JP5230078B2 - 樹脂組成物およびこれを用いたフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、室温付近まで任意にガラス転移温度を変化でき、かつ柔軟性を備えた脂肪族ポリエステルに関するものである。
近年環境問題の高まりから、プラスチック製品が自然環境中に棄却された場合、経時的に分解・消失し、最終的に自然環境に悪影響を及ぼさないことが求められ始めている。従来のプラスチックは、自然環境中で長期にわたって安定であり、しかも嵩比重が小さいため、廃棄物埋め立て地の短命化を促進する、あるいは自然の景観や野生動植物の生活環境を損なうといった問題点が指摘されていた。
そこで、今日注目を集めているのは、生分解性樹脂材料である。生分解性樹脂は、土壌中や水中で、加水分解や生分解により、徐々に崩壊・分解が進行し、最終的に微生物の作用により無害な分解物となることが知られている。また、コンポスト(堆肥化)処理により、容易に廃棄物処理ができることが知られている。
実用化され始めている生分解性樹脂としては、脂肪族ポリエステル、変性PVA、セルロースエステル化合物、デンプン変性体、およびこれらのブレンド体等がある。
これらの生分解性プラスチックはそれぞれ固有の特徴を有し、これらに応じた用途展開が考えられるが、中でも、幅広い特性と汎用樹脂に近い加工性を有する脂肪族ポリエステルが広く使われ始めている。脂肪族ポリエステルは、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、及び脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸から誘導されるものであり、生分解性を有するポリマーとしてこれまでに数多く開発されてきた。汎用性の高い生分解性樹脂として、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなどが上市されている。
ポリ乳酸は、近年原料のL−乳酸が発酵法により大量かつ安価に製造されるようになってきたことや、堆肥中での分解速度が速く、カビに対する抵抗性、食品に対する耐着臭性や耐着色性等、優れた特徴を有することによりその利用分野の拡大が期待されている。しかしながら、ポリ乳酸をはじめとする乳酸系樹脂は剛性が高く、フィルムや包装材等の柔軟性が要求される用途には適切な樹脂とは言いがたい。
そこで、ポリ乳酸などの乳酸系樹脂を軟質化するため、可塑剤の添加、コポリマー化、軟質ポリマーのブレンド等の手法がなされてきた。しかしながら、これら手法では十分な柔軟性を付与できないことに加えて、ブロッキングや可塑剤のブリードアウトなどの問題点を伴うため、実用化するには実質上問題があった。
これに対し、同じ脂肪族ポリエステルの中でもポリブチレンサクシネートは、結晶化速度が速く高結晶性で、耐熱性に優れているため、フィルム、シート、および、射出成形分野においてポリプロピレンやポリスチレンの代替材料となる可能性を秘めている。また、ポリ乳酸に比べてガラス転移温度は大幅に低く、柔軟性も持ち合わせている樹脂であるといえる。
しかしながら、ポリブチレンサクシネートはその低いガラス転移温度を有する特性により、例えばフィルム材料として用いようとする場合にそれ単体では食品包装用ラップフィルムに求められるような室温付近における緩和特性を付与させることができない。フィルムの緩和特性は、該樹脂のガラス転移温度付近に発現するといえる。よって、より高い温度において緩和特性を付与させるためには、該樹脂よりも高いガラス転移温度を持つポリマーとの共重合やブレンドなどの手法が必要となる。
ポリブチレンサクシネートは、同じ生分解性樹脂であり比較的高いガラス転移温度を有するポリ乳酸やその他の乳酸系樹脂とブレンドされしばしば用いられる。しかし、それらの手法は主にポリ乳酸をはじめとする乳酸系樹脂の軟質化を図ることが主な目的であり、緩和特性の発現する温度を自由に設計できるものではない。
特許文献1には、乳酸系樹脂にポリブチレンサクシネートをブレンドし、該乳酸系樹脂に柔軟性をもたせる手法が開示されている。しかし、かかる手法において耐衝撃性等を改善することはできるが、それらブレンドポリマーは非相溶系であるためにそれぞれのポリマーのガラス転移温度付近にピークが現れ、室温(0℃〜30℃)における緩和特性を付与させることはできない。
また、特許文献2には、乳酸系樹脂にポリブチレンサクシネート及び可塑剤をブレンドし、該乳酸系樹脂に柔軟性をもたせる手法が開示されている。しかし、この手法は可塑剤を併用することにより柔軟性をもたせるものであり、それら可塑剤のブリードもしくはフィルムのブロッキングを抑制する効果を謳うものであるため、本発明とは異なるものである。
特許文献3には、乳酸系樹脂をはじめとする脂肪族ポリエステルに低分子化合物であるフェノール誘導体を加えて、可塑剤がブリードアウトせずかつ十分な柔軟性を有する樹脂組成物を提供するための手法が記載されている。しかしながら、この方法は乳酸系樹脂をはじめとする脂肪族ポリエステルに、フェノール誘導体を可塑剤として添加し乳酸系樹脂の軟質化を図るものであって、緩和特性の発現する温度を自由に設計できるものではない。
特開2003−286354号公報 特開平11−116788号公報 特開2001−81300号公報
本発明は、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステルにフェノキシ樹脂を配合することにより、当該脂肪族ポリエステルのガラス転移温度を任意に変化させるとともに、粘度を低下させることなく、かつ柔軟性に優れた樹脂組成物を提供するものである。
本発明の樹脂組成物は、以下のとおりである。
(1)肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂にフェノキシ樹脂を配合した混合物を主成分として含有する樹脂組成物であり、当該混合物中に占める当該フェノキシ樹脂の割合が35質量%より大きく、かつ、60質量%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)ガラス転移温度が0℃から50℃の間に単一のピークとして表れることを特徴と
する(1)に記載の樹脂組成物。
また、本発明のフィルムは、以下のとおりである。
(3)(1)または(2)に記載の樹脂組成物を用いてなるフィルム。
(4)JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜3GPaの範囲にあり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.5の範囲にあることを特徴とする(3)に記載のフィルム。
本発明によれば、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステルにフェノキシ樹脂を配合することにより、当該脂肪族ポリエステルのガラス転移温度を任意に変化させるとともに、粘度を低下させることなく、かつ柔軟性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明ではシートとフィルムとを区別するものではない。一般に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものである。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。
(脂肪族ポリエステル)
本発明において、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステルとは、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた脂肪族ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルから少なくとも1種選ばれたものであって、ガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)が0℃以下のものである。Tgが0℃以下であれば、耐衝撃性向上の効果を優位に発現できる。なお、好ましくはTgが−20℃以下である。
なお、本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、以下のようにして求めた値をいう。すなわち、示差走査熱量計(DSC)による測定により、10mg程度に削り出したサンプルをJIS K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−100℃から200℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−100℃まで降温し、−100℃で1分間保持した後、加熱速度10℃/分で再昇温したときのサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求める。
共重縮合脂肪族ポリエステルにおける脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシーn―酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシー3,3ージメチル酪酸、2−ヒドロキシー3ーメチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物があげられる。これらの中で好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。形態は30〜95%の水溶液のものが容易に入手できるので好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物としても使用することができる。
共重縮合脂肪族ポリエステルにおける脂肪族または脂環式ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピオングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好適に挙げられる。得られる共重合体物性の面から、特に1,4−ブタンジオールであることが好ましい。
共重縮合脂肪族ポリエステルにおける脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、およびそれらの低級アルコールエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸、などが挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの無水物、及びそれらの低級アルコールエスエルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。これらは単独でも二種以上混合して使用することも出来る。
環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状モノマーの中から1種以上選んだ開環重合体が例として挙げられる。合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状酸無水物とオキシラン類の共重合体が例として挙げられる。
本発明のガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族ポリエステルとして特に好ましく用いられるものは、上記の内で比較的透明性の良いとされる共重縮合した脂肪族ポリエステルであり、その具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート乳酸、ポリブチレンサクシネートアジペート乳酸、ポリエチレンサクシネートなどが挙げられる。中でも、ポリブチレンサクシネート乳酸、ポリブチレンサクシネートアジペート乳酸等のように脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた脂肪族ポリエステルを選択することが好ましい。乳酸のようなオキシカルボン酸を共重合させることで、数平均分子量1万以上の脂肪族ポリエステルが鎖延長剤を使用することなしに極めて容易に得ることができ、また、オキシカルボン酸成分の導入により、得られるポリエステルの結晶性が低下して可撓性を付与させることができる。
商業的には、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルとして、昭和高分子社製の「ビオノーレ」シリーズ、また、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた脂肪族ポリエステルとして、三菱化学社製「GSPla」シリーズが入手可能である。
脂肪族ポリエステルの重合方法としては、直接法、間接法などの公知の方法を採用できる。直接法では、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分として上記ジカルボン酸化合物その酸無水物又は誘導体を選択し、脂肪族ジオール成分として上記ジオール化合物又はその誘導体を選択して重縮合を行う方法で、重縮合に際して発生する水分を除去しながら高分子量物を得ることができる。間接法では、直接法により重縮合されたオリゴマーに少量の鎖延長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を添加して高分子量化して得ることができる。脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、2万〜50万の範囲が好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量15万〜25万の範囲である。分子量が2万より小さいと機械的強度等の実用物性が十分に得られず、分子量が50万を越えると成形加工性に劣る問題がある。
(フェノキシ樹脂)
フェノキシ樹脂としては、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4′−ビスフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、および、2,6−ジヒドロキシナフタレン等の芳香族ジヒドロキシ化合物、あるいはエチレングリコールジグリシジルエーテルプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジヒドロキシ化合物のうちから選ばれる、1種あるいは2種以上の化合物と、グリセリンおよびエピクロルヒドリンとを縮合することにより得られるポリヒドロキシポリエーテルなどが挙げられる。商業的にはジャパンエポキシレジン社製E1256、E4250、E4275、InChem社製PKHH、PKHC、PKHJ、PKHB、PKFE等があげられる。
上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は1万〜50万のものが好ましい。下限値としては、さらに3万以上が好ましく、特に5万以上が好ましい。また、上限値としては、さらに40万以下が好ましく、特に30万以下が好ましい。このことから上記フェノキシ樹脂のなかでもグリセリンおよびエピクロルヒドリンとの縮合体が好ましい。混合させるフェノキシ樹脂が脂肪族ジヒドロキシ化合物単体の場合、その分子量が低いために樹脂混合物の分子量を低下させ、成形性を確保できない場合がある。
上記フェノキシ樹脂の割合は、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂とフェノキシ樹脂を配合した混合物中に占めるフェノキシ樹脂の割合が35質量%より大きく、かつ、60質量%以下であることが重要である。好ましくは、36質量%以上、55質量%以下であり、特に好ましくは40質量%以上、49質量%以下である。35質量%以下の場合には、その混合物のガラス転移温度を0℃以上に上げることができず、また、60質量%を上回る場合、Tg近傍で貯蔵弾性率が急激に落ちるため、機械的設計がしづらくなる等の問題が生じる場合がある。さらにフェノキシ樹脂の割合が増えると、室温で高弾性を持つフェノキシ樹脂により、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂の持つ柔軟性が損なわれてしまう。
本発明からなる樹脂組成物のメルトフローインデックス(MFR)は190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下であり、より好ましくは30g/10分以下、特に好ましくは20g/10分以下である。
本発明では、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂とフェノキシ樹脂を配合した混合物を主成分として含有する樹脂組成物において、当該樹脂組成物としてのガラス転移温度が、0℃から50℃の間に単一のピークとして表れることが好ましい。なお、単一のピークとして表れるとは、上述の示差走査熱量計(DSC)により当該樹脂組成物のガラス転移温度を測定した際に、ガラス転移温度を示すピークが1つだけ現れるという意味である。別の観点から見れば、前記混合樹脂組成物を、歪み0.1%、周波数10hzにて動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定)により測定した際に、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するという意味である。
本発明の樹脂組成物はフィルム、シート等として用いた場合に有効である。
本発明のフィルムにおいては、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜3GPaの範囲にあることが好ましく、さらに200MPa〜1GPaの範囲にあることが好ましい。軟質フィルムとして用いる場合、室温付近における弾性率の値が指標となる。そのため、20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、過度の柔軟性により室温でフィルム同士もしくはフィルムと他の物質が密着することはなく、また、3GPa以下であれば、フィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、軟質フィルム用途において有利である。
また、同測定において、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.5の範囲にあることが好ましく、さらに0.1〜0.3の範囲にあることが好ましい。損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。損失正接の値が小さいとフィルムの緩和挙動が速くなり、逆に値が大きいと応力緩和が遅くなる。20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上であればフィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることはなく、0.5以下であれば復元挙動が遅すぎることはない。
本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、顔料、着色剤、滑剤、可塑剤、防曇剤等の添加剤を処方することができる。本発明に係る樹脂組成物を包装用フィルムに用いる場合には、防曇性、帯電防止性、滑り性、自己粘着性等を向上させる目的で、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪族との混合物である脂肪族アルコール系脂肪族エステルを添加できる。具体的には、モノグリセリノレート、ジグリセリンモノオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシレート、グリセリンアセチルシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等を挙げることができる。更にパラフィン系オイルから選ばれた化合物の少なくとも1種を添加することができる。これらの添加剤の好適な添加量は、各種の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、0.1〜12質量部、好ましくは、2〜8質量部、更に好ましくは3〜6質量部であり、本発明においては、少なくとも表面層に添加することが好ましい。
本発明における樹脂組成物を用いてフィルム、シート等に成形する方法について、以下に説明する。
上記ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、および、その他添加剤などの混合は、同一の射出成形機にそれぞれの原料を投入して行うことができる。押出機、射出成型機を用いて原料を直接混合して成形する方法、あるいは、ドライブレンドした原料を、二軸押出機を用いてストランド形状に押出してペレットを作成した後、フィルムまたはシートを成形する方法がある。
いずれの方法においても分解によるガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂の分子量低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためには後者を選択することが好ましい。本発明においては、例えば、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、および、その他添加剤を十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作成する。ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、および、その他添加剤の混合の割合によって混合物の粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には160〜230℃の温度範囲が通常選択される。
上記方法にて作成したペレットを十分に乾燥して水分を除去した後、以下の方法でフィルムまたはシートの成形を行う。
本発明にかかる樹脂組成物を用いてなるフィルムやシートは、公知・公用の押出法、共押出法、カレンダー法、ホットプレス法、溶媒キャスティング法、インフレーション法、チューブラー法、テンター法等の技術により製造できる。
押出法又は共押出法において、Tダイ、インフレーションダイ(円形ダイ)、フラットダイ、フィードブロック/シングルマニホールドダイやいくつかのフィードブロックを組み合わせたシングルマニホールドダイ等の公知・公用のダイを用いて成形することができる。
インフレーション法を採用すると、二軸同時延伸ができ、さらに高い生産性で相対的に安価に製造することができ、かつ、形状が袋状(シームレス状)であるため、スーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ、等の袋やバッグの生産に好適である。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る樹脂組成物及び/又は他種ポリマーを用いて多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。
本発明に係る樹脂組成物からなるフィルム又はシートは、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、食品・菓子包装用フィルム、食品用ラップフィルム、化粧品・香粧品用ラップフィルム、医薬品用ラップフィルム、生薬用ラップフィルム、肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用ラップフィルム、衛生材料(紙おむつ、生理用品)用包装フィルム、農業用・園芸用フィルム、農薬品用ラップフィルム、温室用フィルム、肥料用袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フレキシブルディスク包装用フィルム、製版用フィルム、粘着テープ、テープ、防水シート、土嚢用袋、等として好適に使用することができる。本発明の成形体の一態様であるフィルム又はシートは、その特性を活かし、分解性が要求される用途に、特に、好適に使用することができる。共押出法においては、性質の異なる複数の該ポリマー及び又は他種ポリマーを用いて、多層フィルムを製造することができる。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例中に示す結果は以下の方法で評価を行った。
(測定および評価方法)
(1)ガラス転移温度測定
パーキンエルマー(株)製DSC−7を用いて、10mg程度に削り出したサンプルをJIS K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−100℃から200℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−100℃まで降温し、−100℃で1分間保持した後、加熱速度10℃/分で再昇温したときのサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。
(2)動的粘弾性測定
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃でフィルムのMD(フィルムの押出機からの流れ方向)について測定し、温度20℃での貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)を求めた。
[比較例1]
ポリブチレンサクシネート乳酸として三菱化学社製GSPla AZ91T(コハク酸−乳酸―1,4−ブタンジオール共重合体、重量平均分子量16万、Tg−32℃)を用いて、GSPla AZ91Tを25mmφ単軸押出機にて200℃で混練した後、口金から押出し、次いで20℃のキャスティングロールにて急冷し、500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリブチレンサクシネート乳酸として三菱化学社製GSPla AD92W(コハク酸-アジピン酸―乳酸―1,4-ブタンジオール共重合体、重量平均分子量16万、Tg−45℃)を用いて、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例1]
フェノキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン社製E1256(ビスフェノールAタイプ、重量平均分子量53000)を用いて、GSPla AZ91T、および、E1256を質量比60:40の割合で混合し、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
GSPla AZ91T、および、E1256を質量比40:60の割合で混合し、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
GSPla AD92W、および、E1256を質量比60:40の割合で混合し、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
GSPla AZ91T、および、E1256を質量比80:20の割合で混合し、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
GSPla AZ91T、および、ポリ乳酸を質量比60:40の割合で混合し、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
GSPla AD92W、および、ポリ乳酸を質量比60:40の割合で混合し、比較例1と同様の方法で500μm厚のシートを作製した。得られたシートに関してTg、20℃における貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005230078
表1から明らかなように、比較例1と実施例1、2に示される樹脂組成物からなるシート、および比較例2と実施例3に示される樹脂組成物からなるシートをそれぞれ比較すると、フェノキシ樹脂を配合することによってガラス転移温度(Tg)が向上する結果が得られたことがわかる。このことから、フェノキシ樹脂の配合量を変えることによるガラス転移温度の設定が可能であり、それに伴いに室温付近にフィルムの緩和特性が付与できることが確認された。また、比較例3のシートはフェノキシ樹脂の配合量が少なく、室温以上で緩和特性が付与されるほどのTg向上には至らなかった。さらに比較例4、5のシートは、ポリ乳酸を配合してもそれらは非相溶であるために単一のTgのピークは得られず、またTgをシフトさせるに至らなかった。




Claims (4)

  1. 脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族または脂環式ジオール、および脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を共重縮合させた、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族ポリエステル樹脂にフェノキシ樹脂を配合した混合物を主成分として含有する樹脂組成物であり、当該混合物中に占める当該フェノキシ樹脂の割合が35質量%より大きく、かつ、60質量%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. ガラス転移温度が0℃から50℃の間に単一のピークとして表れることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂組成物を用いてなるフィルム。
  4. JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜3GPaの範囲にあり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.5の範囲にあることを特徴とする請求項に記載のフィルム。
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