JP2013159747A - ポリ乳酸系フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性、耐引き裂き性に優れたポリ乳酸系フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】乳酸系樹脂(A)を含有し、該乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)が50質量%以上95質量%以下であり、厚みが40μm以下であることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、柔軟性と耐引き裂き性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現するポリ乳酸系フィルムに関する。
近年、環境意識の高まりのもと、プラスチック製品の廃棄による土壌汚染問題、また、焼却による二酸化炭素増大に起因する地球温暖化問題が注目されている。前者への対策として、種々の生分解樹脂、後者への対策として、焼却しても大気中に新たな二酸化炭素の負荷を与えないバイオマス(植物由来原料)からなる樹脂がさかんに研究、開発されている。その両者を満足し、かつ、コスト面でも比較的有利なポリ乳酸が注目されている。しかし、ポリ乳酸をポリエチレンなどのポリオレフィンに代表される軟質フィルム用途に適用しようとすると柔軟性や耐引き裂き性に欠けるため、これらの特性を改善し実用化するために各種の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、結晶性ポリ乳酸系樹脂、可塑剤、結晶核剤を必須成分とし、熱特性を規定したフィルムが開示されている。特許文献2には、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤を含む組成物からなり、伸度、厚み、熱収縮率を規定したフィルムが開示されている。
特開2002−146170号公報 特開2009−138085号公報
前述の特許文献1や特許文献2では、フィルムの耐引き裂き性を向上する技術については全く開示されていない。
つまり、柔軟性と耐引き裂き性に優れた、ポリ乳酸系フィルムに関しては、未だに達成されていなかった。
そこで本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、柔軟性と耐引き裂き性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現するポリ乳酸系フィルムを提供せんとするものである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次によって前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明のポリ乳酸系フィルムは、以下である。
(1) 乳酸系樹脂(A)を含有し、該乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)が50質量%以上95質量%以下であり、厚みが40μm以下であることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルム。
(2) 更に熱可塑性樹脂(B)を含有し、該熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(B)が50質量%以上95質量%以下である、(1)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(3) 熱可塑性樹脂(B)が、生分解性樹脂であることを特徴とする、(2)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(4) 熱可塑性樹脂(B)が、ポリブチレンアジペート・テレフタレートであることを特徴とする、(2)または(3)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(5) 乳酸系樹脂(A)が、ホモポリ乳酸、並びに、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体及びポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体からなることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(6) 下記1)及び2)を満たし、
さらに、環状ダイから押出した樹脂に対して、エアリングのエア吹出口から冷却空気を吹きつけて、該樹脂を冷却することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルムの製造方法。
1) 前記環状ダイのリップ面からエアリングのエア吹出口の最外周のフィンの最頂部までの高さをF、環状ダイのリップ直径をDとしたとき、F/Dが0.5以上2.5以下である。
2) エアリングが、環状ダイと同心円状に3つ以上のエア吹出口のスリットを有する。
本発明によれば、柔軟性と耐引き裂き性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現するポリ乳酸系フィルムが提供される。本発明のポリ乳酸系フィルムは、柔軟性、耐引き裂き性を必要とする農業用マルチフィルムや松くい虫燻蒸用シートなどの農林業用途、ゴミ袋や堆肥袋、野菜や果物など食料品用袋、ショッピングバッグやTシャツバッグなどの手提げ袋、各種工業製品の袋など各種包装用途などに好ましく用いることができる。
インフレーション製造装置における環状ダイとエアリングの断面図である。
本発明は、前記課題、つまり柔軟性と耐引き裂き性に優れたポリ乳酸系フィルムについて鋭意検討した結果、乳酸系樹脂のポリ乳酸セグメントの可動非晶の割合を一定の条件内に納めることにより、かかる課題の解決に初めて成功したものである。すなわち本発明は、乳酸系樹脂(A)を含有し、該乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)が50質量%以上95質量%以下であり、厚みが40μm以下であることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルムである。
以下、本発明のポリ乳酸系フィルムについて説明する。
(乳酸系樹脂(A))
本発明のポリ乳酸系フィルムは、乳酸系樹脂(A)を含有することが重要である。本発明でいう乳酸系樹脂(A)とは、重合体全体100質量%に対して、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上100質量%以下のものをいう。ここで乳酸ユニットからなる構成成分はバイオマス(植物由来原料)である。
本発明でいう乳酸系樹脂(A)は、重合体全体100質量%に対して、乳酸ユニットからなる構成成分が、60質量%以上100質量%以下であるポリ乳酸系樹脂と、重合体全体100質量%に対して、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である他の乳酸系樹脂(乳酸系樹脂(A)において、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である重合体(乳酸系樹脂(A)において、ポリ乳酸系樹脂以外の重合体)を、以下、単に他の乳酸系樹脂という)に分類される。そして本発明のフィルムは、乳酸系樹脂(A)を含有しさえすれば、ポリ乳酸系樹脂又は他の乳酸系樹脂のいずれを含有していても特に限定されないが、後述するように本発明のフィルムは、乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸系樹脂及び他の乳酸系樹脂の両方を含有することが好ましい。

また本発明のポリ乳酸系フィルムは、乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)が50質量%以上95質量%以下であることが重要であるが、その前提として乳酸系樹脂(A)がポリ乳酸セグメントを含むことが重要である。ここでポリ乳酸セグメントとは、数平均分子量が1,000以上となる乳酸ユニットのみからなる集合体である。
なお、乳酸系樹脂(A)の一つであるポリ乳酸系樹脂がホモポリ乳酸の場合には、該ホモポリ乳酸それ自体がポリ乳酸セグメントに該当する。この場合、ポリ乳酸セグメントの数平均分子量の上限は特に限定されないものの、50万以下であることが好ましい。
また、乳酸系樹脂(A)の一つであるポリ乳酸系樹脂が、乳酸以外の他の単量体ユニットを共重合したポリ乳酸系樹脂の場合でも、該樹脂がポリ乳酸セグメントを有することが重要であり、同様に、乳酸系樹脂(A)が他の乳酸系樹脂の場合も、該樹脂がその骨格の一部にポリ乳酸セグメントを有することが重要である。この場合、ポリ乳酸セグメントの数平均分子量の上限は特に限定されないものの、10,000以下であることが好ましい。

以下、まず、乳酸ユニットからなる構成成分が、60質量%以上100質量%以下であるポリ乳酸系樹脂について説明する。
本発明でいうポリL−乳酸とは、乳酸系樹脂(A)中の全乳酸ユニット100mol%中、L−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。一方、本発明でいうポリD−乳酸とは、乳酸系樹脂(A)中の全乳酸ユニット100mol%中、D−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。
ポリL−乳酸は、D−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリL−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は高くなっていく。同様に、ポリD−乳酸は、L−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリD−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は高くなっていく。
本発明で用いられるポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、本発明で用いられるポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合は、組成物の機械強度を維持する観点から全乳酸ユニット100mol%中、80〜100mol%が好ましく、より好ましくは85〜100mol%である。
本発明でいう結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸セグメントに由来する結晶融解熱が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。

一方、本発明でいう非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様に測定を行った場合、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
また、本発明で用いられる乳酸系樹脂(A)の、主成分がポリL−乳酸の場合はポリD−乳酸を、また、主成分がポリD−乳酸の場合はポリL−乳酸を、少量混合することも好ましい。その理由は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸により形成されるステレオコンプレックス結晶は、通常の結晶よりも融点が高くなり、耐熱性が向上するためである。このとき、少量混合するポリ乳酸の質量平均分子量は、主成分のポリ乳酸の質量平均分子量よりも小さい方が、フィルムの機械強度を維持できる観点、ステレオコンプレックス結晶を効率的に形成できる観点で好ましい。少量混合するポリ乳酸の質量平均分子量は、主成分のポリ乳酸の質量平均分子量の0.5〜50%であることが好ましく、1〜40%であることがより好ましく、2〜30%であることがさらに好ましい。
さらに、本発明で用いられる乳酸系樹脂(A)は、L−乳酸ユニットからなるセグメントとD−乳酸ユニットからなるセグメントにより構成される、ポリ乳酸ブロック共重合体であることも耐熱性向上の点で好ましい。この場合、ポリ乳酸ブロック共重合体が分子内でステレオコンプレックス結晶を形成するため、通常の結晶よりも融点が高くなる。効率的なステレオコンプレックス結晶形成のためには、ポリ乳酸ブロック共重合体の質量平均分子量Xおよびセグメント1単位の最大質量平均分子量Yについて、Y<X/2を満たすようなセグメント長であることが好ましい。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、乳酸ユニットのみからなるホモポリ乳酸、乳酸以外の他の単量体ユニットを共重合したポリ乳酸系樹脂のいずれを用いてもよい。他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記の他の単量体ユニットの共重合量は、ポリ乳酸系樹脂の重合体中の単量体ユニット全体100mol%に対し、0〜30mol%であることが好ましく、0〜10mol%であることがより好ましい。なお、上記した単量体ユニットの中でも、用途に応じて生分解性を有する成分を選択することが好ましい。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量は、実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、8万〜40万であることがより好ましく、10万〜30万であることがさらに好ましい。

次に、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である他の乳酸系樹脂について説明する。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、柔軟性、耐引き裂き性を発現させるため、乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸系樹脂、及び、他の乳酸系樹脂を同時に用いることが好ましい。乳酸系樹脂(A)は、ホモポリ乳酸、及び、他の乳酸系樹脂を同時に用いることがより好ましい。また、他の乳酸系樹脂は、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、および/または、ポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体であることが特に好ましい(これらブロック共重合体を、以下、「ブロック共重合体可塑剤」という。)。ここで、可塑化成分は、ポリエーテル系セグメント、ポリエステル系セグメントとなる。つまり乳酸系樹脂(A)は、ホモポリ乳酸、及び、ブロック共重合体可塑剤を併用することがより好ましい。以下、「ブロック共重合体可塑剤」について次に説明する。
ブロック共重合体可塑剤は、ポリ乳酸系樹脂を可塑化することにより、柔軟性を発現し、また、後述する乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの可動非晶の割合を好ましい範囲とさせることにより耐引き裂き性を発現する。
ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントの質量割合は、ブロック共重合体可塑剤全体の50質量%以下であることが、より少量の添加で所望の柔軟性を付与できるため好ましく、5質量%以上であることが、ブリードアウト抑制の点から好ましい。また、ブロック共重合体可塑剤1分子中のポリ乳酸セグメントの数平均分子量は1,200〜10,000であることが好ましい。ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントが、1,200以上であると、ブロック共重合体可塑剤とポリ乳酸系樹脂との間に十分な親和性が生じ、また、該セグメントの一部はポリ乳酸系樹脂から形成される結晶中に取り込まれ、いわゆる共晶を形成することで、ブロック共重合体可塑剤をポリ乳酸系樹脂につなぎ止める作用を生じ、ブロック共重合体可塑剤のブリードアウト抑制に大きな効果を発揮する。ブロック共重合体可塑剤のポリ乳酸セグメントの数平均分子量は、1,500〜6,000であることがより好ましく、2,000〜5,000であることがさらに好ましい。なお、ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントは、L−乳酸が95〜100質量%であるか、あるいはD−乳酸が95〜100質量%であることが、特にブリードアウトが抑制されるため好ましい。
また、ブロック共重合体可塑剤はポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントを有するが、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体である方が、少量の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から好ましい。さらにポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体においては、より少量の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から、ポリエーテル系セグメントとしてポリアルキレンエーテルからなるセグメントを有することがより好ましい。具体的には、ポリエーテル系セグメントとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体などからなるセグメントが挙げられるが、特にポリエチレングリコールからなるセグメントは、ポリ乳酸系樹脂との親和性が高いために改質効率に優れ、特に少量の添加で所望の柔軟性を付与できるため好ましい。
なお、ブロック共重合体可塑剤がポリアルキレンエーテルからなるセグメントを有する場合、成形時などで加熱する際にポリアルキレンエーテルセグメントが酸化や熱分解され易い傾向があるため、後述するヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤やリン系などの熱安定剤を併用することが好ましい。
ブロック共重合体可塑剤がポリエステル系セグメントを有する場合は、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなどの脂肪族ジオールとコハク酸、セバシン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸よりなるポリエステルなどが、ポリエステル系セグメントとして好適に用いられる。
なお、ブロック共重合体可塑剤は、その1分子中に、ポリエーテル系セグメントとポリエステル系セグメントの両方の成分を含有してもよいし、いずれか一方の成分でもよい。可塑剤の生産性やコスト等の理由から、いずれか一方の成分とする場合は、より少量の可塑剤の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から、ポリエーテル系セグメントを用いる方が好ましい。つまりブロック共重合体可塑剤として好ましい態様は、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとのブロック共重合体である。
さらにまた、ブロック共重合体可塑剤の1分子中のポリエーテル系セグメントやポリエステル系セグメントの数平均分子量は、7,000〜20,000であることが好ましい。上記範囲とすることで、本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物に十分な柔軟性を持たせることができる。
前記ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントと、ポリ乳酸セグメントの各セグメントブロックの順序構成に特に制限は無いが、より効果的にブリードアウトを抑制する観点から、少なくとも1ブロックのポリ乳酸セグメントがブロック共重合体可塑剤分子の端にあることが好ましい。
次に、ポリエーテル系セグメントとして、両末端に水酸基末端を有するポリエチレングリコール(以下、PEG)を採用した場合について具体的に説明する。
両末端に水酸基末端を有するPEGの数平均分子量(以下、PEGの数平均分子量をMPEG)は、通常、市販品などの場合、中和法などにより求めた水酸基価から計算される。両末端に水酸基末端を有するPEGのw質量部に対し、ラクチドw質量部を添加した系において、PEGの両水酸基末端にラクチドを開環付加重合させ十分に反応させると、実質的にPLA−PEG−PLA型のブロック共重合体を得ることができる(ここで、「PLA」はポリ乳酸を示す)。この反応は、必要に応じてオクチル酸錫などの触媒併存下でおこなわれる。このブロック共重合体可塑剤の一つのポリ乳酸セグメントの数平均分子量は、実質的に(1/2)×(w/w)×MPEGにより求めることができる。また、ポリ乳酸セグメント成分のブロック共重合体可塑剤全体に対する質量割合は、実質的に100×w/(w+w)%により求めることができる。さらに、ポリ乳酸セグメント成分を除いた可塑剤成分のブロック共重合体可塑剤全体に対する質量割合は、実質的に100×w/(w+w)%により求めることができる。
なお、本発明におけるポリ乳酸系フィルムから、ブロック共重合体可塑剤中のポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメント、ポリ乳酸セグメントの数平均分子量の評価をするために、ブロック共重合体可塑剤を分離する方法としては、例えばクロロホルムなどの適当な良溶媒にポリ乳酸系フィルムを均一溶解した後、水や水/メタノール混合溶液など適当な貧溶媒に滴下して、ろ過などによりポリ乳酸系樹脂、熱可塑性樹脂を主に含む沈殿物を除去し、ろ液の溶媒を揮発させてブロック共重合体可塑剤を得る再沈殿法などが挙げられる。こうして分離されたブロック共重合体可塑剤について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて数平均分子量(以後Mとする)を測定し、H−NMR測定により、ポリ乳酸セグメント、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントを特定する。そして、ブロック共重合体が有する一つのポリ乳酸セグメントの分子量は、M×{1/(ポリ乳酸セグメントの数)}×(IPLA×72)/[(IPE×UMPE/NPE)+(IPLA×72)]と算出する。ただし、IPLAは、PLA主鎖部のメチン基の水素に由来するH−NMR測定でのシグナル積分強度、IPEはポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントに由来するH−NMR測定でのシグナル積分強度、UMPEは、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントのモノマー単位の分子量、NPEはポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントのうち、シグナル積分強度を与える化学的に等価なプロトンの数である。また、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントの数平均分子量は、M−(ポリ乳酸セグメントの数平均分子量)×(ポリ乳酸セグメントの数)で計算できる。
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物に含有されるブロック共重合体可塑剤は、乳酸系樹脂(A)全体100質量%中、1〜40質量%であることが好ましい。1質量%以上とすることで、前述した柔軟性、耐引き裂き性を十分に発現でき、40質量%以下とすることで、フィルムとした際のコシが強く、取り扱い性、強度、耐久性、可塑剤の耐ブリードアウト性が高くなる。ブロック共重合体可塑剤の含有率は、好ましくは乳酸系樹脂(A)全体100質量%中、10〜35質量%、より好ましくは、20〜30質量%である。
ブロック共重合体可塑剤の乳酸系樹脂(A)全体100質量%中の含有量は、1〜40質量%であることが好ましいが、残りの60〜99質量%は、ポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。

乳酸系樹脂(A)の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、ポリ乳酸系フィルムを構成する組成物全体100質量%中、乳酸系樹脂(A)を40〜95質量%含有することが好ましい。ポリ乳酸系フィルムを構成する組成物全体100質量%中、乳酸系樹脂(A)を40質量%以上とすることで、バイオマス度(植物由来原料の含有割合)が高くなり、乳酸系樹脂(A)を95質量%以下とすることで、柔軟性、耐引き裂き性に優れたものとなる。ポリ乳酸系フィルムを構成する組成物全体100質量%中、乳酸系樹脂(A)は45〜90質量%であることがより好ましく、50〜85質量%であることがさらに好ましい。

(結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合)
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物に含有される乳酸系樹脂(A)の一つであるポリ乳酸系樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合物であってもよい。混合物とすることにより、結晶性、非晶性、それぞれのポリ乳酸系樹脂の利点を両立できる。
なお前述のように、結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する融点が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。
一方で非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様の測定を行った際に、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
結晶性ポリ乳酸系樹脂の含有は、フィルムの耐引き裂き性、耐熱性、耐ブロッキング性向上に好適である。また、前述のブロック共重合体可塑剤を用いる場合、結晶性ポリ乳酸系樹脂はブロック共重合体可塑剤が有するポリ乳酸セグメントと共晶を形成することで、耐ブリードアウト性に大きな効果を発揮する。
一方、非晶性ポリ乳酸系樹脂の含有は、フィルムの柔軟性、耐ブリードアウト性の向上に好適である。これは、可塑剤が分散できる非晶部分を提供していることが影響している。
本発明のポリ乳酸系フィルムに用いられる結晶性ポリ乳酸系樹脂は、耐引き裂き性、耐熱性、耐ブロッキング性向上の観点から、ポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、ポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が全乳酸ユニット100mol%中、96〜100mol%が好ましく、より好ましくは98〜100mol%であり、さらに好ましくは99〜100mol%、特に好ましくは99.5〜100mol%である。
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物中の結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の合計量を100質量%としたとき、非晶性ポリ乳酸系樹脂の割合は50〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。

(熱可塑性樹脂(B))
本発明のポリ乳酸系フィルムは、柔軟性、耐引き裂き性を発現させるために、熱可塑性樹脂(B)を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂(B)は、乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を意味する。
熱可塑性樹脂(B)の例としては、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体、熱可塑性デンプン、デンプンを含むポリマーなどが挙げられる。
また、フィルム全体としての生分解性を維持する都合上、熱可塑性樹脂(B)は、乳酸系樹脂(A)以外の生分解性樹脂であることが好ましい。本発明でいう生分解性樹脂とは、JIS K6950(2000)、JIS K6951(2000)、JIS K6953−1(2011)、JIS K6953−2(2010)、JIS K6955(2006)、化審法生分解性試験(MITI法)のいずれかで試験して60%以上の生分解度である樹脂のことをいう。
本発明のポリ乳酸系フィルムに含有される熱可塑性樹脂(B)としての生分解性樹脂は、例えば、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペートなどに代表される脂肪族ポリエステル、ポリエチレンサクシネート・テレフタレート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリブチレンアジペート・テレフタレートなどに代表される脂肪族芳香族ポリエステル、熱可塑性澱粉、澱粉と脂肪族(芳香族)ポリエステルからなる樹脂、セルロースエステルなどが好ましく用いられる。また、これらの樹脂は、バイオマス性を高める観点から、構成成分の一部または全部に植物由来原料を使用することが好ましい。
これらの中でも、柔軟性、耐引き裂き性の改良効果が大きいという点から、熱可塑性樹脂(B)としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペートおよびポリブチレンアジペート・テレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一つがより好ましく用いられる。そして、柔軟性、耐引き裂き性の改良効果が最も高いのは、ポリブチレンアジペート・テレフタレートである。
本発明のポリ乳酸系フィルムに含まれる熱可塑性樹脂(B)は、ポリ乳酸系フィルムを構成する組成物全体100質量%中、5〜60質量%であることが好ましい。5質量%以上であると、柔軟性、耐引き裂き性の改良効果が得られやすく、60質量%以下であればバイオマス度(植物由来原料の含有割合)が高くなる点で好ましい。ポリ乳酸系フィルムを構成する組成物全体100質量%中、熱可塑性樹脂(B)は、10〜55質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましい。

(可塑剤)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、主に柔軟性を付与するために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系、アジピン酸ジ−1−ブチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸ジフェニルオクチルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系、アセチルリシノール酸メチル、ステアリン酸アミルなどの脂肪酸エステル系、グリセリントリアセテート、トリエチレングリコールジカプリレートなどの多価アルコールエステル系、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステル、エポキシステアリン酸オクチルなどのエポキシ系可塑剤、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテル系、エーテルエステル系、アクリレート系などが挙げられる。そして、これらのうち複数種以上の混合物を、可塑剤として用いることも可能である。
さらに、可塑剤の耐ブリードアウト性やフィルムの耐ブロッキング性の観点から、例えば数平均分子量1,000以上のポリエチレングリコールなど、常温(20℃±15℃)で固体状、つまり、融点が35℃を超えることが好ましい。

(乳酸系樹脂(A)の可動非晶の割合:MA(A))
一般的に非晶領域は、ガラス転移点で比熱容量変化を伴う階段状吸熱ピークを示す可動非晶と、通常の条件では比熱容量変化が起こらない剛直非晶とに分類できる。剛直非晶は分子配向が進んでいる、あるいはいわゆる結晶を繋ぐタイ分子として存在している可能性などが考えられる。
この可動非晶の割合は、温度変調示差走査型熱量計測定法(以下TMDSCと略す)による可逆成分のTMDSC曲線上で、ガラス転移前後での比熱容量変化から精度良く求めることができる。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)が50質量%以上95質量%以下であることが重要である。可動非晶の割合MA(A)が、50質量%未満であるとフィルムの柔軟性、耐引き裂き性が不十分となり、95質量%を超えるとフィルムの製膜性や耐ブロッキング性が悪化する。可動非晶の割合MA(A)は、55質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。
乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)を50質量%以上95質量%以下とする方法は、乳酸系樹脂(A)を後述する好ましい組成にする方法や、フィルムの製造時に好ましい製造条件を採用する方法が挙げられるが、その両方を組み合わせることが好ましい。
乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)を50質量%以上95質量%以下に制御するための、乳酸系樹脂(A)の好ましい組成は、ポリ乳酸系フィルムを構成する組成物中の結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の合計量を100質量%としたときの非晶性ポリ乳酸系樹脂の割合を前記した好ましい範囲とすること、乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸系樹脂、及び、他の乳酸系樹脂を同時に用いることが挙げられる。
乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)を50質量%以上95質量%以下に制御するための、フィルムの製造時の好ましい製造条件は、インフレーション法による製造方法において、後述するF/Dを0.5以上2.5以下として、エアリングが環状ダイと同心円状に3つ以上のエア吹出口のスリットを有する製造方法とする方法を挙げることができる。また、インフレーション法による製造方法において、ブロー比、ドロー比、環状ダイの温度を、それぞれ後述する好ましい範囲とすることが挙げられる。

(熱可塑性樹脂(B)の可動非晶の割合:MA(B))
本発明のポリ乳酸系フィルムは、熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(B)が50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(B)が、50質量%以上であるとフィルムの柔軟性、耐引き裂き性が良好となり、95質量%以下であるとフィルムの製膜性や耐ブロッキング性が良好となる。熱可塑性樹脂(B)の可動非晶の割合MA(B)は、55質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(B)を50質量%以上95質量%以下とする方法は、インフレーション法による製造方法において、後述するF/Dを0.5以上2.5以下として、エアリングが環状ダイと同心円状に3つ以上のエア吹出口のスリットを有する製造方法とする方法を挙げることができる。また、インフレーション法による製造方法において、環状ダイのリップ間隙、環状ダイの温度を、それぞれ後述する好ましい範囲とすることが挙げられる。

(引き裂き強さ)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、長さ方向および幅方向(長さ方向と垂直な方向)の引き裂き強さが、いずれも40N/mm以上であることが好ましい。引き裂き強さが40N/mm以上であると農林業用途、ゴミ袋や堆肥袋、食料品用袋、手提げ袋、各種工業製品の袋などの各種包装用途とした際、フィルムが破れにくく、実用性が向上する。長さ方向および幅方向の引張伸度は、60N/mm以上がより好ましく、60N/mm以上がさらに好ましく、80N/mm以上が特に好ましい。また、長さ方向および幅方向の引き裂き強さの上限は、特に制限はないが、実用上、300N/mm程度である。
長さ方向および幅方向の引き裂き強さをいずれも40N/mm以上とするための方法としては、乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの可動非晶の割合MA(A)を50質量%以上95質量%以下とする方法、及び/又は、熱可塑性樹脂(B)を前述した好ましい範囲で含有し、更にその可動非晶の割合MA(B)を50質量%以上95質量%以下とする方法、が挙げられる。

(引張弾性率)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、十分な柔軟性を付与するために、長さ方向、幅方向の引張弾性率が、いずれも100MPa以上1,500MPa以下であることが好ましい。引張弾性率は200MPa以上1,200MPa以下であることがより好ましく、300MPa以上1,000MPa以下であることがさらに好ましい。
長さ方向および幅方向の引張弾性率をいずれも100MPa以上1,500MPaとするための方法としては、乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの可動非晶の割合MA(A)を50質量%以上95質量%以下とする方法、及び/又は、乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸系樹脂、及び、他の乳酸系樹脂を同時に用いる方法、及び/又は熱可塑性樹脂(B)を前述した好ましい範囲で含有し、更にその可動非晶の割合MA(B)を50質量%以上95質量%以下とする方法が挙げられる。

(厚み)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルム厚みが40μm以下であることが重要である。フィルム厚みが40μmを超えると、農林業用途、ゴミ袋や堆肥袋、野菜や果物など食料品用袋、ショッピングバッグやTシャツバッグなどの手提げ袋、各種工業製品の袋など各種包装用途とした際に、取り扱い性が悪化する。
フィルム厚みは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、18μm以下が特に好ましい。
また、フィルム厚みの下限は特に制限は無いが、現実的には5μm程度である。

(有機滑剤)
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物は、組成物全体100質量%中、有機滑剤を0.1〜5質量%含むことが好ましい。この場合、巻き取り後のブロッキングを良好に抑制できる。また、有機滑剤の添加過多による溶融粘度の低下や加工性の悪化、あるいはフィルムとした際のブリードアウトやヘイズアップなどの外観不良の問題も発生しにくい。
有機滑剤としては特に限定されず、種々の物を使用可能であるが、例えば、脂肪酸アミド系の有機滑剤が使用できる。その中でも、より良好な耐ブロッキング性を発現する観点で、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの比較的高融点である有機滑剤が好ましい。
(ヘイズ)
本発明のポリ乳酸系フィルムは、ヘイズが50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることが特に好ましい。ヘイズが50%以下である場合、農林業用途、ゴミ袋や堆肥袋、野菜や果物など食料品用袋、ショッピングバッグやTシャツバッグなどの手提げ袋、各種工業製品の袋など各種包装用途に成形加工した際には内容物が容易に確認できる、商品としての見栄えがよいなど高い意匠性により好適である場合が多い。なお、乳酸系樹脂(A)の一般的な特性から、ポリ乳酸系フィルムのヘイズとしては1%未満にすることは困難であることから、下限は1%程度である。
(添加剤)
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で前述した以外の添加剤を含有してもよい。例えば、公知の結晶核剤、酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、抗酸化剤、イオン交換剤、粘着性付与剤、消泡剤、着色顔料、染料、末端封鎖剤、熱安定剤、相溶化剤などが含有できる。
結晶核剤としては、有機系結晶核剤では、メラミン系化合物、フェニルホスホン酸金属塩、ベンゼンカルボアミド誘導体、脂肪族/芳香族カルボン酸ヒドラジド、ソルビトール系化合物、アミノ酸、ポリペプチド、金属フタロシアニン等を好ましく使用することができる。無機系結晶核剤では、タルク、クレー、マイカ、カオリナイト等の珪酸塩鉱物、カーボンブラックなどを好ましく使用することができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などを好ましく使用することができる。
着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料などを好ましく使用することができる。
末端封鎖剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等の付加反応型化合物が挙げられる。乳酸系樹脂(A)を末端封鎖することは、カルボキシル基末端濃度を下げることで、加水分解による強度低下を抑制し、良好な耐久性を付与する観点で好ましい。
(粒子)
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物には、組成物全体100質量%中、粒子を1〜10質量%含むことが好ましい。この場合、加工品の易滑性や耐ブロッキング性が向上する。粒子は2〜5質量%含むことがより好ましい。
このような粒子は、無機粒子であっても有機粒子であっても特に限定されないが、例えば、シリカ等の酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ化アルミニウム、ゼピオライト等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の各種酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、フッ化リチウム等の各種塩等からなる粒子を使用することができる。

(製造方法)
次に、本発明のポリ乳酸系フィルムを製造する方法について具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、例えば、次のような方法で得ることができる。原料としては、L−乳酸またはD−乳酸の乳酸成分を主体とし、前述した乳酸成分以外のヒドロキシカルボン酸を併用することができる。またヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等を原料として使用することもできる。更にジカルボン酸類やグリコール類等も使用することができる。
ポリ乳酸系樹脂は、上記原料を直接脱水縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
本発明のポリ乳酸系フィルムを構成する組成物、つまり、乳酸系樹脂(A)、あるいはその他の成分等を含有する組成物を得るにあたっては、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、溶媒へ原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を採用することが好ましい。その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。
溶融混練時の温度は150℃〜240℃の範囲が好ましく、乳酸系樹脂(A)の劣化を防ぐ意味から、170℃〜210℃の範囲とすることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、例えば上記した方法により得られた組成物を用いて、公知のインフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスト法などの既存のフィルムの製造法により得ることが出来るが、乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)を50質量%以上95質量%以下として、厚みを40μm以下とするためにはインフレーション法が好ましい。
本発明のポリ乳酸系フィルムを製造するにあたっては、例えば前述した方法により得られた組成物を一旦ペレット化し、再度溶融混練して押出・製膜する際には、ペレットを60〜100℃にて6時間以上乾燥するなどして、水分量を1,200ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下とした乳酸系樹脂(A)等を含有する組成物を用いることが好ましい。さらに、真空度10Torr以下の高真空下で真空乾燥をすることで、乳酸系樹脂(A)等を含有する組成物中のラクチド含有量を低減させることが好ましい。乳酸系樹脂(A)等を含有する組成物の水分量を1,200ppm以下とし、また、ラクチド含有量を低減することで、溶融混練中の加水分解を防ぎ、それにより分子量低下を防ぐことができ、乳酸系樹脂(A)等を含有する組成物とした際の溶融粘度を適度なレベルとし、製膜工程を安定させることができるためにも好ましい。また、同様の観点から、一旦ペレット化、あるいは溶融押出・製膜する際には、ベント孔付きの2軸押出機を使用し、水分や低分子量物などの揮発物を除去しながら溶融押出することが好ましい。
本発明のポリ乳酸系フィルムをインフレーション法により製造する場合は、例えば、前述のような方法により調整した組成物をベント孔付き2軸押出機にて溶融押出して環状ダイに導き、環状ダイから押出して内部には乾燥エアを供給して風船状(バブル)に形成し、さらにエアリングのエア吹出口から冷却空気を吹きつけて、該樹脂を冷却させ、ニップロールでフラットに折りたたみながら所定の引き取り速度で引き取った後、必要に応じて両端、または片方の端を切り開いて巻き取れば良い。
以下に、インフレーション法により製造する場合の好ましい条件について、図1を参照しながら説明する。
本発明のポリ乳酸系フィルムでは、インフレーション製膜時の、環状ダイのリップ直径(図1のDに相当)に対する、環状ダイのリップ面からエアリングのエア吹出口の最外周のフィンの最頂部までの高さ(図1のFに相当)の比F/Dが0.5以上2.5以下であることが好ましい。F/Dが0.5以上であることは、環状ダイより吐出した樹脂を冷却する際、強い風量でもバブルが安定すること、また、効率よく冷却ができる点で好ましい。F/Dが2.5以下であることは、製膜性が良好となること、また、高温になったエアをリング外に放出しやすい点で好ましい。F/Dは0.7以上2.3以下であることがより好ましく、1.0以上2.0以下であることがさらに好ましく、1.2以上2.0以下であることが特に好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂のインフレーション製膜で、通常用いられているエアリングのF/Dは0.5未満(例えば0.2など)である。
また、本発明のポリ乳酸系フィルムでは、インフレーション製膜時にエアリングのエア吹出口から冷却空気を吹きつける際に、環状ダイと同心円状に3つ以上のエア吹出口のスリット(図1の3に相当)を有するエアリングを用いることが好ましい。エアリングが、エア吹出口のスリットを3つ以上有することは、環状ダイより吐出した樹脂を効率よく冷却ができる点で好ましい。エアリングが有するエア吹出口のスリット数は5つ以上がより好ましく、7つ以上がさらに好ましい。上限は特に制限は無いが、実用上10程度である。
これらのことから、本発明のポリ乳酸系フィルムの製造方法は、インフレーション法であることが好ましく、特に、環状ダイから押出した樹脂に対して、エアリングのエア吹出口から冷却空気を吹きつけて、該樹脂を冷却する製造方法であり、下記1)及び2)を満たすことが好ましい。
1) 前記環状ダイのリップ面からエアリングのエア吹出口の最外周のフィンの最頂部までの高さをF、環状ダイのリップ直径をDとしたとき、F/Dが0.5以上2.5以下である。
2) エアリングが、環状ダイと同心円状に3つ以上のエア吹出口のスリットを有する。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、インフレーション製膜時のブロー比と、ドロー比の調整も重要である。ここで、ブロー比とは、フィルムの幅方向の延伸比のことで、(片方の端を切り開いて巻き取った際のフィルムの幅方向の長さ)/(環状ダイの直径)で計算できる。また、ドロー比とは、フィルムの長さ方向のドロー延伸比のことで、(環状ダイのリップ間隙)/{(製膜後のフィルム厚み)×(ブロー比)}で計算できる。本発明のポリ乳酸系フィルムでは、過剰な配向を抑制して、前述した乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの可動非晶の割合MA(A)、さらには熱可塑性樹脂(B)の可動非晶の割合MA(B)を制御するために、ブロー比は1.6〜4.0が好ましく、ドロー比は5〜30が好ましい。ブロー比は、1.8〜3.4がより好ましく、2.0〜3.0がさらに好ましい。ドロー比は10〜25がより好ましく、15〜20がさらに好ましい。
環状ダイのリップ間隙は、上記した好ましいブロー比、ドロー比で製膜した際に目的のフィルム厚みになるように調整すればよいが、0.2〜1.2mmが好ましく、0.3〜1.0mmがより好ましく、0.5〜0.8mmが特に好ましい。また、環状ダイは、厚み精度、均一性の点から、スパイラル型を用いることが好ましく、同様の観点から環状ダイは回転式のものを用いることが好ましい。
本発明のポリ乳酸系フィルムをインフレーション製膜する際の押出温度は通常150〜240℃の範囲であり、180〜210℃が好ましい。また、環状ダイスの温度は特に重要で、過剰な配向を抑制するため、160〜200℃が好ましく、180〜200℃がより好ましい。
フィルムに成形した後に、フィルムの熱収縮を抑制するために加熱ロールやオーブン内で熱処理を施しても良い。また、印刷性、ラミネート適性、コーティング適性などを向上させる目的で各種の表面処理を施しても良い。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などが挙げられ、いずれの方法をも用いることができるが、連続処理が可能であり、既存の製膜設備への装置設置が容易な点や処理の簡便さからコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示できる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すとおりの条件で行った。
(1)乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの可動非晶の割合:MA(A)(質量%)、熱可塑性樹脂(B)の可動非晶の割合:MA(B)(質量%)
TA Instruments社製Q1000を用いて下記条件にてフィルム試料のTMDSC測定を行った。なお、データ処理には、TA Instruments社製“Universal Analysis 2000”を使用した。
雰囲気:窒素流(50 mL/min)
温度・熱量校正:高純度インジウム(Tm=156.61℃、ΔHm=28.70 J/g)
比熱校正:サファイア
温度範囲:約-80〜200℃
昇温速度:2℃/min
温度変調振幅:±1℃
温度変調周期:60秒
試料量:約5mg
試料容器:アルミニウム製標準容器
可逆成分のTMDSC曲線から、乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメント、熱可塑性樹脂(B)それぞれについて、ガラス転移温度前後での比熱差(ΔCP(A)、ΔCP(B))を求め、下記の式に基づき可動非晶の割合を計算した。
MA(A)(質量%)=ΔCP(A)/ΔCP(A)0×100
MA(B)(質量%)=ΔCP(B)/ΔCP(B)0×100
ここで、ΔCP(A)0、ΔCP(B)0はそれぞれの樹脂の完全非晶のガラス転移点前後での比熱差である。
ΔCP(A)0は、A. Magon, M. Pyda, Polymer, 50,3967 (2009)を参考に、0.6078J/(g・℃)を用いた。
ΔCP(B)0は次の通り、結晶と非晶の二相モデルが成り立つと仮定した計算結果を用いた。すなわち、熱可塑性樹脂(B)について、TMDSC測定装置で下記の6条件(条件(a)〜(f))で処理したサンプルを作成し、その6サンプルについてそれぞれ前記条件にてTMDSC測定を行い、それぞれのガラス転移温度前後での比熱差ΔC、融解熱量(ΔH)と冷結晶化熱量(ΔHcc)の差(ΔH−ΔHcc)を求めた。ΔCを縦軸、(ΔH−ΔHcc)を横軸にとって6点をプロットし、最小2乗法で直線を引き、縦軸との切片を読みとることで完全非晶の熱可塑性樹脂(B)のガラス転移点前後での比熱差ΔCP(B)0を算出した。
(a)熱可塑性樹脂(B)の融点+50℃から室温まで液体窒素で急冷
(b)熱可塑性樹脂(B)の融点+50℃から室温まで10℃/minで冷却
(c)熱可塑性樹脂(B)の融点+50℃から室温まで1℃/minで冷却
(d)処理無し
(e)熱可塑性樹脂(B)の融点−70℃で3時間熱処理
(f)熱可塑性樹脂(B)の融点−30℃で2時間熱処理
例えば、後述する(B1)ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂では、ΔCP(B)0として0.336J/(g・℃)という算出結果を用いた。
(2)引張弾性率(MPa)
オリエンテック社製TENSILON(登録商標) UCT−100を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて、引張弾性率を測定した。具体的には、測定方向に長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K−7127(1999)に規定された方法にしたがって、長さ方向、幅方向それぞれについて10回の測定を行い、その平均値を各方向の引張弾性率とした。
(3)引き裂き強さ(N/mm)
(株)東洋精機製作所製引き裂き伝播抵抗計(エレメンドルフ)を用いて、JIS K−7128−2に規定された方法にしたがって、長さ方向、幅方向それぞれについて10回の測定を行い、その平均値を各方向の引き裂き強さとした。具体的な測定方法としては、サンプルサイズは引き裂き方向63mm×引き裂きと垂直方向76mmで、引き裂き方向に20mmの切れ込みを入れ、残り43mmを引き裂いた時の指示値を読みとった。
(4)質量平均分子量、数平均分子量
日本Warters(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)Warters2690により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。溶媒にクロロホルムを用い、流速0.5mL/minとし、試料濃度1mg/1mLの溶液を0.1mL注入し、カラム温度40℃で測定した。

[乳酸系樹脂(A)]
(A1)
ポリL−乳酸、質量平均分子量200,000、D体含有量1.4mol%、融点166℃
(A2)
ポリL−乳酸、質量平均分子量200,000、D体含有量12.0mol%、融点無し
(A3)
数平均分子量8,000のポリエチレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.05質量部を混合し、撹拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気下160℃で3時間重合することで、数平均分子量8,000のポリエチレングリコールの両末端に数平均分子量2,500のポリ乳酸セグメントを有する乳酸系樹脂A3を得た。

[熱可塑性樹脂(B)]
(B1)
ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(BASF社製、商品名“エコフレックス”(登録商標)FBX7011)、生分解性樹脂
(B2)
ポリブチレンサクシネート・アジペート系樹脂(昭和高分子(株)製、商品名“ビオノーレ”(登録商標)#3001)、生分解性樹脂
(B3)
ポリブチレンサクシネート系樹脂(三菱化学(株)製、商品名“GSPla”(登録商標)AZ91T)、生分解性樹脂

[有機滑剤]
(滑剤1)
エチレンビスステアリン酸アミド(日本化成(株)製、商品名“スリパックスE”(登録商標))
[粒子]
(粒子1)
炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、商品名“カルテックスR” (登録商標)、平均粒子径2.8μm)
(粒子2)
タルク(日本タルク(株)製、SG−95、平均粒子径2.5μm)

[ポリ乳酸系フィルムの作製]
(比較例1)
乳酸系樹脂(A1)10質量部、乳酸系樹脂(A2)40質量部、乳酸系樹脂(A3)20質量部、有機滑剤(滑剤1)1質量部、粒子(粒子1)3質量部の混合物をシリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。
この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度60℃で12時間真空乾燥した。
この組成物のペレットを75質量%、熱可塑性樹脂(B1)を25質量%の混合物として、最終的に表1に示す組成物とし、押出機シリンダー温度190℃のスクリュー径65mmの一軸押出機に供給し、直径250mm、リップ間隙0.5mm、温度180℃のスパイラル型回転式環状ダイより、ブロー比2.5、ドロー比11にてバブル状に上向きに押出し、F/Dが0.2でエア吹出口のスリット数が1つのエアリングから冷却エアを吹きつけることによりバブルを空冷し、ダイ上方のニップロールで折りたたみながら引き取り、両端部をエッジカッターにて切断して2枚に切り開き、それぞれワインダーにてフィルムを巻き取った。なお、エアリングの冷却エアの風量は、徐々に増やしていってバブルが不安定になる直前の風量とした。得られたフィルムの物性を表1に示した。
実施例1〜21、比較例2〜3は、フィルムの組成、製造条件を表1、表2、表3のとおりに変更した以外は、比較例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2に示した。
Figure 2013159747
Figure 2013159747
Figure 2013159747
本発明のポリ乳酸系フィルムは、柔軟性、耐引き裂き性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現するポリ乳酸系フィルムであり、農業用マルチフィルムや松くい虫燻蒸用シートなどの農林業用途、ゴミ袋や堆肥袋、野菜や果物など食料品用袋、ショッピングバッグやTシャツバッグなどの手提げ袋、各種工業製品の袋など各種包装用途などに好ましく用いることができる。
1…環状ダイ
2…エアリング本体
3…エア吹出口のスリット
4…フィン
5…フィルム
D…環状ダイのリップ直径
F…環状ダイリップ面からエアリングのエア吹出口の最外周のフィンまでの高さ

Claims (6)

  1. 乳酸系樹脂(A)を含有し、該乳酸系樹脂(A)のポリ乳酸セグメントの合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(A)が50質量%以上95質量%以下であり、厚みが40μm以下であることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルム。
  2. 更に熱可塑性樹脂(B)を含有し、該熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%とした際の可動非晶の割合MA(B)が50質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系フィルム。
  3. 熱可塑性樹脂(B)が、生分解性樹脂であることを特徴とする、請求項2に記載のポリ乳酸系フィルム。
  4. 熱可塑性樹脂(B)が、ポリブチレンアジペート・テレフタレートであることを特徴とする、請求項2または3に記載のポリ乳酸系フィルム。
  5. 乳酸系樹脂(A)が、ホモポリ乳酸、並びに、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体及びポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
  6. 下記1)及び2)を満たし、
    さらに、環状ダイから押出した樹脂に対して、エアリングのエア吹出口から冷却空気を吹きつけて、該樹脂を冷却することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルムの製造方法。
    1) 前記環状ダイのリップ面からエアリングのエア吹出口の最外周のフィンの最頂部までの高さをF、環状ダイのリップ直径をDとしたとき、F/Dが0.5以上2.5以下である。
    2) エアリングが、環状ダイと同心円状に3つ以上のエア吹出口のスリットを有する。
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