳酸系樹脂/セバシン酸−ポリプロピレングリコール共重合体=51/49wt%、重量平均分子量=9.81×104、分子量分布=1.91)を用い、Bタイプの共重合体として、大日本インキ化学工業(株)製商品名“プラメートPD−350”(乳酸系樹脂/コハク酸−ポリプロピレングリコール共重合体=52/48wt%、重量平均分子量=5.98×104、分子量分布=1.82)を用いた。
なお、乳酸系樹脂については、図1−6の測定試験のうち、図3についてはNatureWorks 4060(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D−乳酸=87:13)を用い、他の図については、NatureWorks 4032D(カーギル・ダウ社製、L−乳酸:D−乳酸=98.6:1.4)を用いたが、図3についてNatureWorks 4032Dを用いても同様の結果となる。
図1は、ポリ乳酸、並びに、2つのタイプ(Aタイプ、Bタイプ)の乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体について、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した貯蔵弾性率の温度依存性を示した図であり、図2は、それらの損失正接(tanδ)の温度依存性を示した図である。
また、図3は、乳酸系樹脂(A)とAタイプの共重合体(B)とを、質量比で(A):(B)=80:20の割合でドライブレンドした後、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融押出し、60℃に温度調節したキャストにて急冷することによって成形したシートと、前記乳酸系樹脂(ポリ乳酸)(A)のみから前記と同条件で成形したシートについて、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した貯蔵弾性率と損失正接の温度依存性を示した図であり、
図4は、乳酸系樹脂(A)とBタイプの共重合体(B)とを、質量比で(A):(B)=80:20の割合でドライブレンドした後、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融押出し、40℃に温度調節したキャストにて急冷することによって成形したシートと、前記の乳酸系樹脂(ポリ乳酸)(A)のみから同条件で成形したシートについて、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した貯蔵弾性率と損失正接の温度依存性を示した図である。
図4は、乳酸系樹脂(A)とBタイプの共重合体(B)とを、質量比で(A):(B)=80:20の割合でドライブレンドした後、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融押出し、40℃に温度調節したキャストにて急冷することによって成形したシートと、前記の乳酸系樹脂(ポリ乳酸)(A)のみから同条件で成形したシートについて、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した貯蔵弾性率と損失正接の温度依存性を示した図である。
図3及び図4の結果より、損失正接の極大値が2つ存在する共重合体(:Aタイプ)をブレンドしても乳酸系樹脂のガラス転移温度の低下による軟質化は図れないが、損失正接の極大値が1つ存在する共重合体(Bタイプ)をブレンドすることにより、乳酸系樹脂のガラス転移温度の低下による軟質化を図ることができる。これより、成分(B)としては、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する共重合体(Bタイプ)が好ましいと言える。
ところで、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を挙げることができる。一般的に、共重合体の構造がブロック共重合体の場合には、前記条件にて測定した損失正接の極大値が2つ存在するタイプ(;Aタイプ)となり(図5参照)、また、共重合体の構造がランダム共重合体の場合には、同条件にて測定した損失正接の極大値が1つ存在するタイプ(;Bタイプ)となる(図6参照)から、成分(B)の構造としては、ランダム共重合体であるのが好ましい。
成分(B)を構成する共重合体において、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との含有比率は、20℃における貯蔵弾性率、100℃における貯蔵弾性率、20℃における損失正接の値が所望する範囲になるように調整するのが好ましい。その目安としては、乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)との質量割合(A):(B)が10:90〜40:60、特に10:90〜30:70となるようにするのが好ましい。
なお、成分(B)を構成する共重合体は、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用いて所定の分子量に調整することが可能である。ただし、加工性、耐久性の面から乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体の重量平均分子量は5万〜30万の範囲が好ましく、10万〜25万の範囲のものがより好ましい。
共重合体の製造方法に関しては特に限定するものではないが、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合或いはエステル交換反応させて得る方法や、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、乳酸系樹脂と脱水・脱グリコール縮合或いはエステル交換反応する方法などを挙げることができる。
本発明において、成分(A)と成分(B)は、両者のポリマーブレンド体(混合樹脂組成物)が完全相溶する、すなわち、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となることが重要であり、中でも当該ガラス転移温度が0℃〜30℃、特に20℃〜30℃の範囲となるものが好ましい。
よって、成分(B)として用いる乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体は、上記説明した範囲内で、成分(A)と完全相溶するものを選択して用いることが重要である。
よって、成分(B)として用いる乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体は、上記説明した範囲内で、成分(A)と完全相溶するものを選択して用いることが重要である。
ここで、混合樹脂組成物のガラス転移温度が単一であるとは、混合樹脂組成物をJIS K7121に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計を用いてガラス転移温度を測定した際に、ガラス転移温度を示すピークが1つだけ現れるという意味である。別の観点から見れば、前記混合樹脂組成物を、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した際に、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するという意味である。
混合樹脂組成物のガラス転移温度(或いは損失正接の極大値)が単一であるということは、成分(A)と成分(B)とがナノメートルオーダー(分子レベル)で相溶した状態にあることを意味し、非相溶のポリマーブレンドでは得られないレベルの透明性を得ることができる。
また、該ガラス転移温度が0℃〜30℃の範囲内にあることにより、実使用環境温度下においてフィルムが硬すぎることが無く、適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができるようになるから、特に家庭用ラップフィルムとして好適である。
混合樹脂組成物のガラス転移温度(或いは損失正接の極大値)が単一であるということは、成分(A)と成分(B)とがナノメートルオーダー(分子レベル)で相溶した状態にあることを意味し、非相溶のポリマーブレンドでは得られないレベルの透明性を得ることができる。
また、該ガラス転移温度が0℃〜30℃の範囲内にあることにより、実使用環境温度下においてフィルムが硬すぎることが無く、適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができるようになるから、特に家庭用ラップフィルムとして好適である。
本発明の乳酸系樹脂組成物において、成分(A)と成分(B)の合計分子量は10万以上であることが好ましい。そのためには、分子量の高い成分(A)をブレンドすることにより全体の分子量を高めることが好ましく、合計分子量は10万以上であればラップフィルムを製膜し易くすることができる。
成分(A)と成分(B)の配合量は、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(A)の割合が50〜80質量%で、成分(B)の割合が50〜20質量%であることが重要である。
乳酸系樹脂組成物において、成分(B)の割合を多くすれば透明性を損なうことなく柔軟性を付与することが可能であるが、成分(B)の割合が多くなると、重量平均分子量が低下して10万以下となる場合があり、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が発現されないことが考えられる。また、成分(B)の割合が多くなると溶融粘度が低くなり、成形加工性が低下するようになる。これらの点からすると、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(B)の割合は50質量%を上限とする必要があり、40質量%以下とするのがより好ましい。その一方、成分(B)の割合が少ないと、可塑化効果が低下して柔軟性に乏しいフィルムとなるため、この点から成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(B)の割合は20質量%を下限とする必要があり、30質量%以上とするのがより好ましい。
乳酸系樹脂組成物において、成分(B)の割合を多くすれば透明性を損なうことなく柔軟性を付与することが可能であるが、成分(B)の割合が多くなると、重量平均分子量が低下して10万以下となる場合があり、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が発現されないことが考えられる。また、成分(B)の割合が多くなると溶融粘度が低くなり、成形加工性が低下するようになる。これらの点からすると、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(B)の割合は50質量%を上限とする必要があり、40質量%以下とするのがより好ましい。その一方、成分(B)の割合が少ないと、可塑化効果が低下して柔軟性に乏しいフィルムとなるため、この点から成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(B)の割合は20質量%を下限とする必要があり、30質量%以上とするのがより好ましい。
(成分C)
次に、成分(C)としての可塑剤について説明する。
次に、成分(C)としての可塑剤について説明する。
成分(A)と成分(B)だけでも、成分(B)の割合を多くすれば透明性を損なうことなくフィルムを柔軟化することはできるが、成分(B)の割合が多くなると、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が低下したり、溶融粘度が低くなって成形加工性が低下することがあるため、本発明では、分子量2,000以下の可塑剤を配合することとした。成分(B)と成分(C)は互いの課題を補う関係にあり、可塑剤の配合によって重量平均分子量及び溶融粘度を維持できる一方、成分(B)によって可塑剤のブリードアウトを防ぐことができる。
可塑剤は、乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる機能を備えたものであるが、本発明で用いる可塑剤としては、相溶性や生分解性の観点から、下記(A)〜(I)に示す化合物の中から選ばれる分子量2,000以下の1種或いは2種類以上の組合わせからなるものが好ましく、なかでも特に下記(F)が好ましい。
可塑剤の分子量が1,000以下、例えば500〜1,000であっても本発明の組成においてはブリードアウトの発生を抑えることができることが特徴である。
可塑剤の分子量が1,000以下、例えば500〜1,000であっても本発明の組成においてはブリードアウトの発生を抑えることができることが特徴である。
(A)H6C3(OH)3-n(OOCCH3)n (但し、0<n≦3)
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテ−トであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(B)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(C)エチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(D)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(E)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えば、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
(F)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)、中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
具体的には、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。
(G)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)。
例えば、クエン酸トリメチルエステル等が挙げられる。
(H)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテ−トであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(B)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(C)エチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(D)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(E)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えば、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
(F)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)、中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
具体的には、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。
(G)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)。
例えば、クエン酸トリメチルエステル等が挙げられる。
(H)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。
可塑剤の配合量は、乳酸系樹脂組成物において(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し成分(C)が3〜15質量部、特に5〜10質量部となるように配合するのが好ましい。
乳酸系樹脂組成物において可塑剤の割合が多くなれば、透明性を損なうことなく柔軟性を付与することはできるが、経時的に可塑剤が表面に移行してきて表面がベトつくようになるブリードアウト等の問題を生じるようになる。その一方、可塑剤の量が少ないと、柔軟性に乏しいフィルムとなり、成分(B)の割合を高める必要が生じてしまう。よって、可塑剤の配合量は上記範囲とするのが重要である。
乳酸系樹脂組成物において可塑剤の割合が多くなれば、透明性を損なうことなく柔軟性を付与することはできるが、経時的に可塑剤が表面に移行してきて表面がベトつくようになるブリードアウト等の問題を生じるようになる。その一方、可塑剤の量が少ないと、柔軟性に乏しいフィルムとなり、成分(B)の割合を高める必要が生じてしまう。よって、可塑剤の配合量は上記範囲とするのが重要である。
(乳酸系軟質フィルム)
本発明が提案する乳酸系軟質フィルムは、次のA−1〜2及びB−1の物性要件を備えたものであるのが好ましい。
本発明が提案する乳酸系軟質フィルムは、次のA−1〜2及びB−1の物性要件を備えたものであるのが好ましい。
A−1:JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひず み0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値が1GPa〜4GPaの 範囲にある。
A−2:100℃における貯蔵弾性率の値が10MPa〜100MPaの範囲にある。
B−1:20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸 系軟質フィルムである。
A−2:100℃における貯蔵弾性率の値が10MPa〜100MPaの範囲にある。
B−1:20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸 系軟質フィルムである。
A−1〜2及びB−1の物性要件は、家庭用ラップフィルムの指標として好適な物性であり、このような物性値を備えた乳酸系軟質フィルムであれば、生分解性や透明性のほか、家庭用ラップフィルムとして必要な性質、例えば紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装・保存・加熱時における適度の弾性、電子レンジでの加熱中にも溶融穿孔が生じたり、大きな変形や容器への密着、それ自身の変質等が生じない耐熱性を備え、家庭用ラップフィルムの用途に好適に用いることができる。したがって、A−1〜2及びB−1は、本発明の用途を特定する物性要件の意でもある。この点について次に詳述する。
家庭用ラップフィルムは、カッター刃を具備した紙箱の中に入った形で使用されるのが一般的である。包装する際には、ラップフィルムを紙箱から引き出し、紙箱に具備されたカッター刃に押し当て、カッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、幅方向に引き裂きを伝播させてカットし、カットしたフィルムを容器に盛った食品をオーバーラップするようにして使用するのが一般的である。そのため、このカット工程においてフィルムが柔らかいと、フィルムが幅方向にうまく裂けずに伸びてしまったり、あるいは斜め方向に引き裂けたりすることがあるが、上記A−1の貯蔵弾性率の値が1GPa以上であれば、ラップが適当なコシを備えるため、フィルムをカットする際に幅方向にうまく裂くことができる。他方、20℃における貯蔵弾性率の値が4GPa以下であればフィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
また、家庭用ラップフィルムは、主として冷蔵庫や冷凍庫での食品の保存用や、電子レンジでの加熱用に使用されることが多い。特に電子レンジでの加熱時にはフィルムの温度が100℃以上高くなることがあり、ラップフィルムが耐熱性を備えていないと、電子レンジでの加熱用に使用するとフィルム自体が大きく変形し容器や中にある食品に密着しすぎてしまうような不具合や、加熱中にフィルムが溶けて孔が空いてしまうような不具合が生じることがある。しかし、上記A−2の貯蔵弾性率の値が10MPa〜100MPaの範囲内であれば、電子レンジで加熱した際、フィルムが加熱され柔軟化しすぎることが無く、容器や食品に密着し過ぎることもないし、また、フィルム自体が溶けて穴があくこともない。
さらにまた、損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。すなわち、損失正接の値が小さいと緩和挙動が速く、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こり、逆に損失正接の値が大きいと応力緩和が遅く、フィルムの変形に対する復元挙動が遅くなる。しかし、本発明の乳酸系軟質フィルムの当該ピーク値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないから、例えばフィルムを伸ばしてオーバーラップする場合に伸ばす力を取り除いた瞬間に元に戻ってしまうことがなく、皺なく綺麗に包装することができる。他方0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることがないため、普通に使っている分には塑性的な変形を示すことがない。
また、家庭用ラップフィルムは、主として冷蔵庫や冷凍庫での食品の保存用や、電子レンジでの加熱用に使用されることが多い。特に電子レンジでの加熱時にはフィルムの温度が100℃以上高くなることがあり、ラップフィルムが耐熱性を備えていないと、電子レンジでの加熱用に使用するとフィルム自体が大きく変形し容器や中にある食品に密着しすぎてしまうような不具合や、加熱中にフィルムが溶けて孔が空いてしまうような不具合が生じることがある。しかし、上記A−2の貯蔵弾性率の値が10MPa〜100MPaの範囲内であれば、電子レンジで加熱した際、フィルムが加熱され柔軟化しすぎることが無く、容器や食品に密着し過ぎることもないし、また、フィルム自体が溶けて穴があくこともない。
さらにまた、損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。すなわち、損失正接の値が小さいと緩和挙動が速く、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こり、逆に損失正接の値が大きいと応力緩和が遅く、フィルムの変形に対する復元挙動が遅くなる。しかし、本発明の乳酸系軟質フィルムの当該ピーク値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないから、例えばフィルムを伸ばしてオーバーラップする場合に伸ばす力を取り除いた瞬間に元に戻ってしまうことがなく、皺なく綺麗に包装することができる。他方0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることがないため、普通に使っている分には塑性的な変形を示すことがない。
なお、20℃における貯蔵弾性率、100℃における貯蔵弾性率、及び20℃における損失正接の値を上記所望の範囲に調整する手段は特に限定するものではない。例えば、乳酸系樹脂組成物の組成(例えばLD比)、成分(B)における乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸との重合割合、可塑剤の種類、成分(A)、(B)(C)の配合割合、成形加工条件(特にフィルム成形後の加熱条件)などを適宜調整することにより上記物性値範囲となるように調整することができる。
本発明の効果を損なわない範囲で、乳酸系樹脂組成物には熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、坊曇剤、粘着剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、核剤、加水分解防止剤、消匂剤などの添加剤を処方することができる。
例えば、乳酸系軟質フィルムに実用特性を保持するために、乳酸系樹脂組成物100質量部に対して、カルボジイミド化合物を好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部配合することで重量平均分子量を増大させるができる。かかる範囲を下回る場合、重量平均分子量を増大させる効果が薄い場合が多く、また、かかる範囲を上回る場合、フィルム成形時にフィッシュアイやゲルを生じる場合があり好ましくない。
例えば、乳酸系軟質フィルムに実用特性を保持するために、乳酸系樹脂組成物100質量部に対して、カルボジイミド化合物を好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部配合することで重量平均分子量を増大させるができる。かかる範囲を下回る場合、重量平均分子量を増大させる効果が薄い場合が多く、また、かかる範囲を上回る場合、フィルム成形時にフィッシュアイやゲルを生じる場合があり好ましくない。
上記のカルボジイミド化合物としては、下記一般式の基本構造を有するものがあげられる。
−(N=C=N−R−)n−
(上記式において、nは1以上の整数であり、通常は1〜50の間で適宜決められる。Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでもよい。)
−(N=C=N−R−)n−
(上記式において、nは1以上の整数であり、通常は1〜50の間で適宜決められる。Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでもよい。)
すなわち、カルボジイミド化合物は、芳香族カルボジイミド化合物、脂肪族カルボジイミド化合物のいずれでもよく、具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4'−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、さらにこれらの単量体を挙げることができ、これらのうちの一種を単独で使用することも、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
(フィルムの厚さ)
本発明が提案する乳酸系軟質フィルムの厚さは、特に限定するものではないが、家庭用ラップフィルム用途としては8μm〜30μmの厚さのものが好ましく、中でも本発明の場合には10μm〜15μmの厚さのものが好ましい。
本発明が提案する乳酸系軟質フィルムの厚さは、特に限定するものではないが、家庭用ラップフィルム用途としては8μm〜30μmの厚さのものが好ましく、中でも本発明の場合には10μm〜15μmの厚さのものが好ましい。
(用途)
本発明の乳酸系軟質フィルムは、その用途を特に限定するものではないが、家庭用ラップフィルム(小巻ラップフィルム)として特に好適に利用することができる。家庭用ラップフィルムは、上記のようにカッター刃を具備した紙箱の中に入った形で使用されるのが一般的であり、業務用の包装フィルム(所謂シュリンクフィルム)と比較すると、熱収縮性を抑えたフィルムである。
本発明の乳酸系軟質フィルムは、その用途を特に限定するものではないが、家庭用ラップフィルム(小巻ラップフィルム)として特に好適に利用することができる。家庭用ラップフィルムは、上記のようにカッター刃を具備した紙箱の中に入った形で使用されるのが一般的であり、業務用の包装フィルム(所謂シュリンクフィルム)と比較すると、熱収縮性を抑えたフィルムである。
(製造方法)
次に、本発明における乳酸系軟質フィルムの製造方法について説明するが、下記製造法に限定されるものではない。
次に、本発明における乳酸系軟質フィルムの製造方法について説明するが、下記製造法に限定されるものではない。
本発明の乳酸系軟質フィルムは、通常の溶融押出しによるフィルム成形方法によって製造することができる。その際、乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)、可塑剤(C)、さらに必要に応じて他の添加剤などを混合して混合組成物を得る方法としては、例えば、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を用いてプレコンパウンドするようにしても構わないし、又、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入するようにしても構わない。いずれの混合方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。
具体的には、例えば、乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、必要に応じて他の添加剤とをそれぞれ十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ベントロから可塑剤(C)を所定量添加しながら、ストランド形状に押出してペレットを作製する。この際、乳酸系樹脂(A)はL−乳酸構造とD−乳酸構造の組成比によって融点が変化すること、並びに、成分(A)と成分(B)との混合割合によって混合樹脂の融点が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には160〜230℃の融点温度範囲が通常選択される。
上記方法にて作成したペレットを十分に乾燥して水分を除去した後、以下の方法でフィルム成形を行う。
フィルム成形方法は、例えばキャスティングドラム上で急冷してフィルムを成形し、フィルム成形後一定時間熱を加える処理を施すようにすればよい。必要に応じて、フィルム成形後加熱縦延伸ロールを用いて縦延伸したり、必要に応じてテンターを用いて延伸したりしてもよい、またキャスト法以外に、インフレーション法、延伸法を採用することもできる。
フィルム成形方法は、例えばキャスティングドラム上で急冷してフィルムを成形し、フィルム成形後一定時間熱を加える処理を施すようにすればよい。必要に応じて、フィルム成形後加熱縦延伸ロールを用いて縦延伸したり、必要に応じてテンターを用いて延伸したりしてもよい、またキャスト法以外に、インフレーション法、延伸法を採用することもできる。
延伸を施すと、例えばフィルムをカッター刃に押し当て、カッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、幅方向に引き裂きを伝播させてカットし、カットしたフィルムを容器に盛った食品をオーバーラップする際に、更なるカット性の向上が得られる場合が多いので好ましい。この場合、結晶化度が高くなると可塑剤はブリードアウトし易くなるが、延伸により結晶化度が高くなっても、他の要因で結晶化度が高くなった場合に比べて可塑剤のブリードアウトが生じ難いという特徴がある。
延伸条件は、シート状物の温度を20〜100℃とし、延伸倍率を1.0〜5.0倍の範囲内とするのが好ましい。かかる範囲内であればシート状物の破断や白化が生じたり、シート状物の弾性率が低くなり過ぎて自重によりシート状物が垂れ下がるドローダウンが生じたりするなどのトラブルが発生することがない。
延伸条件は、シート状物の温度を20〜100℃とし、延伸倍率を1.0〜5.0倍の範囲内とするのが好ましい。かかる範囲内であればシート状物の破断や白化が生じたり、シート状物の弾性率が低くなり過ぎて自重によりシート状物が垂れ下がるドローダウンが生じたりするなどのトラブルが発生することがない。
また、必要に応じて、本発明の趣旨を損なわない範囲で、シート状物を延伸した後、幅固定で熱処理を行っても良い。この際の熱処理条件は、温度が50℃〜120℃であることが好ましく、特に好ましくは60℃〜110℃である。熱処理温度を50℃以上とすれば熱処理効果を得られ易く、120℃以下であるとドローダウンが起こり難い。また、熱処理時間が5秒以上であれば熱処理効果が得られ易く、5分以下であれば熱処理設備が長大にならないから経済性を維持することができる。
以下に実施例を示すが、本発明は以下の実施例に制限を受けるものではない。
フィルムのMDとは引き取り方向(流れ方向)、TDとは当該MDの垂直方向(幅方向)を示す。尚、実施例中に示す測定値は、次に示すような条件で測定を行い算出し、結果をまとめて下記表1に示した。
フィルムのMDとは引き取り方向(流れ方向)、TDとは当該MDの垂直方向(幅方向)を示す。尚、実施例中に示す測定値は、次に示すような条件で測定を行い算出し、結果をまとめて下記表1に示した。
(動的粘弾性測定)
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び100℃でフィルムのMDについて測定し、温度20℃及び100℃での貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)を求めた。
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び100℃でフィルムのMDについて測定し、温度20℃及び100℃での貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)を求めた。
(ガラス転移温度測定)
パーキンエルマー(株)製DSC−7を用いて、乳酸系軟質フィルムから切り出したサンプル10mgを、JIS K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−100℃から200℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−100℃まで降温し、−100℃で1分間保持した後、加熱速度10℃/分で再昇温した時のサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。
パーキンエルマー(株)製DSC−7を用いて、乳酸系軟質フィルムから切り出したサンプル10mgを、JIS K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−100℃から200℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−100℃まで降温し、−100℃で1分間保持した後、加熱速度10℃/分で再昇温した時のサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。
(分子量測定)
東ソー株式会社製HLC−8120GPCを用いて、溶媒クロロホルム、溶液濃度0.2wt/vol%、溶液注入量200μl、溶媒流速1.0ml/分、溶媒温度40℃で測定を行い、ポリスチレン換算で、乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物の重量平均分子量を算出した。用いた標準ポリスチレンの重量平均分子量は、2000000、670000、110000、35000、10000、4000、600である。
東ソー株式会社製HLC−8120GPCを用いて、溶媒クロロホルム、溶液濃度0.2wt/vol%、溶液注入量200μl、溶媒流速1.0ml/分、溶媒温度40℃で測定を行い、ポリスチレン換算で、乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物の重量平均分子量を算出した。用いた標準ポリスチレンの重量平均分子量は、2000000、670000、110000、35000、10000、4000、600である。
(カット性)
フィルムを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を、以下の基準で評価した。
○:カット性が良好なもの。
△:カットできるがカット性がやや劣るもの。
×:フィルムが伸びてカット性が良くないもの。
フィルムを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を、以下の基準で評価した。
○:カット性が良好なもの。
△:カットできるがカット性がやや劣るもの。
×:フィルムが伸びてカット性が良くないもの。
(耐熱性)
陶磁器製の皿にエビの天ぷら(長さ160mm程度)2尾を入れ、フィルム包装し、500Wの電子レンジにいれて3分間加熱し、熱による破れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
○:穴があかなかった。
△:少し穴があいたり変形したが、使用上問題のないレベルであった。
×:大きな穴があいたり、大きな変形を生じ、実用上問題となるレベルであった。
陶磁器製の皿にエビの天ぷら(長さ160mm程度)2尾を入れ、フィルム包装し、500Wの電子レンジにいれて3分間加熱し、熱による破れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
○:穴があかなかった。
△:少し穴があいたり変形したが、使用上問題のないレベルであった。
×:大きな穴があいたり、大きな変形を生じ、実用上問題となるレベルであった。
(包装適性)
陶磁器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を、以下の基準で評価した。
○:適度に包装できるレベル。
△:少し皺が入るが実用上問題ないレベル。
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル。
陶磁器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を、以下の基準で評価した。
○:適度に包装できるレベル。
△:少し皺が入るが実用上問題ないレベル。
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル。
(ブリード性)
MD10cm、TD10cmのフィルムを40℃、40%RH雰囲気中に30日放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○:ブリードなし
△:若干ブリードは見受けられるが実用上問題の無いレベル
×:ブリードが見受けられ実用上問題となるレベル
MD10cm、TD10cmのフィルムを40℃、40%RH雰囲気中に30日放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○:ブリードなし
△:若干ブリードは見受けられるが実用上問題の無いレベル
×:ブリードが見受けられ実用上問題となるレベル
(耐久性特性評価)
フィルムを40℃×90%RHの状態に保たれた場所で2週間放置し、放置したフィルムの引張破断強度を測定した。引張破断強度はJISK7127に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのMDの引張破断伸度を測定した。
フィルムを40℃×90%RHの状態に保たれた場所で2週間放置し、放置したフィルムの引張破断強度を測定した。引張破断強度はJISK7127に準拠し、引張速度200mm/分で、雰囲気温度23℃におけるフィルムのMDの引張破断伸度を測定した。
(実施例1)
成分(A)として、カーギル・ダウ社製NatureWorks4032D(L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4、重量平均分子量:20万、Tg65℃)を用い、
成分(B)として、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体(商品名:プラメート−350/大日本インキ化学工業(株)製/乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体、乳酸(L−乳酸:D−乳酸=98.6:1.4):48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%、重量平均分子量:6万、Tg10℃)を用い、
成分(C)として、アジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を用いた。
成分(A)として、カーギル・ダウ社製NatureWorks4032D(L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4、重量平均分子量:20万、Tg65℃)を用い、
成分(B)として、乳酸系樹脂とジオール・ジカルボン酸の共重合体(商品名:プラメート−350/大日本インキ化学工業(株)製/乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体、乳酸(L−乳酸:D−乳酸=98.6:1.4):48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%、重量平均分子量:6万、Tg10℃)を用い、
成分(C)として、アジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedrs法])を用いた。
成分(A)と成分(B)とを質量比70:30の割合でドライブレンドした後、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口より成分(C)を、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し12質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で60℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
(実施例2)
実施例1と同じ成分(A)、成分(B)及び成分(C)を用いた。
成分(A)と成分(B)とを質量比60:40の割合でドライブレンドした後、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口より成分(C)を、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し9質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で60℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
実施例1と同じ成分(A)、成分(B)及び成分(C)を用いた。
成分(A)と成分(B)とを質量比60:40の割合でドライブレンドした後、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口より成分(C)を、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し9質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で60℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
(実施例3)
実施例1と同じ成分(A)、成分(B)及び成分(C)を用いた。
成分(A)と成分(B)とを質量比60:40の割合でドライブレンドした後、カルボジイミド化合物(日清紡製カルボジライトHMV−8CA)を成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し0.5質量部の割合で添加してドライブレンドし、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口より成分(C)を、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し9質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で60℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
実施例1と同じ成分(A)、成分(B)及び成分(C)を用いた。
成分(A)と成分(B)とを質量比60:40の割合でドライブレンドした後、カルボジイミド化合物(日清紡製カルボジライトHMV−8CA)を成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し0.5質量部の割合で添加してドライブレンドし、300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口より成分(C)を、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し9質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で60℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
(実施例4)
実施例1と同様に90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)を用いて、温度50℃で3×3倍同時2軸延伸し、膜厚10μmの乳酸系軟質フィルムを作成した。ただし、予熱時間は30秒、延伸速度は3000%/分であった。
実施例1と同様に90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)を用いて、温度50℃で3×3倍同時2軸延伸し、膜厚10μmの乳酸系軟質フィルムを作成した。ただし、予熱時間は30秒、延伸速度は3000%/分であった。
(実施例5)
実施例2と同様に90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)を用いて、温度50℃で3×3倍同時2軸延伸し、膜厚10μmの乳酸系軟質フィルムを作成した。ただし、予熱時間は30秒、延伸速度は3000%/分であった。
実施例2と同様に90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)を用いて、温度50℃で3×3倍同時2軸延伸し、膜厚10μmの乳酸系軟質フィルムを作成した。ただし、予熱時間は30秒、延伸速度は3000%/分であった。
(実施例6)
実施例3と同様に90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)を用いて、温度50℃で3×3倍同時2軸延伸し、膜厚10μmの乳酸系軟質フィルムを作成した。ただし、予熱時間は30秒、延伸温度は3000%/分であった。
実施例3と同様に90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)を用いて、温度50℃で3×3倍同時2軸延伸し、膜厚10μmの乳酸系軟質フィルムを作成した。ただし、予熱時間は30秒、延伸温度は3000%/分であった。
(比較例1)
実施例1と同じ成分(A)を300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口よりベント口より、実施例1と同じ成分(C)を、成分(A)100質量部に対し17質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で70℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
実施例1と同じ成分(A)を300mm幅の口金を具備した三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練しながら、ベント口よりベント口より、実施例1と同じ成分(C)を、成分(A)100質量部に対し17質量部の割合で注入し、30℃に温度調節したキャストにて冷却することで10μmのフィルムを成形し、その後幅固定の状態で70℃にて2分間熱処理を行いフィルムを得た。
(比較例2)
実施例1と同じ成分(A)を用い、この成分(A)のみで実施例4と同様の方法で、延伸温度70℃で10μmのフィルムを得た。
実施例1と同じ成分(A)を用い、この成分(A)のみで実施例4と同様の方法で、延伸温度70℃で10μmのフィルムを得た。
なお、実施例1〜6について、上記の如く示差走査熱量測定装置(DSC)を用いてガラス転移温度を測定した結果、ガラス転移温度はいずれも単一になることが確認された。
Claims (5)
- 乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、分子量2,000以下の可塑剤(C)とを含み、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(A)の割合が50〜80質量%であり、成分(B)の割合が50〜20質量%であり、かつ、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し成分(C)が5〜15質量部配合されてなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、
当該乳酸系樹脂組成物は、示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる乳酸系樹脂組成物であることを特徴とする乳酸系軟質フィルム。 - 乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)と、分子量2,000以下の可塑剤(C)とを含み、成分(A)及び成分(B)の合計中に占める成分(A)の割合が50〜80質量%であり、成分(B)の割合が50〜20質量%であり、かつ、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し成分(C)が5〜15質量部配合されてなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、
当該乳酸系樹脂組成物は、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する乳酸系樹脂組成物であることを特徴とする乳酸系軟質フィルム。 - 乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体(B)は、歪み0.1%、周波数10Hzにて動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乳酸系軟質フィルム。
- 周波数10Hz、ひずみ0.1%にて動的粘弾性測定法により測定される20℃における貯蔵弾性率の値が1GPa〜4GPaであり、100℃における貯蔵弾性率の値が10MPa〜100MPaであり、20℃における損失正接の値が0.1〜0.8であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乳酸系軟質フィルム。
- 成分(B)が、乳酸系樹脂とプロピレングリコールとコハク酸との共重合体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乳酸系軟質フィルム。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110201 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20110920 |