JP6683509B2 - フレキシブル太陽電池梱包物及びフレキシブル太陽電池の梱包方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、フレキシブル太陽電池セルの受光面側に透光性の保護層を設けるステップと、保護層を設けられたフレキシブル太陽電池セルの受光面側を外側にして丸めるステップと、丸められたフレキシブル太陽電池セルを第1導電性袋に入れるステップと、フレキシブル太陽電池セルが入った第1導電性袋を遮光性の第1円筒に入れるステップと、第1導電性袋の内部にガスを充填するステップと、第1導電性袋の開口部を閉じるステップとを備えるフレキシブル太陽電池セルの梱包方法が開示されている。
しかしながら、このような有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を、特許文献1に記載されたような捲回物にして梱包した場合、極端に性能が低下してしまうことがあった。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、巻芯にフレキシブル太陽電池を巻き付けた捲回物を、耐湿層と耐衝撃層を有する保護シートにより密封することにより、有機無機ペロブスカイト太陽電池であっても、性能を低下させることなく運搬、保存できることを見出し、本発明を完成した。
図1に本発明のフレキシブル太陽電池梱包物の一例を説明する模式図を示した。図1においてフレキシブル太陽電池梱包物1は、捲回物2と該捲回物2を密封する保護シート3からなる。ここで捲回物2は、巻芯21に有機無機ペロブスカイト太陽電池22を巻き付けたものである。また、保護シート3は、耐湿層31と耐衝撃層32とからなる。なお、図1(a)はフレキシブル太陽電池梱包物1の透視図であり、図1(b)はA−A線断面図である。
上記有機無機ペロブスカイト太陽電池は、一般式R−M−X3(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有する。上記光電変換層に上記有機無機ペロブスカイト化合物を用いることにより、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
なお、本明細書中、層とは、明確な境界を有する層だけではなく、含有元素が徐々に変化する濃度勾配のある層をも意味する。なお、層の元素分析は、例えば、太陽電池の断面のFE−TEM/EDS線分析測定を行い、特定元素の元素分布を確認する等によって行うことができる。また、本明細書中、層とは、平坦な薄膜状の層だけではなく、他の層と一緒になって複雑に入り組んだ構造を形成しうる層をも意味する。
上記Rは、具体的には例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、イミダゾリン、カルバゾール及びこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)等)やフェネチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン及びこれらのイオンやフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びこれらのイオンがより好ましい。
図2は、体心に金属原子M、各頂点に有機分子R、面心にハロゲン原子又はカルコゲン原子Xが配置された立方晶系の構造である、有機無機ペロブスカイト化合物の結晶構造の一例を示す模式図である。詳細は明らかではないが、上記構造を有することにより、結晶格子内の八面体の向きが容易に変わることができるため、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上すると推定される。
上記有機無機ペロブスカイト化合物の結晶化度の好ましい下限は30%である。結晶化度が30%以上であると、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上する。結晶化度のより好ましい下限は50%、更に好ましい下限は70%である。
また、上記有機無機ペロブスカイト化合物の結晶化度を上げる方法として、例えば、熱アニール、レーザー等の強度の強い光の照射、プラズマ照射等が挙げられる。
上記有機半導体として、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のチオフェン骨格を有する化合物等が挙げられる。また、例えば、ポリパラフェニレンビニレン骨格、ポリビニルカルバゾール骨格、ポリアニリン骨格、ポリアセチレン骨格等を有する導電性高分子等も挙げられる。更に、例えば、フタロシアニン骨格、ナフタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ベンゾポルフィリン骨格等のポルフィリン骨格、スピロビフルオレン骨格等を有する化合物や、表面修飾されていてもよいカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等のカーボン含有材料も挙げられる。
上記電極及び上記対向電極の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。なお、上記対向電極は、パターニングされた電極であることが多い。
上記電極及び上記対向電極の材料として、例えば、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/Al2O3混合物、Al/LiF混合物、金等の金属、CuI、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)等の導電性透明材料、導電性透明ポリマー等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記電極及び上記対向電極は、それぞれ陰極になっても、陽極になってもよい。
上記電子輸送層の材料は特に限定されず、例えば、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、シアノ基含有ポリフェニレンビニレン、ホウ素含有ポリマー、バソキュプロイン、バソフェナントレン、ヒドロキシキノリナトアルミニウム、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸化合物、ペリレン誘導体、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、フルオロ基含有フタロシアニン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛等が挙げられる。
上記ホール輸送層の材料は特に限定されず、例えば、P型導電性高分子、P型低分子有機半導体、P型金属酸化物、P型金属硫化物、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンのポリスチレンスルホン酸付加物、カルボキシル基含有ポリチオフェン、フタロシアニン、ポルフィリン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化銅、硫化スズ等、フルオロ基含有ホスホン酸、カルボニル基含有ホスホン酸、CuSCN、CuI等の銅化合物、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン含有材料等が挙げられる。
上記封止層として用いられる材料は特に限定されず、公知の材料を用いることができ、有機材料でも無機材料でもよい。即ち、上記封止層は、有機材料からなる有機封止層を含んでいても無機材料からなる無機封止層を含んでいてもよい。更に、上記封止層は、有機封止層と無機封止層とをともに含んでいることも好ましい。
上記無機材料としては、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物等が挙げられ、有機基を有するシリコーン樹脂等でもよい。具体的には、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、複数の金属からなる複合酸化物窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。なかでも、ガスバリア性に優れ、フレキシブル太陽電池の耐久性をより高めることができることから、上記封止層は無機封止層を含み、上記無機封止層は無機酸化物又は無機窒化物からなることが好ましい。
上記封止層を形成する方法として、具体的には例えば、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池の全体を覆うようにして封止層を形成する方法等が挙げられる。
なお、無機封止層の厚みは、光学膜厚測定装置(例えば、大塚電子社製、FE−3000等)を用いて測定することができる。
上記巻芯は、平均内径が25mm以上であることが好ましい。平均内径が25mm以上の巻芯を用いることにより、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を巻き付けるときの作業性が向上する。上記巻芯の平均内径は、30mm以上であることがより好しい。上記巻芯の平均内径の上限は特に限定されないが、上記巻芯の強度等の観点から平均内径と平均外径の差が5mm以上であることが好ましい。
上記保護体は、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池の両端部が直接上記保護シートと接しないような設計となっていれば、材料、形状ともに限定されないが、例えば、ポリウレタンからなる発泡材等を用いることができる。
なお、本明細書において水蒸気透過係数は、JIS K7126(差圧法)に準ずる方法により測定される値を意味する。
なお、本明細書において貯蔵弾性率は、JIS K 7244−4に準ずる方法により測定される値を意味する。
また、上記樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にポリエチレングリコール、シリコーンポリマー等の可塑剤を配合したものであってもよい。また、上記樹脂組成物は、有機フィラー、無機フィラー等の添加により貯蔵弾性率が調整されたものであってもよい。
これらの樹脂や可塑剤は、各々単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
なお、上記保護シートが上記耐湿層の一方の面のみに上記耐衝撃層を有する場合には、上記耐衝撃層側が上記捲回物になるように配置して密封することが好ましい。
(1)フレキシブル太陽電池の調製
厚み50μmのチタン箔基板上に、有機バインダとしてのポリイソブチルメタクリレートと酸化チタン(平均粒子径10nmと30nmとの混合物)とを含有する酸化チタンペーストのエタノール希釈液を、ダイコーターを用いて塗工した。その後500℃で10分間焼成し、厚み200nmの薄膜状の電子輸送層を形成した。次いでヨウ化鉛をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させて1Mの溶液を調製し、これを上記電子輸送層上にダイコーターを用いて塗工し成膜した。更にヨウ化メチルアンモニウムを2−プロパノールに溶解させて0.5Mの溶液を調製し、これを上記のヨウ化鉛の層の上にダイコーターを用いて塗工することによって有機無機ペロブスカイト化合物であるCH3NH3PbI3層を形成した。その後80℃にて30分間加熱処理を行った。更に、ホール輸送層としてPoly(4−butylphenyl−diphenyl−amine)(1−Material社製)の1重量%クロロベンゼン溶液を有機無機ペロブスカイト化合物部位上にダイコーターを用いて塗工し、50nmの厚みに積層し、光電変換層を形成した。
光電変換層上に、対向電極(陽極)として、電子ビーム蒸着法により厚み300nmのITO膜を形成した。
得られたサンプルをスパッタリング装置の基板ホルダーに取り付け、更に、スパッタリング装置のカソードAにZnSn合金(Zn:Sn=95:5重量%)ターゲットを、カソードBにSiターゲットを取り付けた。スパッタリング装置の成膜室を真空ポンプにより排気し、5.0×10−4Paまで減圧した。その後、アルゴンガス流量を50sccm、酸素ガス流量を50sccm、カソードAの電源出力を500W、カソードBの電源出力を1500Wとする成膜条件でスパッタリングし、無機層としてZnSnO(Si)薄膜を100nm形成した。
得られたサンプル上に更に上記と同じ方法にて樹脂層を形成し、更にその後上記と同じ方法で無機層を成膜し、封止層で封止したフレキシブル太陽電池を得た。
得られたフレキシブル太陽電池を、ポリスチレンからなる平均外径が75mmの円柱状の巻芯に捲回して捲回物を得た。その後捲回物の両端部に一辺が50mmの保護体を取り付けた。
得られた捲回物を保護シートで覆った後、保護シートの両端部を熱ラミネートにより密閉して、フレキシブル太陽電池梱包物を得た。
ここで、アルミニウムからなる厚さ7μmの耐湿層の一方の面に、ポリプロピレンからなる厚さ50μm、25℃における貯蔵弾性率が2GPaである耐衝撃層が形成された保護シートを用いた。また、耐衝撃層が形成された側が捲回物側となるように覆った。
巻芯の平均外径、巻芯の組成、耐湿層の組成、耐衝撃層の組成、耐衝撃層の厚み及び耐衝撃層の25℃における貯蔵弾性率が表1に示した保護シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル太陽電池梱包物を製造した。耐衝撃層の25℃における貯蔵弾性率は、組成の選択に加えてシリカフィラー(アドマテックス社製、SE−4050−SPE)を充填することにより調整した。
アルミニウムからなる厚さ7μmの耐湿層のみからなる保護シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル太陽電池梱包物を製造した。
ポリプロピレンからなる厚さ50μm、25℃における貯蔵弾性率が2GPaである耐衝撃層のみからなる保護シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル太陽電池梱包物を製造した。
実施例及び比較例で得られたフレキシブル太陽電池梱包物について、以下の評価を行った。
得られたフレキシブル太陽電池梱包物の各々10サンプルを、通常の方法でトラックの荷台に積み込み、JR島本駅前〜JR京都駅前間を輸送した。
その後、梱包した状態で湿度85%、温度85℃の条件下300時間置いて高温・高湿耐久試験を行った。その後フレキシブル太陽電池梱包物を開け、捲回物からフレキシブル太陽電池を巻き出した。巻き出したフレキシブル太陽電池を、湿度85%、温度85℃の条件下に300時間置いて高温・高湿耐久試験を行った。フレキシブル太陽電池の梱包前、及び、梱包開封後の高温・高湿耐久試験後の太陽電池の電極間に、電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、強度100mW/cm2のソーラーシミュレーター(山下電装社製)を用いて光電変換効率を測定した。
高温・高湿耐久試験前後の光電変換効率の低下率が10%以上であるものを不良品とし、10サンプルでの不良品の発生率を算出した。
結果を表1に示した。
2 捲回物
21 巻芯
22 有機無機ペロブスカイト太陽電池
3 保護シート
31 耐湿層
32 耐衝撃層
Claims (6)
- 一般式R−M−X3(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池の梱包物であって、
巻芯にフレキシブル太陽電池を巻き付けた捲回物と、前記捲回物を密封する、アルミニウムを含む耐湿層と、該耐湿層上に形成された25℃における貯蔵弾性率が1GPa以上4GPa以下の樹脂組成物からなる耐衝撃層を有する保護シートからなる
ことを特徴とするフレキシブル太陽電池梱包物。 - 巻芯の平均外径が40mm以上であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル太陽電池梱包物。
- 巻芯は樹脂からなり、前記巻芯の平均外径が40mm以上であることを特徴とする請求項1記載フレキシブル太陽電池梱包物。
- 捲回物は、両端部が保護体により覆われていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレキシブル太陽電池梱包物。
- 一般式R−M−X3(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を梱包する方法であって、
巻芯に前記フレキシブル太陽電池を巻き付けて捲回物を得る工程と、
前記捲回物を、アルミニウムを含む耐湿層と、該耐湿層上に形成された25℃における貯蔵弾性率が1GPa以上4GPa以下の樹脂組成物からなる耐衝撃層を有する保護シートで密封してフレキシブル太陽電池梱包物を得る工程を有する
ことを特徴とするフレキシブル太陽電池の梱包方法。 - 巻芯は樹脂からなり、前記巻芯の平均外径が40mm以上であることを特徴とする請求項5記載のフレキシブル太陽電池の梱包方法。
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