JP6683509B2 - フレキシブル太陽電池梱包物及びフレキシブル太陽電池の梱包方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を運搬、保存したときでも性能を低下させることがない、フレキシブル太陽電池梱包物、及び、フレキシブル太陽電池の梱包方法に関する。
近年、薄型化や軽量化による運搬、施工の容易さや、衝撃に強い点から、ポリイミドやポリエステル系の耐熱高分子材料や金属薄膜等を基材とする、フレキシブル太陽電池が注目されている。
フレキシブル太陽電池は、生産性の点からロールtoロール法により製造されることが多く、巻芯に巻き付けた捲回物の形で運搬することが便利である。
例えば、特許文献1には、フレキシブル太陽電池セルの受光面側に透光性の保護層を設けるステップと、保護層を設けられたフレキシブル太陽電池セルの受光面側を外側にして丸めるステップと、丸められたフレキシブル太陽電池セルを第1導電性袋に入れるステップと、フレキシブル太陽電池セルが入った第1導電性袋を遮光性の第1円筒に入れるステップと、第1導電性袋の内部にガスを充填するステップと、第1導電性袋の開口部を閉じるステップとを備えるフレキシブル太陽電池セルの梱包方法が開示されている。
特開2013−212860号公報
本発明者らは、新規なフレキシブル太陽電池として、一般式R−M−Xで表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を検討している。光電変換層に特定の有機無機ペロブスカイト化合物を用いることにより、高い光電変換効率を有する太陽電池を製造することができる。
しかしながら、このような有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を、特許文献1に記載されたような捲回物にして梱包した場合、極端に性能が低下してしまうことがあった。
本発明は、上記現状に鑑み、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を運搬、保存したときでも性能を低下させることがない、フレキシブル太陽電池梱包物、及び、フレキシブル太陽電池の梱包方法を提供することを目的とする。
本発明は、一般式R−M−X(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池の梱包物であって、巻芯にフレキシブル太陽電池を巻き付けた捲回物と、前記捲回物を密封する、アルミニウムを含む耐湿層と、該耐湿層上に形成された25℃における貯蔵弾性率が4GPa以下の樹脂組成物からなる耐衝撃層を有する保護シートからなるフレキシブル太陽電池梱包物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池(以下、「有機無機ペロブスカイト太陽電池」ともいう。)を従来公知の梱包方法で梱包したときに、極端に性能が低下してしまう原因について検討した。その結果、有機無機ペロブスカイト太陽電池が水分に弱く、湿気によってその性能が低下してしまうことが原因であることを見出した。更に、運搬時に梱包物が衝撃を受けた場合、衝撃によって封止材の一部が破損してしまった場合には、急速に性能が低下してしまう。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、巻芯にフレキシブル太陽電池を巻き付けた捲回物を、耐湿層と耐衝撃層を有する保護シートにより密封することにより、有機無機ペロブスカイト太陽電池であっても、性能を低下させることなく運搬、保存できることを見出し、本発明を完成した。
本発明のフレキシブル太陽電池梱包物(以下、単に「梱包物」ともいう。)は、巻芯に有機無機ペロブスカイト太陽電池を巻き付けた捲回物と、該捲回物を密封する保護シートからなる。
図1に本発明のフレキシブル太陽電池梱包物の一例を説明する模式図を示した。図1においてフレキシブル太陽電池梱包物1は、捲回物2と該捲回物2を密封する保護シート3からなる。ここで捲回物2は、巻芯21に有機無機ペロブスカイト太陽電池22を巻き付けたものである。また、保護シート3は、耐湿層31と耐衝撃層32とからなる。なお、図1(a)はフレキシブル太陽電池梱包物1の透視図であり、図1(b)はA−A線断面図である。
まず、有機無機ペロブスカイト太陽電池について説明する。
上記有機無機ペロブスカイト太陽電池は、一般式R−M−X(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有する。上記光電変換層に上記有機無機ペロブスカイト化合物を用いることにより、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
なお、本明細書中、層とは、明確な境界を有する層だけではなく、含有元素が徐々に変化する濃度勾配のある層をも意味する。なお、層の元素分析は、例えば、太陽電池の断面のFE−TEM/EDS線分析測定を行い、特定元素の元素分布を確認する等によって行うことができる。また、本明細書中、層とは、平坦な薄膜状の層だけではなく、他の層と一緒になって複雑に入り組んだ構造を形成しうる層をも意味する。
上記Rは有機分子であり、C(l、m、nはいずれも正の整数)で示されることが好ましい。
上記Rは、具体的には例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、イミダゾリン、カルバゾール及びこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CHNH)等)やフェネチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン及びこれらのイオンやフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びこれらのイオンがより好ましい。
上記Mは金属原子であり、例えば、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウム等が挙げられる。これらの金属原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子であり、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、セレン等が挙げられる。これらのハロゲン原子又はカルコゲン原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、構造中にハロゲンを含有することで、上記有機無機ペロブスカイト化合物が有機溶媒に可溶になり、安価な印刷法等への適用が可能になることから、ハロゲン原子が好ましい。更に、上記有機無機ペロブスカイト化合物のエネルギーバンドギャップが狭くなることから、ヨウ素がより好ましい。
上記有機無機ペロブスカイト化合物は、体心に金属原子M、各頂点に有機分子R、面心にハロゲン原子又はカルコゲン原子Xが配置された立方晶系の構造を有することが好ましい。
図2は、体心に金属原子M、各頂点に有機分子R、面心にハロゲン原子又はカルコゲン原子Xが配置された立方晶系の構造である、有機無機ペロブスカイト化合物の結晶構造の一例を示す模式図である。詳細は明らかではないが、上記構造を有することにより、結晶格子内の八面体の向きが容易に変わることができるため、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上すると推定される。
上記有機無機ペロブスカイト化合物は、結晶性半導体であることが好ましい。結晶性半導体とは、X線散乱強度分布を測定し、散乱ピークが検出できる半導体を意味している。上記有機無機ペロブスカイト化合物が結晶性半導体であることにより、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上する。
また、結晶化の指標として結晶化度を評価することもできる。結晶化度は、X線散乱強度分布測定により検出された結晶質由来の散乱ピークと非晶質部由来のハローとをフィッティングにより分離し、それぞれの強度積分を求めて、全体のうちの結晶部分の比を算出することにより求めることができる。
上記有機無機ペロブスカイト化合物の結晶化度の好ましい下限は30%である。結晶化度が30%以上であると、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上する。結晶化度のより好ましい下限は50%、更に好ましい下限は70%である。
また、上記有機無機ペロブスカイト化合物の結晶化度を上げる方法として、例えば、熱アニール、レーザー等の強度の強い光の照射、プラズマ照射等が挙げられる。
上記光電変換層は、上記有機無機ペロブスカイト化合物に加えて、更に、有機半導体又は無機半導体を含んでいてもよい。なお、ここでいう有機半導体又は無機半導体は、後で記す電子輸送層又はホール輸送層としての役割を果たしてもよい。
上記有機半導体として、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のチオフェン骨格を有する化合物等が挙げられる。また、例えば、ポリパラフェニレンビニレン骨格、ポリビニルカルバゾール骨格、ポリアニリン骨格、ポリアセチレン骨格等を有する導電性高分子等も挙げられる。更に、例えば、フタロシアニン骨格、ナフタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ベンゾポルフィリン骨格等のポルフィリン骨格、スピロビフルオレン骨格等を有する化合物や、表面修飾されていてもよいカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等のカーボン含有材料も挙げられる。
上記無機半導体として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛、CuSCN、CuO、CuI、MoO、V、WO、MoS、MoSe、CuS等が挙げられる。
上記光電変換層は、上記有機半導体又は上記無機半導体を含む場合、薄膜状の有機半導体又は無機半導体部位と薄膜状の有機無機ペロブスカイト化合物部位とを積層した積層体であってもよいし、有機半導体又は無機半導体部位と有機無機ペロブスカイト化合物部位とを複合化した複合膜であってもよい。製法が簡便である点では積層体が好ましく、上記有機半導体又は上記無機半導体中の電荷分離効率を向上させることができる点では複合膜が好ましい。
上記薄膜状の有機無機ペロブスカイト化合物部位の厚みは、好ましい下限が5nm、好ましい上限が5000nmである。上記厚みが5nm以上であれば、充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが5000nm以下であれば、電荷分離できない領域が発生することを抑制できるため、光電変換効率の向上につながる。上記厚みのより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は20nm、更に好ましい上限は500nmである。
上記光電変換層が、有機半導体又は無機半導体部位と有機無機ペロブスカイト化合物部位とを複合化した複合膜である場合、上記複合膜の厚みの好ましい下限は30nm、好ましい上限は3000nmである。上記厚みが30nm以上であれば、充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが3000nm以下であれば、電荷が電極に到達しやすくなるため、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は40nm、より好ましい上限は2000nmであり、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は1000nmである。
上記有機無機ペロブスカイト太陽電池は、上記光電変換層が電極と対向電極との間に配置された積層体である。
上記電極及び上記対向電極の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。なお、上記対向電極は、パターニングされた電極であることが多い。
上記電極及び上記対向電極の材料として、例えば、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/Al混合物、Al/LiF混合物、金等の金属、CuI、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)等の導電性透明材料、導電性透明ポリマー等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記電極及び上記対向電極は、それぞれ陰極になっても、陽極になってもよい。
上記積層体においては、上記電極と上記光電変換層との間に、電子輸送層が配置されていてもよい。
上記電子輸送層の材料は特に限定されず、例えば、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、シアノ基含有ポリフェニレンビニレン、ホウ素含有ポリマー、バソキュプロイン、バソフェナントレン、ヒドロキシキノリナトアルミニウム、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸化合物、ペリレン誘導体、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、フルオロ基含有フタロシアニン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛等が挙げられる。
上記電子輸送層は、薄膜状の電子輸送層のみからなっていてもよいが、多孔質状の電子輸送層を含むことが好ましい。特に、上記光電変換層が、有機半導体又は無機半導体部位と有機無機ペロブスカイト化合物部位とを複合化した複合膜である場合、より複雑な複合膜(より複雑に入り組んだ構造)が得られ、光電変換効率が高くなることから、多孔質状の電子輸送層上に複合膜が成膜されていることが好ましい。
上記電子輸送層の厚みは、好ましい下限が1nm、好ましい上限が2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分にホールをブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、電子輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記電子輸送層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
上記積層体においては、上記対向電極と上記光電変換層との間に、ホール輸送層が配置されていてもよい。
上記ホール輸送層の材料は特に限定されず、例えば、P型導電性高分子、P型低分子有機半導体、P型金属酸化物、P型金属硫化物、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンのポリスチレンスルホン酸付加物、カルボキシル基含有ポリチオフェン、フタロシアニン、ポルフィリン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化銅、硫化スズ等、フルオロ基含有ホスホン酸、カルボニル基含有ホスホン酸、CuSCN、CuI等の銅化合物、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン含有材料等が挙げられる。
上記ホール輸送層の厚みは、好ましい下限は1nm、好ましい上限は2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分に電子をブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、ホール輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
上記積層体は、更に、透明プラスチック基板、金属箔等からなるフレキシブル基板を有していてもよい。
上記有機無機ペロブスカイト太陽電池は、封止層により封止されていることが好ましい。これにより、有機無機ペロブスカイト太陽電池は高い耐湿性を発揮することができる。
上記封止層として用いられる材料は特に限定されず、公知の材料を用いることができ、有機材料でも無機材料でもよい。即ち、上記封止層は、有機材料からなる有機封止層を含んでいても無機材料からなる無機封止層を含んでいてもよい。更に、上記封止層は、有機封止層と無機封止層とをともに含んでいることも好ましい。
上記有機材料としては、硬化性樹脂、ホットメルト樹脂等が挙げられる。
上記無機材料としては、無機酸化物、無機窒化物、無機硫化物等が挙げられ、有機基を有するシリコーン樹脂等でもよい。具体的には、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、複数の金属からなる複合酸化物窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。なかでも、ガスバリア性に優れ、フレキシブル太陽電池の耐久性をより高めることができることから、上記封止層は無機封止層を含み、上記無機封止層は無機酸化物又は無機窒化物からなることが好ましい。
上記封止層を形成する方法は特に限定されず、封止層として用いられる材料が有機材料であれば、ディスペンス、スクリーン印刷等の印刷法が挙げられる。封止層として用いられる材料が無機材料であれば、スパッタリング、蒸着等が挙げられる。
上記封止層を形成する方法として、具体的には例えば、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池の全体を覆うようにして封止層を形成する方法等が挙げられる。
上記有機封止層の厚みは、好ましい下限が100nm、好ましい上限が100000nmである。上記厚みが100nm以上であれば、上記有機封止層によって上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を充分に覆いつくすことができる。上記厚みが100000nm以下であれば、上記有機封止層は側面から浸入してくる水蒸気を充分にブロックすることができる。上記厚みのより好ましい下限は500nm、より好ましい上限は50000nmであり、更に好ましい下限は1000nm、更に好ましい上限は20000nmである。
上記無機封止層の厚みは、好ましい下限が30nm、好ましい上限が3000nmである。上記厚みが30nm以上であれば、上記無機封止層が充分な水蒸気バリア性を有することができ、フレキシブル太陽電池の耐久性が向上する。上記厚みが3000nm以下であれば、上記無機封止層の厚みが増した場合であっても、発生する応力が小さいため、上記無機封止層、電極、半導体層等の剥離を抑制することができる。上記厚みのより好ましい下限は50nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は100nm、更に好ましい上限は500nmである。
なお、無機封止層の厚みは、光学膜厚測定装置(例えば、大塚電子社製、FE−3000等)を用いて測定することができる。
上記捲回物は、巻芯に上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を巻き付けたものである。このような捲回物とすることにより、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を衝撃から守ることができるとともに、コンパクトに運搬、保管が可能となり、かつ、使用時には有機無機ペロブスカイト太陽電池を巻き出して用いることができる。
上記巻芯の形状は特に限定されないが、円柱状又は円筒状であることが好ましい。上記巻芯が円柱状又は円筒状であることにより、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を均一に巻き付けることができる。また、円柱状又は円筒状の両端に円形の板がついているボビン状の巻芯も好適である。
上記巻芯の材質(組成)は特に限定されず、木材、樹脂、金属等からなるものを用いることができる。なかでも、水分の含有量が小さく、衝撃吸収性に優れることから、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ABS樹脂等の樹脂からなる巻芯が好適である。
上記巻芯は、平均外径が40mm以上であることが好ましい。平均外径が40mm以上の巻芯を用いることにより、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を巻き付けたときに、曲げ圧力によって有機無機ペロブスカイト太陽電池やこれを封止する封止層が破損するのを防止することができる。上記巻芯の平均外径は、80mm以上であることがより好ましい。上記巻芯の平均外径の上限は特に限定されないが、取り扱い性等の観点から300mm以下であることが好ましい。
上記巻芯は、平均内径が25mm以上であることが好ましい。平均内径が25mm以上の巻芯を用いることにより、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池を巻き付けるときの作業性が向上する。上記巻芯の平均内径は、30mm以上であることがより好しい。上記巻芯の平均内径の上限は特に限定されないが、上記巻芯の強度等の観点から平均内径と平均外径の差が5mm以上であることが好ましい。
上記捲回物は、両端部が保護体により覆われていることが好ましい。捲回物の両端部を保護体で保護することにより、外部からの衝撃を直接的に受けにくくなり、より高い耐久性を発揮することができる。
上記保護体は、上記有機無機ペロブスカイト太陽電池の両端部が直接上記保護シートと接しないような設計となっていれば、材料、形状ともに限定されないが、例えば、ポリウレタンからなる発泡材等を用いることができる。
本発明のフレキシブル太陽電池の梱包物は、上記捲回物が耐湿層と、該耐湿層上に形成された耐衝撃層を有する保護シートにより密封されている。このような保護シートで密封することにより、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を運搬、保存したときでも確実に湿気や衝撃から太陽電池を保護して、その性能を低下させることがない。
上記耐湿層は、アルミニウムを含有する。アルミニウムは低透湿性の素材であることから、アルミニウムを含む耐湿層を設けることにより、外部の水分の侵入によりフレキシブル太陽電池が劣化するのを防止することができる。また、アルミニウムは柔軟であるため、クラック等を発生しにくいという利点もある。
上記耐湿層の厚さの好ましい下限は1μmである。上記耐湿層の厚さを1μm以上とすることにより、より確実に水分を遮断して、フレキシブル太陽電池が劣化するのを防止することができる。上記耐湿層の厚さのより好ましい下限は5μm、更に好ましい下限は10μmである。上記耐湿層の厚さの上限は特に限定されないが、運搬性や取り扱い性等の観点から、100μm程度が上限である。
上記耐湿層は、水蒸気透過係数の好ましい上限が10−3g/m/dayである。上記耐湿層の水蒸気透過係数を10−3g/m/day以下とすることにより、より確実に水分を遮断して、フレキシブル太陽電池が劣化するのを防止することができる。上記水蒸気透過係数のより好ましい上限は10−4g/m/day、更に好ましい上限は10−5g/m/dayである。
なお、本明細書において水蒸気透過係数は、JIS K7126(差圧法)に準ずる方法により測定される値を意味する。
上記耐衝撃層は、25℃における貯蔵弾性率が4GPa以下の樹脂組成物からなる。このような耐衝撃層を設けることにより、本発明のフレキシブル太陽電池の梱包物を運搬、保管する際に、外部から衝撃を受けても、これを緩和して有機無機ペロブスカイト太陽電池の封止層等が破損して、有機無機ペロブスカイト太陽電池が劣化するのを防止することができる。上記耐衝撃層を構成する樹脂組成物は、25℃における貯蔵弾性率が3.5GPa以下であることが好ましく、3GPa以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において貯蔵弾性率は、JIS K 7244−4に準ずる方法により測定される値を意味する。
上記耐衝撃層を構成する樹脂組成物は、上記貯蔵弾性率を満たすものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂や、アクリル重合体等の硬化性樹脂を用いることができる。
また、上記樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にポリエチレングリコール、シリコーンポリマー等の可塑剤を配合したものであってもよい。また、上記樹脂組成物は、有機フィラー、無機フィラー等の添加により貯蔵弾性率が調整されたものであってもよい。
これらの樹脂や可塑剤は、各々単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
上記耐衝撃層の形状は、上記貯蔵弾性率を満たすものであれば特に限定されず、シート状体のほか、発泡体等であってもよい。
上記耐衝撃層の厚さの好ましい下限は10μmである。上記耐衝撃層の厚さを10μm以上とすることにより、より確実に衝撃を緩和して、フレキシブル太陽電池が劣化するのを防止することができる。上記耐衝撃層の厚さのより好ましい下限は15μm、更に好ましい下限は20μmである。上記耐衝撃層の厚さの上限は特に限定されないが、運搬性や取り扱い性等の観点から、0.3mm程度が上限である。
上記耐衝撃層は、上記捲回物を衝撃から保護できてればよく、上記耐湿層の一方の面にのみ形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。また、上記耐湿層の全面に形成されていてもよく、一部にのみ形成されていてもよい。
上記耐湿層上に上記耐衝撃層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、熱ラミネートによる方法等が挙げられる。
上記捲回物を上記保護シートで密封する方法は特に限定されず、例えば、上記捲回物を上記保護シートで覆った後に、上記保護シートの両端部を貼り合わせる方法等が挙げられる。上記耐衝撃層が熱可塑性樹脂からなる場合には、熱ラミネートにより、容易に密封することができる。
なお、上記保護シートが上記耐湿層の一方の面のみに上記耐衝撃層を有する場合には、上記耐衝撃層側が上記捲回物になるように配置して密封することが好ましい。
一般式R−M−X(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を梱包する方法であって、巻芯に上記フレキシブル太陽電池を巻き付けて捲回物を得る工程と、上記捲回物を、アルミニウムを含む耐湿層と、該耐湿層上に形成された25℃における貯蔵弾性率が4GPa以下の樹脂組成物からなる耐衝撃層を有する保護シートで密封してフレキシブル太陽電池梱包物を得る工程を有するフレキシブル太陽電池の梱包方法もまた、本発明の1つである。
本発明によれば、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を運搬、保存したときでも性能を低下させることがない、フレキシブル太陽電池梱包物、及び、フレキシブル太陽電池の梱包方法を提供することができる。
本発明のフレキシブル太陽電池梱包物の一例を説明する模式図である。 有機無機ペロブスカイト化合物の結晶構造の一例を示す模式図である。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(1)フレキシブル太陽電池の調製
厚み50μmのチタン箔基板上に、有機バインダとしてのポリイソブチルメタクリレートと酸化チタン(平均粒子径10nmと30nmとの混合物)とを含有する酸化チタンペーストのエタノール希釈液を、ダイコーターを用いて塗工した。その後500℃で10分間焼成し、厚み200nmの薄膜状の電子輸送層を形成した。次いでヨウ化鉛をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させて1Mの溶液を調製し、これを上記電子輸送層上にダイコーターを用いて塗工し成膜した。更にヨウ化メチルアンモニウムを2−プロパノールに溶解させて0.5Mの溶液を調製し、これを上記のヨウ化鉛の層の上にダイコーターを用いて塗工することによって有機無機ペロブスカイト化合物であるCHNHPbI層を形成した。その後80℃にて30分間加熱処理を行った。更に、ホール輸送層としてPoly(4−butylphenyl−diphenyl−amine)(1−Material社製)の1重量%クロロベンゼン溶液を有機無機ペロブスカイト化合物部位上にダイコーターを用いて塗工し、50nmの厚みに積層し、光電変換層を形成した。
光電変換層上に、対向電極(陽極)として、電子ビーム蒸着法により厚み300nmのITO膜を形成した。
更に、環状オレフィンポリマーであるTOPAS9014(ポリプラスチックス社製)の10%シクロヘキサン溶液をITO膜上にドクターブレードにより塗布し、有機溶媒を乾燥させて厚み5μmの樹脂層を形成した。
得られたサンプルをスパッタリング装置の基板ホルダーに取り付け、更に、スパッタリング装置のカソードAにZnSn合金(Zn:Sn=95:5重量%)ターゲットを、カソードBにSiターゲットを取り付けた。スパッタリング装置の成膜室を真空ポンプにより排気し、5.0×10−4Paまで減圧した。その後、アルゴンガス流量を50sccm、酸素ガス流量を50sccm、カソードAの電源出力を500W、カソードBの電源出力を1500Wとする成膜条件でスパッタリングし、無機層としてZnSnO(Si)薄膜を100nm形成した。
得られたサンプル上に更に上記と同じ方法にて樹脂層を形成し、更にその後上記と同じ方法で無機層を成膜し、封止層で封止したフレキシブル太陽電池を得た。
(2)フレキシブル太陽電池梱包物の製造
得られたフレキシブル太陽電池を、ポリスチレンからなる平均外径が75mmの円柱状の巻芯に捲回して捲回物を得た。その後捲回物の両端部に一辺が50mmの保護体を取り付けた。
得られた捲回物を保護シートで覆った後、保護シートの両端部を熱ラミネートにより密閉して、フレキシブル太陽電池梱包物を得た。
ここで、アルミニウムからなる厚さ7μmの耐湿層の一方の面に、ポリプロピレンからなる厚さ50μm、25℃における貯蔵弾性率が2GPaである耐衝撃層が形成された保護シートを用いた。また、耐衝撃層が形成された側が捲回物側となるように覆った。
(実施例2〜11、比較例1)
巻芯の平均外径、巻芯の組成、耐湿層の組成、耐衝撃層の組成、耐衝撃層の厚み及び耐衝撃層の25℃における貯蔵弾性率が表1に示した保護シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル太陽電池梱包物を製造した。耐衝撃層の25℃における貯蔵弾性率は、組成の選択に加えてシリカフィラー(アドマテックス社製、SE−4050−SPE)を充填することにより調整した。
(比較例2)
アルミニウムからなる厚さ7μmの耐湿層のみからなる保護シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル太陽電池梱包物を製造した。
(比較例3)
ポリプロピレンからなる厚さ50μm、25℃における貯蔵弾性率が2GPaである耐衝撃層のみからなる保護シートを用いた以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル太陽電池梱包物を製造した。
<評価>
実施例及び比較例で得られたフレキシブル太陽電池梱包物について、以下の評価を行った。
(輸送耐久試験)
得られたフレキシブル太陽電池梱包物の各々10サンプルを、通常の方法でトラックの荷台に積み込み、JR島本駅前〜JR京都駅前間を輸送した。
その後、梱包した状態で湿度85%、温度85℃の条件下300時間置いて高温・高湿耐久試験を行った。その後フレキシブル太陽電池梱包物を開け、捲回物からフレキシブル太陽電池を巻き出した。巻き出したフレキシブル太陽電池を、湿度85%、温度85℃の条件下に300時間置いて高温・高湿耐久試験を行った。フレキシブル太陽電池の梱包前、及び、梱包開封後の高温・高湿耐久試験後の太陽電池の電極間に、電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、強度100mW/cmのソーラーシミュレーター(山下電装社製)を用いて光電変換効率を測定した。
高温・高湿耐久試験前後の光電変換効率の低下率が10%以上であるものを不良品とし、10サンプルでの不良品の発生率を算出した。
結果を表1に示した。
Figure 0006683509
本発明によれば、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を運搬、保存したときでも性能を低下させることがない、フレキシブル太陽電池梱包物、及び、フレキシブル太陽電池の梱包方法を提供することができる。
1 フレキシブル太陽電池梱包物
2 捲回物
21 巻芯
22 有機無機ペロブスカイト太陽電池
3 保護シート
31 耐湿層
32 耐衝撃層

Claims (6)

  1. 一般式R−M−X(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池の梱包物であって、
    巻芯にフレキシブル太陽電池を巻き付けた捲回物と、前記捲回物を密封する、アルミニウムを含む耐湿層と、該耐湿層上に形成された25℃における貯蔵弾性率が1GPa以上4GPa以下の樹脂組成物からなる耐衝撃層を有する保護シートからなる
    ことを特徴とするフレキシブル太陽電池梱包物。
  2. 巻芯の平均外径が40mm以上であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル太陽電池梱包物。
  3. 巻芯は樹脂からなり、前記巻芯の平均外径が40mm以上であることを特徴とする請求項1記載フレキシブル太陽電池梱包物。
  4. 捲回物は、両端部が保護体により覆われていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフレキシブル太陽電池梱包物。
  5. 一般式R−M−X(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するフレキシブル太陽電池を梱包する方法であって、
    巻芯に前記フレキシブル太陽電池を巻き付けて捲回物を得る工程と、
    前記捲回物を、アルミニウムを含む耐湿層と、該耐湿層上に形成された25℃における貯蔵弾性率が1GPa以上4GPa以下の樹脂組成物からなる耐衝撃層を有する保護シートで密封してフレキシブル太陽電池梱包物を得る工程を有する
    ことを特徴とするフレキシブル太陽電池の梱包方法。
  6. 巻芯は樹脂からなり、前記巻芯の平均外径が40mm以上であることを特徴とする請求項5記載のフレキシブル太陽電池の梱包方法。
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