明 細 書
ポリエーテル-ポリ乳酸組成物およびそれを含んだポリ乳酸系フィルム 技術分野
[0001] 本発明は貯蔵安定性'溶融安定性優れ、臭気が少なぐ色相の良いポリエーテルと ポリ乳酸成分を含有するポリエーテル—ポリ乳酸組成物およびそれを含んだポリ乳 酸フィルムに関する。 背景技術
[0002] 近年、プラスチックの廃棄物処理の問題や環境問題などから、植物原料で優れた 生分解性を有するポリ乳酸を、広く汎用ポリマーとして活用しょうとする研究が盛んに 行われ、その組成物に関する多くの研究、特許出願がなされている。し力しポリ乳酸 は、ガラス転移温度が 60°Cと比較的低ぐ硬質で脆性のポリマーであるため、ホモポ リマーをそのまま汎用ポリマーとして各種用途に展開するには、克服しなくてはならな い課題が用途毎に存在する。
[0003] 例えばフィルムやシート用途に展開する場合、硬質で脆性であることが大きな課題 であり、それを解決するために様々な研究開発が今も行われている。特に、可塑剤の 添カ卩による軟質化技術や脂肪族ポリエステルなどの添カ卩による脆性改良化技術が広 く知られており、これらを組み合わせることによりポリ乳酸を幅広く活用できるようにな つてきている。
その中でも、ポリ乳酸組成物を添加剤として用いる技術は、ベースであるポリ乳酸と の親和性が良好である点や、ポリ乳酸と相互作用させることにより機能を持たせること ができる点において有用な技術である。
[0004] し力、しながら、これら改良技術においても、添加剤として用いるポリ乳酸組成物の貯 蔵安定性'溶融安定性や臭気発生などの点において十分な技術であるとは言い難く 、添加剤として用いるポリ乳酸組成物の貯蔵時にその物性が大きく低下したり、成形 加工する際の溶融時に分子量が著しく低下したり、独特の臭気を発生するなどの課 題がある。
[0005] 貯蔵安定性や溶融安定性が低下する主な原因は、ベースとなるポリ乳酸やポリ乳
酸組成物中に残留したラクチド、および、成形加工時の加熱により生成したラクチド が大気中の水分等によって加水分解し、有機酸となりポリマー鎖の切断に働くことが 挙げられる。また、一般にラクチドは昇華性を有しており、装置の汚染を引き起こした り、独特の臭気もあり、不快感を伴うことから、組成物中に残留するラクチド量の低減 と加水分解によって生成する有機酸量の低減が課題である。
[0006] ポリ乳酸組成物中から残留したラクチドを除去する方法としては、溶剤によって抽出 する方法、良溶剤にポリマーを溶解し貧溶剤中で析出させる方法が実験室レベルに おいては既知である。工業規模での製造では、二軸押出機での押出工程で減圧除 去する方法(特許文献 1 )や押出工程などで得られたストランドを減圧にしたポット内 で低分子量物を脱揮し、除去する方法 (特許文献 2)が開示されている。
[0007] し力 ながら、これらの方法では減圧、加熱下に組成物中に残留したラクチドを除 いてもラクチドの再発生が起こり、樹脂中のラクチド量を容易に減少させることができ ない。これは重合に使用した触媒が、ポリマー鎖からラクチドを生成する解重合反応 に作用するためである。また、有機酸量に関する検討がなされておらず、単に組成物 中に残留したラクチドを除去したとしても、容易に本発明が解決しょうとする課題を達 成できるものではない。
[0008] また、溶剤共存下で乳酸より製造したポリ乳酸からの触媒の除去方法 (特許文献 3) も知られてレ、る。この方法では溶剤に溶解してレ、るポリ乳酸に親水性有機溶媒と弱 酸をカ卩ぇ触媒成分を除くものである。また、水洗によって、触媒の失活'除去と残留ラ クチドの除去を行う方法がある力 この方法では、残留したラクチドが加水分解するた めそれに相当する有機酸が組成物中で生成し、貯蔵安定性が低下する。
[0009] キレート剤または酸性リン酸エステル類を触媒失活剤に用い、減圧脱気により残留 ラクチドを低減させる製造方法(特許文献 4、特許文献 5)も知られている。しかしなが ら、力かる技術では有機酸量を制御することができず、また、有機酸量が及ぼす効果 ゃラクチド量と同時に制御することに関する検討が十分なされていない。また、特許 文献 4, 5からなる組成物は、ポリ乳酸以外の成分割合が多いため、この組成物から 形成される成形体の植物性の割合はそれほど高いものとはならない問題がある。
[0010] また、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物の有機酸量に関して記載した技術が特許文
献 6に開示されている。この文献に記載の方法は、有機酸量を酸価として測定し、そ れを特定の範囲以下に制御することで、経時安定性が得られることが記載されている
。特許文献 6に記載のポリエーテル ポリ乳酸組成物は、ある程度の特性は有するも のの、さらに高い貯蔵安定性や溶融安定性が求められているのが現状である。 特許文献 1:欧州特許 532154号公報
特許文献 2:特開平 5— 93050号公報
特許文献 3 :特開平 6— 116381号公報
特許文献 4 :特許第 3513972号
特許文献 5:特許第 3487388号
特許文献 6:特開 2005— 146274号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 本発明は、かかる背景技術に鑑み、貯蔵安定性 ·溶融安定性に優れ、臭気が少な ぐ色相の良好なポリエーテル一ポリ乳酸組成物およびそれを含んだポリ乳酸系フィ ルムを提供せんとするものである。
課題を解決するための手段
[0012] 本発明は、上記課題を解決するために、本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物 は次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリエーテル—ポリ乳 酸組成物は、ポリエーテルとポリ乳酸セグメントを含有する化合物であり、残留ラクチ ド量が 0. 3重量%以下、酸価が 50当量/ 1以下であることを特徴とするものである。
[0013] さらに、本発明のポリ乳酸系フィルムは、ポリエーテルとポリ乳酸セグメントを有する 化合物であり、残留ラクチド量が 0. 3重量%以下、酸価が 50当量/以下である、ポ リエーテル—ポリ乳酸組成物を含んだ、ポリ乳酸系フィルム、であることを特徴とする ものである。
発明の効果
[0014] 本発明によれば、従来技術では成し得なかった、貯蔵安定性'溶融安定性に優れ 、臭気が少なぐ色相の良好なポリエーテル ポリ乳酸組成物を提供することができ
る。また、本発明によるポリエーテル ポリ乳酸組成物をポリ乳酸系重合体に添加す ることで、高い柔軟性を有するポリ乳酸系フィルムを提供できる。即ち、本発明のポリ エーテル ポリ乳酸組成物は、柔軟かつ分解性を有し、貯蔵安定性'溶融安定性に 優れ、色相の良好である添加剤としてシートおよびフィルム等の包装用途、射出成形 体、ラミネーシヨン等の用途に提供することができ、特に包装材用添加剤として有用 であり、本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物をポリ乳酸系重合体に添加した本 発明のポリ乳酸系フィルムは、柔軟性、耐ブリードアウト性に優れた植物性の高いフィ ルムとなる。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 本発明は、前記課題、つまり貯蔵安定性 ·溶融安定性優れ、色相の良好なポリエー テル ポリ乳酸組成物について、鋭意検討し、ポリエーテルとポリ乳酸セグメントを有 する化合物において、残留ラクチド量と酸価に着目してみたところ、これらの特定な 数値を有するものが、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。ここで、 「色相が良好」とは、組成物が熱履歴などで白色から褐色化することなぐ白色を保つ ことをいう。
[0016] すなわち、本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物は、従来技術では成し得なかつ た、貯蔵安定性'溶融安定性に優れ、黄褐色化せず、色相が良好であるという特徴 を有する。
本発明におけるポリエーテル—ポリ乳酸組成物とは、分子中に OH基を 1つ以上持つ たポリエーテルと、分子量 144以上を持ったポリ乳酸セグメントからなる化合物のこと であり、特にポリエーテルモノマーとポリ乳酸モノマーの周期的共重合体やブロック共 重合体、グラフト共重合体を指す。
[0017] ポリエーテル—ポリ乳酸組成物の合成は、ポリエーテルを合成後、触媒を用いてラ クチドを開環重合させる方法、ポリエーテルを合成後、乳酸を直接重合させる方法、 あるいは、触媒によるラクチドの開環や乳酸からの直接重合によりポリ乳酸オリゴマー を合成後、ポリエーテルのオリゴマーを添加し、重合させる方法などが挙げられる力 ポリエーテルを合成後に触媒を用いてラクチドを開環重合させる方法を用いる方が、 工業的に好ましい。
し力 ながら、一般的にラクチドの開環重合反応は、重合反応末期においてラタチド の開環重合とポリマーからの解重合の平衡が生じることがわかっており、この平衡反 応のため、モノマーであるラクチドが全てポリマー化することはなぐ未反応のラタチド が組成物中に残留することとなる。組成物中に残留したラタチド(以下残留ラクチドと レ、う)は、吸湿性を有し、空気中の水分などにより加水分解を起こし有機酸となる。有 機酸はポリ乳酸の分解を促進させるため、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物の貯蔵安 定性を著しく低下させる要因の一つとなっている。
[0018] なお、残留ラクチド量が多レ、ままであっても、組成物を水分除去した密閉容器に保 存すればポリ乳酸の加水分解を抑止することができるが、ラクチドは昇華性があるた め、組成物の表面に結晶化し、密閉容器から取り出した際に吸湿および加水分解が 起こり、ベたつきを発生し、作業性が著しく低下したり、臭気を発生するなどの品質低 下を招く。
[0019] 上記から、貯蔵安定性'溶融安定性を有し、作業性の良好なポリエーテル ポリ乳 酸組成物を得るためには、残留ラクチド量が少なぐかつ有機酸量が少ないことが必 要である。ここで、残留ラクチド量は GC (ガスクロマトグラフ)測定することが可能であ り、有機酸量は中和滴定により酸価測定することにより測定可能である。
[0020] 具体的数値としては、残留ラクチド量が、本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物 1 00重量%に対し、残留ラクチド量が 0. 0重量%以上 0. 3重量%以下であり、酸価が 0当量/ 1以上 50当量/ 1以下であることが必要である。
[0021] さらに、本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物をポリ乳酸系重合体に添加し、シ ートゃフィルムに成形する場合は、臭気や揮発物が発生しに《なる点から、残留ラタ チド量は 0. 0重量%以上 0. 2重量%以下が好ましぐオーバーラップフィルムなどの ように食品と接触する成形品、あるいは 10ミクロン程度の薄レ、フィルムを成形する場 合は、臭気や揮発物に加え、抽出物を発生しにくい点から、 0. 0重量%以上 0. 1重 量%以下であることが好ましい。この範囲を超える場合は、溶融安定性'貯蔵安定性 が著しく低下し、作業性が低下したり、臭気が発生したりする。
[0022] 本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物 100重量%に対し、残留ラクチド量が 0. 0 重量%以上 0. 3重量%以下とするための方法は、ポリエーテル一ポリ乳酸組成物の
重合反応末期に触媒活性低減剤を添加して触媒の活性を低減したり、あるいは重合 反応の系内から触媒を除去したのち、減圧脱揮によって残留ラクチドを除去する方 法などが挙げられる。
[0023] ここで、本発明のポリ乳酸系重合体とは、 L_乳酸および Zまたは D—乳酸を主成 分とし、重合体中の乳酸由来の成分が 70重量%以上のものを示し、実質的に L一乳 酸および/または D—乳酸からなるホモポリ乳酸が好ましく用いられる。
[0024] 触媒を重合反応の系内から除去する方法には、貧溶媒と良溶媒で析出させる方法 や、水で洗い流すなどの方法があるが、工業的でないことと、水分との接触機会が多 いなどの理由から良好な品質の組成物を得にくい。そのため、ポリエーテル一ポリ乳 酸組成物の重合反応末期に触媒の活性を低減させる方法が好ましい。触媒の活性 を低減させるより具体的な方法は後述する。
[0025] また酸価は、より良好な貯蔵安定性を得られることから 0当量 Zt以上 40当量 Zt以 下であることが好ましい。酸価が 50当量/ 1を越えると貯蔵安定性が低下することが ある。
[0026] また、本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物の酸価を 0当量/ 1以上 50当量/ 1 以下とするための方法としては、本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物の原料とな るポリエーテル、ラクチドのそれぞれの含有水分量を低減させる方法などが挙げられ る。含有水分量はそれぞれに適切な温度で加熱し、減圧乾燥することによって低減 できる。
[0027] 具体的には、本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物の重合前の原料となるポリェ 一テル中の水分量を lOOOppm以下、ラクチド中の水分量を 800ppm以下とすること で、これら原料を用いた本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物の酸価は 50当量 Z t以下とすることができる。より好ましくは、ポリエーテル中の水分量を 800ppm以下、 ラクチド中の水分量を 600ppm以下であることが好ましい。
[0028] 本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物に用いるポリエーテルセグメントには、入 手の容易さや分解性、安全性の点から、エーテル結合間の炭素数が 2以上のポリア ルキレンエーテルを用いることが好ましぐ具体的にはポリエチレングリコール、ポリプ ロピレングリコール、ポリブチレンダリコール、ポリペンタンジオール、ポリテトラメチレン
グリコーノレ、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンォキサイ ド等が好ましく用いられる。中でも、ポリ乳酸との親和性から、最も好ましくはポリェチ レンダリコールが用いられる。
[0029] 本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物に用いるポリエーテルセグメントの分子量 は特に問わないが、ポリエーテル一ポリ乳酸組成物をポリ乳酸系重合体の可塑剤と して用いた際の軟質化などの機能を十分に発現するためには、数平均分子量で 30 00以上 50000以下であることカ好ましく、より好ましくは、 6000以上 20000以下で ある。
[0030] また、本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物に用いるポリ乳酸セグメントは、熱安 定性の向上、ブリードアウト (滲出)抑制の点から、光学純度が 90%以上の結晶性を 有するポリ乳酸セグメントであることが好ましぐ数平均分子量が 1500以上のポリ乳 酸セグメントを 1分子中に 1つ以上有していることが好ましい。より好ましくは、光学純 度が 95%以上、数平均分子量が 2000以上のポリ乳酸セグメントを 1分子中に 1っ以 上有していることが好ましい。ポリ乳酸セグメントが結晶性を有するとは、ポリエーテル ポリ乳酸組成物を加熱下で十分に結晶化させた後、適当な温度範囲で DSC (示 差走査熱量分析装置)測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が 観測される事を言う。ポリ乳酸セグメントが 1500以上の数平均分子量を持たない場 合、ポリ乳酸セグメントが結晶性を有さなくなり、ポリエーテル ポリ乳酸組成物の耐 熱性が低下したり、本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物を添加剤としてポリ乳酸 系重合体に含有してフィルムを製造する際に、熱により該ポリエーテル ポリ乳酸組 成物がブリードアウト (滲出)するなど、正常に製品性能が発揮されなくなる場合があ る。
[0031] 上記ポリ乳酸セグメントは、 L—ラタチドおよび/または D—ラクチドを使用し、ポリエ 一テル成分と適当な仕込み量で共重合させることで得ることができる。
[0032] 本発明のポリエーテル一ポリ乳酸組成物は、優れた溶融安定性を発現するために 、窒素雰囲気下に溶融保持した際の残留ラクチド量が 0. 0重量%以上 0. 3重量% 以下であることが好ましい。窒素雰囲気下に溶融保持した際の残留ラクチド量が 0. 3 重量%を越えると、溶融時に分子量低下や臭気が発生しやすくなる場合がある。
[0033] 本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物は、良好な色相を保持する点で、不活性 ガス雰囲気下に溶融保持した際の数平均分子量の低下が 0%以上 10%以下である ことが好ましい。具体的には、不活性ガス雰囲気下 1時間での数平均分子量低下が 10%以下であることである。
[0034] ここでレ、う不活性ガスとは、反応物と化学的な反応を起こさないガスのことであり、ネ オン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの希ガス類や窒素、二酸化炭素など が挙げられる。中でも、安価で入手が容易であり、取扱性に優れるなどの点で、アル ゴン、窒素、二酸化炭素が好適に用いられる。
[0035] 本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物を得るには、数平均分子量 6000以上 20 000以下のポリエチレングリコールに、数平均分子量 1500以上のポリ乳酸セグメント となる量の L—ラクチドおよび Zまたは D—ラクチドを、触媒を用いて共重合させ、続 いて触媒の活性を低減させた後、減圧脱揮によって残留ラクチドを除去する方法が 最も好ましく用いられる。
[0036] ラクチドの重合反応は、開環重合と解重合との平衡反応である。よって、ラクチド重 合反応の触媒の活性を低減させることなぐ減圧脱揮によって、重合反応系内から残 留ラクチドが除去された場合、重合反応の平衡が解重合方向に向かい、ポリマーか らの解重合が促進されることとなる。そのため減圧脱気の結果として、ラクチド量が増 加することとなる。つまり解重合の活性化エネルギーを低下させている原因は触媒で あるため、減圧脱揮による残留ラクチド除去には、触媒活性が十分低減されているこ とが重要である。本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物を得るために、上述のよう に重合反応後、触媒の活性を低減させて、減圧脱揮を行うことで、ポリマーからの解 重合の活性化エネルギーが増加して、解重合を抑制することができる。そのため、残 留ラクチドを減圧による脱揮で減少させることができる。
[0037] 本発明において、ラクチドの重合反応に用いる触媒は特に限定しないが、オクタン 酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、ジァセトァセトキ シォキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、 酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、ァセチルアセテート鉄などが用いられる。なか でも反応速度や収率などの点、力 オクタン酸錫、ァセチルアセテート鉄が好ましく
用いられ、さらに好ましくはオクタン酸錫である。これら触媒の添加量は、ポリエーテ ノレ一ポリ乳酸組成物 100重量%に対して、 0. 001〜2重量%用いることが好ましい。 反応速度、着色抑制の点などから、その添加量は 0. 01〜0. 05重量%であることが 更に好ましい。
[0038] 上述した触媒の活性を低減させる方法としては、触媒活性低減剤を用いることが好 ましい。好ましく用いられる触媒活性低減剤は、使用するラクチド重合触媒によって 変化するが、一般に 1つ以上のリン酸またはリン酸エステル類を有する化合物、また は 1つ以上のカルボン酸を有する化合物、 1つ以上の硫酸または硫酸エステル類を 有する化合物、 1つ以上の硝酸または硝酸エステル類を有する化合物、およびこれ らの混合物が好適に用いられる。なかでも、ポリマー鎖の切断を抑え、得られる組成 物の色相も良好で、かつ効率よく触媒と結合する点から、 1つ以上のリン酸またはリン 酸エステル類を有する化合物がより好ましく用いられで、中でもリン酸または亜リン酸
、またはこれらの混合物であることが特に好ましい。
これら触媒活性低減剤は、ラクチド重合触媒の金属原子に、触媒活性低減剤中の不 対電子が配位することにより、触媒の活性を低減させることができる。つまり、触媒活 性低減剤中の不対電子が触媒の金属に配位することで、重合と解重合の活性化工 ネルギーを高めることができる。
[0039] また、 ICP (発光分光分析)測定を行うことで、ポリエーテル ポリ乳酸組成物中の 触媒の金属原子と触媒活性低減剤の比を観測することができる。
また、触媒量と触媒活性低減剤量の関係に、 1/6 < M/P < 1/2 (ただし、 式中の Mは、ポリエーテル ポリ乳酸組成物中に存在する触媒金属元素のモル量を 示し、 Pはポリエーテル—ポリ乳酸組成物中に存在するリン原子のモル量を示す。) の関係が成り立つことが好ましい。 M/Pが 1Z2を上回る場合、触媒の活性が十分 に低減されず、解重合反応の活性化エネルギーを十分に低減できないため、触媒活 性低減剤の添加後に減圧脱揮を行っても、残留ラクチドを低減できないことがある。
M/Pが 1Z6を下回る場合、触媒活性低減剤が余剰となり、最終的に得られるポリ エーテル—ポリ乳酸組成物の分解を早めたり、ベとつきによるブロッキングなどで作 業性が低下する場合がある。
さらに好ましくは 1/5 < M/P < 1/2 の場合であり、最も好ましくは M/P = 1/3である。
[0040] 本発明のポリエーテル ポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸系重合体の添加剤として好ま しく用いることができる。ポリ乳酸系重合体は一般に透明であるが、柔軟性に欠けるこ とが知られ、本発明のポリエーテル一ポリ乳酸組成物をポリ乳酸系重合体中に添カロ することにより、貯蔵安定性'溶融安定性に優れ、透明性と柔軟性があり、耐熱性が 高ぐブリードアウトを充分に抑制したポリ乳酸系フィルムを得ることができる。
[0041] 次に重合反応について説明する。本発明の重合反応には、撹拌が可能で、温度制 御が可能な気密性の優れた密閉容器であればよぐ撹拌翼のついた反応容器内で 行われることが好ましい。
[0042] 上記容器内にて、ポリエーテルとラクチドを溶融混合させ、重合触媒を添加する。
反応温度はラクチドの融点以上、かつ 180°C以下の温度が反応の平衡上望ましい。 ラクチドの融点は 100°C付近であり、 100°C以上 185°C以下の温度、更に好ましくは 、 160〜180°Cが反応の平衡上望ましい。
[0043] ポリエーテルの熱分解による着色を防ぐため、溶融時における系内雰囲気は乾燥 した不活性ガスで十分置換されていることが好ましい。中でも、系内を減圧した後、乾 燥シリカゲル環を通した窒素、アルゴンガス、二酸化炭素ガスあるいはこれらの混合 ガスで置換する行為を 3回以上行われた状態が好ましい。ポリエーテル、ラクチド、触 媒、触媒活性低減剤中に含有される水分を除去してすることが好ましレヽ。
[0044] なお、触媒活性低減剤は重合工程が終了した後に添加することが好ましレ、。重合 工程中に添加すると、触媒活性が低減してしまい、反応が途中で進行しなくなり、ラタ チドゃ低分子量体が大量に残留することがある。具体的な添カ卩時期についてはラタ チド等のモノマーのポリマーへの転化率が 85%〜99%の時が好ましぐ更に効率の よい脱揮工程を考慮すると 94%〜99%であることが好ましい。
[0045] 力、かる触媒活性低減剤の添加方法は、ポリ乳酸製のオブラートに包んで添加する 方法や、反応容器に設置された添加装置などを用いて触媒活性低減剤そのものを 直接反応系内に添加する方法などが挙げられる。作業性や反応系内に水分を持ち 込みにくいという点で、添加装置を用いた滴下が好ましい。
[0046] 力かる触媒活性低減剤の作用によって、触媒が存在することによる活性化エネルギ 一の低下した環境下でも、解重合反応を抑制することができ、結果としてポリマー鎖 の切断を最小に抑えることができる。触媒と触媒活性低減剤の反応は、攪拌の程度 に大きく依存するが、比較的早ぐ 3分程度で十分であり、好ましくは 5〜20分である 。その際の反応温度はポリエーテル—ポリ乳酸組成物の融点以上 180°C以下が好ま しい。
[0047] また、触媒活性低減剤添加後に残留したラクチドおよび低分子量体を取り除く目的 で減圧脱揮を行うことが望ましい。この脱揮工程によって残留ラクチド量を減少させる ことができ、得られたポリエーテル—ポリ乳酸組成物の臭気や貯蔵安定性'経時安定 性を向上させることができる。
[0048] 具体的な脱揮の方法としては、触媒活性低減剤を添加して触媒と触媒活性低減剤 を十分に反応させた後、系外へ取り出すことなぐそのまま攪拌'減圧を続ける方法 が好ましい。好適な脱揮条件としては、脱揮時間が 3時間以上、温度はポリエーテル —ポリ乳酸組成物の融点以上 150°C以下、減圧度は 13〜: 1333Paで行うことが好ま しい。その他の脱揮方法としては、重合終了後に、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物を ペレット化、または粉碎し、減圧下、加熱しながら行う方法がある。この場合、脱揮時 間は 3時間以上、温度は 60〜: 110°C、減圧度は 13〜: 1333Paが好ましい。
[0049] なお、本発明の効果を損なわない範囲でポリエーテル ポリ乳酸組成物には、酸 化防止剤、紫外線安定化剤を必要に応じて添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒ ンダードフエノール類、ヒンダードァミン類が挙げられる。
[0050] 本発明により得られたポリエーテル ポリ乳酸組成物は、残留ラクチド量と酸価が 少なぐ貯蔵安定性'溶融安定性に優れ、臭気も少なぐ色相も良好であるため、各 種用途に活用することができる。特に本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組成物は、ポ リ乳酸系重合体用の添加剤として好適に用いることができ、中でも、ポリ乳酸セグメン トの分子量と結晶性を制御することで、ブリードアウト抑制の機能を付与することがで きる点や、ポリエーテルセグメントによるポリ乳酸の軟質化効果を有するため、ポリ乳 酸用の可塑剤として特に好適に用いることができる。
[0051] 本発明により得られたポリエーテル一ポリ乳酸組成物をポリ乳酸系重合体用の可塑
剤として用いて、インフレーション成形、押出成形、射出成形、積層成形、プレス成形 等の種々の方法により成形力卩ェを行うことができ、汎用樹脂に使用されている既存装 置を用いて成形することが可能である。中でも、インフレーション製膜やキャスト製膜 などによってフィルムやシート状に成形カ卩ェし、包装材料や産業用品としての活用が 有用である。
包装材料としては、例えば、食品用ラップフィルム、雑貨などの包装フィルム、レジ袋 、一般規格袋、ゴミ袋、重袋等の袋類が挙げられ、産業用品としては、結束テープ、 農業用マルチフィルムまた農業用シートが挙げられる。
[0052] 以下に、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物を含んだポリ乳酸系フィルムの説明を記載 する。
成形加工の流れとしては、ポリ乳酸系重合体に本発明のポリエーテル—ポリ乳酸組 成物を混合し、それらを必要に応じて加熱し、溶融させたのち、フィルム状に加工す る。
[0053] ポリ乳酸系重合体とは、 L 乳酸および/または D 乳酸を主成分とし、重合体中 の乳酸由来の成分が 70重量%以上のものを示し、実質的に L 乳酸および/また は D 乳酸からなるホモポリ乳酸が好ましく用いられる。
[0054] また、後述する理由により、ポリエーテル ポリ乳酸組成物がポリ乳酸系重合体から ブリードアウトすることを抑制させる効果を発現させるために、ポリ乳酸系重合体は結 晶性を有することが好ましい。ポリ乳酸系重合体が結晶性を有するとは、該ポリ乳酸 系重合体を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で DSC (示差走査 熱量分析装置)測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が観測され ることをいう。
[0055] ポリ乳酸系重合体として、例えば均一なホモポリ乳酸を用いる場合にはその光学純 度が 70%以上のホモポリ乳酸を使用すればよい。あるいは、必要な機能の付与ある いは向上を目的として、光学純度の異なる 2種以上のホモポリ乳酸を併用してもよぐ 例えば、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を併用することも可能 である。この場合、非晶性のホモポリ乳酸の割合は本発明の効果を損ねない範囲で 決定すれば良い。また、通常、ホモポリ乳酸は光学純度が高いほど融点が高ぐ例え
ば光学純度が 98%以上のポリ L—乳酸では融点が約 170°C程度である力 成形品 とした際に高い耐熱性を付与したい際には、使用するポリ乳酸重合体のうち少なくと も 1種に光学純度が 95%以上のポリ乳酸を含むことが好ましい。
[0056] ポリ乳酸系重合体の製造方法には、 L_乳酸、 D_乳酸、 DL_乳酸 (ラセミ体)を 原料として一旦環状 2量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う 2段 階のラクチド法と、当該原料を溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が 知られている。本発明においてホモポリ乳酸を用いる場合は、いずれの製法によって 得られたものであってもよいが、ラクチド法によって得られるポリマーの場合には、ポリ マー中に含有されるラクチドが成形時に昇華して、例えば溶融製膜時にはキャストド ラムの汚染、フィルム表面の平滑性低下の原因となったり、臭気の原因となることがあ るため、成形時あるいは溶融製膜以前の段階でポリマー中に含有されるラクチドの含 有量を 0. 3重量%以下とすることが望ましい。また、直接重合法の場合にはラクチド に起因する問題が実質的にないため、成形性あるいは製膜性の観点からはより好適 である。
[0057] 本発明におけるポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は、フィルム成形品とした場 合の強度物性を優れたものとするため、通常少なくとも 5万、好ましくは 8万〜 30万、 さらに好ましくは 10万〜 20万であることが望ましい。
[0058] また、本発明におけるポリ乳酸系重合体は、 L 乳酸、 D 乳酸のほかにエステル 形成能を有するその他の単量体成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。 共重合可能な単量体成分としては、グリコール酸、 3—ヒドロキシ酪酸、 4ーヒドロキシ 酪酸、 4ーヒドロキシ吉草酸、 6—ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類 の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリ コール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数 の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、コハク酸、アジピン酸、セバシ ン酸、フマノレ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、 2, 6 _ナフタレンジカルボン酸、 5—ナ トリウムスルホイソフタル酸、 5—テトラブチルホスホニゥムスルホイソフタル酸等の分 子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられ る。なお、ポリ乳酸系重合体の共重合成分としては、生分解性を有する成分を選択
することが好ましい。
[0059] ポリ乳酸系重合体には、前述のような方法により残留ラクチド量と酸価を制御したポ リエ一テル ポリ乳酸組成物を含有させることで、高い柔軟性を有するポリ乳酸系フ イルムとすることができる。ポリエーテル—ポリ乳酸組成物は、前記手段により、残留ラ クチド量が 0. 3重量%以下、酸価が 50当量/以下が達成されたポリエーテルセグ メントとポリ乳酸セグメントを有する組成物である。
[0060] ポリ乳酸系重合体とポリエーテル—ポリ乳酸組成物を溶融混合し、フィルム状に成 形する場合、ポリエーテル一ポリ乳酸組成物中のポリエーテルセグメントは、数平均 分子量 3000以上 50000以下のポリエチレングリコールが好ましぐ数平均分子量 1 500以上 10000以下の L—乳酸または D—乳酸を主体とした結晶性を有するポリ乳 酸セグメントを 1分子中に 1つ以上有していることが好ましい。より良好な軟質化効果 を得たい場合、数平均分子量 3000以上 20000以下のポリエチレングリコールと、数 平均分子量 1500以上 5000以下の L 乳酸または D 乳酸を主体とした結晶性を 有するポリ乳酸セグメントを 1分子中に 1つ以上有していることが好ましい。
[0061] また、軟質化の効率を良好とするために、組成物のポリ乳酸セグメント成分の重量 割合が、組成物全体の 50重量%未満であることが好ましい。この関係を満たす場合 、より少量の添加で所望の柔軟性を有する耐ブリード性組成物を得ることができる。
[0062] 以下に前記ポリエーテル ポリ乳酸組成物の製造例を示す力 本発明のポリエー テル ポリ乳酸組成物の製造例はこれに限定されるものではない。
[0063] 両末端に水酸基末端を有するポリエチレングリコール (PEG)を用意する。両末端 に水酸基末端を有するポリエチレングリコール (PEG)の数平均分子量 (M PEG )は 、 GPC (ゲルパーミエイシヨンクロマトグラフィ)などで測定することができる。両末端に 水酸基末端を有するポリエチレングリコール(PEG) w B重量部に対し、ラクチド wA 重量部を添加した系において、 PEGの両水酸基末端にラクチドを開環付加重合させ 十分に反応させると、実質的に PLA (A) -PEG (B) _PLA (A)型のブロック共重合 体を得る。この反応は、必要に応じてォクチル酸錫などの触媒併存下でおこなわれる 。このポリエーテル—ポリ乳酸組成物の一つのポリ乳酸セグメントの数平均分子量は 、 (1/2) X (w A /wB ) X MPEGと求めることができ、また、ポリ乳酸セグメント成
分の組成物全体に対する重量割合は、 lOO Xw A / (wA+wB ) %と求めることが できる。さらに、ポリエーテルセグメントの組成物全体に対する重量割合は、実質的に lOO Xw B / (wA +wB ) %と求めることができる。生成した組成物の分子量やポリ 乳酸セグメントなどは、実際には、ある分布をもった値であるが、前記した式によって 得られる値の A_B_ A型ブロック共重合体を主成分とする化合物を得ることができる
[0064] 前記手法で得られたポリエーテル一ポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸セグメントが結晶 性を有するため、ポリ乳酸系重合体が形成される結晶中に取り込まれやすぐポリエ 一テル—ポリ乳酸組成物の分子とポリ乳酸系重合体とをつなぎ止める作用を生じ、こ の作用によって、ポリエーテル一ポリ乳酸組成物のブリードアウト (滲出)を抑制するこ とができる。
[0065] ポリ乳酸系重合体と溶融混合させるポリエーテル一ポリ乳酸組成物の添カ卩量は、特 に限定しないが、混合後のポリ乳酸系重合体とポリエーテル ポリ乳酸組成物を合 計した全体重量を 100重量%とした場合、ポリエーテル ポリ乳酸組成物中のポリェ 一テルセグメントの重量割合が 10〜50重量%の範囲であれば、軟質化効果とブリー ドアウト抑制効果が得られるため好ましい。ポリ乳酸系重合体に十分な軟質化効果付 与したい場合、ポリエーテルセグメントの重量割合は 20〜50重量%が好ましぐ軟質 ィ匕と機械強度を効率良く発現できる好ましい範囲は、ポリエーテルセグメントの重量 割合が 20〜40重量%である。
[0066] また、ポリ乳酸系重合体に前述したポリエーテル ポリ乳酸組成物を添加する方法 には、例えば、重縮合反応終了後の溶融状態のポリ乳酸系重合体に、本発明の手 段にて重合反応を終了した溶融状態のポリエーテル一ポリ乳酸組成物を混合し撹拌 させる方法、ポリ乳酸系重合体のチップと組成物のチップをブレンドした後に反応缶 あるいは押出機などで溶融混合する方法、ポリ乳酸系重合体を押出機にて押出中に 、加熱するなどして液状とした可塑剤をベント口などから連続的に添加し混合する方 法、ポリエーテル一ポリ乳酸組成物を高濃度含有させたポリ乳酸系重合体のマスタ 一チップとポリ乳酸系重合体のホモチップとをブレンドしたチップを押出機などで溶 融混合する方法などにより行うことができる。
ポリ乳酸系重合体の高重合度化、ラクチドゃ残存低分子量物の抑制などの観点から は、重縮合反応終了後の溶融状態のポリ乳酸系重合体に、本発明の手段にて重合 反応を終了した溶融状態のポリエーテル ポリ乳酸組成物を混合する方法が好まし ぐ設備の汎用性の観点からは、ポリ乳酸系重合体のチップと組成物のチップをブレ ンドした後に押出機などで溶融混合する方法が好ましい。
[0067] 製膜方法としては、インフレーション法、キャストドラム法などの既存の製膜方法を用 いることができる力 S、いずれの場合にも製膜直前に、使用するポリ乳酸系重合体チッ プゃポリエーテル—ポリ乳酸組成物チップは、含有水分量を低減するため、 80°C〜 120°Cにて真空度を 1333Pa以下で 6時間以上乾燥したものを用いることが好ましい 。製膜においては、押出機などで溶融混合されたポリ乳酸系重合体チップとポリエー テル—ポリ乳酸組成物チップを公知の方法でスリット状の口金よりチューブ状あるい はフィルム状に溶融押出することができる。インフレーション法では、チューブ状の溶 融物をニップロールなどで挟み込み、冷却固化させることにより未延伸フィルムを得る ことができ、キャストドラム法では、押出されたフィルム状の溶融物をキャスティングドラ ムに密着させて冷却固化させることにより未延伸フィルムを得ることができる。
[0068] 押出機やポリマー配管、口金などの温度は 200°C以下が好ましぐ 190°C以下がさ らに好ましぐ 180°C以下がより好ましい。また、ポリ乳酸重合体組成物が押出機内で 溶融されてから口金より吐出されるまでの滞留時間は 20分以下であることが好ましく 、 10分以下であることがさらに好ましぐ 5分以下であることがより好ましい。キャストド ラムの温度は、 40°C以下であることが好ましぐドラムへの粘着を防止するためには 2 5°C以下、より好ましくは 20°C以下である。但し、極端に低温の場合、結露する場合 力あることから、 10°C以上 20°C以下がより好ましい。
[0069] また、本発明におけるポリ乳酸系フィルムは、ポリ乳酸系重合体を配向させ、透明 性を保持したまま結晶化を促進させることが可能となることから、延伸して用いること が好ましい。延伸倍率は、少なくとも一軸方向に 1. 1倍以上であることが好ましぐさ らに好ましくは少なくとも一軸方向に 1.:!〜 10倍である。このように延伸することによ つて、ポリ乳酸系重合体を配向結晶化させると同時にポリエーテル—ポリ乳酸組成物 中のポリ乳酸セグメントがこの結晶中に取り込まれることを促進させることができ、揮発
やブリードアウト抑制効果を強く発現させることができる。また、配向結晶化によりフィ ルムの強度物性も向上するため、柔軟性と強度を併せ持つポリ乳酸系フィルムを得る こと力 Sできる。
本発明のポリ乳酸系フィルムの延伸方法には、インフレーション法で製膜と同時に二 軸方向に同時に延伸する方法や、キャストドラム法で得た未延伸フィルムを連続して 少なくとも一方向に延伸した後、必要に応じて 1段目延伸方向と直交する方向に延 伸する方法が挙げられる。
[0070] また、本発明のポリ乳酸系フィルムの延伸条件は、 目的とする熱収縮特性、寸法安 定性、強度、弾性率などに応じて、適宜調整し任意の方法で行うことができる。例え ば延伸温度は、用いるポリ乳酸系重合体のガラス転移温度以上、結晶化温度以下 で行うことが延伸性や透明性の点で好ましぐ延伸倍率は、フィルムの長手方向、幅 方向にそれぞれ 1. 1倍〜 10倍の範囲の任意とすることが好ましい。延伸倍率に関し て、特に長手方向、幅方向のどちらかの延伸倍率を大きくしてもよぐ同一であっても よい。なお、一軸方向の延伸倍率が 10倍を超えると、延伸性が低下してフィルムの破 断が頻発し、安定した延伸性を得られないことがある。また、延伸温度や延伸(変形) 速度などの条件によっては不均一延伸となる場合もあり、一軸方向の好ましい延伸 倍率は好ましくは 2倍以上、さらに好ましくは 2. 5倍以上である。また、例えばニ軸延 伸フィルムとする場合の延伸倍率としては、延伸前後のフィルムの面積割合である面 積倍率として、好ましくは 4倍以上、さらに好ましくは 7倍以上である。
[0071] また、いずれの延伸方法を用いた場合でも、フィルムの結晶化度をより高めたい場 合、延伸した後に 100〜135°Cの温度で、 10秒以上熱処理することが好ましい。
[0072] なお、本発明のフィルムを用いる場合、延伸を伴わない場合も含めて、例えばタル クなどの無機系あるいはエル力酸アミドなどの有機系結晶核剤を併用すると、延伸時 の配向結晶化と同様に、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物の有するポリ乳酸セグメント がベースであるポリ乳酸系重合体から形成される結晶中に取り込まれ、ポリエーテノレ
—ポリ乳酸組成物の分子をベースにつなぎ止める作用を促進し、この効果によって ポリエーテル—ポリ乳酸組成物の揮発やブリードアウト (滲出)をさらに抑制できる場 合がある。
[0073] 本発明のフィルムの厚さは特に制限はなぐ用途に応じて要求される性能、例えば 、柔軟性、機械特性、透明性、生分解速度などにより適宜な厚さにすればよいが、通 常 5 /i m以上、 1mm以下であり、特に 5 /i m以上、 200 μ m以下の範囲が好んで選 択される。また、包装用ラップフィルム、中でも食品包装用ラップフィルムとしては、 5 z m以上、 25 z m以下の範囲が好んで選択される。
[0074] 本発明のフィルムは、フィルムヘイズ値が 0. 0〜5. 0%であることが好ましレ、。フィ ルムヘイズ値は、実施例に記載の方法にて評価される。特に包装用ラップフィルム、 中でも食品包装用ラップフィルムの用途においては、フィルムヘイズ値が 0. 0〜5. 0 %であれば内容物を容易に見分けることができ、好適である。フィルムヘイズ値のより 好ましい範囲としては、 0. 0〜3. 0%であり、さらに好ましい範囲は 0. 0〜: 1. 5%で ある。ヘイズ値は低いほど、内容物を見分ける際に好適となるが、 0. 2%未満とする ことは困難であり、現実的な下限は 0. 2%である。
[0075] さらに、ゴミ袋や農業用マルチフィルムなどむしろ一定の隠蔽性が必要とされたり、 光線透過率が低いあるいは太陽光などの吸収率が高い方が好ましい用途において は、必要に応じて例えば着色顔料などを添加すると良い。
[0076] なお、本発明のポリ乳酸系フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲でポリエー テル ポリ乳酸組成物以外の成分を含有してもよい。例えば、公知の各種可塑剤、 酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艷消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、 帯電防止剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として無機微粒 子や有機化合物を必要に応じて添加してもよい。公知の可塑剤としては、例えば、フ タル酸ジェチル、フタル酸ジォクチル、フタル酸ジシクロへキシルなどのフタル酸エス テル系、アジピン酸ジ— 1—ブチル、アジピン酸ジ— n_オタチル、セバシン酸ジ _n —ブチル、ァゼライン酸ジ _ 2 _ェチルへキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系 、リン酸ジフエニル _ 2—ェチルへキシル、リン酸ジフエニルォクチルなどのリン酸ェ ステル系、ァセチルクェン酸トリブチル、ァセチルクェン酸トリ— 2—ェチルへキシル、 クェン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系、ァセチルリシノーノレ 酸メチル、ステアリン酸ァミルなどの脂肪酸エステル系、グリセリントリアセテート、トリ エチレングリコールジカプリレートなどの多価アルコールエステル系、エポキシ化大豆
油、エポキシ化アマ二油脂肪酸ブチルエステル、エポキシステアリン酸ォクチルなど のエポキシ系可塑剤、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステ ル系可塑剤、ポリアルキレンエーテル系、エーテルエステル系、アタリレート系などが 挙げられる。なお、安全性の面から、米食品衛生局(FDA)の認可がなされている可 塑剤を用いることが好ましい。酸化防止剤としてはヒンダードフエノール系、ヒンダード アミン系などが例示される。着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜 鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シァニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンス ラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインデ ィゴ系などの有機顔料等を使用することができる。また、成形品の易滑性ゃ耐ブロッ キング性の向上を目的として、無機微粒子を添加する際には、例えば、シリカ、コロイ ダルシリカ、ァノレミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイ力、炭酸カルシウムなどを 用いることができる。その平均粒径は、特に限定されないが、 0. 01〜5 z mが好まし く、より好ましく ίま 0. 05〜3 μ ΐη、最ち好ましく ίま 0. 08〜2 μ ΐηである。
実施例
[0077] 以下に実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明 は以下の実施例により限定されるものではない。なお、物性、評価は以下の方法によ り測定、評価した。
以下、 1. 〜8.の文中の「サンプル」は、本発明による「ポリエーテル—ポリ乳酸組成 物」を指す。
[0078] 1.残留ラクチド量
ガスクロマトグラフにより測定した。既知量のラクチドを用レ、、検量線を作成したのち 、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物を下記のように処理し測定を行った。
[液の調製方法]
(1)定量用母液の調製
(1 - 1) (内部標準母液の調製): 2, 6—ジメチルー γ—ビロン約 lgをメスフラスコ(1 00ml)に取り、塩化メチレンで溶解、定容する。
(1— 2) (標準母液の調製): D, L—ラクチド約 lgをメスフラスコ(100ml)に取り、塩 化メチレンで定容する。
(2)試料液の調製
(2— 1)ポリエーテル ポリ乳酸組成物約 lgをメスフラスコ(20ml)に取る。
(2— 2)塩化メチレンをカ卩ぇ溶解、内部標準母液 lmlを添加、塩化メチレンで定容す る。
(2— 3)アセトン 3mlをメスフラスコ(20ml)に取り、そこに(2— 2)の溶液を lmlカ卩える
(2— 4)超音波攪拌しながら、シクロへキサンを滴下していき、定容する。 (ポリ乳酸が 徐々に析出、沈降する。ラクチドは溶液に抽出される。 )
(2_ 5)ディスクフィルター(PTFEO. 45 z m)で濾過し、上澄み液を取り出す。
(2 _ 6)ガスクロマトグラフで測定する。
(3)標準液の調製
(3— 1)標準母液(0. 2ml, 0. 5ml, 1, Oml, 3. Oml)をそれぞれメスフラスコ(20ml )に取る
(3- 2)内部標準母液 lmlを加え、塩化メチレンで定容する。
(3— 3)アセトン 3mlをメスフラスコ(20ml)に取り、(3— 2)の溶液を lml加え、シクロ へキサンで定容する。
(3-4)ディスクフィルター(PTFE0. 45 μ m)で濾過する。
(3- 5)ガスクロマトグラフで測定する。
[GC測定条件]
装置:島津ガスクロマトグラフ GC— 17A (スプリット法)
カラム: J&W社 DB- 17MS 0. 25mm X 30m 0. 25 ^ m
装置条件:
(1)使用ガス :キャリア N 75kPa (約 30mlZmin)
2
空気 50kPa (約 500ml/min)
水素 60kPa (約 50ml/min)
(2)設定温度:気化室: 180°C
:検出器: 220°C
:カラム:昇温プログラム
80°Cで lmin保持。その後 10°C/minで 200°Cまで昇温。そして 200°Cで 5m in保持。
(3)カラム入口圧: lOOkPa (AFCコントロール)
(4)全流量: 20mlZmin (AFCコントロール)
(5)検出器感度: DET 0 or 1
(6)サンプル注入量: Ι μ ΐ
検出限界: 0. 01 % (100ppm)
2.酸価
中和滴定法を用いて測定した。サンプノレ 0. 2gを秤量し、クロ口ホルムに溶解後、指 示薬を数滴滴下し、 NZ25エタノール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式を用い て算出した。
酸価[1:〇1¾1^7§] = { (八_:6) X f X l/25 X 56. 11 }/W
酸価 [当量/ t] = [K〇Hmg/g] X 1000/56. 11
ただし、
A:サンプルを中和するのに要した KOH量(ml)
B:クロ口ホルムブランクを中和するのに要した KOH量(ml)
f : KOHの力価
W:サンプル採取量 (g)
である。
3.数平均分子量 (Mn)
THF (テトラヒドロフラン)に濃度 lmg/ccとなるようにサンプルを溶解させ、 GPC ( ゲルパーミエイシヨンクロマトグラフィ)を用いて、ピークが検出されるまでの時間を測 定し、既知分子量のポリスチレン検量線から、数平均分子量を換算した。
[GPC装置について]
機器:島津製作所製 LC一 10Aシリーズ
溶媒: THF (高速液体クロマトグラフィ用)
検出器: RI検出器 (RID - 10A)
カラム:昭和電工社製 Shodex (商標) KF_ 806L、 KF-804L (各 300mm X 8m
m φ )をこの順番で直列に使用。
カラム温度: 30°C
流速: 1 · Oml/min (Heによるオンライン脱気方式)。
[0080] 検量線作成に用いたポリスチレンは Shodex (商標)ポリスチレンスタンダードで、 St d. No.力 SS— 3850、 S— 1190、 S— 205、 S - 52. 4、 S— 13. 9、 S— 1. 31の 6種 類を用いた。これら THFに溶解させ、 GPC装置で、ピーク検出までの時間を測定し た。分子量は既知であるので、ピーク検出までの時間と分子量を縦軸と横軸にとり、 3 次式近似の検量線を作成して用いた。
[0081] 4.組成物の分析方法
ポリエーテル—ポリ乳酸組成物の製造における、共重合反応の成否は、 'Η-ΝΜ
R (核磁気共鳴装置)を用いて分析した。ポリ乳酸セグメントとポリエーテルが結合した 部分に由来するピークが現れてくるので、共重合しているかどうかの判断とした。
[0082] また、ポリ乳酸セグメントの結晶性は、一度本組成物を加熱下で結晶化させた後、 適当な温度範囲で DSC (示差走査熱量分析装置)測定を行った際、ポリ乳酸成分に 由来する結晶融解熱が観測されるかどうかで判断した。
[0083] また、組成物のポリ乳酸セグメントの数平均分子量、ポリエーテルセグメントの数平 均分子量に関しては、 ¾— NMRの積分強度と GPCから算出できる。合成に用いる ポリエーテルの数平均分子量は既知のものを使用し、ポリ乳酸セグメントを共重合さ せたサンプノレと比較し、ポリ乳酸セグメントの数平均分子量を割り出す事ができる。ま た、ポリエーテルの数平均分子量が未知の場合でも、組成物全体の GPCを測定し、 全体の数平均分子量を測定すれば、 NMRより算出される PLAセグメント数平均分 子量から割り出す事ができる。
[0084] Mn[PLA] = 72 X H (e) X ί (PL) Χ Μη[Ε]/ ί (E) X Mn[e]
実測値 = Mn[PLA] +Mn[E] + 6500
ただし、記号は以下とする。
[0085] Mn[PLA] : PLAセグメントの数平均分子量
H (e) :ポリエーテル単位分子当たりのプロトン数
ί (PL) : PLAセグメントの1 H— NMRの積分強度
Mn[E] :ポリエーテルの数平均分子量
I (E) :ポリエーテルの1 H— NMRの積分強度
M[e] :ポリエーテルの単位分子量
5.融点
示差走査熱量分析装置 (セイコー電子工業製、 RDC220)を用いて測定した。サン プル 5mgを 20°Cから 20°CZ分で 200°Cまで昇温した際の吸熱ピーク温度を融点と した。吸熱ピークが複数存在する場合は、最も高温側の吸熱ピークを融点とした。
[0086] 6.貯蔵安定性
貯蔵開始前のサンプルの酸価 (HI)を測定した後、 5°Cの冷蔵庫にて 6ヶ月放置し た。その後冷蔵庫力 取り出し、開始前と同様の手法で酸価 (H2)を測定した。貯蔵 開始前後の酸価増加量を (H2) - (HI)とし、以下の 3段階に分類し、評価した。 ◎ (優):酸価増加量が 10当量 Zt未満。
〇(良):酸価増加量が 10当量/ 1以上 50当量/ 1未満。
X (不可):酸価増加量が 50当量/ 1以上。
[0087] 7.溶融安定性
試験前のサンプルの残留ラクチド量 (L1)、酸価 (hi)、数平均分子量 (Mnl)を測 定したのち、サンプル 20gをフタ付のガラス瓶に計りとり、乾燥シリカ管を通した窒素 ガスをシリコンチューブで 5分間瓶内に吹き、雰囲気を置換した。ガラス瓶にフタをし た後、 160°Cに加熱したシリコンオイルバスに 20分間、溶融保持させ、取り出した。 冷却固化したサンプノレの残留ラクチド量 (L2)、酸価 (h2)、および数平均分子量 (M n2)を測定した。
[0088] 残留ラクチド増加量を (L2) - (L1)、酸価増加量を (h2) - (hi)、数平均分子量低 下量を(Mnl) - (Mn2)とし、それぞれ以下のように評価した。
残留ラクチド増加量
◎ (優):残留ラクチド増加量が 0. 10重量%未満
〇(良):残留ラクチド増加量が 0. 10重量%以上、 1. 00重量%未満
X (不可):残留ラクチド増加量が 1. 00重量%以上
酸価増加量
◎ (優):酸価増加量が 10当量/ 1未満
〇(良):酸価増加量が 10当量/ 1以上、 50当量/ 1未満
X (不可):酸価増加量が 50当量/ 1以上
数平均分子量低下量
◎ (優):数平均分子量低下量が 1000未満
〇(良):数平均分子量低下量が 1000以上、 3000未満
X (不可):数平均分子量低下量が 3000以上
以上 3項目は、分解性を促進させる種と要因と結果の関係にあるため、これらの中 で一つでも X評価があるものは、溶融安定性無しと判断し、総合評価 Xとした。
[0089] また、 3項目で全て◎評価のものは、総合評価◎とし、それら以外を総合評価〇とし た。
8.色調
重合反応終了後、冷却固化したサンプルを目視で判断した。
[0090] 以下、 [フィルムの製造方法]〜 11.の文中の「組成物」は、本発明による「ポリエー テル ポリ乳酸組成物」を指す。
[ポリ乳酸系フィルムの製造方法]
ポリ乳酸系重合体と下記の実施例もしくは比較例で得られた組成物を合計した全体 重量を 100重量%とした場合に、組成物中のポリエーテルセグメントの重量割合が 2 0重量%となる量 (W1)の組成物チップと、ポリ乳酸系重合体チップを(100— (W1) )重量%用意する。使用したポリ乳酸系重合体は、 L一乳酸が 95%で、重量平均分 子量が 12万のホモポリ乳酸である。
これら組成物チップとポリ乳酸系重合体チップを下記の条件で水分を除去した。 組成物チップ:温度 80°C、真空度 1333Pa、 3時間
ポリ乳酸チップ:温度 110°C、真空度 1333Pa、 3時間
これら乾燥した組成物チップとポリ乳酸系重合体チップを上記割合でブレンドした のち、二軸の押出機に供給し、 170〜220°Cで溶融混練させ、直線スリットが入った ダイより押出し、 20°Cのキャストドラムで冷却固化させることにより無延伸フィルムを作 成した。次にこの無延伸の両端を把持し、温度 80〜110°Cに加熱されたオーブン内
で、フィルムの長手方向(MD)とそれに垂直な方向(TD)にそれぞれ元の長さの 3倍 の長さになるように均一に延伸し、厚み 10 μ mのフィルムを製造した。
9.フィルム耐久性
上記 [ポリ乳酸系フィルムの製造方法]により得られたポリ乳酸系フィルムを、 A4サ ィズで 5枚切り取り、フィルム間に紙を挟んだ状態で恒温恒湿槽にて温度 30°C、湿度 85%RH、 7日間保管し、 7日間保管の前後で伸度変化を観察した。
伸度の測定は、テンシロンで測定した。
サンプル長さ 50mm、幅 10mm、 n= 5 (各 MD、 TD)、試験速度 300mm/minで 測定し、破断伸度を%で計算した。伸度保持率の算出式と評価基準を以下に示す。
[0091] 伸度保持率(%) =保管後の破断伸度 Z保管前の破断伸度 X 100
◎ (優):伸度保持率 75%以上
〇(良):伸度保持率 50%以上 75%未満
X (不可):伸度保持率 50%未満
また、恒温恒湿槽で保管中に組成物がブリードアウトした場合、評価対象外とした。
[0092] 10.フィルム臭気
内容積 7Lのステンレス製密閉容器を 2つ用意し、その内 1つの容器に、上記 [ポリ 乳酸系フィルムの製造方法]により得られたポリ乳酸系フィルムを A4サイズにカットし 、それを 20枚入れた。 3日間温度 23°C、湿度 65%RHの雰囲気下で保管後、 2つの 容器のフタを開け、においを嗅ぎ、臭気強度を下記の指標に従って評価した。
臭気強度 内容
0 無臭
1 やっと感知できるにおい
2 何のにおいであるかわかる弱いにおい
3 楽に感知できるにおい
4 強いにおい
5 強度なにおい
※中央公害対策審議会における指標を用いた。
[0093] 評価は 4人で行い、各臭気強度結果を平均し、下記の評価を行った。
[0094] ◎ (優):臭気強度の平均が 2未満
〇(良):臭気強度の平均が 2以上 3未満
X (不可):臭気強度の平均が 3以上
11.ブリードアウトテスト
あらかじめ、温度 23°C、湿度 65%RHの雰囲気下で 24時間調湿した、上記 [ポリ乳 酸系フィルムの製造方法]により得られたポリ乳酸系フィルムについて、処理前の重 量を測定し、 90°Cの蒸留水中で 30分間処理した後に再度処理前と同様の条件で調 湿してから重量を測定した。重量減少率(%)は、重量減少率(%) = { (処理前の重 量)―(処理後の重量) }Z (処理前の重量) 100、として算出した。
12.フィルムヘイズ値
上記 [ポリ乳酸系フィルムの製造方法]により得られたポリ乳酸系フィルムを長手方 向 40mm、幅方向に 30mmに切り出し、温度 23°C、湿度 65%RHの雰囲気下で 24 時間調湿した。この試料を 23°Cの雰囲気下で JIS K 7136に準じて、ヘイズメーター HGM— 2DP (スガ試験器株式会社)を用い、計 5回測定してその平均値を求めた。
[0095] なお、上記測定器により得られるフィルムヘイズ値は、散乱光透過率を全光線透過 率で除し、 100を乗じて得られる値である。
〔実施例 1〕
ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 63. 3重量%を 140°C、 30分減 圧脱水した後、 Lーラクチド 36. 7重量%を加えて、不活性ガスで雰囲気を置換し、 1 60°Cで 20分、両者を溶融'混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫を 0. 1重 量0 /0加えた。
その後 2時間、窒素雰囲気下 160°Cで撹拌を行い、反応終了後にリン酸結晶を 0. 0 75重量%加え、 20分攪拌し、組成物を得た。 GPC測定の結果から原料ポリエチレン グリコールの数平均分子量よりも大きな数平均分子量 22, 000 (ポリスチレン換算)を 持った乳酸系ポリエステルが確認された。
GPCのピークは単一で、単一の共重合体が生成していた。残留ラクチドは 2. 2重量 %。この乳酸系ポリエステル組成物(ポリエーテル—ポリ乳酸組成物)を 4torrの真空 度、 140°Cで残留ラクチドを除いた。 60分でラクチドは検出限界以下となった。酸価
を測定した結果、 30当量/ 1であり、数平均分子量の減少はみられなかった。
[0096] 〔実施例 2〕
ポリエチレングリコール(数平均分子量 20, 000) 77. 5重量%を 140°C、 30分減 圧脱水した後、 L—ラクチド 22. 5重量%を加えて、不活性ガスで雰囲気を置換し、 1 60°Cで 20分、両者を溶融'混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫を 0. 15重 量0 /0加えた。
その後 2時間、窒素雰囲気下 160°Cで反応を行い、反応終了後に亜リン酸を 0. 09 重量%加え、 20分攪拌し組成物を得た。 GPCの結果から原料ポリエチレングリコー ルの数平均分子量よりも大きな数平均分子量 30, 000 (ポリスチレン換算)を持った 乳酸系ポリエステルが確認された。
GPCのピークは単一で、単一の共重合体が生成していた。残留ラクチドは 2. 2重量 %。この乳酸系ポリエステル組成物(ポリエーテル—ポリ乳酸組成物)を 4torrの真空 度、 160°Cで残留ラクチドを除いた。 60分でラクチドは 0. 1重量%となった。酸価は 5 0当量/ 1であり、数平均分子量の減少はみられなかった。
[0097] 〔実施例 3〕
ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 63. 3重量%を 140°C、 30分減 圧脱水した後、 Lーラクチド 41. 1重量%を加えて、不活性ガスで雰囲気を置換し、 1 60°Cで 20分、両者を溶融'混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫を 0. 1重 量0 /0加えた。
[0098] その後 2時間、 160°Cで反応を行い、反応終了後にジメチルホスフェートを 0. 28重 量%加え、 20分攪拌し、ポリエーテル ポリ乳酸組成物を合成した。数平均分子量 2 1 , 000 (ポリスチレン換算)の組成物と確認された。残留ラクチドは 2. 8%。この乳酸 系ポリエステル組成物(ポリエーテル—ポリ乳酸組成物)を 4torrの真空度、 160°Cで 残留ラクチドを除いた。 40分でラクチドは 0. 3重量%になった。酸価は 10当量/ 1で あり、数平均分子量の減少はみられなかった。
〔実施例 4〕
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 56重 量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒータにて 1
50°Cに加熱し、溶解させた。
[0099] その後、半円状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 150°C、真空度 133Paで
30分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 650ppmであった。
[0100] 光学純度 99. 5%の L—ラクチド 44重量%を別のフラスコで 110°Cに加熱し、溶融 させた。 Lーラクチドの含有水分量は、 600ppmであった。
[0101] ポリエチレングリコールの入ったフラスコに、溶融したラクチドを添カ卩し、乾燥シリカ ゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混合させた。
[0102] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 025重量部加え、乾燥シリカゲル環を通し た窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 3時間撹拌を行った。
[0103] 3時間攪拌後に、 5mlのスクリュウ管に 80°Cで溶融させたリン酸結晶を 0. 019重量 部加え、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 20分間攪拌し た。
[0104] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定した結果
、数平均分子量 16500、融点 138°Cの組成物であり、ポリエーテルとポリ乳酸の共重 合体であることが確認された。しかし、残留ラクチド量は 2. 14重量%であった。
[0105] そこでフラスコ内の組成物を、 140°C、 133Paの真空度で、 180分間減圧脱揮を行 レ、、組成物を得たところ、残留ラクチド量は 0. 05重量%となった。
[0106] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 16500、酸価 30当量/ t、融点 140°Cのポリエーテル ポリ乳酸組成物であることが確認された。
[0107] [実施例 5]
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 56重 量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒータにて 1
50°Cに加熱し、溶解させた。
[0108] その後、半円状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 150°C、真空度 1333Pa で 40分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 800ppmであつ た。
[0109] 光学純度 97%の L—ラクチド 44重量%を別のフラスコで 110°Cに加熱し、溶融させ た。 Lーラクチドの含有水分量は、 650ppmであった。
[0110] ポリエチレングリコールの入ったフラスコに、溶融したラクチドを添加し、乾燥シリカ ゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混合させた。
[0111] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 05重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した 窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 3時間撹拌を行った。
[0112] 3時間攪拌後、触媒活性低減剤として、 5mlのスクリュウ管にリン酸/亜リン酸を重 量比で 1/1となるように秤量し、 80°Cに加熱し溶融混合させ、リン酸 Z亜リン酸混合 液を 0. 05重量部加えた。続いて、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し
、 180°Cで 20分間攪拌した。
[0113] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定した結果
、数平均分子量 16100、融点 141°Cの組成物であり、ポリエーテルとポリ乳酸の共重 合体であることが確認された。しかし、残留ラクチド量は 2. 69重量%であった。
[0114] そこでフラスコ内の組成物を、 140°C、 133Paの真空度で、 180分間減圧脱揮を行 レ、、組成物を得たところ、残留ラクチド量は 0. 13重量%となった。
[0115] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 16000、酸価 45当量/ t、融点 140°Cのポリエーテル ポリ乳酸組成物であることが確認された。
[実施例 6]
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレンプロピレンオキサイド(数平均分子量 6, 60 0) 37重量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒー タにて 150°Cに加熱し、溶解させた。
[0116] その後、半円状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 150°C、真空度 1333Pa で 30分間減圧脱水した。ポリエチレンプロピレンオキサイドの含有水分量は、 780pp mであった。
[0117] 光学純度 97%の L—ラクチド 63重量%を別のフラスコで 110°Cに加熱し、溶融させ た。 Lーラクチドの含有水分量は、 650ppmであった。
[0118] ポリエチレンプロピレンオキサイドの入ったフラスコに、溶融したラクチドを添カロし、 乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混 合させた。
[0119] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 1重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した
窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 3時間撹拌を行った。
[0120] 3時間攪拌後、ジェチルホスフェートを 0. 34重量部加え、乾燥シリカゲル環を通し た窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 20分間攪拌した。
[0121] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定した結果
、数平均分子量 9200、融点 110°Cの組成物であり、ポリエーテルとポリ乳酸の共重 合体であることが確認された。しかし、残留ラクチド量は 1. 61重量%であった。
[0122] そこでフラスコ内の組成物を、 140°C、 133Paの真空度で、 180分間減圧脱揮を行 レ、、組成物を得たところ、残留ラクチド量は 0. 28重量%となった。
[0123] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 9000、酸価 50当量/ 1
、融点 110°Cのポリエーテル—ポリ乳酸組成物であることが確認された。
〔実施例 7〕
容量 500mLの重合試験管に、ポリエチレングリコール (数平均分子量 10000) 63
. 3重量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、オイルバスに て 140°Cに加熱し、溶解させた。
[0124] その後、螺旋状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 140°C、真空度 13Paで 3
0分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 680ppmであった。 光学純度 98%の D—ラクチド 36. 7重量%を別のフラスコで 110°Cに加熱し、溶解さ せた。 D—ラクチドの含有水分量は 650ppmであつた。
[0125] ポリエチレングリコールの入った重合試験管に、溶解したラクチドを添加し、乾燥シ リカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 20分間攪拌し両者を混合させ た。
次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 1重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した窒 素で雰囲気を置換し、 160°Cで 2時間攪拌を行った。
[0126] 2時間攪拌後、 5mlのスクリュウ管に 80°Cで溶融させたリン酸結晶を 0. 075重量部 加え、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 20分間攪拌した
[0127] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、 NMR、残留ラクチド量を測定した結果、数平 均分子量 22000のポリエーテル—ポリ乳酸組成物であることが確認された。しかし、
残留ラクチドは 2. 2重量%であった。
[0128] そこで重合試験管内のポリエーテル ポリ乳酸組成物を 140°C、 52Paの真空度で 、 60分間減圧脱揮を行い、組成物を得たところ、残留ラクチド量は検出限界以下で あった。
[0129] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 22000、酸価 30当量 Z t、融点 140°Cのポリエーテル一ポリ乳酸組成物であることが確認された。
[0130] 〔実施例 8〕
容量 500mLの重合試験管に、ポリエチレングリコール (数平均分子量 20000) 77
. 5重量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、オイルバスに て 140°Cに加熱し、溶解させた。
[0131] その後、螺旋状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 140°C、真空度 1333Pa で 30分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 lOOOppmであつ
[0132] 光学純度 99. 5%の L ラクチド 22. 5重量%を別のフラスコで 100°Cに加熱し、溶 解させた。 L ラクチドの含有水分量は 700ppmであった。
[0133] ポリエチレングリコールの入った重合試験管に、溶解したラクチドを添加し、乾燥シ リカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 20分間攪拌し両者を混合させ た。
[0134] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 15重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した 窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 2時間攪拌を行った。
[0135] 2時間攪拌後、 5mlのスクリュウ管に 80°Cで溶融させた亜リン酸を 0. 09重量部加 え、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 20分間攪拌した。
[0136] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、 NMR、残留ラクチド量を測定した結果、数平 均分子量 30000のポリエーテル—ポリ乳酸組成物であることが確認された。しかし、 残留ラクチドは 2. 6重量%であった。
[0137] そこで重合試験管内のポリエーテル—ポリ乳酸組成物を 160°C、 52Paの真空度で
、 60分間減圧脱揮を行い、組成物を得たところ、残留ラクチド量は 0. 1重量%であつ た。
[0138] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 30000、酸価 50当量/ t、融点 135°Cのポリエーテル ポリ乳酸組成物であることが確認された。
[0139] 〔実施例 9〕
容量 500mLの重合試験管に、ポリエチレングリコール(数平均分子 10000) 63. 3 重量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、オイルバスにて 1
40°Cに加熱し、溶解させた。
[0140] その後、螺旋状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 160°C、真空度 13Paで 3
0分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 600ppmであった。
[0141] 光学純度 99. 5%の L—ラクチド 41. 1重量%を別の重合試験管で 110°Cに加熱し
、溶解させたのち、 52Paの真空度で 10分間減圧脱揮を行った。 L—ラクチドの含有 水分量は 600ppmであった。
[0142] ポリエチレングリコールの入った重合試験管に、溶解したラクチドを添加し、乾燥シ リカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 20分間攪拌し両者を混合させ た。
次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 1重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した窒 素で雰囲気を置換し、 160°Cで 2時間攪拌を行った。
[0143] 2時間攪拌後、ジメチルホスフェートを 0. 28重量部加え、乾燥シリカゲル環を通し た窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 20分間攪拌した。
[0144] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、 NMR、残留ラクチド量を測定した結果、数平 均分子量 21000のポリエーテル—ポリ乳酸組成物であることが確認された。しかし、 残留ラクチドは 2. 8重量%であった。
[0145] そこで重合試験管内のポリエーテル—ポリ乳酸組成物を 160°C、 52Paの真空度で
、 40分間減圧脱揮を行い、組成物を得たところ、残留ラクチド量は 0. 3重量%であつ た。
[0146] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 30000、酸価 10当量 Z t、融点 130°Cのポリエーテル一ポリ乳酸組成物であることが確認された。
〔比較例 1〕
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 56重
量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒータにて 1
50°Cに加熱し、溶解させた。
[0147] その後、半円状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 150°C、真空度 133Paで
5分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 1500ppmであった。
[0148] 光学純度 97%の L—ラクチドを 44重量%を量り取った。 Lーラクチドの含有水分量 は、 lOOOppmであった。
[0149] ポリエチレングリコールの入ったフラスコに、量り取ったラクチドを添カ卩し、乾燥シリカ ゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混合させた。
[0150] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 025重量部加え、乾燥シリカゲル環を通し た窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 3時間撹拌を行った。
[0151] 3時間攪拌後、 5mlのスクリュウ管に 80°Cで溶融させたリン酸結晶を 0. 032重量部 加え、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで、 20分間攪拌し た。
[0152] ここで、一部組成物を採取し、 GPC、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定した結果 、数平均分子量 16000、融点 140°Cの組成物であり、ポリエーテルとポリ乳酸の共重 合体であることが確認された。しかし、残留ラクチド量は 2. 11重量%であった。
[0153] そこでフラスコ内の組成物を、 140°C、 133Paの真空度で、 180分間減圧脱揮を行 レ、、組成物を得たところ、残留ラクチド量は 0. 30重量%となった。
[0154] GPC、酸価、融点、 NMRを測定した結果、数平均分子量 16000、酸価 80当量/ t、融点 140°Cのポリエーテル ポリ乳酸組成物であることが確認された。
〔比較例 2〕
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 56重 量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒータにて 1
50°Cに加熱し、溶解させた。
[0155] その後、半円状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 150°C、真空度 133Paで
30分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 650ppmであった。
[0156] 光学純度 97%の L—ラクチドを 44重量%を別のフラスコで 110°Cに加熱し、溶融さ せた。 Lーラクチドの含有水分量は、 600ppmであった。
[0157] ポリエチレングリコールの入ったフラスコに、溶融したラクチドを添加し、乾燥シリカ ゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混合させた。
[0158] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 05重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した 窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 3時間撹拌を行った。
[0159] 3時間攪拌後に、 5mlのスクリュウ管に 80°Cで溶融させたリン酸結晶を 0. 027重量 部加え、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 20分間攪拌し た。
[0160] ここで、組成物を採取し、 GPC、酸価、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定した結 果、数平均分子量 16000、酸価 48当量 Zt、融点 140°Cの組成物であり、ポリエー テル—ポリ乳酸組成物であることが確認された。残留ラクチド量は 2. 14重量%であ つた。
〔比較例 3〕
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量 10, 000) 56重 量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒータにて 1
50°Cに加熱し、溶解させた。
[0161] その後、半円状の攪拌翼を用いて、攪拌を開始し、温度 150°C、真空度 133Paで
30分間減圧脱水した。ポリエチレングリコールの含有水分量は、 650ppmであった。
[0162] 光学純度 97%の L—ラクチドを 44重量%を別のフラスコで 110°Cに加熱し、溶融さ せた。 Lーラクチドの含有水分量は、 600ppmであった。
[0163] ポリエチレングリコールの入ったフラスコに、溶融したラクチドを添加し、乾燥シリカ ゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混合させた。
[0164] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 05重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した 窒素で雰囲気を置換し、 180°Cで 3時間撹拌を行った。
[0165] 3時間後、 140°C、 133Paの真空度で、 180分間減圧脱揮を行い、取り出した。
GPC、酸価、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定した結果、数平均分子量 16000、 酸価 48当量/、融点 140°Cの組成物であり、ポリエーテル—ポリ乳酸組成物である ことが確認された。残留ラクチド量は 1. 6重量%であった。
〔比較例 4〕
容量 3Lの丸底フラスコに、ポリエチレンプロピレンオキサイド(数平均分子量 6, 60 0) 37重量%を入れ、乾燥シリカゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、マントルヒー タにて 150°Cに加熱し、溶解させた。ポリエチレンプロピレンオキサイドの含有水分量 は、 2000ppmであった。
[0166] 光学純度 97%の L—ラクチドを 63重量%を量り取った。 Lーラクチドの含有水分量 は、 lOOOppmであった。
[0167] ポリエチレンプロピレンオキサイドの入ったフラスコに、ラクチドを添カ卩し、乾燥シリカ ゲル環を通した窒素で雰囲気を置換し、 150°Cで 20分間攪拌し両者を混合させた。
[0168] 次に、重合触媒としてオクタン酸錫を 0. 05重量部加え、乾燥シリカゲル環を通した 窒素で雰囲気を置換し、 160°Cで 3時間撹拌を行った。
[0169] 3時間後に、組成物を採取し、 GPC、酸価、融点、 NMRと残留ラクチド量を測定し た結果、数平均分子量 9200、酸価 110当量/、融点 110°Cの組成物であり、ポリ エーテル ポリ乳酸組成物であることが確認された。残留ラクチド量は 2. 40重量。/0 であった。
[0170] 以下の表に、実施例:!〜 6、比較例 1〜7で得られたポリエーテル ポリ乳酸組成物 および、それを用いて [フィルムの製造方法]で製膜されたフィルムの評価結果を示 す。
[0171] [表 1-1]
〕〕〔^〔1207211
産業上の利用可能性
本発明は、ポリエーテル一ポリ乳酸組成物の製造時に加えた触媒を触媒活性低減 剤によって活性を低下あるいは失活させることにより、脱揮工程、成形加工工程での 乳酸系ポリエステルの分解を抑制し、優れた成形性、生分解性、透明性を有するシ ート、フィルム等の汎用性の包装材料に有用な十分な高分子量、耐熱性、柔軟性、 耐経時性、良好な色相を有する生分解性の添加剤にも用いられる組成物を提供でま