JP5091140B2 - 多層乳酸系軟質フィルム - Google Patents
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Description
このような小巻ラップフィルムは、カッター刃を具備した紙箱の中に筒に巻かれた状態で収納されており、包装する際は、フィルムを紙箱から引き出して食品を覆うように被せ、フィルムを紙箱に具備されたカッター刃に押し当て、このカッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより引き裂きを幅方向に伝播させるようにしてフィルムをカットし、そしてフィルムの端部を容器に密着させて包装するのが一般的である。このため、小巻ラップフィルムには、透明性のほか、容器への密着性、紙箱からスムースにフィルムを引き出すことができる引き出し性、引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸条件が要求される。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものを称し(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、通常はその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品を称する。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意図と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意図も包含する。
そこで、以下の説明では、本乳酸系軟質フィルムの構成要素となり得る表面層、中間層、接着層および再生層の順に説明し、次いで、本乳酸系軟質フィルムの積層構成、特性値、製造方法等について説明する。
本乳酸系軟質フィルムにおいて、表裏層は、ヒートシールや密着等により包装体を形成した際の気密性を高めるとともに、引裂き強度や突き刺し強度、衝撃強度などの機械的強度を高める役割を担い得る層である。また、インフレーション成形や、チューブラー延伸法などによるフィルム成形の際には、成形時の安定性を高める機能をフィルムに付与することもできる。包装フィルムのブロッキング防止層としての役割を担うこともできる。可塑剤などの添加剤が中間層に添加された場合にはこれらのブリードアウトを防ぐことができる。表面層に防曇剤、帯電防止剤、滑剤等を添加することができるから、フィルムに各種機能を付与することができる。さらには、乳酸系重合体(B−1)や乳酸系共重合体(B−2)の加水分解による分子量の経時的低下を抑制する役割を担うこともできる。
ポリオレフィン系重合体としては、エチレン系重合体、ブチレン系重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系重合体、ポリ4−メチルペンテン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。これらの樹脂は、前記に挙げたうちの1種類の樹脂であってもよいし、また、2種類以上の樹脂からなる混合樹脂であってもよい。
これらのポリオレフィン系重合体に、エチレン・プロピレンゴム等を分散複合化させたポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
中でも、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂が特に好ましい。
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を挙げることができる。
このエチレン−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニル含量が10質量%以上であれば、結晶性が低いためフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、表面粘着性も発現し易いという点で好ましい。その一方、60質量%以下であれば、耐熱性やフィルム強度等を確保でき、防曇剤等を添加してもブリードアウトを抑制でき、しかも表面粘着性が強すぎないためにフィルムの巻き出し性や外観を良好とすることができるという点で好ましい。このような観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は10〜58質量%であるのがより好ましく、特に12〜56質量%であるのがさらに好ましい。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。このような観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは0.5〜18g/10分であるのがより好ましく、中でも1〜15g/10分がさらに好ましい。
ポリオレフィン系重合体(A)の密度がこのような範囲内であれば、適度な結晶性を有するためフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好となり、しかもポリオレフィン系重合体(A)の融点がラップの実使用温度範囲、具体的には電子レンジ等で加熱した場合の雰囲気温度よりも高くなるため、得られるフィルムで食品を包装し、電子レンジ等で加熱した場合でも食品容器等にフィルムが溶けて貼りつくといった問題を生じることが無いため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン系重合体(A)の密度は0.90〜0.94g/cm3であるのが特に好ましく、中でも0.91〜0.94g/cm3であるのがさらに好ましい。
また、ポリオレフィン系重合体(A)のMFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となり、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなるため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン系重合体(A)のMFRは0.5〜18g/10分であるのが特に好ましく、中でも1〜15g/10分であるのがさらに好ましい。
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、主成分として、乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)を含有する、言い換えれば乳酸系重合体(B−1)と乳酸系共重合体(B−2)とからなる乳酸系混合樹脂組成物(B)を主成分として含有し、必要に応じてさらに可塑剤(C)を含有する層である。
乳酸系重合体(B−1)としては、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系重合体の結晶性は低い方が好ましいから、中間層が可塑剤を含有する場合には、ポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低いポリ乳酸、例えばポリ(D−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの混合体を使用するのが好ましい。
なお、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものである。
この場合も、可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、乳酸系重合体の結晶性は低い方が好ましいから、好ましくはL体:D体=50:50〜94:6である。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。その場合、複数の乳酸系重合体のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにすればよい。例えばポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)とポリ(DL−乳酸)とをブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
例えば縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、任意の結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
乳酸系共重合体(B−2)は、乳酸系重合体を共重合してなる樹脂である。中でも、乳酸系重合体(B−1)と完全相溶ポリマーブレンドをなすものが好ましい。言い換えれば、乳酸系共重合体(B−2)と乳酸系重合体(B−1)とを混合してなるポリマーブレンド組成物が、示差走査熱量測定において加熱速度10℃/分で測定されるガラス転移温度が単一となる乳酸系共重合体(B−2)が好ましい。
よって、乳酸系共重合体(B−2)を構成する乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体としては、乳酸系重合体と(ポリ)プロピレングリコールとコハク酸との共重合体が最も好ましい一例である。
本乳酸系軟質フィルムにおいて、乳酸系共重合体(B−2)の割合を多くすれば透明性を損なうことなく柔軟性を付与することが可能であるが、乳酸系共重合体(B−2)の割合が多くなると、重量平均分子量が低下して10万以下となる場合があり、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が発現されないことが考えられる。また、乳酸系共重合体(B−2)の割合が多くなると溶融粘度が低くなり、成形加工性が低下するようになる。これらの点からすると、乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計中に占める乳酸系共重合体(B−2)の割合は50質量%を上限とする必要があり、40質量%以下とするのがより好ましい。その一方、乳酸系共重合体(B−2)の割合が少ないと、可塑化効果が低下して柔軟性に乏しいフィルムとなるため、この点から乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計中に占める乳酸系共重合体(B−2)の割合は20質量%を下限とする必要があり、30質量%以上とするのがより好ましい。
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、乳酸系混合樹脂組成物(B)のみを主成分として構成したとしても、乳酸系共重合体(B−2)の割合を多くすれば透明性を損なうことなくフィルムを柔軟化することはできる。しかし、乳酸系共重合体(B−2)の割合が多くなると、実用物性、例えば長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質が低下したり、溶融粘度が低くなって成形加工性が低下したりすることがあるため、必要に応じて可塑剤(C)を配合するのが好ましい。この際、乳酸系共重合体(B−2)と可塑剤(C)は互いの課題を補う関係にあり、可塑剤(C)の配合によって長時間多湿の状態に置かれた場合の機械的性質の低下の抑制、及び溶融粘度を維持できる一方、乳酸系共重合体(B−2)の配合によって可塑剤のブリードアウトや長期保管時の機械物性の変化を防ぐことが可能となる。
可塑剤の分子量に関わらず、本乳酸系軟質フィルムの組成においてはブリードアウトや長期保管時の機械物性の変化を抑えることができるのが特徴である。
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテ−トであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(b)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等を挙げることができる。
(c)エチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、エチレングリコールジアセテート等を挙げることができる。
(d)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等を挙げることができる。
(e)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えば、ステアリン酸ブチル等を挙げることができる。
(f)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル
アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい。中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。具体的には、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等を挙げることができる。
(g)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル
アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい。例えば、クエン酸トリメチルエステル等を挙げることができる。
(h)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等を挙げることができる。
(i)ポリアルキレンエーテル
例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。
中でも、ラップフィルムの密着性、引き出し性、ラップフィルム表面への耐ブリード性などを考慮すると、グリセリン脂肪酸エステルを選択するのが好ましい。
乳酸系重合体(B−1)及び乳酸系共重合体(B−2)の合計に対して可塑剤(C)の割合が多くなれば、透明性を損なうことなく柔軟性を付与することはできるが、経時的に可塑剤が表面に移行してきて表面がベトつくようになるブリードアウト等の問題を生じるようになる。その一方、可塑剤の量が少ないと、柔軟性に乏しいフィルムとなり、乳酸系共重合体(B−2)の割合を高める必要が生じてしまう。よって、可塑剤(C)の配合量は上記範囲とするのが好ましい。
本乳酸系軟質フィルムの中間層は、ポリオレフィン系重合体(E)を含有することもできる。
例えば、本乳酸系軟質フィルムの実用特性を保持するために、乳酸系重合体(B−1)、及び乳酸系共重合体(B−2)からなる乳酸系混合樹脂組成物(B)100質量部に対して、カルボジイミド化合物を好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部配合することで重量平均分子量を増大させることができる。かかる範囲を下回る場合、重量平均分子量を増大させる効果が薄い場合が多く、またかかる範囲を上回る場合には、フィルム成形時にフィッシュアイやゲルを生じる場合があり好ましくない。
次に、接着層の構成成分について説明する。
接着層成分(F−1)において、軟質の芳香族系炭化水素としては、スチレンが好適に用いられ、α−メチルスチレン等のスチレン同属体等も用いることができる。
共役ジエン系炭化水素としては、1,3−ブタジエン、1,2−イソプレン、1,4−イソプレン、1,3−ペンタジエン等が用いられ、これらは水素添加誘導体であってもよい。これらは単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
導入する極性基としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基等を挙げることができる。
極性基を導入したスチレン系化合物と共役ジエンの共重合体またはその水素添加誘導体としては、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPS等が代表的に挙げられる。
これらの共重合体は、各々単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)において、酢酸ビニル含量は30〜80%であるのが好ましい。酢酸ビニル含量が30質量%以上であれば、結晶性が低いため常温での弾性率が低くなり、自己粘着性が発現しやすくなり、また、フィルムの屈折率が中間層を構成する成分に近づくことにより透明性が向上するために好ましい。一方、80質量%以下であれば、原材料のブロッキング等が発生せず、取り扱いに不具合が生じないため好ましい。これらのことから、酢酸ビニル含量30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%が更に好ましく、特に好ましくは45〜60質量%である。
変性ポリオレフィン系樹脂とは、不飽和カルボン酸或いはその無水物、又はシラン系カップリング剤などの変性モノマーによって変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、上記の中でも、無水マレイン酸がより好ましい。
変性は、これらの変性モノマーを単独でまたは複数を併用することができる。変性モノマーの含有率は0.1〜5質量%であるのが好適である。
乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)は、乳酸系重合体と、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体(G)との混合樹脂である。
接着層に使用する乳酸系重合体と中間層における乳酸系重合体は、同じものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよく、それぞれの層における適性に応じて最適な組成の乳酸系重合体を選択するのがよい。
接着層に用いる乳酸系重合体は、L体、D体、DL(ラセミ)体のいずれかの乳酸以外の他の共重合体(成分)を含んでいてもよい。
他の共重合体成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカンジオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。
上記重合体ブロック(g1)におけるアクリル酸エステル単位の含有量、並びに、上記重合体ブロック(g2)中におけるメタクリル酸エステル単位の含有量は、それぞれ主成分となる量であれば特に制限されないが、それぞれ60〜100質量%の範囲であることが好ましく、80〜100質量%の範囲であることがより好ましい。
重合体ブロック(g3)と重合体ブロック(g1)或いは重合体ブロック(g2)との結合の形態は特には限定されないが、例えば、(g2)−{(g1)−(g2)}n−(g3)構造(nは自然数)や、(g3)−(g2)−{(g1)−(g2)}n−(g3)構造などを挙げることができる。
重合体ブロック(g3)を構成するモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン化合物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
配合し得る他の重合体の例としては、ポリアクリルゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、EPR、EPDM等の合成ゴムなどを挙げることができる。また、添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性等の向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維または有機繊維;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤などを挙げることができる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性をさらに良好なものとするために、熱安定性、酸化防止剤などを添加することが実用上好ましい。
混合時または混練時の温度は、乳酸系重合体やアクリル系ブロック共重合体の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常、110℃〜300℃の範囲内の温度で混合するとよい。
接着層の厚みは、その機能から好ましくは0.3μm〜5μmである。接着層の厚みがかかる範囲内であれば、両表面層と中間層との接着性を発現させることができ、またフィルム成形の際に製膜安定性が得られるため好ましい。中間層の厚み比をより確保したい場合には、より好ましくは0.5μm〜3μmである。
本包装用フィルムの表面層、接着層、及び/または中間層には、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能を付与するために次のような各種添加剤を適宜配合することができる。
例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイルなどから選ばれた化合物の少なくとも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部配合させることができ、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
本包装用フィルムは、表面層、中間層、接着層の他に、再生層、すなわちポリオレフィン系重合体(A)、乳酸系混合樹脂組成物(B)、および接着層成分(F)を含有する再生層を備えることができる。
この再生層は、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを用いることができ、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
本乳酸系軟質フィルムは、両表面層及び中間層の3層を備えた積層フィルムであればよく、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層(以下、「P層」と略することがある)を適宜導入してもかまわない。例えば、表面層と同様の組成からなる層(以下、「S層」と略することがある)が、両表面層以外に中間層として介在してもかまわないし、また、中間層と同様の組成からなる層(以下、「M層」と略することがある)が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。具体的には、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)などからなる5層構成などを例示することができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なってもよい。
例えば、表面層と同様の組成からなる層が、両表面層以外に介在してもかまわないし、また、中間層と同様の組成からなる層が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。具体的には、表面層/接着層/中間層/接着層/表面層からなる5層構成のほか、表面層/接着層/中間層/中間層/接着層/表面層、表面層/再生層/接着層/中間層/接着層/表面層、表面層/接着層/再生層/中間層/接着層/表面層などからなる6層構成、表面層/接着層/中間層/表面層/中間層/接着層/表面層、表面層/接着層/中間層/接着層/中間層/接着層/表面層、表面層/再生層/接着層/中間層/接着層/再生層/表面層、表面層/接着層/再生層/中間層/再生層/接着層/表面層などからなる7層構成などを例示することができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なっていてもよい。
さらに、安定した製膜加工性と柔軟性をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が35〜65%であるのが好ましく、特に35〜60%であるのがより好ましい。
また、カット性及び容器への密着性、さらには植物度すなわちCO2削減等をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は60〜90%であるのが好ましく、特に65〜90%であるのがより好ましい。
なお、中間層が上記したように2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。
本乳酸系軟質フィルムは、食品包装用ラップフィルムに利用することを考慮すると、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの範囲にあることが好ましく、中でも小巻ラップフィルムに利用するためには1GPa〜4GPaであるのが好ましい。
フィルムを食品包装用ラップフィルムとして用いる場合、室温付近における弾性率の値が指標となる。そのため、20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、過度の柔軟性により室温でフィルム同士もしくはフィルムと他の物質が密着することはなく、また、4GPa以下であれば、フィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、食品包装用ラップフィルム用途において有利である。
なお、貯蔵弾性率(E’)が1GPa未満であると、フィルムが柔らか過ぎて変形に対して応力が小さ過ぎるため、例えば紙箱から引き出してカットする際のカット性が悪くなることがあるため、1GPa以上であるのが好ましい。
損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。損失正接の値が小さいとフィルムの緩和挙動が速くなり、逆に値が大きいと応力緩和が遅くなる。20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上であればフィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることはなく、0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることはないため、食品包装用ラップフィルムとして好適である。
tanδのピーク温度が60℃以下であり、そのピーク値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないため、フィルムを容器に包装する際、僅かな間にフィルムが復元することがなく容器への密着性が良好となるため好ましい。また、tanδのピーク温度が20℃以上であり、そのピーク値が0.8以下であれば、塑性的な変形を示すことがないため、通常の使用方法では問題となることがないため好ましい。
次に、本乳酸系軟質フィルムの製造方法について説明する。
この際の混合方法としては、例えば、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を用いてプレコンパウンドするようにしても構わないし、又、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入するようにしても構わない。いずれの混合方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。例えば中間層であれば、乳酸系重合体、乳酸系共重合体、必要に応じて添加剤をそれぞれ十分に乾燥させて水分を除去しておき、これらを二軸押出機を用いて溶融混合し、ベント口から可塑剤を所定量添加しながら、ストランド形状に押出してペレットを作製すればよい。
この際、乳酸系重合体、乳酸系共重合体および可塑剤の混合割合によって混合物の粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には160〜230℃の温度範囲を選択するのが好ましい。
この際、実用的にはTダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロールなどで急冷しながら引き取るようにしてフィルムを製膜するのが好ましい。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター法、インフレーションなどを挙げることができる。中でも、同時二軸延伸で製膜する方法が延伸などの点で好ましい。インフレーション法を採用すると、二軸同時延伸することができ、さらに高い生産性で相対的に安価に製造することができ、かつ、形状を袋状(シームレス状)にすることができる。よって、例えばスーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ等の袋やバッグの生産に特に好適である。
共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る樹脂組成物及び/又は他種ポリマーを用いて多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。
本乳酸系軟質フィルムは、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、食品・菓子包装用フィルム、食品用ラップフィルム、化粧品・香粧品用ラップフィルム、医薬品用ラップフィルム、生薬用ラップフィルム、肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用ラップフィルム、衛生材料(紙おむつ、生理用品)用包装フィルム、農業用・園芸用フィルム、農薬品用ラップフィルム、温室用フィルム、肥料用袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フロッピーディスク包装用フィルム、製版用フィルム、粘着テープ、テープ、防水シート、土嚢用袋等として好適に使用することができる。特に食品用ラップフィルムとして好適に使用することができる。
ポリオレフィン系重合体(A)として、日本ポリエチレン社製エチレン−酢酸ビニル共重合体「LV440」(酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分、以下「a−1」と略する)を用い、
乳酸系重合体(B−1)として、NatureWorks社製結晶性ポリ乳酸NatureWorks4032D(L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4、重量平均分子量:20万、以下「b−1−1」と略する)を用い、
乳酸系共重合体(B−2)として、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸の共重合体(乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体、乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%、重量平均分子量:6万、Tg:10℃、以下「b−2−1」と略する)を用い、
可塑剤(C)として、アセチル化モノグリセライド(理研ビタミン製リケマールPL−019、以下「c−1」と略する)を用いた。
なお、前記乳酸系共重合体B−2は、動的粘弾性測定(JIS K−7198 A法;歪み0.1%、振動周波数10Hz)における損失正接(tanα)の極大値が1つ存在するタイプの共重合体であり、乳酸系重合体b−1−1と乳酸系共重合体b−2−1との混合物はガラス転移温度が単一となる系であった。
実施例(1−1)において、乳酸系重合体(B−1)として、前記b−1−1と、NatureWorks4060D(L−乳酸/D−乳酸=87/13、重量平均分子量:19万、以下「b−1−2」と略する)とを、質量比率でb−1−1:b−1−2=30:70の割合で混合したものを用いた以外は、実施例(1−1)と同様の方法により、厚み12μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに関して、20℃における貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)、耐熱性、防曇性、密着性、ブリード性の評価を行った。結果を表に示す。
実施例(1−1)において、両表面層用の押出機に、あらかじめ実施例(1−2)の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとした以外は実施例(1−1)と同様にして総厚み12μmの食品包装用ラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
実施例(1−1)において、中間層用の押出機に実施例(1−2)の表裏層と同様の混合組成物を投入し、実質的に単層フィルムとした以外は同様にして総厚み12μmの食品包装用ラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
上記の実施例(1−1)〜(1−2)及び比較例(1−1)〜(1−2)で得られたフィルムについて、以下の方法で評価を行った。
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、フィルムの横方向(TD、フィルムの押出機からの流れ方向の直角方向)について、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃で測定し、温度20℃での貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)を求めた。
得られたフィルムを40℃×90質量%に調整したタバイエスペック製の恒温恒湿機LH−112中に1ヵ月製置した。試験後のフィルムにおける感触を以下の基準で評価した。
◎:フィルムの外観および感触ともに、試験前とほぼ変わらない状態。
○:フィルム強度が試験前よりやや減少するが、実用上問題ない状態。
×:フィルム強度が極端に減少し、巻き返し時に破断が生じる状態。
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
◎:極めて安定している。
○:安定している。
×:やや不安定である。
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室に5日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性とを観察し、以下の基準で評価した。
◎:フィルム同士のブロッキングが全くない。
○:フィルム同士のブロッキングにより剥離がやや重い。
×:フィルム同士のブロッキングにより剥離が出来ず巻き返しが不可。
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に水(50cc)を入れ、得られたフィルムで容器全体を包装し、0℃で15時間保管後に容器に対するフィルムの密着度合いを評価した。
◎:フィルムがハリのある状態で容器と密着している。
○:フィルムと容器がずれ、若干のたるみが生じている。
×:ほとんど密着していない。
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に水(50cc)を入れ、茶碗の開口部を密閉するようにフィルムで包装し、0℃で30分保管後の曇り具合を評価した。
◎:透明で中がはっきりと見える状態。
○:表面に細かい液滴が見える状態。
×:真っ白に曇っている状態。
表1から明らかなように、実施例(1−1)〜(1−2)で得られたフィルムは、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、防曇性や容器密着性が良好で、且つ、経時により加水分解による分子量低下が生じ難いポリ乳酸系食品包装用フィルムであることが確認できた。
これに対して、ポリオレフィン系重合体を主成分とする表裏層を有さない場合(比較例(1−1))には、容器密着性は良好となるが、ブロッキングや防曇性が不十分となり問題があることが確認でき、更には経時により加水分解による分子量低下が生じ、実用特性上不十分となり問題があることが確認された。ポリ乳酸系重合体組成物を主成分とする中間層を有さない場合(比較例(1−2))には、ブロッキングや防曇性は良好であるが、容器密着性が不十分であることが確認された。
両表面層を形成する樹脂組成物については、ポリオレフィン系重合体(A)としての日本ユニカー(株)製直鎖状低密度ポリエチレン「NUCG5225」(密度:0.92g/cm3、MFR:2.0g/10分)100質量部と、防曇剤として理研ビタミン(株)製ジグリセリンモノオレート「DGO−1」5.0質量部とを、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練した。
他方、中間層を形成する樹脂組成物については、乳酸系重合体(B−1)としてNatureWorks社製「NatureWorks4060D」(L体/D体=87/13、重量平均分子量:20万)を用い、乳酸系共重合体(B−2)として大日本インキ化学工業(株)製「プラメート PD−350」(ポリ乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体/ポリ乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%/重量平均分子量:5万8千)を用いて、質量比でB−1/B−2=20/80の割合で混合して100質量部とし、これにカルボジイミド化合物として日清紡(株)製「カルボジライト HMV−8CA」を1質量部の割合で添加し、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練し、さらに、接着層用の押出機に接着性樹脂である(F−1)成分として、旭化成(株)製「タフテックH1041」(スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体)(以下「f1」と略する)を投入した。
そして、上記のように溶融混練した両表面層を形成する樹脂組成物と、中間層を形成する樹脂組成物と、両接着層を形成する樹脂組成物とを、それぞれ別々の押出機から合流させ、五層Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
参考例(2−1)において、中間層を形成する樹脂組成物の質量割合を、質量比でB−1/B−2=60/40とし、可塑剤(C)として、理研ビタミン(株)製アセチル化モノグリセライド「リケマールPL019」(分子量420)を5質量部となるように同方向2軸押出機の第1ベント口から定量送液ポンプを利用して注入しながら溶融混練した以外は参考例(2−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
実施例(2−1)において、ポリオレフィン系重合体(A)を日本ポリエチレン(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体「LV440」(酢酸ビニル含量:15質量%、密度:0.93g/cm3、MFR:2.0g/10分)に変更し、接着性樹脂である(F−1)成分を、クラレ(株)製「ハイブラー5125」(スチレン−ビニルイソプロピレンブロック共重合体に変更した以外は参考例(2−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
参考例(2−1)において、接着層用の押出機に接着性樹脂である成分を、住友化学(株)製「ボンドファースト」(エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体)(以下「f3」と略する)に変更した以外は参考例(2−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
参考例(2−1)において、接着層用の押出機に、あらかじめ参考例(2−1)の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に三層フィルムとした以外は参考例(2−1)と同様にして総厚み12μm(表面層/中間層/表面層=1.5μm/9μm/1.5μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
上記の参考例(2−1)、実施例(2−1)〜(2−2)及び比較例(2−1)〜(2−2)で得られたフィルムについて、以下の方法で評価を行った。
ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(以下「MD」と記載する場合がある)、その直角方向を横方向(以下「TD」と略する場合がある)と称する。
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)、並びに、損失正接(tanδ)のピーク温度及びそのピーク値を求めた。
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
◎:極めて安定している
○:安定している
△:やや不安定であるが、実生産上可能であるレベル
×:不安定であり、実生産上問題となるレベル
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室内に5日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性とを観察し、以下の基準で評価した。
◎:フィルム同士のブロッキングが全くない
○:フィルム同士のブロッキングが少しあるが実用上問題とならないレベル
△:フィルム同士のブロッキングにより剥離がやや重く実用上問題となるレベル
×:フィルム同士のブロッキングにより剥離が出来ず巻き返しが不可
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器に包装したときの容器への密着性を、以下の基準で評価した。
◎:適度に包装できるレベル
○:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となる
直径50mm、高さ80mmからなるSUS304製の円筒の一側の開口部に、製膜したフィルムを皺なく貼り付け、外気温0〜5℃の環境下で、フィルムを貼ってない開口部側の円筒端部30mmを水温20℃の水中に浸し、浸し始めてから1時間後の防曇性を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:水分が均一な水膜となり、水滴無し
○:水分が均一な水膜となっているが、ところどころに細かい水滴あり
△:ところどころに直径約1mmの水滴あり
×:直径約3mmの水滴あり
製膜したフィルムを23℃、50%RH環境下で、T型剥離法にてTDに試験速度200mm/分で剥離させたときの強度を以下の基準で評価した。
◎:500g/15mm幅以上
○:200g/15mm幅以上500g/15mm未満
△:50g/15mm幅以上200g/15mm未満
×:50g/15mm未満
製膜したフィルムの巻き替え試験を、200m/min〜600m/minの巻き取りスピードで行い、小巻替え適性を以下の基準で評価した。
◎:600m/minの巻き取りスピードでも問題なく小巻替えできる
○ :200m/min以上600m/min未満の巻き取りスピードで問題なく小巻替えできる。
× :200m/min以上600m/min未満巻き替え途中で、層間剥離およびフィルムの破断が生じる。
これに対して、比較例(2―1)及び比較例(2―2)においては、表裏層と中間層の間の接着層として、アクリル変性ポリエチレン系樹脂であるエチレン/エポキシ/アルキルアクリレート共重合体を用いたため、層間剥離強度が不十分となり、小巻替え時に層間剥離が生じる場合(比較例(2−1))や、接着層を有さないため、小巻替え時に層間剥離が著しくフィルム破断が発生する場合(比較例(2−2))が確認された。
両表面層を形成する樹脂組成物については、ポリオレフィン系重合体(A)としての日本ポリエチレン(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体「LV440」(酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分)(以下「A−1」と略する)100質量部と、防曇剤としての理研ビタミン(株)製ジグリセリンモノオレート「DGO−1」5.0質量部とを、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練した。
他方、中間層を形成する樹脂組成物については、乳酸系重合体(B−1)としてNatureWorks社製「NatureWorks4060D」(L体/D体=87/13、重量平均分子量:20万)を用い、乳酸系共重合体(B−2)として大日本インキ化学工業(株)製「プラメート PD−350」(ポリ乳酸とプロピレングリコール・コハク酸の共重合体/ポリ乳酸:48モル%、プロピレングリコール:26モル%、コハク酸:26モル%/重量平均分子量:5万8千)を用いて、質量比でB−1/B−2=20/80の割合で混合して100質量部とし、これにカルボジイミド化合物として日清紡(株)製「カルボジライト HMV−8CA」を1質量部の割合で添加し、押出設定温度180〜200℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練し、さらに、接着層用の押出機に接着性樹脂である(F−2)成分として、三井・デュポンポリケミカル社製エチレン−酢酸ビニル共重合体「エバフレックス45LX」(酢酸ビニル含量:46質量%、MFR:2.5g/10分)(以下「f4」と略する)を投入した。そして、上記のように溶融混練した両表面層を形成する樹脂組成物と、中間層を形成する樹脂組成物と、両接着層を形成する樹脂組成物とを、それぞれ別々の押出機から合流させ、五層Tダイ温度200℃、ダイギャップ2mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。
得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
参考例(3−1)において、中間層を形成する樹脂組成物の質量割合を、質量比でB−1/B−2=60/40とし、可塑剤(C)として、理研ビタミン(株)製アセチル化モノグリセライド「リケマールPL019」(分子量420)を5質量部となるように同方向2軸押出機の第1ベント口から定量送液ポンプを利用して注入しながら溶融混練した以外は参考例(3−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
参考例(3−1)において、ポリオレフィン系重合体(A)を、日本ユニカー(株)製直鎖状低密度ポリエチレン「NUCG5225」(密度:0.92g/cm3、MFR:2.0g/10分)に変更し、かつ、接着層用の押出機に接着性樹脂である成分を、住友化学(株)製「ボンドファースト」(エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体)(以下「f3」と略する)に変更した以外は参考例(3−1)と同様にして、総厚み12μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=2μm/1μm/6μm/1μm/2μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
参考例(3−1)において、接着層用の押出機に、あらかじめ参考例(3−1)の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に三層フィルムとした以外は参考例(3−1)と同様にして総厚み12μm(表面層/中間層/表面層=1.5μm/9μm/1.5μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表3に示す。
上記の参考例(3−1)、実施例(3−1)及び比較例(3−1)〜(3−2)で得られたフィルムについては、上記の参考例(2−1)及び実施例(2−1)〜(2−2)と同様の方法で評価を行った。
表3より、参考例(3−1)及び実施例(3−1)で得たフィルムは、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、さらには防曇性及び容器密着性も良好であることが確認された。また、特定の接着層を設けたことにより、層間剥離強度が向上し、その結果層間剥離が抑制されて小巻替え適性に優れた包装フィルムが得られたことが確認された。
これに対して、比較例(3−1)及び比較例(3−2)においては、表裏層と中間層の間の接着層として、アクリル変性ポリエチレン系樹脂であるエチレン/エポキシ/アルキルアクリレート共重合体を用いたため、層間剥離強度が不十分となり、小巻替え時に層間剥離が生じる場合(比較例(3−1))や、接着層を有さないため、小巻替え時に層間剥離が著しくフィルム破断が発生する場合(比較例(3−2))が確認された。
また、参考例(3−1)及び実施例(3−1)で得たフィルムは、表裏層と中間層の間の接着層として、アクリル変性ポリエチレン系樹脂であるエチレン/エポキシ/アルキルアクリレート共重合体を用いた比較例(3−1)に比較して、透明性の点においても優れていた。
Claims (14)
- 少なくとも3層を備えた多層乳酸系軟質フィルムであって、
両表面層は、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分として含有し、
中間層は、乳酸系重合体(B−1)と、乳酸系共重合体(B−2)と、可塑剤(C)としてのグリセリン脂肪酸エステルと、を主成分として含有することを特徴とする多層乳酸系軟質フィルム(120℃のオイルバスに10分間浸漬した際の縦方向(MD)方向の収縮率が30%以上、横方向(TD)の収縮率が40%以上であるものを除く)。 - JIS K−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの範囲にあり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 少なくとも表面層/接着層/中間層/接着層/表面層をこの順に有する5層以上の多層乳酸系軟質フィルムであって、
両表面層は、ポリオレフィン系重合体(A)を主成分として含有し、
中間層は、乳酸系重合体(B−1)と、乳酸系共重合体(B−2)と、可塑剤(C)としてのグリセリン脂肪酸エステルと、を主成分として含有し、
両接着層は、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこの共重合体の水素添加誘導体(F−1)、酢酸ビニル含量が30〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)、変性ポリオレフィン系樹脂(F−3)、乳酸系重合体と、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体との混合樹脂である乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のいずれか1種又は2種以上の組合せからなる接着性樹脂を主成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の多層乳酸系軟質フィルム。 - 動的粘弾性測定により振動周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が1GPa〜4GPaであり、損失正接(tanδ)のピーク温度が20〜60℃であって、そのピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- ポリオレフィン系重合体(A)が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体又はこれら2種類以上の組合わせからなる混合樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 乳酸系重合体(B−1)が、LD比率の異なる2種類以上の乳酸系重合体の混合樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 乳酸系混合樹脂組成物(B)は、示差走査熱量測定において、加熱速度10℃/minで測定されるガラス転移温度が単一となるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 乳酸系混合樹脂組成物(B)は、示差走査熱量測定において、加熱速度10℃/minで測定されるガラス転移温度が単一となり、当該ガラス転移温度が0〜30℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 乳酸系混合樹脂組成物(B)は、JIS K−7198A法記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、歪み0.1%において測定した際に、損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 乳酸系共重合体(B−2)は、乳酸系重合体とジオール・ジカルボン酸との共重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 乳酸系共重合体(B−2)は、乳酸系重合体とプロピレングリコールとコハク酸との共重合体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 中間層は、乳酸系混合樹脂組成物(B)100質量部に対し、可塑剤(C)としてのグリセリン脂肪酸エステルを1〜15質量部含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- 中間層は、さらにポリオレフィン系重合体(E)を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
- ポリオレフィン系重合体(A)と、乳酸系混合樹脂組成物(B)と、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこれら共重合体の水素添加誘導体(F−1)、酢酸ビニル含量が30〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(F−2)、変性ポリオレフィン系樹脂(F−3)、乳酸系重合体とアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック及びメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体との混合樹脂である乳酸・アクリル混合樹脂(F−4)のいずれか1種又は2種以上の組合せからなる接着性樹脂と、を含有する再生層を備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の多層乳酸系軟質フィルム。
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