JP5091140B2 - 多層乳酸系軟質フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、天然植物由来の樹脂である乳酸系重合体を主原料とする多層乳酸系軟質フィルム、詳しくは、例えば食品包装用ラップフィルム、中でも家庭等で使用される小巻ラップフィルムなどとして好適に用いることができる多層乳酸系軟質フィルムに関する。
軟質フィルムと言えば、ショッピングバッグやゴミ袋、食品や菓子、化粧品、医薬品などを包装するラップフィルム、農業用・園芸用フィルム、温室用フィルム、製版用フィルム、粘着テープ、防水シートなど、様々な用途に利用されている。
食品包装用ラップフィルム、中でも家庭等で調理した食品を陶器製のお皿に載せたまま簡単に包装することができる包装用フィルム(本発明では、業務用のラップフィルムと区別するため、 “小巻ラップフィルム”と称する。)は、他の用途に比べて特殊な条件が要求されるため、この用途に好適なフィルムを作製することは簡単なことではない。
このような小巻ラップフィルムは、カッター刃を具備した紙箱の中に筒に巻かれた状態で収納されており、包装する際は、フィルムを紙箱から引き出して食品を覆うように被せ、フィルムを紙箱に具備されたカッター刃に押し当て、このカッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより引き裂きを幅方向に伝播させるようにしてフィルムをカットし、そしてフィルムの端部を容器に密着させて包装するのが一般的である。このため、小巻ラップフィルムには、透明性のほか、容器への密着性、紙箱からスムースにフィルムを引き出すことができる引き出し性、引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸条件が要求される。
現在市販されている小巻ラップフィルムとしては、延伸したポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするフィルムのほか、押出しキャストしたポリエチレン系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂等を主成分とするフィルムなどを挙げることができる。
近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、天然植物由来の樹脂が注目されている。中でも、乳酸系重合体は、とうもろこしやジャガイモ等のでんぷんから得られる天然植物由来の樹脂であり、量産が可能であるばかりか、透明性に優れているため、軟質フィルムの原料として注目されている。しかし、乳酸系重合体は、剛性が高いため、乳酸系重合体を主原料とした軟質フィルム、中でも食品包装用ラップフィルム、その中でも特に小巻ラップフィルムを製品化することは簡単なことではなかった。
乳酸系重合体を主成分とする軟質フィルムとしては、例えば、特許文献1において、乳酸系樹脂と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体と、分子量2,000以下の可塑剤とからなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、乳酸系樹脂組成物のTgは単一であり、さらに、20℃における貯蔵弾性率の値が1〜4GPa、100℃における貯蔵弾性率が10〜100MPa、20℃における損失正接が0.1〜0.8である乳酸系軟質フィルムが家庭用ラップフィルムとして開示されている。
特許文献2には、家庭用ラップフィルムの特性であるカット適性、包装適性、耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムとして、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸系樹脂組成物、例えば乳酸系樹脂と可塑剤とを60:1〜99:1の質量割合で含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルムが開示されている。
また、特許文献3には、乳酸系樹脂と、乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸の共重合体とからなる乳酸系樹脂組成物を用いてなる乳酸系軟質フィルムであって、乳酸系樹脂組成物のTgは単一であり、さらに、20℃における貯蔵弾性率の値が1〜4GPa、100℃における貯蔵弾性率が10〜100MPa、20℃における損失正接が0.1〜0.8である乳酸系軟質フィルムが家庭用ラップフィルムとして開示されている。
また、特許文献4には、生産性に優れたインフレーション法で、比較的低温で高い収縮率が得られる収縮シート状物を提供するべく、最外層がポリオレフィン系樹脂を主成分とする層であり、該ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層の間にポリ乳酸を主成分とする層を少なくとも1層有する収縮シート状物が開示されている。そして、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層とポリ乳酸を主成分とする層との間に、アクリル変性ポリエチレン系樹脂を接着層として用いることが開示されている。
特開2006−16605号公報 WO/2005/082981 特開2005−336468号公報 特開2002−19053号公報
特許文献1に開示された乳酸系軟質フィルムは、小巻ラップフィルムに作り込むことができる上、乳酸系樹脂と共重合体との完全相溶ポリマーブレンド系に可塑剤を添加するため、可塑剤のブリードアウトを抑制することもできる。しかし、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておくと、乳酸系樹脂の分子量が経時的に低下してしまったり、フィルムがブロッキングを起こしてフィルム同士がくっついたりするなどの課題を抱えていた。
また、上記特許文献2及び3の如く、乳酸系重合体に可塑剤を配合したものや、乳酸系樹脂と乳酸系樹脂及びジオール・ジカルボン酸とからなるものについても、乳酸系樹脂組成物の結晶化速度が遅く、且つ乳酸系重合体のガラス転移点(Tg)を室温付近まで下げることになるため、キャスティング法などで急速に冷却してラップフィルムを製膜した場合、非晶のままシーティングされることで弾性率が下がってしまい、そのまま長尺で巻いてしまうと、巻締力などで巻物がブロッキングすることがあった。
本発明は、かかる課題に鑑みて、乳酸系重合体を主原料とする乳酸系軟質フィルムにおいて、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングを生じることがなく、乳酸系重合体の分子量低下度合いを抑えることができ、しかも、食品包装用ラップフィルム、特に小巻ラップフィルムに求められる諸条件を満足するように作り込むことができる乳酸系軟質フィルムを提供せんとするものである。
かかる課題に鑑み、本発明は、少なくとも3層を備えた多層乳酸系軟質フィルムであって、両表面層は、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分として含有し、中間層は、乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)とからなる乳酸系混合樹脂組成物(B)を主成分として含有することを特徴とする多層乳酸系軟質フィルムを提案する。
本発明の多層乳酸系軟質フィルムは、多層乳酸系軟質フィルムの核となる中間層を、乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)と、好ましくはさらに可塑剤(C)とを主成分として形成するため、植物度、柔軟性、透明性、生分解性に優れ、食品包装用ラップフィルム、特に小巻ラップフィルムに求められる諸条件を満足し得る軟質フィルムに作り込むことができる。しかも、この中間層を、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分とする表面層で被覆することにより、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいても、乳酸系樹脂組成物の分子量低下を抑えることができ、フィルムのブロッキングを抑えてフィルム同士がくっつく問題を解消することができる。さらには、該表面層に防曇剤などを含ませることができるため、フィルムの防曇性などを高めることもできる。
(用語の解説)
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものを称し(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、通常はその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品を称する。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意図と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意図も包含する。
以下、本発明の実施形態の一例としての多層乳酸系軟質フィルム(以下「本乳酸系軟質フィルム」という)について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本乳酸系軟質フィルムは、少なくとも3層を備えた多層フィルムであって、両表面層は、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分として含有する層であり、中間層は、乳酸系重合体(B−1)と、乳酸系共重合体(B−2)とを主成分として含有する層である。
本乳酸系軟質フィルムは、少なくとも上記の中間層及び両表面層の3層を備えた多層フィルムであればよく、好ましい積層構成として、例えば、表面層/接着層/中間層/接着層/表面層をこの順に有する5層以上の積層フィルムを挙げることができる。この際、例えば各層の間に再生層を介在させてもよい。
そこで、以下の説明では、本乳酸系軟質フィルムの構成要素となり得る表面層、中間層、接着層および再生層の順に説明し、次いで、本乳酸系軟質フィルムの積層構成、特性値、製造方法等について説明する。
<表面層>
本乳酸系軟質フィルムにおいて、表裏層は、ヒートシールや密着等により包装体を形成した際の気密性を高めるとともに、引裂き強度や突き刺し強度、衝撃強度などの機械的強度を高める役割を担い得る層である。また、インフレーション成形や、チューブラー延伸法などによるフィルム成形の際には、成形時の安定性を高める機能をフィルムに付与することもできる。包装フィルムのブロッキング防止層としての役割を担うこともできる。可塑剤などの添加剤が中間層に添加された場合にはこれらのブリードアウトを防ぐことができる。表面層に防曇剤、帯電防止剤、滑剤等を添加することができるから、フィルムに各種機能を付与することができる。さらには、乳酸系重合体(B−1)や乳酸系共重合体(B−2)の加水分解による分子量の経時的低下を抑制する役割を担うこともできる。
(ポリオレフィン系重合体(A))
ポリオレフィン系重合体としては、エチレン系重合体、ブチレン系重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系重合体、ポリ4−メチルペンテン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。これらの樹脂は、前記に挙げたうちの1種類の樹脂であってもよいし、また、2種類以上の樹脂からなる混合樹脂であってもよい。
これらのポリオレフィン系重合体に、エチレン・プロピレンゴム等を分散複合化させたポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
上記の中でも、表面層の役割、すなわち、包装フィルムのブロッキング防止、スリップ性と表面粘着性との適度なバランス、防曇性などの表面特性、製膜時の成形加工安定性、更には加水分解による乳酸系混合樹脂組成物(B)の分子量の経時的低下の抑制などの役割を考慮すると、表面層の主成分はエチレン系重合体であるのが好ましい。
エチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの中から選ばれる1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂、或いは、エチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエン、非共役ジエンなどの不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体或いは多元共重合体、または、前記エチレン系重合体、前記共重合体、前記多元共重合体のうちの2種類以上の組合わせからなる混合樹脂を挙げることができる。これらエチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
中でも、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂が特に好ましい。
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を挙げることができる。
上記ポリオレフィン系重合体(A)の中でも、表面粘着性のバランス、防曇性などの表面特性および製膜時の成形加工安定性を重視する場合には、酢酸ビニル含量が10〜60質量%で、メルトフローレート(以下、「MFR」と略することがある。MFRの測定条件は、JIS K 7210に基づき190℃、荷重21.18Nであり、他のMFRも同様である。)が0.2〜20g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
このエチレン−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニル含量が10質量%以上であれば、結晶性が低いためフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、表面粘着性も発現し易いという点で好ましい。その一方、60質量%以下であれば、耐熱性やフィルム強度等を確保でき、防曇剤等を添加してもブリードアウトを抑制でき、しかも表面粘着性が強すぎないためにフィルムの巻き出し性や外観を良好とすることができるという点で好ましい。このような観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は10〜58質量%であるのがより好ましく、特に12〜56質量%であるのがさらに好ましい。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。このような観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは0.5〜18g/10分であるのがより好ましく、中でも1〜15g/10分がさらに好ましい。
他方、電子レンジ加熱に耐え得る電子レンジ耐熱性を重視する場合は、密度が0.90〜0.95g/cm3で、且つMFRが0.2〜20g/10分の線状低密度ポリエチレンが特に好ましい。
ポリオレフィン系重合体(A)の密度がこのような範囲内であれば、適度な結晶性を有するためフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好となり、しかもポリオレフィン系重合体(A)の融点がラップの実使用温度範囲、具体的には電子レンジ等で加熱した場合の雰囲気温度よりも高くなるため、得られるフィルムで食品を包装し、電子レンジ等で加熱した場合でも食品容器等にフィルムが溶けて貼りつくといった問題を生じることが無いため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン系重合体(A)の密度は0.90〜0.94g/cm3であるのが特に好ましく、中でも0.91〜0.94g/cm3であるのがさらに好ましい。
また、ポリオレフィン系重合体(A)のMFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となり、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなるため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン系重合体(A)のMFRは0.5〜18g/10分であるのが特に好ましく、中でも1〜15g/10分であるのがさらに好ましい。
上記ポリオレフィン系重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等を挙げることができる。
<中間層>
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、主成分として、乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)を含有する、言い換えれば乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)とからなる乳酸系混合樹脂組成物(B)を主成分として含有し、必要に応じてさらに可塑剤(C)を含有する層である。
(乳酸系重合体(B−1))
乳酸系重合体(B−1)としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系重合体の結晶性は低い方が好ましいから、中間層が可塑剤を含有する場合には、ポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低いポリ乳酸、例えばポリ(D−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を使用するのが好ましい。
なお、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものである。
乳酸系重合体(B−1)におけるD−乳酸(D体)とL−乳酸(L体)との比率(モル比)は、L体:D体=100:0〜85:15、または、L体:D体=0:100〜15:85であることが好ましく、中でも好ましくは、L体:D体=99.5:0.5〜85:15、または、L体:D体=0.5/99.5〜15:85である。かかる範囲内であれば、得られるフィルムの耐熱性を損ねることがない。
この場合も、可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系重合体の結晶性は低い方が好ましいから、好ましくはL体:D体=50:50〜94:6である。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。その場合、複数の乳酸系重合体のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにすればよい。例えばポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)とポリ(DL−乳酸)とをブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
乳酸系重合体の重合法としては、縮合重合法、開環重合法、その他公知の重合方法を採用することができる。
例えば縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、任意の結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
なお、乳酸系重合体は、少量の共重合成分として他のヒドロキシカルボン酸等を含んでいてもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでいてもよい。
乳酸系重合体は、重量平均分子量が5万〜40万の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは10万〜25万の範囲のものである。乳酸系重合体の重量平均分子量が5万以上であれば機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎて成形加工性が劣ることがない。
乳酸系重合体(B−1)としては、市販されている乳酸系重合体を用いることもできる。例えば、商品名「レイシア」シリーズ(三井化学(株)製)、商品名「Nature Works」シリーズ(NatureWorks社製)、商品名「U‘zシリーズ」(豊田自動車(株)製)等を挙げることができる。
(乳酸系共重合体(B−2))
乳酸系共重合体(B−2)は、乳酸系重合体を共重合してなる樹脂である。中でも、乳酸系重合体(B−1)と完全相溶ポリマーブレンドをなすものが好ましい。言い換えれば、乳酸系共重合体(B−2)と乳酸系重合体(B−1)とを混合してなるポリマーブレンド組成物が、示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる乳酸系共重合体(B−2)が好ましい。
ここで、混合樹脂組成物のガラス転移温度が単一であるとは、ポリマーブレンド組成物をJISK7121に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計を用いてガラス転移温度を測定した際に、ガラス転移温度を示すピークが1つだけ現れるという意味である。別の観点から見れば、前記ポリマーブレンド組成物を、歪み0.1%、振動周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JISK−7198A法の動的粘弾性測定)により測定した際に、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するという意味である。ポリマーブレンド組成物のガラス転移温度(或いは損失正接の極大値)が単一であるということは、乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)とがナノメートルオーダー(分子レベル)で相溶した状態にあることを意味し、非相溶のポリマーブレンドでは得られないレベルの透明性を得ることができる。
乳酸系共重合体(B−2)の好ましい一例として、例えば上記のような乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体を挙げることができる。
乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体を構成する乳酸系重合体としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれかであればよいが、乳酸系重合体(B−1)と完全相溶ポリマーブレンドをなす観点から言えば、乳酸系重合体(B−1)の構造単位と同じ構造のものが特に好ましい。
他方、ジオール・ジカルボン酸におけるジオール成分としては、特に限定するものではなく、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖状ジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の分岐鎖状ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールを挙げることができ、中でもポリプロピレングリコールが好ましい。
また、ジオール・ジカルボン酸におけるジカルボン酸成分としては、特に限定するものではなく、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の直鎖状ジカルボン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、エチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、2−エチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−エチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、2−エチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−エチルアジピン酸、メチルグルタル酸等の分岐状ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、ビスフェノールA、ビフェノール等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、中でもコハク酸が好ましい。
よって、乳酸系共重合体(B−2)を構成する乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体としては、乳酸系重合体と(ポリ)プロピレングリコールとコハク酸との共重合体が最も好ましい一例である。
また、上記に挙げた種類の乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体の中でも、乳酸系重合体を軟質化する効果の点から、歪み0.1%、振動周波数10Hzにて動的粘弾性測定(JISK−7198A法の動的粘弾性測定)により測定した損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する共重合体を選択して用いるのが好ましい。以下この点について詳述する。
ここで、損失正接の極大値が2つ存在する共重合体を「Aタイプ」と称し、損失正接の極大値が1つ存在する共重合体を「Bタイプ」と称することとする。損失正接の極大値が2つ存在する共重合体(Aタイプ)をブレンドしても乳酸系重合体(B−1)のガラス転移温度の低下による軟質化は図れないが、損失正接の極大値が1つ存在する共重合体(Bタイプ)をブレンドすることにより、乳酸系重合体(B−1)のガラス転移温度の低下による軟質化を図ることができる。これより、成分(B)としては、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在する共重合体(Bタイプ)が好ましいと言える。
ところで、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を挙げることができる。一般的に、共重合体の構造がブロック共重合体の場合には、前記条件にて測定した損失正接の極大値が2つ存在するタイプ(Aタイプ)となり、また、共重合体の構造がランダム共重合体の場合には、同条件にて測定した損失正接の極大値が1つ存在するタイプ(Bタイプ)となることから、乳酸系共重合体(B−2)の構造としては、ランダム共重合体であるのが好ましい。
乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体において、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との含有比率は、20℃における貯蔵弾性率、損失正接のピーク温度及び損失正接値が所望する範囲になるように調整するのが好ましい。その目安としては、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との質量割合が10:90〜70:30、特に30:70〜70:30、中でも特に40:60〜60:40となるように調整するのが好ましい。
なお、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体は、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用いて所定の分子量に調整することが可能である。ただし、加工性、耐久性の面から乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸の共重合体の重量平均分子量は5万〜30万の範囲が好ましく、10万〜25万の範囲のものがより好ましい。
乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体の製造方法に関しては特に限定するものではないが、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合或いはエステル交換反応させて得る方法や、ジオールとジカルボン酸を脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、乳酸系重合体と脱水・脱グリコール縮合或いはエステル交換反応する方法などを挙げることができる。
市販されている乳酸系重合体及びジオール・ジカルボン酸との共重合体を用いることもできる。具体的には、商品名「プラメートPD−350」(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。
前述のように、乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)とからなる乳酸系混合樹脂組成物(B)としては、両者のポリマーブレンド体(混合樹脂組成物)が完全相溶するもの、すなわち、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となるものが好ましく、中でも当該ガラス転移温度が0℃〜30℃、特に20℃〜30℃の範囲となるものがより好ましい。ガラス転移温度が0℃〜30℃の範囲内にあることにより、実使用環境温度下においてフィルムが硬すぎることが無く、適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができるようになるから、特に家庭用ラップフィルムとして好適である。
なお、乳酸系重合体(B−1)と完全相溶ポリマーブレンドをなす他の乳酸系共重合体を用いることもできる。例えば、乳酸系重合体とポリエチレングリコールとの共重合体などを好ましい例として挙げることができる。
乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)の合計分子量は10万以上であることが好ましい。そのためには、分子量の高い乳酸系重合体(B−1)をブレンドすることにより全体の分子量を高めることが好ましく、合計分子量が10万以上であればラップフィルムを製膜し易くすることができる。
また、乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の配合割合は、乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計中に占める乳酸系重合体(B−1)の割合が50〜80質量%であり、乳酸系共重合体(B−2)の割合が50〜20質量%であることが好ましい。
本乳酸系軟質フィルムにおいて、乳酸系共重合体(B−2)の割合を多くすれば透明性を損なうことなく柔軟性を付与することが可能であるが、乳酸系共重合体(B−2)の割合が多くなると、重量平均分子量が低下して10万以下となる場合があり、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が発現されないことが考えられる。また、乳酸系共重合体(B−2)の割合が多くなると溶融粘度が低くなり、成形加工性が低下するようになる。これらの点からすると、乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計中に占める乳酸系共重合体(B−2)の割合は50質量%を上限とする必要があり、40質量%以下とするのがより好ましい。その一方、乳酸系共重合体(B−2)の割合が少ないと、可塑化効果が低下して柔軟性に乏しいフィルムとなるため、この点から乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計中に占める乳酸系共重合体(B−2)の割合は20質量%を下限とする必要があり、30質量%以上とするのがより好ましい。
(可塑剤(C))
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、乳酸系混合樹脂組成物(B)のみを主成分として構成したとしても、乳酸系共重合体(B−2)の割合を多くすれば透明性を損なうことなくフィルムを柔軟化することはできる。しかし、乳酸系共重合体(B−2)の割合が多くなると、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が低下したり、溶融粘度が低くなって成形加工性が低下したりすることがあるため、必要に応じて可塑剤(C)を配合するのが好ましい。この際、乳酸系共重合体(B−2)と可塑剤(C)は互いの課題を補う関係にあり、可塑剤(C)の配合によって長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質の低下の抑制、及び溶融粘度を維持できる一方、乳酸系共重合体(B−2)の配合によって可塑剤のブリードアウトや長期保管時の機械物性の変化を防ぐことが可能となる。
可塑剤(C)は、樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる機能を備えるものであるが、本乳酸系軟質フィルムに可塑剤としては、相溶性や生分解性の観点から、下記(a)〜(i)に示す化合物の中から選ばれる1種或いは2種類以上の組合わせからなるものが好ましく、なかでも特に下記(a)(f)が好ましい。
可塑剤の分子量に関わらず、本乳酸系軟質フィルムの組成においてはブリードアウトや長期保管時の機械物性の変化を抑えることができるのが特徴である。
(a)H63(OH)3-n(OOCCH3)n (但し、0<n≦3)
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテ−トであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(b)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等を挙げることができる。
(c)エチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、エチレングリコールジアセテート等を挙げることができる。
(d)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等を挙げることができる。
(e)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えば、ステアリン酸ブチル等を挙げることができる。
(f)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル
アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい。中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。具体的には、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等を挙げることができる。
(g)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル
アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい。例えば、クエン酸トリメチルエステル等を挙げることができる。
(h)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等を挙げることができる。
(i)ポリアルキレンエーテル
例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。
以上の中でも、食品包装用途を考慮すると、例えばグリセリン脂肪酸エステルやポリブテン等の食品添加物、あるいはエポキシ化植物油、アセチル化クエン酸脂肪酸エステル等のように食品への接触が認められる間接食品添加物の如き添加剤がより好ましい。これらは、単独で使用しても2種類以上を同時に用いてもよい。
中でも、ラップフィルムの密着性、引き出し性、ラップフィルム表面への耐ブリード性などを考慮すると、グリセリン脂肪酸エステルを選択するのが好ましい。
このようなグリセリン脂肪酸エステルとしては、その種類を特に制限するものではなく、例えばモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド、アセチル化モノグリセライドの他、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。中でも、下記化学式(1)のような分子構造を有するアセチル化モノグリセライドは、乳酸系重合体への良好な相溶性、高い可塑化能力の点から特に好ましい。
Figure 0005091140
上記化学式(1)の中で、R1はアルキル基、R2、R3はそれぞれアセチル基又は水素を示す。これらアルキル基の炭素数は特に制限はなく、密着性および柔軟性の改良という目的が達成されるように適宜選択され、一般には6〜20であることが好ましい。
また、乳酸系重合体(B−1)に対する良好な相溶性を得るため、グリセリン脂肪酸エステルの分子量は2000以下であることが特に好ましく、特に1500以下であるのがより好ましい。
可塑剤(C)の配合量は、乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計100質量部に対し1〜15質量部であるのが好ましい。上限値に関しては、10質量部以下、特に9質量部以下であるのがより好ましい。下限値に関しては、3質量部以上、特に5質量部以上であるのがより好ましい。
乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計に対して可塑剤(C)の割合が多くなれば、透明性を損なうことなく柔軟性を付与することはできるが、経時的に可塑剤が表面に移行してきて表面がベトつくようになるブリードアウト等の問題を生じるようになる。その一方、可塑剤の量が少ないと、柔軟性に乏しいフィルムとなり、乳酸系共重合体(B−2)の割合を高める必要が生じてしまう。よって、可塑剤(C)の配合量は上記範囲とするのが好ましい。
(他の成分)
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、ポリオレフィン系重合体(E)を含有することもできる。
このポリオレフィン系重合体(E)は、表面層を構成するポリオレフィン系重合体(A)と同じポリオレフィン系重合体であっても、異なるポリオレフィン系重合体であってもよいが、好ましくは同じポリオレフィン系重合体であるのがよい。ポリオレフィン系重合体(E)と表面層を構成するポリオレフィン系重合体(A)とが同じポリオレフィン系重合体であれば、中間層と表面層との密着性を高めることができ、フィルム全体での力学特性を高めることができるほか、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを、中間層の構成原料として添加することもできるから、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
最も好適なポリオレフィン系重合体(E)としては、酢酸ビニル含量が10〜60質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。このエチレン−酢酸ビニル共重合体は、表面層の主成分であるポリオレフィン系重合体(A)としても好適に使用することができ、かつ、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加した際の透明性、力学特性や材料コスト面も含めて実用的に大きな問題がなく、工業材料としても安定的に入手可能である。
ポリオレフィン系重合体(E)の配合割合は、中間層における乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計質量に対する比率において、(B−1)+(B−2):(E)=99:1〜50:50、特に95:5〜50:50、中でも特に90:10〜55:45となるように配合するのが好ましい。かかる範囲内とすることで、弾性率を保持でき、ラップ特性の一つである「腰」を保持することができるために好ましい。
また、本乳酸系軟質フィルムの中間層には、主成分の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、核剤、加水分解防止剤、消臭剤などの添加剤を処方することができる。
例えば、本乳酸系軟質フィルムの実用特性を保持するために、乳酸系重合体(B−1)、及び乳酸系共重合体(B−2)からなる乳酸系混合樹脂組成物(B)100質量部に対して、カルボジイミド化合物を好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部配合することで重量平均分子量を増大させることができる。かかる範囲を下回る場合、重量平均分子量を増大させる効果が薄い場合が多く、またかかる範囲を上回る場合には、フィルム成形時にフィッシュアイやゲルを生じる場合があり好ましくない。
<接着層>
次に、接着層の構成成分について説明する。
接着層は、主成分として、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこれら共重合体の水素添加誘導体(F−1)、酢酸ビニル含量が30〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)、変性ポリオレフィン系樹脂(F−3)、乳酸系重合体と、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体との混合樹脂である乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のいずれかを含有するものであればよく、これらのうちの1種又は2種以上の混合物であってもよい(以下、これらを総称して「接着層成分F」という)。また、その他の熱可塑性樹脂と混合して使用することもでき、混合する樹脂の種類や混合比率等は、両表面層および中間層を構成する樹脂に応じて適宜決定することができる。
(接着層成分(F−1))
接着層成分(F−1)において、軟質の芳香族系炭化水素としては、スチレンが好適に用いられ、α−メチルスチレン等のスチレン同属体等も用いることができる。
共役ジエン系炭化水素としては、1,3−ブタジエン、1,2−イソプレン、1,4−イソプレン、1,3−ペンタジエン等が用いられ、これらは水素添加誘導体であってもよい。これらは単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはその水素添加誘導体(F−1)において、軟質の芳香族系炭化水素の含有率は、共重合体全体の質量を基準(100%)として、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは7〜35質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。軟質の芳香族系炭化水素の含有率が5質量%以上であれば、再生フィルムをいずれかの層に再生添加した場合に良好な相容性が得られ、フィルムの白濁化を抑えることができる。一方、芳香族系炭化水素の含有率が40質量%以下であれば、柔軟性を低下させることなく、フィルムに応力が加わった場合に、表面層と中間層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはその水素添加誘導体(F−1)としては、スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体およびスチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体を好ましく用いることができる。また、これら共重合体を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。さらに1種以上のその他の熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。
軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはその水素添加誘導体(F−1)は、極性基を導入してなるものを選択することもできる。
導入する極性基としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基等を挙げることができる。
極性基を導入したスチレン系化合物と共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体としては、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPS等が代表的に挙げられる。
これらの共重合体は、各々単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
軟質の芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこれらの水素添加誘導体(F−1)は、両表面層と中間層との接着性および押出安定性の両方を重視する場合には、MFR(JISK7210、190℃、荷重21.18N)が0.8〜30g/10分のスチレン−共役ジエン系炭化水素との共重合体を選択することが好ましい。共役ジエン系炭化水素が持つMFRが0.8g/10分以上であれば押出加工性は安定し、30g/10分以下であれば成形時に安定した製膜が可能であり、厚み斑や力学強度の低下やばらつき等が少なくなるため好ましい。このような観点から、MFRが1〜20g/10分であるものがさらに好ましい。
(接着層成分(F−2))
エチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)において、酢酸ビニル含量は30〜80%であるのが好ましい。酢酸ビニル含量が30質量%以上であれば、結晶性が低いため常温での弾性率が低くなり、自己粘着性が発現しやすくなり、また、フィルムの屈折率が中間層を構成する成分に近づくことにより透明性が向上するために好ましい。一方、80質量%以下であれば、原材料のブロッキング等が発生せず、取り扱いに不具合が生じないため好ましい。これらのことから、酢酸ビニル含量30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%が更に好ましく、特に好ましくは45〜60質量%である。
なお、両表面層の主成分であるポリオレフィン系重合体(A)としてもエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合には、両表面層のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量よりも、接着層のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量を多くするのが好ましい。例えば、両表面層のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量を10質量%以上、かつ30質量%未満とし、接着層のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量を30〜80質量%とすればよい。このようにすることにより、耐熱性、フィルム強度、ブリードアウト抑制、フィルムの巻き出し性、外観等のフィルムの特性を良好に保持しつつ、各層の接着性(小巻替え時の層間剥離)や透明性を向上させることが可能であり、特に小巻ラップフィルムとして有用な設計が可能となる。
また、両表面層と中間層との接着性および押出安定性の両方を重視する場合には、酢酸ビニル含量が30〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)としては、MFR(JISK7210、190℃、荷重21.18N)が0.8〜30g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体を選択することが好ましい。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが0.8g/10分以上であれば押出加工性は安定し、30g/10分以下であれば成形時に安定した製膜が可能であり、厚み斑や力学強度の低下やばらつき等が少なくなるため好ましい。このことから、該MFRは、好ましくは1〜20g/10分である。
このような接着層成分(F−2)は、他のポリオレフィン系共重合体等、その他の熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。その際、混合する樹脂の種類や混合比率等は、両表面層および中間層を構成する樹脂に応じて適宜決定することができる。
(接着層成分(F−3))
変性ポリオレフィン系樹脂とは、不飽和カルボン酸或いはその無水物、又はシラン系カップリング剤などの変性モノマーによって変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。
変性ポリオレフィン系樹脂(F−3)において、不飽和カルボン酸或いはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、或いはこれらの誘導体のモノエポキシ化合物と上記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物、或いは、これらの金属塩を挙げることでき、これらは各々単独で使用することもできるし、又、これらのうちの2種以上を混合して使用することもできる。
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、上記の中でも、無水マレイン酸がより好ましい。
シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシラン等を挙げることができ、これらは各々単独で使用することもできるし、又、これらのうちの2種以上を混合して使用することもできる。
変性ポリオレフィン系樹脂を製造するには、例えば、予めポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、また、いったん重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。中でも、グラフト変性したものが特に好適である。
変性は、これらの変性モノマーを単独でまたは複数を併用することができる。変性モノマーの含有率は0.1〜5質量%であるのが好適である。
上記変性ポリオレフィン系樹脂の中でも、押出安定性を最優先させる場合には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種のエチレン系樹脂と無水マレイン酸とのグラフト共重合体を選択するのが好ましい。
(接着層成分(F−4))
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)は、乳酸系重合体と、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体(G)との混合樹脂である。
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)における乳酸系重合体としては、上述の中間層における乳酸系重合体(B−1)と同種のものから選択することができる。
接着層に使用する乳酸系重合体と中間層における乳酸系重合体は、同じものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよく、それぞれの層における適性に応じて最適な組成の乳酸系重合体を選択するのがよい。
接着層に用いる乳酸系重合体は、L体、D体、DL(ラセミ)体のいずれかの乳酸以外の他の共重合体(成分)を含んでいてもよい。
他の共重合体成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカンジオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。
他方、アクリル系ブロック共重合体(G)は、アクリル酸エステル単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(g1)と、メタクリル酸エステル単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(g2)とを有するブロック共重合体である。
上記重合体ブロック(g1)におけるアクリル酸エステル単位の含有量、並びに、上記重合体ブロック(g2)中におけるメタクリル酸エステル単位の含有量は、それぞれ主成分となる量であれば特に制限されないが、それぞれ60〜100質量%の範囲であることが好ましく、80〜100質量%の範囲であることがより好ましい。
上記アクリル酸エステル単位を主体とするブロック(g1)は、主としてアクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックであり、該重合体ブロックを形成させるためのアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどの1種または2種以上の組合せを挙げることができる。但し、このような例示のものに限定されるものではない。
上記メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(g2)は、主としてメタクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックであり、該重合体ブロックを形成させるためのメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどの1種または2種以上の組合せを挙げることができる。但し、このような例示のものに限定されるものではない。
アクリル系ブロック共重合体(G)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(g1)とメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(g2)とを有して構成されるが、その中でも、重合体ブロック(g1)の両端に重合体ブロック(g2)が結合したトリブロック共重合体が耐熱性等を向上できる点で好ましい。
また、これらのブロック(g1及びg2)とは別のブロックに、アクリル酸エステルモノマーおよびメタクリル酸エステルモノマー以外のモノマーから誘導される重合体ブロック(g3)を有するのも好ましい。
重合体ブロック(g3)と重合体ブロック(g1)或いは重合体ブロック(g2)との結合の形態は特には限定されないが、例えば、(g2)−{(g1)−(g2)}n−(g3)構造(nは自然数)や、(g3)−(g2)−{(g1)−(g2)}n−(g3)構造などを挙げることができる。
重合体ブロック(g3)を構成するモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン化合物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)において、乳酸系重合体(L)とアクリル系ブロック共重合体(G)との質量比率は、(L):(G)=10:90〜70:30であるのが好ましく、より好ましくは(L):(G)=20:80〜50:50である。(L)と(G)の合計中における(G)の量が30質量%以上であれば、接着層としての機能を十分に発現させることができ、また90質量%以下であれば、乳酸系重合体(B−1)との親和性や中間層との親和性が良好となるため好ましい。
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のメルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)(以下、「MFR」ともいう。)は、0.2g/10分以上であれば押出加工性は安定するが、接着層として用いる場合には、表裏層もしくは中間層との溶融粘度差が小さいほうが好ましい。このような観点から、乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のMFRは5〜50g/10分の範囲にあるのが好ましく、10〜40g/10分の範囲にあるのが特に好ましい。
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)の効果を損なわない範囲であれば、上記した乳酸系重合体およびアクリル系ブロック共重合体の他に、必要に応じて他の重合体や添加剤を含有していてもよい。
配合し得る他の重合体の例としては、ポリアクリルゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、EPR、EPDM等の合成ゴムなどを挙げることができる。また、添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性等の向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維または有機繊維;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤などを挙げることができる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性をさらに良好なものとするために、熱安定性、酸化防止剤などを添加することが実用上好ましい。
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)の調製方法は特に制限されるものではない。例えば、乳酸系重合体およびアクリル系ブロック共重合体を、必要に応じて前述の他の重合体や添加剤とともに混合してもよい。混合操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行うことができる。
混合時または混練時の温度は、乳酸系重合体やアクリル系ブロック共重合体の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常、110℃〜300℃の範囲内の温度で混合するとよい。
(接着層の厚み)
接着層の厚みは、その機能から好ましくは0.3μm〜5μmである。接着層の厚みがかかる範囲内であれば、両表面層と中間層との接着性を発現させることができ、またフィルム成形の際に製膜安定性が得られるため好ましい。中間層の厚み比をより確保したい場合には、より好ましくは0.5μm〜3μmである。
<表面層、接着層、中間層>
本包装用フィルムの表面層、接着層、及び/または中間層には、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能を付与するために次のような各種添加剤を適宜配合することができる。
例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイルなどから選ばれた化合物の少なくとも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部配合させることができ、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
<再生層>
本包装用フィルムは、表面層、中間層、接着層の他に、再生層、すなわちポリオレフィン系重合体(A)、乳酸系混合樹脂組成物(B)、および接着層成分(F)を含有する再生層を備えることができる。
この再生層は、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを用いることができ、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
再生層は、表面層と接着層の間や、中間層と接着層との間に設けることができる。例えば、表面層、中間層或いは接着層を2層形成しておき、そのうちの一方の層に、フィルム両端のトリミングロスを添加することによって、表面層と接着層の間、または中間層と接着層との間に再生層を設けることができる。この場合、各層の厚み比や組成比のほか、トリミングロスを添加する層が、表面層、中間層、接着層のいずれであるかによって、再生層中における、表面層、中間層および接着層の3成分の混合比を調整することができる。
<積層構成>
本乳酸系軟質フィルムは、両表面層及び中間層の3層を備えた積層フィルムであればよく、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層(以下、「P層」と略することがある)を適宜導入してもかまわない。例えば、表面層と同様の組成からなる層(以下、「S層」と略することがある)が、両表面層以外に中間層として介在してもかまわないし、また、中間層と同様の組成からなる層(以下、「M層」と略することがある)が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。具体的には、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)などからなる5層構成などを例示することができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なってもよい。
中間層と表面層の間に接着層を設けることもできる。また、表面層と接着層の間や、中間層と接着層との間に再生層を設けることもできる。
例えば、表面層と同様の組成からなる層が、両表面層以外に介在してもかまわないし、また、中間層と同様の組成からなる層が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。具体的には、表面層/接着層/中間層/接着層/表面層からなる5層構成のほか、表面層/接着層/中間層/中間層/接着層/表面層、表面層/再生層/接着層/中間層/接着層/表面層、表面層/接着層/再生層/中間層/接着層/表面層などからなる6層構成、表面層/接着層/中間層/表面層/中間層/接着層/表面層、表面層/接着層/中間層/接着層/中間層/接着層/表面層、表面層/再生層/接着層/中間層/接着層/再生層/表面層、表面層/接着層/再生層/中間層/再生層/接着層/表面層などからなる7層構成などを例示することができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なっていてもよい。
本乳酸系軟質フィルムにおいて、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は35〜90%であるのが好ましい。中間層の厚み比がかかる範囲内であれば、動的粘弾性による各特性値(E’、tanδ)を満足するフィルムの設計が容易となり、例えばTダイ法にてフィルムを成形する際、安定した製膜安定性が得られるようになる。また、食品包装用ラップフィルムに好適なカット性を発現させるための力学特性や容器の密着性を発現させるための緩和特性を比較的容易に付与することもできる。さらにまた、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、防曇性や容器密着性が良好であり、経時により加水分解による分子量低下が生じ難いことに加えて、各層間の接着性も良好である包装用フィルムとすることができる。
さらに、安定した製膜加工性と柔軟性をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が35〜65%であるのが好ましく、特に35〜60%であるのがより好ましい。
また、カット性及び容器への密着性、さらには植物度すなわちCO削減等をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は60〜90%であるのが好ましく、特に65〜90%であるのがより好ましい。
なお、中間層が上記したように2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。
本乳酸系軟質フィルムの厚さ(全体)は、食品包装用ラップフィルムとして用いることができる範囲、具体的には6μm〜30μmであればよく、好ましくは10μm〜20μmである。
<フィルム特性値>
本乳酸系軟質フィルムは、食品包装用ラップフィルムに利用することを考慮すると、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの範囲にあることが好ましく、中でも小巻ラップフィルムに利用するためには1GPa〜4GPaであるのが好ましい。
フィルムを食品包装用ラップフィルムとして用いる場合、室温付近における弾性率の値が指標となる。そのため、20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、過度の柔軟性により室温でフィルム同士もしくはフィルムと他の物質が密着することはなく、また、4GPa以下であれば、フィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、食品包装用ラップフィルム用途において有利である。
なお、貯蔵弾性率(E’)が1GPa未満であると、フィルムが柔らか過ぎて変形に対して応力が小さ過ぎるため、例えば紙箱から引き出してカットする際のカット性が悪くなることがあるため、1GPa以上であるのが好ましい。
また、同測定において、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、さらに0.1〜0.3の範囲にあることが好ましい。
損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。損失正接の値が小さいとフィルムの緩和挙動が速くなり、逆に値が大きいと応力緩和が遅くなる。20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上であればフィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることはなく、0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることはないため、食品包装用ラップフィルムとして好適である。
さらに、同測定において、損失正接(tanδ)のピーク温度が20℃〜60℃であって、そのピーク値が0.1〜0.8の範囲であるのが好ましい。
tanδのピーク温度が60℃以下であり、そのピーク値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないため、フィルムを容器に包装する際、僅かな間にフィルムが復元することがなく容器への密着性が良好となるため好ましい。また、tanδのピーク温度が20℃以上であり、そのピーク値が0.8以下であれば、塑性的な変形を示すことがないため、通常の使用方法では問題となることがないため好ましい。
なお、tanδ(損失正接)とは、貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比、すなわち損失正接(tanδ=E”/E’)であり、この値が高い温度領域では、材料の損失弾性率(E”)、すなわち粘弾性特性のうち粘性の寄与率が大きくなる。このtanδの値及び高い値を示す温度領域を評価することにより、包装時の容器への密着性や包装工程におけるフィルムの応力緩和挙動などを判断する大きな目安となる。
上記のように貯蔵弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)を満足するフィルムを作製するには、例えば中間層及び表面層(場合によっては接着層、再生層を含む)における構成成分の選択(主成分となる樹脂の種類、その分子量やTg、可塑剤の種類、成分の配合割合、乳酸系重合体や乳酸系共重合体のLD比など)、中間層及び表面層の厚み比率(場合によっては接着層や再生層の厚み比率を含む)、製膜方法、加工条件(例えばフィルム製膜後の熱処理条件など)を適宜バランスよく調整することによって作製することができる。
<製造方法>
次に、本乳酸系軟質フィルムの製造方法について説明する。
先ず、各層の構成原料が混合組成物である場合には、予め各層の構成原料を混合しておき、必要に応じてペレット化しておくのが好ましい。
この際の混合方法としては、例えば、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を用いてプレコンパウンドするようにしても構わないし、又、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入するようにしても構わない。いずれの混合方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。例えば中間層であれば、乳酸系重合体、乳酸系共重合体、必要に応じて添加剤をそれぞれ十分に乾燥させて水分を除去しておき、これらを二軸押出機を用いて溶融混合し、ベント口から可塑剤を所定量添加しながら、ストランド形状に押出してペレットを作製すればよい。
この際、乳酸系重合体、乳酸系共重合体および可塑剤の混合割合によって混合物の粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には160〜230℃の温度範囲を選択するのが好ましい。
次に、各層の構成原料を、それぞれ別々に押出機に投入して溶融押出し、Tダイ成形又はインフレーション成形により共押出して積層すればよい。
この際、実用的にはTダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロールなどで急冷しながら引き取るようにしてフィルムを製膜するのが好ましい。
フィルムの耐熱性やカット性を重視する場合には、溶融押出シートを冷却ロールによって冷却固化した後、樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5倍延伸する縦延伸、もしくはフィルムの縦横両方向に1.2〜5倍に逐次二軸延伸及び/または同時二軸延伸するフラット延伸法を採用するのが好ましい。
また、生産性及び/または経済性を重視する場合には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましい。また、その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
このようにして得られたフィルムは、熱収縮率や自然収縮率の軽減、幅収縮の発生の抑制等の目的に応じて、必要に応じて加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行うようにしてもよい。
延伸温度としては、フィルムの延伸開始点(インフレの場合はバブルとして膨張開始する位置)における表面温度で通常120℃以下とするのが好ましく、特に100℃以下とするのがさらに好ましい。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター法、インフレーションなどを挙げることができる。中でも、同時二軸延伸で製膜する方法が延伸などの点で好ましい。インフレーション法を採用すると、二軸同時延伸することができ、さらに高い生産性で相対的に安価に製造することができ、かつ、形状を袋状(シームレス状)にすることができる。よって、例えばスーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ等の袋やバッグの生産に特に好適である。
共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る樹脂組成物及び/又は他種ポリマーを用いて多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。
また、熱処理条件は、温度が40℃〜120℃であることが好ましく、特に好ましくは50℃〜110℃である。熱処理温度を40℃以上とすれば熱処理効果を得られやすく、120℃以下であれば弾性率が低くなりすぎることがない。
防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与乃至促進させる目的で、コロナ処理や熟成等の処理、更には、印刷、コーティング等の表面処理や表面加工を行ってもよい。
<用途>
本乳酸系軟質フィルムは、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、食品・菓子包装用フィルム、食品用ラップフィルム、化粧品・香粧品用ラップフィルム、医薬品用ラップフィルム、生薬用ラップフィルム、肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用ラップフィルム、衛生材料(紙おむつ、生理用品)用包装フィルム、農業用・園芸用フィルム、農薬品用ラップフィルム、温室用フィルム、肥料用袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フロッピーディスク包装用フィルム、製版用フィルム、粘着テープ、テープ、防水シート、土嚢用袋等として好適に使用することができる。特に食品用ラップフィルムとして好適に使用することができる。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
<実施例(1−1)>
ポリオレフィン系重合体(A)として、日本ポリエチレン社製エチレン−酢酸ビニル共重合体「LV440」(酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分、以下「a−1」と略する)を用い、
乳酸系重合体(B−1)として、NatureWorks社製結晶性ポリ乳酸NatureWorks4032D(L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4、重量平均分子量:20万、以下「b−1−1」と略する)を用い、
乳酸系共重合体(B−2)として、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸の共重合体(乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体、乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%、重量平均分子量:6万、Tg:10℃、以下「b−2−1」と略する)を用い、
可塑剤(C)として、アセチル化モノグリセライド(理研ビタミン製リケマールPL−019、以下「c−1」と略する)を用いた。
混合比は、質量比でb−1−1:b−2−1=60:40とし、b−1−1とb−2−1の混合組成物100質量部に対してc−1は10質量部とした。
なお、前記乳酸系共重合体B−2は、動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法;歪み0.1%、振動周波数10Hz)における損失正接(tanα)の極大値が1つ存在するタイプの共重合体であり、乳酸系重合体b−1−1と乳酸系共重合体b−2−1との混合物はガラス転移温度が単一となる系であった。
両表面層を形成する樹脂組成物については、ポリオレフィン系重合体(a−1)100質量部と、防曇剤として理研ビタミン社製ジグリセリンモノオレート「DGO−1」5.0質量部とを、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練し、ストランド形状に押出してペレットを作成した。
中間層を形成する樹脂組成物については、乳酸系重合体(b−1−1)及び乳酸系共重合体(b−2−1)をそれぞれ十分に乾燥して水分を除去した後、質量比b−1−1:b−2−1=60:40の割合でドライブレンドし、三菱重工製40mmφ小型同方向二軸押出機を用いて設定温度180℃で溶融混練しながら、c−1をb−1−1とb−2−1の合計量100質量部に対し10質量部の割合でベント口より注入し、180℃で溶融混練し、ストランド形状に押出してペレットを作成した。
上記のように作成したペレットをそれぞれ別々の押出機に投入して合流させ、三層Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み12μm(表面層/中間層/表面層=3μm/6μm/3μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
<実施例(1−2)>
実施例(1−1)において、乳酸系重合体(B−1)として、前記b−1−1と、NatureWorks4060D(L−乳酸/D−乳酸=87/13、重量平均分子量:19万、以下「b−1−2」と略する)とを、質量比率でb−1−1:b−1−2=30:70の割合で混合したものを用いた以外は、実施例(1−1)と同様の方法により、厚み12μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに関して、20℃における貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)、耐熱性、防曇性、密着性、ブリード性の評価を行った。結果を表に示す。
<比較例(1−1)>
実施例(1−1)において、両表面層用の押出機に、あらかじめ実施例(1−2)の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとした以外は実施例(1−1)と同様にして総厚み12μmの食品包装用ラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
<比較例(1−2)>
実施例(1−1)において、中間層用の押出機に実施例(1−2)の表裏層と同様の混合組成物を投入し、実質的に単層フィルムとした以外は同様にして総厚み12μmの食品包装用ラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
(測定および評価方法)
上記の実施例(1−1)〜(1−2)及び比較例(1−1)〜(1−2)で得られたフィルムについて、以下の方法で評価を行った。
(1)動的粘弾性特性
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、フィルムの横方向(TD、フィルムの押出機からの流れ方向の直角方向)について、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃で測定し、温度20℃での貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)を求めた。
(2)湿熱耐久性
得られたフィルムを40℃×90質量%に調整したタバイエスペック製の恒温恒湿機LH−112中に1ヵ月製置した。試験後のフィルムにおける感触を以下の基準で評価した。
◎:フィルムの外観および感触ともに、試験前とほぼ変わらない状態。
○:フィルム強度が試験前よりやや減少するが、実用上問題ない状態。
×:フィルム強度が極端に減少し、巻き返し時に破断が生じる状態。
(3)製膜安定性
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
◎:極めて安定している。
○:安定している。
×:やや不安定である。
(4)耐ブロッキング性
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室に5日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性とを観察し、以下の基準で評価した。
◎:フィルム同士のブロッキングが全くない。
○:フィルム同士のブロッキングにより剥離がやや重い。
×:フィルム同士のブロッキングにより剥離が出来ず巻き返しが不可。
(5)容器密着性
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に水(50cc)を入れ、得られたフィルムで容器全体を包装し、0℃で15時間保管後に容器に対するフィルムの密着度合いを評価した。
◎:フィルムがハリのある状態で容器と密着している。
○:フィルムと容器がずれ、若干のたるみが生じている。
×:ほとんど密着していない。
(6)防曇性
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に水(50cc)を入れ、茶碗の開口部を密閉するようにフィルムで包装し、0℃で30分保管後の曇り具合を評価した。
◎:透明で中がはっきりと見える状態。
○:表面に細かい液滴が見える状態。
×:真っ白に曇っている状態。
Figure 0005091140
(考察)
表1から明らかなように、実施例(1−1)〜(1−2)で得られたフィルムは、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、防曇性や容器密着性が良好で、且つ、経時により加水分解による分子量低下が生じ難いポリ乳酸系食品包装用フィルムであることが確認できた。
これに対して、ポリオレフィン系重合体を主成分とする表裏層を有さない場合(比較例(1−1))には、容器密着性は良好となるが、ブロッキングや防曇性が不十分となり問題があることが確認でき、更には経時により加水分解による分子量低下が生じ、実用特性上不十分となり問題があることが確認された。ポリ乳酸系重合体組成物を主成分とする中間層を有さない場合(比較例(1−2))には、ブロッキングや防曇性は良好であるが、容器密着性が不十分であることが確認された。
参考例(2−1)>
両表面層を形成する樹脂組成物については、ポリオレフィン系重合体(A)としての日本ユニカー(株)製直鎖状低密度ポリエチレン「NUCG5225」(密度:0.92g/cm3、MFR:2.0g/10分)100質量部と、防曇剤として理研ビタミン(株)製ジグリセリンモノオレート「DGO−1」5.0質量部とを、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練した。
他方、中間層を形成する樹脂組成物については、乳酸系重合体(B−1)としてNatureWorks社製「NatureWorks4060D」(L体/D体=87/13、重量平均分子量:20万)を用い、乳酸系共重合体(B−2)として大日本インキ化学工業(株)製「プラメート PD−350」(ポリ乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体/ポリ乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%/重量平均分子量:5万8千)を用いて、質量比でB−1/B−2=20/80の割合で混合して100質量部とし、これにカルボジイミド化合物として日清紡(株)製「カルボジライト HMV−8CA」を1質量部の割合で添加し、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練し、さらに、接着層用の押出機に接着性樹脂である(F−1)成分として、旭化成(株)製「タフテックH1041」(スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体)(以下「f1」と略する)を投入した。
そして、上記のように溶融混練した両表面層を形成する樹脂組成物と、中間層を形成する樹脂組成物と、両接着層を形成する樹脂組成物とを、それぞれ別々の押出機から合流させ、五層Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
<実施例(2−1)>
参考例(2−1)において、中間層を形成する樹脂組成物の質量割合を、質量比でB−1/B−2=60/40とし、可塑剤(C)として、理研ビタミン(株)製アセチル化モノグリセライド「リケマールPL019」(分子量420)を5質量部となるように同方向2軸押出機の第1ベント口から定量送液ポンプを利用して注入しながら溶融混練した以外は参考例(2−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
<実施例(2−2)
実施例(2−1)において、ポリオレフィン系重合体(A)を日本ポリエチレン(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体「LV440」(酢酸ビニル含量:15質量%、密度:0.93g/cm3、MFR:2.0g/10分)に変更し、接着性樹脂である(F−1)成分を、クラレ(株)製「ハイブラー5125」(スチレン−ビニルイソプロピレンブロック共重合体に変更した以外は参考例(2−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
比較例(2−1)>
参考例(2−1)において、接着層用の押出機に接着性樹脂である成分を、住友化学(株)製「ボンドファースト」(エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体)(以下「f3」と略する)に変更した以外は参考例(2−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
比較例(2−2)>
参考例(2−1)において、接着層用の押出機に、あらかじめ参考例(2−1)の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に三層フィルムとした以外は参考例(2−1)と同様にして総厚み12μm(表面層/中間層/表面層=1.5μm/9μm/1.5μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
(測定および評価方法)
上記の参考例(2−1)、実施例(2−1)〜(2−2)及び比較例(2−1)〜(2−2)で得られたフィルムについて、以下の方法で評価を行った。
ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(以下「MD」と記載する場合がある)、その直角方向を横方向(以下「TD」と略する場合がある)と称する。

(1)E’、tanδ
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)、並びに、損失正接(tanδ)のピーク温度及びそのピーク値を求めた。
(2)製膜安定性
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
◎:極めて安定している
○:安定している
△:やや不安定であるが、実生産上可能であるレベル
×:不安定であり、実生産上問題となるレベル
(3)耐ブロッキング性
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室内に5日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性とを観察し、以下の基準で評価した。
◎:フィルム同士のブロッキングが全くない
○:フィルム同士のブロッキングが少しあるが実用上問題とならないレベル
△:フィルム同士のブロッキングにより剥離がやや重く実用上問題となるレベル
×:フィルム同士のブロッキングにより剥離が出来ず巻き返しが不可
(4)容器密着性
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に包装したときの容器への密着性を、以下の基準で評価した。
◎:適度に包装できるレベル
○:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となる
(5)防曇性
直径50mm、高さ80mmからなるSUS304製の円筒の一側の開口部に、製膜したフィルムを皺なく貼り付け、外気温0〜5℃の環境下で、フィルムを貼ってない開口部側の円筒端部30mmを水温20℃の水中に浸し、浸し始めてから1時間後の防曇性を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:水分が均一な水膜となり、水滴無し
○:水分が均一な水膜となっているが、ところどころに細かい水滴あり
△:ところどころに直径約1mmの水滴あり
×:直径約3mmの水滴あり
(6)層間剥離強度
製膜したフィルムを23℃、50%RH環境下で、T型剥離法にてTDに試験速度200mm/分で剥離させたときの強度を以下の基準で評価した。
◎:500g/15mm幅以上
○:200g/15mm幅以上500g/15mm未満
△:50g/15mm幅以上200g/15mm未満
×:50g/15mm未満
(7)小巻替え適性
製膜したフィルムの巻き替え試験を、200m/min〜600m/minの巻き取りスピードで行い、小巻替え適性を以下の基準で評価した。
◎:600m/minの巻き取りスピードでも問題なく小巻替えできる
○ :200m/min以上600m/min未満の巻き取りスピードで問題なく小巻替えできる。
× :200m/min以上600m/min未満巻き替え途中で、層間剥離およびフィルムの破断が生じる。
Figure 0005091140
表2より、参考例(2−1)及び実施例(2−1)〜(2−2)で得たフィルムは、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、さらには防曇性及び容器密着性も良好であることが確認された。また、特定の接着層を設けたことにより、層間剥離強度が向上し、その結果、小巻替え適性に優れた包装フィルムが得られたことが確認された。
これに対して、比較例(2―1)及び比較例(2―2)においては、表裏層と中間層の間の接着層として、アクリル変性ポリエチレン系樹脂であるエチレン/エポキシ/アルキルアクリレート共重合体を用いたため、層間剥離強度が不十分となり、小巻替え時に層間剥離が生じる場合(比較例(2−1))や、接着層を有さないため、小巻替え時に層間剥離が著しくフィルム破断が発生する場合(比較例(2−2))が確認された。
参考例(3−1)>
両表面層を形成する樹脂組成物については、ポリオレフィン系重合体(A)としての日本ポリエチレン(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体「LV440」(酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分)(以下「A−1」と略する)100質量部と、防曇剤としての理研ビタミン(株)製ジグリセリンモノオレート「DGO−1」5.0質量部とを、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練した。
他方、中間層を形成する樹脂組成物については、乳酸系重合体(B−1)としてNatureWorks社製「NatureWorks4060D」(L体/D体=87/13、重量平均分子量:20万)を用い、乳酸系共重合体(B−2)として大日本インキ化学工業(株)製「プラメート PD−350」(ポリ乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体/ポリ乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%/重量平均分子量:5万8千)を用いて、質量比でB−1/B−2=20/80の割合で混合して100質量部とし、これにカルボジイミド化合物として日清紡(株)製「カルボジライト HMV−8CA」を1質量部の割合で添加し、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練し、さらに、接着層用の押出機に接着性樹脂である(F−2)成分として、三井・デュポンポリケミカル社製エチレン−酢酸ビニル共重合体「エバフレックス45LX」(酢酸ビニル含量:46質量%、MFR:2.5g/10分)(以下「f4」と略する)を投入した。そして、上記のように溶融混練した両表面層を形成する樹脂組成物と、中間層を形成する樹脂組成物と、両接着層を形成する樹脂組成物とを、それぞれ別々の押出機から合流させ、五層Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
<実施例(3−1)
参考例(3−1)において、中間層を形成する樹脂組成物の質量割合を、質量比でB−1/B−2=60/40とし、可塑剤(C)として、理研ビタミン(株)製アセチル化モノグリセライド「リケマールPL019」(分子量420)を5質量部となるように同方向2軸押出機の第1ベント口から定量送液ポンプを利用して注入しながら溶融混練した以外は参考例(3−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
比較例(3−1)>
参考例(3−1)において、ポリオレフィン系重合体(A)を、日本ユニカー(株)製直鎖状低密度ポリエチレン「NUCG5225」(密度:0.92g/cm3、MFR:2.0g/10分)に変更し、かつ、接着層用の押出機に接着性樹脂である成分を、住友化学(株)製「ボンドファースト」(エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体)(以下「f3」と略する)に変更した以外は参考例(3−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
比較例(3−2)>
参考例(3−1)において、接着層用の押出機に、あらかじめ参考例(3−1)の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に三層フィルムとした以外は参考例(3−1)と同様にして総厚み12μm(表面層/中間層/表面層=1.5μm/9μm/1.5μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
(測定および評価方法)
上記の参考例(3−1)、実施例(3−1)及び比較例(3−1)〜(3−2)で得られたフィルムについては、上記の参考例(2−1)及び実施例(2−1)〜(2−2)と同様の方法で評価を行った。

Figure 0005091140
(考察)
表3より、参考例(3−1)及び実施例(3−1)で得たフィルムは、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、さらには防曇性及び容器密着性も良好であることが確認された。また、特定の接着層を設けたことにより、層間剥離強度が向上し、その結果層間剥離が抑制されて小巻替え適性に優れた包装フィルムが得られたことが確認された。
これに対して、比較例(3−1)及び比較例(3−2)においては、表裏層と中間層の間の接着層として、アクリル変性ポリエチレン系樹脂であるエチレン/エポキシ/アルキルアクリレート共重合体を用いたため、層間剥離強度が不十分となり、小巻替え時に層間剥離が生じる場合(比較例(3−1))や、接着層を有さないため、小巻替え時に層間剥離が著しくフィルム破断が発生する場合(比較例(3−2))が確認された。
また、参考例(3−1)及び実施例(3−1)で得たフィルムは、表裏層と中間層の間の接着層として、アクリル変性ポリエチレン系樹脂であるエチレン/エポキシ/アルキルアクリレート共重合体を用いた比較例(3−1)に比較して、透明性の点においても優れていた。

Claims (14)

  1. 少なくとも3層を備えた多層乳酸系軟質フィルムであって、
    両表面層は、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分として含有し、
    中間層は、乳酸系重合体(B−1)と、乳酸系共重合体(B−2)と、可塑剤(C)としてのグリセリン脂肪酸エステルと、を主成分として含有することを特徴とする多層乳酸系軟質フィルム(120℃のオイルバスに10分間浸漬した際の縦方向(MD)方向の収縮率が30%以上、横方向(TD)の収縮率が40%以上であるものを除く)。
  2. JIS K−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの範囲にあり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  3. 少なくとも表面層/接着層/中間層/接着層/表面層をこの順に有する5層以上の多層乳酸系軟質フィルムであって、
    両表面層は、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分として含有し、
    中間層は、乳酸系重合体(B−1)と、乳酸系共重合体(B−2)と、可塑剤(C)としてのグリセリン脂肪酸エステルと、を主成分として含有し、
    両接着層は、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこの共重合体の水素添加誘導体(F−1)、酢酸ビニル含量が30〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)、変性ポリオレフィン系樹脂(F−3)、乳酸系重合体と、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体との混合樹脂である乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のいずれか1種又は2種以上の組合せからなる接着性樹脂を主成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  4. 動的粘弾性測定により振動周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が1GPa〜4GPaであり、損失正接(tanδ)のピーク温度が20〜60℃であって、そのピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  5. ポリオレフィン系重合体(A)が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  6. 乳酸系重合体(B−1)が、LD比率の異なる2種類以上の乳酸系重合体の混合樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  7. 乳酸系混合樹脂組成物(B)は、示差走査熱量測定において、加熱速度10℃/minで測定されるガラス転移温度が単一となるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  8. 乳酸系混合樹脂組成物(B)は、示差走査熱量測定において、加熱速度10℃/minで測定されるガラス転移温度が単一となり、当該ガラス転移温度が0〜30℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  9. 乳酸系混合樹脂組成物(B)は、JIS K−7198A法記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、歪み0.1%において測定した際に、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  10. 乳酸系共重合体(B−2)は、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  11. 乳酸系共重合体(B−2)は、乳酸系重合体とプロピレングリコールとコハク酸との共重合体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  12. 中間層は、乳酸系混合樹脂組成物(B)100質量部に対し、可塑剤(C)としてのグリセリン脂肪酸エステルを1〜15質量部含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  13. 中間層は、さらにポリオレフィン系重合体(E)を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
  14. ポリオレフィン系重合体(A)と、乳酸系混合樹脂組成物(B)と、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこれら共重合体の水素添加誘導体(F−1)、酢酸ビニル含量が30〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)、変性ポリオレフィン系樹脂(F−3)、乳酸系重合体とアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体との混合樹脂である乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のいずれか1種又は2種以上の組合せからなる接着性樹脂と、を含有する再生層を備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
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