JP2006131687A - ポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いた成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟質かつ透明で経時的な変化が極めて少ない生分解性樹脂組成物、及び包装フィルム用途で広く使用することができる成形品を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)成分としてポリ乳酸系樹脂、(B)成分としてカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体、及び(C)成分として分子量2,000以下の可塑剤を含有し、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率が1〜4GPaであり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲となることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物及び該ポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルム成形品を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、(A)成分としてポリ乳酸系樹脂、(B)成分としてカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体、及び(C)成分として分子量2,000以下の可塑剤を含有し、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率が1〜4GPaであり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲となることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物及び該ポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルム成形品を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物に関し、さらに詳細には、柔軟性に優れ、食品包装用途に好適に用いられるポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いたフィルム成形品に関する。
プラスチックは今や生活と産業のあらゆる分野に浸透し、全世界の年間生産量は約1億トンにも達している。しかしその一方で、生産量に比例して使用済みプラスチックの処理の問題も大きくなってきている。
従来、使用済みプラスチックの大半は埋め立て等により廃棄処理されてきたが、プラスチックは一般に自然界において長期に渡って安定であるため、自然の景観や野生植物の生活環境が損なわれるなどの様々な問題が指摘されてきた。
近年、このような環境問題の高まりとともに、枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、自然環境に悪影響を及ぼさない生分解性樹脂、即ち、土壌中や水中で加水分解などにより崩壊・分解が進行し、最終的には微生物の作用によって無害な分解物となる生分解性樹脂が注目されている。
実用化され始めている生分解性樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル、変性ポリビニルアルコール、セルロースエステル化合物、デンプン変性体やこれらのブレンド体を挙げることができる。これらの生分解性プラスチックは、それぞれ固有の特性を有し、これらに応じた用途展開が図られている。中でも、ポリ乳酸系樹脂は、澱粉をはじめとした植物由来の糖源の発酵により得られる乳酸を原料とし、化学工業的に量産可能であり、しかも透明性・剛性・耐熱性等に優れていることから、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレートの代替材料として特に注目されている。
ところで、軟質かつ透明で経時的な変化が極めて少ないという特徴をもった軟質なフィルムは、食品ストレッチ包装用フィルム、工業用保護フィルム、ダイシンフフィルム等の包装フィルム用途で広く使用されており、従来使用されていた軟質なフィルムのほとんどは塩化ビニル系樹脂組成物からなるものであったが、上記のような環境対応の観点からポリ乳酸系樹脂等の生分解性へ代替することが望まれていたが、ポリ乳酸系樹脂を塩化ビニル樹脂の代替材料として使うには柔軟性等の課題を解決する必要があった。
これまで、剛性なポリ乳酸系樹脂を軟質化する方法として、例えば特許文献1〜4には、乳酸系樹脂に可塑剤を添加して軟質化する提案が開示されている。しかし、これらの方法では、可塑剤のブリードや脆化等の経時的な変化が生じるという課題を有することになる。
また、特許文献5には、柔軟性を与える可塑剤が安定的に生分解性樹脂の中に留まり、高温時などの過酷な条件でも柔軟性を維持する生分解性フィルムを提供すべく、可塑剤を含有する生分解性フィルムの両面に、可塑剤の飛散・滲出を抑制する目的でアクリル系ポリマーからなる薄膜層を形成してなる柔軟化生分解性軟質フィルムが開示されている。しかし、該フィルムは両面に可塑剤の飛散、滲出を抑制する薄膜層が形成されるため、経時的なブリードは抑えられる一方、上記薄膜層がアクリル系ポリマーによって形成されるため生分解性を失うことになってしまう。
また、ポリ乳酸系樹脂と柔軟な性質を有するポリマーとのブレンド或いは共重合化による軟質化の提案がなされており、例えば非特許文献1には、ポリ乳酸とジカルボン酸とカプロラクトンとのブレンドが開示されている。しかし、該ポリマーブレンドでは、柔軟性は改善されるものの、食品包装用途に適する特性を有しているとは言い難いものであった。
特許文献6及び特許文献7には、ポリ乳酸とジカルボン酸からなるポリエステルとのブレンド或いは共重合化に関する提案がなされている。特許文献6には、ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートのブレンド、或いはエステル交換触媒による共重合化の記載があるが、ポリエチレンテレフタレートは融点が高く、ポリ乳酸との溶融ブレンド或いは共重合化を高温で行う必要があるため、ポリ乳酸の一部が分解され、そのブレンド物或いは共重合体は、着色があり強く悪臭があり、不透明で、しかも分子量が低いために柔軟性が不十分で機械物性が低く、生分解性にも劣るという課題を抱えていた。また、特許文献7にはポリ乳酸と、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分からなるポリエステルブレンド物の記載があるが、そのポリエステルは分子量が低いため、十分な柔軟性、機械物性、及び良好な成形加工性が得られないという課題を抱えていた。
さらに、特許文献8には、ポリ乳酸系樹脂とポリカプロラクトンとの共重合体についての提案があり、ポリ乳酸系樹脂とポリカプロラクトンとの共重合体は、柔軟性については比較的良好であるが、耐熱性が低く不透明であるという課題を有していた。
本発明の目的は、軟質かつ透明で経時的な変化が極めて少ない生分解性樹脂組成物、及び包装フィルム用途で広く使用することができるフィルム成形品を提供することにある。
すなわち、本発明は、(A)成分としてポリ乳酸系樹脂、(B)成分としてカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体、及び(C)成分として分子量2,000以下の可塑剤を含有し、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率が1〜4GPaであり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲となることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物及び該ポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルム成形品を提供するものである。
本発明によれば、各成分のブリードや脆化等の経時的な変化が生じ難く、かつ柔軟で比較的透明なポリ乳酸系樹脂組成物を提供することができる。また、該ポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルム成形品は、特に食品をはじめとした包装用途に好適に用いることができる。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含するものである。
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するポリ乳酸系樹脂組成物である。
(A)ポリ乳酸系樹脂
(B)カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体
(C)分子量2,000以下の可塑剤
(A)ポリ乳酸系樹脂
(B)カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体
(C)分子量2,000以下の可塑剤
(A成分)
本実施形態に用いられる(A)成分であるポリ乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、ポリ乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいことから、ポリ(L−乳酸)やポリ(D−乳酸)よりも、結晶性の低いポリ(DL−乳酸)を使用することが好ましく、または、ポリ(L−乳酸)やポリ(D−乳酸)に対してポリ(DL−乳酸)混合したものを使用することが好ましい。
但し、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD―乳酸を98%以上含むものである。
本実施形態に用いられる(A)成分であるポリ乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体を用いることができる。
可塑剤のブリードアウトを抑える観点から言えば、ポリ乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましいことから、ポリ(L−乳酸)やポリ(D−乳酸)よりも、結晶性の低いポリ(DL−乳酸)を使用することが好ましく、または、ポリ(L−乳酸)やポリ(D−乳酸)に対してポリ(DL−乳酸)混合したものを使用することが好ましい。
但し、ここでいうポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)は、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸又はD―乳酸を98%以上含むものである。
ポリ乳酸系樹脂のD−乳酸(D体)とL−乳酸(L体)との構成比は、本来、一般的な成型品としてはL体:D体=100:0〜90:10、もしくは、L体:D体=0:100〜10:90であることが好ましく、L体:D体=100:0〜94:6、もしくは、L体:D体=0:100〜6:94であることがより好ましく、特にL体:D体=99.5:0.5〜94:6、もしくは、L体:D体=0.5:99.5〜6:94であるとより好ましい。D体とL体との構成比がこの範囲内では、得られる成形品の耐熱性が高く、用途が制限されることがない。
ただし、可塑剤のブリードアウトを抑えるという観点から言えば、ポリ乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましく、L体:D体=50:50〜94:6、もしくは、L体:D体=50:50〜6:94の方がブリードアウト防止において好ましい。
なお、L体とD体との共重合比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数のポリ乳酸系樹脂のL体とD体のホモポリマーと、共重合体をブレンドすることにより、ブリードのしにくさと耐熱性の発現のバランスをとることができる。
ただし、可塑剤のブリードアウトを抑えるという観点から言えば、ポリ乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましく、L体:D体=50:50〜94:6、もしくは、L体:D体=50:50〜6:94の方がブリードアウト防止において好ましい。
なお、L体とD体との共重合比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数のポリ乳酸系樹脂のL体とD体のホモポリマーと、共重合体をブレンドすることにより、ブリードのしにくさと耐熱性の発現のバランスをとることができる。
ポリ乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、所望の組成や結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、所望の組成や結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
さらに、本実施形態に用いられるポリ乳酸系樹脂は、本発明の性能を損なわない範囲で、必要性に応じて、少量の共重合成分を添加することもでき、テレフタル酸等の非脂肪族カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方のエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール等を用いることもできる。
本実施形態に用いられるポリ乳酸系樹脂は、重量平均分子量が5万〜40万の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10万〜25万の範囲である。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量が5万以上であれば、機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば適度な溶融粘度であるため良好な成形加工性を確保することができる。
本実施形態に用いるポリ乳酸系樹脂は、市販されているポリ乳酸系樹脂を用いることができ、例えば、商品名「レイシア」シリーズ(三井化学(株)製)、商品名「Nature Works」シリーズ(カーギル・ダウ社製)、商品名「U‘z」シリーズ(豊田自動車社製)等を挙げることができる。
(B成分)
次に、(B)成分としてのカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位として含むビニル重合体について説明する。
次に、(B)成分としてのカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位として含むビニル重合体について説明する。
ここで、カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体としては、酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基などが挙げられ、特にカルボキシル基との反応性が高いエポキシ基を有する単量体が好ましい。
このように(B)成分がカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有していれば、(B)成分の官能基が(A)成分の末端基(カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方)と反応し両者間の一部に結合が生じる。そのため、(B)成分の有する軟質性を本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物に与えることができ、加えて、各成分の経時的なブリード等の問題を回避することが可能となる。
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート等が挙げることができる。
このように(B)成分がカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有していれば、(B)成分の官能基が(A)成分の末端基(カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方)と反応し両者間の一部に結合が生じる。そのため、(B)成分の有する軟質性を本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物に与えることができ、加えて、各成分の経時的なブリード等の問題を回避することが可能となる。
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート等が挙げることができる。
カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体の量は、(B)成分の全構成単位のうち、5mol%〜95mol%の範囲が好ましい。なお、この(B)成分のビニル重合体は、カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体以外のその他の単量体を構成単位として含んでもよい。
その他の単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族環を有する単量体やメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げることができる。
上記のように構成されるビニル重合体は、カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を公知の方法で重合させることにより製造される。この時、必要に応じてその他の単量体を含んでいてもよい。ビニル重合体の好ましい製造方法としては、特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、及び特開昭60−215007号公報に開示される高温連続重合による方法を例示することができる。すなわち、所定の温度及び圧力に設定された反応器内に上記の単量体の混合物を一定の供給速度で連続して供給し、その供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法である。
また、ビニル重合体は市販されているものを用いることができ、具体的には、商品名「ARUFON UG」シリーズや「XGシリーズ」(いずれも東亞合成(株)製)や、商品名「エピコート」シリーズ(ジャパンエポキシレジン(株)製)等を例示することができる。
また、ビニル重合体は市販されているものを用いることができ、具体的には、商品名「ARUFON UG」シリーズや「XGシリーズ」(いずれも東亞合成(株)製)や、商品名「エピコート」シリーズ(ジャパンエポキシレジン(株)製)等を例示することができる。
(C成分)
次に、(C)成分である可塑剤について説明する。
可塑剤は、ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる性能を備えているものであり、本実施形態で用いる可塑剤は、相溶性や生分解性の観点から、下記(a)〜(h)に示す化合物の中から選ばれる分子量2,000以下の1種或いは2種以上の組み合わせからなるものが好ましく、中でも(f)が好ましい。
なお、可塑剤の分子量が1,000以下、例えば500〜1,000である低分子量の可塑剤であっても、本実施形態の塑性においてはブリードを抑えることができる点に特徴がある。
次に、(C)成分である可塑剤について説明する。
可塑剤は、ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる性能を備えているものであり、本実施形態で用いる可塑剤は、相溶性や生分解性の観点から、下記(a)〜(h)に示す化合物の中から選ばれる分子量2,000以下の1種或いは2種以上の組み合わせからなるものが好ましく、中でも(f)が好ましい。
なお、可塑剤の分子量が1,000以下、例えば500〜1,000である低分子量の可塑剤であっても、本実施形態の塑性においてはブリードを抑えることができる点に特徴がある。
(a)H6C3(OH)3−n(OOCCH3)n (但し、0<n≦3)
これはグリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテートであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(b)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残渣があっても良い)。
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(c)エチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残渣があっても良い)。
例えば、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(d)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残渣があっても良い)。
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(e)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えばステアリン酸ブチル等が挙げられる。
(f)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残渣があっても良い)、中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
具体的には、ジ(2−ヘチルヘキシルアジペート)、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。
(g)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残渣があっても良い)。
例えば、クエン酸トリメチルエステル等が挙げられる。
(h)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。
これはグリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテートであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(b)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残渣があっても良い)。
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(c)エチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残渣があっても良い)。
例えば、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(d)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残渣があっても良い)。
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(e)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えばステアリン酸ブチル等が挙げられる。
(f)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残渣があっても良い)、中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。
具体的には、ジ(2−ヘチルヘキシルアジペート)、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。
(g)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残渣があっても良い)。
例えば、クエン酸トリメチルエステル等が挙げられる。
(h)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。
(物性・用途)
次に、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率が1〜4GPaであり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲であることが重要である。
次に、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率が1〜4GPaであり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲であることが重要である。
上記の物性は、食品包装用ラップフィルムとして必要な諸性質、例えば、紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装・保存時における適度の弾性、大きな変形や容器への密着性、それ自身の変質等の有無を示す食品包装用ラップフィルムの指標として好適な物性である。すなわち、前記の物性を備えたポリ乳酸系樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いたフィルム成形品は、食品包装用ラップフィルムとして好適に用いることができる。
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値が1GPa以上であれば、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物を用いてフィルムを成形した場合、フィルムが適度なコシを備えるため、フィルムをカットする際に幅方向にうまく裂くことができるとともに、変形に対する応力が小さすぎることがないため、容器等にオーバーラップする際にフィルムが局所的に伸びることがなくうまく包装することができる。他方、20℃における貯蔵弾性率の値が4GPa以下であれば、フィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
また、損失正接(tanδ)に関しては、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメーターの一つである。すなわち、損失正接の値が小さいと応力緩和が速く、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こり、逆に損失正接の値が大きいと応力緩和が遅く、フィルムの変形に対する復元挙動が遅くなる。
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hzにて測定した損失正接(tanδ)の20℃の値が0.1以上であれば、フィルムの復元挙動が瞬間的に起こることがないから、例えば本実施形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルムを伸ばしオーバーラップする際に、フィルムを伸ばす力を取り除いた瞬間に元に戻ってしまうことがなく、シワ無く綺麗に包装することができる。他方、0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることがないため、通常想定される使用においては塑性的な変形を示すことがない。
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hzにて測定した損失正接(tanδ)の20℃の値が0.1以上であれば、フィルムの復元挙動が瞬間的に起こることがないから、例えば本実施形態におけるポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルムを伸ばしオーバーラップする際に、フィルムを伸ばす力を取り除いた瞬間に元に戻ってしまうことがなく、シワ無く綺麗に包装することができる。他方、0.8以下であれば復元挙動が遅すぎることがないため、通常想定される使用においては塑性的な変形を示すことがない。
(ポリ乳酸系樹脂組成物及びフィルム成形品の製造方法)
次に、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物及び該組成物を用いたフィルム成形品を製造する方法について説明するが、下記製造法に限定されるものではない。
次に、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物及び該組成物を用いたフィルム成形品を製造する方法について説明するが、下記製造法に限定されるものではない。
本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、前記粘弾性挙動を有することが重要であり、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の混合質量比は、前記粘弾性挙動となるように調整するのが好ましく、特に限定されないが、通常、次のように混合すると良い。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、5〜30質量部、好ましくは7〜20質量部、さらに好ましくは10〜15質量部である。ここで、(B)成分の含有量が5〜30質量部であると、上記粘弾性挙動を有しつつ、各成分の相溶性を保ち、機械的性質を損なわないため好ましい。
さらに(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、1〜10質量部、特に3〜5質量部となるように添加するのが好ましい。ポリ乳酸系樹脂組成物において、可塑剤の添加量が前記の範囲より著しく多くなれば、透明性を損なう事無く柔軟性を付与するができる一方、経時的にブリードが生じ、可塑剤が表面に以降して表面がべとついたり、柔軟性が低下するといった問題を生じるようになる。逆に可塑剤の量が前記の範囲より著しく少ないと柔軟性に乏しいフィルムとなり、(B)成分の割合を高める必要が生じてしまう。よって(C)成分の添加量は上記範囲とするのが好ましい。
さらに(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、1〜10質量部、特に3〜5質量部となるように添加するのが好ましい。ポリ乳酸系樹脂組成物において、可塑剤の添加量が前記の範囲より著しく多くなれば、透明性を損なう事無く柔軟性を付与するができる一方、経時的にブリードが生じ、可塑剤が表面に以降して表面がべとついたり、柔軟性が低下するといった問題を生じるようになる。逆に可塑剤の量が前記の範囲より著しく少ないと柔軟性に乏しいフィルムとなり、(B)成分の割合を高める必要が生じてしまう。よって(C)成分の添加量は上記範囲とするのが好ましい。
本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、(A)成分,(B)成分、及び(C)成分、さらに必要に応じて他の添加剤等を混合・コンパウンドして製造することができる。
ここで、コンパウンドの具体的な方法として、同方向二軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を例示することができ、これらのうち1つを用いてコンパウンドすることができる。
ここで、コンパウンドの具体的な方法として、同方向二軸押出機、ニーダー、ヘイシェルミキサー等を例示することができ、これらのうち1つを用いてコンパウンドすることができる。
さらに、二軸押出機を例にして説明すると、(A)成分であるポリ乳酸系樹脂と、必要に応じて他の添加剤とをそれぞれ十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混練し、ベント口から(B)成分であるカルボキシルカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体、及び(C)成分である分子量2,000以下の可塑剤を所定量添加しながらストランド形状に押出してペレットを作製する。
この際、(A)成分であるポリ乳酸系樹脂はL−乳酸構造とD−乳酸構造との組成比によって融点が変化すること、並びに(A)成分と(B)成分、並びに(C)成分との混合割合によって混合樹脂の融点が変化することを考慮して、溶融温度を適宜選択するのが好ましい。実際には160〜230℃の融点温度範囲のものが選択される。
この際、(A)成分であるポリ乳酸系樹脂はL−乳酸構造とD−乳酸構造との組成比によって融点が変化すること、並びに(A)成分と(B)成分、並びに(C)成分との混合割合によって混合樹脂の融点が変化することを考慮して、溶融温度を適宜選択するのが好ましい。実際には160〜230℃の融点温度範囲のものが選択される。
次に、上記方法にて作製したペレットを十分に乾燥して水分を除去した後、以下の方法でフィルム成形を行う。
本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルムは、通常の押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形、またはTダイ成形によりフィルム状物に成形することによって製造することができる。
例えば、複数台の押出機から樹脂組成物を溶融押出し、インフレーション成形することによりフィルム状物を得ることができる。実用的には、環状口金から溶融押出してインフレーション成形すればよく、その際、ブローアップ比(バブル径/ダイ径)は4以上が好ましく、特に5〜7の範囲が好適である。
本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルムは、通常の押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形、またはTダイ成形によりフィルム状物に成形することによって製造することができる。
例えば、複数台の押出機から樹脂組成物を溶融押出し、インフレーション成形することによりフィルム状物を得ることができる。実用的には、環状口金から溶融押出してインフレーション成形すればよく、その際、ブローアップ比(バブル径/ダイ径)は4以上が好ましく、特に5〜7の範囲が好適である。
さらに得られたフィルム状物に延伸を施すと、例えば、食品包装フィルムとして使用する場合、フィルムをカッター刃に押し当て、カッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、幅方向に引き裂きを伝播させてカットし、カットしたフィルムを容器に盛った食品をオーバーラップする際に、更なるカット性の向上が得られる場合が多いので好ましい。
ここで、フィルム状物の延伸条件は、フィルム状物の温度が20〜100℃であり、延伸倍率が1.0〜5.0倍の範囲内であることが好ましい。かかる範囲内であればフィルム状物の破断や白化が生じたり、フィルム状物の弾性率が低くなりすぎ、自重によりフィルム状物が垂れ下がるドローダウンが生じる等のトラブルが発生することが無い。
なお、フィルムを構成するポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が高くなると可塑剤はブリードアウトし易くなるが、延伸により結晶化度が高くなっても、他の要因で結晶化度が高くなった場合に比べて可塑剤のブリードアウトが生じ難い特徴がある。
ここで、フィルム状物の延伸条件は、フィルム状物の温度が20〜100℃であり、延伸倍率が1.0〜5.0倍の範囲内であることが好ましい。かかる範囲内であればフィルム状物の破断や白化が生じたり、フィルム状物の弾性率が低くなりすぎ、自重によりフィルム状物が垂れ下がるドローダウンが生じる等のトラブルが発生することが無い。
なお、フィルムを構成するポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が高くなると可塑剤はブリードアウトし易くなるが、延伸により結晶化度が高くなっても、他の要因で結晶化度が高くなった場合に比べて可塑剤のブリードアウトが生じ難い特徴がある。
また、必要に応じて、本発明の趣旨を損なわない範囲で、フィルム状物を延伸した後、幅固定で熱処理を行っても良い。この際の熱処理条件は、温度が50℃〜120℃であることが好ましく、特に好ましくは60℃〜110℃である。熱処理温度を50℃以上とすれば熱処理効果を得られ易く、120℃以下であるとドローダウンが起こり難い。また、熱処理時間が5秒以上であれば熱処理効果が得られ易く、5分以下であれば熱処理設備が長大にならないから経済性を維持することができる。
フィルム成形後に熱を加える処理は、用いるポリ乳酸系樹脂の種類に応じて適切な条件を選択して行い、この処理によってフィルムの結晶化度を高めてΔHm−ΔHcを20J/g以上にするのが好ましい。
ポリ(DL−乳酸)などの結晶化度の低いポリ乳酸系樹脂を原料に用いた場合には、フィルム成形後、所定の温度で6時間以上保管し養生してもよい。この際、養生温度は、フィルムをJIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分で昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間とする必要がある。
ポリ(DL−乳酸)などの結晶化度の低いポリ乳酸系樹脂を原料に用いた場合には、フィルム成形後、所定の温度で6時間以上保管し養生してもよい。この際、養生温度は、フィルムをJIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分で昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間とする必要がある。
また、引張応力比を調整するためには、インフレーション法においては、引取り速度とブロー比が重要であり、ブロー比を1.2〜5.0の範囲にすることが好ましい。また、キャスト法においては、押出引落し率を1.0〜10.0にすることが好ましい。また、延伸法においては、縦延伸倍率を1.5〜5.0に、横延伸倍率を2.0〜6.0にすることが好ましい。
前記の如く、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物を用いて製造されたフィルム成形品は、厚さ1〜500μmであると好ましい。中でも、8〜30μm程度、特に10〜20μm程度の範囲にすると食品包装用の通常の小巻ラップフィルム用として好適に使用することができるため、尚好ましい。また、100〜500μmの範囲であれば、工業用保護フィルム、ダイシンフフィルム等といった産業用の包装フィルム用途に好適に利用できる。
なお、本実施形態に係るポリ乳酸系樹脂組成物及びこれを用いたフィルム成形品は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、成形加工性や成形品の物性を改良・調整する目的のため、防曇剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、加水分解防止剤(カルボジイミド化合物の単量体または重合体など)、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、無機フィラー等の添加剤を適宜添加してもかまわない。
ここで、加水分解防止剤として例示したカルボジイミド化合物としては、下記一般式の基本構造を有するものが挙げられる。
−(N=C=N−R−)n−
(上記式において、nは1以上の整数であり、通常は1〜50の間で適宜決められる。Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでも良い)。
すなわち、カルボジイミド化合物は、芳香族カルボジイミド化合物、脂肪族カルボジイミド化合物のいずれでも良く、具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロフェニレンカルボジイミド)等、及びこれらの単量体が挙げられる。該カルボジイミド化合物は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
−(N=C=N−R−)n−
(上記式において、nは1以上の整数であり、通常は1〜50の間で適宜決められる。Rはその他の有機系結合単位を示す。これらのカルボジイミド化合物は、Rの部分が、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかでも良い)。
すなわち、カルボジイミド化合物は、芳香族カルボジイミド化合物、脂肪族カルボジイミド化合物のいずれでも良く、具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロフェニレンカルボジイミド)等、及びこれらの単量体が挙げられる。該カルボジイミド化合物は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本実施例に示すポリ乳酸系樹脂組成物および成形品の種々の測定値および評価は次のようにして行った。
(1)動的粘弾性測定法による貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)測定
各実施例又は比較例で作成したペレットを、100tプレス機を用い、設定温度200℃にて、10分間プレス後、冷却することにより0.5mm厚みの板を作製した。次いで、この板より試験片を切り出し、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所株式会社製のスペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び100℃にて貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)測定を行った。
各実施例又は比較例で作成したペレットを、100tプレス機を用い、設定温度200℃にて、10分間プレス後、冷却することにより0.5mm厚みの板を作製した。次いで、この板より試験片を切り出し、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所株式会社製のスペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び100℃にて貯蔵弾性率及び損失正接(tanδ)測定を行った。
(2)ブリード性試験
(1)で得た0.5mm厚みのプレス板より縦×横=5cm×5cmの形状の試験片を作製し、60℃に温調した大型熱風乾燥機中に4時間放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○:ブリードなし
△:若干表面にブリードが見られるが実用上問題の無いレベル
×:表面にブリードが見られ実用上問題となるレベル
(1)で得た0.5mm厚みのプレス板より縦×横=5cm×5cmの形状の試験片を作製し、60℃に温調した大型熱風乾燥機中に4時間放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
○:ブリードなし
△:若干表面にブリードが見られるが実用上問題の無いレベル
×:表面にブリードが見られ実用上問題となるレベル
(3)カット性評価
各実施例又は比較例で作成したペレットを、混練ゾーンを備えた30mmφ単軸押出機(L/D=22)を用いて、設定温度200℃、回転数30rpm、押出量3kg/hで、幅200mm、リップギャップ1mmのTダイからシート押出を行った。引取り速度を調整して、シートの厚みを90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)をもちいて、温度50℃にて予熱30秒、延伸速度3000%/minにて3×3倍に同時2軸延伸し、厚み10μmのフィルムを作製し、これを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースにいれ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を、以下の基準で評価した。
○:カット性が良好なもの
△:カットできるがカット性がやや劣るもの
×:フィルムが伸びてカット性が良くないもの。
各実施例又は比較例で作成したペレットを、混練ゾーンを備えた30mmφ単軸押出機(L/D=22)を用いて、設定温度200℃、回転数30rpm、押出量3kg/hで、幅200mm、リップギャップ1mmのTダイからシート押出を行った。引取り速度を調整して、シートの厚みを90μmのシートを成形した後、これを二軸延伸装置(TMロング社製)をもちいて、温度50℃にて予熱30秒、延伸速度3000%/minにて3×3倍に同時2軸延伸し、厚み10μmのフィルムを作製し、これを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースにいれ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を、以下の基準で評価した。
○:カット性が良好なもの
△:カットできるがカット性がやや劣るもの
×:フィルムが伸びてカット性が良くないもの。
(4)包装適性
(3)で得た厚み10μmのフィルムを用いて、陶器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を以下の基準で評価した。
○:適度に包装できるレベル
△:少しシワが入るが実用上問題ないレベル
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル
(3)で得た厚み10μmのフィルムを用いて、陶器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を以下の基準で評価した。
○:適度に包装できるレベル
△:少しシワが入るが実用上問題ないレベル
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル
(5)総合評価
(1)〜(4)の評価より、包装フィルムの適性を以下の基準で総合評価した。
〇:包装フィルムとして適する
×:包装フィルムとして適さない
(1)〜(4)の評価より、包装フィルムの適性を以下の基準で総合評価した。
〇:包装フィルムとして適する
×:包装フィルムとして適さない
(実施例1)
(A)成分として、カーギル・ダウ社製NatureWorks4032D(L−乳酸/D―乳酸=98.6/1.4、重量平均分子量:20万)を用い、(B)成分として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系エポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製、エピコートYL7217、重量平均分子量:2440)、(C)成分としてアジピン酸エステル(旭電化工業社製、PX−884、分子量:650)を用いた。
三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用い、設定温度200℃にて(A)成分を溶融混練しながら、ベント口より(A)成分100質量部に対して、10質量部の(B)成分と8質量部の(C)成分とを注入しながらコンパウンドしてペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(A)成分として、カーギル・ダウ社製NatureWorks4032D(L−乳酸/D―乳酸=98.6/1.4、重量平均分子量:20万)を用い、(B)成分として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系エポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製、エピコートYL7217、重量平均分子量:2440)、(C)成分としてアジピン酸エステル(旭電化工業社製、PX−884、分子量:650)を用いた。
三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用い、設定温度200℃にて(A)成分を溶融混練しながら、ベント口より(A)成分100質量部に対して、10質量部の(B)成分と8質量部の(C)成分とを注入しながらコンパウンドしてペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
(C)成分として、乳酸−グリコール共重合体(荒川化学製 GP4001、分子量:580)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:10:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(C)成分として、乳酸−グリコール共重合体(荒川化学製 GP4001、分子量:580)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:10:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
(C)成分として、ジ−2−(2メトキシエトキシ)エチルアジペートとジベンジルアジペートの混合物(大八化学社製 DAIFATTY−101、分子量:350)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:10:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(C)成分として、ジ−2−(2メトキシエトキシ)エチルアジペートとジベンジルアジペートの混合物(大八化学社製 DAIFATTY−101、分子量:350)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:10:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
(B)成分として、アクリル系エポキシ化合物(東亞合成社製 アフロンXG4010 分子量:2900)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:30:7質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(B)成分として、アクリル系エポキシ化合物(東亞合成社製 アフロンXG4010 分子量:2900)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:30:7質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
(B)成分として、アクリル系エポキシ化合物(東亞合成社製 アフロンXG4010 分子量:2900)を、(C)成分として、乳酸−グリコール共重合体(荒川化学製 GP4001、分子量:580)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:30:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(B)成分として、アクリル系エポキシ化合物(東亞合成社製 アフロンXG4010 分子量:2900)を、(C)成分として、乳酸−グリコール共重合体(荒川化学製 GP4001、分子量:580)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:30:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
(B)成分として、アクリル系エポキシ化合物(東亞合成社製 アフロンXG4010 分子量:2900)を、(C)成分として、ジ−2−(2メトキシエトキシ)エチルアジペートとジベンジルアジペートの混合物(大八化学社製 DAIFATTY−101、分子量:350)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:30:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(B)成分として、アクリル系エポキシ化合物(東亞合成社製 アフロンXG4010 分子量:2900)を、(C)成分として、ジ−2−(2メトキシエトキシ)エチルアジペートとジベンジルアジペートの混合物(大八化学社製 DAIFATTY−101、分子量:350)を用い、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:30:10質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
(C)成分を除いた状態、すなわち、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:10:0質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(C)成分を除いた状態、すなわち、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:10:0質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
(B)成分を除いた状態、すなわち、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:0:8質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(B)成分を除いた状態、すなわち、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:0:8質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
(B)成分を除いた状態、すなわち、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:0:17質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
(B)成分を除いた状態、すなわち、配合組成を(A)成分:(B)成分:(C)成分=100:0:17質量部とした以外は実施例1と同様にペレットを作製し、前記(1)〜(5)の評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (4)
- 下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有し、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率が1〜4GPaであり、かつ、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.1〜0.8の範囲となることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(A)ポリ乳酸系樹脂
(B)カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方と反応性を持つ官能基を有する単量体を構成単位に含むビニル重合体
(C)分子量が2,000以下の可塑剤 - 上記(B)成分のカルボキシル基或いは水酸基、又はその両方との反応性を持つ官能基がエポキシ基であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- (A)成分100質量部に対し、(B)成分が5〜30質量部、(C)成分が1〜10質量部含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を用いたフィルム成形品。
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